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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125514
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20230831BHJP
   H02K 3/50 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H02K11/33
H02K3/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029641
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000228730
【氏名又は名称】ニデックアドバンスドモータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100188673
【弁理士】
【氏名又は名称】成田 友紀
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】二宮 祐太
【テーマコード(参考)】
5H604
5H611
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604PB03
5H604QB04
5H611AA00
5H611BB01
5H611BB07
5H611TT01
5H611UA04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】製造工数の抑制と、径方向の大型化を抑制する。
【解決手段】ロータ20と、ロータの径方向外側に配置されるステータ30と、ステータの軸方向一方側に位置する制御装置70と、各部品を収容するハウジング11と、を備える。ステータは、ステータコア31と、ステータコアの一部を囲むインシュレータ本体部33、および制御装置が固定される複数の柱状部34、を有するインシュレータと、インシュレータ本体部に巻回されるコイル本体部39a、およびコイル本体部から軸方向一方側に引き出され、制御装置と接続されるコイル引出線39b、を有するコイル39と、を有する。複数の柱状部は、インシュレータ本体部の外縁部から軸方向一方側に延びる柱状で、径方向内側に突出する突起部35bを有する第1柱状部を含む。突起部は、軸方向で、コイル本体部と制御装置との間に位置する。コイル引出線39bは、突起部において制御装置に向けて屈曲する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心軸を中心として回転可能なロータと、
前記ロータの径方向外側に配置され、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、
前記ステータの軸方向一方側に位置する制御装置と、
前記ロータ、前記ステータ、および前記制御装置を収容するハウジングと、
を備え、
前記ステータは、
前記ハウジングに固定されるステータコアと、
前記ステータコアの少なくとも一部を囲むインシュレータ本体部、および前記制御装置が固定される複数の柱状部、を有するインシュレータと、
前記インシュレータ本体部に巻回されるコイル本体部、および前記コイル本体部から軸方向一方側に引き出され、前記制御装置と接続されるコイル引出線、を有するコイルと、
を有し、
複数の前記柱状部のそれぞれは、前記インシュレータ本体部の外縁部から軸方向一方側に延び、周方向に沿って間隔をあけて配置される柱状であり、
複数の前記柱状部は、径方向内側に突出する突起部を有する第1柱状部を含み、
前記突起部は、軸方向において、前記コイル本体部と前記制御装置との間に位置し、
前記コイル引出線は、前記突起部において前記制御装置に向けて屈曲する回転電機。
【請求項2】
径方向に見て、前記コイル引出線は、前記第1柱状部と重なり、
前記コイル引出線は、前記第1柱状部よりも径方向内側に位置する、請求項1に記載の回転電機。
【請求項3】
前記ステータコアは
軸方向に延びる円環状のコアバック部と、
前記コアバック部から径方向内側に突出し、周方向に沿って間隔をあけて配置される複数のティース部と、
を有し、
前記インシュレータ本体部は、それぞれの前記ティース部の少なくとも一部を囲む複数の収容部を有し、
前記突起部は、周方向において互いに隣り合う前記収容部同士の間の軸方向一方側に設けられる、請求項1または2に記載の回転電機。
【請求項4】
前記制御装置は、前記中心軸と直交する平面に沿って配置され、前記コイル引出線と接続される第1回路基板を有し、
前記第1回路基板は、前記第1回路基板を軸方向に貫通し、前記第1回路基板の外縁から径方向内側に延び、前記コイル引出線と接続される第1切込孔を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項5】
前記第1切込孔は、前記第1回路基板の外縁から一様な幅で延びる第1ガイド孔部と、前記第1ガイド孔部と繋がり、前記コイル引出線が接続される第1接続孔部と、を有し、
前記第1ガイド孔部は、前記第1回路基板の外縁から前記第1接続孔部に向かうにしたがって、周方向一方側に向かって傾斜して延びる、請求項4に記載の回転電機。
【請求項6】
前記制御装置は、前記中心軸と直交する平面に沿って配置され、前記第1回路基板の軸方向他方側に位置する第2回路基板を有する、請求項4または5に記載の回転電機。
【請求項7】
前記第2回路基板は、前記第2回路基板を軸方向に貫通し、前記第2回路基板の外縁から内側に延び、前記コイル引出線が通される第2切込孔を有する、請求項6に記載の回転電機。
【請求項8】
複数の前記柱状部は、第2柱状部と、第3柱状部と、を含み、
前記第2柱状部は、軸方向一方側を向く第2基板支持面を有し、前記第2基板支持面は、前記第2回路基板の軸方向他方側を向く面と接触し、
前記第3柱状部は、径方向内側に突出する爪部を有し、
前記爪部は、軸方向他方側を向く第3基板支持面を有し、前記第3基板支持面は、前記第2回路基板の軸方向一方側を向く面と接触する、請求項6または7に記載の回転電機。
【請求項9】
前記突起部の径方向内側の端部は、前記爪部の径方向内側の端部よりも、径方向外側に位置する請求項8に記載の回転電機。
【請求項10】
前記第1柱状部は、軸方向一方側を向く第1基板支持面を有し、前記第1基板支持面は、前記第1回路基板の軸方向他方側を向く面と接触する、請求項4から9のいずれか一項に記載の回転電機。
【請求項11】
軸方向に見て、前記第1基板支持面の一部は、前記第1切込孔と重なる、請求項10に記載の回転電機。
【請求項12】
軸方向において、前記突起部は、前記制御装置よりも軸方向他方側に位置する、請求項1から11のいずれか一項に記載の回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
モータのステータに巻回されるコイルに供給する電流を制御する制御装置を、ロータの回転軸方向に配置する構成の回転電機が知られている。また、コイルと制御装置とが接続する回転電機が知られている。例えば、特許文献1には、回路基板の外周辺部から径方向外側に突出する突起接続部と巻線端とが接続される電動機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6106841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような電動機においては、巻線端と接続される突起接続部が回路基板の外周辺部から径方向外側に突出して設けられるため、径方向において、回路基板が大型化してしまう。そのため、径方向において、電動機が大型化してしまう問題がある。また、巻線端を回路基板に取り付ける際に、比較的柔軟な巻線の位置は安定しづらいため、巻線端を突起接続部に接続する作業が煩雑になり、電動機の製造工数が増大する虞がある。本発明の一つの態様は、コイル引出線と制御装置とを接続する作業の簡素化を図ることで、製造工数が増大することを抑制するとともに、径方向において大型化することを抑制できる回転電機を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の回転電機の一つの態様は、中心軸を中心として回転可能なロータと、前記ロータの径方向外側に配置され、前記ロータと径方向に隙間を介して対向するステータと、前記ステータの軸方向一方側に位置する制御装置と、前記ロータ、前記ステータ、および前記制御装置を収容するハウジングと、を備える。前記ステータは、前記ハウジングに固定されるステータコアと、前記ステータコアの少なくとも一部を囲むインシュレータ本体部、および前記制御装置が固定される複数の柱状部、を有するインシュレータと、前記インシュレータ本体部に巻回されるコイル本体部、および前記コイル本体部から軸方向一方側に引き出され、前記制御装置と接続されるコイル引出線、を有するコイルと、を有する。複数の前記柱状部のそれぞれは、前記インシュレータ本体部の外縁部から軸方向一方側に延び、周方向に沿って間隔をあけて配置される柱状である。複数の前記柱状部は、径方向内側に突出する突起部を有する第1柱状部を含む。前記突起部は、軸方向において、前記コイル本体部と前記制御装置との間に位置する。前記コイル引出線は、前記突起部において前記制御装置に向けて屈曲する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一つの態様によれば、回転電機において、コイル引出線と制御装置とを接続する作業の簡素化を図ることで、製造工数が増大することを抑制するとともに、径方向に大型化することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、一実施形態の回転電機を示す模式図である。
図2図2は、一実施形態の回転電機の一部分を示す斜視図である。
図3図3は、一実施形態の回転電機の他の部分を示す斜視図である。
図4図4は、一実施形態の回転電機の一部分を示す断面図である。
図5図5は、一実施形態のステータコアを示す斜視図である。
図6図6は、一実施形態のインシュレータを示す斜視図である。
図7図7は、一実施形態のステータを示す上面図である。
図8図8は、一実施形態の取り付け工程を示すフローチャートである。
図9図9は、一実施形態の回転電位の組立手順を示す第1の断面図である。
図10図10は、一実施形態の回転電位の組立手順を示す第2の断面図である。
図11図11は、一実施形態の回転電位の組立手順を示す第3の断面図である。
図12図12は、一実施形態の回転電位の組立手順を示す第4の断面図である。
図13図13は、一実施形態の回転電位の組立手順を示す第5の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係る回転電機について説明する。なお、本発明の範囲は、以下の実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。また、以下の図面においては、各構成をわかりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺や数等を異ならせる場合がある。
【0009】
以下の説明において図には、適宜、Z軸を示す。Z軸は、以下に説明する実施形態の回転電機1の中心軸Jが延びる方向を示している。各図に示す中心軸Jは、仮想軸線である。以下の説明においては、中心軸Jが延びる方向、つまりZ軸と平行な方向を「軸方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼ぶ。中心軸Jを中心とする周方向を単に「周方向」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側(+Z側)を「軸方向一方側」または「上側」と呼ぶ。軸方向のうちZ軸の矢印が向く側と逆側(-Z側)を「軸方向他方側」または「下側」と呼ぶ。なお、上側および下側は、単に各部の相対位置関係を説明するための名称であり、実際の配置関係等は、これらの名称で示される配置関係等以外の配置関係等であってもよい。
【0010】
周方向は、各図において矢印θで示されている。周方向のうち矢印θが向く側(+θ側)を「周方向一方側」と呼ぶ。周方向のうち矢印θが向く側と逆側(-θ側)を「周方向他方側」と呼ぶ。周方向一方側は、上側から見て中心軸J回りに反時計回りに進む側である。周方向他方側は、上側から見て中心軸J回りに時計回りに進む側である。
【0011】
図1に示す本実施形態の回転電機1は、車両に搭載される機器等に取り付けられるモータである。回転電機1が取り付けられる機器は、自動変速機であってもよいし、車両の車軸を駆動する駆動装置であってもよい。本実施形態の回転電機1は、インナーロータ型の三相ブラシレスDCモータである。回転電機1は、ハウジング11と、ロータ20と、ステータ30と、制御装置70と、を備える。
【0012】
ハウジング11は、ロータ20、ステータ30、および制御装置70を内部に収容する。本実施形態において、ハウジング11は、金属製である。ハウジング11は、導電性を有する。ハウジング11は、ハウジング部材12と、蓋部材13と、を有する。
【0013】
ハウジング部材12は、ロータ20、ステータ30、および制御装置70を内部に収容する。ハウジング部材12は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。ハウジング部材12の上側の端部には、上側に開口する開口部12dが設けられている。ハウジング部材12は、周壁部12aと、底壁部12b、および第2ベアリング保持部12cを有している。
【0014】
周壁部12aは、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。周壁部12aは、ロータ20、ステータ30、および制御装置70を径方向外側から囲む。周壁部12aの上側の端部は、ハウジング部材12の上側の端部である。周壁部12aの内周面には、ステータ30が固定されている。周壁部12aの上側の端部には、開口部12dが設けられている。周壁部12aの内周面には、上側を向く段差面12fが設けられている。
【0015】
底壁部12bは、中心軸Jを中心とする円環板状である。底壁部12bの板面は、軸方向を向いている。底壁部12bの径方向外側の端部は、周壁部12aの下側の端部と繋がっている。底壁部12bには、軸方向に貫通する孔部12eが設けられている。孔部12eは、中心軸Jを中心とする円形状の孔である。第2ベアリング保持部12cは、底壁部12bから上側に突出し、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0016】
蓋部材13は、ハウジング部材12の上側の端部に固定されている。蓋部材13は、開口部12dを上側から塞いでいる。蓋部材13は、蓋本体部13aと、第1ベアリング保持部13bと、を有する。
【0017】
蓋本体部13aは、中心軸Jを中心とする円板状である。蓋本体部13aの板面は、軸方向を向いている。蓋本体部13aの外縁部は、ハウジング部材12の上側の端部と固定されている。これにより、蓋部材13は、ハウジング部材12に固定される。第1ベアリング保持部13bは、蓋本体部13aから下側に突出し、中心軸Jを中心とする円環状である。
【0018】
ロータ20は、中心軸Jを中心として回転可能である。ロータ20は、ロータコア21と、シャフト22と、図示しない複数の磁石と、第1ベアリング91と、第2ベアリング92と、を有する。
【0019】
ロータコア21は、中心軸Jを中心として、軸方向に延びる円筒状である。ロータコア21の内部には、シャフト22が軸方向に通されている。ロータコア21の内周面は、シャフト22の外周面と固定されている。つまり、ロータコア21とシャフト22は、互いに固定されている。図示しない複数の磁石は、ロータコア21に固定されている。本実施形態において、複数の磁石は、それぞれ、永久磁石である。複数の磁石は、それぞれ、周方向に沿って間隔をあけて配置されている。
【0020】
シャフト22は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円柱状である。シャフト22の上側の部分は、ロータコア21よりも上側に延び、第1ベアリング91に支持されている。シャフト22の下側の部分は、ロータコア21よりも下側に延び、孔部12eを介して、ハウジング11の外部に突出している。シャフト22の下側の部分は、第2ベアリング92に支持されている。
【0021】
図1に示すように、第1ベアリング91は、シャフト22のうちロータコア21よりも上側の部分を回転可能に支持している。第1ベアリング91は、第1ベアリング保持部13bに保持されている。第2ベアリング92は、シャフト22のうちロータコア21よりも下側の部分を回転可能に支持している。第2ベアリング92は、第2ベアリング保持部12cに保持されている。これらにより、ロータ20は中心軸Jを中心として回転可能である。本実施形態において、第1ベアリング91および第2ベアリング92は、ボールベアリングである。第1ベアリング91および第2ベアリング92は、すべり軸受であってもよい。
【0022】
図1に示すように、ステータ30は、ロータ20の径方向外側に配置されている。ステータ30は、ロータ20と径方向に隙間を介して対向している。ステータ30は、ステータコア31と、インシュレータ32と、3個のコイル39と、を有する。ステータ30は、3個のコイル39それぞれに電流が流れることで磁場を発生させる。ステータ30に発生する磁場の磁極と、図示しないロータ20が有する複数の磁石との磁気力によって、ロータ20に回転トルクが発生する。
【0023】
図1に示すように、ステータコア31は、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。ステータコア31は、ロータコア21を径方向外側から囲む。ステータコア31の外周面は、周壁部12aの内周面に固定されている。つまり、ステータコア31は、ハウジング11に固定されている。ステータコア31の下側を向く面のうち径方向外側の部分は、ハウジング部材12の段差面12fと軸方向に接触している。これにより、軸方向において、ハウジング11に対するステータ30の位置が決まる。図5に示すように、ステータコア31は、コアバック部31aと、ティース部31bと、を有する。
【0024】
コアバック部31aは、中心軸Jを中心として軸方向に延びる円筒状である。図1に示すように、コアバック部31aの外周面は、周壁部12aの内周面に固定されている。図5に示すように、コアバック部31aは、第1内側面31cを有している。第1内側面31cはコアバック部31aの径方向内側を向く面である。軸方向に見て、第1内側面31cは、円弧状の面である。複数の第1内側面31cは、周方向に沿って等間隔をあけて配置されている。本実施形態において、第1内側面31cは、12個設けられている。
【0025】
ティース部31bは、コアバック部31aから径方向内側に突出している。図1に示すように、ティース部31bの径方向内側を向く面は、ロータコア21の外周面と径方向に間隔をあけて対向している。図5に示すように、ティース部31bは、周方向に沿って等間隔をあけて複数配置されている。本実施形態において、ティース部31bは、12個設けられている。
【0026】
インシュレータ32は、ステータコア31の少なくとも一部を囲み、ステータコア31とコイル39とを絶縁する。また、図1に示すように、インシュレータ32は、径方向において、コイル39とハウジング11との間に配置され、コイル39とハウジング11とを絶縁する。本実施形態において、インシュレータ32は、樹脂製である。インシュレータ32は、絶縁性を有する。本実施形態において、インシュレータ32は射出成形によって成形される。インシュレータ32は、インシュレータ本体部33と、複数の柱状部34と、を有する。
【0027】
インシュレータ本体部33は、ステータコア31の少なくとも一部を囲む。図6に示すように、インシュレータ本体部33は、インシュレータ32の下側の部分である。インシュレータ本体部33は、円環部33aと、内側壁部33bと、収容部33cと、を有する。円環部33aは、中心軸Jを中心とする円環状である。図1に示すように、円環部33aは、ステータコア31のコアバック部31aの上側に位置している。円環部33aの径方向外側の端部は、インシュレータ本体部33の径方向外側の端部である。すなわち、円環部33aは、インシュレータ本体部33の外縁部である。
【0028】
図6に示すように、内側壁部33bは、円環部33aから下側に延びる板状である。内側壁部33bの板面は、径方向を向いている。軸方向に見て、内側壁部33bは、円弧状である。内側壁部33bの径方向内側を向く面と、円環部33aの内周面とは、軸方向に繋がっている。内側壁部33bは、周方向に沿って等間隔をあけて複数配置されている。本実施形態において、内側壁部33bは、12個設けられている。各内側壁部33bは、それぞれ、図5に示すステータコア31の第1内側面31cの径方向内側に配置されている。これにより、コイル39とコアバック部31aとが絶縁される。
【0029】
図6に示すように、収容部33cは、内側壁部33bから、径方向内側に突出する中空の略直方体状である。図7に示すように、軸方向に見て、収容部33cは略長方形状である。収容部33cは、周方向に沿って等間隔をあけて複数配置されている。本実施形態において、収容部33cは、12個設けられている。周方向において、各収容部33cは、それぞれ、互いに隣り合う内側壁部33b同士の間に配置されている。各収容部33cの径方向外側の端部は、それぞれ、内側壁部33bと繋がっている。図4に示すように、各収容部33cは、それぞれ、ティース部31bの少なくとも一部を囲んでいる。これにより、コイル39とティース部31bとが絶縁される。また、上述のように、第1内側面31cによって、コイル39とコアバック部31aとが絶縁される。よって、インシュレータ本体部33によって、コイル39とステータコア31とが絶縁される。
【0030】
図1に示すように、複数の柱状部34は、制御装置70を保持する。図6に示すように、複数の柱状部34のそれぞれは、円環部33aから上側、すなわち軸方向一方側に延びる柱状である。つまり、複数の柱状部34のそれぞれは、インシュレータ本体部33の外縁部から上側に延びている。図7に示すように、複数の柱状部34のそれぞれは、周方向に沿って等間隔をあけて配置される。本実施形態において、柱状部34は12個設けられている。図6に示すように、各柱状部34の径方向内側を向く面は、それぞれ、内側壁部33bの径方向内側を向く面と軸方向に繋がっている。また、図7に示すように、周方向において、各柱状部34は、それぞれ、互いに隣り合う収容部33c同士の間(すなわち、スロット)に配置されている。複数の柱状部34は、第1柱状部35と、第2柱状部36と、第3柱状部37と、を含む。
【0031】
図6に示すように、第1柱状部35は、円環部33aから上側に延びる板状である。本実施形態において、第1柱状部35は、3個設けられている。図3および図4に示すように、各第1柱状部35は、後述するコイル引出線39bが引き出されるコイル本体部39aが巻回される収容部33cの周方向一方側に互いに隣り合う位置に配置されている。
【0032】
図6に示すように、各第1柱状部35は、それぞれ、第1基板支持面35aと、突起部35bと、を有している。第1基板支持面35aは、第1柱状部35の外側面のうち、上側、すなわち軸方向一方側を向く面である。
【0033】
突起部35bは、径方向内側に突出する直方体状である。図1に示すように、突起部35bは、軸方向において、後述するコイル本体部39aと制御装置70との間に位置している。軸方向において、突起部35bは、制御装置70よりも下側、すなわち軸方向他方側に位置している。図6および図7に示すように、突起部35bは、周方向において互いに隣り合う収容部33c同士の間(すなわち、スロット)の上側に設けられている。
【0034】
図7に示すように、突起部35bの径方向内側の端部は、後述する爪部37aの径方向内側の端部よりも、径方向外側に位置している。そのため、本実施形態によれば、インシュレータ32の収容部33cにコイル39を巻回する際に、図示しないコイル巻線機および巻線ノズルと、突起部35bとが干渉することを好適に抑制できる。よって、ステータ30の組立性を高めることができるため、ステータ30の製造工数が増大することを抑制できる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することを抑制できる。また、本実施形態によれば、突起部35bが第1柱状部35から径方向内側に突出するため、ステータ30が径方向に大型化することを抑制できる。したがって、回転電機1が径方向に大型化することを抑制できる。
【0035】
図6に示すように、第2柱状部36は、円環部33aから上側に延びる板状である。図1に示すように、軸方向において、第2柱状部36の上側の端部は、第1柱状部35の上側の端部よりも、下側に位置している。図7に示すように、第2柱状部36は、周方向に沿って間隔をあけて複数設けられている。本実施形態において、第2柱状部36は、5個設けられている。図6に示すように、各第2柱状部36は、それぞれ、第2基板支持面36aを有している。第2基板支持面36aは、第2柱状部36の外側面のうち、上側を向く面である。
【0036】
第3柱状部37は、円環部33aから上側に延びる板状である。図1に示すように、軸方向において、第3柱状部37の上側の端部は、第1柱状部35の上側の端部よりも下側に位置し、第2柱状部36の上側の端部よりも上側に位置している。図7に示すように、第3柱状部37は、周方向に沿って等間隔をあけて複数設けられている。本実施形態において、第3柱状部37は、4個設けられている。図6に示すように、各第3柱状部37は、爪部37aを有している。
【0037】
爪部37aは、第3柱状部37の上側の端部に位置し、径方向内側に突出している。爪部37aは、第3基板支持面37bと、第1傾斜面37cと、を有している。第3基板支持面37bは、爪部37aの外側面のうち、下側、すなわち軸方向他方側を向く面である。図4に示すように、第3基板支持面37bは、第2基板支持面36aよりも上側に位置している。図6に示すように、第1傾斜面37cは、爪部37aの外側面のうち、爪部37aの上側に設けられる面である。第1傾斜面37cは、径方向内側に向かうにしたがって下側に位置する傾斜面である。
【0038】
図6および図7に示すように、爪部37aは、周方向において互いに隣り合う収容部33c同士の間(すなわち、スロット)の上側に設けられる。また、上述のように、突起部35bは、周方向において互いに隣り合う収容部33c同士の間(すなわち、スロット)の上側に設けられる。つまり、軸方向に見て、突起部35bおよび爪部37aは、収容部33cと重ならない位置に配置されている。このため、インシュレータ32の金型として、突起部35bおよび爪部37aにパーティングラインを配置し軸方向に2分割される金型構造を採用できる。本実施形態によれば、インシュレータ32を射出成形する際に用いる金型の構造が複雑になることを抑制できる。また、金型の形状の簡素化を図ることができる。そのため、インシュレータ32の製造工数および製造コストが増大することを抑制できる。したがって、回転電機1の製造工数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0039】
図1に示すように、3つのコイル39は、それぞれ、インシュレータ32の収容部33cに巻回される。各コイル39は、それぞれ、制御装置70と電気的に接続される。上述のように、3つのコイル39には、それぞれ、制御装置70から電流が供給される。各コイル39は、コイル本体部39aと、コイル引出線39bと、を有している。
【0040】
コイル本体部39aは、コイル39のうち、インシュレータ32の収容部33cに巻回される部分である。つまり、コイル本体部39aは、インシュレータ本体部33に巻回される。コイル引出線39bは、コイル39のうち、コイル本体部39aから上側、すなわち軸方向一方側に引き出される部分である。本実施形態において、3つのコイル39は、それぞれ、1個のコイル引出線39bを有している。よって、図2に示すように、本実施形態において、コイル引出線39bは、3個設けられる。図1に示すように、各コイル引出線39bの一端は、それぞれ、コイル本体部39aと繋がっている。各コイル引出線39bの他端は、それぞれ、制御装置70と接続されている。これにより、制御装置70とコイル39とが電気的に接続される。コイル本体部39aと制御装置70との間における、コイル引出線39bの経路については、後段で説明する。
【0041】
制御装置70は、図示しない外部電源と電気的に接続され、3つのコイル39それぞれに供給する電流を制御する。また、制御装置70は、図示しない外部機器と電気的に接続され、ロータ20の回転方向および回転速度等の回転電機1の動作情報を外部機器に出力する。図1に示すように、制御装置70は、ハウジング11の内部に収容されている。制御装置70は、ステータ30の上側、すなわち軸方向一方側に位置している。制御装置70は、第1回路基板71と、第2回路基板72と、複数の電子部品75とを有している。
【0042】
図1に示すように、第1回路基板71は、中心軸Jを中心とする円環板状である。第1回路基板71は、中心軸Jと直交する平面に沿って配置されている。第1回路基板71の板面は、軸方向を向いている。第1回路基板71の径方向外側の端部は、柱状部34よりも径方向外側に位置している。第1回路基板71の内部には、シャフト22が軸方向に通されている。図4に示すように、第1回路基板71の下側、すなわち軸方向他方側を向く面は、第1柱状部35の第1基板支持面35aと接触している。これにより、第1回路基板71の軸方向における位置が決まる。
【0043】
よって、本実施形態によれば、第1回路基板71の軸方向の位置を決めるためだけに用いられる、別途の部材を用いる必要が無い。そのため、回転電機1の部品点数および製造工数が増大することを抑制できる。したがって、回転電機1の製造コストが増大することを抑制できる。第1回路基板71には、複数の電子部品75が取り付けられている。図2に示すように、第1回路基板71は、第1切込孔71bを有している。
【0044】
第1切込孔71bは、第1回路基板71を軸方向に貫通し、第1回路基板71の外縁から径方向内側に延びる孔である。本実施形態において、第1切込孔71bは、3個設けられている。各第1切込孔71bは、第1接続孔部71cと、第1ガイド孔部71dと、を有している。
【0045】
軸方向に見て、第1接続孔部71cは、円形状である。第1接続孔部71cには、コイル引出線39bの他端が軸方向に通されている。第1接続孔部71cとコイル引出線39bとは、はんだによって固定されている。つまり、第1切込孔71bは、コイル引出線39bと接続される。これにより、制御装置70は、コイル引出線39bと接続される。本実施形態によれば、制御装置70とコイル引出線39bとが、例えば、バスバーなどの中間部材を用いることなく、直接接続されている。そのため、回転電機1の部品点数および製造工数が増大することを抑制できる。したがって、回転電機1の製造コストが増大することを抑制できる。
【0046】
第1ガイド孔部71dは、第1回路基板71の外縁と第1接続孔部71cとを繋ぐ孔である。第1ガイド孔部71dは、第1回路基板71の外縁から第1接続孔部71cに向かうにしたがって、周方向一方側に向かって傾斜して延びている。本実施形態において、第1ガイド孔部71dは、第1回路基板71の外縁から一様な幅で、第1接続孔部71cに向けて延びている。第1接続孔部71cの下側の端部は第1柱状部35の第1基板支持面35aと接触している。すなわち、軸方向に見て、第1基板支持面35aの一部は、第1切込孔71bと重なる。
【0047】
図1に示すように、第2回路基板72は、中心軸Jを中心とする略円環板状である。第2回路基板72は、中心軸Jと直交する平面に沿って配置されている。第2回路基板72の板面は、軸方向を向いている。第2回路基板72は、ステータ30の上側に位置している。また、第2回路基板72は、第1回路基板71の下側、すなわち軸方向他方側に位置している。よって、本実施形態によれば、第1回路基板71および第2回路基板72を軸方向に並べて配置するため、1枚の回路基板のみを備える場合と比較して、回路基板が径方向に大型化することを抑制できる。そのため、回転電機1が径方向に大型化することを抑制できる。
【0048】
第2回路基板72の内部には、シャフト22が軸方向に通されている。第2回路基板72の径方向外側の端部は、柱状部34よりも径方向外側に位置している。図3に示すように、第2回路基板72の外縁部には、径方向内側に窪む凹部72eが設けられている。図示は省略するが、本実施形態において、凹部72eは、7個設けられている。各凹部72eには、それぞれ、第1柱状部35または第3柱状部37の一方が軸方向に通されている。図4に示すように、第2回路基板72下側、すなわち軸方向他方側を向く面は、第2柱状部36の第2基板支持面36aと接触している。また、第2回路基板72上側、すなわち軸方向一方側を向く面は、第3柱状部37の第3基板支持面37bと接触している。これらにより、第2回路基板72の軸方向における位置が決まる。また、図3に示すように各凹部72eの径方向外側を向く面は、それぞれ、第1柱状部35または第3柱状部37のいずれか一方の径方向外側を向く面と接触している。これにより、第2回路基板72の径方向の位置が決まる。よって、第2回路基板72は、複数の柱状部34に保持される。
【0049】
つまり、本実施形態によれば、インシュレータ32が有する複数の柱状部34によって、第2回路基板72を保持できる。そのため、第2回路基板72をインシュレータ32やハウジング11等に固定するための、例えばネジなどの別途の部材を用いる必要が無い。よって、回転電機1の部品点数および製造工数が増大することを抑制できる。したがって、回転電機1の製造コストが増大することを抑制できる。
【0050】
図3に示すように、第2回路基板72には、複数の電子部品75が取り付けられている。第2回路基板72は、第2切込孔72bを有している。軸方向に見て、第2切込孔72bの構成は、第1切込孔71bの構成と同じである。そのため、以下の説明において、第1切込孔71bと同様の構成については説明を省略する場合がある。第2切込孔72bの構成は、第1切込孔71bの構成と異なっていてもよい。第2切込孔72bは、第2回路基板72を軸方向に貫通し、第2回路基板72の外縁から径方向内側に延びる孔である。第2切込孔72bは、第1柱状部35の径方向内側に配置されている。また、径方向に見て、第2切込孔72bは、第1柱状部35と重なる。本実施形態において、第2切込孔72bは、3個設けられている。各第2切込孔72bは、第2接続孔部72cと、第2ガイド孔部72dと、を有している。
【0051】
第2接続孔部72cには、コイル引出線39bが軸方向に通されている。つまり、第2回路基板72は、コイル引出線39bが通される第2切込孔72bを有している。第2ガイド孔部72dは、第2回路基板72の外縁と第2接続孔部72cとを繋ぐ孔である。第2ガイド孔部72dは、第2回路基板72の外縁から第2接続孔部72cに向かうにしたがって、周方向一方側に向かって傾斜して延びている。
【0052】
上述のように、複数の電子部品75は、第1回路基板71および第2回路基板72に取り付けられている。複数の電子部品75は、はんだ付け等によって第1回路基板71および第2回路基板72に固定され、第1回路基板71および第2回路基板72と電気的に接続される。本実施形態において、複数の電子部品75は、コンデンサ、トランジスタ、およびコネクタ等の電子部品である。複数の電子部品75は、第1回路基板71および第2回路基板72の両方に固定される電子部品75aを含む。そのため、第1回路基板71と第2回路基板72とは、電子部品75aを介して互いに固定されている。本実施形態において、電子部品75aは、第1回路基板71と第2回路基板72とを電気的に接続する、基板間コネクタである。本実施形態において、電子部品75aは、3個設けられている。電子部品75aは、電子部品75aをインサート部材とするインサート成形によって、一部分が樹脂の内部に埋め込まれていてもよい。この場合、樹脂を含む電子部品75aの強度を高めることができ、第1回路基板71と第2回路基板72を強固に固定できる。
【0053】
よって、本実施形態では、第1回路基板71と第2回路基板72とが、電子部品75を介して固定される。また、上述のように、第2回路基板72は、複数の柱状部34に保持されている。つまり、第2回路基板72および電子部品75aを介して、第1回路基板71を複数の柱状部34に保持できる。そのため、第1回路基板71をインシュレータ32やハウジング11等に固定するための、例えばネジなどの別途の部材を用いる必要が無い。よって、回転電機1の部品点数および製造工数が増大することを抑制できる。したがって、回転電機1の製造コストが増大することを抑制できる。
【0054】
次に、コイル引出線39bが配線される経路について説明する。図4は、3つのコイル引出線39bのうち、2つのコイル引出線39bの経路を示している。他の1つのコイル引出線39bの経路は、この2つのコイル引出線39bの経路と同様であるため、説明を省略する。
【0055】
上述のように、コイル引出線39bが引き出されるコイル本体部39aが巻回される収容部33cの周方向一方側に互いに隣り合う位置に配置される柱状部34は、第1柱状部35である。軸方向において、コイル本体部39aと突起部35bとの間に位置する部分のコイル引出線39bは、上側、かつ、周方向一方側(+θ側)を向く方向に延びて突起部35bの下側を向く面と接触し、突起部35bの下側を向く面に沿って周方向一方側に延びる。突起部35bの周方向一方側に位置するコイル引出線39bは、突起部35bの周方向一方側を向く面に沿って、略上側に延びる。つまり、コイル引出線39bは、突起部35bにおいて、制御装置70に向けて屈曲している。
【0056】
後述するように、回転電機1の製造工程のうち、取付工程Pfの第1ステップS01において、コイル引出線39bは、作業者等によって、突起部35bに引っ掛けられつつ、上側に引っ張られるため、コイル引出線39bは、突起部35bに巻き付くような形状になる。そのため、突起部35bよりも上側の部分のコイル引出線39bの周方向および径方向の位置のばらつきを抑制できる。また、軸方向において、コイル本体部39aから突起部35bとの間の部分のコイル引出線39bは、第1柱状部35よりも径方向内側に位置する。
【0057】
突起部35bよりも上側の部分のコイル引出線39bは、略上側に向けて延び、第2回路基板72の第2切込孔72bおよび第1回路基板71の第1切込孔71bのそれぞれを軸方向に通される。より詳細には、コイル引出線39bは、第2接続孔部72cおよび第1接続孔部71cのそれぞれを軸方向に通される。そのため、突起部35bよりも上側の部分のコイル引出線39bは、第1柱状部35よりも径方向内側に配置される。上述のように、軸方向において、コイル本体部39aから突起部35bとの間の部分のコイル引出線39bは、第1柱状部35の径方向内側に位置する。つまり、径方向に見て、コイル引出線39bは、第1柱状部35と重なる。コイル引出線39bの他端は、はんだ付けによって、第1接続孔部71cに固定される。これにより、第1回路基板71とコイル39とが電気的に接続される。つまり、制御装置70とコイル39とが電気的に接続される。
【0058】
次に、本実施形態の回転電機1の製造工程のうち、ステータ30に制御装置70を取り付け、制御装置70を取り付けたステータ30をハウジング11に取り付ける、取付工程Pfについて説明する。図8に示すように、本実施形態の取付工程Pfは、コイル引出線39bを、突起部35bに引っ掛けつつ、上側に屈曲させる第1ステップS01と、コイル引出線39bを、第2回路基板72の第2切込孔72bに通す第2ステップS02と、コイル引出線39bを、第1回路基板71の第1切込孔71bに通す第3ステップS03と、制御装置70をインシュレータ32に保持させる第4ステップS04と、コイル引出線39bの他端と第1回路基板71とを接続する第5ステップS05と、制御装置70が保持されたステータ30をハウジング11に取り付ける第6ステップS06と、を有する。なお、以下の説明において、「作業者等」とは、各作業を行う作業者および組立装置等を含む。各作業は、作業者のみによって行われてもよいし、組立装置のみによって行われてもよいし、作業者と組立装置とによって行われてもよい。
【0059】
第1ステップS01では、作業者等は、コイル引出線39bを、突起部35bに引っ掛けつつ、上側に向けて屈曲させる。図9に示すように、作業者等は、コイル本体部39aから上側に向けて引き出されたコイル引出線39b(二点鎖線で記載)を、周方向一方側(+θ側)に向けて引っ張り、突起部35bの下側を周方向一方側(+θ側)に通す。その後、作業者等は、コイル引出線39bを突起部35bの下側を向く面に引っ掛けつつ、上側に向けて引っ張る。このとき、コイル引出線39bの一部分は、突起部35bの下側を向く面と接触し、コイル引出線39bの他の一部分は、突起部35bの周方向一方側(+θ側)を向く面と接触する。これにより、コイル引出線39bのうち突起部35bより上側の部分は、上側、すなわち制御装置70に向けて延びている。また、上述のように、コイル引出線39bが、突起部35bに巻き付いて、上側に延びるため、突起部35bよりも上側の部分のコイル引出線39bの周方向および径方向の位置が安定する。
【0060】
第2ステップS02では、作業者等は、コイル引出線39bを、第2回路基板72の第2切込孔72bに通す。第1ステップS01が終了すると、図9に示すように、作業者等は、制御装置70を、ステータ30の上側から、下側に向けて移動させる。なお、このとき、制御装置70の第1回路基板71および第2回路基板72には、複数の電子部品75が既に取り付けられており、電子部品75aを介して、第1回路基板71と第2回路基板72とは互いに固定されている。
【0061】
図10に示すように、作業者等は、第2回路基板72が、第1柱状部35の上側の端部よりも上側、かつ、コイル引出線39bの他端よりも下側に位置するまで制御装置70を移動させると、コイル引出線39bの第1柱状部35よりも上側の部分を掴み、コイル引出線39bを、第2回路基板72の径方向外側から、第2切込孔72bに通す。より詳細には、図3に示す第2ガイド孔部72dの径方向外側の端部から、第2ガイド孔部72dの内部に挿入し、第2ガイド孔部72dに沿って、コイル引出線39bを第2接続孔部72cに移動させる。これにより、コイル引出線39bは、第2接続孔部72cを軸方向に通される。つまり、コイル引出線39bは、第2切込孔72bを軸方向に通される。
【0062】
本実施形態によれば、上述のように、第2回路基板72は、第2回路基板72の外縁から径方向内側に延びる第2切込孔72bを有するため、コイル引出線39bを、第2回路基板72の径方向外側から、第2切込孔72bに挿入できる。仮に、第2切込孔72bが第2回路基板72の外縁と繋がっていない場合、コイル引出線39bを、下側から第2切込孔に通す必要がある。この場合、作業者等は、径方向および周方向における、コイル引出線39bと第2切込孔72bとの相対的な位置を確認しづらく、コイル引出線39bを、第2切込孔に容易に通しづらい。一方、本実施形態では、作業者等は、第2切込孔72bの径方向外側の位置を確認できるため、コイル引出線39bを第2切込孔72bに容易に挿入できる。したがって、第2ステップS02の作業の簡素化を図ることができる。よって、コイル引出線39bと制御装置70とを接続する作業の簡素化を図ることができる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することを抑制できる。
【0063】
また、本実施形態によれば、第2ガイド孔部72dが、第2回路基板72の外縁から径方向内側に向かうにしたがって、周方向一方側(+θ側)に向かって傾斜して延びるため、コイル引出線39bが、第2切込孔72bから径方向外側に抜け出ることを抑制できる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することを抑制できる。
【0064】
さらに、本実施形態では、コイル引出線39bが、突起部35bの周方向一方側(+θ側)を迂回して上側に向けて延び、且つ、コイル引出線39bはある程度の剛性を有するため、突起部35bより上側のコイル引出線39bは、周方向一方側に移動しようとする。上述のように、第2ガイド孔部は、第2回路基板72の外縁から径方向内側に向かうにしたがって、周方向一方側(+θ側)に向かって傾斜して延びるため、第2切込孔72bの内部において、コイル引出線39bが周方向一方側に移動すると、コイル引出線39bは、第2ガイド孔部に沿って、第2接続孔部72cに向けて移動する。そのため、コイル引出線39bが、第2切込孔72bから径方向外側に抜け出ることをより好適に抑制できる。よって、コイル引出線39bと制御装置70とを接続する作業の簡素化を図ることができる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することをより好適に抑制できる。
【0065】
また、上述のように、本実施形態によれば、第1ステップS01において、コイル引出線39bを突起部35bに引っ掛けつつ、上側に向けて引っ張るため、突起部35bよりも上側に位置するコイル引出線39bの径方向および周方向の位置が安定しやすい。そのため、作業者等は、容易にコイル引出線39bを掴むことができるため、容易にコイル引出線39bを第2切込孔72bに通すことができる。よって、コイル引出線39bと制御装置70とを接続する作業の簡素化を図ることができる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することをより好適に抑制できる。
【0066】
第3ステップS03では、作業者等は、コイル引出線39bを、第1回路基板71の第1切込孔71bに通す。第2ステップS02が終了すると、作業者等は、制御装置70を下側に移動させる。図11に示すように、作業者等は、第1回路基板71が、第1柱状部35の上側の端部よりも上側、かつ、コイル引出線39bの他端よりも下側に位置するまで制御装置70を移動させると、コイル引出線39bの第1柱状部35よりも上側の部分を掴み、コイル引出線39bを、第1回路基板71の径方向外側から、第1切込孔71bに通す。より詳細には、図2に示す第1ガイド孔部71dの径方向外側の端部から、第1ガイド孔部71dの内部に挿入し、第1ガイド孔部71d沿って、コイル引出線39bを第1接続孔部71cに移動させる。これにより、コイル引出線39bは、第1接続孔部71cを軸方向に通される。つまり、コイル引出線39bは、第1切込孔71bを軸方向に通される。
【0067】
本実施形態によれば、上述のように、第1回路基板71は、第1回路基板71の外縁から径方向内側に延びる第1切込孔71bを有するため、コイル引出線39bを、第1回路基板71の径方向外側から、第1切込孔71bに挿入できる。そのため、作業者等は、第1切込孔71bの径方向外側の位置を確認できるため、コイル引出線39bを第1切込孔71bに容易に挿入できる。したがって、第3ステップS03の作業の簡素化を図ることができる。よって、コイル引出線39bと制御装置70とを接続する作業の簡素化を図ることができる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することを抑制できる。
【0068】
また、本実施形態によれば、第1ガイド孔部71dが、第1回路基板71の外縁から径方向内側に向かうにしたがって、周方向一方側(+θ側)に向かって傾斜して延びるため、コイル引出線39bが、第1切込孔71bから径方向外側に抜け出ることを抑制できる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することを抑制できる。
【0069】
さらに、本実施形態では、コイル引出線39bが第2切込孔72bを軸方向に通されるため、第2回路基板72より上側に位置するコイル引出線39bの径方向および周方向の位置が安定する。そのため、作業者等は、容易にコイル引出線39bを掴むことができるため、容易にコイル引出線39bを第1切込孔71bに通すことができる。よって、コイル引出線39bと制御装置70とを接続する作業の簡素化を図ることができる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することをより好適に抑制できる。
【0070】
第4ステップS04では、制御装置70をインシュレータ32に固定する。第3ステップS03が終了すると、作業者等は、制御装置70を下側に移動させる。このとき、第2回路基板72の下側を向く面と、第3柱状部37の第1傾斜面37cとが接触するため、第3柱状部37には径方向外側に向く力が加わり、第3柱状部37は径方向外側に変形する。これにより、制御装置70を更に下側に移動させることができる。
【0071】
作業者等が、更に、制御装置70を下側に移動させると、図12に示すように、第1回路基板71の下側を向く面が、第1柱状部35の第1基板支持面35aと接触し、第2回路基板72の下側を向く面が、第2柱状部36の第2基板支持面36aと接触する。このとき、軸方向において、第2回路基板72の上側を向く面と、第3柱状部の第3基板支持面37bとが同じ位置になるため、第3柱状部37は、弾性力により径方向内側に移動し、第2回路基板72の上側を向く面と第3柱状部の第3基板支持面37bとが接触する。これらにより、制御装置70は、インシュレータ32に保持される。すなわち、制御装置70は、ステータ30に保持される。
【0072】
本実施形態によれば、軸方向において、突起部35bは、制御装置70よりも下側、すなわち軸方向他方側に位置する。よって、第2ステップS02から第4ステップS04において、制御装置70をステータ30に保持させる際に、制御装置70と突起部35bとが干渉することを抑制できる。そのため、制御装置70を容易にステータ30に保持させることができる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することをより好適に抑制できる。
【0073】
また、本実施形態によれば、軸方向に見て、第1基板支持面35aの一部は、第1切込孔71bと重なる。また、第1基板支持面35aは、第1回路基板71の下側を向く面と重なる。そのため、第1柱状部35によって、コイル引出線39bが、径方向外側に移動することを好適に抑制できる。よって、コイル引出線39bが、第1切込孔71bから径方向外側に抜け出ることを好適に抑制できる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することをより好適に抑制できる。
【0074】
第5ステップS05では、作業者等は、コイル引出線39bの他端と第1回路基板71とを接続する。第4ステップS04が終了すると、作業者等は、第1切込孔71bの内部における、コイル引出線39bの位置を確認し、コイル引出線39bが第1ガイド孔部71dに位置する場合は、コイル引出線39bを径方向内側に移動させて、第1接続孔部71cに通す。その後、作業者等は、コイル引出線39bのうち第1回路基板71よりも上側の部分を切断して、第1回路基板71から上側に突出するコイル引出線39bの長さを調整する。なお、第1回路基板71から上側に突出するコイル引出線39bの長さの調整は行わなくてもよい。その後、作業者等は、はんだ付けによって、コイル引出線39bの他端を、第1接続孔部71cに固定する。これにより、コイル39と制御装置70とが電気的に接続される。
【0075】
第6ステップS06では、作業者等は、制御装置70を保持するステータ30をハウジング11に取り付ける。第5ステップS05が終了すると、図12に示すように、治具等に保持されたハウジング部材12の開口部12dから、制御装置70を保持するステータ30を、ハウジング部材12の内部に挿入する。図1に示すように、ステータコア31の下側を向く面の外縁部が、ハウジング部材12の段差面12fと接触するまでステータ30が挿入されると、ハウジング部材12に対するステータ30の軸方向の位置が決まり、ステータ30はハウジング部材12に固定される。すなわち、ステータ30は、ハウジング11に取り付けられる。
【0076】
本実施形態によれば、コイル引出線39bは、第1柱状部35よりも径方向内側に位置し、径方向に見て、コイル引出線39bは、第1柱状部35と重なる。よって、制御装置70を保持するステータ30をハウジング11に挿入する際に、ハウジング11とコイル引出線39bとが接触することを抑制できる。そのため、制御装置70を保持するステータ30を、容易にハウジング11に挿入できる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することをより好適に抑制できる。また、コイル引出線39bが、ハウジング11と接触することによって損傷することを抑制できる。そのため、コイル引出線39bの絶縁性を好適に確保できる。
【0077】
本実施形態によれば、ステータ30は、ハウジング11に固定されるステータコア31と、ステータコア31の少なくとも一部を囲むインシュレータ本体部33、および制御装置70が固定される複数の柱状部34、を有するインシュレータ32と、インシュレータ本体部33に巻回されるコイル本体部39a、およびコイル本体部39aから軸方向一方側に引き出され、制御装置70と接続されるコイル引出線39b、を有するコイル39と、を有し、複数の柱状部34のそれぞれは、インシュレータ本体部33の外縁部から軸方向一方側に延び、周方向に沿って間隔をあけて配置される柱状であり、複数の柱状部34は、径方向内側に突出する突起部35bを有する第1柱状部35を含み、突起部35bは、軸方向において、コイル本体部39aと制御装置70との間に位置し、コイル引出線39bは、突起部35bにおいて制御装置70に向けて屈曲する。そのため、突起部35bより上側のコイル引出線39bの径方向および周方向の位置を安定させることができる。よって、ステータ30に制御装置70を取り付ける際に、コイル引出線39bと制御装置70とを接続する作業の簡素化を図ることができる。したがって、回転電機1の製造工数が増大することを抑制できる。
【0078】
また、本実施形態では、上述のように、突起部35bより上側のコイル引出線39bの径方向の位置が安定するため、ハウジング11とコイル引出線39bとの間の間隔を容易に設けることができる。そのため、ハウジング11とコイル引出線39bとの絶縁を容易に確保できる。そのため、例えば、ニトフロンテープ等の絶縁体をコイル引出線39bに巻き付けて、コイル引出線39bとハウジング11との絶縁を確保する必要が無くなる。したがって、回転電機1の製造工数および製造コストを低減できる。また、ハウジング11とコイル引出線39bとの間の間隔を容易に設けることができるため、ハウジング11の径を小さくできる。したがって、回転電機1が径方向において大型化することを抑制できる。
【0079】
また、本実施形態では、上述のように、コイル引出線39bを突起部35bに引っ掛けつつ上側に引っ張ることにより、コイル引出線39bが向く向きを上側に癖を付けて、突起部35bより上側のコイル引出線39bの径方向および周方向の位置のばらつきを抑制できるため、コイル引出線39bの径方向および周方向の位置を規制するための部材を別途設ける必要が無い。したがって、回転電機1の部品点数および製造コストが増大することを抑制できる。
【0080】
本実施形態によれば、径方向に見て、コイル引出線39bは、第1柱状部35と重なり、コイル引出線39bは、第1柱状部35よりも径方向内側に位置する。つまり、径方向において、コイル引出線39bとハウジング11との間に、絶縁性を有する第1柱状部35を配置できる。そのため、ハウジング11とコイル引出線39bとの絶縁をより好適に確保できる。
【0081】
本発明は上述の実施形態に限られず、本発明の技術的思想の範囲内において、他の構成および他の方法を採用することもできる。突起部は、コイル引出線を引掛ることができるならば、どのような構成であってもよい。例えば、突起部は、径方向内側に突出する円柱状であってもよいし、三角柱状などの形状であってもよい。また、突起部は、第1柱状部に固定される、第1柱状部とは別個の部材であってもよい。
【0082】
複数の柱状部は、制御装置を保持でき、径方向においてコイル引出線とハウジングとの間に配置されるならば、どのような構成であってもよい。例えば、複数の柱状部は、インシュレータ本体部とは別個の部材であってもよい。また、複数の柱状部の個数は12個に限定されず、11個以下でもよいし、13個以上であってもよい。
【0083】
制御装置は、ステータに電流を供給できるならば、どのような構成であってもよい。例えば、回路基板の個数は2個に限定されず、1個でもよいし、3個以上であってもよい。また、2個の回路基板同士は、電子部品によって固定される必要は無く、他の部材によって固定されていてもよい。また、2個の回路基板は、互いに固定されなくてもよい。制御装置は、例えばハウジング等の他の部材に固定されてもよい。
【0084】
以上に、本発明の実施形態を説明したが、本発明が適用される回転電機の用途は、特に限定されない。回転電機は、モータに限られず、発電機であってもよい。本発明の実施形態における各構成およびそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…回転電機、11…ハウジング、20…ロータ、30…ステータ、31…ステータコア、31a…コアバック部、31b…ティース部、32…インシュレータ、33…インシュレータ本体部、33c…収容部、34…柱状部、35…第1柱状部、35a…第1基板支持面、35b…突起部、36…第2柱状部、36a…第2基板支持面、37…第3柱状部、37a…爪部、37b…第3基板支持面、39…コイル、39a…コイル本体部、39b…コイル引出線、70…制御装置、71…第1回路基板、71b…第1切込孔、71c…第1接続孔部、71d…第1ガイド孔部、72…第2回路基板、72b…第2切込孔、J…中心軸
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