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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125509
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】自動排水システム
(51)【国際特許分類】
   B65D 90/00 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
B65D90/00 H
B65D90/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029633
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】391057638
【氏名又は名称】株式会社チカタン
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】山本 隆一
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA01
3E170AB03
3E170AB06
3E170AB08
3E170AB09
3E170BA07
3E170CA03
3E170CB01
3E170CB10
3E170CC10
3E170GB03
3E170GB10
3E170RA02
3E170VA04
(57)【要約】
【課題】オイルタンクを囲っている防油堤内に溜まった雨水のみを自動的に排水することが可能な自動排水システムを提供する。
【解決手段】屋外に設けられているオイルタンクを囲っている防油堤2内に溜まった雨水を自動的に排水するための自動排水システムに、防油堤2内に溜まった雨水が第一水位W1を越えると、サイフォン現象が発生して防油堤2の底部から雨水を外部へ排水する排水装置10と、排水装置10により排水されて防油堤2内の雨水が第一水位W1と防油堤2の底部との間の第二水位W2まで低下すると、排水装置10内に空気を導入してサイフォン現象を消滅させることで排水を停止させる排水停止装置30としてのボールタップ32と、を具備させる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋外に設けられているオイルタンクを囲っている防油堤内に溜まった雨水を自動的に排水するための自動排水システムであって、
前記防油堤内に溜まった雨水が第一水位を越えると、サイフォン現象が発生して前記防油堤の底部から雨水を外部へ排水する排水装置と、
該排水装置により排水されて前記防油堤内の雨水が前記第一水位と前記防油堤の底部との間の第二水位まで低下すると、前記排水装置内に空気を導入してサイフォン現象を消滅させることで排水を停止させる排水停止装置と
を具備していることを特徴とする自動排水システム。
【請求項2】
前記排水停止装置は、
前記防油堤内の水位に応じて上下に移動する浮き球と、該浮き球が前記第二水位よりも下方へ移動すると開状態となって前記排水装置内に空気を導入する開閉弁と、を有するボールタップを備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の自動排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋外に設けられているオイルタンクを囲っている防油堤内に溜まった雨水を自動的に排水するための自動排水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋外に設置されている石油など油を貯蔵するオイルタンクの周囲には、オイルタンクから漏れた油が拡散しないように、オイルタンクを囲む防油堤が設けられている。この防油堤は屋外に設けられているため、雨が降ると防油堤内に入り込んで溜まることとなる。防油堤内に雨水が溜まると、その分だけ防油堤の容積が少なくなるため、雨水が多く溜まった状態でオイルタンクから油が漏れた場合、防油堤で受けきれずに溢れてしまう恐れがある。そのため、防油堤内にある程度の雨水が溜まると、手作業やポンプを使用して排水するようにしている。
【0003】
防油堤内の雨水を排水する際に、漏れた油などが浮いていると、そのままでは排水溝などに排水することができないため、油分離槽を設けて、油水を分離させた上で排水しており、排水のための設備が必要であると共に、手間がかかる問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明は、オイルタンクを囲っている防油堤内に溜まった雨水のみを自動的に排水することが可能な自動排水システムの提供を課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本発明に係る自動排水システムは、
「屋外に設けられているオイルタンクを囲っている防油堤内に溜まった雨水を自動的に排水するための自動排水システムであって、
前記防油堤内に溜まった雨水が第一水位を越えると、サイフォン現象が発生して前記防油堤の底部から雨水を外部へ排水する排水装置と、
該排水装置により排水されて前記防油堤内の雨水が前記第一水位と前記防油堤の底部との間の第二水位まで低下すると、前記排水装置内に空気を導入してサイフォン現象を消滅させることで排水を停止させる排水停止装置と
を具備している」ことを特徴とする。
【0006】
本構成では、オイルタンクおよび防油堤が、屋外に設けられていることから、降雨により防油堤内には雨水が溜まることとなる。また、防油堤内には、オイルタンクなどから漏れた油が入る。防油堤内に入った油は、雨水よりも比重が軽いため、防油堤内に溜まっている雨水の水面に浮いた状態となる。
【0007】
このような状態で、降雨により防油堤内に雨水が更に溜まって第一水位に達すると、排水装置においてサイフォン現象が発生して防油堤の底部から雨水が外部へ排水される。この際に、防油堤の底部から雨水を排水しているため、雨水の水面に浮いている油は排水されることはない。
【0008】
そして、排水により防油堤内の雨水が第一水位から第二水位まで低下すると、排水停止装置により排水装置内に空気が導入されてサイフォン現象が消滅し、防油堤内からの排水が停止する。この第二水位は、防油堤の底部よりも高い位置であるため、防油堤内に雨水を残した状態で排水が停止することとなり、雨水の水面に浮いている油が雨水と一緒に外部へ排水されることはない。
【0009】
従って、本構成の自動排水システムによれば、オイルタンクを囲っている防油堤内に溜まった雨水のみを自動的に排水することができる。また、上述したように、雨水のみを排水することができるため、防油堤とは別途に油分離槽を設ける必要はなく、オイルタンクなどの設備にかかるコストを低減させることができる。
【0010】
本発明に係る自動排水システムは、上記の構成に加えて、
「前記排水停止装置は、
前記防油堤内の水位に応じて上下に移動する浮き球と、該浮き球が前記第二水位よりも下方へ移動すると開状態となって前記排水装置内に空気を導入する開閉弁と、を有するボールタップを備えている」
ことを特徴としても良い。
【0011】
本構成によれば、排水停止装置をボールタップにより構成しているため、例えば、排水停止装置を水位センサと電磁弁とで構成した場合と比較して、電力を使用しなくても排水装置内へ空気を導入して排水の停止を自動で行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明の効果として、オイルタンクを囲っている防油堤内に溜まった雨水のみを自動的に排水することが可能な自動排水システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態である自動排水システムを使用した防油堤をオイルタンクと共に概略で示す斜視図である。
図2図1の自動排水システムと防油堤との関係を拡大して断面で示す説明図である。
図3図2の自動排水システムにおける排水装置を断面で示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態である自動排水システムについて、図1図3を参照して詳細に説明する。本実施形態の自動排水システムは、屋外に設けられているオイルタンク1を囲っている防油堤2内に溜まった雨水を自動的に排水するためのものである。自動排水システムは、防油堤2内の雨水を排水するための排水装置10と、排水装置10による排水を停止させるための排水停止装置30と、を備えている。なお、図1では、排水停止装置30の後述するボールタップ32を省略して示している。
【0015】
排水装置10は、防油堤2の外部に設けられている装置本体11と、装置本体11の下端と防油堤2内の底部とを接続している入口側排水管12と、装置本体11の下部に接続され図示しない排水溝などまで延出している出口側排水管13と、出口側排水管13の途中に設けられているバルブ14と、を備えている。このバルブ14により出口側排水管13を閉じることが可能である。
【0016】
装置本体11は、上下方向に延出している第一水路部15と、第一水路部15と平行に延出している第二水路部16と、第一水路部15の上端と第二水路部16の上端とを互いに連通させている上端水路部17と、を備えている。本実施形態では、第一水路部15と第二水路部16とは、断面形状が正方形の角パイプにより形成されており、上下方向の長さが同じである。
【0017】
第一水路部15の下端には、入口側排水管12における防油堤2側とは反対側の端部が接続されている。第一水路部15は、上端より低い位置に空気導入口15aが設けられている。この空気導入口15aには、後述する排水停止装置30の空気導入管31が接続されている。
【0018】
第二水路部16は、上端が第一水路部15の上端と同じ高さであり、下端の側壁に出口側排水管13が接続されている。
【0019】
上端水路部17は、第一水路部15と第二水路部16との互いに接近している端辺同士を繋いでいる下壁部18と、下壁部18から上方へ延出している導水板19と、導水板19を上方から覆うように第一水路部15と第二水路部16との互いに遠い端辺同士を繋いでいる上壁部20と、下壁部18、導水板19および上壁部20における第一水路部15と第二水路部16とが並んでいる方向と直交する方向の端辺同士を繋いでいる一対の側壁部21と、を有している。
【0020】
換言すると、上端水路部17は、下壁部18、導水板19、上壁部20、および一対の側壁部21により、水路を形成しており、当該水路は、上方へ向かうほど狭くなっていると共に、最も狭くなっている部位が第二水路部16側へ偏っている。
【0021】
上端水路部17の導水板19は、下壁部18における第一水路部15に近い端辺から第二水路部16の上方へ向かって斜めに延出している傾斜部19aと、傾斜部19aの先端から水平に延出している水平部19bと、から構成されている。
【0022】
上端水路部17の上壁部20は、第一水路部15の端辺から傾斜部19aの上端(第二水路部16)の上方へ向かって斜めに延出している第一傾斜部20aと、第一傾斜部20aの上端から第二水路部16の端辺側の方向へ延出していると共に水平部19bの上方において上方へ膨出するように湾曲している湾曲部20bと、湾曲部20bの先端から第二水路部16の端辺まで斜め下方へ延出している第二傾斜部20cと、から構成されている。この上壁部20の下面は、湾曲部20bにより第一傾斜部20aとの間や第二傾斜部20cとの間に折れ角のない滑らかな面となっている。
【0023】
この上端水路部17は、図3に示すように、第一水路部15および第二水路部16のそれぞれの幅をW、導水板19の水平部19bの高さにおいて、水平部19bと第一傾斜部20aとの間の距離をA、水平部19bと第二傾斜部20cとの間の距離をB、水平部19bと湾曲部20bの上端との間の距離をCとした時に、 W>A>B>C となるように構成されている。つまり、上端水路部17は、水平部19bの上方の部位が、最も狭くなるように構成されている。
【0024】
上述したようなことから、本実施形態の装置本体11において、第一水路部15、第二水路部16、および上端水路部17により形成されている排水(雨水)が流通するための空間は、排水の流通方向に対して直交する方向の断面形状(水路の断面形状)が四角形となっており、上端水路部17の導水板19における水平部19bよりも上側の部位が最も狭くなっている。
【0025】
排水停止装置30は、排水装置10内に空気を導入するための空気導入管31と、空気導入管31の一方の端部が接続されているボールタップ32と、を備えている。空気導入管31のボールタップ32とは反対側の端部は、装置本体11における第一水路部15の空気導入口15aに接続されている。
【0026】
ボールタップ32は、上下に移動可能な浮き球32aと、浮き球32aの上下の移動により開閉する開閉弁(図示は省略)と、開閉弁の開閉により空気導入管31と連通可能となる空気取入口(図示は省略)と、を備えている。ボールタップ32の開閉弁は、浮き球32aが所定の高さよりも上方に位置している時は閉状態となり、浮き球32aが所定の高さよりも下方に位置している時には開状態となる。ボールタップ32の空気取入口は、開閉弁が開状態となる水位の高さよりも上方に設けられている。
【0027】
オイルタンク1は、図1に示すように、防油堤2よりも高い位置に設けられている。このオイルタンク1は、一種類の油(オイル)が貯蔵されるものである。なお、貯蔵される油としては、例えば、軽油や灯油などを挙げることができる。
【0028】
防油堤2は、平面視において、オイルタンク1を囲むように設けられている。防油堤2は、外形が上方へ開放された箱状に形成されている。防油堤2は、主貯留槽2aと、主貯留槽2aの下側に設けられている副貯留槽2bと、から構成されている。主貯留槽2aは、オイルタンク1の容積よりも大きく形成されている。主貯留槽2aの底壁は、副貯留槽2bへ向かって低くなるように傾斜している。この防油堤2では、副貯留槽2bの開口面積が、主貯留槽2aの開口面積の1/3よりもやや小さく形成されている。
【0029】
本実施形態では、防油堤2における副貯留槽2bの部位の堤壁2cの外側に、排水装置10が設けられている。防油堤2の底部としての副貯留槽2bの底部に、入口側排水管12が接続されている。入口側排水管12は、副貯留槽2bの底部から防油堤2の外部へ延出した後に上方へ屈曲しており、その上端に装置本体11における第一水路部15の下端が接続されている。装置本体11は、上端が副貯留槽2bの上端よりも高い位置に設けられている。装置本体11における上端水路部17内の導水板19(水平部19b)の上端は、主貯留槽2aの中間の高さに位置しており、この高さが第一水位W1として設定されている。一方、第二水位W2は、副貯留槽2bの上端よりもやや低い位置に設定されている。そして、ボールタップ32の浮き球32aが第二水位W2の時に、図示しない開閉弁が開くと共に、図示しない空気取入口が第二水位W2よりも上方に位置するように、ボールタップ32が堤壁2cに取付けられている。
【0030】
続いて、自動排水システムを使用した防油堤2内に溜まった雨水の排水について、説明する。初めに、防油堤2内に溜まった雨水を自動的に排水させたい場合は、出口側排水管13に設けられているバルブ14を開いた状態にしておく。
【0031】
防油堤2内に雨水が溜まっていない状態で、降雨などにより防油堤2内に雨水が流入すると、その雨水は主貯留槽2aの底部から副貯留槽2bへ流入し、副貯留槽2bに溜まることとなる。副貯留槽2bの底部には、入口側排水管12が接続されているため、副貯留槽2b内の水位が上昇すると、入口側排水管12内の水位も同一の高さで一緒に上昇する。更に水位が上昇すると、入口側排水管12を通して雨水が装置本体11の第一水路部15に流入する。そして、副貯留槽2b内の水位が第二水位W2を越えると、ボールタップ32の浮き球32aが第二水位W2よりも上方へ移動するため、図示しない開閉弁が閉状態となり、空気導入管31を通して第一水路部15内への空気の導入が不能な状態となる。
【0032】
この状態から、更に雨水が溜まって防油堤2内の水位が第一水位W1に達すると、排水装置10においてサイフォン現象が発生して防油堤2の底部から雨水が外部へ排水される。詳述すると、防油堤2内の水位が第一水位W1を越えると、第一水路部15からの雨水により上端水路部17内の空気が第二水路部17へ押し出され、上端水路部17内が雨水で満たされることにより、サイフォン現象が発生する。
【0033】
本実施形態では、装置本体11の上端水路部17が、導水板19の傾斜部19aと上壁部20の第一傾斜部20aとにより、上方へ向かうに従って水路が狭くなっている。つまり、導水板19よりも上側の空間を狭くしている。そして、降雨により防油堤2内に溜まった雨水が第一水位W1まで上昇すると、その勢いにより導水板19よりも上方に溜まっている空気が第二水路部16へ押し出され、サイフォン現象が発生することとなる。この際に、上端水路部17における最も空間が狭くなっている部位の上壁部20が、湾曲部20bにより上方へ膨出するように湾曲していると共に第二傾斜部20cと滑らかに連続しているため、第一水路部15からの雨水の勢いによって、湾曲部20bに溜まっている空気を第二傾斜部20c側へ押し出し易くすることができ、サイフォン現象が発生し易くなっている。
【0034】
上記のようにサイフォン現象が発生することにより、防油堤2内に溜まった雨水が、その底部から入口側排水管12を通して吸い出され、装置本体11(第一水路部15、上端水路部17、第二水路部16)および出口側排水管13を通って外部(例えば、排水溝)へ排水されることとなる。
【0035】
ところで、オイルタンク1などから漏れた油が防油堤2内に入ると、油は雨水よりも比重が軽いため、防油堤2内に溜まっている雨水の水面に浮いた状態となる。そして、本実施形態では、防油堤2の底部から入口側排水管12を通して雨水を排水しているため、雨水の水面に浮いている油が雨水と一緒に外部へ排水されることはなく、雨水のみが排水される。
【0036】
上記のようなサイフォン現象により、防油堤2の雨水が排水されて、その水位が第二水位W2まで低下すると、水面に浮いている浮き球32aによりボールタップ32の開閉弁が開状態となり、空気取入口から取入れられた空気が空気導入管31を通って空気導入口15aから第一水路部15に導入される。そして、第一水路部15に導入された空気が上端水路部17に溜まることでサイフォン現象が消滅し、防油堤2内からの雨水の排水が停止する。
【0037】
この第二水位W2は、防油堤2(副貯留槽2b)の底部よりも高い位置であるため、防油堤2内に雨水が残された状態で排水が停止することとなり、雨水の水面に浮いている油が雨水と一緒に外部へ排水されることはない。
【0038】
なお、バルブ14を閉じた状態にすると、防油堤2内に溜まった雨水の水位が第一水位W1よりも上昇してもサイフォン現象が発生することはないため、防油堤2内には第一水位W1よりも高く雨水が溜まることとなる。この状態でバルブ14を開くと、第一水位W1よりも高く溜まった雨水の水圧によって、上端水路部17内の空気が押し出され、サイフォン現象が発生して、第二水位W2まで雨水を排水することができる。
【0039】
また、降雨量が少ないと排水装置10においてサイフォン現象が発生しない場合があるが、この場合でも、防油堤2に貯留されている雨水が第一水位W1を越えると、上端水路部17の導水板19を越えて第一水路部15から第二水路部16へ流れるため、防油堤2内に第一水位W1よりも高く雨水が溜まることはない。
【0040】
このように、本実施形態の自動排水システムによれば、オイルタンク1を囲っている防油堤2内に溜まった雨水のみを自動的に排水することができる。また、上述したように、雨水のみを排水することができるため、防油堤2とは別途に油分離槽を設ける必要はなく、オイルタンク1などの設備にかかるコストを低減させることができる。
【0041】
また、排水停止装置30をボールタップ32により構成しているため、例えば、排水停止装置を水位センサと電磁弁とで構成した場合と比較して、電力を使用しなくても排水装置10内へ空気を導入して排水の停止を自動で行うことができる。これにより、自動排水システムの導入にかかるコストを低減させたり、ランニングコストを低減させたりすることが可能となる。また、電力を使用しないため、漏電による火災が発生することはない。
【0042】
更に、装置本体11の上端水路部17において、導水板19の水平部19bよりも第一水路部15側では、導水板19の傾斜部と上壁部20の第一傾斜部20aとにより、水路の幅が徐々に狭くなるようにしている。また、導水板19の水平部19bから第二水路部16側では、上壁部20の湾曲部20bと第二傾斜部20cとにより、水平部19bよりも上方に溜まっている空気を第一水路部15側からの水流により第二水路部16側へ押し出され易いようにしている。これらのことから、降雨量が少ないことで、第一水路部15側からの水流が弱くてもサイフォン現象を発生させ易くすることができる。
【0043】
また、本実施形態の装置本体11では、水路の断面形状を四角形としているため、断面形状を円形とする場合と比較して、上端水路部17において導水板19を備え易くすることができ、装置本体11を製造し易いものとしている。
【0044】
また、防油堤2において、第二水位W2を副貯留槽2bの上端付近の高さとしていることから、副貯留槽2bにはある程度の水深の雨水が溜められているため、オイルタンク1などから漏れた油が流入しても、副貯留槽2bの底部まで油が流れ込むことはない。また、上述したように、第二水位W2により副貯留槽2bにある程度の水深の雨水が溜められていると共に、オイルタンク1には一種類の油のみを貯蔵するようにしているため、オイルタンク1などから漏れた油が流入しても、当該水深により油が雨水から分離するための時間を稼ぐことが可能となり、雨水から油を分離させることができる。
【0045】
また、防油堤2において、第二水位W2まで雨水を残すようにしているため、オイルタンク1などから漏れた油が防油堤2の底部に付着して固まってしまうことはなく、防油堤2のメンテナンス(例えば、清掃)が容易になる。
【0046】
なお、空気導入管31に開閉バルブを設けるようにしても良い。防油堤2をメンテナンスする際に、空気導入管31に設けた開閉バルブを閉じた状態にして、防油堤2内の水位を第一水位W1まで上昇させて、装置本体11においてサイフォン現象を発生させることで、防油堤2内の水位が第二水位W2よりも低下しても、排水装置10の第一水路部15へ空気が導入されることはなく、サイフォン現象が継続して防油堤2の底部まで雨水を抜くことができ、メンテナンス作業が容易なものとなる。
【0047】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0048】
例えば、上記の実施形態では、排水本体11の上端水路部17において、上方へ向かうほど水路が狭くなるものを示したが、これに限定するものではなく、第一水路部15や第二水路部16と同じ広さの水路としても良く、サイフォン現象が発生するものであれば良い。
【0049】
また、上記の実施形態では、装置本体11として、角パイプなどで形成したものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、断面形状が丸いパイプ(円管)で形成しても良い。具体的には、例えば、円管を逆U字状に曲げたような装置本体であっても良い。この場合、上端の曲がっている部位において、円管の太さを変化させることで上方へ向かうほど狭くなるようにしても良いし、内部に導水板を設けることで上方へ向むかうほど狭くなるようにしても良い。また、この場合、曲げられて折り返している部位の最も高い部分を、第一水路部15と第二水路部16との間の中央よりも第二水路部16側へ偏らせるようにしても良い。
【0050】
更に、上記の実施形態では、上端水路部17に導水板19を備えたものを示したが、これに限定するものではなく、導水板19を備えていないものであっても良い。なお、この場合は、水路が折り返されている部位における最も高い部分が、第一水位W1となる。
【0051】
また、上記の実施形態では、排水停止装置30としてボールタップ32を備えたものを示したが、これに限定するものではなく、例えば、防油堤2内の雨水の水位が第二水位W2よりも高い時には水圧によって閉じた状態となり、第二水位W2よりも低い時には開いた状態となるリード弁を備えたものとしても良い。或いは、第二水位W2を検知する水位センサと、水位センサによる第二水位W2の検知により開状態となる電磁弁と、を備えたものとしても良い。なお、水位センサや電磁弁を使用する場合は、防爆タイプのものを使用することで、漏電による火災の発生を回避させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 オイルタンク
2 防油堤
10 排水装置
11 装置本体
15 第一水路部
15a 空気導入口
16 第二水路部
17 上端水路部
30 排水停止装置
31 空気導入管
32 ボールタップ
32a 浮き球
図1
図2
図3