(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125394
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/042 20140101AFI20230831BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20230831BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20230831BHJP
【FI】
B23K26/042
B23K26/064 Z
B23K26/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029452
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(72)【発明者】
【氏名】荻原 孝文
(72)【発明者】
【氏名】是松 克洋
【テーマコード(参考)】
4E168
【Fターム(参考)】
4E168CA03
4E168CA06
4E168CA13
4E168CA15
4E168CB07
4E168CB13
4E168CB15
4E168CB18
4E168DA02
4E168DA03
4E168DA43
4E168DA60
4E168EA11
4E168EA19
4E168EA20
4E168HA01
4E168JA12
4E168KB02
(57)【要約】
【課題】集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】4fレンズユニット420は、空間光変調器410におけるレーザ光Lの像を集光レンズユニット430の入射瞳面430aに転像する。観察用カメラ488は、対象物1で反射されたレーザ光Lの反射光RLを検出する。制御部500は、空間光変調器410における位相パターンの表示位置の基準である基準位置として、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1、及び対象物1の加工結果に基づく基準位置P2を取得し、対象物1の加工時に、基準位置P2を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させ、基準位置の確認時に、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3を取得する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向する第1面及び第2面を有する対象物を支持する支持部と、
レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記レーザ光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器によって変調された前記レーザ光を前記第1面側から前記対象物に集光する集光部と、
前記空間光変調器における前記レーザ光の像を前記集光部の入射瞳面に転像する転像部と、
前記対象物で反射された前記レーザ光の反射光を検出する光検出器と、
少なくとも前記空間光変調器を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、前記入射瞳面に転像された前記レーザ光の前記像の中心位置が前記入射瞳面の中心位置に一致するように、前記空間光変調器における位相パターンの表示位置の基準である基準位置を設定する設定処理を実行し、
前記設定処理は、
前記反射光の検出結果に基づいて、前記基準位置として第1基準位置を取得し、前記対象物の加工結果に基づいて、前記基準位置として第2基準位置を取得する処理と、
前記対象物の加工時に、前記第2基準位置を前記基準として前記位相パターンを前記空間光変調器に表示させる処理と、
前記対象物の加工時後の前記基準位置の確認時に、前記反射光の検出結果に基づいて、前記基準位置として第3基準位置を取得する処理と、を含む、レーザ加工装置。
【請求項2】
前記設定処理は、
前記第3基準位置が前記第1基準位置からずれていた場合に、前記第1基準位置、前記第2基準位置及び前記第3基準位置に基づいて、前記基準位置として第4基準位置を算出し、前記第4基準位置を記憶する処理と、
前記対象物の加工時に、前記第4基準位置を前記基準として前記位相パターンを前記空間光変調器に表示させる処理と、を更に含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記設定処理は、
前記第3基準位置が前記第1基準位置からずれていた場合に、前記対象物の加工結果に基づいて、前記基準位置として第4基準位置を取得する処理と、
前記対象物の加工時に、前記第4基準位置を前記基準として前記位相パターンを前記空間光変調器に表示させる処理と、を更に含む、請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記設定処理は、
前記第1基準位置と前記第2基準位置との第1差分と、前記第3基準位置と前記第4基準位置との第2差分とを比較する処理と、
前記第1差分と前記第2差分とが異なっていた場合に、前記第1基準位置及び前記第2基準位置に代えて、前記第3基準位置及び前記第4基準位置を記憶する処理と、を更に含む、請求項3に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記基準位置の確認時に、前記反射光の検出結果を表示する表示部を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
対向する第1面及び第2面を有する対象物を支持する支持部と、
レーザ光を出射する光源と、
前記光源から出射された前記レーザ光を変調する空間光変調器と、
前記空間光変調器によって変調された前記レーザ光を前記第1面側から前記対象物に集光する集光部と、
前記空間光変調器における前記レーザ光の像を前記集光部の入射瞳面に転像する転像部と、
前記対象物で反射された前記レーザ光の反射光を検出する光検出器と、を備えるレーザ加工装置において実施され、
前記入射瞳面に転像された前記レーザ光の前記像の中心位置が前記入射瞳面の中心位置に一致するように、前記空間光変調器における位相パターンの表示位置の基準である基準位置を設定するレーザ加工方法であって、
前記反射光の検出結果に基づいて、前記基準位置として第1基準位置を取得し、前記対象物の加工結果に基づいて、前記基準位置として第2基準位置を取得するステップと、
前記対象物の加工時に、前記第2基準位置を前記基準として前記位相パターンを前記空間光変調器に表示させるステップと、
前記対象物の加工時後の前記基準位置の確認時に、前記反射光の検出結果に基づいて、前記基準位置として第3基準位置を取得するステップと、を備える、レーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物を支持する支持部と、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を変調する空間光変調器と、空間光変調器によって変調されたレーザ光を対象物に集光する集光部と、空間光変調器におけるレーザ光の像を集光部の入射瞳面に転像する転像部と、を備えるレーザ加工装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したようなレーザ光照射装置では、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致していないと、所望の加工品質を得ることができないおそれがある。
【0005】
本発明は、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のレーザ加工装置は、対向する第1面及び第2面を有する対象物を支持する支持部と、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を変調する空間光変調器と、空間光変調器によって変調されたレーザ光を第1面側から対象物に集光する集光部と、空間光変調器におけるレーザ光の像を集光部の入射瞳面に転像する転像部と、対象物で反射されたレーザ光の反射光を検出する光検出器と、少なくとも空間光変調器を制御する制御部と、を備え、制御部は、入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が入射瞳面の中心位置に一致するように、空間光変調器における位相パターンの表示位置の基準である基準位置を設定する設定処理を実行し、設定処理は、反射光の検出結果に基づいて、基準位置として第1基準位置を取得し、対象物の加工結果に基づいて、基準位置として第2基準位置を取得する処理と、対象物の加工時に、第2基準位置を基準として位相パターンを空間光変調器に表示させる処理と、対象物の加工時後の基準位置の確認時に、反射光の検出結果に基づいて、基準位置として第3基準位置を取得する処理と、を含む。
【0007】
このレーザ加工装置では、空間光変調器における位相パターンの表示位置の基準である基準位置として、反射光の検出結果に基づいて第1基準位置が取得されると共に、対象物の加工結果に基づいて第2基準位置が取得される。第1基準位置及び第2基準位置が取得された状態で、対象物の加工時には、空間光変調器が、対象物の加工結果に基づいて取得された第2基準位置を基準として位相パターンを表示する。これにより、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致した状態で、対象物を加工することができる。そして、基準位置の確認時には、反射光の検出結果に基づいて第3基準位置が取得される。この第3基準位置を、反射光の検出結果に基づいて予め取得された第1基準位置と比較することで、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。
【0008】
本発明のレーザ加工装置では、設定処理は、第3基準位置が第1基準位置からずれていた場合に、第1基準位置、第2基準位置及び第3基準位置に基づいて、基準位置として第4基準位置を算出し、第4基準位置を記憶する処理と、対象物の加工時に、第4基準位置を基準として位相パターンを空間光変調器に表示させる処理と、を更に含んでもよい。反射光の検出結果に基づいて取得される基準位置と、対象物の加工結果に基づいて取得される基準位置との間には、一定の位置関係が維持される傾向がある。そのため、第3基準位置が第1基準位置からずれていた場合、対象物の加工時に、空間光変調器が、第1基準位置、第2基準位置及び第3基準位置に基づいて算出された第4基準位置を基準として位相パターンを表示することで、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致した状態で、対象物を加工することができる。
【0009】
本発明のレーザ加工装置では、設定処理は、第3基準位置が第1基準位置からずれていた場合に、対象物の加工結果に基づいて、基準位置として第4基準位置を取得する処理と、対象物の加工時に、第4基準位置を基準として位相パターンを空間光変調器に表示させる処理と、を更に含んでもよい。反射光の検出結果に基づいて取得される基準位置と、対象物の加工結果に基づいて取得される基準位置との間には、一定の位置関係が維持される傾向がある。そのため、第3基準位置が第1基準位置からずれていた場合、対象物の加工時に、空間光変調器が、対象物の加工結果に基づいて改めて取得された第4基準位置を基準として位相パターンを表示することで、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致した状態で、対象物を加工することができる。
【0010】
本発明のレーザ加工装置では、設定処理は、第1基準位置と第2基準位置との第1差分と、第3基準位置と第4基準位置との第2差分とを比較する処理と、第1差分と第2差分とが異なっていた場合に、第1基準位置及び第2基準位置に代えて、第3基準位置及び第4基準位置を記憶する処理と、を更に含んでもよい。反射光の検出結果に基づいて取得される基準位置と、対象物の加工結果に基づいて取得される基準位置との間に、一定の位置関係が維持されていれば、第1差分と第2差分とが同じになるはずである。したがって、第1差分と第2差分とを比較することで、反射光の検出結果に基づいて取得される基準位置と、対象物の加工結果に基づいて取得される基準位置との間に、一定の位置関係が維持されているか否かを確認することができる。更に、第1差分と第2差分とが異なっていた場合に、制御部が、第1基準位置及び第2基準位置に代えて、第3基準位置及び第4基準位置を記憶するため、反射光の検出結果に基づいて取得される基準位置と、対象物の加工結果に基づいて取得される基準位置との位置関係を更新することができる。
【0011】
本発明のレーザ加工装置は、基準位置の確認時に、反射光の検出結果を表示する表示部を更に備えてもよい。これによれば、反射光の検出結果をオペレータに報知することができる。
【0012】
本発明のレーザ加工方法は、対向する第1面及び第2面を有する対象物を支持する支持部と、レーザ光を出射する光源と、光源から出射されたレーザ光を変調する空間光変調器と、空間光変調器によって変調されたレーザ光を第1面側から対象物に集光する集光部と、空間光変調器におけるレーザ光の像を集光部の入射瞳面に転像する転像部と、対象物で反射されたレーザ光の反射光を検出する光検出器と、を備えるレーザ加工装置において実施され、入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が入射瞳面の中心位置に一致するように、空間光変調器における位相パターンの表示位置の基準である基準位置を設定するレーザ加工方法であって、反射光の検出結果に基づいて、基準位置として第1基準位置を取得し、対象物の加工結果に基づいて、基準位置として第2基準位置を取得するステップと、対象物の加工時に、第2基準位置を基準として位相パターンを空間光変調器に表示させるステップと、対象物の加工時後の基準位置の確認時に、反射光の検出結果に基づいて、基準位置として第3基準位置を取得するステップと、を備える。
【0013】
このレーザ加工方法によれば、上述したように、第1基準位置及び第2基準位置が取得された状態で、対象物の加工時には、空間光変調器が、対象物の加工結果に基づいて取得された第2基準位置を基準として位相パターンを表示する。これにより、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致した状態で、対象物を加工することができる。そして、基準位置の確認時には、反射光の検出結果に基づいて第3基準位置が取得される。この第3基準位置を、反射光の検出結果に基づいて予め取得された第1基準位置と比較することで、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集光部の入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が集光部の入射瞳面の中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができるレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】一実施形態のレーザ加工装置の斜視図である。
【
図2】
図1に示される支持台に取り付けられる対象物の斜視図である。
【
図3】
図1に示されるレーザ出力部の平面図である。
【
図4】
図1に示されるレーザ出力部及びレーザ集光部の斜視図である。
【
図5】
図1に示されるレーザ集光部の断面図である。
【
図6】
図5に示されるVI-VI線に沿ってのレーザ集光部の断面図である。
【
図7】
図6に示されるVII-VII線に沿ってのレーザ集光部の断面図である。
【
図8】
図5に示される空間光変調器の断面図である。
【
図9】
図5に示される空間光変調器、4fレンズユニット及び集光レンズユニットの光学的配置関係を示す図である。
【
図10】
図1に示されるレーザ加工装置の要部の構成図である。
【
図11】対象物におけるレーザ光の集光状態を示す図である。
【
図13】転像位置ずれが生じていない状態を示す図である。
【
図14】転像位置ずれが生じている状態を示す図である。
【
図15】位相パターンの表示位置ごとの点像画像を示す図である。
【
図16】位相パターンの表示位置ごとの点像画像を示す図である。
【
図17】位相パターンの表示位置ごとの点像画像を示す図である。
【
図18】位相パターンの表示位置ごとの点像画像を示す図である。
【
図19】点像画像に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【
図20】点像画像に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【
図21】点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【
図22】位相パターンの表示位置ごとの加工結果を示す図である。
【
図23】位相パターンの表示位置ごとの加工結果を示す図である。
【
図24】位相パターンの表示位置ごとの加工結果を示す図である。
【
図25】点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【
図26】点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、各図において同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
[レーザ加工装置の全体構成]
【0017】
図1に示されるように、レーザ加工装置200は、装置フレーム210と、第1移動機構220と、支持台(支持部)230と、第2移動機構240と、を備えている。更に、レーザ加工装置200は、レーザ出力部300と、レーザ集光部400と、制御部500と、を備えている。以下の説明では、水平面内において互いに直交する方向をX方向及びY方向とし、鉛直方向をZ方向とする。
【0018】
第1移動機構220は、装置フレーム210に取り付けられている。第1移動機構220は、第1レールユニット221と、第2レールユニット222と、可動ベース223と、を有している。第1レールユニット221は、装置フレーム210に取り付けられている。第1レールユニット221には、Y方向に沿って延在する一対のレール221a,221bが設けられている。第2レールユニット222は、Y方向に沿って移動可能となるように、第1レールユニット221の一対のレール221a,221bに取り付けられている。第2レールユニット222には、X方向に沿って延在する一対のレール222a,222bが設けられている。可動ベース223は、X方向に沿って移動可能となるように、第2レールユニット222の一対のレール222a,222bに取り付けられている。可動ベース223は、Z方向に平行な軸線を中心線として回転可能である。
【0019】
支持台230は、可動ベース223に取り付けられている。支持台230は、対象物1を支持する。対象物1は、例えば、シリコン等の半導体材料からなる基板の表面側に複数の機能素子(フォトダイオード等の受光素子、レーザダイオード等の発光素子、又は回路として形成された回路素子等)がマトリックス状に形成されたウェハである。対象物1が支持台230に支持される際には、
図2に示されるように、環状のフレーム11に張られたフィルム12上に、例えば対象物1の表面10a(複数の機能素子側の面)が貼付される。支持台230は、クランプによってフレーム11を保持すると共に真空チャックテーブルによってフィルム12を吸着することで、対象物1を支持する。支持台230上において、対象物1には、互いに平行な複数のライン5a、及び互いに平行な複数のライン5bが、隣り合う機能素子の間を通るように格子状に設定される。複数のライン5a及び複数のライン5bは、対象物1を機能素子ごとに切断するためのラインである。
【0020】
図1に示されるように、支持台230は、第1移動機構220において第2レールユニット222が動作することで、Y方向に沿って移動させられる。また、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、X方向に沿って移動させられる。更に、支持台230は、第1移動機構220において可動ベース223が動作することで、Z方向に平行な軸線を中心線として回転させられる。このように、支持台230は、X方向及びY方向に沿って移動可能となり且つZ方向に平行な軸線を中心線として回転可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
【0021】
レーザ出力部300は、装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部400は、第2移動機構240を介して装置フレーム210に取り付けられている。レーザ集光部400は、第2移動機構240が動作することで、Z方向に沿って移動させられる。このように、レーザ集光部400は、レーザ出力部300に対してZ方向に沿って移動可能となるように、装置フレーム210に取り付けられている。
【0022】
制御部500は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)等によって構成されている。制御部500は、レーザ加工装置200の各部を制御する。
【0023】
一例として、レーザ加工装置200では、次のように、各ライン5a,5b(
図2参照)に沿って対象物1の内部に改質領域が形成される。
【0024】
まず、対象物1の裏面10b(
図2参照)がレーザ光入射面となるように、対象物1が支持台230に支持され、対象物1の各ライン5aがX方向に平行な方向に合わせられる。続いて、対象物1の内部において対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部400が移動させられる。続いて、対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各ライン5aに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各ライン5aに沿って対象物1の内部に改質領域が形成される。
【0025】
各ライン5aに沿っての改質領域の形成が終了すると、第1移動機構220によって支持台230が回転させられ、対象物1の各ライン5bがX方向に平行な方向に合わせられる。続いて、対象物1の内部において対象物1のレーザ光入射面から所定距離だけ離間した位置にレーザ光Lの集光点が位置するように、第2移動機構240によってレーザ集光部400が移動させられる。続いて、対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されつつ、各ライン5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる。これにより、各ライン5bに沿って対象物1の内部に改質領域が形成される。
【0026】
このように、レーザ加工装置200では、X方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。なお、各ライン5aに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各ライン5bに沿ったレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がX方向に沿って移動させられることで、実施される。また、各ライン5a間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動、及び各ライン5b間におけるレーザ光Lの集光点の相対的な移動は、第1移動機構220によって支持台230がY方向に沿って移動させられることで、実施される。
【0027】
図3に示されるように、レーザ出力部300は、取付ベース301と、カバー302と、複数のミラー303,304と、を有している。更に、レーザ出力部300は、レーザ発振器(光源)310と、シャッタ320と、λ/2波長板ユニット330と、偏光板ユニット340と、ビームエキスパンダ350と、ミラーユニット360と、を有している。
【0028】
取付ベース301は、複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を支持している。複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360は、取付ベース301の主面301aに取り付けられている。取付ベース301は、板状の部材であり、装置フレーム210(
図1参照)に対して着脱可能である。レーザ出力部300は、取付ベース301を介して装置フレーム210に取り付けられている。つまり、レーザ出力部300は、装置フレーム210に対して着脱可能である。
【0029】
カバー302は、取付ベース301の主面301a上において、複数のミラー303,304、レーザ発振器310、シャッタ320、λ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340、ビームエキスパンダ350及びミラーユニット360を覆っている。カバー302は、取付ベース301に対して着脱可能である。
【0030】
レーザ発振器310は、直線偏光のレーザ光LをX方向に沿ってパルス発振する。レーザ発振器310から出射されるレーザ光Lの波長は、500~550nm、1000~1150nm又は1300~1400nmのいずれかの波長帯に含まれる。500~550nmの波長帯のレーザ光Lは、例えばサファイアからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。1000~1150nm及び1300~1400nmの各波長帯のレーザ光Lは、例えばシリコンからなる基板に対する内部吸収型レーザ加工に適している。レーザ発振器310から出射されるレーザ光Lの偏光方向は、例えば、Y方向に平行な方向である。レーザ発振器310から出射されたレーザ光Lは、ミラー303によって反射され、Y方向に沿ってシャッタ320に入射する。
【0031】
レーザ発振器310では、次のように、レーザ光Lの出力のON/OFFが切り替えられる。レーザ発振器310が固体レーザで構成されている場合、共振器内に設けられたQスイッチ(AOM(音響光学変調器)、EOM(電気光学変調器)等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。レーザ発振器310がファイバレーザで構成されている場合、シードレーザ、アンプ(励起用)レーザを構成する半導体レーザの出力のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。レーザ発振器310が外部変調素子を用いている場合、共振器外に設けられた外部変調素子(AOM、EOM等)のON/OFFが切り替えられることで、レーザ光Lの出力のON/OFFが高速に切り替えられる。
【0032】
シャッタ320は、機械式の機構によってレーザ光Lの光路を開閉する。レーザ出力部300からのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えは、上述したように、レーザ発振器310でのレーザ光Lの出力のON/OFFの切り替えによって実施されるが、シャッタ320が設けられていることで、例えばレーザ出力部300からレーザ光Lが不意に出射されることが防止される。シャッタ320を通過したレーザ光Lは、ミラー304によって反射され、X方向に沿ってλ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340に順次入射する。
【0033】
λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの出力(光強度)を調整する出力調整部として機能する。また、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部として機能する。λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を順次通過したレーザ光Lは、X方向に沿ってビームエキスパンダ350に入射する。
【0034】
ビームエキスパンダ350は、レーザ光Lの径を調整しつつ、レーザ光Lを平行化する。ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光Lは、X方向に沿ってミラーユニット360に入射する。
【0035】
ミラーユニット360は、支持ベース361と、複数のミラー362,363と、を有している。支持ベース361は、複数のミラー362,363を支持している。支持ベース361は、X方向及びY方向に沿って位置調整可能となるように、取付ベース301に取り付けられている。ミラー362は、ビームエキスパンダ350を通過したレーザ光LをY方向に反射する。ミラー362は、その反射面が例えばZ方向に平行な軸線回りに角度調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。ミラー363は、ミラー362によって反射されたレーザ光LをZ方向に反射する。ミラー363は、その反射面が例えばX方向に平行な軸線回りに角度調整可能となり且つY方向に沿って位置調整可能となるように、支持ベース361に取り付けられている。ミラー363によって反射されたレーザ光Lは、支持ベース361に形成された開口361aを通過し、Z方向に沿ってレーザ集光部400(
図1参照)に入射する。つまり、レーザ出力部300によるレーザ光Lの出射方向は、レーザ集光部400の移動方向に一致している。上述したように、各ミラー362,363は、反射面の角度を調整するための機構を有している。ミラーユニット360では、取付ベース301に対する支持ベース361の位置調整、支持ベース361に対するミラー363の位置調整、及び各ミラー362,363の反射面の角度調整が実施されることで、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸の位置及び角度がレーザ集光部400に対して合わされる。つまり、複数のミラー362,363は、レーザ出力部300から出射されるレーザ光Lの光軸を調整するための構成である。
【0036】
図4に示されるように、レーザ集光部400は、筐体401を有している。筐体401は、Y方向を長手方向とする直方体状の形状を呈している。筐体401の一方の側面401eには、第2移動機構240が取り付けられている(
図5及び
図7参照)。筐体401には、ミラーユニット360の開口361aとZ方向において対向するように、円筒状の光入射部401aが設けられている。光入射部401aは、レーザ出力部300から出射されたレーザ光Lを筐体401内に入射させる。ミラーユニット360と光入射部401aとは、第2移動機構240によってレーザ集光部400がZ方向に沿って移動させられた際に互いに接触することがない距離だけ、互いに離間している。
【0037】
図5及び
図6に示されるように、レーザ集光部400は、ミラー402と、ダイクロイックミラー403と、を有している。更に、レーザ集光部400は、空間光変調器410と、4fレンズユニット(転像部)420と、集光レンズユニット(集光部)430と、駆動機構440と、一対の測距センサ450と、を有している。
【0038】
ミラー402は、光入射部401aとZ方向において対向するように、筐体401の底面401bに取り付けられている。ミラー402は、光入射部401aを介して筐体401内に入射したレーザ光LをXY平面に平行な方向に反射する。ミラー402には、レーザ出力部300のビームエキスパンダ350によって平行化されたレーザ光LがZ方向に沿って入射する。つまり、ミラー402には、レーザ光Lが平行光としてZ方向に沿って入射する。そのため、第2移動機構240によってレーザ集光部400がZ方向に沿って移動させられても、Z方向に沿ってミラー402に入射するレーザ光Lの状態は一定に維持される。ミラー402によって反射されたレーザ光Lは、空間光変調器410に入射する。
【0039】
空間光変調器410は、反射面410aが筐体401内に臨んだ状態で、Y方向における筐体401の端部401cに取り付けられている。空間光変調器410は、例えば反射型液晶(LCOS:Liquid Crystal on Silicon)の空間光変調器(SLM:Spatial Light Modulator)であり、レーザ光Lを変調しつつ、レーザ光LをY方向に反射する。空間光変調器410によって変調されると共に反射されたレーザ光Lは、Y方向に沿って4fレンズユニット420に入射する。ここで、XY平面に平行な平面内において、空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とが成す角度αは、鋭角(例えば、10~60°)とされている。つまり、レーザ光Lは、空間光変調器410においてXY平面に沿って鋭角に反射される。これは、レーザ光Lの入射角及び反射角を抑えて回折効率の低下を抑制し、空間光変調器410の性能を十分に発揮させるためである。なお、空間光変調器410では、例えば、液晶が用いられた光変調層の厚さが数μm~数十μm程度と極めて薄いため、反射面410aは、光変調層の光入出射面と実質的に同じと捉えることができる。
【0040】
4fレンズユニット420は、ホルダ421と、空間光変調器410側のレンズ422と、集光レンズユニット430側のレンズ423と、スリット部材424と、を有している。ホルダ421は、一対のレンズ422,423及びスリット部材424を保持している。ホルダ421は、レーザ光Lの光軸に沿った方向における一対のレンズ422,423及びスリット部材424の互いの位置関係を一定に維持している。一対のレンズ422,423は、空間光変調器410の反射面410aと集光レンズユニット430の入射瞳面430aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの像(空間光変調器410において変調されたレーザ光Lの像)が、集光レンズユニット430の入射瞳面430aに転像(結像)される。スリット部材424には、スリット424aが形成されている。スリット424aは、レンズ422とレンズ423との間であって、レンズ422の焦点面付近に位置している。空間光変調器410によって変調されると共に反射されたレーザ光Lのうち不要な部分は、スリット部材424によって遮断される。4fレンズユニット420を通過したレーザ光Lは、Y方向に沿ってダイクロイックミラー403に入射する。
【0041】
ダイクロイックミラー403は、レーザ光Lの一部(例えば、95~99.5%)をZ方向に反射し、レーザ光Lの残部(例えば、0.5~5%)をY方向に沿って透過させる。レーザ光Lの一部は、ダイクロイックミラー403においてYZ平面に沿って直角に反射される。ダイクロイックミラー403によって反射されたレーザ光Lは、Z方向に沿って集光レンズユニット430に入射する。
【0042】
集光レンズユニット430は、Y方向における筐体401の端部401d(端部401cとは反対側の端部)に、駆動機構440を介して取り付けられている。集光レンズユニット430は、ホルダ431と、複数のレンズ432と、を有している。ホルダ431は、複数のレンズ432を保持している。複数のレンズ432は、支持台230に支持された対象物1(
図1参照)に対してレーザ光Lを集光する。駆動機構440は、圧電素子の駆動力によって、集光レンズユニット430をZ方向に沿って移動させる。
【0043】
一対の測距センサ450は、X方向において集光レンズユニット430の両側に位置するように、筐体401の端部401dに取り付けられている。各測距センサ450は、支持台230に支持された対象物1(
図1参照)のレーザ光入射面に対して測距用の光(例えば、レーザ光)を出射し、当該レーザ光入射面によって反射された測距用の光を検出することで、対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。なお、測距センサ450には、三角測距方式、レーザ共焦点方式、白色共焦点方式、分光干渉方式、非点収差方式等のセンサを利用することができる。
【0044】
レーザ加工装置200では、上述したように、X方向に平行な方向が加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)とされている。そのため、各ライン5a,5bに沿ってレーザ光Lの集光点が相対的に移動させられる際に、一対の測距センサ450のうち集光レンズユニット430に対して相対的に先行する測距センサ450が、各ライン5a,5bに沿った対象物1のレーザ光入射面の変位データを取得する。そして、対象物1のレーザ光入射面とレーザ光Lの集光点との距離が一定に維持されるように、駆動機構440が、測距センサ450によって取得された変位データに基づいて集光レンズユニット430をZ方向に沿って移動させる。
【0045】
レーザ集光部400は、ビームスプリッタ461と、一対のレンズ462,463と、プロファイル取得用カメラ464と、を有している。ビームスプリッタ461は、ダイクロイックミラー403を透過したレーザ光Lを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ461によって反射されたレーザ光Lは、Z方向に沿って一対のレンズ462,463及びプロファイル取得用カメラ464に順次入射する。一対のレンズ462,463は、集光レンズユニット430の入射瞳面430aとプロファイル取得用カメラ464の撮像面とが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。これにより、集光レンズユニット430の入射瞳面430aでのレーザ光Lの像が、プロファイル取得用カメラ464の撮像面に転像(結像)される。上述したように、集光レンズユニット430の入射瞳面430aでのレーザ光Lの像は、空間光変調器410において変調されたレーザ光Lの像である。したがって、レーザ加工装置200では、プロファイル取得用カメラ464による撮像結果を監視することで、空間光変調器410の動作状態を把握することができる。
【0046】
更に、レーザ集光部400は、ビームスプリッタ471と、レンズ472と、光軸位置モニタ用カメラ473と、を有している。ビームスプリッタ471は、ビームスプリッタ461を透過したレーザ光Lを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ471によって反射されたレーザ光Lは、Z方向に沿ってレンズ472及び光軸位置モニタ用カメラ473に順次入射する。レンズ472は、入射したレーザ光Lを光軸位置モニタ用カメラ473の撮像面上に集光する。レーザ加工装置200では、プロファイル取得用カメラ464及び光軸位置モニタ用カメラ473のそれぞれによる撮像結果を監視しつつ、ミラーユニット360において、取付ベース301に対する支持ベース361の位置調整、支持ベース361に対するミラー363の位置調整、及び各ミラー362,363の反射面の角度調整を実施することで(
図9及び
図10参照)、集光レンズユニット430に入射するレーザ光Lの光軸のずれ(集光レンズユニット430に対するレーザ光の強度分布の位置ずれ、及び集光レンズユニット430に対するレーザ光Lの光軸の角度ずれ)を補正することができる。
【0047】
複数のビームスプリッタ461,471は、筐体401の端部401dからY方向に沿って延在する筒体404内に配置されている。一対のレンズ462,463は、Z方向に沿って筒体404上に立設された筒体405内に配置されており、プロファイル取得用カメラ464は、筒体405の端部に配置されている。レンズ472は、Z方向に沿って筒体404上に立設された筒体406内に配置されており、光軸位置モニタ用カメラ473は、筒体406の端部に配置されている。筒体405と筒体406とは、Y方向において互いに並設されている。なお、ビームスプリッタ471を透過したレーザ光Lは、筒体404の端部に設けられたダンパ等に吸収されるようにしてもよいし、或いは、適宜の用途で利用されるようにしてもよい。
【0048】
図6及び
図7に示されるように、レーザ集光部400は、可視光源481と、複数のレンズ482と、レチクル483と、ミラー484と、ハーフミラー485と、ビームスプリッタ486と、レンズ487と、観察用カメラ(光検出器)488と、を有している。可視光源481は、Z方向に沿って可視光Vを出射する。複数のレンズ482は、可視光源481から出射された可視光Vを平行化する。レチクル483は、可視光Vにレチクルマークを付与する。ミラー484は、複数のレンズ482によって平行化された可視光VをX方向に反射する。ハーフミラー485は、ミラー484によって反射された可視光Vを反射成分と透過成分とに分ける。ハーフミラー485によって反射された可視光Vは、Z方向に沿ってビームスプリッタ486及びダイクロイックミラー403を順次透過し、集光レンズユニット430を介して、支持台230に支持された対象物1(
図1参照)に照射される。
【0049】
対象物1に照射された可視光Vは、対象物1のレーザ光入射面によって反射され、集光レンズユニット430を介してダイクロイックミラー403に入射し、Z方向に沿ってダイクロイックミラー403を透過する。ビームスプリッタ486は、ダイクロイックミラー403を透過した可視光Vを反射成分と透過成分とに分ける。ビームスプリッタ486を透過した可視光Vは、ハーフミラー485を透過し、Z方向に沿ってレンズ487及び観察用カメラ488に順次入射する。レンズ487は、入射した可視光Vを観察用カメラ488の撮像面上に集光する。レーザ加工装置200では、観察用カメラ488による撮像結果を観察することで、対象物1の状態を把握することができる。
【0050】
ミラー484、ハーフミラー485及びビームスプリッタ486は、筐体401の端部401d上に取り付けられたホルダ407内に配置されている。複数のレンズ482及びレチクル483は、Z方向に沿ってホルダ407上に立設された筒体408内に配置されており、可視光源481は、筒体408の端部に配置されている。レンズ487は、Z方向に沿ってホルダ407上に立設された筒体409内に配置されており、観察用カメラ488は、筒体409の端部に配置されている。筒体408と筒体409とは、X方向において互いに並設されている。なお、X方向に沿ってハーフミラー485を透過した可視光V、及びビームスプリッタ486によってX方向に反射された可視光Vは、それぞれ、ホルダ407の壁部に設けられたダンパ等に吸収されるようにしてもよいし、或いは、適宜の用途で利用されるようにしてもよい。
【0051】
レーザ加工装置200では、レーザ出力部300の交換が想定されている。これは、対象物1の仕様、加工条件等に応じて、加工に適したレーザ光Lの波長が異なるからである。そのため、出射するレーザ光Lの波長が互いに異なる複数のレーザ出力部300が用意される。ここでは、出射するレーザ光Lの波長が500~550nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300、出射するレーザ光Lの波長が1000~1150nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300、及び出射するレーザ光Lの波長が1300~1400nmの波長帯に含まれるレーザ出力部300が用意される。
【0052】
一方、レーザ加工装置200では、レーザ集光部400の交換が想定されていない。これは、レーザ集光部400がマルチ波長に対応している(互いに連続しない複数の波長帯に対応している)からである。具体的には、ミラー402、空間光変調器410、4fレンズユニット420の一対のレンズ422,423、ダイクロイックミラー403、及び集光レンズユニット430のレンズ432等がマルチ波長に対応している。ここでは、レーザ集光部400は、500~550nm、1000~1150nm及び1300~1400nmの波長帯に対応している。これは、レーザ集光部400の各構成に所定の誘電体多層膜をコーティングすること等、所望の光学性能が満足されるようにレーザ集光部400の各構成が設計されることで実現される。なお、レーザ出力部300において、λ/2波長板ユニット330はλ/2波長板を有しており、偏光板ユニット340は偏光板を有している。λ/2波長板及び偏光板は、波長依存性が高い光学素子である。そのため、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340は、波長帯ごとに異なる構成としてレーザ出力部300に設けられている。
[レーザ加工装置におけるレーザ光の光路及び偏光方向]
【0053】
レーザ加工装置200では、支持台230に支持された対象物1に対して集光されるレーザ光Lの偏光方向は、
図5に示されるように、X方向に平行な方向であり、加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)に一致している。ここで、空間光変調器410では、レーザ光LがP偏光として反射される。これは、空間光変調器410の光変調層に液晶が用いられている場合において、空間光変調器410に対して入出射するレーザ光Lの光軸を含む平面に平行な面内で液晶分子が傾斜するように、当該液晶が配向されているときには、偏波面の回転が抑制された状態でレーザ光Lに位相変調が施されるからである。一方、ダイクロイックミラー403では、レーザ光LがS偏光として反射される。これは、レーザ光LをP偏光として反射させるよりも、レーザ光LをS偏光として反射させたほうが、ダイクロイックミラー403をマルチ波長に対応させるための誘電体多層膜のコーティング数が減少する等、ダイクロイックミラー403の設計が容易となるからである。
【0054】
したがって、レーザ集光部400では、ミラー402から空間光変調器410及び4fレンズユニット420を介してダイクロイックミラー403に至る光路が、XY平面に沿うように設定されており、空間光変調器410から4fレンズユニット420及びダイクロイックミラー403を介して集光レンズユニット430に至る光路が、YZ平面に沿うように設定されている。
【0055】
図3に示されるように、レーザ出力部300では、レーザ光Lの光路がX方向又はY方向に沿うように設定されている。具体的には、レーザ発振器310からミラー303に至る光路、並びに、ミラー304からλ/2波長板ユニット330、偏光板ユニット340及びビームエキスパンダ350を介してミラーユニット360に至る光路が、X方向に沿うように設定されており、ミラー303からシャッタ320を介してミラー304に至る光路、及び、ミラーユニット360においてミラー362からミラー363に至る光路が、Y方向に沿うように設定されている。
【0056】
ここで、Z方向に沿ってレーザ出力部300からレーザ集光部400に進行したレーザ光Lは、
図5に示されるように、ミラー402によってXY平面に平行な方向に反射され、空間光変調器410に入射する。このとき、XY平面に平行な平面内において、空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とは、鋭角である角度αをなしている。一方、上述したように、レーザ出力部300では、レーザ光Lの光路がX方向又はY方向に沿うように設定されている。
【0057】
したがって、レーザ出力部300において、λ/2波長板ユニット330及び偏光板ユニット340を、レーザ光Lの出力を調整する出力調整部としてだけでなく、レーザ光Lの偏光方向を調整する偏光方向調整部としても機能させる必要がある。
[空間光変調器]
【0058】
図8に示されるように、空間光変調器410は、シリコン基板213、駆動回路層914、複数の画素電極214、誘電体多層膜ミラー等の反射膜215、配向膜999a、液晶層216、配向膜999b、透明導電膜217、及びガラス基板等の透明基板218がこの順に積層されることで構成されている。
【0059】
透明基板218は、空間光変調器410の反射面410aを構成する表面218aを有している。透明基板218は、例えばガラス等の光透過性材料からなり、空間光変調器410の表面218aから入射した所定波長のレーザ光Lを、空間光変調器410の内部へ透過する。透明導電膜217は、透明基板218の裏面上に形成されており、レーザ光Lを透過する導電性材料(例えばITO)からなる。
【0060】
複数の画素電極214は、透明導電膜217に沿ってシリコン基板213上にマトリックス状に配列されている。各画素電極214は、例えばアルミニウム等の金属材料からなり、これらの表面214aは、平坦且つ滑らかに加工されている。複数の画素電極214は、駆動回路層914に設けられたアクティブ・マトリクス回路によって駆動される。アクティブ・マトリクス回路は、空間光変調器410から出力しようとする光像に応じて、各画素電極214に印加する電圧を制御する。
【0061】
配向膜999a,999bは、液晶層216の両端面に配置されており、液晶分子群を一定方向に配列させる。配向膜999a,999bは、例えばポリイミド等の高分子材料からなり、液晶層216との接触面にラビング処理等が施されている。
【0062】
液晶層216は、複数の画素電極214と透明導電膜217との間に配置されており、各画素電極214と透明導電膜217とにより形成される電界に応じてレーザ光Lを変調する。すなわち、駆動回路層914のアクティブ・マトリクス回路によって各画素電極214に電圧が印加されると、透明導電膜217と各画素電極214との間に電界が形成され、液晶層216に形成された電界の大きさに応じて液晶分子216aの配列方向が変化する。そして、レーザ光Lが透明基板218及び透明導電膜217を透過して液晶層216に入射すると、レーザ光Lは、液晶層216を通過する間に液晶分子216aによって変調され、反射膜215よって反射された後、再び液晶層216によって変調されて、出射する。
【0063】
このとき、制御部500(
図1参照)によって各画素電極214に印加される電圧が制御され、その電圧に応じて、液晶層216において透明導電膜217と各画素電極214とに挟まれた部分の屈折率が変化する(各画素電極214に対応した位置の液晶層216の屈折率が変化する)。この屈折率の変化によって、レーザ光Lの位相を液晶層216の画素電極214ごとに変化させることができる。つまり、ホログラムパターンに応じた位相変調を液晶層216の画素電極214ごとにレーザ光Lに付与することができる。換言すると、空間光変調器410は、ホログラムパターンとしての位相パターンを液晶層216に表示する。この位相パターンによってレーザ光Lの波面が調整され、レーザ光Lを構成する各光線において進行方向に垂直な所定方向の成分の位相にずれが生じる。したがって、空間光変調器410に表示させる位相パターンを適宜設定することで、レーザ光Lを変調することができる(例えば、レーザ光Lの強度、振幅、位相、偏光等を変調することができる)。
[4fレンズユニット]
【0064】
上述したように、4fレンズユニット420の一対のレンズ422,423は、空間光変調器410の反射面410aと集光レンズユニット430の入射瞳面430aとが結像関係にある両側テレセントリック光学系を構成している。具体的には、
図9に示されるように、空間光変調器410側のレンズ422の中心と空間光変調器410の反射面410aとの間の光路の距離がレンズ422の第1焦点距離f1となり、集光レンズユニット430側のレンズ423の中心と集光レンズユニット430の入射瞳面430aとの間の光路の距離がレンズ423の第2焦点距離f2となり、レンズ422の中心とレンズ423の中心との間の光路の距離が第1焦点距離f1と第2焦点距離f2との和(すなわち、f1+f2)となっている。空間光変調器410から集光レンズユニット430に至る光路のうち一対のレンズ422,423間の光路は、一直線である。
【0065】
レーザ加工装置200では、空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径を大きくする観点から、両側テレセントリック光学系の倍率Mが、0.5<M<1(縮小系)を満たしている。空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径が大きいほど、高精細な位相パターンでレーザ光Lが変調される。空間光変調器410から集光レンズユニット430に至るレーザ光Lの光路が長くなるのを抑制するという観点では、0.6≦M≦0.95であることがより好ましい。ここで、(両側テレセントリック光学系の倍率M)=(集光レンズユニット430の入射瞳面430aでの像の大きさ)/(空間光変調器410の反射面410aでの物体の大きさ)である。レーザ加工装置200の場合、両側テレセントリック光学系の倍率M、レンズ422の第1焦点距離f1及びレンズ423の第2焦点距離f2が、M=f2/f1を満たしている。
【0066】
なお、空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径を小さくする観点から、両側テレセントリック光学系の倍率Mが、1<M<2(拡大系)を満たしていてもよい。空間光変調器410の反射面410aでのレーザ光Lの有効径が小さいほど、ビームエキスパンダ350(
図3参照)の倍率が小さくて済み、XY平面に平行な平面内において、空間光変調器410に入射するレーザ光Lの光軸と、空間光変調器410から出射されるレーザ光Lの光軸とが成す角度α(
図5参照)が小さくなる。空間光変調器410から集光レンズユニット430に至るレーザ光Lの光路が長くなるのを抑制するという観点では、1.05≦M≦1.7であることがより好ましい。
[レーザ加工装置の要部構成]
【0067】
図10は、
図1に示されるレーザ加工装置200の要部の構成図である。
図10に示されるように、レーザ加工装置200は、支持台(支持部)230と、レーザ発振器(光源)310と、空間光変調器410と、集光レンズユニット(集光部)430と、4fレンズユニット(転像部)420と、観察用カメラ(光検出器)488と、制御部500と、表示部600と、を備えている。支持台230は、対向する第1面1a及び第2面1bを有する対象物1を支持する。レーザ発振器310は、レーザ光Lを出射する。空間光変調器410は、レーザ発振器310から出射されたレーザ光Lを変調する。集光レンズユニット430は、空間光変調器410によって変調されたレーザ光Lを第1面1a側から対象物1に集光する。4fレンズユニット420は、空間光変調器410におけるレーザ光Lの像を集光レンズユニット430の入射瞳面430aに転像する。観察用カメラ488は、第1面1a側から対象物1に入射して第2面1bで反射されたレーザ光Lの反射光RLを検出する。制御部500は、空間光変調器410を含むレーザ加工装置200の各部を制御する。表示部600は、例えばGUI(Graphical User Interface)であり、各種情報を表示する。表示部600は、後述する基準値の確認時に、反射光RLの検出結果を表示する。
【0068】
空間光変調器410で反射されたレーザ光Lは、4fレンズユニット420のリレーレンズであるレンズ422で集束された後、4fレンズユニット420のリレーレンズであるレンズ423でコリメートされて、ダイクロイックミラー403に入射する。ダイクロイックミラー403で反射されたレーザ光Lは、集光レンズユニット430に入射し、集光レンズユニット430によって第1面1a側から対象物1に集光される。
【0069】
集光レンズユニット430から出射されたレーザ光Lは、第1面1aから第2面1bに向かって対象物1中を進行し、第2面1bで反射される。第2面1bで反射されたレーザ光Lの反射光RLは、第2面1bから第1面1aに向かって対象物1中を進行し、第1面1aから出射される。第1面1aから出射された反射光RLは、ダイクロイックミラー403を透過した後、レンズ487を介して観察用カメラ488に入射する。
【0070】
本実施形態では、観察用カメラ488は、反射光RLの点像(ビームスポット、集光スポット、第2面1bでの反射像とも称される)を含む画像である点像画像を取得する撮像部である。観察用カメラ488は、取得した点像画像を制御部500に出力する。
【0071】
制御部500は、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が集光レンズユニット430の光軸に垂直なX方向(集光部の光軸の方向と交差する第1方向)において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって点像画像が取得される際に(光検出器によって反射光が検出される際に)、次のように空間光変調器410を制御する。すなわち、制御部500は、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいて集光レンズユニット430の光軸に垂直且つX方向に垂直なY方向(集光部の光軸の方向及び第1方向と交差する第2方向)にコマ収差が発生するように、空間光変調器410を制御する。
【0072】
制御部500は、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって点像画像が取得される際に、次のように空間光変調器410を制御する。すなわち、制御部500は、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410を制御する。
【0073】
ここで、所定距離dは、第1面1aと第2面1bとの距離tよりも大きい値である。本実施形態では、所定距離dは、(2t-0.1t)≦d≦(2t+0.1t)を満たすように設定される。なお、第1面1aが対象物1におけるレーザ光Lの入射側の外表面であり、第2面1bが対象物1における第1面1aとは反対側の外表面である場合には、第1面1aと第2面1bとの距離tは、対象物1の厚さに相当する。ここでは、集光レンズユニット430によって集光されるレーザ光Lに十分な球面収差が発生し得る厚さを有する対象物1(例えば、775μm程度の厚さを有するシリコンウェハ)が用いられる。
【0074】
レーザ加工装置200において、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かの確認(以下、「転像位置の確認」という)が実施されるのは、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置からずれていると、所望の加工品質を得ることができないおそれがあるからである。制御部500は、定期的に転像位置の確認を実施し、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致するように、空間光変調器410における位相パターンの表示位置の基準である基準位置(以下、単に「基準位置」という)を設定する。転像位置の確認の詳細については、後述する。
[基準位置の設定に関する原理]
【0075】
転像位置の確認の説明に先立って、基準位置の設定に関する原理について説明する。なお、空間光変調器410における位相パターンの表示位置を示す二次元座標系は、レーザ加工装置200における各部の空間的な位置を示す三次元座標系とは必ずしも一致しない。ただし、以下の説明では、便宜上、上記三次元座標系のX軸に相当する上記二次元座標系の軸を同様にX軸と捉え、上記三次元座標系のY軸に相当する上記二次元座標系の軸を同様にY軸と捉える。上記三次元座標系のX軸に相当する上記二次元座標系の軸とは、上記二次元座標系の第1軸に平行な方向に沿って+側(又は-側)に位相パターンが移動すると、上記三次元座標系のX方向に沿って+側(又は-側)に「入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像」が移動する場合における当該第1軸を意味する。上記三次元座標系のY軸に相当する上記二次元座標系の軸とは、上記二次元座標系の第2軸に平行な方向に沿って+側(又は-側)に位相パターンが移動すると、上記三次元座標系のY方向に沿って+側(又は-側)に「入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像」が移動する場合における当該第2軸を意味する。
【0076】
図11は、対象物1におけるレーザ光Lの集光状態を示す図である。
図11の(a)、(b)及び(c)のそれぞれに示される集光状態は、集光レンズユニット430の焦点が第2面1bに位置している場合のものである。
図12は、観察用カメラ488によって取得された点像画像を示す図である。
図12の(a)、(b)及び(c)のそれぞれに示される点像画像は、
図11の(a)、(b)及び(c)のそれぞれに示される集光状態において取得されたものである。
図11の(a)及び
図12の(a)では、球面収差が空間光変調器410によって補正されていない。
図11の(b)及び
図12の(b)では、レーザ光Lが第1面1aから距離t(tは、第1面1aと第2面1bとの距離)だけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が空間光変調器410によって補正されている。
図11の(c)及び
図12の(c)では、レーザ光Lが第1面1aから距離2tだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が空間光変調器410によって補正されている。
【0077】
図11の(a)に示されるように、球面収差が空間光変調器410によって補正されていない場合には、レーザ光Lの外周成分がレーザ光Lの内周成分よりも深い領域に集光される。
図11の(b)に示されるように、レーザ光Lが第1面1aから距離tだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が空間光変調器410によって補正されている場合には、レーザ光Lの全成分が第2面1b上の領域に集光される。そのため、第2面1bで反射されて対象物1中を更に進行して第1面1aから出射された反射光RLは、レンズ487によって集光されても、観察用カメラ488の撮像面上においてぼやけてしまう。その結果、
図12の(a)及び(b)に示されるように、観察用カメラ488によって取得された画像では、十分な明度及び大きさ等を有する反射光RLの点像を確認することができない。
【0078】
一方、
図11の(c)に示されるように、レーザ光Lが第1面1aから距離2tだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が空間光変調器410によって補正されている場合には、レーザ光Lの外周成分がレーザ光Lの内周部分よりも浅い領域に集光される。そのため、第2面1bで反射されて対象物1中を更に進行して第1面1aから出射された反射光RLは、レンズ487によって集光されると、観察用カメラ488の撮像面上の領域に集光される。その結果、
図12の(c)に示されるように、観察用カメラ488によって取得された画像では、十分な明度及び大きさ等を有する反射光RLの点像を確認することができる。
【0079】
図13は、転像位置ずれが生じていない状態(すなわち、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致している状態)を示す図である。
図14は、転像位置ずれが生じている状態(すなわち、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置からずれている状態)を示す図である。
【0080】
図13に示されるように、転像位置ずれが生じていない状態では、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像39の中心位置C1が、入射瞳面430aの中心位置C2に一致している。このとき、空間光変調器410が液晶層216に表示している位相パターン9の中心位置C3は、基準位置である液晶層216の光軸中心C4に一致している。
【0081】
一方、
図14に示されるように、転像位置ずれが生じている状態では、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像39の中心位置C1が、入射瞳面430aの中心位置C2からずれている。このとき、空間光変調器410が液晶層216に表示している位相パターン9の中心位置C3は、基準位置である液晶層216の光軸中心C4からずれている。換言すれば、位相パターン9の中心位置C3が、基準位置である液晶層216の光軸中心C4からずれた状態で、位相パターン9が液晶層216に表示されると、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像39の中心位置C1が、入射瞳面430aの中心位置C2からずれ、意図しないコマ収差が発生することになる。例えば、位相パターン9の中心位置C3が液晶層216の光軸中心C4から1ピクセル分だけ、すなわち、一つの画素電極214(
図8参照)分だけずれると、20μm程度の転像位置ずれが生じる場合があり、加工品質に影響が及ぶおそれがある。
【0082】
図15は、位相パターンの表示位置ごとの点像画像を示す図である。点像画像G0は、位相パターンの中心位置が基準位置に一致した状態で液晶層216に表示された場合に取得された点像画像である。点像画像G1は、位相パターンの中心位置が基準位置からX方向に沿って-側に1ピクセル分ずれた状態で液晶層216に表示された場合に取得された点像画像である。点像画像G2は、位相パターンの中心位置が基準位置からX方向に沿って+側に1ピクセル分ずれた状態で液晶層216に表示された場合に取得された点像画像である。点像画像G3は、位相パターンの中心位置が基準位置からY方向に沿って-側に1ピクセル分ずれた状態で液晶層216に表示された場合に取得された点像画像である。点像画像G4は、位相パターンの中心位置が基準位置からY方向に沿って+側に1ピクセル分ずれた状態で液晶層216に表示された場合に取得された点像画像である。つまり、点像画像G0は、転像位置ずれが生じていない状態で取得された点像画像であり、点像画像G1,G2,G3,G4は、転像位置ずれが生じている状態で取得された点像画像である。
【0083】
図15に示されるように、転像位置ずれが生じている状態で取得された点像画像G1,G2,G3,G4では、意図しないコマ収差の発生に起因して、点像が回転対称の光学像となっていない。例えば、点像画像G1,G2,G3,G4では、点像が偏心していたり、外側に円弧状の像EZが生じていたり、周方向において一部分が他部分よりも大きくぼやけていたりする。一方、転像位置ずれが生じていない状態で取得された点像画像G0では、点像が回転対称の光学像となっている。
【0084】
なお、回転対称とは、ある点を中心として360/n°(nは2以上の整数)回転させると自らと重なる対称性を意味する。回転対称の点像は、完全な回転対称のものに加え、略回転対称のものを含む。回転対称の点像は、偏心していない点像、外周側に円弧状の像EZが生じていない点像、周方向において一部分が他部分よりも大きくぼやけていない点像、及び、これらの少なくともいずれかを含む点像である。
【0085】
図16は、位相パターンの表示位置ごとの点像画像(
図15とは別の例)を示す図である。
図16に示されるX方向の数字のうち、「0」は、位相パターンの中心位置がX方向において基準位置に一致していることを表し、「-2」、「-1」、「1」、「2」は、位相パターンの中心位置がX方向において基準位置から「-側に2ピクセル分」、「-側に1ピクセル分」、「+側に1ピクセル分」、「+側に2ピクセル分」ずれていることを表している。
図16に示されるY方向の数字のうち、「0」は、位相パターンの中心位置がY方向において基準位置に一致していることを表し、「-2」、「-1」、「1」、「2」は、位相パターンの中心位置がY方向において基準位置から「-側に2ピクセル分」、「-側に1ピクセル分」、「+側に1ピクセル分」、「+側に2ピクセル分」ずれていることを表している。
図16には、転像位置ずれが生じていない状態での点像、転像位置ずれが生じていない状態からX方向のみに転像位置ずれが生じている状態での点像、及び転像位置ずれが生じていない状態からY方向のみに転像位置ずれが生じている状態での点像が示されている。
【0086】
図16に示されるように、X方向にもY方向にも転像位置ずれが生じていない状態での点像は、回転対称の光学像となっている。それに対し、X方向又はY方向に転像位置ずれが生じている状態での点像は、回転対称の光学像となっていない。更に、基準位置からの位相パターンの中心位置のずれ量が大きくなるほど(すなわち、転像位置ずれのずれ量が大きくなるほど)、回転対象の光学像からの乖離が大きくなっている。
[転像位置の確認]
【0087】
以上の基準位置の設定に関する原理を前提として、レーザ加工装置200では、転像位置の確認(すなわち、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かの確認)が実施される。以下、転像位置の確認について詳細に説明する。
【0088】
上述したように、制御部500は、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって点像画像が取得される際に、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410を制御する。また、制御部500は、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって点像画像が取得される際に、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410を制御する。
【0089】
レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410が制御されると、
図17に示されるように、反射光RLの点像が明確に現れると共にX方向における一方の側に扇状の像が明確に現れる。レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致してる状態で取得された「
図17の中央に示される点像画像」では、扇状の像がX方向に関して対称(すなわち、X方向に平行な直線に関して線対称)となる。レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から+側にずれている状態で取得された「
図17の上側に示される点像画像」では、扇状の像がY方向における一方の側に傾いており、X方向に関して対称とはならない。レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から-側にずれている状態で取得された「
図17の下側に示される点像画像」では、扇状の像がY方向における他方の側に傾いており、X方向に関して対称とはならない。以上のように、X方向における一方の側に現れる扇状の像によって、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かの確認が容易になるため、Y方向における転像位置ずれの確認の際に、X方向へのコマ収差が付与される。
【0090】
レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410が制御されると、
図18に示されるように、反射光RLの点像が明確に現れると共にY方向における一方の側に扇状の像が明確に現れる。レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致してる状態で取得された「
図18の中央に示される点像画像」では、扇状の像がY方向に関して対称(すなわち、Y方向に平行な直線に関して線対称)となる。レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置から+側にずれている状態で取得された「
図18の右側に示される点像画像」では、扇状の像がX方向における一方の側に傾いており、Y方向に関して対称とはならない。レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置から-側にずれている状態で取得された「
図18の左側に示される点像画像」では、扇状の像がX方向における他方の側に傾いており、Y方向に関して対称とはならない。以上のように、Y方向における一方の側に現れる扇状の像によって、レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かの確認が容易になるため、X方向における転像位置ずれの確認の際に、Y方向へのコマ収差が付与される。
[点像画像に基づく基準位置の設定方法]
【0091】
レーザ加工装置200において実施される一実施形態のレーザ加工方法である「点像画像に基づく基準位置の設定方法」について、
図10、
図19及び
図20を参照して説明する。
図19及び
図20は、点像画像に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【0092】
まず、対象物1が支持台230にセットされる(ステップS01)。この対象物1は、基準位置の設定用に用意されたものであり、例えば、第1面1a及び第2面1bが鏡面であり且つ抵抗率が1Ω・cm以上であるウェハである。続いて、Z方向において集光レンズユニット430が対象物1に対向するように、支持台230がX方向及びY方向に移動させられる(ステップS02)。X方向及びY方向への支持台230の移動は、制御部500による第1移動機構220(
図1参照)の制御によって実施される。続いて、集光レンズユニット430の焦点が対象物1の第2面1b上に位置するように、集光レンズユニット430がZ方向に移動させられる(ステップS03)。Z方向への集光レンズユニット430の移動は、制御部500による第2移動機構240(
図1参照)の制御によって実施される。
【0093】
続いて、制御部500が、球面収差補正パターンを空間光変調器410に表示させ(ステップS04)、更に、X方向コマ収差付与パターンを空間光変調器410に表示させる(ステップS05)。球面収差補正パターンは、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差を補正するための位相パターンである。X方向コマ収差付与パターンは、入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差を発生させるための位相パターンである。続いて、空間光変調器410が球面収差補正パターン及びX方向コマ収差付与パターンを表示している状態で、レーザ発振器310からレーザ光Lが出射されて対象物1にレーザ光Lが照射され、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される(ステップS06)。このとき、対象物1にアブレーションが生じないレーザ光Lの出力が予め設定されていてもよいし、或いは、対象物1にアブレーションが生じないようにレーザ光Lの出力の調整が行われてもよい。
【0094】
続いて、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを、反射光RLの点像画像(反射光の検出結果)に基づいて判定する(ステップS07)。具体的には、制御部500は、反射光RLの点像画像において、扇状の像がX方向に関して対称であれば(「
図17の中央に示される点像画像」参照)、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していると判定し、扇状の像がX方向に関して対称でなければ(「
図17の上側に示される点像画像」及び「
図17の下側に示される点像画像」参照)、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置からずれていると判定する。なお、扇状の像がX方向に関して対称であるか否かは、例えば、幾何学的手法によって認識されてもよいし、パターン認識等の公知の画像認識処理によって認識されてもよい。
【0095】
以上のように、点像画像に基づく基準位置の設定方法では、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される際に、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410が制御される。
【0096】
ステップS07の判定の結果、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していた場合には、制御部500が、この場合に空間光変調器410が表示していた位相パターンのY値(第2方向に相当する方向における第2位相パターンの第2基準位置の座標)を基準位置のY値(基準位置の第2座標)として記憶する(ステップS08)。位相パターンのY値は、「球面収差補正パターン、X方向コマ収差付与パターン、又はそれらが重畳された位相パターン(いずれも第2位相パターン)が表示される際に基準とされた基準位置(第2基準位置)」の「Y方向の座標」である。基準位置のY値は、「対象物1の加工用の位相パターンが表示される際に基準とされる基準位置」の「Y方向の座標(第2座標)」である。
【0097】
ステップS07の判定の結果、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置からずれていた場合には、制御部500が、空間光変調器410が表示していた位相パターンのY値をシフトし(ステップS09)、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していたと判定されるまで、ステップS06及びステップS07のステップが繰り返される。
【0098】
ステップS08に続いて、制御部500が、X方向コマ収差付与パターンに代えて、Y方向コマ収差付与パターンを空間光変調器410に表示させる(ステップS11)。Y方向コマ収差付与パターンは、入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差を発生させるための位相パターンである。続いて、空間光変調器410が球面収差補正パターン及びY方向コマ収差付与パターンを表示している状態で、レーザ発振器310からレーザ光Lが出射されて対象物1にレーザ光Lが照射され、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される(ステップS12)。このとき、対象物1にアブレーションが生じないレーザ光Lの出力が予め設定されていてもよいし、或いは、対象物1にアブレーションが生じないようにレーザ光Lの出力の調整が行われてもよい。
【0099】
続いて、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを、反射光RLの点像画像(反射光の検出結果)に基づいて判定する(ステップS13)。具体的には、制御部500は、反射光RLの点像画像において、扇状の像がY方向に関して対称であれば(「
図18の中央に示される点像画像」参照)、レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していると判定し、扇状の像がY方向に関して対称でなければ(「
図18の右側に示される点像画像」及び「
図18の左側に示される点像画像」参照)、レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置からずれていると判定する。なお、扇状の像がY方向に関して対称であるか否かは、例えば、幾何学的手法によって認識されてもよいし、パターン認識等の公知の画像認識処理によって認識されてもよい。
【0100】
以上のように、点像画像に基づく基準位置の設定方法では、レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される際に、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410が制御される。
【0101】
ステップS13の判定の結果、レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していた場合には、制御部500が、この場合に空間光変調器410が表示していた位相パターンのX値(第1方向に相当する方向における第1位相パターンの第1基準位置の座標)を基準位置のX値(基準位置の第1座標)として記憶する(ステップS14)。位相パターンのX値は、「球面収差補正パターン、Y方向コマ収差付与パターン、又はそれらが重畳された位相パターン(いずれも第1位相パターン)が表示される際に基準とされた基準位置(第1基準位置)」の「Y方向の座標」である。基準位置のX値は、「対象物1の加工用の位相パターンが表示される際に基準とされる基準位置」の「X方向の座標(第1座標)」である。
【0102】
ステップS13の判定の結果、レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置からずれていた場合には、制御部500が、空間光変調器410が表示していた位相パターンのX値をシフトし(ステップS15)、レーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していたと判定されるまで、ステップS12及びステップS13のステップが繰り返される。
【0103】
以上説明したように、レーザ加工装置200では、第1面1a側から対象物1に入射して第2面1bで反射されたレーザ光Lの反射光RLが観察用カメラ488によって検出される。このとき、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ集光レンズユニット430の入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410が制御される。これにより、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致している場合と、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置からずれている場合とで、反射光RLの点像に顕著な差が現れる。よって、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。
【0104】
レーザ加工装置200では、第1面1a側から対象物1に入射して第2面1bで反射されたレーザ光Lの反射光RLが観察用カメラ488によって検出される。このとき、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように且つ集光レンズユニット430の入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410が制御される。これにより、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致している場合と、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置からずれている場合とで、反射光RLの点像に顕著な差が現れる。よって、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。
【0105】
レーザ加工装置200では、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づいて、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを判定する。これにより、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを自動で判定することができる。
【0106】
レーザ加工装置200では、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づいて、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを判定する。これにより、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを自動で判定することができる。
【0107】
レーザ加工装置200では、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していた場合に空間光変調器410が表示していた位相パターンに関する情報を取得し、基準位置のX方向の座標として、X方向における当該位相パターンの基準位置の座標を記憶する。対象物1の加工時に、当該座標をX方向の基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させることで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。
【0108】
レーザ加工装置200では、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致していた場合に空間光変調器410が表示していた位相パターンに関する情報を取得し、基準位置のY方向の座標として、Y方向における当該位相パターンの基準位置の座標を記憶する。対象物1の加工時に、当該座標をY方向の基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させることで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。
【0109】
レーザ加工装置200では、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される際に、球面収差を補正するための球面収差補正パターン、及び入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差を発生させるためのコマ収差付与パターンを空間光変調器410に表示させる。これにより、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差を確実に補正すると共に、集光レンズユニット430の入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差を確実に発生させることができる。
【0110】
レーザ加工装置200では、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される際に、球面収差を補正するための球面収差補正パターン、及び入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差を発生させるためのコマ収差付与パターンを空間光変調器410に表示させる。これにより、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差を確実に補正すると共に、集光レンズユニット430の入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差を確実に発生させることができる。
【0111】
レーザ加工装置200では、所定距離dが、第1面1aと第2面1bとの距離をtとすると、(2t-0.1t)≦d≦(2t+0.1t)を満たすように設定される。これにより、反射光RLの点像画像に与えられる球面収差の影響を適切に抑制することができる。なお、上述したように、Y方向にコマ収差が発生させられることで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致している場合と、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置からずれている場合とで、反射光RLの点像に顕著な差が現れる。そのため、(2t-0.1t)≦d≦(2t+0.1t)を満たすように所定距離dが設定されなくても、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認することができる場合がある。同様に、X方向にコマ収差が発生させられることで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致している場合と、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置からずれている場合とで、反射光RLの点像に顕著な差が現れる。そのため、(2t-0.1t)≦d≦(2t+0.1t)を満たすように所定距離dが設定されなくても、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認することができる場合がある。
【0112】
レーザ加工装置200は、表示部600が、反射光RLの点像画像を表示する。これにより、反射光RLの点像画像をオペレータに報知することができる。
【0113】
レーザ加工装置200において実施されるレーザ加工方法によれば、上述したように、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。更に、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。
【0114】
レーザ加工装置200において実施されるレーザ加工方法によれば、上述したように、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。更に、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。
【0115】
レーザ加工装置200では、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がX方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される際に、球面収差を補正するための球面収差補正パターンを、入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410に表示させてもよい。これによれば、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差を確実に補正すると共に、集光レンズユニット430の入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差を確実に発生させることができる。一例として、制御部500は、基準位置と推定される位置からY方向にずれた位置を基準として球面収差補正パターンを空間光変調器410に表示させる。このとき球面収差補正パターンをずらす量は、ステップS15でのシフト量よりも大きく且つ観察用カメラ488の画角から外れる量よりも小さい量である。
【0116】
レーザ加工装置200では、制御部500が、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを確認するために、観察用カメラ488によって反射光RLの点像画像が取得される際に、球面収差を補正するための球面収差補正パターンを、入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差が発生するように、空間光変調器410に表示させてもよい。これによれば、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差を確実に補正すると共に、集光レンズユニット430の入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差を確実に発生させることができる。一例として、制御部500は、基準位置と推定される位置からX方向にずれた位置を基準として球面収差補正パターンを空間光変調器410に表示させる。このとき球面収差補正パターンをずらす量は、ステップS09でのシフト量よりも大きく且つ観察用カメラ488の画角から外れる量よりも小さい量である。
[点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法]
【0117】
レーザ加工装置200において実施される一実施形態のレーザ加工方法である「点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法」について説明する。点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法は、入射瞳面に転像されたレーザ光の像の中心位置が入射瞳面の中心位置に一致するように、基準位置を設定するレーザ加工方法である。
【0118】
点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法(設定処理)は、反射光RLの点像画像に基づく基準位置(第1基準位置)P1及び対象物1の加工結果に基づく基準位置(第2基準位置)P2を取得するステップ(処理)と、「対象物1の加工時」に、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させるステップ(処理)と、を備えている。以下、それらのステップについて、
図10及び
図21を参照して説明する。
図21は、点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【0119】
まず、対象物1が支持台230にセットされる(ステップS21)。この対象物1は、基準位置の設定用に用意されたものであり、例えば、第1面1a及び第2面1bが鏡面であり且つ抵抗率が1Ω・cm以上であるウェハである。続いて、Z方向において集光レンズユニット430が対象物1に対向するように、支持台230がX方向及びY方向に移動させられる(ステップS22)。X方向及びY方向への支持台230の移動は、制御部500による第1移動機構220(
図1参照)の制御によって実施される。続いて、集光レンズユニット430の焦点が対象物1の第2面1b上に位置するように、集光レンズユニット430がZ方向に移動させられる(ステップS23)。Z方向への集光レンズユニット430の移動は、制御部500による第2移動機構240(
図1参照)の制御によって実施される。
【0120】
続いて、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1のX値及びY値を取得する(ステップS24)。X値は、基準位置P1のX方向の座標であり、Y値は、基準位置P1のY方向の座標である。このように、制御部500は、反射光RLの点像画像(反射光の検出結果)に基づいて基準位置P1を取得する。一例として、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1のX値及びY値の取得は、
図19及び
図20に示される「点像画像に基づく基準位置の設定方法」によって実施される。
【0121】
なお、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1のX値及びY値を取得する方法は、上記方法に限定されない。例えば、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1のX値を取得するために、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように空間光変調器410を制御し、入射瞳面430aにおいてY方向にコマ収差が発生するように空間光変調器410を制御しなくてもよい。同様に、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1のY値を取得するために、レーザ光Lが第1面1aから所定距離dだけ対象物1中を進行したと仮定した場合に発生する球面収差が補正されるように空間光変調器410を制御し、入射瞳面430aにおいてX方向にコマ収差が発生するように空間光変調器410を制御しなくてもよい。また、反射光RLの検出結果に基づく基準位置P1のX値及びY値を取得するために、制御部500が、位相パターンとしてアキシコンパターンを空間光変調器410に表示させ、その状態で、Z方向に沿って集光レンズユニット430を移動させてもよい。その場合、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致していると、対象物1の第1面1aで反射されたレーザ光Lの反射光RLの像の中心が移動しない。一方、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置からずれていると、対象物1の第1面1aで反射されたレーザ光Lの反射光RLの像の中心が移動する。以上のように、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1は、対象物1で反射されたレーザ光Lの反射光RLの検出結果に基づいて特定可能である。
【0122】
続いて、制御部500が、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2のX値及びY値を取得する(ステップS25)。X値は、基準位置P2のX方向の座標であり、Y値は、基準位置P2のY方向の座標である。このように、制御部500は、対象物1の加工結果に基づいて基準位置P2を取得する。対象物1の加工結果に基づく基準位置P2のX値及びY値を取得する際には、必要に応じて対象物1を交換してもよい。一例として、
図22、
図23及び
図24に示されるように、対象物1の内部に改質領域を形成し、その対象物1の加工状態を観察することで、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2のX値及びY値を取得する。
【0123】
図22の(a)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から+側に1ピクセル分ずれている状態で、X方向に平行な方向を加工方向(レーザ光Lのスキャン方向)として加工が実施された対象物1の「X方向に垂直な断面図」である。
図22の(b)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致している状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「X方向に垂直な断面図」である。
図22の(c)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から-側に1ピクセル分ずれている状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「X方向に垂直な断面図」である。
図22の(b)に示される亀裂は、
図22の(a)及び(c)に示される亀裂に比べ、対象物1の厚さ方向(ZX平面)に沿うように延びている。この場合、制御部500は、
図22の(b)に示される加工結果が得られた際に空間光変調器410が表示していた位相パターンの基準位置のX値及びY値を、基準位置P2のX値及びY値として取得する。
【0124】
図23の(a)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から+側に1ピクセル分ずれている状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「X方向に平行な切断面の図」である。
図23の(b)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致している状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「X方向に平行な切断面の図」である。
図23の(c)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から-側に1ピクセル分ずれている状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「X方向に平行な切断面の図」である。
図23の(b)に示される切断面は、
図23の(a)及び(c)に示される切断面に比べ、対象物1の厚さ方向(ZX平面)に沿うように延びている。この場合、制御部500は、
図23の(b)に示される加工結果が得られた際に空間光変調器410が表示していた位相パターンの基準位置のX値及びY値を、基準位置P2のX値及びY値として取得する。
【0125】
図24の(a)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から+側に1ピクセル分ずれている状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「レーザ光の入射側とは反対側の外表面の図」である。
図24の(b)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置に一致している状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「レーザ光の入射側とは反対側の外表面の図」である。
図24の(c)は、レーザ光Lの像の中心位置がY方向において入射瞳面430aの中心位置から-側に1ピクセル分ずれている状態で、X方向に平行な方向を加工方向として加工が実施された対象物1の「レーザ光の入射側とは反対側の外表面の図」である。
図24の(b)に示される加工痕は、
図24の(a)及び(c)に示される加工痕に比べ、対象物1の外表面に到達した亀裂の両側に均一に形成されている。この場合、制御部500は、
図24の(b)に示される加工結果が得られた際に空間光変調器410が表示していた位相パターンの基準位置のX値及びY値を、基準位置P2のX値及びY値として取得する。
【0126】
なお、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2のX値及びY値を取得する方法は、上記方法に限定されず、レーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致している場合と、レーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置からずれている場合とで、対象物1の加工結果に差が生じる加工を利用したものであればよい。また、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2のX値及びY値の取得は、撮像装置によって取得された「対象物1(加工後の対象物1)の画像」に基づいて制御部500が基準位置P2を特定することで、実施されてもよい。或いは、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2のX値及びY値の取得は、撮像装置によって取得された「対象物1(加工後の対象物1)の画像」を表示部600上でオペレータが確認し、オペレータが制御部500に基準位置P2を入力することで、実施されてもよい。或いは、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2のX値及びY値の取得は、加工後の対象物1をオペレータが確認し、オペレータが制御部500に基準位置P2を入力することで、実施されてもよい。
【0127】
続いて、制御部500が、X値の差分及びY値の差分を算出して記憶する(ステップS26)。X値の差分は、基準位置P1のX値から基準位置P2のX値を引いた値であり、Y値の差分は、基準位置P1のY値から基準位置P2のY値を引いた値である。或いは、X値の差分は、基準位置P2のX値から基準位置P1のX値を引いた値であり、Y値の差分は、基準位置P2のY値から基準位置P1のY値を引いた値である。
【0128】
以上のように反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1及び対象物1の加工結果に基づく基準位置P2を取得した後、制御部500は、「対象物1の加工時」に、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させる。なお、「対象物1の加工時」とは、加工対象の対象物1(一種類の場合も、複数種類の場合もある)について、レーザ加工装置200が加工動作を実施する期間を意味する。
【0129】
点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法(設定処理)は、或る「対象物1の加工時」後の「基準位置の確認時」に、反射光RLの点像画像に基づく基準位置(第3基準位置)P3を取得するステップ(処理)と、基準位置P3が基準位置P1からずれていた場合に、基準位置P1、基準位置P2及び基準位置P3に基づいて、基準位置(第4基準位置)P4を算出し、基準位置P4を記憶するステップ(処理)と、次の「対象物1の加工時」に、基準位置P4を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させるステップ(処理)と、を更に備えている。以下、それらのステップについて、
図10及び
図25を参照して説明する。
図25は、点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。なお、「基準位置の確認時」とは、或る「対象物1の加工時」とその次の「対象物1の加工時」との間のタイミングであって、例えば、定期的に実施されるレーザ加工装置200のメンテナンスのタイミングを意味する。
【0130】
まず、対象物1が支持台230にセットされる(ステップS31)。この対象物1は、基準位置の設定用に用意されたものであり、例えば、第1面1a及び第2面1bが鏡面であり且つ抵抗率が1Ω・cm以上であるウェハである。続いて、Z方向において集光レンズユニット430が対象物1に対向するように、支持台230がX方向及びY方向に移動させられる(ステップS32)。X方向及びY方向への支持台230の移動は、制御部500による第1移動機構220(
図1参照)の制御によって実施される。続いて、集光レンズユニット430の焦点が対象物1の第2面1b上に位置するように、集光レンズユニット430がZ方向に移動させられる(ステップS33)。Z方向への集光レンズユニット430の移動は、制御部500による第2移動機構240(
図1参照)の制御によって実施される。
【0131】
続いて、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3のX値及びY値を取得する(ステップS34)。X値は、基準位置P3のX方向の座標であり、Y値は、基準位置P3のY方向の座標である。このように、制御部500は、「基準位置の確認時」に、反射光RLの点像画像(反射光の検出結果)に基づいて基準位置P3を取得する。
【0132】
続いて、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3にずれがあるか否かを判定する(ステップS35)。具体的には、制御部500は、今回取得した基準位置P3が、前回取得して現在記憶している基準位置P1(
図21のステップS24参照)からずれているか否かを判定する。この判定は、基準位置P1のX値と基準位置P3のX値とを比較すると共に基準位置P1のY値と基準位置P3のY値とを比較することで、実施される。ステップS35の判定の結果、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3にずれがなかった場合には、処理が終了となる。
【0133】
ステップS35の判定の結果、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3にずれがあった場合には、制御部500が、前回取得して現在記憶している基準位置P1のX値及びY値を、今回取得した基準位置P3のX値及びY値に更新する(ステップS36)。すなわち、制御部500は、基準位置P1のX値及びY値に代えて、基準位置P3のX値及びY値を記憶する。このとき、制御部500は、後のステップ37の処理のために基準位置P1のX値及びY値を残しておく。
【0134】
続いて、制御部500が、基準位置P1のX値と基準位置P3のX値との差分、及び基準位置P1のY値と基準位置P3のY値との差分に基づいて、対象物1の加工結果に基づく基準位置P4を算出する(ステップS37)。具体的には、制御部500は、前回取得して現在記憶している基準位置P2(
図21のステップS25参照)のX値と基準位置P4のX値との差分が、基準位置P1のX値と基準位置P3のX値との差分と同じになるように、基準位置P4のX値を算出する。同様に、制御部500は、前回取得して現在記憶している基準位置P2のY値と基準位置P4のY値との差分が、基準位置P1のY値と基準位置P3のY値との差分と同じになるように、基準位置P4のY値を算出する。
【0135】
続いて、制御部500が、前回取得して現在記憶している基準位置P2のX値及びY値を、今回算出した基準位置P4のX値及びY値に更新する(ステップS38)。すなわち、制御部500は、基準位置P2のX値及びY値に代えて、基準位置P4のX値及びY値を記憶する。ここでの基準位置P4は、実際の「対象物1の加工結果に基づく基準位置」ではなく、算出によって求められた推定の「対象物1の加工結果に基づく基準位置」である。このように、制御部500は、基準位置P1、基準位置P2及び基準位置P3に基づいて、基準位置P4を算出し、基準位置P4を記憶する。
【0136】
以上のように反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3及び対象物1の加工結果に基づく基準位置P4を取得した後、制御部500は、「対象物1の加工時」に、対象物1の加工結果に基づく基準位置P4を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させる。
【0137】
以上説明したように、レーザ加工装置200では、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P1、及び対象物1の加工結果に基づく基準位置P2が取得される。基準位置P1及び基準位置P2が取得された状態で、「対象物1の加工時」には、空間光変調器410が、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2を基準として位相パターンを表示する。これにより、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。そして、「基準位置の確認時」には、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3が取得される。この基準位置P3を、反射光RLの点像画像に基づいて予め取得された基準位置P1と比較することで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。
【0138】
レーザ加工装置200では、今回取得した基準位置P3が、前回取得して現在記憶している基準位置P1からずれていた場合に、制御部500が、基準位置P1、基準位置P2及び基準位置P3に基づいて、基準位置P4を算出し、「対象物1の加工時」に、記憶している基準位置P4を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させる。反射光RLの点像画像に基づいて取得される基準位置と、対象物1の加工結果に基づいて取得される基準位置との間には、一定の位置関係が維持される傾向がある。そのため、基準位置P3が基準位置P1からずれていた場合、「対象物1の加工時」に、空間光変調器410が、基準位置P1、基準位置P2及び基準位置P3に基づいて算出された基準位置P4を基準として位相パターンを表示することで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。
【0139】
レーザ加工装置200では、表示部600が、「基準位置の確認時」に、反射光RLの点像画像を表示する。これにより、反射光RLの点像画像をオペレータに報知することができる。
【0140】
レーザ加工装置200において実施されるレーザ加工方法によれば、上述したように、基準位置P1及び基準位置P2が取得された状態で、「対象物1の加工時」には、空間光変調器410が、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2を基準として位相パターンを表示する。これにより、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。そして、「基準位置の確認時」には、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3が取得される。この基準位置P3を、反射光RLの点像画像に基づいて予め取得された基準位置P1と比較することで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致しているか否かを容易に且つ精度良く確認することができる。
【0141】
点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法(設定処理)は、
図25のフローチャートに示される複数のステップに代えて、次の複数のステップを備えていてもよい。すなわち、点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法(設定処理)は、「基準位置の確認時」に、反射光RLの点像画像に基づく基準位置(第3基準位置)P3を取得するステップ(処理)と、基準位置P3が基準位置P1からずれていた場合に、対象物1の加工結果に基づく基準位置(第4基準位置)P4を取得するステップ(処理)と、基準位置P1と基準位置P2との差分(第1差分)と、基準位置P3と基準位置P4との差分(第2差分)とを比較するステップ(処理)と、それらの差分が互いに異なっていた場合に、基準位置P1及び基準位置P2に代えて、基準位置P3及び基準位置P4を記憶するステップ(処理)と、「対象物1の加工時」に、基準位置P4を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させるステップ(処理)と、を備えていてもよい。以下、それらのステップについて、
図10及び
図26を参照して説明する。
図26は、点像画像及び加工結果に基づく基準位置の設定方法を示すフローチャートである。
【0142】
まず、対象物1が支持台230にセットされる(ステップS41)。この対象物1は、基準位置の設定用に用意されたものであり、例えば、第1面1a及び第2面1bが鏡面であり且つ抵抗率が1Ω・cm以上であるウェハである。続いて、Z方向において集光レンズユニット430が対象物1に対向するように、支持台230がX方向及びY方向に移動させられる(ステップS42)。X方向及びY方向への支持台230の移動は、制御部500による第1移動機構220(
図1参照)の制御によって実施される。続いて、集光レンズユニット430の焦点が対象物1の第2面1b上に位置するように、集光レンズユニット430がZ方向に移動させられる(ステップS43)。Z方向への集光レンズユニット430の移動は、制御部500による第2移動機構240(
図1参照)の制御によって実施される。
【0143】
続いて、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3のX値及びY値を取得する(ステップS44)。X値は、基準位置P3のX方向の座標であり、Y値は、基準位置P3のY方向の座標である。このように、制御部500は、「基準位置の確認時」に、反射光RLの点像画像(反射光の検出結果)に基づいて基準位置P3を取得する。
【0144】
続いて、制御部500が、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3にずれがあるか否かを判定する(ステップS45)。具体的には、制御部500は、今回取得した基準位置P3が、前回取得して現在記憶している基準位置P1(
図21のステップS24参照)からずれているか否かを判定する。この判定は、基準位置P1のX値と基準位置P3のX値とを比較すると共に基準位置P1のY値と基準位置P3のY値とを比較することで、実施される。ステップS45の判定の結果、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3にずれがなかった場合には、処理が終了となる。
【0145】
ステップS35の判定の結果、反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3にずれがあった場合には、制御部500がアラームを発出する(ステップS46)。具体的には、制御部500が、対象物1の加工結果に基づく基準位置P2を更新すべきであることを表示部600に表示させる。続いて、制御部500が、前回取得して現在記憶している基準位置P1のX値及びY値を、今回取得した基準位置P3のX値及びY値に更新する(ステップS47)。すなわち、制御部500は、基準位置P1のX値及びY値に代えて、基準位置P3のX値及びY値を記憶する。このとき、制御部500は、後のステップ49の処理のために基準位置P1のX値及びY値を残しておく。
【0146】
続いて、制御部500が、対象物1の加工結果に基づく基準位置P4のX値及びY値を取得する(ステップS48)。X値は、基準位置P4のX方向の座標であり、Y値は、基準位置P4のY方向の座標である。このように、制御部500は、対象物1の加工結果に基づいて基準位置P4を取得する。
【0147】
続いて、制御部500が、基準位置P1と基準位置P2との差分、及び基準位置P3と基準位置P4との差分を算出する(ステップS49)。具体的には、制御部500は、基準位置P1のX値と基準位置P2のX値との差分、及び基準位置P1のY値と基準位置P2のY値との差分を算出する。同様に、制御部500は、基準位置P3のX値と基準位置P4のX値との差分、及び基準位置P3のY値と基準位置P4のY値との差分を算出する。
【0148】
続いて、基準位置P1と基準位置P2との差分と、基準位置P3と基準位置P4との差分とを比較する(ステップS50)。具体的には、制御部500は、「X値に関する比較」として、基準位置P1のX値と基準位置P2のX値との差分と、基準位置P3のX値と基準位置P4のX値との差分とを比較する。同様に、制御部500は、「Y値に関する比較」として、基準位置P1のY値と基準位置P2のY値との差分と、基準位置P3のY値と基準位置P4のY値との差分とを比較する。ステップS50の判定の結果、「X値に関する比較」及び「Y値に関する比較」のいずれの比較においても、差分が互いに異なっていなかった場合には、処理が終了となる。
【0149】
ステップS50の判定の結果、「X値に関する比較」及び「Y値に関する比較」の少なくとも一方の比較において、差分が互いに異なっていた場合には、制御部500が、基準位置P1のX値と基準位置P2のX値との差分、及び基準位置P1のY値と基準位置P2のY値との差分を、基準位置P3のX値と基準位置P4のX値との差分、及び基準位置P3のY値と基準位置P4のY値に更新する(ステップS51)。つまり、制御部500は、基準位置P1及び基準位置P2に代えて、基準位置P3及び基準位置P4を記憶する。
【0150】
以上のように反射光RLの点像画像に基づく基準位置P3及び対象物1の加工結果に基づく基準位置P4を取得した後、制御部500は、「対象物1の加工時」に、対象物1の加工結果に基づく基準位置P4を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させる。
【0151】
以上説明したように、レーザ加工装置200では、今回取得した基準位置P3が、前回取得して現在記憶している基準位置P1からずれていた場合に、制御部500が、対象物1の加工結果に基づいて、基準位置P4を取得し、「対象物1の加工時」に、取得した基準位置P4を基準として位相パターンを空間光変調器410に表示させる。反射光RLの点像画像に基づいて取得される基準位置と、対象物1の加工結果に基づいて取得される基準位置との間には、一定の位置関係が維持される傾向がある。そのため、基準位置P3が基準位置P1からずれていた場合、「対象物1の加工時」に、空間光変調器410が、対象物1の加工結果に基づいて改めて取得された基準位置P4を基準として位相パターンを表示することで、入射瞳面430aに転像されたレーザ光Lの像の中心位置が入射瞳面430aの中心位置に一致した状態で、対象物1を加工することができる。
【0152】
レーザ加工装置200では、制御部500が、基準位置P1と基準位置P2との第1差分と、基準位置P3と基準位置P4との第2差分とを比較し、第1差分と第2差分とが異なっていた場合に、基準位置P1及び基準位置P2に代えて、基準位置P3及び基準位置P4を記憶する。反射光RLの点像画像に基づいて取得される基準位置と、対象物1の加工結果に基づいて取得される基準位置との間に、一定の位置関係が維持されていれば、第1差分と第2差分とが同じになるはずである。したがって、第1差分と第2差分とを比較することで、反射光RLの点像画像に基づいて取得される基準位置と、対象物1の加工結果に基づいて取得される基準位置との間に、一定の位置関係が維持されているか否かを確認することができる。更に、第1差分と第2差分とが異なっていた場合に、制御部500が、基準位置P1及び基準位置P2に代えて、基準位置P3及び基準位置P4を記憶するため、反射光RLの点像画像に基づいて取得される基準位置と、対象物1の加工結果に基づいて取得される基準位置との位置関係を更新することができる。
[変形例]
【0153】
本発明は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態は、対象物1の内部に改質領域を形成するものに限定されず、アブレーション等、他のレーザ加工を実施するものであってもよい。上記実施形態は、対象物1の内部にレーザ光Lを集光するものに限定されず、対象物1におけるレーザ光Lの入射側の外表面又はその反対側の外表面にレーザ光Lを集光するものであってもよい。本発明が適用される装置は、レーザ光Lを対象物1に照射するものであれば、様々なレーザ光照射装置に適用することができる。上記実施形態では、レーザ光Lをスキャンするライン5a,5bが、対象物1を切断するためのラインであったが、レーザ光Lをスキャンするラインは、その他の目的のためのラインであってもよい。対象物1において、第1面1aは、第2面1bに対してレーザ光Lの入射側に位置する面であれば、対象物1の外表面でなくてもよい。対象物1において、第2面1bは、第1面1aに対してレーザ光Lの入射側とは反対側に位置する面であれば、対象物1の外表面でなくてもよい。
【0154】
空間光変調器410は、反射型に限定されず、透過型であってもよい。空間光変調器410におけるレーザ光Lの像を入射瞳面430aに転像する転像部は、一対のレンズ422,423を有する4fレンズユニット420に限定されず、空間光変調器410側の第1レンズ系(例えば、接合レンズ、三つ以上のレンズ等)及び入射瞳面430a側の第2レンズ系(例えば、接合レンズ、三つ以上のレンズ等)を含むもの等であってもよい。反射光RLを検出する光検出器は、観察用カメラ488に限定されず、反射光RLの波面を検出する波面センサ等であってもよい。波面センサは、例えば、マイクロレンズアレイ及び撮像素子によって構成されており、局所的な位相勾配を各マイクロレンズによる集光スポットの像位置から取得する。波面センサとしては、シャックハルトマン波面センサ(THORLABS社製「WFS150-5C」)を用いることができる。
【符号の説明】
【0155】
1…対象物、1a…第1面、1b…第2面、200…レーザ加工装置、230…支持台(支持部)、310…レーザ発振器(光源)、410…空間光変調器、420…4fレンズユニット(転像部)、430…集光レンズユニット(集光部)、430a…入射瞳面、488…観察用カメラ(光検出器)、500…制御部、600…表示部、L…レーザ光、RL…反射光。