(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125418
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】育苗培土
(51)【国際特許分類】
A01G 24/15 20180101AFI20230831BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20230831BHJP
【FI】
A01G24/15
A01G9/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029488
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000125
【氏名又は名称】井関農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 哲也
【テーマコード(参考)】
2B022
2B327
【Fターム(参考)】
2B022BA02
2B022BA04
2B022BA16
2B022BB01
2B327NA10
2B327NB01
2B327ND03
(57)【要約】
【課題】
苗の根部が生育する培土の粒子同士のスペースを十分に確保しつつ、移植作業時に必要な根鉢の強度を確保できる育苗培土を提供すること。
【解決手段】
育苗容器2に培土Sを敷設し、育てる苗の根部を培土S内に張り巡らさせて根鉢を形成させる育苗培土において、培土Sは、加熱により殺菌消毒した原土Mを重量比で40%、保水性と排水性のバランスがとれるよう配合した副資材Amを重量比で60%配合し、培土Sの比重を0.55~0.65とし、培土Sを使用する育苗容器2は、448個のセルを有するものとし、培土Sは1つの育苗容器2あたり、重量では0.85~1kg、容積では1.5~1.65リットルが用いられる構成とする。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
育苗容器(2)に培土(S)を敷設し、苗の根部を培土(S)内に張らせる育苗培土において、
前記培土(S)は、原土(M)を重量比で40%、保水性と排水性のバランスがとれるよう配合した副資材(Am)を重量比で60%配合し、培土(S)の比重を0.55~0.65とすることを特徴とする育苗培土。
【請求項2】
前記培土(S)を使用する前記育苗容器(2)は、448個のセルを有するものとし、前記培土(S)は、重量では0.85~1kg、容積では1.5~1.65リットルが用いられることを特徴とする請求項1に記載の育苗培土。
【請求項3】
育苗容器(2)に培土(S)を敷設し、苗の根部を培土(S)内に張らせる育苗培土において、
前記培土(S)は、原土(M)を重量比で10~20%、副資材(Am)のピートモス(Pm)を重量比で50~70%配合すると共に、バーミキュライト(Vc)、パーライト(Pl)及び糊剤(G)を重量比で10~40%配合し、
培土(S)の比重を0.25~0.35とすることを特徴とする育苗培土。
【請求項4】
育苗容器(2)に培土(S)を敷設し、苗の根部を培土(S)内に張らせる育苗培土において、
前記培土(S)は、副資材(Am)のピートモス(Pm)を重量比で50%配合し、集塵粉(Vp)を重量比で5~20%配合すると共に、原土(M)、副資材(Am)のパーライト(Pl)等を重量比で30~45%配合し、
ゼオライト(Zr)を容積1リットル当たり5~10g添加すると共に、窒素液肥(N)を容積1リットル当たり500~1000mg添加することを特徴とする育苗培土。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、苗を育苗する培土の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
玉葱等の細い苗を育苗する培土に遅効性の窒素成分を1リットル当たり500~1000mg添加し、この培土を敷設した育苗容器を床面から離間させ、根部を育苗箱の下方に垂れ下がるように生育させ、移植前に徒長した根部を切除する苗の栽培技術が存在する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
苗の根部を育苗容器から下方に垂れ下がらせて成長させることにより、苗の根部はストレスを受けにくく丈夫に成長できる。
【0005】
また、移植直前に徒長した根部を切除することにより、移植機を用いて苗を植え付ける際、植付ホッパに徒長した苗が引っ掛かるなどして植付ミスを発生させることが防止される。
【0006】
さらに、培土中に遅効性の窒素成分を添加することにより、苗がある程度生育した段階で苗の生育の栄養となる窒素成分を用意しておけるので、苗の生育が安定する。
【0007】
しかしながら、培土を構成する成分によっては、培土内の粒子同士の間隔が狭く、また少ない量の培土を押し固めていると、根部が培土内に自由に根を張ることができず、培土内に巻き付くように成長することがある。こうした所謂根巻きが発生すると、根鉢の強度に偏りが生じ、移植時に根鉢が崩れて植付が行えなくなる問題が生じ得る。
【0008】
また、培土の量が多く、且つ柔らかいと、根部は自由に伸びてしまい、隣接する苗の培土に入り込み、根部同士が絡み合って成長するので、移植時に根部のつながりを解除すべくちぎる必要があり、移植前に不要なダメージやストレスを苗に与え、生育に悪影響を与えるおそれがある。
【0009】
本発明は、苗の根部が生育する培土の粒子同士のスペースを十分に確保しつつ、移植作業時に必要な根鉢の強度を確保できる育苗培土を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、次のような技術的手段を講じた。
【0011】
請求項1に係る発明は、育苗容器(2)に培土(S)を敷設し、苗の根部を培土(S)内に張らせる育苗培土において、前記培土(S)は、原土(M)を重量比で40%、保水性と排水性のバランスがとれるよう配合した副資材(Am)を重量比で60%配合し、培土(S)の比重を0.55~0.65とすることを特徴とする育苗培土とした。
【0012】
請求項2に係る発明は、前記培土(S)を使用する前記育苗容器(2)は、448個のセルを有するものとし、前記培土(S)は、重量では0.85~1kg、容積では1.5~1.65リットルが用いられることを特徴とする請求項1に記載の育苗培土とした。
【0013】
請求項3に係る発明は、育苗容器(2)に培土(S)を敷設し、苗の根部を培土(S)内に張らせる育苗培土において、前記培土(S)は、原土(M)を重量比で10~20%、副資材(Am)のピートモス(Pm)を重量比で50~70%配合すると共に、バーミキュライト(Vc)、パーライト(Pl)及び糊剤(G)を重量比で10~40%配合し、培土(S)の比重を0.25~0.35とすることを特徴とする育苗培土とした。
【0014】
請求項4にかかる発明は、育苗容器(2)に培土(S)を敷設し、苗の根部を培土(S)内に張らせる育苗培土において、前記培土(S)は、副資材(Am)のピートモス(Pm)を重量比で50%配合し、集塵粉(Vp)を重量比で5~20%配合すると共に、原土(M)、副資材(Am)のパーライト(Pl)等を重量比で30~45%配合し、ゼオライト(Zr)を容積1リットル当たり5~10g添加すると共に、窒素液肥(N)を容積1リットル当たり500~1000mg添加することを特徴とする育苗培土とした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明により、原土(M)よりも軽い副資材(AM)の配合比率を高くして培土(S)の比重を0.55~0.65とすることにより、培土(S)内に根部が育苗容器(2)の下方に向かって伸長する空隙を確保できるので、培土(S)内で根巻きが生じることや、隣接するセルで育苗される苗と根部が絡み合い、一株分の苗が取り出しにくくなることが防止される。
【0016】
請求項2の発明により、請求項1に記載の発明の効果に加えて、448個のセルを有する育苗容器(2)に、重量で0.85~1kg、容積で1.5~1.65リットルの培土(S)を各セルに均等に投入すると、一株の苗の生育に適した培土(S)の供給量となる。
【0017】
請求項3の発明により、空隙が多く軽量なピートモス(Pm)を重量比で50~70%配合することにより、糊剤(G)を培土に添加していても根部が培土(S)内で育苗容器(2)の下方に向かって伸長しやすくなるので、育苗時に根巻きや浮き苗が生じ、移植時に悪影響が出ることが防止される。
【0018】
請求項4の発明により、培土(S)の材料となる素材を精製する際に発生する集塵粉(Vp)を用いることにより、培土(S)が軽量になると共に、廃材を利用できるので、培土(S)の製造コストが低減される。
【0019】
また、ゼオライト(Zr)を添加することにより、界面活性効果で糊剤(G)が培土(S)中で塊となって偏って存在することが防止され、根部の伸長を妨げにくい培土(S)とすることができる。
【0020】
また、窒素液肥(N)を添加することにより、培土(S)内に苗が生育する際に根部から吸収する養分が増加するので、苗の生育が安定する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図6】播種装置の穴開け突起部を備える播種繰出ローラを示す要部側面図
【
図7】別構成例の播種装置の穴開け突起部を備える播種繰出ローラを示す要部側面図
【
図9】育苗箱の搬送中に有機肥料を散布する位置を示す側面図
【
図10】別構成例の培土の構成材料の比率を示すグラフ
【
図11】別構成例の培土の構成材料の比率を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0022】
この発明の実施の一形態を、以下に説明する。尚、以下の実施の形態は、あくまで実施の一形態であって、特許請求の範囲を拘束するものではない。
【0023】
まず、
図1から
図5を用いて、床土詰め、播種及び覆土の作業を行う播種機1について説明する。
【0024】
播種機1は、育苗箱2を一方向に搬送する搬送経路3を備え、該搬送経路3上に支持され該搬送経路3に沿って該搬送経路3の上手側から順に、上下に複数枚に積み重ねられた育苗箱2を下側から順に繰り出して搬送経路3上に供給する育苗箱供給装置4と、育苗箱2に床土を詰める床土詰装置6と、床土を詰めた育苗箱2に灌水する灌水装置29と、育苗箱2に播種する播種装置7と、育苗箱2に覆土する覆土装置8を設けている。
【0025】
なお、育苗箱供給装置4及び床土詰装置6及び播種装置7及び覆土装置8の各々の装置は、他の装置と独立して単独で設置できるように前後左右計4本の脚部9,10で支持されている。
【0026】
また、覆土装置8の前側の左右の脚部10には上下に回動するアーム11を介して該脚部10の下端より下方に突出させることができる車輪12を各々取り付けており、該車輪12を下方に突出させ播種機1を持ち上げて他の脚部9を地面から浮かせることにより、播種機1を容易に移動させることができる。
【0027】
搬送経路3は、左右の搬送ガイド15で構成され、この左右の搬送ガイド15の間で長手方向を前後に向けた育苗箱2を搬送する構成となっている。搬送経路3には、駆動するコンベアとして、ベルト式の育苗箱搬送コンベアである育苗箱供給部搬送コンベア16及び床土詰部搬送コンベア17と、ローラ式の育苗箱搬送コンベアである播種部搬送コンベア18及び覆土部搬送コンベア28を備えている。
【0028】
そして、非駆動でフリー回転するローラ式のコンベアとして、育苗箱供給部搬送コンベア16と床土詰部搬送コンベア17の間に床土詰前コンベア62を設け、床土詰部搬送コンベア17と播種部搬送コンベア18の間に灌水部コンベア63を設け、播種部搬送コンベア18と覆土部搬送コンベア28の間に覆土前コンベア64を設け、覆土部搬送コンベア28の後側に育苗箱取出コンベア75を設けている。
【0029】
育苗箱供給装置4は、上下に複数枚に積み重ねられた育苗箱群を下側から受ける下受板34と、前記育苗箱群の下から2枚目の育苗箱2を下側から受ける上受板35と、育苗箱群の最下位の育苗箱2を強制的に下方へ落とす落とし板36を備え、人手等により上受板35上に供給された育苗箱群を先ず下受板34上に引き継ぎ、上受板35で育苗箱群の下から2枚目の育苗箱2から上側の育苗箱2を支持した状態で下受板34による育苗箱群の最下位の育苗箱2の支持を解除し、その状態で落とし板36が最下位の育苗箱2を上側から下方に押して育苗箱群から分離して落下させて繰り出して育苗箱供給部搬送コンベア16上に供給し、以下この作動工程を繰り返すことにより育苗箱群の下側の育苗箱2から順に育苗箱供給部搬送コンベア16上に供給する構成としている。
【0030】
なお、下受板34、上受板35及び落とし板36は、育苗箱群に作用する各々の部分が前後方向で重複しないように各々育苗箱群の前後左右4箇所に設けられ、育苗箱群の左右外側から作用し、育苗箱供給部搬送コンベア16の作動に連動し、育苗箱供給部搬送コンベア16上において先に供給した育苗箱2と次に供給する育苗箱2との間に隙間が生じないように作動する。
【0031】
前記伝動構成について説明すると、育苗箱供給モータ94に設けた出力スプロケット95から搬送伝動チェーン96及び駆動スプロケット38へ伝動し、該駆動スプロケット38と一体回転する搬送上手側のローラ37を介して育苗箱供給部搬送コンベア16を駆動する。
【0032】
そして、駆動スプロケット38からチェーン39及び従動スプロケット40を介して第一のカウンタ軸41へ伝動し、該第一のカウンタ軸41と一体回転する駆動スプロケット42からチェーン43、従動スプロケット44及び一方向クラッチを介して第二のカウンタ軸45へ伝動し、該第二のカウンタ軸45の左右両端部に設けた駆動ベベルギヤ46から従動ベベルギヤ47を介して左右各々の落とし用軸48を互いに反対側に駆動回転させる。この落とし用軸48と落とし板36とが一体回転し、落とし板36が左右内側で下側に移行する方向に回転する。
【0033】
また、落とし用軸48の他端部からアーム49,51及びリンク50等を介して落とし用軸48の上方に位置する各々の受板用軸52を所定角度範囲内で揺動させ、該受板用軸52と一体回転する下受板34及び上受板35を揺動させ、下受板34と上受板35とを育苗箱群に交互に作用させて、育苗箱群を順次下降させる。
【0034】
また、第二のカウンタ軸45を手動で回転させるための手動供給操作具となる手動供給レバー53を設けており、該手動供給レバー53により作業者が任意に育苗箱供給部搬送コンベア16上に育苗箱2を落下させて供給することができる。
【0035】
床土詰装置6は、床土となる培土Sを貯留する床土タンク54と、該床土タンク54内の床土を所定量ずつ繰り出して育苗箱2へ落下させて供給する床土繰出具となる床土繰出ベルト55と、育苗箱2上で溢れる床土を均す均平具となる均平ブラシ19と、育苗箱2内に突入して床土を鎮圧する床土鎮圧具となる床土鎮圧ローラ57と、床土繰出ベルト55上の隙間を調節して床土の繰出量を変更調節する床土量調節具となる床土量調節レバーを備え、床土繰出ベルト55が床土を供給する搬送経路3上の床土詰位置の搬送下手側に均平ブラシ19が位置し、均平ブラシ19の搬送下手側に床土鎮圧ローラ57が位置する。
【0036】
床土詰装置6の伝動構成について説明すると、床土繰出モータ20により床土繰出ベルト55が駆動し、該床土繰出ベルト55から歯車伝動機構を介して均平ブラシ19が駆動する。また、床土詰搬送モータ21に設けた出力スプロケット97から搬送伝動チェーン59を介して駆動スプロケット60へ伝動し、該駆動スプロケット60と一体回転する搬送下手側のローラ61により床土詰部搬送コンベア17を駆動する。なお、均平ブラシ19と床土繰出ベルト55とが互いに逆方向に回転する構成としている。
【0037】
なお、床土繰出モータ20又は床土詰搬送モータ21の一方の駆動で、床土繰出ベルト55と均平ブラシ19と床土詰部搬送コンベア17へ伝動する構成としてもよい。
【0038】
播種装置7は、
図6に示すとおり、種子タンク68の下部に調節板68bを設けて、種子を所定量ずつ流下口に繰り出し、反時計方向に回転する播種繰出ローラ69の凹溝に種子を取り込み、播種繰出ローラ69の表面に付着した余分の種子を第1ブラシ68dにより落下させる構成とする。該播種繰出ローラ69の外周縁部には、苗トレイ2の床土に接触して種子が入り込む穴開け突起部69a…が、左右方向の所定間隔毎で、且つ円周方向の所定間隔毎に形成される。左右方向の所定間隔、及び円周方向の所定間隔は、苗トレイ2を構成する複数の育苗セル121の左右方向の所定間隔、及び円周方向の所定間隔に対応するものとする。
【0039】
そして、播種繰出ローラ69の上部には回転ブラシ68eをバネにより弾圧的に圧接し、播種繰出ローラ69の凹溝から溢れた種子を除去して種子収容タンク68fに回収し、播種繰出ローラ69の下方に回転した凹溝から搬送中の苗トレイ2の床土に播種する構成としている。
【0040】
また、播種繰出ローラ69の播種位置から種子取り込み位置までの間に固定状の落下ブラシ70を設け、播種できなかった種子を苗トレイ2の床土上に掻き落とし、播種精度の向上と湿った種子の播種精度の向上を図る。
【0041】
また、
図7に示すとおり、播種繰出ローラ69の播種位置から種子取り込み位置までの間に回転する第2落下ブラシ68gを設け、播種繰出ローラ69の外周部に第2落下ブラシ68gの外周部を接触させて、播種繰出ローラ69により第2落下ブラシ68gを回転させながら播種残りの種子を落下するように構成してもよい。
【0042】
また、播種装置7は、播種繰出ローラ69に臨む種子タンク68の出口の隙間を調節して播種繰出ローラ69への種子の供給状態を変更調節する種子供給調節具となる種子供給調節ハンドル72を備える。
【0043】
よって、該種子供給調節ハンドル72で調節される種子タンク68の出口から播種繰出ローラ69の繰出溝に種子が供給され、播種繰出ローラ69の回転により該繰出溝が上方へ移動することにより該繰出溝で所定量の種子を移送し、芒、枝梗が付いた種子や芽の伸び過ぎた種子等の播種に不適な種子を繰出溝から除去し、該繰出溝は播種繰出ローラ69の回転により下方へ移動してその下死点位置(播種位置H)で育苗箱2に種子を落下供給する構成となっている。
【0044】
なお、一般的に播種繰出ローラ69の繰出溝は、左右方向(播種繰出ローラ69の回転軸心方向)に長い溝で播種繰出ローラ69の外周に複数配列された構成となっている。種籾の長手方向(長径部)が育苗箱2の長手方向に向くべく、種籾の向きを揃えて育苗箱2へ播種する際は、播種繰出ローラ69の繰出溝を、前後方向(播種繰出ローラ69の回転外周方向)に長い溝で左右に複数配列した構成とすれば、種籾の長手方向(長径部)が繰出溝の方向(前後方向)に沿い、所望の向きで種籾を播種できる。
【0045】
また、播種直後に種籾を床土に軽く押し付ける際は、押付ローラを播種位置Hの直後に設け、押付ローラにより種籾を押し付ける構成とすればよい。
【0046】
播種装置7の伝動構成について説明すると、播種モータ65に設けた出力スプロケット66から繰出伝動チェーン67を介して播種繰出ローラ69へ伝動され、前記出力スプロケット66から第一除去チェーン73及び第二除去チェーン74を介して除去ブラシ70へ伝動され、前記出力スプロケット66から搬送伝動チェーン71を介して播種部搬送コンベア18の搬送下手側のローラ75へ伝動し、該搬送下手側のローラ75からチェーン77を介して搬送上手側のローラ76へ伝動する。尚、搬送上手側のローラ76と搬送下手側のローラ75の間に、播種繰出ローラ69が種子を繰り出して供給する播種位置Hがある。尚、除去ブラシ70及び播種部搬送コンベア18と播種繰出ローラ69とが互いに逆方向に回転するべく、第一除去チェーン73と搬送伝動チェーン71を側面視で交差するように巻き掛けている。尚、播種繰出ローラ69の外周部において除去ブラシ70の位置と播種位置との間には、繰出溝から種子が脱落しないように該繰出溝を覆うガイド体を設けている。
【0047】
覆土装置8は、覆土となる培土Sを貯留する覆土タンク84と、該覆土タンク84内の覆土を所定量ずつ繰り出して育苗箱2へ落下させて覆土位置で供給する覆土繰出具となる覆土繰出ベルト85と、育苗箱2上で溢れる覆土を均す均平具となる均平板86と、覆土繰出ベルト85上の隙間を調節して覆土の繰出量を変更調節する覆土量調節具となる覆土量調節レバーとを備え、覆土繰出ベルト85が覆土を供給する搬送経路3上の覆土位置の搬送下手側に均平板86が位置する。覆土装置8の伝動構成について説明すると、覆土モータ78により覆土繰出ベルト85が駆動し、覆土モータ78に設けた出力スプロケット79から搬送伝動チェーン80を介して覆土部搬送コンベア28の搬送下手側のローラ81へ伝動し、該搬送下手側のローラ81からチェーン98を介して搬送上手側のローラ82へ伝動する。尚、搬送上手側のローラ82と搬送下手側のローラ81の間に、覆土位置がある。尚、覆土繰出ベルト85と覆土部搬送コンベア28とが互いに逆方向に回転するべく、搬送伝動チェーン80を側面視で交差するように巻き掛けている。
【0048】
覆土装置8の前側の脚部10には、育苗箱搬送コンベアを手動で回転させるための操作具となる手動搬送ハンドル92をフック93を介して保持している。この手動搬送ハンドル92により、播種装置7で播種をしている途中で故障で播種機1が停止したときや播種作業を終了するために播種機1を停止させたとき、手動で育苗箱2を搬送して該育苗箱2を播種機1から容易に取り出すことができる。
【0049】
灌水装置29は、灌水部コンベア63の上側に設けられ、灌水部コンベア63の左右の搬送ガイド15から各々立ち上がる左右の支持フレーム100を設け、左右に配列される複数のノズルを備える左右に延びる灌水パイプ99を、左右の支持フレーム100で両持ち支持している。該灌水パイプ99すなわち灌水位置は、灌水部コンベア63の搬送上手寄りの位置に配置されている。
【0050】
床土詰前コンベア62及び灌水部コンベア63及び覆土前コンベア64及び育苗箱取出コンベア75の各々のコンベアは、左右の搬送ガイド15の前後端部で搬送上手側及び搬送下手側の装置に嵌る嵌合部材101により、播種機1本体に対して独立して個別に着脱可能に設けられている。従って、灌水部コンベア63を播種装置7と覆土装置8の間に組み付けることにより、播種装置7と覆土装置8の間に灌水装置29を配置することができる。あるいは、灌水部コンベア63を覆土装置8の後側に組み付けることにより、覆土後に灌水する構成とすることもできる。
【0051】
播種装置7と覆土装置8の間に灌水装置29を配置する際は、灌水装置29と覆土装置8の間隔が十分に得られるように、覆土前コンベア64を灌水部コンベア63の後側に組み付けたり、灌水装置29の後側に組み付けられる覆土前コンベア64を長いコンベアに交換したりすることが望ましい。これにより、床土に吸水性の悪い田土を使用しても、灌水装置29の灌水を床土に浸透させることができ、床土の上面の水がひいた状態で覆土できるので、播種した種籾が酸素欠乏状態になりにくく、安定した発芽率が得られる。また、覆土前コンベア64を非駆動のローラで構成し、この非駆動のローラを任意の位置に組み付けできる構成とすることにより、覆土前コンベア64を伸縮できる構成としてもよい。尚、床土詰装置6と播種装置7の間に灌水装置29を配置する際は、上述と同様の理由から、灌水装置29と播種装置7の間のコンベアを長くすることが望ましい。
【0052】
なお、種子タンク68の上端の開口より覆土タンク84の上端の開口を低位に設け、覆土タンク84の上端の開口より床土タンク54の上端の開口を低位に設けている。これにより、使用量が多いため作業者が頻繁に床土タンク54へスコップで床土を供給しなければならないが、この床土供給作業を低位で容易に行え、次いで供給頻度が高い覆土タンク84への覆土供給作業を容易に行える。しかも、種子タンク68の上端の開口が高位となるので、床土供給作業又は覆土供給作業を行うとき、誤って種子タンク68へ床土又は覆土を供給するようなことを防止でき、土が供給されることで播種装置7が故障するようなことを防止できる。
【0053】
床土タンク54は変形可能なゴム製の弾性体113を介して支持されており、作業者が床土を供給する度にその重みで揺れる構成となっている。これにより、床土タンク54内での床土のブリッジ現象を防止でき、特に水田の土壌等、ブリッジ現象を生じ易い土壌を床土として使用するとき、床土の繰り出しを適正に行える。尚、作業者がスコップ等で床土タンク54に触れることで、床土タンク54を揺らすこともできる。
【0054】
また、左右幅がコンベアの左右幅より小さい(30cm未満の)育苗箱110に播種作業を行うときは、
図2に示すように、コンベアの左右一方側にコンベア搬送方向の適宜間隔で複数の規制ガイド112を取り付け、コンベア上の育苗箱110の左右位置を規制するようにすればよい。このとき、播種装置7で繰り出される種子が前記左右一方側の部分で無駄になるので、この種子を受ける受け容器111を播種装置7下方で前記左右一方側の位置に配置すればよい。
【0055】
タマネギ等の苗の径が小さいものは、移植の適期に到達しても十分に土部に根が広がらず、根鉢の強度が苗移植機による植え付けに適さない、言い換えれば苗移植機で植え付けを行おうとすると根鉢が崩れ、苗が植え付けられない、あるいは植え付けた苗が倒れる、といった問題が生じ得る。
【0056】
タマネギ苗の根鉢の強度を高める方法としては、培土を形成する際にポリアクリル酸ナトリウムやアルギン酸等、粘性が強い土壌用接着剤を培土S中に混和させ、培土そのものの硬さを高めることが考えられる。
【0057】
しかしながら、タマネギ苗を育苗する際、育苗容器2の各セルに投入された培土Sの量が少ないと、根部がセル内の内壁面に沿って伸びていき、まっすぐ下方に向かって伸びることが望ましい根部が、根鉢内に巻き付くように伸びる恐れがある。
【0058】
根部が根鉢内に巻き付くように伸びると、根鉢の径が不定になり、苗移植機で植え付ける際に植付ホッパ等に引っ掛かって植え付けられなくなることがある。
【0059】
一方、土が不足しないように土詰め量を多くすると、土の密度が高く下方に向かって根が伸びにくくなり、上方で且つ外周部に向かって伸びる、いわゆる浮き根が発生しやすくなり、伸びた根部が隣接するセルの培土S内に入り込み、最終的に苗同士の根部が絡み合う問題が生じる。
【0060】
苗の根部が絡み合っていると、育苗容器2から苗を取り出す際、不要な苗まで一緒に取り出され、一か所に二株の苗が植え付けられてしまうことになる。作業者が植付前に苗を分離させることはできるが、絡み合った根部が千切れると苗がストレスを受けるので、生育不良や立ち枯れが発生するおそれがある。
【0061】
この問題を解消する、土壌用接着剤を用いない培土Sを、山野や河川敷等から採取した土を加熱消毒した、平均粒径が3mm未満の原土Mを重量比で40%配合し、ピートモスPm、バーミキュライトVc、パーライトPlを保水性と排水性のバランスがとれるよう配合した副資材Amを重量比で60%配合して作成する。原土Mの重量は、副資材Amよりも重いので、混合により作成される培土Sの比重は0.55~0.65とし、タマネギの根部や葉部が培土Sの隙間を通過して伸長しやすくする。
【0062】
そして、この培土Sは、448穴、即ち448個のセルを有する1つの育苗容器2あたり、重量では0.85~1kg、容積では1.5~1.65リットルを用いるものとする。
【0063】
これにより、軽量な培土Sを育苗容器2に均等に詰めることで、根巻きが生じるほど土が不足することがなく、且つ浮き根が発生するほど土が過剰に供給されることもないので、苗移植機での移植に適した苗を安定して育苗できる。
【0064】
栽培する作物や品種の異なるものでは、上記の培土Sは軽過ぎて、根巻きや浮き根が発生することがある。したがって、根部や茎葉部の本数が多くなる作物、または品種を栽培する際は、培土Sの構成比率を変更する必要がある。
【0065】
この培土Sは、原土Mを重量比で55~60%と、ピートモスPm、バーミキュライトVc、パーライトPlを保水性と排水性のバランスがとれるよう配合した副資材Amを40~45%とを混ぜて作成する。上記の混合により作成される培土Sの比重は、0.7~0.75とする。
【0066】
そして、この培土Sは、448穴のセルを有する1つの育苗容器2あたり、重量では1~1.1kg、容積では1.4~1.5リットルを用いるものとする。
【0067】
これにより、根部や茎葉部の数が多くなる作物や品種を栽培するときでも、根巻きや浮き根が発生することを防止できる。
【0068】
上記の培土Sは、特に原土Mの土質がタマネギの苗の栽培に適したものであれば、土壌接着剤を使用する必要はない。言い換えれば、原土Mの土質次第では、土壌接着剤の添加は必須になるということである。なお、土壌接着剤は、アルギン酸のように海藻から抽出される天然由来成分、あるいは合成であっても生分解性のある成分を用いれば、栽培する作物に影響を与えにくくなるので、使用における問題はない。
【0069】
上記の培土Sは、重量比で10~20%の原土Mと、重量比で50~70%の副資材AmのピートモスPmと、重量比で合計10~40%のバーミキュライトVc、パーライトPl、及び糊剤Gを混ぜて作成する。上記の混合により作成される培土Sの比重は、0.25~0.35とする。
【0070】
なお、糊剤Gは生分解性を有するポリ乳酸系の土壌接着剤とすると、軽量で且つ苗移植機を用いた移植作業に適した強度の根鉢とすることができる。
【0071】
また、培土Sを作成するときは、ピートモスPmに糊剤Gを添加して攪拌した後、原土M等の材料を混合して生成する。
【0072】
これにより、ピートモスPmの繊維に糊剤Gをまんべんなく付着させることで、原土M等が糊剤Gに張り付きやすくなり、培土Sの強度が全体的に強化され、より移植作業に適した苗を育苗できる。
【0073】
上記の糊剤Gだけを添加すると、ピートモスPmに糊剤Gが偏って付着するおそれがあるので、糊剤Gに界面活性剤Zを混合したものを用いると、糊剤Gが塊になることが防止され、ピートモスPmの表面積に広く糊剤Gが付着することになる。
【0074】
上記の培土Sは軽量であり、育苗容器2を大量に運びやすく、また苗移植機に搭載しても機体重量が増えにくく、走行や植付精度が低下しにくくなる、という利点がある。
【0075】
一方、作物や品種の違いによっては、培土Sの比重が重いものとする必要もある。比重の重い培土Sを作成する際は、上記の培土Sは、重量比で20~40%の原土Mと、重量比で40~60%の副資材AmのピートモスPmと、重量比で合計0~40%のバーミキュライトVc、パーライトPl、及び糊剤Gを混ぜて作成する。上記の混合により作成される培土Sの比重は、0.5~0.8とする。
【0076】
なお、原土MとピートモスPmを除いた材料のうち、糊剤Gは、重量比で1~3%で添加されるものとするとよい。
【0077】
なお、糊剤Gは生分解性を有するポリ乳酸系の土壌接着剤とすると、軽量で且つ苗移植機を用いた移植作業に適した強度の根鉢とすることができる。
【0078】
また、培土Sを作成するときは、ピートモスPmに糊剤Gを添加して攪拌した後、原土M等の材料を混合して生成する。また、上記のとおり、糊剤Gには界面活性剤を混合し、塊になりにくくしておいてもよい。
【0079】
タマネギ苗のように、育苗容器2を床面から上方に離間させ、育苗容器2の下方に根部を伸長させる浮かし育苗が一般的なものは、糊剤G等の水分を吸収しやすい成分が含まれていると、そちらに水を奪われ、発芽しにくくなる。特に、浮かし育苗を行う際は、下方から培土Sが落下しにくくすべく、各セルの容積を小さくしていることにより、水分の含有量が限られ、発芽中に乾燥が生じやすい傾向にあり、より発芽率が低下する問題がある。
【0080】
この問題の発生を防止すべく、育苗容器2内に床土を敷き詰め、種子を床土上に播種した後で種子を覆わせる、覆土とする培土Sは、上記の配合例に糊剤Gや界面活性剤を添加しないものとする。これにより、覆土に供給された水が糊剤Gに吸収されて種子が水分を吸収できなくなることが防止され、発芽率の低下が抑えられる。
【0081】
上記の例では、培土Sが透水性の高い配合であった場合は、供給された水が覆土層を通り抜けやすくなり、糊剤Gを含む床土側に流れ込みやすくなることがある。培土Sを透水性の高い配合としたときは、覆土をバーミキュライトVcのみ、あるいはバーミキュライトVc比率80%以上の培土Sを別途作成して用いるとよい。
【0082】
バーミキュライトVcは、自身が多くの空隙を有しており、水分が少ないときは大量の水を保持可能であり、床土への水の浸透を抑制することができる。
【0083】
あるいは、糊剤G等を含まない、原土Mを覆土に用いてもよい。原土Mは、適度に粘性や養分、保水性を備えているので、種子の発芽を促進できる。
【0084】
上記の糊剤Gを用いる代わりに、微粒子を培土Sに充填することで、培土Sの密度を高め、根鉢の強度を高める方法を用いてもよい。
【0085】
バーミキュライトVcは、蛭石を焼成して生成するものであるが、その過程で細かい粉体、いわゆる集塵粉Vpが発生しており、この集塵粉Vpは廃棄物として処理されている。しかしながら、集塵粉VpもバーミキュライトVcと同一成分であり、培土Sに混入することで保水性を向上させることができる。
【0086】
この集塵粉Vpを用いて作成する培土Sは、ピートモスPmを重量比で50%以上、集塵粉Vpを重量比で5~20%、原土M、パーライトPl等の混合物を重量比30~45%を混ぜて生成する。また、この培土Sには、ゼオライトZrを容積1リットル当たり5~10g加え、根部の強度を向上させ、根鉢の強度の向上が図られる。
【0087】
さらに、窒素成分を含む窒素液肥Nを、容積1リットル当たり500~1000mg加えることで、発芽から成長の初期段階まで苗が使用する窒素成分が不足することが無く、苗の生育が安定する。
【符号の説明】
【0088】
2 育苗容器
Am 副資材
G 糊剤
M 原土
Pl パーライト
Pm ピートモス
S 培土
Vc バーミキュライト
Vp 集塵粉
Zr ゼオライト