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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125453
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】切削加工機
(51)【国際特許分類】
   B23Q 11/00 20060101AFI20230831BHJP
   B23Q 3/157 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B23Q11/00 M
B23Q3/157 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029555
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】317009525
【氏名又は名称】DGSHAPE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121500
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 高志
(74)【代理人】
【識別番号】100121186
【弁理士】
【氏名又は名称】山根 広昭
(74)【代理人】
【識別番号】100189887
【弁理士】
【氏名又は名称】古市 昭博
(74)【代理人】
【識別番号】100218084
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊光
(72)【発明者】
【氏名】百々 晋平
【テーマコード(参考)】
3C002
3C011
【Fターム(参考)】
3C002AA00
3C011BB04
(57)【要約】
【課題】エアブローノズルを切削ツールにより近接させ、かつ、エアブローノズルが邪魔となりにくい切削加工機を提供する。
【解決手段】切削加工機は、Z方向の下方に突き出すように切削ツール6を把持する把持部53と、エアが噴射されるエアブローノズル56と、ノズル支持部材57と、付勢部材58と、を備える。ノズル支持部材57は、把持部53の側方に設定されたZ方向下方側のエンド位置と、Z方向下方側のエンド位置PdよりもZ方向の上方にある他の位置との間を移動可能なようにエアブローノズル56を支持する。付勢部材58は、ノズル支持部材57に支持されたエアブローノズル56を付勢して、エアブローノズル56をZ方向下方側のエンド位置Pdに保持する。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の第1方向に突き出すように切削ツールを把持する把持部と、
エアが噴射されるエアブローノズルと、
前記第1方向の逆方向を第2方向とするとき、前記把持部の側方に設定された前記第1方向のエンド位置と、前記第1方向のエンド位置よりも前記第2方向にある他の位置との間を移動可能なように前記エアブローノズルを支持するノズル支持部材と、
前記ノズル支持部材に支持された前記エアブローノズルを付勢して、前記エアブローノズルを前記第1方向のエンド位置に保持する付勢部材と、を備えた、
切削加工機。
【請求項2】
複数の切削ツールを収納可能なツールストッカと、
前記ツールストッカに収納された切削ツールを把持または解放するように設定された前記第1方向の所定位置に前記把持部を移動させる移動装置と、を備え、
前記エアブローノズルは、前記把持部が前記第1方向の前記所定位置に位置した状態では前記ツールストッカに当接し、前記付勢部材の付勢力に抗して前記第1方向のエンド位置よりも前記第2方向に位置する、
請求項1に記載の切削加工機。
【請求項3】
前記エアブローノズルは、側壁に形成され前記第1方向に斜交するように延びる傾斜面を備えている、
請求項1または2に記載の切削加工機。
【請求項4】
前記把持部と、前記把持部を前記第1方向に平行な軸線周りに回転させるスピンドルと、を備えた主軸を備えている、
請求項1~3のいずれか一つに記載の切削加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
被切削物を切削加工することによって、例えば歯科用成形品などを作製する切削加工機が従来から知られている。切削加工機による被切削物の切削では、切削ツールの刃部近傍において、被切削物の切削粉が発生する。そのため、切削加工機の中には、被切削物の切削粉を切削ツールから吹き飛ばすエアブロー装置を備えたものが存在する。例えば特許文献1には、被加工物の加工箇所近傍の加工工具に向けて空気を射出するエアブローノズルを備えた人工歯製作装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-121466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
被切削物の切削粉を切削ツールから吹き飛ばすためには、切削ツールの把持部によって把持されたときに切削ツールが突き出す方向にエアブローノズルがより延びていることが好ましい。切削ツールの突き出し方向にエアブローノズルを延ばすことにより、エアブローノズルと切削ツールとの間の距離を近くすることができる。これにより、切削粉の切削ツールからの除去がより効率的にできる。しかし、切削ツールの突き出し方向にエアブローノズルを延ばすと、エアブローノズルが他の部材と干渉することがあり得る。例えば、切削ツールの把持または解放のために把持部を切削ツールのストッカに近づけるときなどには、エアブローノズルがストッカと干渉するようなことが起こり得る。
【0005】
本発明はかかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、エアブローノズルを切削ツールにより近接させ、かつ、エアブローノズルが邪魔となりにくい切削加工機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示する切削加工機は、所定の第1方向に突き出すように切削ツールを把持する把持部と、エアが噴射されるエアブローノズルと、ノズル支持部材と、付勢部材と、を備える。前記ノズル支持部材は、前記第1方向の逆方向を第2方向とするとき、前記把持部の側方に設定された前記第1方向のエンド位置と、前記第1方向のエンド位置よりも前記第2方向にある他の位置との間を移動可能なように前記エアブローノズルを支持する。前記付勢部材は、前記ノズル支持部材に支持された前記エアブローノズルを付勢して、前記エアブローノズルを前記第1方向のエンド位置に保持する。
【0007】
上記切削加工機によれば、エアブローノズルは、他の部材によって押されていないときには、付勢部材の付勢により、切削ツールの突き出し方向である第1方向のエンド位置に位置する。そのため、このときには、エアブローノズルと切削ツールとの間の距離が近い。よって、切削ツールにエアを強く吹きつけることができる。かつ、エアブローノズルは、他の部材と干渉して第2方向に押されると、付勢部材の付勢力に抗して、第1方向のエンド位置よりも第2方向、すなわち切削ツールの突き出し方向の逆方向にある他の位置に移動する。よって、上記切削加工機によれば、エアブローノズルを切削ツールにより近接させることができるとともに、エアブローノズルが邪魔となりにくい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】一実施形態に係る切削加工機の斜視図である。
図2】被切削物およびアダプタの平面図である。
図3】左方から見た切削加工機の縦断面図である。
図4】右方から見た切削加工機の縦断面図である。
図5】ワークホルダの平面図である。
図6】アダプタを交換中の切削加工機を示す縦断面図である。
図7】切削装置室および駆動装置室の斜視図である。
図8】ツールストッカの平面図である。
図9】主軸の下端部付近の一部破断側面図である。
図10】切削ツール交換時の切削装置の先端部付近の側面図である。
図11】切削加工機のブロック図である。
図12】プロセス全体のフローチャートである。
図13】ワーククリーニングのフローチャートである。
図14】ワーククリーニング中のワークホルダを示す側面図である。
図15】ワーククリーニングの手順を示すワークホルダの平面図である。
図16】加工室クリーニングのフローチャートである。
図17】加工室クリーニング中の切削加工機の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、一実施形態に係る切削加工機について説明する。なお、ここで説明される実施形態は、当然ながら本発明を限定することを意図したものではない。また、同じ作用を奏する部材・部位には同じ符号を付し、重複する説明は適宜省略または簡略化する。
【0010】
[切削加工機の構成]
図1は、一実施形態に係る切削加工機10の斜視図である。以下の説明では、切削加工機10を正面から見たときに、切削加工機10から遠ざかる方を前方、切削加工機10に近づく方を後方とする。左、右、上、下とは、切削加工機10を正面から見たときの左、右、上、下をそれぞれ意味するものとする。また、図面中の符号F、Rr、L、R、U、Dは、それぞれ前、後、左、右、上、下を意味するものとする。
【0011】
本実施形態に係る切削加工機10は、アダプタに保持されたディスク状の被切削物を切削加工する切削加工機である。図2は、被切削物1およびアダプタ5の平面図である。切削加工機10は、ここでは、被切削物1を切削して、歯科用成形品、例えば、クラウン、ブリッジ、コーピング、インレー、アンレー、ベニア、カスタムアバットメント等の歯冠補綴物や、人工歯、義歯床等を作製する装置である。本実施形態に係る切削加工機10は、クーラントを使用しないドライ式の切削加工機である。
【0012】
被切削物1は、例えば、PMMA、PEEK、ガラス繊維強化樹脂、ハイブリッドレジン等のレジンや、ガラスセラミックス、ジルコニア等のセラミックス材料、コバルトクロムシンターメタル等の金属材料、ワックス、石膏等で構成されている。被切削物1の材料としてジルコニアを用いるときには、例えば、半焼結したジルコニアが用いられる。被切削物1は、対向する2面を有する平板状の被切削物である。ここでは、被切削物1の形状は、ディスク状(円板状)である。ただし、被切削物1は、他の形状、例えばブロック状(例えば立方体状や直方体状)等であってもよい。以下では、被切削物1の対向する2面をそれぞれ、第1面1Aおよび第2面1Bとも呼ぶ。第2面1Bは、第1面1Aの裏面である。第1面1Aと第2面1Bとの区別は便宜上のものであり、本実施形態では、加工前の被切削物1の第1面1Aと第2面1Bとは同じである。ただし、加工前の被切削物1の第1面1Aと第2面1Bとは区別可能に構成されていてもよい。
【0013】
アダプタ5は、ディスク状の被切削物1を保持する。アダプタ5は、ここでは、被切削物1に対応する略円形の挿入孔5aが中央部に形成された平板状のアダプタである。被切削物1は、挿入孔5aに挿入されることにより、アダプタ5に保持される。被切削物1は、アダプタ5に保持された状態で切削加工機10に収容され、加工される。
【0014】
図1に示すように、切削加工機10は、箱状に構成された筐体11を有している。図3は、左方から見た切削加工機10の縦断面図である。図4は、右方から見た切削加工機10の縦断面図である。図1に示すように、筐体11の内部は、アダプタ5を保持するワークホルダ20が収容された加工室120(図3も参照)と、ワークホルダ20を移動させるホルダ移動装置30(図4参照)が収容された駆動装置室130と、ワークチェンジャ70が収容されたチェンジャ室170と、切削ツール6(図7参照)をツールストッカ80(同じく図7参照)に収納するためのツール交換室180と、を含む複数の空間に区画されている。
【0015】
図1に示すように、加工室120は、筐体11の左下部分に配置されている。図3に示すように、加工室120は、筐体11の後端部まで延びている。チェンジャ室170は、加工室120の前方側部分の上方に配置されている。チェンジャ室170は、筐体11の前後方向の中央部まで延びている。駆動装置室130は、加工室120の右方に配置されている。図4に示すように、駆動装置室130は、筐体11の後端部まで延びている。ツール交換室180は、駆動装置室130の前方側部分の上方に配置されている。ツール交換室180は、筐体11の前後方向の中央部まで延びている。なお、駆動装置室130は加工室120の左方に配置されていてもよい。その場合、ツール交換室180は、チェンジャ室170の左方に配置されていてもよい。
【0016】
加工室120の前面開口部121(図3参照)には、加工室扉122が開閉自在に設けられている。駆動装置室130の前面開口部には、駆動装置室カバー131が設けられている。チェンジャ室170の前面開口部には、チェンジャ室扉171が開閉自在に設けられている。ツール交換室180の前面開口部には、ツール交換室扉181が開閉自在に設けられている。加工室扉122、チェンジャ室扉171、およびツール交換室扉181には、それぞれ、内部を視認可能なように透明な窓部122a、171a、および181aが設けられている。駆動装置室カバー131の前面には、操作パネル110が設けられている。図3および図4に示すように、筐体11の前面(ここでは、加工室120、駆動装置室130、チェンジャ室170、およびツール交換室180の前面開口部)は、底面に対して斜めに形成されている。筐体11の前面は、後方に傾くように形成されている。
【0017】
図3および図4に示すように、加工室120および駆動装置室130の上方であってチェンジャ室170、およびツール交換室180の後方には、切削装置50と、切削装置50を移動させる主軸移動装置60(後述するが、切削装置50は、回転するスピンドルユニット52を備えた主軸51を有する)と、が収容された切削装置室150が配置されている。切削装置室150は、ここでは、筐体11の左右方向の幅のほぼ全てを占めている。
【0018】
ワークホルダ20は、被切削物1を保持する保持装置の一例である。ワークホルダ20は、ここでは、アダプタ5を介して被切削物1を保持する。ただし、ワークホルダ20は、他の部材を介さず、直接に被切削物1を保持してもよい。図5は、ワークホルダ20の平面図である。図5に示すように、ワークホルダ20は、左右一対のアーム21を備えている。アダプタ5は、一対のアーム21の間に挿入されることによってワークホルダ20に保持される。一対のアーム21の間にアダプタ5が挿入される際の切削加工機10の動作については後述する。
【0019】
ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を支持して移動させるものである。本実施形態では、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を前後方向に移動させる。より詳しくは、図4に示すように、ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20を後方に向かって下降するように斜め前後方向に移動させる。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により前方に移動されると上方にも移動する。ワークホルダ20は、ホルダ移動装置30により後方に移動されると下方にも移動する。図4に示すように、以下では、ホルダ移動装置30によってワークホルダ20が移動される方向をX軸方向とも呼ぶ。また、以下では、特に断る必要がない場合には、X軸方向の前方を単に前方と、X軸方向の後方を単に後方と言うことがある。
【0020】
図5に示すように、ホルダ移動装置30は、左右方向に延びるとともにワークホルダ20を支持する支持アーム31を備えている。図4に示すように、ホルダ移動装置30は、支持アーム31に接続されたX軸方向移動体32と、一対のX軸ガイドレール33と、X軸方向駆動モータ34と、ボールねじ35と、を備えている。ホルダ移動装置30は、支持アーム31をX軸方向に移動させることにより、ワークホルダ20をX軸方向に移動させる。ホルダ移動装置30は、その少なくとも一部が駆動装置室130に収容されている。ここでは、ホルダ移動装置30のX軸方向移動体32、一対のX軸ガイドレール33、X軸方向駆動モータ34、ボールねじ35、および支持アーム31の一部が駆動装置室130に収容されている。
【0021】
図4に示すように、一対のX軸ガイドレール33は、X軸方向に延びている。X軸方向移動体32は、一対のX軸ガイドレール33に摺動可能に係合している。X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動することが可能である。ボールねじ35は、X軸方向に延びている。ボールねじ35は、X軸方向移動体32に設けられたナットに噛み合わされている。X軸方向駆動モータ34は、ボールねじ35を軸線周りに回転させる。X軸方向駆動モータ34を駆動してボールねじ35を回転させると、X軸方向移動体32は、X軸ガイドレール33に沿ってX軸方向に移動する。X軸方向駆動モータ34は、X軸方向移動体32をX軸方向に移動させることによって支持アーム31およびワークホルダ20をX軸方向に移動させる駆動部の一例である。なお、ホルダ移動装置30は、ボールねじ機構を有するものには限定されず、例えば、タイミングベルトやワイヤを有していてもよい。
【0022】
ホルダ移動装置30は、ワークホルダ20に保持された被切削物1が切削装置50によって切削される際、ワークホルダ20をX軸方向の所定の範囲内で移動させるように構成されている。以下、このX軸方向の所定の範囲を「切削加工時の移動範囲」とも呼ぶ。図3は、ワークホルダ20が切削加工時の移動範囲内に位置した状態を図示している。
【0023】
図5に示すように、支持アーム31は、左右方向に延びる軸線Axb周りに回転する回転シャフト31aと、軸線Axbと直交するように回転シャフト31aに接続され回転シャフト31aとともに前後方向に回転する第1アーム31bと、軸線Axbに平行に(第1アーム31bと直交するように)第1アーム31bに接続された第2アーム31cと、を備えている。図4に示すように、X軸方向移動体32には、回転シャフト31aを軸線Axb周りに回転させるB軸回転モータ41Bが設けられている。支持アーム31とB軸回転モータ41Bとは、ワークホルダ20を回転させることによりワークホルダ20の姿勢を変更する回転装置40の一部を構成している。B軸回転モータ41Bが駆動して回転シャフト31aが回転すると、ワークホルダ20は前後方向に回転する。以下、軸線Axbの伸長方向をB軸方向とも呼び、軸線Axb周りに回転することをB軸周りに回転するとも言う。また、回転装置40のうち、ワークホルダ20をB軸周りに回転させる装置をB軸回転装置40Bとも呼ぶ。
【0024】
回転装置40は、ワークホルダ20を左右方向に回転させるA軸回転装置40Aも備えている。図5に示すように、A軸回転装置40Aは、A軸回転モータ41Aと、回転軸42Aと、を備えている。A軸回転モータ41Aは、第2アーム31cに固定されている。回転軸42Aは、A軸回転モータ41Aに接続され、軸線Axaに沿って前後方向に延びている。A軸回転モータ41Aを駆動すると、回転軸42Aは、軸線Axa周りに回転する。以下では、軸線Axaの伸長方向をA軸方向とも呼び、軸線Axa周りに回転することをA軸周りに回転するとも言う。
【0025】
加工室120は、複数の壁部によって区画され、ワークホルダ20を収容している。図3に示すように、複数の壁部は、底壁120D、左側壁120L(図1参照)、右側壁120R、後壁120Rr、前壁120F、および天壁120Uを含んでいる。複数の壁部120D、120L、120R、120Rr、120F、および120Uは、ここでは金属板によって形成されている。底壁120Dは、ワークホルダ20よりも下方に配置され、加工室120の底面を形成している。底壁120Dは、切削加工機10を水平面に設置したとき略水平になるように構成されている。天壁120Uは、ワークホルダ20よりも上方に配置され、加工室120の天面を形成している。左側壁120L、右側壁120R、後壁120Rr、および前壁120Fは、それぞれ、天壁120Uと底壁120Dとを接続するように立設されている。左側壁120Lは、底壁120Dの左端部に接続され、上方に向かって延びている。左側壁120Lは、ワークホルダ20よりも左方に立設されている。右側壁120Rは、底壁120Dの右端部に接続され、上方に向かって延びている。右側壁120Rは、ワークホルダ20よりも右方に立設されている。後壁120Rrは、底壁120Dの後端部に接続され、上方に向かって延びている。後壁120Rrの左端部および右端部は、それぞれ左側壁120Lの後端部および右側壁120Rの後端部に接続されている。後壁120Rrは、ワークホルダ20よりも後方に立設されている。前壁120Fは、底壁120Dの前端部に接続され、斜め上方に向かって延びている。前壁120Fは、ワークホルダ20よりも前方に立設されている。前壁120Fは、後方に傾くように延びている。前壁120Fの伸長方向は、X軸方向に直交する方向である。前壁120Fの左端部および右端部は、それぞれ左側壁120Lの前端部および右側壁120Rの前端部に接続されている。天壁120Uは、前壁120Fに直交する方向、すなわちX軸方向に平行に延びている。天壁120Uは、後方に向かって下降傾斜している。天壁120Uは、底壁120Dに対して非平行に設けられている。天壁120Uの前端部、左端部、右端部および後端部は、それぞれ前壁120Fの上端部、左側壁120Lの上端部、右側壁120Rの上端部、および後壁120Rrの上端部に接続されている。
【0026】
加工室120の前壁120Fには、前面開口部121が形成されている。前述したように、前面開口部121には、加工室扉122が開閉可能に設けられている。前面開口部121は、前壁120Fの下端よりも上方の位置から上方に向かって延びている。前壁120Fの下端部付近は、外部に向かって開放されていない隅部となっている。
【0027】
右側壁120Rは、加工室120と駆動装置室130との間を区画している。加工室120の右側壁120Rは、駆動装置室130の左側壁でもある。図3に示すように、右側壁120Rには、X軸方向に延びるとともにホルダ移動装置30の支持アーム31が通るスリット123が形成されている。スリット123は、支持アーム31が挿通される開口部である。支持アーム31には、加工室120内で発生した切削粉が駆動装置室130に侵入することを防止する防塵板36が固定されている。防塵板36は、スリット123の少なくとも一部を覆うように設けられ、支持アーム31とともにX軸方向に移動する。防塵板36は、支持アーム31のうち加工室120内に位置した部分に固定され、加工室120内に設けられている。防塵板36は、ここでは、支持アーム31のX軸方向の位置に応じて、スリット123の異なる部分を覆うように構成されている。
【0028】
図3に示すように、防塵板36は、ワークホルダ20が切削加工時の移動範囲内に位置しているとき、スリット123の後方側の端部を覆うように構成されている。このとき、スリット123の前方側の端部は、防塵板36に覆われず、開放されている。防塵板36は、ワークホルダ20が切削加工時の移動範囲内に位置しているとき、スリット123の前方側の端部よりも後方に位置するように構成されている。防塵板36は、支持アーム31が後方側に移動するのに従って、スリット123の前方側のより多くの部分を開放する。後述するが、これは、加工室120内の風の流れによりワークホルダ20よりも後方に切削粉が集まる傾向があり、ワークホルダ20よりも前方には切削粉が少ないことによる。これにより、防塵板36の長さが短縮され、加工室120が前方に向かって長くなることが抑制されている。なお、スリット123の前方側の一部は、ワークホルダ20の位置にかかわらず開放されている。スリット123の前方側の一部が開放されていることにより、駆動装置室130から加工室120に向かう風の流れが発生する。これにより、加工室120内の切削粉等が駆動装置室130に侵入することが抑制されている。
【0029】
図3に示すように、天壁120Uは、加工室120とチェンジャ室170との間を区画するとともに、加工室120と切削装置室150との間を区画している。天壁120Uには、加工室120とチェンジャ室170とを連通させる前方側開口部124と、加工室120と切削装置室150とを連通させる後方側開口部125と、が開口している。加工室120の天壁120Uの前方側部分は、チェンジャ室170の底壁でもある。前方側開口部124は、チェンジャ室170の下方に形成されている。前方側開口部124は、ワークチェンジャ70の搬送装置72によって搬送される被切削物1が通過可能な開口部である。後述するが、ここでは、搬送装置72は、アダプタ5を収納したアダプタ収納部71を前方側開口部124から加工室120に搬送する。
【0030】
加工室120の天壁120Uの後方側部分は、切削装置室150の底壁の左側部分でもある。後方側開口部125は、切削装置室150の下方に形成されている。後方側開口部125は、切削装置50の少なくとも一部、ここでは、主軸51の下方部分が通過可能な開口部である。後方側開口部125は、後述するZ軸方向移動装置60Zによって主軸51がZ軸方向(図3参照)に移動される際に、切削ツール6および主軸51が通過する開口部である。詳しくは後述するが、後方側開口部125は、駆動装置室130と切削装置室150とを連通させるように、駆動装置室130の上方まで延びている(図7参照)。
【0031】
図3に示すように、加工室120の底壁120Dは、略水平に構成された底部126と、底部126の後端部に接続され、そこから後方に向かって延びるスロープ127と、を備えている。スロープ127には、後方に向かう上り勾配がつけられている。スロープ127と底部126とは、屈折するように接続されている。スロープ127は、後壁120Rrに接続されている。スロープ127の下方には、空間が形成されている。
【0032】
底壁120Dには、排気口128が開口している。排気口128には、後述する排気ダクト92等を介して集塵機111(図11参照)が接続される。排気口128からは、加工室120内の空気や粉塵が排出される。排気口128は、スロープ127に設けられている。さらに詳しくは、排気口128は、スロープ127のうち後壁120Rrとの接続部に沿って開口している。排気口128の後縁は、後壁120Rrにより構成されている。排気口128は、スロープ127の最も後部に設けられている。スロープ127には、排気口128に向かう上り勾配がつけられている。
【0033】
図5に示すように、排気口128は、ワークホルダ20よりも後方に開口している。これにより、ワークホルダ20を挟んで前方から後方に向かう風の流れが発生する。また、図5に示すように、平面視において、スロープ127の少なくとも一部は、ワークホルダ20の少なくとも一部と重なっている(図3も参照)。これにより、切削加工により脱落した被切削物1の破片がスロープ127上に落下する。スロープ127上に落下した被切削物1の破片のうち大きいものは、排気口128からの吸引によっても排気口128に吸い込まれず、スロープ127を滑り落ちる。これにより、被切削物1の破片のうち大きいものが選別される。また、例えば切削加工の負荷により被切削物1がアダプタ5から落下した場合も、落下した被切削物1は、排気口128からの吸引によっても排気口128に吸い込まれず、スロープ127を滑り落ちる。
【0034】
図5に示すように、排気口128は、加工室120の左右方向の中心線CL(A軸とは、一致していなくてもよく、一致していてもよい)よりも右方に偏寄して設けられている。言い換えると、排気口128は、加工室120の左右方向の中心線CLよりも駆動装置室130の側に偏寄して設けられている。これにより、駆動装置室130の近くの粉塵等が重点的に排出されている。排気口128は、上方を向くように開口した1つのスリットである。排気口128は、左右方向の長さが前後方向の長さよりも長い略長方形に形成されている。
【0035】
図3に示すように、本実施形態では、排気口128の下方に集塵チャンバ90が設けられている。集塵チャンバ90は、スロープ127の下面に固定されている。集塵チャンバ90は、上方が開放された箱状の部材であり、上方を向くように開口した上方開口部90Uが排気口128に接続されている。図3および図5に示すように、集塵チャンバ90は、上方開口部90Uと、底壁90Dと、前壁90Fと、左側壁90Lと、を備えている。集塵チャンバ90の後壁および右側壁は、それぞれ、加工室120の後壁120Rrおよび右側壁120Rによって形成されている。ただし、集塵チャンバ90は、加工室120と共用しない後壁および右側壁を備えていてもよい。底壁90D、前壁90F、左側壁90L、加工室120の後壁120Rr、および加工室120の右側壁120Rにより、集塵チャンバ90には、内部空間が形成されている。図5に示すように、集塵チャンバ90の内部空間は、平面視において排気口128よりも大きい。
【0036】
集塵チャンバ90には、上方開口部90Uとダクト接続孔91とが形成されている。ダクト接続孔91は、排気ダクト92が接続される開口部である。図3に示すように、切削加工機10は、ダクト接続孔91に接続される排気ダクト92を備えている。ダクト接続孔91は、ここでは、集塵チャンバ90の後壁(加工室120の後壁120Rr)に開口している。上方開口部90U(排気口128)の開口方向とダクト接続孔91の開口方向とは交差している。ただし、ダクト接続孔91は、集塵チャンバ90の他の側壁(例えば、右側壁120R)に開口していてもよい。排気ダクト92の前端部は、ダクト接続孔91に接続されている。排気ダクト92は、集塵チャンバ90を介して排気口128および加工室120に連通している。排気ダクト92の後端部は、切削加工機10の外部まで延びている。排気ダクト92の後端部には、集塵機111(図11参照)が接続される。図5に示すように、集塵チャンバ90および排気ダクト92も、加工室120の左右方向の中心線CLよりも右方に、言い換えると、加工室120の左右方向の中心線CLよりも駆動装置室130の側に偏寄して設けられている。
【0037】
図3に示すように、加工室120の天壁120Uには、天面エアブロー装置93の天面ノズル93Nが設けられている。天面エアブロー装置93は、加工室120の天壁120Uに沿ってエアを噴射し、噴射したエアを後壁120Rrを経由して排気口128に送り込むことにより、加工室120の天壁120Uと後壁120Rrとをクリーニングする。天面エアブロー装置93は、外部のエアコンプレッサ等に接続された図示しない配管と、エアの流れを制御する図示しないバルブと、加工室120の天壁120Uに沿ってエアを噴射する天面ノズル93Nと、を備えている。天面ノズル93Nは、図3の矢印F1に示すように、加工室120の天壁120Uおよび後壁120Rrに沿って排気口128に到達するようにエアを噴射する。本実施形態では、排気口128は、底壁120D(より詳しくは、スロープ127)のうち後壁120Rrとの接続部に沿って開口している。そのため、天面ノズル93Nから噴射されたエアは、スムーズに排気口128に送り込まれる。
【0038】
平面図は省略するが、天面ノズル93Nは、左右方向に関して排気ダクト92と揃った位置に設けられている。よって、天面ノズル93Nも、加工室120の左右方向の中心線CLよりも右方に偏寄して設けられている。言い換えると、天面ノズル93Nも、加工室120の左右方向の中心線CLよりも駆動装置室130の側に偏寄して設けられている。また、天面ノズル93Nは、加工室120内に突き出したときの切削装置50に向かってエアを噴射することができる。ここでは、天面ノズル93Nは、天壁120Uの後方側開口部125の下方を通過するようにエアを噴射する。これにより、後方側開口部125を通って加工室120内に移動したときの切削装置50の主軸51の下部および切削ツール6がクリーニングされる。
【0039】
図3に示すように、切削加工機10は、底面ノズル94Nを備えた底面エアブロー装置94をさらに有している。底面ノズル94Nは、加工室120の底壁120Dに沿って排気口128に到達するようにエアを噴射する。底面エアブロー装置94は、噴射したエアを加工室120の底壁120Dに沿って排気口128に送り込むことにより、加工室120の底壁120Dをクリーニングする。底面エアブロー装置94は、外部のエアコンプレッサ等に接続された図示しない配管と、エアの流れを制御する図示しないバルブと、加工室120の底壁120Dに沿ってエアを噴射する底面ノズル94Nと、を備えている。
【0040】
底面ノズル94Nは、底壁120Dよりも上方に設けられている。詳しくは、図3に示すように、底面ノズル94Nは、加工室120の底壁120Dと前壁120Fとの間に斜めに架け渡された取付板95に固定されている。図3の矢印F2に示すように、底面ノズル94Nは、底壁120Dに向かって斜め下方に、かつ、排気口128の側に向かうようにエアを噴射する。ここでは、底面ノズル94Nは、底壁120Dに向かって、後ろ斜め下方にエアを噴射する。これにより、底壁120Dに衝突したエアが左右方向に広がる。その結果、底面ノズル94Nの左右方向の幅を広くしなくても、底壁120Dの左右方向の広い範囲をクリーニングすることができる。本実施形態では、底面ノズル94Nは、加工室120の左右方向の中央部に設けられている。ただし、底面ノズル94Nは、加工室120の左右方向の中心線CLよりも左右いずれかに偏寄して設けられていてもよい。
【0041】
ワークチェンジャ70は、複数の被切削物1を収納可能に構成されており、加工する被切削物1を交換するために使用される。図3に示すように、ワークチェンジャ70は、複数の被切削物1(ここでは、被切削物1が装着されたアダプタ5、図2参照)を収納可能なアダプタ収納部71と、アダプタ収納部71を加工室120に搬送する搬送装置72と、を備えている。例えば被切削物1の交換時のような場合を除き、アダプタ収納部71は、チェンジャ室170に収容されている。図1に示すように、アダプタ収納部71には、それぞれ1つのアダプタ5を収納する棚状の収納スペース71aが複数設けられている。複数の収納スペース71aは、上下方向に並んでいる。より詳しくは、複数の収納スペース71aは、X軸方向に直交する斜め上下方向(以下、L軸方向とも呼ぶ、図3参照)に並んで配置されている。
【0042】
搬送装置72は、L軸方向に延びるスライドアーム72Aと、L軸方向駆動モータ72Bと、ボールねじ72Cと、を備えている。スライドアーム72Aは、アダプタ収納部71に固定され、L軸方向に伸長および短縮可能である。アダプタ収納部71には、ボールねじ72Cが噛み合っている。L軸方向駆動モータ72Bは、ボールねじ72Cに接続され、ボールねじ72Cを回転させる。L軸方向駆動モータ72Bが駆動することによりボールねじ72Cが回転すると、スライドアーム72Aが伸縮するとともに、アダプタ収納部71がL軸方向に移動する。
【0043】
図6は、アダプタ5(図2参照)を交換中の切削加工機10を示す縦断面図である。図6に示すように、アダプタ5の交換時、アダプタ収納部71は、加工室120内に下降する。アダプタ収納部71は、加工室120の前方側開口部124を通って加工室120内に移動する。ホルダ移動装置30は、アダプタ5の交換時には、ワークホルダ20を切削加工時の移動範囲よりもX軸方向の前方に移動させる。図6に示すように、このとき、スリット123の後方側の端部は、防塵板36に覆われず、開放されている。防塵板36は、ワークチェンジャ70との間で被切削物1を受け渡す受け渡し位置にワークホルダ20が位置しているとき、スリット123の後方側の端部よりも前方に位置するように構成されている。これにより、防塵板36の長さが短縮され、加工室120が後方に向かって長くなることが抑制されている。図6に示すように、アダプタ5は、ワークホルダ20がX軸方向の前方側に前進し、アダプタ5の収納スペース71a(図1参照)に突入することにより、ワークホルダ20に保持される。なお、本実施形態では、搬送装置72は、アダプタ収納部71を加工室120に搬送することにより複数の被切削物1を加工室120に搬送するが、搬送装置72の構成は、これに限定されない。搬送装置72は、アダプタ収納部71に収納された複数の被切削物1のうちの少なくとも1つの被切削物1を加工室120に搬送するように構成されていればよい。例えば、搬送装置72は、固定されたアダプタ収納部71の収納スペース71a内の被切削物1を把持して取り出し、ワークホルダ20に受け渡すように構成されていてもよい。
【0044】
切削装置50および切削装置50の移動装置(主軸移動装置60)は、切削装置室150に収容されている。切削装置50は、ワークホルダ20に保持された被切削物1を切削する。図3に示すように、切削装置50および主軸移動装置60は、ワークホルダ20よりも上方に設けられている。切削装置50は、切削ツール6を把持して回転させる主軸51を備えている。主軸51は、スピンドルユニット52と、スピンドルユニット52の下端部に設けられた把持部53と、を備えている。スピンドルユニット52は、X軸方向と直交する(ここでは、L軸方向と平行な)方向に延びている。以下、この方向をZ軸方向とも呼ぶ。スピンドルユニット52は、把持部53をZ軸方向に平行な軸線周りに回転させる。把持部53は、Z軸方向の下方に突き出すように切削ツール6を把持する。スピンドルユニット52は、ここでは、モータ内蔵のユニットである。ただし、スピンドルユニット52は、例えば、外部のモータとベルト等により接続されていてもよい。把持部53は、例えば、エア駆動式のコレットチャックである。ただし、把持部53の方式は特に限定されない。
【0045】
主軸移動装置60は、切削装置50をZ軸方向および左右方向に移動させる。左右方向は、X軸方向およびZ軸方向に直交する方向である。以下では、左右方向のことをY軸方向とも呼ぶ。主軸移動装置60が切削装置50をY軸方向およびZ軸方向に移動させ、ホルダ移動装置30がワークホルダ20をX軸方向に移動させることにより、切削ツール6と被切削物1との位置関係が三次元的に変化する。Z軸方向は、加工室120の天壁120Uに交差する(ここでは直交する)方向であり、切削装置50は、Z軸方向の移動により、加工室120内に出現し、または、切削装置室150内に退避する。主軸移動装置60は、その少なくとも一部がワークホルダ20よりも上方かつ天壁120Uよりも下方に配置されるような位置に切削装置50を移動させることが可能である。
【0046】
主軸移動装置60は、Y軸方向移動装置60Yと、Z軸方向移動装置60Zと、を備えている。Y軸方向移動装置60Yは、切削装置50をY軸方向に移動させる装置である。Z軸方向移動装置60Zは、切削装置50をZ軸方向に移動させる装置である。図7は、切削装置室150および駆動装置室130の斜視図である。図7では、切削装置室150および駆動装置室130の内部が見えるように、一部の部材の図示を省略している。図7に示すように、Y軸方向移動装置60Yは、Y軸方向に延びる一対のY軸ガイドレール61Yと、Y軸ガイドレール61Yに摺動可能に係合したY軸方向移動体62Yと、Y軸方向駆動モータ63Yと、ボールねじ64Yと、を備えている。一対のY軸ガイドレール61Yは、切削装置室150の底壁に設けられている。Y軸ガイドレール61Yは、駆動装置室130の上方まで延びている。Y軸方向移動体62Yは、Y軸ガイドレール61Yに沿ってY軸方向に移動可能である。Y軸方向移動体62Yは、Y軸ガイドレール61Yに沿って駆動装置室130の上方まで移動することができる。Y軸方向移動体62Yは、Z軸方向移動装置60Zを支持している。Z軸方向移動装置60Zは、Z軸方向に移動可能に切削装置50を支持している。
【0047】
図7に示すように、ボールねじ64Yは、Y軸方向に延びている。ボールねじ64Yは、Y軸方向移動体62Yに噛み合わされている。Y軸方向駆動モータ63Yは、ボールねじ64Yを回転させる。Y軸方向駆動モータ63Yが駆動し、ボールねじ64Yが回転すると、Y軸方向移動体62Yは、Y軸ガイドレール61Yに沿ってY軸方向に移動する。これにより、Z軸方向移動装置60Zおよび切削装置50がY軸方向に移動する。
【0048】
図3に示すように、Z軸方向移動装置60Zは、Z軸方向に延びる一対のZ軸ガイドシャフト61Zと、Z軸ガイドシャフト61Zに摺動可能に係合し切削装置50を支持するZ軸方向移動体62Zと、Z軸方向駆動モータ63Zと、図示しないボールねじと、を備えている。Z軸方向移動装置60Zも、Y軸方向移動装置60YがZ軸方向移動装置60Zを移動させるのと同様の仕組みで、切削装置50をZ軸方向に移動させる。
【0049】
なお、図示は省略するが、Y軸方向移動体62Yの左右には、それぞれ蛇腹が設けられていてもよい。右側の蛇腹の両端は、それぞれ、Y軸方向移動体62Yの右端および後方側開口部125の右端に連結されている。左側の蛇腹の両端は、それぞれ、Y軸方向移動体62Yの左端および後方側開口部125の左端に連結されている。蛇腹により、後方側開口部125から切削装置室150に粉塵等が侵入することが抑制されている。
【0050】
図3に示すように、切削装置室150の天壁150Uには、吸気口152が開口している。吸気口152は、ここでは、左右方向に並んだ複数のスリットから構成されている。ただし、吸気口152の形状は特に限定されない。吸気口152は、排気口128から空気が排出されるのに応じて、切削加工機10内に外部の空気を取り込むための開口部である。吸気口152は、切削装置室150に連通している。さらに吸気口152は、切削装置室150を介して駆動装置室130およびチェンジャ室170にも連通している。切削装置室150と駆動装置室130とは、切削装置室150の底壁(駆動装置室130の天壁)に開口した後方側開口部125によって連通されている。切削装置室150とチェンジャ室170とは、特に仕切なく連通している。加工室120は、切削装置室150および駆動装置室130を介して吸気口152と連通している。駆動装置室130と加工室120とは、加工室120の右側壁120R(駆動装置室130の左側壁)に開口したスリット123によって連通されている。加工室120は、切削装置室150およびチェンジャ室170を介しても吸気口152と連通している。チェンジャ室170と加工室120とは、加工室120の天壁120U(チェンジャ室170の底壁)に開口した前方側開口部124によって連通されている。
【0051】
吸気口152が切削装置室150に連通し、切削装置室150と加工室120とが後方側開口部125によって連通し、さらに、加工室120に排気ダクト92が連通していることにより、集塵機111を駆動させると、図3に示すように、吸気口152から切削装置室150を経由して加工室120に向かう風の流れF3が発生する。切削装置室150の内圧は、加工室120の内圧よりも高くなる。よって、加工室120で発生した切削粉等が切削装置室150に侵入しにくくなる。同様に、吸気口152がチェンジャ室170に連通し、チェンジャ室170と加工室120とが前方側開口部124によって連通していることにより、集塵機111を駆動させると、図3に示すように、吸気口152からチェンジャ室170を経由して加工室120に向かう風の流れF4が発生する。チェンジャ室170の内圧は、加工室120の内圧よりも高くなる。これにより、加工室120で発生した切削粉等がチェンジャ室170に侵入しにくくなる。さらに、吸気口152が駆動装置室130に連通し、駆動装置室130と加工室120とがスリット123によって連通していることにより、集塵機111を駆動させると、図5に示すように、吸気口152(図3参照)から駆動装置室130を経由して加工室120に向かう風の流れF5が発生する。駆動装置室130の内圧は、加工室120の内圧よりも高くなる。これにより、加工室120で発生した切削粉等が駆動装置室130に侵入しにくくなる。
【0052】
図7に示すように、本実施形態では、ツールストッカ80は、駆動装置室130に収容されている。ツールストッカ80は、複数の切削ツール6を収納可能に構成されている。複数の切削ツール6は、例えば、被切削物1の材料や切削の種類に応じて使い分けられる。図7に示すように、ツールストッカ80は、X軸方向移動体32に支持されている。詳しくは、ツールストッカ80は、X軸方向移動体32の上面に固定されている。従来、ツールストッカは、ホルダ移動装置の支持アームに支持されていた。そのため、従来の切削装置では、支持アームが撓みやすく、被切削物1の切削において被切削物1にあまり負荷を掛けることができなかった。具体的には、切削による負荷を考慮して、時間当たりの切削量を制限するなどしていた。本実施形態では、ツールストッカ80がX軸方向移動体32に支持されることにより、支持アーム31の負荷が低減されている。
【0053】
図8は、ツールストッカ80の平面図である。図8に示すように、ツールストッカ80は、それぞれ切削ツール6を収納可能な複数の収納孔81を備えている。複数の収納孔81は、ツールストッカ80の上面80Uに形成され、Z軸方向の下方に向かって凹んでいる。図8に示すように、複数の収納孔81は、千鳥状に配置されている。詳しくは、ツールストッカ80には、複数の収納孔81のうちの一部の複数の収納孔81が所定の並び方向(ここでは、Y軸方向)に並んだ列81A~81Eが形成されており、複数の列81A~81Eのうちの隣り合った2つの列(例えば、列81Aと列81B)は、並び方向の位置がずれている。上記隣り合った2つの列の間の並び方向の位置のずれ量は、各列81A~81Eにおける収納孔81のピッチの半分以下である。かかる千鳥配置により、複数の収納孔81の配置が密となっている。その結果、スペースに対する切削ツール6の収納効率が向上している。なお、複数の列81A~81Eは、1つおきに並び方向の位置が揃っている。
【0054】
切削装置50は、ツールストッカ80に収納された各切削ツール6を把持可能に構成され、把持した切削ツール6によってワークホルダ20に保持された被切削物1を切削する。これを可能とするように、主軸移動装置60は、切削装置50を駆動装置室130と加工室120との間で移動させる。また、ホルダ移動装置30は、ツールストッカ80を切削装置室150の下方に移動させる。
【0055】
図3および図7に示すように、本実施形態では、切削装置50は、ワークホルダ20およびツールストッカ80よりも上方に設けられている。主軸移動装置60のY軸方向移動装置60Yは、切削装置50が駆動装置室130の上方と加工室120の上方との間を移動するように、切削装置50をY軸方向に移動させる。主軸移動装置60のZ軸方向移動装置60Zは、切削装置50を上下方向(ここでは、鉛直方向に対して傾斜したZ軸方向)に移動させる。ホルダ移動装置30は、Y軸方向移動装置60Yによる切削装置50の移動経路の下方に設定されたツール把持位置P1(図7参照)にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。ツール把持位置P1は、後方側開口部125の下方の位置である。ツール把持位置P1にツールストッカ80を移動させ、かつ、切削装置50をツール把持位置P1の上方の位置に移動させた状態でZ軸方向移動装置60Zを駆動して切削装置50を下降させることにより、切削装置50にツールストッカ80の切削ツール6を把持させることができる。
【0056】
ホルダ移動装置30は、ツール把持位置P1よりも前方に設定されたツール交換位置P2にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。図7に示すように、ツール把持位置P2は、ツール交換室180の底壁182の下方に設定されている。ツール交換室180の底壁182は、ツール交換室180と駆動装置室130とを区画している。図7に示すように、ツール交換室180の底壁182には、ツール交換位置P2の上方に開口した開口部183が形成されている。開口部183は、ユーザがツールストッカ80に切削ツール6を抜き差しするための開口部である。開口部183は、底壁182をZ軸方向に貫通している。ホルダ移動装置30を駆動してツールストッカ80をツール交換位置P2に移動させると、ユーザは、開口部183を通してツールストッカ80にアクセスすることができる。開口部183が形成されたツール交換室180を設けることにより、切削ツール6の交換時などにユーザがホルダ移動装置30に触れてしまうことが防止されている。また、かかる構成により、切削ツール6の交換時などに駆動装置室130に外部の異物が侵入することが抑制されている。
【0057】
図3に示すように、本実施形態に係る切削加工機10は、主軸51に設けられ、エアを噴射する主軸エアブロー装置55をさらに備えている。主軸エアブロー装置55は、主軸51の把持部53の側方に設けられた主軸ノズル56を備えている。図9は、主軸51の下端部付近の一部破断側面図である。図9に示すように、主軸エアブロー装置55は、エアが噴射される主軸ノズル56と、主軸ノズル56を支持するノズル支持部材57と、を備えている。ノズル支持部材57は、把持部53よりもZ軸方向の上方に設けられている。ノズル支持部材57は、ここでは、スピンドルユニット52を覆うカバーに固定されている。ノズル支持部材57は、Z軸方向に移動可能なように主軸ノズル56を支持している。詳しくは、ノズル支持部材57は、Z軸方向下方側のエンド位置Pd(図9に示した位置、下方側エンド位置Pdとも呼ぶ)と下方側エンド位置PdよりもZ軸方向の上方側にある他の位置との間を移動可能なように主軸ノズル56を支持している。主軸ノズル56の下方側エンド位置Pdは、把持部53の側方に設定されている。下方側エンド位置Pdでは、把持部53と主軸ノズル56とは、X軸方向に並んでいる。
【0058】
図9に示すように、ノズル支持部材57は、主軸ノズル56が挿通されたガイド孔57aと、主軸ノズル56が下方側エンド位置Pdよりも下方に移動することを規制するストッパ57bと、を備えている。また、主軸エアブロー装置55は、ノズル支持部材57に支持された主軸ノズル56を付勢して、主軸ノズル56を下方側エンド位置Pdに保持する付勢部材58を備えている。付勢部材58は、ここでは、コイルスプリングである。ただし、付勢部材58は、コイルスプリングには限定されず、例えば、エアシリンダ等であってもよい。主軸ノズル56は、下方側エンド位置Pdでストッパ57bに当接する当接部56aを備えている。ストッパ57bと付勢部材58とにより、主軸ノズル56は、下方側エンド位置Pdに保持される。また、主軸ノズル56は、Z軸の上方に向かって押されると、付勢部材58の付勢力に抗して、ガイド孔57aに沿ってZ軸の上方に移動する。
【0059】
主軸ノズル56は、ワークホルダ20よりも上方に設けられており、下方(ここでは、鉛直方向下方)に向かってエアを噴射するように構成されている。主軸エアブロー装置55によるエアの噴射方向は、鉛直方向下方である。これにより、把持部53に把持された切削ツール6に対して斜めにエアが吹きつけられる。ただし、主軸ノズル56は、その他の方向にエアを噴射してもよい。主軸ノズル56は、側壁に形成されZ軸方向に斜交するように延びるカット面56bを備えている。カット面56bは、Z軸方向の下方に向かうにつれて把持部53に近づくような傾斜を有している。ここでは、カット面56bは、主軸ノズル56の下端から斜め上方に向かって延びている。
【0060】
主軸51に装着した切削ツール6をツールストッカ80に戻すときや、ツールストッカ80の切削ツール6を主軸51に装着する際には、Z軸方向移動装置60Zは、ツールストッカ80に収納された切削ツール6を把持または解放するように設定されたZ軸方向の所定位置(以下、作業位置Poとも呼ぶ)に把持部53を移動させる。図10は、切削ツール6の交換時の切削装置50の先端部付近の側面図である。図10は、把持部53が作業位置Poに位置した状態を図示している。図10に示すように、主軸ノズル56は、把持部53がZ軸方向の作業位置Poに位置した状態ではツールストッカ80に当接する。このとき、主軸ノズル56は、ツールストッカ80に押され、付勢部材58の付勢力に抗して下方側エンド位置PdよりもZ軸方向の上方に位置する。
【0061】
主軸ノズル56は、ツールストッカ80に当接していないときには、ツールストッカ80に当接しているときよりもZ軸方向の下方の下方側エンド位置Pdに位置する。これにより、被切削物1の加工時、クリーニング時、または加工室120のクリーニング時(後述するが、主軸エアブロー装置55は、加工室120内やワークホルダ20にエアを噴射するように構成されており、加工室120のクリーニングにも使用される)、切削ツール6の先端の刃部、被切削物1、または加工室120の底壁120Dに主軸ノズル56を近づけることができる。一方で、主軸ノズル56が下方側エンド位置Pdにあると、主軸51に装着した切削ツール6をツールストッカ80に戻すときや、ツールストッカ80の切削ツール6を主軸51に装着する際には、長い主軸ノズル56がツールストッカ80や切削ツール6と干渉する。そこで、本実施形態では、主軸エアブロー装置55は、主軸ノズル56がZ軸方向の上方に押されると上方に移動する(縮む)ように構成されている。
【0062】
主軸ノズル56のカット面56bは、物体が側方から主軸ノズル56を押したときに主軸ノズル56が上方に移動するために設けられたものである。物体が側方からカット面56bを押すと、その押圧力の一部はカット面56bによってZ軸方向の上方向きの力に変換され、主軸ノズル56が上方に移動する。
【0063】
なお、主軸ノズル56がZ軸の上下方向に移動する構成は、ツールストッカ80以外の物体が主軸ノズル56に衝突する可能性に対しても効果を奏する。かかる構成によれば、何らかの物体が主軸ノズル56に衝突すると主軸ノズル56がZ軸の上方に移動する。そのため、主軸ノズル56または衝突した物体が破損するおそれを低減することができる。
【0064】
制御装置100は、ホルダ移動装置30、主軸移動装置60、切削装置50などに接続され、それらの動作を制御している。図11は、切削加工機10のブロック図である。図11に示すように、制御装置100は、ホルダ移動装置30のX軸方向駆動モータ34と、回転装置40のA軸回転モータ41AおよびB軸回転モータ41Bと、切削装置50のスピンドルユニット52および把持部53と、主軸移動装置60のY軸方向駆動モータ63YおよびZ軸方向駆動モータ63Zと、ワークチェンジャ70のL軸方向駆動モータ72Bと、天面エアブロー装置93と、底面エアブロー装置94と、主軸エアブロー装置55と、集塵機111と、操作パネル110と、に接続され、それらの動作を制御している。なお、集塵機111の制御は、制御装置100ではなく、集塵機111に内蔵された制御装置または外部の装置によって行われてもよい。
【0065】
制御装置100の構成は特に限定されない。制御装置100は、例えばマイクロコンピュータである。マイクロコンピュータのハードウェア構成は特に限定されないが、例えば、ホストコンピュータ等の外部機器から切削データ等を受信するインターフェイス(I/F)と、制御プログラムの命令を実行する中央演算処理装置(CPU:central processing unit)と、CPUが実行するプログラムを格納したROM(read only memory)と、プログラムを展開するワーキングエリアとして使用されるRAM(random access memory)と、上記プログラムや各種データを格納するメモリ等の記憶装置と、を備えている。
【0066】
図11に示すように、制御装置100は、切削制御部101と、ワーク交換部102と、ツール交換部103と、ワーククリーニング部104と、加工室クリーニング部105と、を備えている。制御装置100は、他の処理部を備えていてもよいが、ここでは図示および説明を省略する。
【0067】
切削制御部101は、ホルダ移動装置30のX軸方向駆動モータ34と、回転装置40のA軸回転モータ41AおよびB軸回転モータ41Bと、切削装置50のスピンドルユニット52と、主軸移動装置60のY軸方向駆動モータ63YおよびZ軸方向駆動モータ63Zとを制御して、被切削物1を指定された形状に切削する。被切削物1の切削加工中には、適宜に主軸エアブロー装置55が駆動され、被切削物1、アダプタ5、およびワークホルダ20に付着した切削粉が除去される。被切削物1の切削加工中には、集塵機111が駆動される。
【0068】
ワーク交換部102は、ワークチェンジャ70のL軸方向駆動モータ72Bと、ホルダ移動装置30のX軸方向駆動モータ34とを制御して、被切削物1(被切削物1が保持されたアダプタ5)を交換する。これにより、複数の被切削物1が順次加工される。ツール交換部103は、ホルダ移動装置30のX軸方向駆動モータ34と、主軸移動装置60のY軸方向駆動モータ63YおよびZ軸方向駆動モータ63Zと、切削装置50の把持部53と、を制御して、把持部53に把持される切削ツール6を交換する。
【0069】
ワーククリーニング部104は、切削加工終了後に、被切削物1、アダプタ5、およびワークホルダ20をクリーニングする。図10に示すように、ワーククリーニング部104は、第1ブロー制御部104Aと、第1姿勢制御部104Bと、第1移動制御部104Cと、反転制御部104Dと、を備えている。
【0070】
第1ブロー制御部104Aは、被切削物1の切削が終了した後に、主軸エアブロー装置55を制御してワークホルダ20に向かってエアを噴射する。第1姿勢制御部104Bは、被切削物1の切削が終了した後であって第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射する前に回転装置40を制御し、被切削物1の対向する2面(第1面1Aおよび第2面1B)が主軸エアブロー装置55によるエアの噴射方向と所定の角度で交差するようにワークホルダ20の姿勢を制御する。本実施形態では、上記所定の角度は90度である。ただし、主軸エアブロー装置55によるエアの噴射方向と被切削物1の対向する2面1A、1Bとのなす角度は、90度に限定されるわけではない。第1姿勢制御部104Bは、また、被切削物1の切削が終了した後であって第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射する前に、回転装置40を制御して、被切削物1の第1面1Aが主軸ノズル56の方を向くようにワークホルダ20の姿勢を制御する。これにより、被切削物1の第1面1Aがクリーニングされる。
【0071】
第1移動制御部104Cは、第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射しているときに、ホルダ移動装置30およびY軸方向移動装置60Yを制御して、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる。これにより、エアが噴射されるワークホルダ20の場所が移動する。ホルダ移動装置30およびY軸方向移動装置60Yは、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる移動装置として機能する。本実施形態では、第1移動制御部104Cは、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の移動経路が走査線を描くように、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる。
【0072】
反転制御部104Dは、第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射している途中で、回転装置40を制御して、被切削物1の第2面1Bが主軸ノズル56の方を向くようにワークホルダ20の姿勢を変更する。これにより、被切削物1の第1面1Aのクリーニングの後に、第2面1Bがクリーニングされる。ワーククリーニングの間、集塵機111は駆動されている。
【0073】
加工室クリーニング部105は、切削加工およびワーククリーニングの終了後に、加工室120をクリーニングする。ただし、加工室クリーニング部105は、切削加工の終了後であれば、ワーククリーニングの前に加工室120をクリーニングしてはいけないわけではない。図11に示すように、加工室クリーニング部105は、第2ブロー制御部105Aと、第2姿勢制御部105Bと、第2移動制御部105Cと、を備えている。
【0074】
第2ブロー制御部105Aは、被切削物1の切削が終了した後に、主軸エアブロー装置55を制御して、加工室120内にエアを噴射する。第2姿勢制御部105Bは、被切削物1の切削が終了した後(ここではさらに、ワーククリーニング部104の制御によるワーククリーニングの後)であって第2ブロー制御部105Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射する前に回転装置40を制御し、ワークホルダ20の姿勢を予め定められた姿勢とする。なお、第1ブロー制御部104Aによる主軸エアブロー装置55の制御と第2ブロー制御部105Aの制御による主軸エアブロー装置55の制御とは連続的に行われてもよい。すなわち、ワーククリーニングおよび加工室クリーニングの間、エアの噴射は継続されていてもよい。
【0075】
本実施形態では、ワークホルダ20の予め定められた姿勢は、ワークホルダ20に保持された被切削物1の対向する2面1A、1Bが加工室120の底壁120Dに対して傾斜するような姿勢である。さらに詳しくは、ワークホルダ20の予め定められた姿勢は、ワークホルダ20に保持された被切削物1の対向する2面1A、1Bが前方に向かって下降傾斜するような姿勢である。これにより、主軸エアブロー装置55から噴射されたエアは、ワークホルダ20に保持された被切削物1およびアダプタ5に沿って流れ、主として前斜め下方に向かう。本実施形態に係る加工室120のクリーニングでは、ワークホルダ20の姿勢を制御することにより、加工室120内を流れるエアの方向を制御している。
【0076】
第2移動制御部105Cは、第2ブロー制御部105Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射しているときにY軸方向移動装置60Yを制御して、主軸ノズル56を左方または右方に移動させる。これにより、ワークホルダ20の姿勢を制御することによって発生させた前斜め下方向きの風の流れが、左方または右方に移動する。これにより、加工室120のクリーニングが左方または右方に向かって進行する。
【0077】
加工室クリーニングでは、第2ブロー制御部105Aは、天面エアブロー装置93および底面エアブロー装置94も制御して、それらにエアを噴射させる。詳しくは、第2ブロー制御部105Aは、天面エアブロー装置93および底面エアブロー装置94を制御してそれぞれ天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからエアを噴射させ、その後に主軸エアブロー装置55を制御して加工室120内にエアを噴射する。さらに、第2ブロー制御部105Aは、主軸エアブロー装置55を制御して加工室120内にエアを噴射した後に、天面エアブロー装置93および底面エアブロー装置94を制御してエアを噴射させる。第2姿勢制御部105Bは、加工室クリーニングの途中で、1回または複数回ワークホルダ20の姿勢を変えることにより、1回または複数回、風の向きを変えてもよい。加工室クリーニングの間も、集塵機111は駆動されている。
【0078】
[全体プロセス]
以下では、被切削物1および切削ツール6の切削加工機10へのセッティング、被切削物1の加工、被切削物1および加工室120のクリーニングを含むプロセスについて説明する。図12は、プロセス全体のフローチャートである。図12に示すように、被切削物1の切削加工のプロセスのステップS10では、切削ツール6がツールストッカ80に収納される。ステップS10は、ユーザにより行われる。ユーザは、ツール交換室扉181を開けて、ツールストッカ80の収納孔81に切削ツール6を収納する。ステップS20では、被切削物1が装着されたアダプタ5(被切削物1をアダプタ5に装着するステップは記載を省略する)をアダプタ収納部71の収納スペース71aに収納する。ステップS20も、ユーザにより行われる。ユーザは、チェンジャ室扉171を開けて、アダプタ収納部71に切削ツール6を収納する。ステップS10とS20とは、逆の順序で行われてもよい。
【0079】
続くステップS30では、ワークチェンジャ70に収納されたアダプタ5のうちの1つがワークホルダ20に装着される。ステップS30では、搬送装置72によってアダプタ収納部71が加工室120内に搬送される。その後、ホルダ移動装置30によってワークホルダ20がX軸方向の前方に移動され、アダプタ5がワークホルダ20に装着される。アダプタ5がワークホルダ20に装着されると、ワークホルダ20は、X軸方向の後方に移動する。これにより、ワークホルダ20に装着された被切削物1が切削装置室150の下方に移動される。その後、アダプタ収納部71は、チェンジャ室170に戻される。
【0080】
ステップS40では、ツールストッカ80に収納された切削ツール6のうちの1つが切削装置50の把持部53に把持される。ステップS40では、ホルダ移動装置30により、ツールストッカ80をツール把持位置P1(図7参照)に移動させる。さらに、Y軸方向移動装置60Yによって、切削装置50をツール把持位置P1の上方の位置に移動させる。その状態で、Z軸方向移動装置60Zを駆動して、把持部53が切削ツール6を把持または解放する位置として設定された作業位置Poまで切削装置50を下降させる。これにより、切削装置50にツールストッカ80の切削ツール6を把持させることができる。このとき、図10に示すように、主軸ノズル56は、ツールストッカ80に当接し、ツールストッカ80によってZ軸方向の上方に押される。これにより、主軸ノズル56は、付勢部材58の付勢力に抗してZ軸方向の上方に移動する。
【0081】
切削ツール6の把持が終了すると、Z軸方向移動装置60Zは、主軸ノズル56を後方側開口部125よりも上方に移動させる。これにより、切削装置50は、Y軸方向に移動可能となる。また、主軸ノズル56は、付勢部材58の付勢により、下方側エンド位置Pdに戻る。その後、切削装置50は、加工室120の上方に移動される。なお、ステップS30とS40とは、逆の順序で行われてもよい。
【0082】
ステップS50では、被切削物1が切削加工され、加工目的物が削り出される。ステップS50では、ホルダ移動装置30、Y軸方向移動装置60Y、およびZ軸方向移動装置60Zが駆動されて切削ツール6と被切削物1との相対位置が変更されるとともに、回転装置40が駆動されて被切削物1の姿勢が変更される。切削ツール6は、ステップS40と同様の手順により、適宜、指定されたものに交換される。これにより、加工目的物が完成する。ステップS50では、切削加工により生じた切削粉が被切削物1、アダプタ5、および切削ツール6に付着しないように、主軸エアブロー装置55からエアが噴射される。また、ステップS50の間は、集塵機111が駆動される。
【0083】
ステップS60では、ワーククリーニングが実行される。ステップS70では、加工室クリーニングが実行される。ステップS60およびS70の詳細については後述する。ステップS80では、切削加工が終了した被切削物1がアダプタ5とともにチェンジャ室170に戻される。ステップS80では、ステップS30の逆の手順で各部の動作が行われる。これらのステップS10~S80により、被切削物1から加工目的物が得られ、また、加工目的物、アダプタ5、および加工室120から切削粉が除去される。
【0084】
[ワーククリーニングのプロセス]
以下では、ステップS60のワーククリーニングの詳細について説明する。図13は、ワーククリーニングのフローチャートである。図13に示すように、ワーククリーニングのステップS61では、回転装置40が駆動され、被切削物1の第1面1Aおよび第2面1Bが主軸ノズル56のエアの噴射方向に直交するように、ワークホルダ20の姿勢が変更される。図14は、ワーククリーニング中のワークホルダ20を示す側面図である。図14に示すように、ここでは、被切削物1の第1面1Aおよび第2面1Bが略水平となるように、ワークホルダ20の姿勢が変更される。
【0085】
図13に示すように、続くステップS62では、ワークホルダ20および主軸ノズル56がワーククリーニングの開始位置に移動される。なお、ステップS61とS62とは、順番が逆でもよい。図15は、ワーククリーニングの手順を示すワークホルダ20の平面図である。図15の矢印L1は、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の移動経路を示している。以下、ワーククリーニングにおける位置は、主軸ノズル56と平面視において重なるアダプタ5の位置として表す。図15に示すように、ワーククリーニングの開始位置は、アダプタ5の左前方の隅である。ただし、ワーククリーニングの開始位置は、アダプタ5の右前方、左後方、または右後方の隅でもよい。ステップS63では、主軸ノズル56からエアが噴射される。
【0086】
ステップS64では、主軸ノズル56がアダプタ5の右前方の隅まで移動される。これにより、アダプタ5の左前方の隅から右前方の隅までの間の切削粉が除去される。ステップS65では、ワークホルダ20がX軸方向の前方に移動される。これにより、主軸ノズル56から噴射されたエアが当たる位置がアダプタ5の後方側に移動する。ステップS65におけるワークホルダ20の移動量は、好適には、主軸ノズル56のX軸方向の長さ以下であるとよい。ステップS66では、主軸ノズル56がアダプタ5の左縁に到達するまで左方向に移動される。これにより、主軸ノズル56の移動経路L1に沿って、アダプタ5の右縁から左縁までの間の切削粉が除去される。以下、図示は省略するが、アダプタ5の全領域上を走査するまで、上記動きが繰り返される。このように、ワーククリーニングでは、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の移動経路L1が走査線を描くように、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる。これにより、アダプタ5の第1面1A側の全領域がクリーニングされる。
【0087】
続くステップS67では、回転装置40が駆動され、ワークホルダ20がA軸周りに180度回転される。これにより、アダプタ5が反転され、被切削物1の第2面1Bが主軸ノズル56の方を向く。ステップS68では、ステップS64~S66の逆動作が行われ、主軸ノズル56は、走査線を描きながらワーククリーニングの開始位置に戻る。これにより、アダプタ5の第2面1B側の全領域がクリーニングされる。ワーククリーニングはこれにより終了する。
【0088】
[加工室クリーニングのプロセス]
次に、ステップS70の加工室クリーニングの詳細について説明する。図16は、加工室クリーニングのフローチャートである。図16に示すように、加工室クリーニングのステップS71では、天面エアブロー装置93および底面エアブロー装置94が駆動され、天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからエアが噴射される。これにより、天壁120Uおよび後壁120Rrに付着した切削粉が払い落とされるとともに、底壁120D上の切削粉が排気口128の方に集められる。天壁120Uおよび後壁120Rrから払い落とされた切削粉、および、集められた底壁120D上の切削粉の多くは、底壁120Dと後壁120Rrとの接続部に沿って形成された排気口128に吸い込まれる。ステップS71の終了時には、天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからのエアの噴射が停止される。
【0089】
続くステップS72では、回転装置40が駆動され、被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bが前方に向かって下降傾斜するように、ワークホルダ20の姿勢が変更される。ステップS72は、ステップS71よりも先に行われてもよい。図17は、加工室クリーニング中の切削加工機10の断面図である。図17に示すように、ステップS72により、アダプタ5は、前端部が後端部よりも下方に位置する所定の姿勢とされる。これにより、被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bは、加工室120の底壁120Dに対して傾斜する。ステップS73では、主軸ノズル56からワークホルダ20に向かってエアが噴射される。ワークホルダ20に向かってエアが噴射されると、図17の矢印F6に示すように、ワークホルダ20、ワークホルダ20の保持されたアダプタ5、およびアダプタ5に保持された被切削物1に沿って、エアの方向が変化する。ここでは、ワークホルダ20は、被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bが前方に向かって下降傾斜するような姿勢をとっている。そのため、図17の風の流れF6に示すように、主軸ノズル56から下方に向かって噴射されたエアは、主に前斜め下方向きに向きを変える。その他、ワークホルダ20、アダプタ5、および被切削物1の形状に応じて、エアは散乱するように方向を変える。前斜め下方向きに向きを変えたエアは、加工室120の前壁120Fおよび加工室扉122により、底壁120Dに沿って後方に向かうように再び向きを変える。後方に向きを変えた風の流れF6により、ステップS71で排気口128付近に集められたものの排気口128には吸い込まれなかった切削粉等の多くが、排気口128に押し込まれる。
【0090】
ステップS74では、Y軸方向移動装置60Yが駆動され、主軸ノズル56が右方に移動される。この主軸ノズル56の移動は、左方に向かってでもよい。この主軸ノズル56の移動により、加工室120の左右方向の広い範囲にわたって、切削粉等が排気口128に押し込まれる。ステップS74の終了時には、主軸ノズル56からのエアの噴射が停止される。
【0091】
ただし、加工室クリーニングにおけるワークホルダ20の姿勢は、上記した姿勢には限定されない。加工室クリーニングにおいて、ワークホルダ20は、例えば、被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bが加工室120の底壁120Dに対して傾斜するような他の姿勢とされてもよい。加工室クリーニングにおいて、ワークホルダ20は、例えば、アダプタ5の左端部または右端部が右端部または左端部よりも下方に位置するような姿勢とされてもよい。かかる姿勢によれば、アダプタ5および被切削物1に当たったエアは、向きを変えて加工室120の左側壁120Lまたは右側壁120Rに向かう。これにより、左側壁120Lまたは右側壁120Rがクリーニングされる。ワークホルダ20の姿勢は、風の向きが変わるように、加工室クリーニングの途中で変更されてもよい。
【0092】
ステップS75では、再び、天面エアブロー装置93および底面エアブロー装置94が駆動され、天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからエアが噴射される。これにより、加工室120内にまだ残っている切削粉の多くが排気口128に押し込まれる。ステップS75の終了時には、天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからのエアの噴射が停止される。ステップS75をもって、加工室クリーニングは終了する。加工室クリーニングにより、被切削物1の切削加工によって加工室120内に生成された切削粉の大部分が除去される。
【0093】
[スロープおよび集塵チャンバの機能]
以下では、スロープ127および集塵チャンバ90の機能について説明する。前述したように、スロープ127は、被切削物1の切削加工により生じる被切削物1の破片のうち大きいものを選別するために設けられている。これにより、大き過ぎる破片が排気口128に移動し、排気口128を塞いでしまうことが防止されている。同様に、加工中の被切削物1がアダプタ5から落下した場合にも、スロープ127は、被切削物1が排気口128に吸い込まれることを防止する。本実施形態では、スロープ127により大き過ぎる物体や被切削物1が排気口128に吸い込まれることが抑制されているため、排気口128には、異物の通過を防止するメッシュ等が設けられていない。このため、切削加工機10の排気能力も向上している。
【0094】
集塵チャンバ90は、被切削物1の大きな破片のようなサイズの大きい物体が直接排気ダクト92に入らないように設けられている。このような大きな物体が直接に排気ダクト92に入ると排気ダクト92が詰まるおそれがある。集塵チャンバ90は、例えばこのような物体をいったん受けることにより、排気ダクト92の詰まりを抑制している。排気ダクト92の詰まりをより抑制するため、排気ダクト92が接続されるダクト接続孔91の開口方向は、排気口128の開口方向と交差している。また、本実施形態では、排気口128は、平面視において集塵チャンバ90の内部空間よりも小さく構成されている。これにより、排気口128を通過する排気の速度が上昇する。そのため、切削加工機10の排気能力が向上している。
【0095】
[実施形態の作用効果]
以下に、本実施形態に係る切削加工機10の作用効果を説明する。
【0096】
本実施形態に係る切削加工機10は、被切削物1を保持するワークホルダ20と、ワークホルダ20を収容する加工室120と、ワークホルダ20に保持された被切削物1を切削する切削装置50と、切削装置50を移動させる主軸移動装置60と、切削装置室150と、加工室120に連通した排気ダクト92と、切削装置室150に連通した吸気口152と、を備えている。切削装置室150は、加工室120との間を区画する壁部(加工室120の天壁120U)と、加工室120の天壁120Uに開口し切削装置50の少なくとも一部が通過可能な後方側開口部125と、を備えており、主軸移動装置60を収容している。かかる構成によれば、前述したように、吸気口152から切削装置室150を経由して加工室120に向かう風の流れF3(図3参照)が発生する。切削装置室150の内圧は、加工室120の内圧よりも高くなる。よって、加工室120で発生した切削粉等が後方側開口部125を経由して切削装置室150に侵入することが抑制される。切削装置室150には、可動部を有し、できるだけ粉塵を避けたい切削装置50および主軸移動装置60が収容されている。かかる構成によれば、加工室120で発生した切削粉等が切削装置50または主軸移動装置60に付着し、切削装置50または主軸移動装置60に問題が発生することを抑制できる。
【0097】
本実施形態に係る切削加工機10は、複数の被切削物1を収納可能なアダプタ収納部71と、アダプタ収納部71に収納された複数の被切削物1のうちの少なくとも1つの被切削物1を加工室120に搬送する搬送装置72と、を備えたワークチェンジャ70を備えている。切削加工機10は、さらに、加工室120との間を区画する壁部(加工室120の天壁120U)と、加工室120の天壁120Uに開口し搬送装置72によって搬送される被切削物1が通過可能な前方側開口部124と、を備え、アダプタ収納部71を収容するチェンジャ室170を有している。吸気口152は、チェンジャ室170にも連通している。かかる構成によれば、前述したように、加工室120で発生した切削粉等がチェンジャ室170に侵入しにくくなる。よって、加工室120で発生した切削粉等がワークチェンジャ70に付着し、ワークチェンジャ70に問題が発生することを抑制できる。
【0098】
本実施形態では、搬送装置72は、アダプタ収納部71を加工室120に搬送する。かかる構成では、アダプタ収納部71を加工室120に出し入れするための前方側開口部124を比較的大きく構成する必要がある。そのため、特に対策しなければ、加工室120で発生した切削粉等がチェンジャ室170に侵入するおそれが大きい。よって、かかる構成に対しては、吸気口152からチェンジャ室170を経由して加工室120に向かう風の流れF4を発生させるメリットが大きい。
【0099】
本実施形態に係る切削加工機10は、ワークホルダ20を支持する支持アーム31を備え、支持アーム31を移動させることによりワークホルダ20を移動させるホルダ移動装置30を備えている。切削加工機10は、さらに、加工室120との間を区画する壁部(加工室120の右側壁120R)と、加工室120の右側壁120Rに開口しホルダ移動装置30の支持アーム31が挿通されたスリット123と、を備え、ホルダ移動装置30の少なくとも一部を収容する駆動装置室130を有している。吸気口152は、駆動装置室130にも連通している。かかる構成によれば、前述したように、加工室120で発生した切削粉等が駆動装置室130に侵入しにくくなる。そのため、加工室120で発生した切削粉等がホルダ移動装置30に付着し、ホルダ移動装置30に問題が発生することを抑制できる。
【0100】
本実施形態に係る切削加工機10は、ホルダ移動装置30の支持アーム31に固定された防塵板36を備えている。防塵板36は、スリット123の少なくとも一部を覆うように設けられ、支持アーム31とともにX軸方向に移動する。かかる構成によれば、防塵板36という簡易な構成により、加工室120で発生した切削粉等が駆動装置室130に侵入するのをさらに抑制することができる。防塵板36の構成は簡易なため、コストも低減しやすい。
【0101】
本実施形態では、防塵板36は、支持アーム31のうち加工室120内に位置した部分に固定され、加工室120内に設けられている。かかる構成によれば、防塵板36は加工室120内でその効果を発揮する。よって、切削粉等がスリット123に接近するのを予め抑制することができる。
【0102】
本実施形態では、排気口128は、加工室120の複数の壁部のうちワークホルダ20よりもX軸方向の後方側にある部分(ここでは、底壁120Dの後端部)に開口しており、防塵板36は、ワークホルダ20が切削加工時の移動範囲内に位置しているとき、スリット123の後方の端部を覆うように構成されている。かかる構成によれば、被切削物1の切削中、スリット123の後方側の端部は、防塵板36によって覆われる。加工室120では、排気口128の配置により、風は後方に向かって流れる。従って、切削粉もワークホルダ20より後方に流されやすい。被切削物1の切削中にスリット123の後方側の端部を覆っておくことにより、切削粉等が駆動装置室130に侵入することを抑制する効果を高めることができる。
【0103】
一方で、防塵板36は、ワークホルダ20が切削加工時の移動範囲内に位置しているとき、スリット123の前方側の端部よりも後方側に位置する。つまり、このとき、防塵板36は、スリット123の前方部分を覆わない。加工室120では風は後方に向かって流れるため、スリット123の前方部分が防塵板36によって覆われなくても、防塵板36の防塵効果は損なわれにくい。逆に、スリット123の一部が適度に開口することにより、駆動装置室130から加工室120に風が流れ、防塵効果が向上する。さらに、かかる構成によれば、防塵板36のX軸方向の長さを短くできるため、加工室120のX軸方向の長さが長くなることを抑制できる。
【0104】
本実施形態に係る切削加工機10は、加工室120の天壁120Uに沿ってエアを噴射する天面ノズル93Nを備えた天面エアブロー装置93を有している。天面エアブロー装置93によれば、天面ノズル93Nから噴射されたエアは、加工室120の天壁120Uに沿って流れる。そのため、従来であれば除去しにくかった加工室120の天壁120Uに付着した切削粉等を効果的に除去することができる。
【0105】
本実施形態では、排気口128は加工室120の底壁120Dに開口しており、天面ノズル93Nは、加工室120の天壁120Uおよび後壁120Rrに沿って排気口128に到達するようにエアを噴射する。かかる構成によれば、天壁120Uに付着した切削粉等とともに後壁120Rrに付着した切削粉等も、排気口128に押し込むことができる。
【0106】
本実施形態では、排気口128は、底壁120Dのうち後壁120Rrとの接続部に沿って開口している。かかる構成によれば、天面ノズル93Nから噴射され天壁120Uおよび後壁120Rrに沿って流れるエアが、排気口128にスムーズに流れ込む。よって、排気効率がよい。
【0107】
本実施形態に係る切削加工機10は、加工室120の底壁120Dに沿って排気口128に到達するようにエアを噴射する底面ノズル94Nを備えた底面エアブロー装置94を有している。かかる構成によれば、加工室120の底壁120D上にある切削粉等を効果的に除去することができる。
【0108】
本実施形態では、底面ノズル94Nは、加工室120の底壁120Dよりも上方に設けられており、底壁120Dに向かって斜め下方に、かつ、排気口128の側に向かうようにエアを噴射する。かかる構成によれば、前述したように、底壁120Dに当たることにより、エアが底壁120Dの幅方向(本実施形態では、左右方向)に広がる。これにより、底壁120Dの幅方向に関して、底面ノズル94Nの幅よりも広い範囲をクリーニングすることができる。
【0109】
本実施形態では、ホルダ移動装置30が収容された駆動装置室130は、加工室120よりも右方に設けられている。天面ノズル93Nおよび排気口128は、加工室120の左右方向の中心線CLよりも右方に偏寄して設けられている。かかる構成によれば、ホルダ移動装置30が収容された駆動装置室130の側にある切削粉等を重点的に除去することができる。よって、かかる構成によっても、加工室120で発生した切削粉等がホルダ移動装置30に付着し、ホルダ移動装置30に問題が発生することを抑制できる。
【0110】
本実施形態では、Z軸方向移動装置60Zは、その少なくとも一部がワークホルダ20よりも上方かつ加工室120天壁120Uよりも下方に配置されるような位置に切削装置50を移動させることが可能に構成されている。天面ノズル93Nは、上記位置に移動された(つまり、天壁120Uよりも下方に突き出した)状態の切削装置50に向かってエアを噴射する。かかる構成によれば、被切削物1の切削加工により切削粉が降りかかった切削装置50にエアを噴射し、切削粉を除去することができる。
【0111】
本実施形態では、加工室120の底壁120Dは、排気口128が設けられるとともに排気口128に向かう上り勾配がつけられたスロープ127を備えている。かかる構成によれば、加工室120の底壁120D上に落下した被切削物1の破片のうち大きいものは、排気口128からの吸引によってもスロープ127を登れないか、または、スロープ127上に落ちてもスロープ127を滑り落ちる。そのため、大きい破片は、排気口128に吸い寄せられない。よって、本実施形態に係る切削加工機10によれば、被切削物1の破片に大きいものが含まれていた場合でも、加工室120の排気が阻害されにくい。また、かかる構成によれば、アダプタ5から被切削物1が脱落した場合にも、被切削物1が排気口128に吸い込まれることを防止できる。なお、本実施形態では、スロープ127は底壁120Dの一部であるが、底壁120Dの全部であってもよい。
【0112】
本実施形態では、加工室120の底壁120Dは、スロープ127に対して屈折するようにスロープ127に接続された底部126を備えている。かかる構成によれば、スロープ127を滑り落ちた破片等は、スロープ127と底部126との境界部で止まりやすい。そのため、スロープ127を滑り落ちた破片等をユーザが回収しやすい。例えば、加工室120の底壁120Dの全部がスロープ127である場合には、スロープ127を滑り落ちた破片等は、底壁120Dと前壁120Fとによって形成される加工室120の前下隅に溜まりやすい。これでは、スロープ127を滑り落ちた破片等をユーザが回収しにくい。ここでは、底部126は、略水平に構成されている。底部126を略水平にすることにより、落下物の止まりやすさと、スロープ127と底部126との境界部の視認性とを両立できる。ただし、底部126は、略水平な面ではなく、スロープ127よりも緩い上り勾配を有するスロープや、後方に向かって下がる逆向きのスロープであってもよい。
【0113】
本実施形態では、平面視において、スロープ127の少なくとも一部は、ワークホルダ20の少なくとも一部と重なっている。かかる構成によれば、ワークホルダ20から脱落した被切削物1の破片や加工目的物が、スロープ127上に落下する。
【0114】
本実施形態では、スロープ127は、加工室120の後壁120Rrに接続されており、排気口128の後縁は後壁120Rrにより構成されている。かかる構成によれば、排気口128は、スロープ127および加工室120の最も後部に配置される。よって、排気口128に引き寄せられる切削粉等が排気口128よりも後方にオーバーランすることがない。そのため、切削粉等を効率的に回収することができる。
【0115】
本実施形態に係る切削加工機10は、箱状の集塵チャンバ90と、ダクト接続孔91に接続された排気ダクト92と、を備えている。集塵チャンバ90には、上方開口部90Uとダクト接続孔91とが形成され、上方開口部90Uは、排気口128に接続されている。かかる構成によれば、前述したように、例えば被切削物1の大きな破片のようなサイズの大きい物体が直接に排気ダクト92に入ることを防止できる。その結果、排気ダクト92の詰まりを抑制することができる。
【0116】
本実施形態では、排気口128は、上方を向くように開口しており、集塵チャンバ90の上方開口部90Uも上方を向くように開口している。集塵チャンバ90は、排気口128の下方に設けられている。かかる構成によれば、切削粉等は、排気口128および上方開口部90Uから自然に集塵チャンバ90の中に落下する。よって、集塵効率がよい。なお、排気口128は、例えば前方を向くように開口していてはいけないわけではなく、集塵チャンバ90は、例えば排気口128の上方に設けられていてはいけないわけではない。
【0117】
本実施形態では、ダクト接続孔91は、集塵チャンバの側壁(ここでは、後壁)に開口している。かかる構成によれば、ダクト接続孔91の開口方向と排気口128の開口方向とが交差する。そのため、例えば被切削物1の大きな破片のようなサイズの大きい物体が直接に排気ダクト92に入ることをより抑制できる。
【0118】
本実施形態では、集塵チャンバ90には、平面視において排気口128よりも大きい内部空間が形成されている。言い換えると、排気口128は、平面視において集塵チャンバ90の内部空間よりも小さく構成されている。これにより、前述したように、排気口128を通過する排気の速度が上昇し、切削加工機10の排気能力が向上する。
【0119】
本実施形態に係る切削加工機10は、ワークホルダ20に向かってエアを噴射する主軸ノズル56を備えた主軸エアブロー装置55を備えている。切削加工機10の制御装置100は、切削装置50を制御して被切削物1を切削する切削制御部101と、被切削物1の切削が終了した後に主軸エアブロー装置55を制御してワークホルダ20に向かってエアを噴射する第1ブロー制御部104Aと、を備えている。かかる構成によれば、被切削物1の切削が終了した後に、被切削物1およびワークホルダ20に付着した切削粉を除去し、被切削物1およびワークホルダ20をクリーニングすることができる。なお、ワークホルダ20に向かってエアを噴射するエアブロー装置は、切削装置50に設けられたものには限定されず、どのような場所に設けられたものであってもよい。
【0120】
本実施形態に係る切削加工機10は、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる移動装置としてのホルダ移動装置30およびY軸方向移動装置60Yを備えている。制御装置100は、第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射しているときに、ホルダ移動装置30およびY軸方向移動装置60Yを制御して、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる第1移動制御部104Cを備えている。かかる構成によれば、エアが当たるワークホルダ20の位置を移動させることができるため、ワークホルダ20および被切削物1の広い範囲をクリーニングすることができる。
【0121】
本実施形態では、第1移動制御部104Cは、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の移動経路L1が走査線を描くように、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる。かかる構成によれば、エアが当たるワークホルダ20の位置を走査線状に移動させることができるため、エアが吹きつけられない領域がワークホルダ20および被切削物1に残らない。
【0122】
本実施形態に係る切削加工機10は、ワークホルダ20を回転させることによりワークホルダ20の姿勢を変更する回転装置40を備えている。被切削物1は、対向する2面1Aおよび1Bを有する平板状に構成されている。主軸ノズル56は所定の噴射方向(ここでは下方)に向かってエアを噴射するように構成されている。さらに、制御装置100の第1姿勢制御部104Bは、被切削物1の切削が終了した後であって第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射する前に、回転装置40を制御し、被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bが主軸ノズル56の噴射方向と所定の角度で交差するようにワークホルダ20の姿勢を制御する。かかる構成によれば、被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bに付着した切削粉等を除去しやすい角度で、被切削物1にエアを吹きつけることができる。上記所定の角度は、ここでは、90度である。被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bにエアを垂直に吹きつけることにより、エアの風速、風圧、または風量を最も無駄なく利用することができる。ただし、被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bと主軸ノズル56の噴射方向との間の角度は、90度には限定されない。
【0123】
本実施形態では、第1姿勢制御部104Bは、被切削物1の切削が終了した後であって第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射する前に、回転装置40を制御して、被切削物1の第1面1Aが主軸ノズル56の方を向くようにワークホルダ20の姿勢を制御する。反転制御部104Dは、第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射している途中で、回転装置40を制御して、被切削物1の第2面1Bが主軸ノズル56の方を向くようにワークホルダ20の姿勢を変更する。かかる構成によれば、被切削物1の第1面1Aと、第1面1Aの裏面である第2面1Bとをともにクリーニングすることができる。なお、「第1ブロー制御部104Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射している途中」とは、このときにエアの噴射が継続されている場合と、このときにエアの噴射が一時的に停止されている場合とを含んでいてもよい。
【0124】
本実施形態では、主軸エアブロー装置55の主軸ノズル56は、加工室120内にエアを噴射するようにも構成されている。制御装置100は、被切削物1の切削が終了した後に主軸エアブロー装置55を制御して加工室120内にエアを噴射する第2ブロー制御部105Aを備えている。かかる構成によれば、被切削物1の切削が終了した後に、加工室120に付着した切削粉を除去し、加工室120をクリーニングすることができる。本実施形態では、加工室クリーニングは、ワーククリーニングの後に行われる。ただし、加工室クリーニングおよびワーククリーニングは、いずれか一方だけが行われてもよい。加工室クリーニングおよびワーククリーニングがともに行われる場合でも、その順番は特に限定されない。
【0125】
本実施形態に係る制御装置100は、第2ブロー制御部105Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射しているときに、Y軸方向移動装置60Yを制御して、ワークホルダ20に対する主軸ノズル56の位置を移動させる第2移動制御部105Cを備えている。かかる構成によれば、エアが当たる加工室120の場所を移動させることができるため、加工室120の広い範囲をクリーニングすることができる。
【0126】
本実施形態に係る制御装置100は、被切削物1の切削が終了した後であって第2ブロー制御部105Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射する前に、回転装置40を制御し、ワークホルダ20の姿勢を予め定められた姿勢とする第2姿勢制御部105Bを備えている。主軸ノズル56は、ワークホルダ20に向かってエアを噴射するように構成されている。かかる構成によれば、加工室クリーニングの説明において前述したように、ワークホルダ20にエアを当てることによりエアの向きを変えることができる。そのため、加工室120の狙った場所にエアを吹きつけることができる。なお、本実施形態では、ワークホルダ20の姿勢は加工室クリーニングの間変更されないが、1回または複数回変更されてもよい。
【0127】
本実施形態では、主軸ノズル56は、ワークホルダ20よりも上方に設けられるとともに下方に向かってエアを噴射するように構成されている。また、ワークホルダ20の予め定められた姿勢は、ワークホルダ20に保持された被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bが加工室120の底壁120Dに対して傾斜するような姿勢である。これにより、ワークホルダ20に当てた後のエアの向きを、底壁120Dに斜交する向きとすることができる。これにより、底壁120D上の切削粉等を底壁120Dに沿って移動させることができる。
【0128】
本実施形態では、加工室120を区画する複数の壁部は、ワークホルダ20よりも前方に立設された前壁120F(加工室扉122を含んでいてもよい)を含んでおり、ワークホルダ20の予め定められた姿勢は、ワークホルダ20に保持された被切削物1の対向する2面1Aおよび1Bが前方に向かって下降傾斜するような姿勢である。かかる構成によれば、ワークホルダ20に当てた後のエアの向きは当初前方向きであるが、前壁120Fに当たることにより、後方向きに変わる。これにより、加工室120の最前方である前壁120Fまでエアが到達する。よって、加工室120の最前方までクリーニングを行うことができる。かつ、その後、切削粉等を後方に向けて送ることができる。
【0129】
本実施形態では、第2移動制御部105Cは、第2ブロー制御部105Aの制御によって主軸エアブロー装置55がエアを噴射しているときに、Y軸方向移動装置60Yを制御して主軸ノズル56を左方または右方に移動させる。これにより、上記した加工室120の最前方までのクリーニングを、左右方向の広範囲にわたって行うことができる。
【0130】
本実施形態では、第2ブロー制御部105Aは、主軸エアブロー装置55を制御して加工室120内にエアを噴射した後に、天面エアブロー装置93および底面エアブロー装置94を制御してそれぞれ天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからエアを噴射させる。かかる構成によれば、主軸エアブロー装置55からのエアの噴射により加工室120内に飛散したかも知れない切削粉等を、天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからのエアの噴射によって排気口128に運ぶことができる。これにより、加工室120内をさらに清浄にすることができる。
【0131】
本実施形態では、第2ブロー制御部105Aは、主軸エアブロー装置55を制御して加工室120内にエアを噴射する前にも、天面エアブロー装置93および底面エアブロー装置94を制御してエアを噴射させる。かかる構成によれば、天面ノズル93Nおよび底面ノズル94Nからのエアの噴射によって加工室120の天壁120U、後壁120Rr、および底壁120Dを概ね清浄にした後で、主軸ノズル56からのエアの噴射により加工室120をクリーニングする。このように段階を踏むことで、天壁120U、後壁120Rr、および底壁120Dに付着した切削粉が主軸ノズル56からのエアの噴射によって舞うことが抑制される。これにより、加工室120内をより清浄にすることができる。
【0132】
本実施形態に係る切削加工機10では、複数の切削ツール6を収納可能なツールストッカ80は、ワークホルダ20を収容する加工室120とは区画された駆動装置室130に収容されている。切削装置50は、ツールストッカ80に収納された各切削ツール6を把持可能に構成され、把持した切削ツール6によってワークホルダ20に保持された被切削物1を切削する。主軸移動装置60は、切削装置50を駆動装置室130と加工室120との間で移動させるように構成されている。かかる構成によれば、加工室120で生成された切削粉がツールストッカ80に収納された切削ツール6に付着することが抑制される。これにより、切削ツール6に付着した切削粉に起因する不具合、例えば加工不良を抑制することができる。なお、本実施形態では、ツールストッカ80は駆動装置室130に収容されているが、加工室120と区画された他の部屋に収容されていてもよい。
【0133】
本実施形態では、駆動装置室130と加工室120とは、Y軸方向に並んで配置されている。ホルダ移動装置30は、Y軸方向に延びワークホルダ20を支持する支持アーム31と、駆動装置室130に収容され支持アーム31が接続されるとともにY軸方向に交差するX軸方向に移動可能に構成されたX軸方向移動体32と、X軸方向移動体32をX軸方向に移動させることによって支持アーム31およびワークホルダ20をX軸方向に移動させるX軸方向駆動モータ34と、を備えている。ツールストッカ80は、X軸方向移動体32に支持されている。かかる構成によれば、支持アーム31はツールストッカ80を支持していない。そのため、支持アーム31が撓みにくい。これにより、切削加工の精度が向上する。また、被切削物1を介して支持アーム31に加わる切削加工の負荷を高くすることができるため、時間当たりの切削量を大きくすることができる。これにより、切削のスループットを高めることができる。
【0134】
本実施形態では、切削装置50は、ワークホルダ20およびツールストッカ80よりも上方に設けられている。主軸移動装置60は、切削装置50が駆動装置室130の上方と加工室120の上方との間を移動するように、切削装置50をY軸方向に移動させるY軸方向移動装置60Yを備えている。主軸移動装置60は、また、切削装置50をZ軸方向に移動させるZ軸方向移動装置60Zを備えている。ホルダ移動装置30は、Y軸方向移動装置60Yによる切削装置50の移動経路の下方に設定されたツール把持位置P1にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。かかる構成によれば、実施形態で説明したような手順により、ツールストッカ80に収納された切削ツール6を切削装置50に把持させること、および、切削ツール6をツールストッカ80に戻すことができる。
【0135】
本実施形態では、ホルダ移動装置30は、ツール把持位置P1よりも前方に設定されたツール交換位置P2にツールストッカ80を移動させることが可能に構成されている。本実施形態に係る切削加工機10は、ツール交換位置P2の上方に開口した開口部183を有するツール交換室180を備えている。ホルダ移動装置30を駆動してツールストッカ80をツール交換位置P2に移動させると、ユーザは、開口部183を通して、ツールストッカ80に切削ツール6を収納し、または、ツールストッカ80から切削ツール6を抜くことができる。かかる構成によれば、ツール交換室180が駆動装置室130と仕切られているため、ユーザが切削ツール6を交換するときに、ホルダ移動装置30に触れてしまうことを防止できる。また、切削ツール6の交換時などに駆動装置室130に外部の異物が侵入することが抑制されている。
【0136】
本実施形態では、ツールストッカ80は、それぞれ切削ツール6を収納可能な複数の収納孔81を備えており、複数の収納孔81は、千鳥状に配置されている。詳しくは、ツールストッカ80には、複数の収納孔81のうちの一部の複数の収納孔81が所定の並び方向(ここでは左右方向)に並んだ列が複数形成されており(ここでは、5つの列81A~81E)、複数の列81A~81Eのうちの隣り合った2つの列は、並び方向の位置がずれている。かかる構成によれば、スペースに対する切削ツール6の収納効率を向上させることができる。
【0137】
本実施形態に係る切削加工機10は、Z軸方向の下方に突き出すように切削ツール6を把持する把持部53と、主軸ノズル56を支持するノズル支持部材57と、主軸ノズル56を付勢する付勢部材58と、を備えている。ノズル支持部材57は、把持部53の側方に設定されたZ軸方向の下方側のエンド位置(下方側エンド位置)Pdと、下方側エンド位置PdよりもZ軸方向の上方にある他の位置との間を移動可能なように主軸ノズル56を支持している。付勢部材58は、ノズル支持部材57に支持された主軸ノズル56を付勢して、主軸ノズル56を下方側エンド位置Pdに保持している。かかる構成によれば、主軸ノズル56は、他の部材によって押されていないときには、付勢部材58の付勢により、切削ツール6の突き出し方向である下方側エンド位置Pdに位置している。そのため、このときには、主軸ノズル56と切削ツール6との間の距離が近い。よって、切削ツール6にエアを強く吹きつけることができる。かつ、主軸ノズル56は、他の部材と干渉して上方に押されると、付勢部材58の付勢力に抗して、下方側エンド位置Pdよりも上方、すなわち切削ツール6の突き出し方向の逆方向にある他の位置に移動する。よって、本実施形態に係る切削加工機10によれば、主軸ノズル56を切削ツール6により近接させることができるとともに、主軸ノズル56が邪魔となりにくい。
【0138】
本実施形態では、主軸ノズル56は、ツールストッカ80に収納された切削ツール6を把持部53に把持させ、または把持部53から解放する際には少なくとも、下方側エンド位置Pdから移動する。本実施形態では、Z軸方向移動装置60Zは、ツールストッカ80に収納された切削ツール6を把持または解放するように設定されたZ軸方向の所定位置(作業位置Po)に把持部53を移動させるように構成されている。主軸ノズル56は、把持部53が作業位置Poに位置した状態ではツールストッカ80に当接する。主軸ノズル56は、これにより、付勢部材58の付勢力に抗して下方側エンド位置PdよりもZ軸方向の上方に位置する。そのため、ツールストッカ80に収納された切削ツール6を把持部53に把持させ、または把持部53から解放する際に、主軸ノズル56が邪魔にならない。言い換えると、主軸ノズル56がツールストッカ80に当接するような位置に下方側エンド位置Pdを設定することができるため、主軸ノズル56を切削ツール6の下端により接近させることができる。
【0139】
本実施形態では、主軸ノズル56は、側壁に形成されZ軸方向に斜交するように延びるカット面56bを備えている。かかる構成によれば、物体が側方からカット面56bを押すと、その押圧力の一部はカット面56bによってZ軸方向の上方向きの力に変換される。これにより、主軸ノズル56が上方に移動する。かかる構成によれば、このように、物体が側方から主軸ノズル56を押す場合でも、主軸ノズル56を移動させることができる。
【0140】
[他の実施形態]
以上、一実施形態に係る切削加工機について説明した。しかし、ここに開示する技術は、他の態様により実施することもできる。例えば、上記した実施形態では、主軸ノズル56は、把持部53に把持されるときの切削ツール6と平行な方向に延びており、切削ツール6と平行な方向に移動した。しかし、主軸ノズルは、切削ツールと非平行な方向に延びていてもよく、切削ツールと非平行な方向に移動してもよい。主軸ノズルは、例えば、切削ツールの伸長方向に斜交する方向に移動することによって、エンド位置よりも切削ツールの伸長方向の上方の他の位置に移動してもよい。
【0141】
上記した実施形態では、ツールストッカ80は、加工室120と区画された室、具体的には駆動装置室130に設けられていたが、加工室120に設けられていてもよい。ツールストッカの構成は特に限定されない。例えば、ツールストッカの複数の収納孔は、千鳥配置ではなく、マトリクス状に配置されていてもよい。
【0142】
切削加工機の構成は特に限定されない。例えば、切削加工機は、ワークチェンジャを備えていなくてもよい。また、例えば、切削加工機の内部は、上記した実施形態のように区画されていなくてもよい。
【0143】
その他、特に言及されない限りにおいて、実施形態は本発明を限定しない。例えば、切削加工機は、歯科用成形品を作製するデンタル用の切削加工機でなくてもよい。被切削物は、アダプタを介して切削加工機に保持されなくてもよく、切削加工機によって直接保持されてもよい。
【符号の説明】
【0144】
6 切削ツール
10 切削加工機
50 切削装置
51 主軸
52 スピンドルユニット(スピンドル)
53 把持部
56 主軸ノズル(エアブローノズル)
56b カット面(傾斜面)
57 ノズル支持部材
58 付勢部材
60 主軸移動装置(移動装置)
80 ツールストッカ
Pd 下方側エンド位置(第1方向のエンド位置)
Po 作業位置(第1方向の所定位置)
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