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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125449
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】車載装置、および電力制御方法
(51)【国際特許分類】
   G11C 5/14 20060101AFI20230831BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230831BHJP
   G11C 7/04 20060101ALI20230831BHJP
   G06F 11/14 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G11C5/14 100
B60R16/02 660L
G11C7/04
G11C5/14 370
G06F11/14 602D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029550
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138771
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 将明
(72)【発明者】
【氏名】清水 一輝
(72)【発明者】
【氏名】原田 実
(72)【発明者】
【氏名】桐生 健人
(57)【要約】
【課題】環境に応じて変化するバックアップ電流を考慮して、DRAMの電力制御を行う。
【解決手段】車両に搭載される車載装置であって、揮発性メモリと、前記車載装置の位置情報を取得する取得部と、前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部と、前記位置情報に基づいて、前記所定の期間を設定する設定部と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載される車載装置であって、
揮発性メモリと、
前記車載装置の位置情報を取得する取得部と、
前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部と、
前記位置情報に基づいて、前記所定の期間を設定する設定部と、
を有する車載装置。
【請求項2】
前記設定部は、前記位置情報に基づいて特定される、前記車載装置の周辺の温度である周辺温度に応じて、前記所定の期間を設定する、請求項1に記載の車載装置。
【請求項3】
前記設定部は更に、季節の情報に基づいて前記周辺温度を特定する、請求項2に記載の車載装置。
【請求項4】
前記所定の期間は、前記周辺温度の増減に対応して増減する前記バックアップ電流の値に基づいて設定される、請求項2または3に記載の車載装置。
【請求項5】
前記位置情報は、緯度、経度、高度を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の車載装置。
【請求項6】
車両に搭載される車載装置であって、
揮発性メモリと、
前記車載装置の周辺の温度である周辺温度を取得する取得部と、
前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部と、
前記周辺温度に基づいて、前記所定の期間を設定する設定部と、
を有する車載装置。
【請求項7】
車両に搭載される車載装置であって、
揮発性メモリと、
前記揮発性メモリに電力を供給する電源の電流量を監視する電流監視回路と、
前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、前記電源から前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部と、
を有し、
前記制御部は、前記電流監視回路により、前記電源から供給した電流量の積算値が所定の閾値を超えたことに応じて、前記バックアップ電流の供給を停止させる、車載装置。
【請求項8】
車両に搭載される車載装置の電力制御方法であって、
前記車載装置の位置情報を取得する取得工程と、
前記車両が所定の状態である場合に、前記車載装置の揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御工程と、
前記位置情報に基づいて、前記所定の期間を設定する設定工程と、
を有する車載装置の電力制御方法。
【請求項9】
車両に搭載される車載装置の電力制御方法であって、
前記車載装置の周辺の温度である周辺温度を取得する取得工程と、
前記車両が所定の状態である場合に、前記車載装置の揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御工程と、
前記周辺温度に基づいて、前記所定の期間を設定する設定工程と、
を有する車載装置の電力制御方法。
【請求項10】
車両に搭載される車載装置の電力制御方法であって、
前記車載装置の揮発性メモリに対して電力を供給する電源の電流量を監視する監視工程と、
前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、前記電源から前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御工程と、
前記監視工程において、前記電源から供給した電流量の積算値が所定の閾値を超えたことに応じて、前記バックアップ電流の供給を停止させる停止工程と、
を有する車載装置の電力制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車載装置、および電力制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車載装置の一種であるナビゲーション装置は、PC(Personal Computer)などの情報処理装置と同等の構成を有する。このような装置には、揮発性メモリとして例えばDRAM(Dynamic Random Access Memory)が搭載されている。DRAMは、定期的に電流が供給されることで、その記憶情報を維持している。例えば、ナビゲーション装置の電源をオフにする場合でも、DRAMにアプリケーションプログラムなどのデータをバックアップして、その情報を維持しておくことで、次回のナビゲーション装置の高速起動が可能となる。
【0003】
一方、DRAMの記憶情報の維持には定期的に一定の電力が必要となるため、バッテリなどの電力が消費されてしまう。したがって、記憶情報の維持のために車載のバッテリの利用が継続された場合、電力不足、いわゆるバッテリ上がりが発生しうる。例えば、特許文献1では、車載のナビゲーション装置において、バッテリの電力消費を抑制するために、所定の状態になってから一定期間が経過した際に、DRAMの利用を停止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-117472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
DRAMを利用する環境の条件は、国や地域などの場所や、季節などでも変化し得る。例えば、DRAMが記憶情報を維持するために必要な電流であるバックアップ電流は、DRAMの利用環境に影響を受ける場合がある。
【0006】
本開示は、バックアップ電流が環境に応じて変化しうることを考慮して、DRAMの電力制御を行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、車両に搭載される車載装置であって、揮発性メモリと、前記車載装置の位置情報を取得する取得部と、前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部と、前記位置情報に基づいて、前記所定の期間を設定する設定部と、を有する車載装置を提供する。
【0008】
また、本開示は、車両に搭載される車載装置であって、揮発性メモリと、前記車載装置の周辺の温度である周辺温度を取得する取得部と、前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部と、前記周辺温度に基づいて、前記所定の期間を設定する設定部と、を有する車載装置を提供する。
【0009】
また、本開示は、車両に搭載される車載装置であって、揮発性メモリと、前記揮発性メモリに電力を供給する電源の電流量を監視する電流監視回路と、前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、前記電源から前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部と、を有し、前記制御部は、前記電流監視回路により、前記電源から供給した電流量の積算値が所定の閾値を超えたことに応じて、前記バックアップ電流の供給を停止させる、車載装置を提供する。
【0010】
また、本開示は、車両に搭載される車載装置の電力制御方法であって、前記車載装置の位置情報を取得する取得工程と、前記車両が所定の状態である場合に、前記車載装置の揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御工程と、前記位置情報に基づいて、前記所定の期間を設定する設定工程と、を有する車載装置の電力制御方法を提供する。
【0011】
また、本開示は、車両に搭載される車載装置の電力制御方法であって、前記車載装置の周辺の温度である周辺温度を取得する取得工程と、前記車両が所定の状態である場合に、前記車載装置の揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、電源に、所定の期間、前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御工程と、前記周辺温度に基づいて、前記所定の期間を設定する設定工程と、を有する車載装置の電力制御方法を提供する。
【0012】
また、本開示は、車両に搭載される車載装置の電力制御方法であって、前記車載装置の揮発性メモリに対して電力を供給する電源の電流量を監視する監視工程と、前記車両が所定の状態である場合に、前記揮発性メモリに保持されたデータを維持するために、前記電源から前記揮発性メモリに対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御工程と、前記監視工程において、前記電源から供給した電流量の積算値が所定の閾値を超えたことに応じて、前記バックアップ電流の供給を停止させる停止工程と、を有する車載装置の電力制御方法を提供する。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システム、記憶媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本開示の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、環境に応じて変化するバックアップ電流を考慮して、DRAMの電力制御を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施の形態1に係る電力制御方法を実行可能な車載装置の構成例を示すブロック図
図2】バックアップ電流の変化を説明するためのグラフ図
図3】実施の形態1に係る車両の状態遷移を説明するための状態遷移図
図4】実施の形態1に係る電力制御処理のフローチャート
図5】実施の形態1に係るアラーム割り込みによるカウント動作を説明するためのシーケンス図
図6】実施の形態1に係る設定テーブルの構成例を示すテーブル図
図7】実施の形態1に係る設定テーブルの構成例を示すテーブル図
図8】実施の形態1に係る期間設定を説明するためのグラフ図
図9】実施の形態1に係る設定テーブルの構成例を示すテーブル図
図10】実施の形態3に係る電力制御方法を実行可能な車載装置の構成例を示すブロック図
図11】実施の形態3に係る電力制御処理のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を適宜参照しながら、本開示に係る車載装置、および電力制御方法を具体的に開示した実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、あるいは、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になることを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるものであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0017】
<実施の形態1>
本発明に係る車載装置は、例えば、車両に積載されるナビゲーション装置として適用可能である。しかしながら、本発明を適用可能な範囲は、ナビゲーション装置に限定されるものではなく、後述する揮発性メモリを備える車載装置にも適用可能である。
【0018】
[装置構成]
図1は、本実施の形態に係る車載装置100の構成例を示すブロック図である。図1において、矢印は、各ブロックへの信号や電力供給の流れを示す。なお、図1に示す構成は一例である。したがって、車載装置100は、例えば、ナビゲーション装置である場合にその機能に応じて他の構成を更に備えていてよい。
【0019】
車載装置100は、例えば、自動車や二輪車などの車両1に搭載される装置であって、例えば、ナビゲーション装置などが挙げられる。車載装置100は、車両1に固定されて設置されていてもよいし、着脱可能に構成されていてもよい。
【0020】
SoC(System on a Chip)101は、車載装置100の各種機能を実装するための集積回路装置であって、チップ上にCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphical Processing Unit)、通信用のモデムなどを含んで構成される。不揮発性メモリ102は、不揮発性の記憶装置である。不揮発性メモリ102は、例えば、SSD(Solid State Drive)やeMMC(embedded Multi Media Card)を含む。揮発性メモリ103は、揮発性の記憶装置である。揮発性メモリ103は、例えば、SRAM(Static Random Access Memory)やDRAM(Dynamic Random Access Memory)を含む。本実施の形態においては、揮発性メモリ103がDRAMである例について説明する。以下、揮発性メモリ103を、DRAM103と呼ぶことがある。
【0021】
電源管理部104は、電源105を管理する。電源管理部104は、制御部106からの指示に基づき、DRAM103への電源105からの電力の供給を制御する。また、電源管理部104は、電源105に電力をSoC101へ供給させる。電源105は、車載装置100への電力を供給するための電力源である。電源105は、例えば、車両1のバッテリと一体または連結されて構成されてもよい。制御部106は、本実施の形態に係る電力制御を行うための部位であり、例えば、制御用のMCU(Micro Controller Unit)にて構成されてよい。
【0022】
位置センサ107は、車載装置100の位置情報を取得するためのセンサである。位置センサ107は、例えば、GPS(Global Positioning System)に代表されるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用可能な構成であってよい。位置センサ107にて取得される位置情報としては、緯度、経度、高度などが含まれてよい。
【0023】
通信部108は、車両1や不図示の外部装置と通信を行うための部位である。通信において、通信規格は特定のものに限定されず、また、有線/無線も問われない。また、通信部108は、複数のインターフェースを備えたり、複数の通信規格に対応していたりしてもよい。UI(User Interface)部109は、ユーザからの入力を受け付けたり、各種情報を出力したりする。UI部109は、例えば、入出力部が一体となったタッチパネルディスプレイを含んで構成されてもよいし、音声の入出力が可能なマイクやスピーカを含んで構成されてもよい。
【0024】
なお、図1には示していないが、車載装置100は、通信部108等を介して、車両1の状態に関する情報(以下、「状態情報」と称する)を車両1から適宜取得可能な構成であってよい。状態情報としては、例えば、イグニッションの状態や走行状態などが含まれてよい。また、位置センサ107は、車両1に備えられていてもよい。そのような構成の場合には、車載装置100は、車両1から位置情報を適宜取得可能な構成であってよい。
【0025】
[DRAMにおけるバックアップ電流の変化]
本発明の発明者が着目したDRAMにおけるバックアップ電流の変化について説明する。上述したように、DRAMが記憶情報を維持するために必要な電流であるバックアップ電流は、DRAMの利用環境に影響を受ける場合がある。バックアップ電流に影響を与える環境由来の条件としては、周辺温度が挙げられる。例えば、周辺温度は、DRAMが使用される国や地域によっても異なり得るし、また、季節などによっても異なり得る。このような条件の影響により、DRAMが利用される環境に応じてバックアップ電流が異なる。しかし、従来は利用環境を考慮したDRAMの電力制御が行われていなかった。また、バックアップ電流として必要な電力は、DRAMの容量によっても変化しうる。今後さらにDRAMの容量が増加していくに従って、必要となるバックアップ電流は増加する。上記の理由から、DRAMにおけるより適切な電力制御が求められている。
【0026】
図2は、DRAMにおけるバックアップ電流と温度との関係を示すグラフ図である。図2において、縦軸はDRAMのリフレッシュ動作に要するバックアップ電流の値を示し、横軸はDRAMの周辺温度を示す。リフレッシュ動作とは、DRAMに記憶されたデータを維持するために、一定の周期にてデータの更新を行う動作である。所定の命令と電力を供給して、自動的にリフレッシュを行う方式は、セルフリフレッシュと呼ばれる。
【0027】
図2では、4つの異なるDRAMを例に挙げて説明する。グラフ201~204がそれぞれ異なる4つのDRAMに対応する。いずれのグラフにおいても、温度が上昇するに伴って、バックアップ電流の値が上昇している。ここに示す4つの例の場合、特に60℃辺りから、バックアップ電流の上昇が現れている。つまり、DRAMの周辺温度の増減と、バックアップ電流の増減との間には相関がある。したがって、温度上昇に伴って、情報の維持に必要なバックアップ電流が上昇する。そのため、例えばDRAMの周辺温度が上昇していることに気づかず、長期間にわたってバックアップ電流を流すと、想定以上の電力の消費が発生する場合がある。
【0028】
なお、PASR(Partial Array Self-Refresh)と呼ばれる、メモリアレイの複数の部分のいずれかを選択的にリフレッシュが可能な技術が知られている。このような部分的にリフレッシュを行う場合であっても、図2に示すように、温度に応じてバックアップ電流の変動が生じる。
【0029】
[状態遷移]
図3は、本実施の形態に係る車載装置100の状態遷移を説明するための状態遷移図である。ここでは、車載装置100の状態は、搭載される車両1の状態に連動して遷移するものとして説明する。また、車載装置100の状態は、「バッテリOFF」、「スリープ」、「サスペンド」、「ACC ON」、「IG ON」の5つの状態を例に挙げて説明するが、より細かい状態遷移が行われてもよい。バッテリOFFの状態で、車両1においてバッテリONへの指示がなされた場合、車載装置100はスリープ状態へ遷移する。車載装置100がスリープ状態である場合、DRAMはOFFの状態となっている。車載装置100がスリープ状態である場合において、車両1においてACC(アクセサリー電源) ONへの指示がなされた場合、車両1および車載装置100はACC ON状態へ遷移する。この状態では、DRAMもON状態となる。
【0030】
車載装置100がACC ON状態である場合において、車両1においてIG(イグニッション) ONへの指示がなされた場合、車両1および車載装置100はIG ON状態へ遷移する。また、車載装置100がIG ON状態である場合において、車両1においてIG OFFの指示がなされた場合、車両1および車載装置100はACC ON状態へ遷移する。車載装置100がACC ON状態である場合において、車両1においてACC OFFの指示がなされた場合、車載装置100はサスペンド状態へ遷移する。車載装置100がサスペンド状態である場合において、車両1においてACC ONの指示がなされた場合、車載装置100はACC ON状態へ遷移する。本実施の形態では、サスペンド状態における車載装置100の電力制御に着目して説明を行う。なお、サスペンド状態では、SoC101、通信部108、UI部109への電力供給は停止され、これらはOFF状態にあるものとする。
【0031】
[処理フロー]
図4は、本実施の形態に係る電力制御の処理フローである。本処理フローは、図3に示すサスペンド状態において、制御部106により各部位を制御することで実現される。
【0032】
制御部106は、位置センサ107にて検出された位置情報を取得する(ステップS401)。位置センサ107による位置情報は、位置センサ107から定期的に制御部106に送信されてもよいし、制御部106が位置センサ107に対して要求するような構成であってもよい。また、制御部106は、本工程を実行する際に最新の位置情報を要求するような構成であってもよいし、位置センサ107にて予め検出されて所定の記憶装置に保持されている位置情報を参照するような構成であってもよい。
【0033】
制御部106は、ACC OFF状態への遷移指示に基づいて、車載装置100のサスペンド状態への移行動作を開始する(ステップS402)。
【0034】
制御部106は、サスペンド状態への遷移に伴って、eMMCなどの不揮発性メモリ102から所定の動作プログラム等をDRAM103へバックアップする動作を行う(ステップS403)。ここでのバックアップ対象は予め規定されていてよい。
【0035】
制御部106は、ステップS401にて取得した位置情報に基づいて、DRAM103におけるバックアップ期間の判定を行う(ステップS404)。バックアップ期間の判定方法については、後述する。
【0036】
制御部106は、ステップS404にて判定したバックアップ期間を用いて設定を行う(ステップS405)。
【0037】
制御部106は、経過日数のカウント動作を開始する(ステップS406)。本工程のカウント動作については、図5を用いて後述する。
【0038】
制御部106は、経過日数がバックアップ期間に到達したか否かを判定する(ステップS407)。バックアップ期間に到達した場合(ステップS407;YES)、制御部106の処理はステップS408へ進む。バックアップ期間に到達していない場合(ステップS407;NO)、制御部106の処理はステップS410へ進む。
【0039】
制御部106は、DRAM103のOFF命令を電源管理部104へ発行する(ステップS408)。
【0040】
電源管理部104は、制御部106から受け付けたDRAM103のOFF命令に従って、DRAM103への電力供給を停止する(ステップS409)。これに伴って、車載装置100は、スリープ状態へと遷移する。そして、本処理フローを終了する。
【0041】
制御部106は、ACC ON状態への遷移命令を受信したか否かを判定する(ステップS410)。遷移命令を受信した場合(ステップS410;YES)、制御部106の処理はステップS411へ進む。一方、遷移命令を受信していない場合(ステップS410;NO)、制御部106の処理はステップS406へ戻り、カウント動作を繰り返す。
【0042】
制御部106は、ACC ON状態へ遷移させ、これに伴って、SoC101の起動やカウント動作の停止を行う(ステップS411)。そして、本処理フローを終了する。
【0043】
(カウント動作)
図5は、図4のステップS406にて実行されるカウント動作を説明するためのシーケンス図である。本実施の形態では、カウント動作を制御部106に内蔵されたアラーム割込部501によるアラーム割り込み機能を用いて実現する。なお、カウント動作は、公知の機能を利用してよく、これに限定するものではない。
【0044】
制御部106は、サスペンド状態への遷移、すなわち、ACC OFF命令の受信に伴って、アラーム割込部501に対してアラーム設定を行う。ここで設定される期間は、所定の期間が設定され、バックアップ期間と対応付けて管理されるものとする。ここでは、X日として説明する。アラーム設定が行われた後、制御部106は、スリープ状態となる。スリープ状態であっても、制御部106に内蔵されたアラーム割込部501は動作を継続する。
【0045】
アラーム割込部501は、アラーム設定により設定された期間(X日)に経過したタイミングでアラーム割り込みを発生させ、制御部106を起動する。起動された制御部106は、電源管理部104を介して電源105の状態を確認する。ここでの電源105の状態としては、残容量などが挙げられ、所定の閾値以下である場合にはNGと判定してよい。残容量が閾値より高い場合には、制御部106は、バックアップ期間の残日数を考慮して、再度、アラーム割込部501に対して所定の期間(X日)を設定する。なお、本実施の形態では、制御部106がアラーム割込部501によるアラーム割り込みにより起動された際に行われるチェックのたびに、図4のステップS407の判定処理が行われてよい。
【0046】
上記のカウント動作が、バックアップ期間が経過するまで繰り返される。一方、バックアップ期間が経過する前に電源105の状態がNGと判定された場合には、制御部106は、DRAM103をOFF状態とする命令を電源管理部104に発行し、図3に示すスリープ状態へ遷移させる。
【0047】
[バックアップ期間設定]
図6図9を用いて、本実施の形態に係るDRAM103のバックアップ期間の設定について説明する。本実施の形態では、DRAM103のデータ維持のためのバックアップ電流がDRAM103の周辺温度、すなわち、車載装置100の環境温度に影響されることを考慮し、DRAM103が利用されている位置情報に基づいて、そのバックアップ期間を可変的に制御する。
【0048】
図6図7は、本実施の形態に係るバックアップ期間の設定のためのテーブル構成の例を示す図である。本実施の形態では、位置情報に対応する周辺温度を規定したテーブルを定義しておく。例えば、東京に対応する緯度、経度、高度(言い換えると標高)に対し、季節ごとの基準温度を設定する。例えば、東京に相当する位置において、季節が7~9月であり、標高が0-500mである場合、周辺温度は、「70℃」として参照される。更に、図7に示すテーブルを参照し、周辺温度が「70℃」である場合には、バックアップ期間、すなわち、DRAM103への電力供給をカットするまでの時間は「21日」として判定される。
【0049】
なお、図6の例では、緯度、経度を1つの値にて示しているが、範囲にて示してもよい。また、高度(標高)についても2つの区分けに限定するものではなく、より多くの区分けを用いてもよい。また、季節の区分けについても図6の構成に限定するものではなく、月ごとに設定してもよいし、そのほかの時期の情報に対応付けて設定してもよい。これらの区分けは、車載装置100が利用される環境を想定して設定されてよい。
【0050】
図6図7に示す設定値は、DRAM103の特性や電源105の容量などに応じて規定されてよい。図8は、バックアップ期間を定義する際の例を説明するためのグラフ図である。ここでは、図2に示した特性を有するDRAM103を例に挙げて説明する。例えば、グラフ201の特性を有するDRAM103の場合、図8(a)に示すように、70℃ではA1mAのバックアップ電流がリフレッシュ動作時に必要となる。この場合に、バックアップ期間を21日の設定を行っていたとする。
【0051】
一方、図8(b)に示すように、80℃ではA2(>A1)mAのバックアップ電流がリフレッシュ動作時に必要となる。そのため、電源105の電力消費を抑制するために、より周辺温度が高い環境ではバックアップ期間を21日よりも短い期間にて設定することが望ましい。例えば、A1=2.1mA、A2=3.0mAとした場合、80℃におけるバックアップ電流は70℃におけるそれの約1.43倍となるため、この比に基づいて、80℃の場合のバックアップ期間を14.7日(=21日/1.43)と設定してよい。なお、基準となる温度(上記の例では、70℃)に対するバックアップ期間(上記の例では、21日)は任意の値を設定してよく、例えば、図2に示すようなバックアップ電流が急激に増加する温度や、DRAM103の消費電力を考慮して設定してよい。
【0052】
図9は、本実施の形態に係るバックアップ期間の設定のためのテーブル構成の別の例を示す図である。図9の構成の場合、予め位置情報および季節に応じてバックアップ期間が規定されている。
【0053】
また、DRAMへ供給されるバックアップ電流の値は、図3に示す状態に応じて、異なるように制御してよい。例えば、サスペンド状態、すなわち、バックアップ期間においてDRAMに供給するバックアップ電流を、リフレッシュ動作が可能な範囲で、ACC ON状態やIG ON状態の場合よりも低下させるような構成であってもよい。また、バックアップ期間が経過するに従って、バックアップ電流を、リフレッシュ動作が可能な範囲で、徐々に低減させるような構成であってもよい。更には、周辺温度によって、バックアップ電流を変動させる範囲を変化させるような構成であってもよい。このような構成により、消費電力を抑制できる。
【0054】
以上、本実施の形態により、車両1に搭載される車載装置100は、DRAM103と、車載装置100の位置情報を取得する位置センサ107と、車両1がサスペンド状態である場合に、DRAM103に保持されたデータを維持するために、電源105に、バックアップ期間の間、DRAM103に対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部106および電源管理部104と、位置情報に基づいて、バックアップ期間を設定する制御部106と、を有する。これにより、車載装置100において、環境に応じて変化するバックアップ電流を考慮して、DRAMの電力制御を行うことが可能となる。
【0055】
また、制御部106は、位置情報に基づいて特定される、車載装置100の周辺の温度である周辺温度に応じて、バックアップ期間を設定する。これにより、車載装置100の位置情報に応じた周辺温度を考慮してバックアップ期間を設定することが可能となる。
【0056】
また、制御部106は更に、季節の情報に基づいて周辺温度を特定する。これにより、車載装置100は、環境情報の一つとして、季節の情報に基づいて、DRAM103が利用される環境の周辺温度を特定することが可能となる。
【0057】
また、バックアップ期間は、周辺温度の増減に対応して増減するバックアップ電流の値に基づいて設定される。これにより、周辺温度に影響されるDRAM103の特性としてのバックアップ電流の変動に基づいて、バックアップ期間を設定することが可能となる。
【0058】
また、位置情報は、緯度、経度、高度を含む。これにより、緯度、経度、高度に対応した温度情報に基づいて、バックアップ期間を設定することが可能となる。
【0059】
<実施の形態2>
以下、本発明の実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1と重複する構成については説明を省略し、差分に着目して説明する。
【0060】
実施の形態1では、位置センサ107により得られる位置情報に基づいて、DRAM103に対するバックアップ期間を設定していた。本実施の形態では位置センサ107に代えて温度センサを用いる。温度センサは、例えば、DRAM103の周辺に設置され、その周辺温度を検出する。
【0061】
そして、制御部106は、温度センサにて取得された温度と、実施の形態1の図7にて示したようなテーブルを用いてバックアップ期間を設定する。このとき、制御部106は、温度センサにより検出された温度情報に対し、検出日時、検出時の車両1の状態などを考慮して、利用する温度を判定してもよい。例えば、一定期間内に検出された温度の平均を用いてもよいし、車両1が駐車中に検出された温度情報を利用するような構成であってもよい。
【0062】
以上、本実施の形態により、車両1に搭載される車載装置100は、DRAM103と、車載装置100の周辺の温度である周辺温度を取得する温度センサと、車両1がサスペンド状態である場合に、DRAM103に保持されたデータを維持するために、電源105に、バックアップ期間の間、DRAM103に対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部106および電源管理部104と、周辺温度に基づいて、バックアップ期間を設定する制御部106と、を有する。これにより、車載装置100において、環境に応じて変化するバックアップ電流を考慮して、DRAMの電力制御を行うことが可能となる。
【0063】
<実施の形態3>
以下、本発明の実施の形態3について説明する。なお、実施の形態1と重複する構成については説明を省略し、差分に着目して説明する。
【0064】
実施の形態1、および実施の形態2では、周辺温度に基づいてバックアップ期間を設定する構成について説明した。本実施の形態では、電源105にて供給される電流量を監視し、その監視結果に応じてDRAM103へのバックアップ電力の供給を停止する構成について説明する。
【0065】
[装置構成]
図10は、本実施の形態に係る車載装置100の構成例を示すブロック図である。実施の形態に示した図1との差分として、電流監視回路1001が備えられる。電流監視回路1001は、電源105によるDRAM103へ提供される電流量の監視を行う。電流監視回路1001は、計測時の電流値、単位時間当たりの電流値の平均、累積値、変動率などを監視してよい。
【0066】
[処理フロー]
図11は、本実施の形態に係る電力制御の処理フローである。本処理フローは、図3に示すサスペンド状態において、制御部106により各部位を制御することで実現される。
【0067】
制御部106は、ACC OFF状態への遷移指示に基づいて、サスペンド状態への移行動作を開始する(ステップS1101)。
【0068】
制御部106は、サスペンド状態への遷移に伴って、eMMCなどの不揮発性メモリ102から所定の動作プログラム等をDRAM103へバックアップする動作を行う(ステップS1102)。ここでのバックアップ対象は予め規定されていてよい。
【0069】
電流監視回路1001は、電源105の電流量の監視を開始する(ステップS1103)。ここでの監視項目は特に限定するものではなく、上述したような電流に関する1または複数の項目が監視されてよい。なお、本実施の形態では、図5に示したように、定期的にアラーム割り込みを発生させ、このアラーム割り込みのタイミングにて電流量の監視を行う。これにより、電流量の監視に要する電力、すなわち、電流監視回路1001を動作させるための電力消費を抑制することができる。
【0070】
制御部106は、電流監視回路1001の監視結果に基づいて、電流量の積算値が所定の閾値以上か否かを判定する。電流量の積算値が閾値以上である場合(ステップS1104;YES)、制御部106の処理はステップS1105へ進む。一方、電流量の積算値が閾値より小さい場合(ステップS1104;NO)、制御部106の処理はステップS1107へ進む。
【0071】
制御部106は、DRAM103のOFF命令を電源管理部104へ発行する(ステップS1105)。
【0072】
電源管理部104は、制御部106から受け付けたDRAM103のOFF命令に従って、DRAM103への電力供給を停止する(ステップS1106)。これに伴って、車載装置100は、スリープ状態へと遷移する。そして、本処理フローを終了する。
【0073】
制御部106は、ACC ON状態への遷移命令を受信したか否かを判定する(ステップS1107)。遷移命令を受信した場合(ステップS1107;YES)、制御部106の処理はステップS1108へ進む。一方、遷移命令を受信していない場合(ステップS1107;NO)、制御部106の処理はステップS1103へ戻り、カウント動作を繰り返す。
【0074】
制御部106は、ACC ON状態へ遷移させ、これに伴って、SoC101の起動やカウント動作の停止を行う(ステップS1108)。そして、本処理フローを終了する。
【0075】
以上、本実施の形態により、車両1に搭載される車載装置100は、DRAM103と、DRAM103に電力を供給する電源105の電流量を監視する電流監視回路1001と、車両1がサスペンド状態である場合に、DRAM103に保持されたデータを維持するために、電源105からDRAM103に対するバックアップ電流の供給を定期的に行わせる制御部106および電源管理部104と、を有し、制御部106は、電流監視回路1001により、電源105から供給した電流量の積算値が所定の閾値を超えたことに応じて、バックアップ電流の供給を停止させる。これにより、車載装置100において、環境に応じて変化するバックアップ電流を監視して、DRAMの電力制御を行うことが可能となる。
【0076】
<その他の実施形態>
また、上述した1以上の実施の形態の機能を実現するためのプログラムおよびアプリケーションを、ネットワークまたは記憶媒体などを用いてシステムまたは装置に供給し、そのシステムまたは装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読出し実行する処理でも実現可能である。
【0077】
また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、またはFPGA(Field Programmable Gate Array))によって実現してもよい。
【0078】
以上、図面を参照しながら各種の実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例、修正例、置換例、付加例、削除例、均等例に相当し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述した各種の実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本開示は、車載装置、および電力制御方法として有用である。
【符号の説明】
【0080】
1…車両
100…車載装置
101…SoC
102…不揮発性メモリ
103…揮発性メモリ(DRAM)
104…電源管理部
105…電源
106…制御部
107…位置センサ
108…通信部
109…UI部
1001…電流監視回路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11