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特開2023-125450切削加工機のツールストッカおよび切削加工機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125450
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】切削加工機のツールストッカおよび切削加工機
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/157 20060101AFI20230831BHJP
   B23Q 11/08 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B23Q3/157 C
B23Q11/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029552
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】百々 晋平
(72)【発明者】
【氏名】小川 洋一郎
【テーマコード(参考)】
3C002
3C011
【Fターム(参考)】
3C002CC00
3C002HH06
3C011DD00
(57)【要約】
【課題】収納孔の識別がしやすい切削加工機のツールストッカを提供する。
【解決手段】切削加工機のツールストッカ80は、それぞれ切削ツールを収納可能であって通し番号が付された複数の収納孔81が形成された収納面80Uを備えている。複数の収納孔81は、通し番号が連続する一部の複数の収納孔81-1~81-5が通し番号の順に並んだ第1の収納孔群81Aと、通し番号が連続する他の一部の複数の収納孔81-6~81-10が通し番号の順に並んだ第2の収納孔群81Bと、を含んでいる。ツールストッカ80は、第1の収納孔群81Aを通し番号の順に繋ぐように表示された第1の表示82Aと、第2の収納孔群81Bを通し番号の順に繋ぐように表示された第2の表示82Bと、をさらに備えている。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ切削ツールを収納可能であって通し番号が付された複数の収納孔が形成された収納面を備え、
前記複数の収納孔は、
通し番号が連続する一部の複数の収納孔が通し番号の順に並んだ第1の収納孔群と、
通し番号が連続する他の一部の複数の収納孔が通し番号の順に並んだ第2の収納孔群と、を含んでおり、
前記第1の収納孔群を通し番号の順に繋ぐように表示された第1の表示と、
前記第2の収納孔群を通し番号の順に繋ぐように表示された第2の表示と、をさらに備えている、
切削加工機のツールストッカ。
【請求項2】
前記第1の表示は、前記第1の収納孔群のうち通し番号が連続する2つの収納孔をそれぞれ繋ぐように延びる第1の線群を含み、
前記第2の表示は、前記第2の収納孔群のうち通し番号が連続する2つの収納孔をそれぞれ繋ぐように延びる第2の線群を含んでいる、
請求項1に記載の切削加工機のツールストッカ。
【請求項3】
前記第1の収納孔群は、前記収納面においてジグザグに配置され、
前記第2の収納孔群は、前記収納面において前記第1の収納孔群と並んで配置され、前記第1の収納孔群の配置に対応するようにジグザグに配置されている、
請求項1または2に記載の切削加工機のツールストッカ。
【請求項4】
上方から前記収納面を覆う化粧板をさらに備え、
前記収納面の色と前記化粧板の色とは異なっており、
前記化粧板は、
前記第1の収納孔群を通し番号の順に繋ぐとともに、下方の前記収納面を視認可能なように上下方向に貫通し、前記第1の表示を形成する第1の貫通孔群と、
前記第2の収納孔群を通し番号の順に繋ぐとともに、下方の前記収納面を視認可能なように上下方向に貫通し、前記第2の表示を形成する第2の貫通孔群と、を備えている、
請求項1~3のいずれか一つに記載の切削加工機のツールストッカ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載のツールストッカと、
前記複数の収納孔に収納された各切削ツールを把持可能に構成された把持部と、前記把持部を回転させるスピンドルと、を備えた切削装置と、
前記切削装置および前記ツールストッカのうちの少なくとも一方を移動させることにより、各切削ツールを把持可能な位置に前記ツールストッカに対する前記把持部の位置を移動させる移動装置と、を備えた、
切削加工機。
【請求項6】
前記収納面には、前記把持部に把持可能に構成され前記切削ツールとは長さの異なるダミーピンが収納されるダミーピン収納孔が形成されている、
請求項5に記載の切削加工機。
【請求項7】
前記ツールストッカよりも前方に配置され前記ツールストッカにアクセス可能に開口した前面開口部を有する筐体をさらに備え、
前記複数の収納孔は、前記ダミーピン収納孔よりも前方に設けられている、
請求項6に記載の切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機のツールストッカと、ツールストッカを備えた切削加工機と、に関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物を切削加工することによって、例えば歯科用成形品などを作製する切削加工機が従来から知られている。切削加工機の中には、切削の種類などに応じて切削ツールを交換する機能を有するものが存在する。例えば特許文献1には、複数の加工ツールを収納するツールマガジンを備えた切削加工機が開示されている。特許文献1に記載の切削加工機では、ツールマガジンは、左右方向および前後方向にマトリクス状に並んで配置され、それぞれ加工ツールを収納可能な複数の収納孔を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-013155号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の収納孔には、それぞれ、予め定められた切削ツールが収容される必要がある。収納孔に収納する切削ツールを間違うと、切削加工に失敗したり、切削装置を破損させてしまったりするおそれがある。ユーザが収納孔に収納する切削ツールを間違う原因の1つとして、複数の収納孔の識別が一見では難しいことが挙げられる。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、収納孔の識別がしやすい切削加工機のツールストッカを提供することである。また、そのようなツールストッカを備えた切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する切削加工機のツールストッカは、それぞれ切削ツールを収納可能であって通し番号が付された複数の収納孔が形成された収納面を備えている。前記複数の収納孔は、通し番号が連続する一部の複数の収納孔が通し番号の順に並んだ第1の収納孔群と、通し番号が連続する他の一部の複数の収納孔が通し番号の順に並んだ第2の収納孔群と、を含んでいる。切削加工機のツールストッカは、前記第1の収納孔群を通し番号の順に繋ぐように表示された第1の表示と、前記第2の収納孔群を通し番号の順に繋ぐように表示された第2の表示と、をさらに備えている。
【0007】
上記ツールストッカによれば、第1の表示により、第1の収納孔群が通し番号の順に繋がれている。そのため、第1の収納孔群の内部において、収納孔がどのように並んでいるかが視認しやすい。第2の収納孔群についても同様であり、第2の収納孔群は、第2の表示により、通し番号の順に繋がれている。そのため、第2の収納孔群の内部において、収納孔の並び方が視認しやすい。また、上記ツールストッカによれば、第1の表示と第2の表示とにより、第1の収納孔群と第2の収納孔群とが区別できる。そのため、例えば、第1の収納孔群に属する収納孔と第2の収納孔群に属する収納孔とを連続した通し番号の収納孔だと誤認するような間違いが抑制される。よって、上記ツールストッカによれば、収納孔の識別がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る切削加工機の斜視図である。
図2】被切削物およびアダプタの平面図である。
図3】左方から見た切削加工機の縦断面図である。
図4】右方から見た切削加工機の縦断面図である。
図5】ワークホルダの平面図である。
図6】アダプタを交換中の切削加工機を示す縦断面図である。
図7】切削装置室および駆動装置室の斜視図である。
図8】ツールストッカの平面図である。
図9】切削加工のプロセスのフローチャートである。
図10】収納孔の通し番号の誤認の例を示すツールストッカの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0010】
[切削加工機の構成]
図1は、一実施形態に係る切削加工機10の斜視図である。以下の説明では、切削加工機10を正面から見たときに、切削加工機10から遠ざかる方を前方、切削加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、切削加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0011】
本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタに保持されたディスク状の被切削物を切削加工する切削加工機である。図2は、被切削物1およびアダプタ5の平面図である。切削加工機10は、ここでは、被切削物1を切削して、歯科用成形品、例えば、クラウン、ブリッジ、コーピング、インレー、アンレー、ベニア、カスタムアバットメント等の歯冠補綴物や、人工歯、義歯床等を作製する装置である。本実施形態に係る切削加工機10は、クーラントを使用しないドライ式の切削加工機である。
【0012】
被切削物1は、例えば、PMMA、PEEK、ガラス繊維強化樹脂、ハイブリッドレジン等のレジンや、ガラスセラミックス、ジルコニア等のセラミックス材料、コバルトクロムシンターメタル等の金属材料、ワックス、石膏等で構成されている。被切削物1の材料としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。ここでは、被切削物1の形状は、ディスク状(円板状)である。ただし、被切削物1は、他の形状、例えばブロック状(例えば立方体状や直方体状)等であってもよい。
【0013】
アダプタ5は、ディスク状の被切削物1を保持する。アダプタ5は、ここでは、被切削物1に対応する略円形の挿入孔5aが中央部に形成された平板状のアダプタである。被切削物1は、挿入孔5aに挿入されることにより、アダプタ5に保持される。被切削物1は、アダプタ5に保持された状態で切削加工機10に収容され、加工される。
【0014】
図1に示すように、切削加工機10は、箱状に構成された筐体11を有している。図3は、左方から見た切削加工機10の縦断面図である。図4は、右方から見た切削加工機10の縦断面図である。図1に示すように、筐体11の内部は、アダプタ5を保持するワークホルダ20が収容された加工室120(図3も参照)と、ワークホルダ20を移動させるホルダ移動装置30(図4参照)が収容された駆動装置室130と、ワークチェンジャ70が収容されたチェンジャ室170と、切削ツール6(図7参照)をツールストッカ80(同じく図7参照)に収納するためのツール交換室180と、を含む複数の空間に区画されている。
【0015】
図1に示すように、加工室120は、筐体11の左下部分に配置されている。図3に示すように、加工室120は、筐体11の後端部まで延びている。チェンジャ室170は、加工室120の前方側部分の上方に配置されている。チェンジャ室170は、筐体11の前後方向の中央部まで延びている。駆動装置室130は、加工室120の右方に配置されている。図4に示すように、駆動装置室130は、筐体11の後端部まで延びている。ツール交換室180は、駆動装置室130の前方側部分の上方に配置されている。ツール交換室180は、筐体11の前後方向の中央部まで延びている。なお、駆動装置室130は加工室120の左方に配置されていてもよい。その場合、ツール交換室180は、チェンジャ室170の左方に配置されていてもよい。
【0016】
加工室120の前面開口部121(図3参照)には、加工室扉122が開閉自在に設けられている。駆動装置室130の前面開口部には、駆動装置室カバー131が設けられている。チェンジャ室170の前面開口部には、チェンジャ室扉171が開閉自在に設けられている。ツール交換室180の前面開口部181(図4参照)には、ツール交換室扉182が開閉自在に設けられている。加工室扉122、チェンジャ室扉171、およびツール交換室扉182には、それぞれ、内部を視認可能なように透明な窓部122a、171a、および182aが設けられている。駆動装置室カバー131の前面には、操作パネル110が設けられている。図3および図4に示すように、筐体11の前面(ここでは、加工室120、駆動装置室130、チェンジャ室170、およびツール交換室180の前面開口部)は、底面に対して斜めに形成されている。筐体11の前面は、後方に傾くように形成されている。
【0017】
図3および図4に示すように、加工室120および駆動装置室130の上方であってチェンジャ室170、およびツール交換室180の後方には、切削装置50と、切削装置50を移動させる主軸移動装置60(後述するが、切削装置50は、回転するスピンドルユニット52を備えた主軸51を有する)と、が収容された切削装置室150が配置されている。切削装置室150は、ここでは、筐体11の左右方向の幅のほぼ全てを占めている。
【0018】
ワークホルダ20は、被切削物1を保持する保持装置の一例である。ワークホルダ20は、ここでは、アダプタ5を介して被切削物1を保持する。ただし、ワークホルダ20は、他の部材を介さず、直接に被切削物1を保持してもよい。図5は、ワークホルダ20の平面図である。図5に示すように、ワークホルダ20は、左右一対のアーム21を備えている。アダプタ5は、一対のアーム21の間に挿入されることによってワークホルダ20に保持される。一対のアーム21の間にアダプタ5が挿入される際の切削加工機10の動作については後述する。
【0019】
ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を支持して移動させるものである。本実施形態では、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を前後方向に移動させる。より詳しくは、図4に示すように、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を後方に向かって下降するように斜め前後方向に移動させる。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により前方に移動されると上方にも移動する。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により後方に移動されると下方にも移動する。図4に示すように、以下では、ホルダ移動装置30によってワークホルダ20が移動される方向をX軸方向とも呼ぶ。また、以下では、特に断る必要がない場合には、X軸方向の前方を単に前方と、X軸方向の後方を単に後方と言うことがある。
【0020】
図5に示すように、ホルダ移動装置30は、左右方向に延びるとともにワークホルダ20を支持する支持アーム31を備えている。図4に示すように、ホルダ移動装置30は、支持アーム31に接続されたX軸方向移動体32と、一対のX軸ガイドレール33と、X軸方向駆動モータ34と、ボールねじ35と、を備えている。ホルダ移動装置30は、支持アーム31をX軸方向に移動させることにより、ワークホルダ20をX軸方向に移動させる。ホルダ移動装置30のX軸方向移動体32、一対のX軸ガイドレール33、X軸方向駆動モータ34、ボールねじ35、および支持アーム31の一部は、駆動装置室130に収容されている。
【0021】
図4に示すように、一対のX軸ガイドレール33は、X軸方向に延びている。X軸方向移動体32は、一対のX軸ガイドレール33に摺動可能に係合している。X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動することが可能である。ボールねじ35は、X軸方向に延びている。ボールねじ35は、X軸方向移動体32に設けられたナットに噛み合わされている。X軸方向駆動モータ34は、ボールねじ35を軸線周りに回転させる。X軸方向駆動モータ34を駆動してボールねじ35を回転させると、X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動する。なお、ホルダ移動装置30は、ボールねじ機構を有するものには限定されず、例えば、タイミングベルトやワイヤを有していてもよい。
【0022】
図5に示すように、支持アーム31は、左右方向に延びる軸線Axb周りに回転する回転シャフト31aと、軸線Axbと直交するように回転シャフト31aに接続され回転シャフト31aとともに前後方向に回転する第1アーム31bと、軸線Axbに平行に(第1アーム31bと直交するように)第1アーム31bに接続された第2アーム31cと、を備えている。図4に示すように、X軸方向移動体32には、回転シャフト31aを軸線Axb周りに回転させるB軸回転モータ41Bが設けられている。支持アーム31とB軸回転モータ41Bとは、ワークホルダ20を回転させることによりワークホルダ20の姿勢を変更する回転装置40の一部を構成している。B軸回転モータ41Bが駆動して回転シャフト31aが回転すると、ワークホルダ20は前後方向に回転する。以下、軸線Axbの伸長方向をB軸方向とも呼び、軸線Axb周りに回転することをB軸周りに回転するとも言う。また、回転装置40のうち、ワークホルダ20をB軸周りに回転させる装置をB軸回転装置40Bとも呼ぶ。
【0023】
回転装置40は、ワークホルダ20を左右方向に回転させるA軸回転装置40Aも備えている。図5に示すように、A軸回転装置40Aは、A軸回転モータ41Aと、回転軸42Aと、を備えている。A軸回転モータ41Aは、第2アーム31cに固定されている。回転軸42Aは、A軸回転モータ41Aに接続され、軸線Axaに沿って前後方向に延びている。A軸回転モータ41Aを駆動すると、回転軸42Aは、軸線Axa周りに回転する。以下では、軸線Axaの伸長方向をA軸方向とも呼び、軸線Axa周りに回転することをA軸周りに回転するとも言う。
【0024】
加工室120は、複数の壁部によって区画され、ワークホルダ20を収容している。図3に示すように、複数の壁部は、底壁120D、左側壁120L(図1参照)、右側壁120R、後壁120Rr、前壁120F、および天壁120Uを含んでいる。複数の壁部120D、120L、120R、120Rr、120F、および120Uは、ここでは金属板によって形成されている。底壁120Dは、ワークホルダ20よりも下方に配置され、加工室120の底面を形成している。加工室120の前壁120Fには、前面開口部121が形成されている。前述したように、前面開口部121には、加工室扉122が開閉可能に設けられている。
【0025】
図3に示すように、天壁120Uは、加工室120とチェンジャ室170との間を区画するとともに、加工室120と切削装置室150との間を区画している。天壁120Uには、加工室120とチェンジャ室170とを連通させる前方側開口部124と、加工室120と切削装置室150とを連通させる後方側開口部125と、が開口している。加工室120の天壁120Uの前方側部分は、チェンジャ室170の底壁でもある。前方側開口部124は、チェンジャ室170の下方に形成されている。前方側開口部124は、ワークチェンジャ70の搬送装置72によって搬送される被切削物1が通過可能な開口部である。後述するが、ここでは、搬送装置72は、アダプタ5を収納したアダプタ収納部71を前方側開口部124から加工室120に搬送する。
【0026】
加工室120の天壁120Uの後方側部分は、切削装置室150の底壁の左側部分でもある。後方側開口部125は、切削装置室150の下方に形成されている。後方側開口部125は、主軸51の下方部分が通過可能な開口部である。後方側開口部125は、後述するZ軸方向移動装置60Zによって主軸51がZ軸方向(図3参照)に移動される際に、切削ツール6および主軸51が通過する開口部である。詳しくは後述するが、後方側開口部125は、駆動装置室130と切削装置室150とを連通させるように、駆動装置室130の上方まで延びている(図7参照)。
【0027】
ワークチェンジャ70は、複数の被切削物1を収納可能に構成されており、加工する被切削物1を交換するために使用される。図3に示すように、ワークチェンジャ70は、複数の被切削物1(ここでは、被切削物1が装着されたアダプタ5、図2参照)を収納可能なアダプタ収納部71と、アダプタ収納部71を加工室120に搬送する搬送装置72と、を備えている。例えば被切削物1の交換時のような場合を除き、アダプタ収納部71は、チェンジャ室170に収容されている。図1に示すように、アダプタ収納部71には、それぞれ1つのアダプタ5を収納する棚状の収納スペース71aが複数設けられている。複数の収納スペース71aは、上下方向に並んでいる。より詳しくは、複数の収納スペース71aは、X軸方向に直交する斜め上下方向(以下、L軸方向とも呼ぶ、図3参照)に並んで配置されている。
【0028】
搬送装置72は、L軸方向に延びるスライドアーム72Aと、L軸方向駆動モータ72Bと、ボールねじ72Cと、を備えている。スライドアーム72Aは、アダプタ収納部71に固定され、L軸方向に伸長および短縮可能である。アダプタ収納部71には、ボールねじ72Cが噛み合っている。L軸方向駆動モータ72Bは、ボールねじ72Cに接続され、ボールねじ72Cを回転させる。L軸方向駆動モータ72Bが駆動することによりボールねじ72Cが回転すると、スライドアーム72Aが伸縮するとともに、アダプタ収納部71がL軸方向に移動する。
【0029】
図6は、アダプタ収納部71が加工室120内に下降した状態を示している。アダプタ収納部71は、加工室120の前方側開口部124を通って加工室120内に移動する。図6に示すように、アダプタ5は、ワークホルダ20がX軸方向の前方側に前進し、アダプタ5の収納スペース71a(図1参照)に突入することにより、ワークホルダ20に保持される。
【0030】
切削装置50および切削装置50の移動装置(主軸移動装置60)は、切削装置室150に収容されている。切削装置50は、ワークホルダ20に保持された被切削物1を切削する。図3に示すように、切削装置50および主軸移動装置60は、ワークホルダ20よりも上方に設けられている。切削装置50は、切削ツール6を把持して回転させる主軸51を備えている。主軸51は、スピンドルユニット52と、スピンドルユニット52の下端部に設けられた把持部53と、を備えている。スピンドルユニット52は、X軸方向と直交する(ここでは、L軸方向と平行な)方向に延びている。以下、この方向をZ軸方向とも呼ぶ。スピンドルユニット52は、把持部53をZ軸方向に平行な軸線周りに回転させる。把持部53は、後述するツールストッカ80の複数の収納孔81に収納された各切削ツール6を把持可能に構成されている。スピンドルユニット52は、ここでは、モータ内蔵のユニットである。ただし、スピンドルユニット52は、例えば、外部のモータとベルト等により接続されていてもよい。把持部53は、例えば、エア駆動式のコレットチャックである。ただし、把持部53の方式は特に限定されない。
【0031】
主軸移動装置60は、切削装置50をZ軸方向および左右方向に移動させる。左右方向は、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向である。以下では、左右方向のことをY軸方向とも呼ぶ。主軸移動装置60が切削装置50をY軸方向およびZ軸方向に移動させ、ホルダ移動装置30がワークホルダ20をX軸方向に移動させることにより、切削ツール6と被切削物1との位置関係が三次元的に変化する。Z軸方向は、加工室120の天壁120Uに交差する(ここでは直交する)方向であり、切削装置50は、Z軸方向の移動により、加工室120内に出現し、または、切削装置室150内に退避する。
【0032】
主軸移動装置60は、Y軸方向移動装置60Yと、Z軸方向移動装置60Zと、を備えている。Y軸方向移動装置60Yは、切削装置50をY軸方向に移動させる装置である。Z軸方向移動装置60Zは、切削装置50をZ軸方向に移動させる装置である。図7は、切削装置室150および駆動装置室130の斜視図である。図7では、切削装置室150および駆動装置室130の内部が見えるように、一部の部材の図示を省略している。図7に示すように、Y軸方向移動装置60Yは、Y軸方向に延びる一対のY軸ガイドレール61Yと、Y軸ガイドレール61Yに摺動可能に係合したY軸方向移動体62Yと、Y軸方向駆動モータ63Yと、ボールねじ64Yと、を備えている。一対のY軸ガイドレール61Yは、切削装置室150の底壁に設けられている。Y軸ガイドレール61Yは、駆動装置室130の上方まで延びている。Y軸方向移動体62Yは、Y軸ガイドレール61Yに沿ってY軸方向に移動可能である。Y軸方向移動体62Yは、Y軸ガイドレール61Yに沿って駆動装置室130の上方まで移動することができる。Y軸方向移動体62Yは、Z軸方向移動装置60Zを支持している。Z軸方向移動装置60Zは、Z軸方向に移動可能に切削装置50を支持している。
【0033】
図7に示すように、ボールねじ64Yは、Y軸方向に延びている。ボールねじ64Yは、Y軸方向移動体62Yに噛み合わされている。Y軸方向駆動モータ63Yは、ボールねじ64Yを回転させる。Y軸方向駆動モータ63Yが駆動し、ボールねじ64Yが回転すると、Y軸方向移動体62Yは、Y軸ガイドレール61Yに沿ってY軸方向に移動する。これにより、Z軸方向移動装置60Zおよび切削装置50がY軸方向に移動する。
【0034】
図3に示すように、Z軸方向移動装置60Zは、Z軸方向に延びる一対のZ軸ガイドシャフト61Zと、Z軸ガイドシャフト61Zに摺動可能に係合し切削装置50を支持するZ軸方向移動体62Zと、Z軸方向駆動モータ63Zと、図示しないボールねじと、を備えている。Z軸方向移動装置60Zも、Y軸方向移動装置60YがZ軸方向移動装置60Zを移動させるのと同様の仕組みで、切削装置50をZ軸方向に移動させる。
【0035】
図7に示すように、本実施形態では、ツールストッカ80は、駆動装置室130に収容されている。ツールストッカ80は、複数の切削ツール6を収納可能に構成されている。複数の切削ツール6は、例えば、被切削物1の材料や切削の種類に応じて使い分けられる。図7に示すように、ツールストッカ80は、X軸方向移動体32に支持されている。詳しくは、ツールストッカ80は、X軸方向移動体32の上面に固定されている。従来、ツールストッカは、ホルダ移動装置の支持アームに支持されていた。そのため、従来の切削装置では、支持アームが撓みやすく、被切削物1の切削において被切削物1にあまり負荷を掛けることができなかった。具体的には、切削による負荷を考慮して、時間当たりの切削量を制限するなどしていた。本実施形態では、ツールストッカ80がX軸方向移動体32に支持されることにより、支持アーム31の負荷が低減されている。
【0036】
図8は、ツールストッカ80の平面図である。図8に示すように、ツールストッカ80は、それぞれ切削ツール6を収納可能な複数の収納孔81を備えている。複数の収納孔81は、ツールストッカ80の上面(以下、収納面80Uとも呼ぶ)に形成されている。複数の収納孔81は、それぞれ、Z軸方向の下方に向かって凹んでいる。図8に示すように、複数の収納孔81には、通し番号が付されている。通し番号は、各収納孔81の側方に表示されている。ここでは、収納孔81の数は15であり、複数の収納孔81には、それぞれ、1~15の通し番号が付されている。以下では適宜、通し番号が1、2、・・15の収納孔81の符号をそれぞれ、81-1、81-2、・・81-15とする。
【0037】
図8に示すように、複数の収納孔81は、通し番号が連続する一部の複数の収納孔81-1~81-5が通し番号の順に並んだ第1の収納孔群81Aを含んでいる。第1の収納孔群81Aは、全体としてX軸方向に延びる収納孔81の列を形成している。また、複数の収納孔81は、通し番号が連続する他の一部の複数の収納孔81-6~81-10が通し番号の順に並んだ第2の収納孔群81Bを含んでいる。第2の収納孔群81Bも、全体としてX軸方向に延びる収納孔81の列を形成している。第2の収納孔群81Bは、第1の収納孔群81Aよりも右方に配置されている。さらに、複数の収納孔81は、通し番号が連続するさらに他の一部の複数の収納孔81-11~81-15が通し番号の順に並んだ第3の収納孔群81Cを含んでいる。第3の収納孔群81Cも、全体としてX軸方向に延びる収納孔81の列を形成している。第3の収納孔群81Cは、第2の収納孔群81Bよりもさらに右方に配置されている。第1の収納孔群81A、第2の収納孔群81B、および第3の収納孔群81Cは、左右方向に並んで配置されている。
【0038】
図8に示すように、第1の収納孔群81Aは、収納面80Uにおいてジグザグに配置されている。ここでは、収納孔81-2は、収納孔81-1よりもX軸方向の後方かつ右方に配置されており、収納孔81-3は、収納孔81-2よりもX軸方向の後方かつ左方に配置されている。収納孔81-3の左右方向の位置は、収納孔81-1の左右方向の位置と揃っている。収納孔81-4および81-5も同様に、ジグザグに配置されている。
【0039】
第2の収納孔群81Bは、第1の収納孔群81Aの配置に対応するようにジグザグに配置されている。第2の収納孔群81Bに属する収納孔81-6は、第1の収納孔群81Aに属する収納孔81-1の右方に配置されている。収納孔81-6のX軸方向の位置は、収納孔81-1のX軸方向の位置と揃っている。収納孔81-7は、収納孔81-6よりもX軸方向の後方かつ右方に配置されている。収納孔81-7のX軸方向の位置は、収納孔81-2のX軸方向の位置と揃っている。収納孔81-2と81-7との間の左右方向の距離は、収納孔81-1と81-6との間の左右方向の距離と同じである。収納孔81-8~81-10も同様に、ジグザグに配置されている。第1の収納孔群81Aの複数の収納孔81-1~81-5を繋いだジグザグ線と、第2の収納孔群81Bの複数の収納孔81-6~81-10を繋いだジグザグ線とは、左右方向に関してどこでも同じ距離だけ離れている。以下では、上記を第1の収納孔群81Aと第2の収納孔群81Bとが「並行する」とも言う。第3の収納孔群81Cは、第1の収納孔群81Aおよび第2の収納孔群81Bに対して並行している。
【0040】
ツールストッカ80は、第1の収納孔群81Aを通し番号の順に繋ぐように表示された第1の表示82Aと、第2の収納孔群81Bを通し番号の順に繋ぐように表示された第2の表示82Bと、第3の収納孔群81Cを通し番号の順に繋ぐように表示された第3の表示82Cと、をさらに備えている。図8に示すように、第1の表示82Aは、第1の収納孔群81Aのうち通し番号が連続する2つの収納孔をそれぞれ繋ぐように延びる第1の線群82A-1~82A-4を含んでいる。例えば、第1の線群82A-1~82A-4のうちの1本の線82A-1は、収納孔81-1と81-2とを繋いでいる。第1の線群82A-1~82A-4のうちの1本の線82A-2は、収納孔81-2と81-3とを繋いでいる。同様に、第1の線群82A-1~82A-4のうち、線82A-3は収納孔81-3と81-4とを繋ぎ、線82A-4は収納孔81-4と81-5とを繋いでいる。
【0041】
同様に、第2の表示82Bは、第2の収納孔群81Bのうち通し番号が連続する2つの収納孔81をそれぞれ繋ぐように延びる第2の線群82B-1~82B-4を含んでいる。第3の表示82Cは、第3の収納孔群81Cのうち通し番号が連続する2つの収納孔81をそれぞれ繋ぐように延びる第3の線群82C-1~82C-4を含んでいる。
【0042】
図8に示すように、ツールストッカ80は、収納面80Uを上方から覆う平板状の化粧板85を備えている。化粧板85は、複数の収納孔81の位置に対応する位置にそれぞれ設けられた複数のツール孔86を有している。各ツール孔86は、化粧板85を厚さ方向(ここではZ軸方向)に貫通している。収納孔81は、ツール孔86を介してツールストッカ80の外表面に露出している。
【0043】
本実施形態では、第1の表示82A~第3の表示82Cは、化粧板85に形成されている。ここでは、化粧板85は、第1の表示82Aを形成する第1の貫通孔群87A、第2の表示82Bを形成する第2の貫通孔群87B、および、第3の表示82Cを形成する第3の貫通孔群87Cを備えている。第1の貫通孔群87Aは、第1の収納孔群81Aを通し番号の順に繋ぐとともに、下方の収納面80Uを視認可能なように上下方向(ここではZ軸方向)に貫通している。これにより、Z軸方向視において、第1の貫通孔群87Aの領域は収納面80Uの色を呈し、第1の貫通孔群87Aの周辺領域は化粧板85の色を呈する。具体的な色は特に限定されないが、収納面80Uの色と化粧板85の色とは異なる色とされている。その結果、第1の貫通孔群87Aは、その周囲とは異なった色の第1の表示82A(詳しくは、第1の線群82A-1~82A-4)を形成する。
【0044】
同様に、第2の貫通孔群87Bは、第2の収納孔群81Bを通し番号の順に繋ぐとともに、下方の収納面80Uを視認可能なように上下方向に貫通し、第2の表示82Bを形成する。第3の貫通孔群87Cは、第3の収納孔群81Cを通し番号の順に繋ぐとともに、下方の収納面80Uを視認可能なように上下方向に貫通し、第3の表示82Cを形成する。第1の表示82A~第3の表示82Cは、このように貫通孔で形成されることにより、主軸51の摩擦等によっても消えないように構成されている。
【0045】
なお、ここでは、収納孔81の通し番号は、化粧板85に印刷されている。第1の線群82A-1~82A-4、第2の線群82B-1~82B-4、および第3の線群82C-1~82C-4も、例えば、印刷や彫刻などの手段により形成されていてもよい。第1の線群82A-1~82A-4、第2の線群82B-1~82B-4、および第3の線群82C-1~82C-4は、化粧板ではなく、収納面80Uに印刷、彫刻、その他の手段で形成されていてもよい。
【0046】
図8に示すように、切削加工機10は、さらに、切削ツール6の長さを測定するツール長センサ90と、主軸51のX軸方向およびY軸方向の位置を補正するための位置補正突起91と、を備えている。ツール長センサ90および位置補正突起91は、複数の収納孔81よりも後方に設けられている。従って、複数の収納孔81は、ツール長センサ90および位置補正突起91よりも前方に位置する。さらに、複数の収納孔81よりもX軸方向の後方には、ダミーピン7(図3参照)を収納するダミーピン収納孔88が設けられている。ダミーピン7は、切削ツール6を把持しているとき以外は基本的に把持部53に把持されるピンである。ダミーピン7は、非切削時に粉塵が把持部53の内部に侵入しないように、把持部53に把持されるものである。ダミーピン7の長さは、切削ツール6よりも短い。本実施形態では、ユーザがあまり、または全く使用しない部材、ここでは、ツール長センサ90、位置補正突起91、およびダミーピン収納孔88が、複数の収納孔81よりも後方に集約されている。これにより、ユーザが複数の収納孔81にアクセスしやすくなっている。後述するが、ユーザは、ツール交換室扉182を開放して、ツール交換室180の前面開口部181からツールストッカ80にアクセスする。
【0047】
ツール長センサ90は、切削ツール6が接触したことを検知する。ツール長センサ90は、ツールストッカ80の収納面80Uに露出するように設けられている。ここでは、ツール長センサ90は、ツールストッカ80の収納面80Uよりも上方に突出するように設けられている。ツール長センサ90は、ここでは、Z軸方向の上方から切削ツール6が接触したことを検知する。ツール長センサ90は、例えば、切削ツール6に押されることによりON/OFF状態が切り替わるスイッチを備え、スイッチのON/OFF状態が切り替わったときの座標を測定するように構成されている。ただし、ツール長センサ90の検知方式は上記に限定されない。ツール長センサ90は、例えば、切削ツール6の押圧力を検知する圧力センサを備えていてもよい。ツール長センサ90は、これにより、切削ツール6が間違っているか、または折れており、長さが登録された長さと異なることを検知できる。
【0048】
位置補正突起91は、ダミーピン7、および、主軸51の自動位置補正の際に使用される検出ピン8(図7参照)が接触したことを検知する。図7に示すように、検出ピン8は、ツールストッカ80の右奥の収納孔81に収納されている。図8に示すように、位置補正突起91も、ツールストッカ80の収納面80Uに露出するように設けられている。ここでは、位置補正突起91は、ツールストッカ80の収納面80Uよりも上方に突出するように設けられている。位置補正突起91は、例えば、ダミーピン7または検出ピン8に通電させることによりダミーピン7または検出ピン8を検出するように構成されている。主軸51の自動位置補正の際、切削加工機10は、位置補正突起91にダミーピン7が接触したときの座標を取得する。切削加工機10は、この取得された座標を使って、主軸51に対するツールストッカ80の位置を検出する。これにより、検出ピン8を切削装置50に把持させることが可能となる。主軸51の位置は、位置補正突起91への検出ピン8の接触を検知することによって補正される。
【0049】
切削装置50は、ツールストッカ80に収納された各切削ツール6を把持可能に構成され、把持した切削ツール6によってワークホルダ20に保持された被切削物1を切削する。これを可能とするように、主軸移動装置60は、切削装置50を駆動装置室130と加工室120との間で移動させる。また、ホルダ移動装置30は、ツールストッカ80を切削装置室150の下方に移動させる。
【0050】
図3および図7に示すように、本実施形態では、切削装置50は、ワークホルダ20およびツールストッカ80よりも上方に設けられている。主軸移動装置60のY軸方向移動装置60Yは、切削装置50が駆動装置室130の上方と加工室120の上方との間を移動するように、切削装置50をY軸方向に移動させる。主軸移動装置60のZ軸方向移動装置60Zは、切削装置50をZ軸方向に移動させる。ホルダ移動装置30は、Y軸方向移動装置60Yによる切削装置50の移動経路の下方に設定されたツール把持位置P1(図7参照)にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。ツール把持位置P1は、後方側開口部125の下方の位置である。ツール把持位置P1にツールストッカ80を移動させ、かつ、切削装置50をツール把持位置P1の上方の位置に移動させた状態でZ軸方向移動装置60Zを駆動して切削装置50を下降させることにより、切削装置50にツールストッカ80の切削ツール6を把持させることができる。
【0051】
ホルダ移動装置30は、ツール把持位置P1よりも前方に設定されたツール交換位置P2にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。図7に示すように、ツール交換位置P2は、ツール交換室180の底壁183の下方に設定されている。ツール交換室180の底壁183は、ツール交換室180と駆動装置室130とを区画している。図7に示すように、ツール交換室180の底壁183には、ツール交換位置P2の上方に開口した開口部184が形成されている。開口部184は、ユーザがツールストッカ80に切削ツール6を抜き差しするための開口部である。開口部184は、底壁183をZ軸方向に貫通している。ホルダ移動装置30を駆動してツールストッカ80をツール交換位置P2に移動させると、ユーザは、開口部184を通してツールストッカ80にアクセスすることができる。前述したように、本実施形態では、筐体11は、前向きに開口したツール交換室180の前面開口部181を備えている。前面開口部181は、ツールストッカ80よりも前方に配置され、ツールストッカ80にアクセス可能に開口している。ツール交換室180を設けることにより、切削ツール6の交換時などにユーザがホルダ移動装置30に触れてしまうことが防止されている。また、かかる構成により、切削ツール6の交換時などに駆動装置室130に外部の異物が侵入することが抑制されている。
【0052】
なお、本実施形態では、ツールストッカ80に対する把持部53の位置を各切削ツール6を把持可能な位置に移動させる移動装置は、ツールストッカ80をX軸方向に移動させるホルダ移動装置30と、把持部53をY軸方向およびZ軸方向に移動させる主軸移動装置60と、により実現されている。ただし、移動装置は、切削装置50およびツールストッカ80のうちの少なくとも一方を移動させることにより、各切削ツール6を把持可能な位置にツールストッカ80に対する把持部53の位置を移動させるものであればよく、その構成は限定されない。移動装置は、例えば、主軸51をX軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向に移動させるように構成されていてもよい。
【0053】
制御装置100(図1参照)は、ホルダ移動装置30のX軸方向駆動モータ34と、回転装置40のA軸回転モータ41AおよびB軸回転モータ41Bと、切削装置50のスピンドルユニット52および把持部53と、主軸移動装置60のY軸方向駆動モータ63YおよびZ軸方向駆動モータ63Zと、ワークチェンジャ70のL軸方向駆動モータ72Bと、操作パネル110と、に接続され、それらの動作を制御している。
【0054】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から切削データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0055】
[切削加工のプロセス]
以下では、被切削物1および切削ツール6の切削加工機10へのセッティングを含む切削加工のプロセスについて説明する。図9は、切削加工のプロセスのフローチャートである。図9に示すように、被切削物1の切削加工のプロセスのステップS10では、切削ツール6がツールストッカ80に収納される。ステップS10は、ユーザにより行われる。ユーザは、ツール交換室扉182を開けて、ツールストッカ80の収納孔81に切削ツール6を収納する。ステップS20では、被切削物1が装着されたアダプタ5(被切削物1をアダプタ5に装着するステップは記載を省略する)をアダプタ収納部71の収納スペース71aに収納する。ステップS20も、ユーザにより行われる。ユーザは、チェンジャ室扉171を開けて、アダプタ収納部71にアダプタ5を収納する。ステップS10とS20とは、逆の順序で行われてもよい。
【0056】
続くステップS30では、ワークチェンジャ70に収納されたアダプタ5のうちの1つがワークホルダ20に装着される。ステップS30では、搬送装置72によってアダプタ収納部71が加工室120内に搬送される。その後、ホルダ移動装置30によってワークホルダ20がX軸方向の前方に移動され、アダプタ5がワークホルダ20に装着される。アダプタ5がワークホルダ20に装着されると、ワークホルダ20は、X軸方向の後方に移動する。これにより、ワークホルダ20に装着された被切削物1が切削装置室150の下方に移動される。その後、アダプタ収納部71は、チェンジャ室170に戻される。
【0057】
ステップS40では、ツールストッカ80に収納された切削ツール6のうちの1つが切削装置50の把持部53に把持される。ステップS50では、ツール長センサ90により切削ツール6の長さを測定する。これにより、切削ツール6の長さが登録された長さと同じかどうかが確認される。切削ツール6の長さが登録された長さと違う場合(ステップS50の結果がNOの場合)、切削加工は中止され、ステップS70においてエラーメッセージが発せられる。切削ツール6の長さが登録された長さと同じ場合(ステップS50の結果がYESの場合)、ステップS60において切削加工が行われる。
【0058】
切削ツール6の把持および長さ確認が終了すると、Z軸方向移動装置60Zは、主軸51を後方側開口部125よりも上方に移動させる。これにより、切削装置50は、Y軸方向に移動可能となる。その後、切削装置50は、加工室120の上方に移動される。
【0059】
ステップS60では、被切削物1が切削加工され、加工目的物が削り出される。ステップS60では、ホルダ移動装置30、Y軸方向移動装置60Y、およびZ軸方向移動装置60Zが駆動されて切削ツール6と被切削物1との相対位置が変更されるとともに、回転装置40が駆動されて被切削物1の姿勢が変更される。切削ツール6は、ステップS40~S50と同様の手順により、適宜、指定されたものに交換される。これにより、加工目的物が完成する。
【0060】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係る切削加工機10の作用効果を説明する。
【0061】
本実施形態に係るツールストッカ80は、それぞれ切削ツール6を収納可能であって通し番号が付された複数の収納孔81が形成された収納面80Uを備えている。複数の収納孔81は、通し番号が連続する一部の複数の収納孔81-1~81-5が通し番号の順に並んだ第1の収納孔群81Aと、通し番号が連続する他の一部の複数の収納孔81-6~81-10が通し番号の順に並んだ第2の収納孔群81Bと、を含んでいる。なお、上記した実施形態では、複数の収納孔81は、通し番号が連続する一部の複数の収納孔81-11~81-15が通し番号の順に並んだ第3の収納孔群81Cも含んでいる。ツールストッカ80は、第1の収納孔群81Aを通し番号の順に繋ぐように表示された第1の表示82Aと、第2の収納孔群81Bを通し番号の順に繋ぐように表示された第2の表示82Bと、を備えている。上記した実施形態では、ツールストッカ80は、第3の収納孔群81Cを通し番号の順に繋ぐように表示された第3の表示82Cも備えている。
【0062】
かかる構成によれば、第1の表示82Aにより、第1の収納孔群81Aが通し番号の順に繋がれている。そのため、第1の収納孔群81Aの内部において、収納孔81がどのように並んでいるかを視認しやすい。第2の収納孔群81Bおよび第3の収納孔群81Cについても同様である。また、本実施形態に係るツールストッカ80によれば、第1の表示82A、第2の表示82B、および第3の表示82Cにより、第1の収納孔群81A、第2の収納孔群81B、および第3の収納孔群81Bが互いに区別できる。そのため、例えば、第1の収納孔群81Aに属する収納孔81と第2の収納孔群81Bに属する収納孔81とを連続した通し番号の収納孔81だと誤認するようなユーザの間違いが抑制される。
【0063】
ユーザが収納孔81の通し番号を誤認し、その結果、間違った切削ツール6が収納孔81に収納されると、良くてもステップS50においてエラーが発生する。間違った切削ツール6の長さが正しい切削ツール6の長さと同じであった場合、被切削物1の切削加工は失敗する。もっと悪ければ、間違った切削ツール6が切削加工機10に衝突するおそれもある。よって、ツールストッカ80は、通し番号の識別性がよいことが好ましい。
【0064】
図10は、収納孔81の通し番号の誤認の例を示すツールストッカ80の平面図である。図10に示すように、一例に係る誤認の読みを示す矢印R1は、第1の収納孔群81Aに属する収納孔81-1、第2の収納孔群81Bに属する収納孔81-6、および第3の収納孔群81Cに属する収納孔81-11を連続する通し番号が付された収納孔81だと誤認する場合を示している。本実施形態に係るツールストッカ80では、第1の表示82A、第2の表示82B、および第3の表示82Cが、通し番号の読みの方向を示している。そのため、矢印R1に示すような誤認が起こりにくい。
【0065】
図10に示すように、他の一例に係る誤認の読みを示す矢印R2は、第1の収納孔群81Aに属する収納孔81-5とダミーピン収納孔88とを連続する通し番号が付された収納孔81だと誤認する場合を示している。本実施形態に係るツールストッカ80では、第1の表示82Aは、ダミーピン収納孔88に繋がっていない。そのため、矢印R2に示すような誤認が起こりにくい。
【0066】
本実施形態では、第1の表示82Aは、第1の収納孔群81Aのうち通し番号が連続する2つの収納孔81をそれぞれ繋ぐように延びる第1の線群82A-1~82A-4を含んでいる。第2の表示82Bおよび第3の表示82Cも同様に構成されている。かかる構成によれば、通し番号が連続する2つの収納孔81が線で繋がっているため、ユーザは、通し番号が連続していることを感覚的に理解することができる。
【0067】
本実施形態では、第1の収納孔群81Aは、収納面80Uにおいてジグザグに配置されている。第2の収納孔群81Bは、収納面80Uにおいて第1の収納孔群81Aと並んで配置され、第1の収納孔群81Aの配置に対応するようにジグザグに配置されている。かかる構成によれば、複数の収納孔81をマトリクス状に配置するよりも、収納孔81を密に配置することができる。これにより、ツールストッカ80を小さくできるか、または、ツールストッカ80に収納可能な切削ツール6の数を多くできる。また、収納孔81をジグザグに配置すると、収納孔81がどのように並んでいるのかをユーザが把握しにくくなるため、第1の表示82Aおよび第2の表示82Bがより効果を発揮する。第3の表示82Cについても同様である。
【0068】
なお、第1の収納孔群81A~第3の収納孔群81Cは、収納面80Uにおいて、それぞれ直線状に配置されていてもよい。
【0069】
本実施形態に係るツールストッカ80は、上方から収納面80Uを覆う化粧板85をさらに備えている。収納面80Uの色と化粧板85の色とは異なっている。化粧板85は、第1の収納孔群81Aを通し番号の順に繋ぐとともに、下方の収納面80Uを視認可能なように上下方向に貫通し、第1の表示82Aを形成する第1の貫通孔群87Aを備えている。第2の表示82Bおよび第3の表示82Cも同様に、それぞれ、第2の貫通孔群87Bおよび第3の貫通孔群87Cによって構成されている。かかる構成によれば、印刷等であれば消えるような刺激、例えば主軸51の摩擦を受けても、第1の表示82A~第3の表示82Cが消えることがない。
【0070】
本実施形態では、把持部53に把持可能に構成され切削ツール6とは長さの異なるダミーピン7が収納されるダミーピン収納孔88が収納面80Uに形成されている。ここでは、ダミーピン7は、切削ツール6よりも長さが短い。そのため、ダミーピン収納孔88に間違って切削ツール6を収納すると、切削ツール6と切削装置50とが衝突する。本実施形態では、切削ツール6用の収納孔81の視認性が向上しているため、上記した差し間違いが起こりにくくなっている。なお、ダミーピン7が切削ツール6よりも長い場合には、切削ツール6用の収納孔81に間違って収納したダミーピン7に切削装置50が衝突する可能性がある。
【0071】
本実施形態に係る切削加工機10は、ツールストッカ80よりも前方に配置されツールストッカ80にアクセス可能に開口した前面開口部181を有する筐体11を備えている。複数の収納孔81は、ダミーピン収納孔88よりも前方に設けられている。かかる構成によれば、ダミーピン収納孔88が切削ツール6用の収納孔81よりも前面開口部181から遠くに設けられているため、切削ツール6用の収納孔81にダミーピン7を収納する間違いがさらに起こりにくい。
【0072】
[他の実施形態]
以上、一実施形態に係る切削加工機について説明した。しかし、ここに開示する技術は、他の態様により実施することもできる。例えば、上記した実施形態では、ツールストッカ80は、加工室120と区画された駆動装置室130に設けられていた。しかし、ツールストッカは、被切削物の切削加工が行われる加工室に設けられていてもよい。
【0073】
上記した実施形態では、第1収納孔群81A~第3収納孔群81Cは、それぞれ、前後方向に延びる列を形成していた。すなわち、収納孔81の通し番号は、前後方向に並ぶ複数の収納孔81に対して連続して付されていた。しかし、収納孔の通し番号は、例えば、左右方向に並ぶ複数の収納孔に対して連続して付されてもよい。
【0074】
複数の収納孔を繋ぐ表示は、線には限定されない。複数の収納孔を繋ぐ表示は、例えば、1つのドットや連なった複数のドットなどであってもよい。複数の収納孔を繋ぐ表示の形状、色、形成の方法などは限定されない。
【0075】
切削加工機の構成は特に限定されない。例えば、切削加工機は、ワークチェンジャを備えていなくてもよい。また、例えば、切削加工機の内部は、上記した実施形態のように区画されていなくてもよい。
【0076】
その他、特に言及されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。例えば、切削加工機は、歯科用成形品を作製するデンタル用の切削加工機でなくてもよい。被切削物は、アダプタを介して切削加工機に保持されなくてもよく、切削加工機によって直接保持されてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 被切削物
6 切削ツール
7 ダミーピン
10 切削加工機
30 ホルダ移動装置(移動装置)
50 切削装置
51 主軸
52 スピンドルユニット(スピンドル)
53 把持部
60 主軸移動装置(移動装置)
80 ツールストッカ
80U 収納面
81 収納孔
81A 第1の収納孔群
81B 第2の収納孔群
81C 第3の収納孔群
82A 第1の表示
82A-1~82A-4 第1の線群
82B 第2の表示
82B-1~82B-4 第2の線群
82C 第3の表示
82C-1~82C-4 第3の線群
85 化粧板
87A 第1の貫通孔群
87B 第2の貫通孔群
87C 第3の貫通孔群
88 ダミーピン収納孔
180 ツール交換室
181 前面開口部
図1
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図3
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図10