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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125581
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】飲料および飲料の風味改善方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 2/52 20060101AFI20230831BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20230831BHJP
   A23C 9/152 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A23L2/52
A23L2/00 B
A23L2/00 T
A23C9/152
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029768
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】596126465
【氏名又は名称】アサヒ飲料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】都丸 理紗
(72)【発明者】
【氏名】西尾 莉紗
(72)【発明者】
【氏名】示村 陽子
(72)【発明者】
【氏名】西田 裕貴
【テーマコード(参考)】
4B001
4B117
【Fターム(参考)】
4B001AC03
4B001AC45
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC01
4B001BC99
4B001EC01
4B117LC02
4B117LC14
4B117LE10
4B117LK06
4B117LK08
4B117LK12
4B117LK13
4B117LK18
4B117LP17
4B117LP18
(57)【要約】
【課題】乳を含む飲料における乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減できる飲料に関する技術を提供する。
【解決手段】本発明の飲料は、乳と、プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmと、を含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
乳と、プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmと、を含有する、飲料。
【請求項2】
マロン酸ジエチル(c)0.01~60ppmをさらに含有する、請求項1記載の飲料。
【請求項3】
炭酸ガスを含有する、請求項1または2に記載の飲料。
【請求項4】
ブリックスが1~15°である、請求項1乃至3いずれか一項に記載の飲料。
【請求項5】
無脂乳固形分量が0.1~3質量%である、請求項1乃至4いずれか一項に記載の飲料。
【請求項6】
pH(20℃)が4.0未満である、請求項1乃至5いずれか一項に記載の飲料。
【請求項7】
前記飲料が容器詰めされた、請求項1乃至6いずれか一項に記載の飲料。
【請求項8】
乳を含有する飲料の風味改善方法であって、
プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmとなるように調製する工程を含む、飲料の風味改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飲料および飲料の風味改善方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、発酵乳等の乳成分を含むことで乳風味が得られる飲料としてさまざまなものが開発されている。しかしながら、例えば、より乳風味を得るために、特段の工夫を施さずに、発酵乳の配合量を高くすると飲料の酸味が強くなったり、乳酸に起因すると思われる収斂味等により後味の良さが低減したりするという傾向があった。
【0003】
例えば、特許文献1には、乳を含む飲料において、マロン酸ジエチル2~60ppmに対して、ジアセチル0.2~120ppm、フルフラール0.05~9ppm、およびオクタナール0.05~4ppmの中から選ばれる1種または2種以上を組み合わせることで、酸味を抑制しつつ、良好な後味を得る飲料が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-16367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、乳を含む飲料における乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減することに着目し、鋭意検討を行った結果、新たに特定量のプロピオン酸エチルまたはテルピノレンを乳と組み合わせることが有効であることを知見し、本発明を完成させた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、以下の飲料および飲料の風味改善方法が提供される。
[1]
乳と、プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmと、を含有する、飲料。
[2]
マロン酸ジエチル(c)0.01~60ppmをさらに含有する、[1]記載の飲料。
[3]
炭酸ガスを含有する、[1]または[2]に記載の飲料。
[4]
ブリックスが1~15°である、[1]乃至[3]いずれか一つに記載の飲料。
[5]
無脂乳固形分量が0.1~3質量%である、[1]乃至[4]いずれか一つに記載の飲料。
[6]
pH(20℃)が4.0未満である、[1]乃至[5]いずれか一つに記載の飲料。
[7]
前記飲料が容器詰めされた、[1]乃至[6]いずれか一つに記載の飲料。
[8]
乳を含有する飲料の風味改善方法であって、
プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmとなるように調製する工程を含む、飲料の風味改善方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、乳を含む飲料において、乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減できる飲料に関する技術が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について、詳細に説明する。なお、本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、a以上b以下のことを表す。
【0009】
<飲料>
本実施形態の飲料は、乳と、プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmと、を含有する。これにより、乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減できる。また、スッキリ感を向上し、後味を良好にできる。
かかる理由の詳細は明らかではないが、プロピオン酸エチルまたはテルピノレンと乳らしい風味との相性がよく、乳風味のよさを向上する一方で、プロピオン酸エチルまたはテルピノレンが乳由来のもったり感をマスキングし、口残りを低減できていると推測される。また、乳の口残り感が低減することで、プロピオン酸エチルまたはテルピノレンによるスッキリ感、後味の良さが得られやすくなると考えられる。
【0010】
なお本実施形態において「乳風味の良さ」とは乳らしいコク感、甘み等がバランスよく得られる香味を意図する。「乳の口残り」とは飲料を飲用した後に口中で感じられるもったり感、ねっとり感を意図する。「スッキリ感」は乳の口残りが低減することで、スッキリとして飲みやすいことを意図する。「後味の良さ」とは、飲用後に乳の口残りは低減しつつも良好な乳風味が感じられることを意図する。
【0011】
以下、本実施形態の飲料に含まれる成分について説明する。
【0012】
[乳]
本実施形態の乳としては、牛乳、羊乳、馬乳などの獣乳や、豆乳などの植物乳を用いることができる。また、乳の形態としては、生乳、脱脂乳、調整乳、全粉乳、脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳、練乳および酸性乳等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0013】
なお、上記の酸性乳とは、pHを酸性側にした乳をいい、そのpHは、約2~6、好ましくは約3.0~5.0の範囲にある。酸性乳としては、乳酸菌や酵母などの微生物を用いて乳原料を発酵させて調製された発酵酸性乳、および、乳にレモン、オレンジ、グレープフルーツなどの酸性果汁、クエン酸、リンゴ酸などの有機酸、又は、醸造酢や合成酢などの食酢を添加してpHを酸性として得られる酸性化乳(非発酵乳)が挙げられる。より良好な嗜好性を得る観点から、発酵酸性乳が含まれることが好ましい。さらに、酸性乳は、酸性乳中に不溶物として含まれている乳タンパク質を可溶化するためや殺菌を行うために、加熱および冷却処理を施したものであってもよい。
【0014】
本実施形態の飲料中の無脂乳固形分量は、好ましくは0.1~3質量%であり、より好ましくは0.2~2質量%である。
当該無脂乳固形分量の含有量を上記下限値以上とすることにより、乳風味を高め、まろやかさを向上できる。一方、当該無脂乳固形分量の含有量を上記上限値以下とすることにより、口残りを低減し、良好な後味を保持できる。
【0015】
無脂乳固形分(SNF)とは、乳から水分と脂肪分を取り除いたもので、乳タンパク質、炭水化物(主に糖質)、ミネラルなどの灰分およびビタミンを含むものを意図する。通常、牛乳100gに含まれる無脂乳固形分は8.3g程度であり、うち乳タンパク質は3.0g程度、糖質は4.6g程度、灰分は0.7g程度である。
【0016】
無脂乳固形分の含有量は、食品衛生関係法規集「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(昭和26年12月27日厚生省令第52号)に記載の発酵乳及び乳酸菌飲料の無脂乳固形分の定量法によって、測定することができる。
【0017】
[プロピオン酸エチル(a)]
プロピオン酸エチル(a)は、CAS No.105-37-3で特定される香気成分の一種である。典型的には、バナナ、パイナップル様のフルーツ系フレーバーとして知られている。
プロピオン酸エチル(a)の濃度の下限値は、0.01ppm以上であり、好ましくは0.05ppm以上であり、より好ましくは0.2ppm以上であり、さらに好ましくは2ppm以上である。
一方プロピオン酸エチル(a)の濃度の上限値は、50ppm以下であり、好ましくは40ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下である。
プロピオン酸エチル(a)の濃度を上記下限値以上とすることにより、乳風味の良さを向上しつつ、乳の口残りを低減できる。また、スッキリ感、後味の良さを向上し、おいしさも向上できる。
一方、プロピオン酸エチル(a)の濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な乳風味の良さ、スッキリ感、後味の良さをバランス良く得つつ、乳の口残りを低減できる。
【0018】
[テルピノレン(b)]
テルピノレン(b)は、CAS No.586-62-9で特定される香気成分の一種である。典型的には、パイナップル様のフルーツ系フレーバーとして知られている。
テルピノレン(b)の濃度の下限値は、0.01ppm以上であり、好ましくは0.05ppm以上であり、より好ましくは0.2ppm以上であり、さらに好ましくは2ppm以上である。
一方テルピノレン(b)の濃度の上限値は、60ppm以下であり、好ましくは45ppm以下であり、より好ましくは30ppm以下である。
テルピノレン(b)の濃度を上記下限値以上とすることにより、乳風味の良さを向上しつつ、乳の口残りを低減できる。また、スッキリ感、後味の良さを向上し、おいしさも向上できる。
一方、テルピノレン(b)の濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な乳風味の良さと、スッキリ感、後味の良さをバランス良く得つつ、乳の口残りを低減できる。
【0019】
本実施形態において、プロピオン酸エチル(a)およびテルピノレン(b)は少なくとも一方を用いてもよく、併用してもよい。併用する場合、プロピオン酸エチル(a)およびテルピノレン(b)の割合(質量部)は、(a):(b)=99~80:1~20が好ましく、(a):(b)=97~85:3~15がより好ましく、(a):(b)=95~90:5~10がさらに好ましい。
【0020】
[マロン酸ジエチル(c)]
本実施形態の飲料は、さらにマロン酸ジエチル(c)を含んでもよい。
マロン酸ジエチル(c)は、マロン酸の二つのカルボキシル基がエステル化された合成香料であり、典型的には、アップル様、グリーン香のフレーバーとして知られている。
【0021】
マロン酸ジエチル(c)の濃度の下限値は、好ましくは0.01ppm以上であり、より好ましくは0.05ppm以上であり、さらに好ましくは0.2ppm以上であり、ことさらに好ましくは2ppm以上である。
一方、マロン酸ジエチル(c)の濃度の上限値は、好ましくは60ppm以下であり、より好ましくは50ppm以下であり、さらに好ましくは45ppm以下であり、ことさらに好ましくは40ppm以下であり、さらに一層好ましくは30ppm以下である。
マロン酸ジエチル(c)の濃度を上記下限値以上とすることにより、乳風味の良さを向上しつつ、乳の口残りを低減できる。また、スッキリ感、後味の良さを向上し、おいしさも向上できる。
一方、マロン酸ジエチル(c)の濃度を上記上限値以下とすることにより、良好な乳風味の良さと、スッキリ感、後味の良さをバランス良く得つつ、乳の口残りを低減できる。
【0022】
本実施形態の飲料は、プロピオン酸エチル(a)、テルピノレン(b)、マロン酸ジエチル(c)を併用することで、乳風味の良さを一層効果的に向上できる。また、本実施形態の飲料が後述の炭酸ガスを含む場合は、さらに飲料のガス抜け抑制効果も得られる。
この場合、プロピオン酸エチル(a)、テルピノレン(b)、マロン酸ジエチル(c)の割合(質量部)は、(a):(b):(c)=90~60:1~20:9~30が好ましく、(a):(b):(c)=88~60:2~18:10~25がより好ましく、(a):(b):(c)=80~70:4~15:16~20がさらに好ましい。これにより、飲料全体の複雑味をバランスよく向上でき、おいしさ等が得られやすくなる。
【0023】
本実施形態の飲料は、本発明の効果が得られる限りにおいて、上記以外の他の成分を含んでもよい。具体的には、甘味料、酸味料、果汁、香料(上記香気成分を除く)、ビタミン、着色料、食塩、酸化防止剤、乳化剤、保存料、調味料、エキス類、pH調整剤、品質安定化剤、および増粘安定剤等の飲料に通常配合される成分を含有することができる。
【0024】
上記の甘味料としては、例えば、果糖、ショ糖、ブドウ糖、グラニュー糖、乳糖、および麦芽糖等の糖類、キシリトール、およびD-ソルビトール等の低甘味度甘味料、タウマチン、ステビア抽出物、グリチルリチン酸二ナトリウム、アセスルファムカリウム、スクラロース、アスパルテーム、サッカリン、ネオテーム、およびサッカリンナトリウム等の高甘味度甘味料などが挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記の酸味料としては、例えば、クエン酸、無水クエン酸、乳酸、リンゴ酸、アジピン酸、グルコン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酢酸、リン酸、フィチン酸、アスコルビン酸又はそれらの塩類等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0026】
上記の果汁としては、例えば、オレンジ果汁、ミカン果汁、マンダリン果汁、グレープフルーツ果汁、レモン果汁、ライム果汁、リンゴ果汁、ブドウ果汁、モモ果汁、イチゴ果汁、バナナ果汁、およびマンゴー果汁等が挙げられる。これらは1種のみを用いてもよいし2種以上を併用してもよい。
【0027】
以下、本実施形態の飲料の詳細についてさらに説明する。
【0028】
[炭酸ガス]
本実施形態の飲料は、炭酸ガスを含有する炭酸飲料としてもよい。炭酸ガスを含んでも、乳風味の良さを向上して、乳の口残り感を低減できる。さらに、上述した特定量のプロピオン酸エチル(a)またはテルピノレン(b)によって、時間経過によって炭酸ガスが抜けるのを抑制し、これにより飲料の風味が低減することを抑制できる。
【0029】
炭酸飲料中の炭酸ガスの圧力は、嗜好性にあわせて適宜調整できるが、炭酸ガスのガス抜けを抑制しつつ、乳風味の良さを向上して、乳の口残り感を低減する点から、1.0~5.0ガスボリュームであることが好ましく、1.5~3.5ガスボリュームであることがより好ましい。
【0030】
炭酸ガス圧力(ガスボリューム)は、標準状態(1気圧、20℃)において、飲料全体の体積に対して溶けている炭酸ガスの体積の割合を表したものである。
【0031】
炭酸ガスの圧入方法は、公知の方法を用いることができる。
【0032】
なお、本実施形態の飲料が炭酸ガスを含む場合、そのpH、クエン酸酸度、ブリックス等の諸物性は、炭酸ガスをガス抜きした状態の飲料の物性を表す。
【0033】
[pH]
本実施形態の飲料の20℃におけるpHは、4.0未満であり、好ましくは3.9以下であり、より好ましくは3.8以下であり、さらに好ましくは3.7以下である。
pHを上記上限値以下とすることにより良好な乳風味が得られ、飲料の風味のバランスを良好にできる。
本実施形態の飲料の20℃におけるpHの下限値はとくに限定されないが、飲料としての風味を保持する点から、好ましくは2.4以上であり、より好ましくは2.6以上であり、さらに好ましくは3.0以上である。
【0034】
なお、pHの測定は、市販のpH測定器を用いるなどして行うことができる。pHの調整は、例えば、pH調整剤を用いることなどにより行うことができる。
【0035】
[酸度]
本実施形態の飲料の酸度は、0.1g/100ml以上、0.5g/100ml以下であることが好ましく、0.15g/100ml以上、0.30g/100ml以下であることがより好ましい。
酸度を、上記下限値以上とすることにより、おいしさが得られるようになる。一方、酸度を、上記上限値以下とすることにより、過度な酸味を抑制し、おいしさを両立できる。
酸度は、100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)で表すことができる。酸度もまた、JAS規格の酸度測定法で定められた方法、具体的には0.1mol/L水酸化ナトリウム標準液をアルカリ溶液として使用した中和滴定法(定量式)により測定できる。
【0036】
[ブリックス値]
本実施形態の飲料のブリックス値(Bx)は、飲みやすさを向上しつつ、香り、酸味、苦み、後味のバランスを良好にする観点から、好ましくは、1°以上15°以下であり、より好ましくは、3°以上13°以下であり、さらに好ましくは、5°以上10°以下である。
ブリックス値は、飲料全量に対する可溶性固形分の合計含有量を示す。ブリックス値は、たとえば、デジタル屈折計Rx-5000α(アタゴ社製)を用いて、20℃における糖用屈折計の示度を測定することができる。
ブリックス値は、甘味料の量、その他の各種成分の量などにより調整することができる。
【0037】
[飲料の種類]
本実施形態の飲料は、濃縮飲料であってもよく、希釈されずにそのまま飲用される飲料であってもよい。効果的に良好な乳風味を得つつ、乳の口残りを抑制する点から、希釈されずにそのまま飲用される飲料であることが好ましい。
【0038】
また、本実施形態の飲料は、非アルコール飲料であることが好ましい。非アルコール飲料とは、アルコールを実質的に含有しない飲料をいい、具体的にはエタノールなどのアルコールの含有量が1.0体積/体積%未満である飲料を意味する。
【0039】
[容器]
本実施形態の飲料に用いられる容器は、ガラス、紙、プラスチック(ポリエチレンテレフタレート等)、アルミ、およびスチール等の単体もしくはこれらの複合材料又は積層材料からなる密封容器が挙げられる。また、容器の種類は、特に限定されるものではないが、たとえば、ペットボトル、アルミ缶、スチール缶、紙パック、チルドカップ、瓶等が挙げられる。飲料を外観から視認できる観点からは、ペットボトルが好ましい。
【0040】
飲料の容量としては、特に限定されないが、容量としては、特に限定されないが、例えば、好ましくは100mL~2000mL、好ましくは150mL~1500mLであり、より好ましくは200mL~1000mlである。飲み切りやすい点からは、100~500mlがより好ましい。
【0041】
容器詰めされた飲料の加熱滅菌処理の方法は、特に限定されないが、日本国内においては食品衛生法の規定に従って、加熱滅菌処理される。加熱殺菌は、例えば、65℃で10分間と同等以上の殺菌価を有する加熱殺菌により行うことができる。加熱殺菌の方法は特に限定されず、通常のプレート式殺菌、チューブラー式殺菌、レトルト殺菌等の方法を採用することができる。具体的には、上記のレトルト殺菌法は、高温で短時間殺菌した後、無菌条件下で殺菌処理された保存容器に充填する方法(UHT殺菌法)と、調合液を缶等の保存容器に充填した後、レトルト処理を行う方法である。
【0042】
<飲料の製造方法>
本実施形態の飲料の製造方法は、乳と、プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmとなるように調製する工程を含む。プロピオン酸エチル(a)およびテルピノレン(b)の濃度は、単体またはこれを含む香料を添加する等して公知の方法で調整される。
これにより、乳を含む飲料における乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減できる。また、本実施形態の飲料が炭酸ガスを含む場合は、乳を含む飲料における乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減するとともに、飲料のガス抜けを抑制することもできる。
なお、各香気成分の配合方法、混合方法、含有量の調製方法等は公知の方法とすることができる。
【0043】
<飲料の風味改善方法>
本実施形態の飲料の風味改善方法は、乳を含有する飲料の風味改善方法であって、
プロピオン酸エチル(a)0.01~50ppmおよび/またはテルピノレン(b)0.01~60ppmとなるように調製する工程を含む。
これにより、乳を含む飲料における乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減できる。また、本実施形態の飲料が炭酸ガスを含む場合は、乳を含む飲料における乳風味の良さを向上しつつも、乳の口残り感を低減するとともに、飲料のガス抜けを抑制することもできる。
なお、各香気成分の配合方法、混合方法、含有量の調製方法等は公知の方法とすることができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0045】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0046】
(1)飲料中の香気成分の定量
飲料中及び香料中の各香気成分の濃度(ppm)について、ゲステル社製DHSを用いるDHS(Dynamic HeadSpace)法により、GC/MS測定に供し、以下に示す条件で測定を行った。
装置:GC:Agilent Technologies社製 7890B
MS:Agilent Technologies社製 5977B MSD
DHS:Gerstel社製DHS,
TUBE:CarbopackB/X
カラム:DB-WAX UI 0.25mm×30m×0.25μm
注入法:スプリットレス
キャリアガス流量:He 1ml/分
温度条件:40℃(2分)~8℃/分→240℃(10分)
イオン源温度:230℃
MS条件:スキャンモード
定量イオン:プロピオン酸エチルm/z=57、テルピノレンm/z=121、
マロン酸ジエチルm/z=115
香料の希釈:超純水で最終製品中濃度相当に希釈
【0047】
(2)飲料の物性
・炭酸ガス圧:京都電子工業株式会社製「GVA-700」を用いた。操作は20℃の室温で行った。
・ブリックス:飲料(20℃)について糖用屈折計(ATAGO RX-5000α)を用いて測定した。
・酸度:飲料100ml中に含まれる酸量をクエン酸に換算した場合のグラム数(無水クエン酸g/100ml)をJAS規格の酸度測定法で定められた方法に基づき測定し、算出した。
・pH:飲料(20℃)について、pHメータ(HM-30R)を用いて測定した。
【0048】
(3)官能評価
各飲料について訓練した技術者による官能試験を実施した。具体的には、5名の技術者がそれぞれ飲料(10℃)を試飲し、試飲した際に感じられる「乳風味の良さ」「乳の口残り」「スッキリ感」「後味の良さ」「おいしさ」について、以下の評価基準に従い各コントロール(対照)を4点とした7段階評価を行い、その平均値を算出した。
・評価基準
評点7:とても強い(良い)
評点6:強い(良い)
評点5:やや強い(良い)
評点4:同程度
評点3:やや弱い(劣る)
評点2:弱い(劣る)
評点1:とても弱い(劣る)
【0049】
(4)ベース液の調製
以下の表1に示す含有量となるように各原料を混合して、ベース液A~Fを調製した。
炭酸ガスは常法で圧入し、その後速やかに密閉した。
(原料)
・大豆多糖類:製造元不二製油株式会社
【0050】
【表1】
【0051】
(5)実施例および比較例
[実験1]:香気成分の種類、含有量の変動
ベース液Aを用いて、表2~7に示す含有量となるように各香気成分を混合し、飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(3)の測定及び官能評価を行った。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
【表7】
【0058】
[実験2-1]:炭酸ガス圧の変動
ベース液B(ガス圧0GV)を用いて、各香気成分および炭酸ガスを混合し、表8~11に示す飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(3)の測定及び官能評価を行った。結果を表8~11に示す。
【0059】
【表8】
【0060】
【表9】
【0061】
【表10】
【0062】
【表11】
【0063】
[実験2-2]:炭酸ガス圧の変動
ベース液Bを用いて、各香気成分および炭酸ガスを混合し、表12に示す飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(3)の測定及び官能評価を行った。結果を表12に示す。ただし、対照は、ベース液Bにガス圧が0,1.5,2.5,3.5GVとなるようにそれぞれ炭酸ガスを混合したものを用い、ガス圧が同じ飲料を対照とした。
【0064】
【表12】
【0065】
さらに、実施例32の飲料について、10分間放置した後のガスの抜け感を評価したところ、実施例32の飲料は、対照よりも、炭酸の泡の刺激によって目立たなくなっていた甘さ(特に、のっぺりとした甘さ)が、ある程度感じられにくく、すっきりとした印象であった。一方で、香気成分を含有していない水準(対照)では、炭酸ガスが抜け、甘さが目立ち、舌に後残りが感じられた。
【0066】
[実験3]:SNF量の変動
ベース液C、Dをそれぞれ用いて、各香気成分の含有量を混合し、表13~14に示す飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(3)の測定及び官能評価を行った。結果を表13~14に示す。
【0067】
【表13】
【0068】
【表14】
【0069】
[実験4]:ブリックス値の変動
ベース液E,Fをそれぞれ用いて、各香気成分を混合し、表15~16に示す飲料を得た。得られた飲料について、上記(1)~(3)の測定及び官能評価を行った。結果を表15~16に示す。
【0070】
【表15】
【0071】
【表16】