(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125549
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システム
(51)【国際特許分類】
F24D 19/00 20060101AFI20230831BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230831BHJP
F28F 13/18 20060101ALI20230831BHJP
F25B 23/00 20060101ALI20230831BHJP
F24D 5/08 20060101ALI20230831BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20230831BHJP
E04B 9/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
F24D19/00 Z
F24F5/00 101B
F28F13/18 Z
F25B23/00 Z
F24D5/08 Z
E04B5/43 A
E04B5/43 Z
E04B9/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029687
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】321008734
【氏名又は名称】株式会社ユカリラ
(71)【出願人】
【識別番号】000204985
【氏名又は名称】大建工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角田 正
【テーマコード(参考)】
3L071
3L073
【Fターム(参考)】
3L071AA04
3L071AA05
3L073BB03
(57)【要約】
【課題】熱媒体が保有する熱を効率よく伝達する輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムを提供する。
【解決手段】輻射体10は、外筒12と、外筒12の内部に配置された内筒15と、内筒15の内部を流れる熱媒体Aを、内筒15の外で外筒12の内に導くノズル20とを備える。内筒15は、その軸線が外筒12の軸線と同方向に延びている。ノズル20は、内筒15の軸線に交差する方向に外筒12の内壁に沿って熱媒体Aを吐出する吐出口が形成されている。コンクリート構造体は、輻射体10と、その周囲を覆うコンクリートとを備える。輻射ユニットは、輻射体10と、その近傍に配置された反射板とを備える。冷暖房システムは、コンクリート構造体又は輻射ユニットと、熱媒体Aの温度を調節する温度調節機とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、
前記外筒の内部の空間に配置され、気体の熱媒体が内部を流れる内筒と、
前記内筒の内部を流れる前記熱媒体を、前記内筒の外側で前記外筒の内部の空間に導くノズルと、を備え、
前記内筒は、前記内筒の軸線が前記外筒の軸線と同じ方向に延びるように配置されており、
前記ノズルは、前記内筒の軸線が延びる方向に対して交差する方向にかつ前記外筒の内壁に沿って前記熱媒体を吐出する吐出口が形成されている、
輻射体。
【請求項2】
前記ノズルは、前記内筒の軸線が延びる方向に間隔をあけて複数が設けられている、
請求項1に記載の輻射体。
【請求項3】
複数の前記ノズルのうち、第1のノズルは第1の所定の方向に前記熱媒体を吐出する向きに前記吐出口が形成されており、第2のノズルは前記第1の所定の方向とは異なる第2の所定の方向に前記熱媒体を吐出する向きに前記吐出口が形成されている、
請求項2に記載の輻射体。
【請求項4】
前記内筒の外面を包むバンドと、前記バンドから突出して前記外筒に掛かる爪片と、を有する支持具を備える、
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の輻射体。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の輻射体と、
前記輻射体の周囲を覆うコンクリートと、を備える、
コンクリート構造体。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の輻射体と、
前記輻射体の近傍に配置された反射板であって、前記輻射体から輻射された熱を所定の方向に反射させる反射板と、を備える、
輻射ユニット。
【請求項7】
請求項5に記載のコンクリート構造体又は請求項6に記載の輻射ユニットと、
前記内筒に流入させる前記熱媒体の温度を調節する温度調節機と、を備える、
冷暖房システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムに関し、特に熱媒体からの伝熱効率を向上させた輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、省エネルギーと快適性とを両立する冷暖房方式として、輻射熱で冷暖房を行う輻射冷暖房システムが採用されることが増加してきている。輻射冷暖房システムは、冷暖房対象空間に面する部材(天井、床、壁など)を、冷房時は冷やし暖房時は暖めて、冷却又は加熱した部材からの輻射熱により対象空間の冷暖房を行うシステムである。輻射冷暖房システムに用いられる部材として、対象空間に面する表面板の裏側に、温度調節した空気を流す流路を複数設け、この流路を流れる空気の熱を表面板に伝達させて、表面板から冷熱又は温熱を輻射する仕切パネルがある(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
輻射による冷暖房では、冷熱又は温熱を輻射する部材に、空気が保有する冷熱又は温熱をより多く伝達させることができれば、冷暖房をより効果的に行うことができ、省エネルギーにも資することとなる。
【0005】
本開示は上述の課題に鑑み、熱媒体が保有する冷熱又は温熱を効率よく伝達することができる輻射体、コンクリート構造体、輻射ユニット及び冷暖房システムを提供することに関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様に係る輻射体は、外筒と、前記外筒の内部の空間に配置され、気体の熱媒体が内部を流れる内筒と、前記内筒の内部を流れる前記熱媒体を、前記内筒の外側で前記外筒の内部の空間に導くノズルと、を備え、前記内筒は、前記内筒の軸線が前記外筒の軸線と同じ方向に延びるように配置されており、前記ノズルは、前記内筒の軸線が延びる方向に対して交差する方向にかつ前記外筒の内壁に沿って前記熱媒体を吐出する吐出口が形成されている。
【0007】
このように構成すると、吐出口から吐出された熱媒体が外筒の内壁に沿って流れる際に、熱媒体が保有する冷熱又は温熱が外筒に効率よく伝達され、外筒が冷熱又は温熱を発することができるようになる。
【0008】
また、本開示の第2の態様に係る輻射体は、上記本開示の第1の態様に係る輻射体において、前記ノズルは、前記内筒の軸線が延びる方向に間隔をあけて複数が設けられている。
【0009】
このように構成すると、ノズルから吐出された熱媒体が接触する外筒の部分を大きくすることができ、熱媒体が保有する冷熱又は温熱が外筒に伝達する面積を大きくすることができる。
【0010】
また、本開示の第3の態様に係る輻射体は、上記本開示の第2の態様に係る輻射体において、複数の前記ノズルのうち、第1のノズルは第1の所定の方向に前記熱媒体を吐出する向きに前記吐出口が形成されており、第2のノズルは前記第1の所定の方向とは異なる第2の所定の方向に前記熱媒体を吐出する向きに前記吐出口が形成されている。
【0011】
このように構成すると、熱媒体から外筒に伝達される冷熱又は温熱の偏りを抑制することができる。
【0012】
また、本開示の第4の態様に係る輻射体は、上記本開示の第1の態様乃至第3の態様のいずれか1つの態様に係る輻射体において、前記内筒の外面を包むバンドと、前記バンドから突出して前記外筒に掛かる爪片と、を有する支持具を備える。
【0013】
このように構成すると、簡便な構成で内筒を外筒に対して位置決めすることができる。
【0014】
また、本開示の第5の態様に係るコンクリート構造体は、上記本開示の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る輻射体と、前記輻射体の周囲を覆うコンクリートと、を備える。
【0015】
このように構成すると、外筒の発する冷熱又は温熱がコンクリートに伝達し、コンクリートの表面から冷熱又は温熱を輻射することができる。
【0016】
また、本開示の第6の態様に係る輻射ユニットは、上記本開示の第1の態様乃至第4の態様のいずれか1つの態様に係る輻射体と、前記輻射体の近傍に配置された反射板であって、前記輻射体から輻射された熱を所定の方向に反射させる反射板と、を備える。
【0017】
このように構成すると、外筒から輻射された冷熱又は温熱を反射板によって所定の方向に輻射させることができる。
【0018】
また、本開示の第7の態様に係る冷暖房システムは、上記本開示の第5の態様に係るコンクリート構造体又は上記本開示の第6の態様に係る輻射ユニットと、前記内筒に流入させる前記熱媒体の温度を調節する温度調節機と、を備える。
【0019】
このように構成すると、温度を調節した熱媒体を内筒に流入させることができ、熱媒体が保有する熱を外筒を介してコンクリート又は反射板に伝達させ、コンクリート又は反射板からの冷熱又は温熱の輻射により冷暖房対象空間の冷暖房を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、吐出口から吐出された熱媒体が外筒の内壁に沿って流れる際に、熱媒体が保有する冷熱又は温熱が外筒に効率よく伝達され、外筒が冷熱又は温熱を発することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】(A)は一実施の形態に係る輻射体の斜視図、(B)は輻射体の正面断面図である。
【
図2】一実施の形態に係る輻射体が備えるノズルの斜視図である。
【
図3】一実施の形態に係る輻射体に含まれる支持具の分解斜視図である。
【
図4】(A)は一実施の形態に係る冷暖房システムの概略構成を示す斜視図、(B)は分配ダクトへの接続部まわりの輻射体の部分斜視図、(C)は内筒の末端部分を示す部分斜視図である。
【
図5】(A)は一実施の形態の変形例に係る冷暖房システムの概略構成を示す分解斜視図、(B)は一実施の形態の変形例に係る冷暖房システムの概略構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。なお、各図において互いに同一又は相当する部材には同一あるいは類似の符号を付し、重複した説明は省略する。
【0023】
まず
図1(A)及び
図1(B)を参照して、一実施の形態に係る輻射体10を説明する。
図1(A)は輻射体10の斜視図であり、内部構造を示すために一部を切り欠いている。
図1(B)は輻射体10の正面断面図である。輻射体10は、気体の熱媒体としての温度が調節された空気(以下「温調空気A」という。)を内部に流し、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱が伝達されて冷却又は加熱された外面から冷熱又は温熱を輻射するものである。ここで、輻射体10の外面を冷却して冷熱を輻射する際は、周囲よりも温度が低い輻射体10の外面が、周囲から吸熱するのであるが、便宜上、輻射体10が冷熱を輻射すると表現することとする。輻射体10は、外筒12と、内筒15と、ノズル20とを備えている。
【0024】
外筒12は、輻射体10の外表面を形成する部材である。また、外筒12は、内筒15と、複数のノズル20とを収容する部材でもある。外筒12は、基本形状が筒状に形成されている。また、外筒12は、温調空気Aを内部に流すこともできる。外筒12は、基本形状の筒状の軸線(筒形状の長手方向に直交する面における形状の図心を通り、当該長手方向に延びる仮想線)に直交する断面が、本実施の形態では陸上競技用トラックのような形状に形成されている。換言すれば、外筒12の軸線直交断面における形状は、円を仮想直線で二等分に分割して当該仮想二等分線に直交する方向に相互に離したものを平行な二本の直線で接続した形状に形成されている。外筒12は、例えば、二本の直線間の距離が、100mm~250mm、あるいは150mm~200mmのものが用いられる場合があるが、この距離は用途に応じて適宜変更することができる。また、外筒12は、例えば、相互に離れている半円部分の間の最大距離が、200mm~350mm、あるいは250mm~300mmのものが用いられる場合があるが、この距離は用途に応じて適宜変更することができる。基本形状が筒状である外筒12は、両端面が開口している。外筒12は、典型的には鋼板で形成されているが、鋼板以外の金属や、樹脂で形成されていてもよい。
【0025】
内筒15は、内部に温調空気Aを流す部材であり、温調空気Aの流路を形成するものである。内筒15は、輻射体10に流入した温調空気Aが最初に流れる部材である。内筒15は、筒状の部材であり、その両端は開口面になっている。内筒15は、典型的にはスパイラルダクトが用いられるが、角ダクトが用いられてもよい。つまり、内筒15は、筒状の軸線に直交する断面の形状が、典型的には円であるが、矩形やその他の多角形でもよく、楕円であってもよい。内筒15は、典型的には鋼板で形成されているが、鋼板以外の金属や、樹脂で形成されていてもよい。内筒15は、スパイラルダクトが用いられる場合、例えば直径が80mm~230mm、あるいは120mm~170mmのものが用いられる場合があるが、用途に応じて直径を適宜変更することができる。内筒15は、1本のダクトが一体に形成されていてもよく、複数本のダクトを軸線方向に接続して1本のダクトを形成してもよい。内筒15は、典型的には、その軸線が、外筒12の軸線と一致する位置で、外筒12の内部に配置されている。内筒15は、ノズル20が装着される装着孔が、筒状の側面に、長手方向に沿って複数形成されている。
【0026】
ノズル20は、内筒15の内部を流れている温調空気Aを、内筒15の外側で外筒12の内部の空間(以下、「吐出空間18」という。)に導く部材である。ノズル20は、典型的には、外筒12と内筒15との距離が最も短くなる部分の内筒15の側面に装着されている。断面が陸上競技用トラックのような形状の外筒12と断面が円形である内筒15との間が最短となる部分は2箇所存在するが、本実施の形態では、そのうちの一方の側に、長手方向に沿って、ノズル20が間隔をあけて複数装着されている。各ノズル20は、内筒15に形成された装着孔に嵌め込まれる形で、内筒15に装着されている。逆に言えば、各ノズル20を装着するのに適した位置の内筒15の側面に、装着孔が形成されている。長手方向(外筒12及び内筒15の軸線が延びる方向)における隣接するノズル20の基準位置同士の間隔は、例えば、200mm~600mm、あるいは300mm~400mm~500mmとすることができる。しかしながら、当該隣接するノズル20の間隔は、輻射体10の大きさや設置場所、あるいは処理する熱負荷量等に応じて、適宜変更することができる。
【0027】
図2を併せて参照して、ノズル20の構成例を説明する。
図2は、ノズル20の概略構成を示す斜視図である。ノズル20は、差込体21と、露出体25と、フランジ29とを有している。差込体21は、内筒15の内部に差し込まれる部分である。露出体25は、吐出空間18に位置する部分である。差込体21は、概ね直方体状に形成されており、その直方体状の3組の向かい合う面のうちの1組の向かい合う面が開口面になっている。そして、当該向かい合う開口面の一方が流入口22になっている。流入口22は、内筒15の内部を流れている温調空気Aをノズル20内に取り込む開口である。差込体21は、流入口22に対向する開口面が、露出体25に接続されている。以下、ノズル20の説明に関し、差込体21と露出体25とが連なる方向を「高さ方向H」ということとする。また、差込体21を構成する概ね直方体状の開口面以外の2組の向かい合う面のうちの面積が小さい組みの方の面における高さ方向Hに直交する方向を「奥行方向D」と、高さ方向H及び奥行方向Dに直交する方向を「幅方向W」と、いうこととする。差込体21は、高さ方向H及び奥行方向Dに広がる面に、切込23が形成されている。切込23は、流入口22からその対向する開口面まで形成されている。切込23は、流入口22に隣接する位置で最も幅が広く、露出体23に近づくほど幅が狭くなり、露出体23に隣接する位置で幅がなくなっている。切込23は、典型的には、切込23が形成された面を二等分する位置に形成されている。差込体21は、切込23を閉じた状態で内筒15の外側から内筒15の内部に挿入された後、内筒15の内部で切込23が開くようになっている。このように、切込23が形成されていることで、内筒15に装着したノズル20が内筒15から脱落することを防ぐことができる。
【0028】
露出体25は、差込体21が開口面からそのままの大きさで延長されたように概ね直方体状に形成されている。露出体25は、奥行方向D及び幅方向Wに広がる一対の面のうちの差込体21に接続する面の全体が開口していると共に、高さ方向H及び幅方向Wに広がる一対の面のうちの一方の面に吐出口28が形成されている。吐出口28は、内筒15の内部から流入口22を介してノズル20の内部に入った温調空気Aを、ノズル20から、吐出空間18に吐出する開口である。吐出口28が形成された露出体25の面は、切込23が形成された差込体21の面の延長上にある面ではなく、切込23が形成された一対の面の間にある一対の面のうちの一方の面の延長上にある面である。吐出口28の大きさは、吐出する温調空気Aの流量や流速を勘案して適宜決定することができ、吐出口28が形成された露出体25の面の全体に形成されていなくてもよい。吐出口28は、典型的には矩形に形成されているが、円形や楕円形や多角形等の矩形以外の形状であってもよい。また、吐出口28は、
図2に示す例では1つの開口で形成されているが、複数の開口で形成されていてもよい。いずれの場合も、吐出口28は、差込体21に近い位置よりも、差込体21から遠い位置に形成されていることが好ましい。このような位置に吐出口28を形成することで、ノズル20を内筒15に装着したときに、吐出口28を外筒12の近くに配置することができる。
【0029】
露出体25は、吐出口28が形成された面に対向する面と、差込体21に接続する開口面に対向する面とが交差する部分に、湾曲部26が形成されている。湾曲部26は、幅方向Wの全体にわたって形成されている。湾曲部26は、幅方向Wに直交する断面の形状が、典型的には1/4円弧に形成されているが、曲率は適宜変更することができる。湾曲部26は、差込体21から露出体25に入ってきた温調空気Aを、吐出口28に向けて円滑に(圧力損失ができるだけ小さくなるように)方向転換させるために形成されている。露出体25の高さ方向Hの長さは、ノズル20を内筒15に適切に装着できるように、ノズル20の装着位置における外筒12と内筒15との距離以下に形成されており、外筒12と内筒15との距離にできるだけ近い方が好ましい。露出体25の高さ方向Hの長さが、外筒12と内筒15との距離に近いと、吐出口28が外筒12に近接して位置することになり、吐出口28から吐出した温調空気Aが外筒12の内壁に沿いやすくなる。
【0030】
フランジ29は、差込体21と露出体25との境界に設けられている。フランジ29は、差込体21及び露出体25の境界の側面から外側に突き出ている。フランジ29は、典型的には、差込体21及び露出体25の境界の側面の全周にわたって形成されている。フランジ29は、その外周の大きさが、内筒15に形成された装着孔の外周よりも大きく形成されている。換言すれば、フランジ29は、装着孔を包含できる大きさに形成されている。フランジ29が設けられていることで、ノズル20を内筒15に装着したときに、フランジ29及び露出体25が内筒15の内部に入り込むことを防ぐことができる。なお、フランジ29は、差込体21及び露出体25の境界の側面の全周にわたって形成されていなくてもよい。しかしながら、以下の理由により、フランジ29が差込体21及び露出体25の境界の側面の全周にわたって形成されていることが好ましい。それは、差込体21を内筒15に入れやすくするために装着孔を差込体21の外周よりも一回り大きくした場合に、差込体21と内筒15との間に装着孔が残ってしまうので、この差込体21と内筒15との間に残った装着孔を塞ぐためである。ノズル20は、典型的には樹脂成形品が用いられているが、亜鉛めっき鋼板やステンレス鋼板等の金属材料を加工して形成されたものであってもよい。
【0031】
再び
図1に戻って輻射体10の構成の説明を続ける。なお、以下の説明において、ノズル20の構成に言及しているときは、適宜
図2を参照することとする。内筒15の長手方向に間隔をあけて複数が装着されたノズル20は、本実施の形態では、隣接するノズル20の吐出口28が逆方向を向いている。具体的には、ある(任意の)ノズル20は吐出口28が第1の方向を向くように配置されており、その隣のノズル20は吐出口28が第2の方向を向くように配置されており、第2の方向は第1の方向の反対方向になっている。その後も、吐出口28が第1の方向を向くノズル20と、吐出口28が第2の方向を向くノズル20が、交互に配置されている。本実施の形態では、第1の方向及び第2の方向が、内筒15の軸線(長手方向)に直交する方向になっている。複数のノズル20が装着された内筒15は、支持具30によって外筒12に固定されている。支持具30は、本実施の形態では、内筒15の外面を周方向に囲むと共に、内筒15から離れる方向に突き出た部分が外筒12に掛かるようにしたものになっている。
【0032】
図3に、支持具30の概略構成を示す。
図3は、支持具30の分解斜視図である。支持具30は、本実施の形態では、2個1組で用いられるように構成されている。支持具30は、バンド31と、爪片33とを有している。バンド31は、内筒15の外面を包む部分である。バンド31は、典型的には、矩形の薄板状部材が曲がった構成になっている。バンド31を構成する元となる矩形の薄板状部材は、対向する一対の辺が2組存在し、その一方の組の辺は内筒15の外周の半分の長さとなっており、他方の組の辺は隣接するノズル20の間の空間の長さよりも短い長さとなっている。バンド31は、元となる矩形の薄板状部材の、内筒15の外周の半分の長さの1組の辺が、内筒15の外径の曲率で湾曲して形成されている。
【0033】
バンド31の湾曲していない辺には、爪片33が接続されている。爪片33は、外筒12に掛かる小片である。逆に言えば、外筒12には、爪片33が掛かる挿通孔(不図示)が、適宜の位置に形成されている。爪片33は、バンド31の半円の直径の仮想延長線上に延びている。爪片33は、バンド31から延びる長さが、内筒15と外筒12との距離よりも長くなっている。なお、
図3に示す例では、爪片33の先端(バンド31との接続辺に対向する辺)が折れ曲がっているが、これは外筒12に取り付けた状態を示しているものである(ただし
図3では支持具30の構成の把握の容易のために外筒12及び内筒15を省略している)。
【0034】
バンド31は、本実施の形態では、湾曲していない辺上の、爪片33の隣に、切欠き39が形成されている。切欠き39は、典型的には、先端が折り曲げられる前の爪片33と同じ大きさに形成されている。隣接した爪片33及び切欠き39の全体は、バンド31の湾曲していない辺上の概ね中央に設けられている。また、対向する一対の辺にそれぞれ設けられた隣接した爪片33及び切欠き39は、バンド31を構成する元となる矩形の薄板状部材の図心を対称中心とする点対称の配置になっていることが好ましい。このようになっていると、長尺の薄板状の原料から、バンド31を湾曲させる前の支持具30の型を切り出す際に、材料の無駄を省くことができる。支持具30は、典型的には亜鉛めっき鋼板やステンレス鋼板等の金属材料を加工して形成されたものであるが、樹脂成形品が用いられてもよい。支持具30は、爪片33の先端が曲げられていない状態で、支持位置の1箇所につき、2個で内筒15の外面を挟み込んだ後、爪片33を外筒12の挿通孔に通し、外筒12の外側に突き出た爪片33を外筒12の外面に沿って折り曲げて用いられる。
【0035】
次に
図4(A)を参照して、一実施の形態に係る冷暖房システム100を説明する。
図4(A)は、冷暖房システム100の概略構成を示す斜視図である。冷暖房システム100は、典型的には建物内に設置され、建物内の空間の冷暖房を行うものである。ここで、冷暖房を行うとは、状況に応じて冷房又は暖房のいずれかを行うことをいう。冷暖房システム100としては、季節等に応じて、冷房及び暖房のいずれをも行うことができる能力を有している。
【0036】
冷暖房システム100は、一実施の形態に係るコンクリート構造体50を備えている。コンクリート構造体50は、上述の輻射体10を仮想平面上に複数本平行に並べ、これをコンクリート51で覆って構成されている。コンクリート51は、複数の輻射体10の外筒12の外周側面全体を覆って一体に成形されており、輻射体10の両端面は覆っていない。なお、
図4(A)では、コンクリート51の内部の構成を示すために、コンクリート51の一部を切り欠いて示している。また、以下の説明において輻射体10の構成に言及しているときは、適宜
図1(A)及び
図1(B)並びに
図2を参照することとする。隣り合う輻射体10の間には、コンクリート51が、30mm以上、好ましくは40mm以上、より好ましくは50mm以上充填されるように、輻射体10の間隔を決定するとよい。各輻射体10が配列された方向に対して直交する方向(各輻射体10を水平に配置した場合の上方及び下方)には、それぞれ、コンクリート51のかぶりが30mm~40mm~50mm程度となるようにするとよい。コンクリート51は、現場(建物の施工場所)で打設してもよく、工場でプレキャストコンクリートとして製造したコンクリート構造体50を現場に搬入することとしてもよい。コンクリート51に複数の輻射体10が埋設されたコンクリート構造体50は、床(階下の空間にとっては天井)に用いられる場合、ボイドスラブとして機能し得る。換言すれば、コンクリート構造体50は、ボイドスラブのボイド内に内筒15及びノズル20を設けたものと見ることができ、あるいは外筒12をボイド型枠と見ることができる。したがって、コンクリート構造体50は、床に用いられる場合、ボイドスラブの特徴である、遮音性の高い高剛性スラブとすることができる、小梁のない空間を実現することができる、等といった利点を享受することができる。
【0037】
冷暖房システム100は、上述のコンクリート構造体50のほか、空調機61を備えている。空調機61は、温調空気Aの温度を調節する機器であり、温度調節機に相当する。空調機61は、天井裏の空間に配置してもよく、その他の空間に配置してもよい。空調機61は、コイル(不図示)と、ファン(不図示)とを有している。コイルは、空調機61に導入された温調空気Aを冷却又は加熱するものである。コイルは、熱源機(不図示)で温度が調節された冷水又は温水を内部に流すチューブを有している。コイルのチューブには、多数のフィンが設けられている。コイルは、多数のフィンの間に温調空気Aを通過させて、冷水又は温水と温調空気Aとの間で熱交換させることにより、冷水又は温水の熱を温調空気Aに伝達させるように構成されている。ファンは、コイルで温度が調節された温調空気Aをコンクリート構造体50の輻射体10に向けて圧送するものである。なお、空調機61は、温調空気Aの温度を調節することができれば足り、温調空気Aの湿度を調節するための構成は有しなくてよい。しかしながら、空調機61から供給された温調空気Aに含まれる水分が結露するおそれがある場合は、結露を発生させないようにするため、空調機61が温調空気Aの湿度を調節するための構成を有することが好ましい。
【0038】
冷暖房システム100は、本実施の形態では、空調機61とコンクリート構造体50との間における温調空気Aの搬送のため、さらに、分配ダクト63と、収集ダクト65と、往ダクト68とを備えている。分配ダクト63は、コンクリート構造体50内の各輻射体10の内筒15に、温調空気Aを分配する部材である。分配ダクト63に接続される側の輻射体10の端部には、
図4(B)に示すように、短管41と、外筒キャップ43とが設けられている。短管41は、輻射体10の内筒15と分配ダクト63とを接続する管である。外筒キャップ43は、内筒15内部を除いた外筒12の端部(外筒12の端面に表れる吐出空間18部分)を塞ぐ部材である。外筒キャップ43は、短管41が通る開口が形成されている。換言すれば、短管41は、外筒キャップ43を貫通して内筒15の端部に接続されている。分配ダクト63は、複数の短管41(内筒15)が並ぶ方向(幅方向)に細長い筒状に形成されている。分配ダクト63は、長手方向に直交する断面の形状が、典型的には矩形に形成されているが、円形や楕円形、多角形であってもよい。分配ダクト63は、長手方向の大きさ(筒状の側面の大きさ)が、複数の短管41の各端面全体を包含する大きさになっており、当該筒状の側面に、短管41を介して各輻射体10の端面が接続されている。分配ダクト63の、各輻射体10が接続される側面の高さは、コンクリート構造体50の厚さと同じになっていることが好ましい。分配ダクト63と輻射体10とは、短管41を介して連絡しており、温調空気Aが分配ダクト63から輻射体10内に流入することができるようになっている。分配ダクト63は、細長い筒状の一端に、温調空気Aを導入する導入口64が形成されている。分配ダクト63は、本実施の形態では、輻射体10との連絡口及び導入口64以外の部分に開口が形成されておらず、導入口64から導入した温調空気Aのすべてを各輻射体10へ導くことができるようになっている。
【0039】
収集ダクト65は、各輻射体10を流れた温調空気Aを収集する部材である。収集ダクト65に接続される側の輻射体10の端部には、
図4(C)に示すように、内筒キャップ45が設けられている。内筒キャップ45は、内筒15の端面を塞ぐ部材である。収集ダクト65に接続される側の輻射体10の端部は、内筒15の端面は内筒キャップ45で塞がれているが、外筒12の端面は塞がれておらず、内筒15内部を除いた外筒12の端部(外筒12の端面に表れる吐出空間18部分)は開口している。収集ダクト65は、典型的には、分配ダクト63と同じ大きさ及び形状を有している。しかしながら、温調空気Aを収集する機能を果たすことができれば、分配ダクト63と異なる形状や大きさであってもよい。収集ダクト65は、長手方向の大きさ(筒状の側面の大きさ)が、複数の輻射体10の各端面全体を包含する大きさになっており、当該筒状の側面に、各輻射体10の端面が接続されている。収集ダクト65の、各輻射体10が接続される側面の高さは、コンクリート構造体50の厚さと同じになっていることが好ましい。収集ダクト65と外筒12の端面に表れる吐出空間18部分とは、両者の接続部分において連絡しており、温調空気Aが輻射体10内の吐出空間18から収集ダクト65に流入することができるようになっている。収集ダクト65は、細長い筒状の一端に、温調空気Aを排出する還流口66が形成されている。本実施の形態では、分配ダクト63の導入口64から最も遠い輻射体10に対して、収集ダクト65の還流口66が最も近くなるように、収集ダクト65の長手方向端部に還流口66が形成されている。還流口66には、本実施の形態ではガラリが設けられている。収集ダクト65は、本実施の形態では、輻射体10との連絡口及び還流口66以外の部分に開口が形成されておらず、輻射体10から収集ダクト65へ流出した温調空気Aのすべてを還流口66へ導くことができるようになっている。なお、コンクリート構造体50がプレキャストコンクリートとして工場で製造される場合、工場においてコンクリート構造体50に分配ダクト63(短管41と外筒キャップ43とを含む)及び/又は収集ダクト65(内筒キャップ45を含む)を取り付けてもよい。また、分配ダクト63(短管41と外筒キャップ43とを含む)及び/又は収集ダクト65(内筒キャップ45を含む)をコンクリート51で覆って一体に成形してもよい。換言すれば、分配ダクト63(短管41と外筒キャップ43とを含む)及び/又は収集ダクト65(内筒キャップ45を含む)がコンクリート構造体50の構成要素に含まれていてもよい。
【0040】
コンクリート構造体50に分配ダクト63及び収集ダクト65が取り付けられたもの(以下、これを「集合体」という場合がある。)は、全体として矩形の板状に形成されている。分配ダクト63の導入口64と、収集ダクト65の還流口66とは、全体として矩形の集合体の対角に位置するように構成されている。空調機61の吐出側と分配ダクト63の導入口64とは、往ダクト68で接続されている。収集ダクト65の還流口66には、本実施の形態では、ダクトが接続されておらず、還流口66が表れている空間に開放されている。これに伴い、空調機61には、空調機61の周囲の空気が取り込まれるようになっている。
【0041】
引き続き
図4(A)~
図4(C)を参照して、冷暖房システム100の作用を説明する。輻射体10及びコンクリート構造体50の作用は、冷暖房システム100の作用の一環として説明する。以下の説明において、輻射体10の構成に言及しているときは、適宜
図1(A)及び
図1(B)並びに
図2を参照することとする。冷暖房システム100を作動させる際、まず、空調機61を起動する。すると、空調機61の周辺の空気が空調機61に導入される。空調機61に導入された空気は、コイルを通過する際、冷房時は冷やされ、暖房時は温められ、温度が調節された温調空気Aとなる。コイルを通過することで生成された温調空気Aは、ファンによって、空調機61から吐出される。空調機61から吐出された温調空気Aは、往ダクト68を流れた後に分配ダクト63に流入する。分配ダクト63に流入した温調空気Aは、往ダクト68が接続された側とは反対側の端部に向けて流れる。分配ダクト63内を流れる温調空気Aは、長手方向に配列された輻射体10に接続された短管41に出会う度に、短管41を介して輻射体10に流入する。
【0042】
分配ダクト63から短管41を介して各輻射体10に流入した温調空気Aは、短管41が接続されている内筒15の内部に流入する。内筒15の内部に流入した温調空気Aは、内筒キャップ45が設けられている側の端部に向かって内筒15の内部を流れる。内筒15の内部を流れる温調空気Aは、内筒15の長手方向に沿って配置されたノズル20に出会う度に、流入口22からノズル20の内部に流入する。なお、内筒15の末端は内筒キャップ45で塞がれているため、内筒15に流入した温調空気Aのすべてがいずれかのノズル20に流入する。各ノズル20の流入口22からノズル20の内部に流入した温調空気Aは、差込体21の内部を通過して露出体25の内部に至り、露出体25の内部において湾曲部26の湾曲に沿って流れの向きを変え、吐出口28から吐出空間18に流出する。吐出口28から吐出空間18に流出した温調空気Aは、吐出口28が外筒12に近接して配置されているため、外筒12の内壁に沿って流れる。また、本実施の形態では、吐出口28が、内筒15の長手方向に直交する方向を向いているので、温調空気Aは、主として外筒12の周方向に流れつつ、全体として分配ダクト63側から収集ダクト65側に移動する。吐出空間18に流出した温調空気Aが外筒12の内壁に沿って流れる際、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱が外筒12に伝達される。このとき、吐出口28から流出する温調空気Aの流速が概ね3m/s~5m/sとなるように吐出口28の大きさが形成されていると、外筒12の内壁付近に存在し得る静止空気(速度境界層)が除去され又は厚さが減少し、熱伝達率が増加することとなる。熱伝達率が増加することで、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱のより多くが外筒12に伝達することになる。さらに、本実施の形態では、ノズル20が長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられていると共に、隣接するノズル20の吐出口28が交互に逆方向を向いているので、外筒12全体に冷熱又は温熱を伝達させることができる。このように、輻射体10では、温調空気Aが流れることによって、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱が効果的に外筒12に伝達される。外筒12に伝達された冷熱又は温熱は、外筒12を包み込んでいるコンクリート51に伝達され、コンクリート51の温度を低下又は上昇させる。
【0043】
外筒12からの冷熱又は温熱の伝達により、冷房時は冷やされ、暖房時は温められたコンクリート51は、表面から冷熱又は温熱を輻射して、コンクリート51に面した空間の冷房又は暖房を行う。なお、冷房時は、冷房対象空間に存在する物体の熱がコンクリート51に吸収されることで納涼感を得られるのであるが、本明細書では、便宜上、コンクリート51から冷熱が輻射されると表現している。冷暖房システム100では、コンクリート51を冷却又は加熱する熱媒体が温調空気Aであるので、冷水又は温水を熱媒体とする場合に比べて、結露の発生を抑制することができ、漏水を回避することができる。仮に、熱媒体を冷水として輻射冷房を行う場合、輻射面の結露を防止するために冷水の温度を23℃以上(露点より高い温度)とすることが考えられるが、23℃一定の冷水を流した場合、負荷の変動があったときに迅速に追従することが困難となる。この点、本実施の形態に係る冷暖房システム100は、熱媒体が温調空気Aであるので、負荷変動時の追従性に優れている。
【0044】
各輻射体10において、各ノズル20の吐出口28から吐出されて外筒12の内壁に沿って流れながら吐出空間18内を収集ダクト65の方に移動する温調空気Aは、収集ダクト65に至ると、吐出空間18から収集ダクト65の内部に流入する。各輻射体10から収集ダクト65に流入した温調空気Aは、還流口66に向けて収集ダクト65を流れる。このとき、還流口66が設けられた収集ダクト65の端部は、前述のように、往ダクト68が接続された分配ダクト63の端部に対して対角に位置している。このため、各輻射体10を流れた温調空気Aが導入口64から還流口66まで移動した距離が概ね等しくなり(リバースレタン方式)、コンクリート51の全体をムラなく冷却又は加熱することができる。収集ダクト65を流れて還流口66に到達した温調空気Aは、還流口66が表れている空間(典型的にはコンクリート51からの冷熱又は温熱の輻射により冷暖房が行われる空間)に拡散される。還流口66から拡散された分の空気は、別途空調機61の周囲の空気から空調機61に取り込まれ、以降、上述の作用を繰り返す。
【0045】
以上で説明したように、本実施の形態に係る輻射体10によれば、ノズル20から吐出空間18に流出させた温調空気Aを、外筒12の内壁に沿って流している。これにより、温調空気Aが保有する冷熱又は温熱を効率よく外筒12に伝達させることができ、外筒12が冷熱又は温熱を発することができる。また、吐出口28から流出した温調空気Aが、外筒12の内壁の近傍の速度境界層を除去又は厚さを減少させることができる場合は、より多くの冷熱又は温熱を外筒12に伝達させることができる。また、ノズル20が長手方向に沿って所定の間隔で複数設けられていると共に、隣接するノズル20の吐出口28が交互に逆方向を向いているので、外筒12全体に冷熱又は温熱を伝達させることができる。また、本実施の形態に係るコンクリート構造体50によれば、床に用いられる場合にボイドスラブとして機能させることができ、輻射板及びボイドスラブの利点を併せ持つ構造体とすることができる。また、本実施の形態に係る冷暖房システム100によれば、上述の輻射体10を備えるコンクリート構造体50を備えるので、コンクリート51から熱輻射が行われることで、冷暖房対象空間を効率よく冷房又は暖房することができる。
【0046】
次に
図5(A)及び
図5(B)を参照して、一実施の形態の変形例に係る冷暖房システム200を説明する。
図5(A)は冷暖房システム200の概略構成を示す分解斜視図、
図5(B)は冷暖房システム200の概略構成を示す斜視図である。冷暖房システム200は、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と構成が類似しているが、コンクリート構造体50(
図4(A)参照)に代えて、一実施の形態に係る輻射ユニット70が設けられている点が、主として異なっている。輻射ユニット70は、前述の輻射体10を仮想平面上に複数本平行に並べ、これを反射板71で覆って構成されている。つまり、輻射ユニット70は、コンクリート構造体50(
図4(A)参照)において複数の輻射体10をコンクリートで覆う代わりに、反射板71を設けた構成になっている。反射板71は、輻射体10から輻射された冷熱又は温熱の一部を所定の方向(所望の方向)に反射させることで、当該所定の方向に輻射される熱量を増加させるものである。
【0047】
反射板71は、典型的には、仮想平面上に配列された複数の輻射体10のすべてを平面視において包含できる大きさに形成されている。反射板71は、本実施の形態では、矩形の薄い平板を基本形状として、対向する一対の辺が、当該辺に直交する断面において1/4円弧状に湾曲して形成されている。しかしながら、反射板71の形状は、輻射体10からの輻射熱を反射させたい方向や熱量等に応じて、適宜決定することができる。反射板71は、輻射体10に対向する面であって輻射体10からの輻射熱を反射させる反射面72が、輻射率が大きくなるように構成されていることが好ましい。反射面72の輻射率を大きくする措置として、例えば撥水性を有する黒色の塗料を反射面72全体に塗布することが挙げられる。他方、反射面72の裏側の裏面73は、例えば金属光沢を有する輻射率の小さい銀色等にして、裏面73からの輻射を抑制することが好ましい。このような反射板71を設けると、輻射体10からの熱輻射に指向性を持たせることができる。反射板71は、仮想平面上に配列された複数の輻射体10を全体として矩形板と見立てたときに、当該矩形板の一方の面を覆うように設けられている。
【0048】
冷暖房システム200は、上述の輻射ユニット70のほか、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と同様の、空調機61と、分配ダクト63(短管41及び外筒キャップ43を含む)と、収集ダクト65(内筒キャップ45を含む)とを備えている。なお、
図5(A)では、空調機61まわりの図示を省略している。輻射ユニット70の各輻射体10に対する分配ダクト63及び収集ダクト65の接続態様は、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と同様である。また、空調機61と分配ダクト63の導入口64とが往ダクト68で接続されている点も、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と同様である。しかしながら、冷暖房システム200では、収集ダクト65の還流口66に関し、ガラリを介して還流口66が表れている空間に開放されているのではなく、還ダクト69によって還流口66と空調機61の吸い込み側とが接続されている。冷暖房システム200は、典型的には、輻射ユニット70及び空調機61が共に冷暖房対象空間の天井に設置される。このため、輻射ユニット70と空調機61とが相互に近接して配置され、往ダクト68及び還ダクト69が比較的短くて済む。輻射ユニット70は、反射板71が冷暖房対象空間に対して輻射体10よりも遠い位置になるように配置される。したがって、反射板71の反射面72が、冷暖房対象空間の方を向くようになる。冷暖房システム200の上記以外の構成は、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と同様である。
【0049】
上述のように構成された冷暖房システム200の作用を説明する。冷暖房システム200の作動に際し、空調機61を起動すると、空調機61において温調空気Aが生成され、生成された温調空気Aが往ダクト68及び分配ダクト63を介して各輻射体10に流入することは、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と同様である。また、各輻射体10に流入した温調空気Aが、収集ダクト65に至るまでの間に、保有する冷熱又は温熱を外筒12に伝達することも、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と同様である。
【0050】
そして、冷暖房システム200では、温調空気Aからの冷熱又は温熱の伝達により冷やされ又は温められた外筒12は、表面から冷熱又は温熱を輻射して、外筒12に面した冷暖房対象空間の冷房又は暖房を行う。このとき、冷暖房対象空間の反対側を向く外筒12の面から輻射された熱は、反射板71の反射面72で反射して、冷暖房対象空間に輻射される。このため、外筒12の側面全体から輻射された熱は、ほとんどが冷暖房対象空間に向かうこととなり、効率的に冷暖房対象空間の冷暖房を行うことができる。なお、冷房時は、冷房対象空間に存在する物体の熱が外筒12に吸収されることで納涼感を得られるのであるが、本明細書では、便宜上、外筒12から冷熱が輻射されると表現している。また、冷暖房システム200においても、結露の発生を抑制することができ、漏水を回避することができ、負荷変動時の追従性に優れている。
【0051】
各輻射体10を流れ終えた温調空気Aが、収集ダクト65に流入し、還流口66に向けて収集ダクト65を流れることは、冷暖房システム100(
図4(A)参照)と同様である。その後、冷暖房システム200では、還流口66に到達した温調空気Aが、還ダクト69を流れて空調機61に導入される。空調機61に導入された温調空気Aは、再び温度調節された後に空調機61から吐出され、以降、上述の作用を繰り返す。このように作用する冷暖房システム200によれば、輻射体10(外筒12)から輻射された冷熱又は温熱が、反射板71の助けを借りて、ほとんどが冷暖房対象空間に向けられるので、冷暖房対象空間に対する効率のよい輻射冷暖房を行うことができる。
【0052】
以上の説明では、外筒12の軸線直交断面の形状が、陸上競技用トラックのような形状であるとしたが、楕円形であってもよく、円形であってもよい。外筒12の軸線直交断面の形状が円形である場合は、ノズル20を、内筒15の円周上の任意の位置に設置することとしてもよい。例えば、内筒15の長手方向に所定の間隔で配置するノズル20を、内筒15の軸線直交断面で見て所定の角度(例えば、60°、90°、120°等)ずつずらして配置することとしてもよい。
【0053】
以上の説明では、吐出口28の向きが、内筒15の長手方向に直交する方向であるとしたが、内筒15の長手方向に直交する方向に対して温調空気Aの流れ方向下流側に所定の角度(例えば、15°、30°、45°、60°、75°等)で傾いていてもよい。また、隣接するノズル20の吐出口28の向きである第1の方向と第2の方向とが反対方向(第1の方向のベクトルと第2の方向のベクトルとのなす角が180°)であるとした。しかしながら、第1の方向と第2の方向とのなす角は、150°、120°、90°、60°、30°等であってもよい。
【0054】
以上の説明では、コンクリート構造体50が床(階下の空間にとっては天井)に用いられる場合について言及したが、壁に用いられることとしてもよい。また、以上の説明では、輻射ユニット70が冷暖房対象空間の天井に設置されることとしたが、壁に設置されることとしてもよい。
【0055】
以上の説明では、冷暖房システム100(
図4(A)参照)において、収集ダクト65の還流口66が、ガラリを介して還流口66が表れている空間に開放されていることとした。しかしながら、冷暖房システム100(
図4(A)参照)において、冷暖房システム200(
図5(B)参照)のように還流口66と空調機61とを還ダクト69で接続してもよい。他方、冷暖房システム200(
図5(B)参照)においては、収集ダクト65の還流口66と空調機61とが還ダクト69で接続されていることとした。しかしながら、冷暖房システム200(
図5(B)参照)において、冷暖房システム100(
図4(A)参照)のように、還ダクト69を設けずに、収集ダクト65の還流口66がガラリを介して還流口66が表れている空間に開放されることとしてもよい。
【符号の説明】
【0056】
10 輻射体
12 外筒
15 内筒
18 吐出空間
20 ノズル
28 吐出口
30 支持具
31 バンド
33 爪片
50 コンクリート構造体
51 コンクリート
61 空調機
70 輻射ユニット
71 反射板
A 温調空気