(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125610
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】プラントの信頼性評価システム、プラントの信頼性評価方法、および、プラントの信頼性評価プログラム
(51)【国際特許分類】
G21C 17/00 20060101AFI20230831BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G21C17/00 110
G21D1/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029812
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】和田 陽一
(72)【発明者】
【氏名】大城戸 忍
(72)【発明者】
【氏名】太田 信之
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮介
(72)【発明者】
【氏名】河野 尚幸
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075BA03
2G075CA04
2G075CA07
2G075CA08
2G075CA13
2G075CA14
2G075DA07
2G075DA14
2G075EA09
2G075FB08
2G075FC07
2G075FC17
(57)【要約】
【課題】供用期間中検査により機器の信頼性を向上させる。
【解決手段】プラントの信頼性評価システムSは、運転中のプラントPの環境情報を検知する検知部511と、運転中の環境情報、プラントPを構成する機器の重要性情報に基づき、プラントPを構成する機器の健全性を常時監視する健全性監視部514と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転中のプラントの環境情報を検知する検知部と、
運転中の前記環境情報、当該プラントを構成する機器の重要性情報に基づき、当該プラントを構成する前記機器の健全性を常時監視する健全性監視部と、
を備えることを特徴とするプラントの信頼性評価システム。
【請求項2】
前記プラントは、原子炉圧力容器を含む発電プラントであり、
前記検知部が検知する前記環境情報は、運転中の前記原子炉圧力容器の炉水に含まれる化学物質の種類及び濃度、材料の種類、並びに、建設時の施工データのうち何れかを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項3】
前記健全性監視部による運転中の前記機器の健全性評価結果に基づき、前記機器に対する予防保全を指示する予防保全部を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項4】
前記予防保全部による前記機器の腐食に対する予防保全指示、および、前記健全性監視部による前記機器の健全性評価結果に基づき、前記プラントに対する修繕計画を立案するライフサイクルマネジメント部を備える、
ことを特徴とする請求項3に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項5】
前記機器は、制御棒の挿入と炉内構造物に関連するものである、
ことを特徴とする請求項2に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項6】
前記機器は、原子炉圧力容器、シュラウド、シュラウドサポート、ジェットポンプ、格子板、燃料支持板、安全重要度、及び、発電重要度が閾値よりも高い設備同士をつなぐ主要配管の何れかである、
ことを特徴とする請求項2に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項7】
前記機器は、構造物、溶接線および配管の何れかを含んで構成される、
ことを特徴とする請求項2に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項8】
前記プラントの定期点検情報および/または規格基準情報の入力を受け付ける定期点検情報受付部、
を更に備え、
前記健全性監視部は、運転中の前記環境情報、当該プラントを構成する機器の重要性情報、前記プラントの定期点検情報または/および規格基準情報に基づき、当該プラントを構成する前記機器の健全性を常時監視する、
ことを特徴とする請求項1に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項9】
前記プラントを構成する機器の重要性を分類する重要度分類部、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のプラントの信頼性評価システム。
【請求項10】
検知部が、運転中のプラントの環境情報を検知するステップと、
健全性監視部が、運転中の前記環境情報、当該プラントを構成する機器の重要性に基づき、当該プラントを構成する前記機器の健全性を常時監視するステップと、
を実行することを特徴とするプラントの信頼性評価方法。
【請求項11】
コンピュータが、
運転中のプラントの環境情報を検知する手順、
運転中の前記環境情報、当該プラントを構成する機器の重要性情報に基づき、当該プラントを構成する前記機器の健全性を常時監視する手順、
を実行するためのプラントの信頼性評価プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントの信頼性評価システム、プラントの信頼性評価方法、および、プラントの信頼性評価プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント、福島廃止措置及び再処理設備などの原子力設備に向けて、系統及び機器の信頼性をベースとした保全手法が求められている。
【0003】
特許文献1には、テンプレート内容の見直しにより、利便性の高い運用が期待できる設備管理支援システムの発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国で用いられている手法では、供用期間中検査(ISI:In Service Inspection)の結果を反映した系統及び機器の劣化評価に長期間と大きなリソースが払われるという課題がある。
【0006】
震災後に原子炉規制委員会が参照する米国の原子炉監督プロセス(ROP:Reactor Oversight Process)では、原子力発電所全体の健全性を常時監視することが必要となる。40年を超える運転に向けては、従来の機器だけでなく構造材、溶接線など大型構造物の信頼性の常時監視が必要である。
【0007】
そこで、本発明は、供用期間中検査と原子力設備の運転パラメータを同時に活用することにより、従来の機器だけでなく構造材、溶接線などの大型構造物を含む機器の信頼性(ER:Equipment Reliability)を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記した課題を解決するため、本発明のプラントの信頼性評価システムは、運転中のプラントの環境情報を検知する検知部と、運転中の前記環境情報、当該プラントを構成する機器の重要性情報に基づき、当該プラントを構成する前記機器の健全性を常時監視する健全性監視部と、を備えることを特徴とする。
【0009】
本発明のプラントの信頼性評価方法は、検知部が、運転中のプラントの環境情報を検知するステップと、健全性監視部が、運転中の前記環境情報、当該プラントを構成する機器の重要性に基づき、当該プラントを構成する前記機器の健全性を常時監視するステップと、を実行する。
【0010】
本発明のプラントの信頼性評価プログラムは、コンピュータが、運転中のプラントの環境情報を検知する手順、運転中の前記環境情報、当該プラントを構成する機器の重要性情報に基づき、当該プラントを構成する前記機器の健全性を常時監視する手順、を実行する。
その他の手段については、発明を実施するための形態のなかで説明する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、供用期間中検査と原子力設備の運転パラメータを同時に活用することにより、従来の機器だけでなく構造材、溶接線などの大型構造物を含む機器の信頼性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る原子力発電プラントの機器の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図である。
【
図2】原子力発電プラントの信頼性評価システムの構成図である。
【
図6】原子力発電プラントの信頼性評価システムの機能ブロック図である。
【
図7】原子力発電プラントの溶接線の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図である。
【
図8】原子力発電プラントの配管の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図である。
【
図9】比較例の定期点検の処理を示すフローチャートである。
【
図10】比較例の原子力発電プラントの機器の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以降、比較例を実施するための形態を
図9と
図10を参照して説明し、本発明を実施するための形態を、
図1から
図8を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一の構成については、同一の符号を付して説明を適宜省略する。
【0014】
《比較例の動作》
図9は、比較例の定期点検の処理を示すフローチャートである。この定期点検の処理は、原子力プラントの運転を停止して行われる。
検査者は、定期点検中の検査を開始する(ステップS40)。比較例では、原子炉の健全性に関わる構造材、溶接線などは別途に検査して評価している。検査者は、検査結果を評価して(ステップS41)、検査周期を設定する(ステップS42)。
【0015】
次に検査者は、設備/機器を交換して(ステップS43)、大規模な修繕計画に反映する(ステップS44)。最後に検査者は、プラント寿命を評価すると(ステップS45)、
図9の処理を終了する。
【0016】
図10は、比較例の原子力発電プラントの機器の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図であり、米国の原子力発電運転協会のAP-913に基づくものである。AP-913は、発電用原子炉における運転に関わる機器・設備の信頼性、プラントのライフサイクルをマネジメントするための処理を示す図である。
【0017】
最初、管理システムは、重要度を分類すると(ステップS50)、この重要度に応じてパフォーマンスを監視する(ステップS51)。そして管理者は、この重要度に応じて継続的な機器の信頼性の改善を行う(ステップS53)。管理者は、設備/機器の予防保全を実行する(ステップS54)。予防保全が実行された設備/機器は、パフォーマンス監視処理(ステップS51)の対象となる。
【0018】
管理者は、パフォーマンスの監視結果に基づき、設備/機器の是正措置を行う(ステップS52)。そして、是正措置の結果はパフォーマンスの監視処理(ステップS51)と、継続的な機器の信頼性の改善処理(ステップS53)にフィードバックされる。
【0019】
最後に、継続的な機器の信頼性の改善処理(ステップS53)と、是正措置(ステップS52)と、パフォーマンスの監視処理(ステップS51)に基づき、管理者はライフサイクルマネジメントを実行する(ステップS55)。
【0020】
《本実施形態の動作と構成》
本実施形態では、従来のAP913の考え方に構造材や大型構造物の健全善性評価を導入し、発電所全体の信頼性を可視化する。
【0021】
40年を超える運転に向けては、従来の機器だけでなく構造材、溶接線など大型構造物の信頼性の常時監視が可能であり、最適な検査、設備交換、修繕の大規模工事に反映して、信頼性を担保しつつコストを最適化することができる。
【0022】
図1は、本実施形態に係る原子力発電プラントの機器の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図である。
図2に示す信頼性評価システムSは、構造物を重要度で分類する(ステップS10)。構造物の重要度は、炉内の安全系と、炉内燃料の健全性と、放射性物質の系統外への放出に影響する、また構造物の重要度には、法律で決まっているものだけでなく、従来の点検結果や、運転条件において、接触する流体、運転中の原子炉圧力容器の炉水に含まれる化学物質の種類及び濃度などを影響因子とする。
【0023】
ステップS10にて分類された構造物の種類には、原子炉圧力容器、シュラウド、シュラウドサポート、ジェットポンプ、格子板など炉内構造物と制御棒の挿入に関連する機器、タービンの車室、軸受け、復水器、発電機及び水素供給設備、旧復水系の熱交換器、燃料支持板、安全重要度、及び、発電重要度が閾値よりも高い設備同士をつなぐ主要配管などがある。なお原子力施設には、燃料加工工場、核燃料サイクル工場、放射性廃棄物処分場などが含まれる。
【0024】
ステップS11にて、信頼性評価システムSは、構造物の健全性を監視する。健全性の監視とは、以前の検査結果とプラントPの運用状態、維持規格、基準、論文などの従来の知見から、構造物の現在の信頼性を評価するものである。信頼性評価システムSは更に、プラントPの定期点検情報に基づき、構造物の健全性を監視してもよい。
【0025】
ステップS10にて分類された構造物の種類に基づき、信頼性評価システムSは、継続的に機器の信頼性を改善する(ステップS13)。具体的にいうと、信頼性評価システムSは、検査と緩和を実行する(ステップS14)。信頼性評価システムSは、検査にて、検査結果、維持規格、法律、定期点検の工程を踏まえて、信頼性を確保しつつコストを最小化する点検頻度と、検査手法を選定する。信頼性評価システムSは、緩和にて、作業員の端末6に対して、応力緩和または/および環境緩和を指示する(ステップS14)。これを受けて作業員は、構造物に対して応力緩和または/および環境緩和を実行する。
【0026】
信頼性評価システムSは、構造物の健全性の監視結果に基づき、運用方法を対策する(ステップS12)。ここで運用方法の対策とは、プラントPの運転及び運用方法の改善、サンプリング強化、緩和技術の運転変更などをいう。
【0027】
信頼性評価システムSは、健全性の監視結果と、運用方法の対策結果と、継続的な構造物の信頼性改善結果に基づき、修繕計画を適正化する(ステップS15)。ここで修繕計画の適正化とはライフサイクルマネジメントであり、大規模な工事や点検が必要になる。そのため、信頼性評価システムSは、長期的な定期点検工程を踏まえて、構造物の信頼性を確保しつつ、コストが最小化するように適正化を行う。
【0028】
図2は、原子力発電のプラントPに対する信頼性評価システムSの構成図である。
信頼性評価システムSは、サーバ5と、使用環境情報センサ58と、腐食電位センサ4と、複数の端末6を含んで構成される。
【0029】
サーバ5は、信頼性評価システムSの機能部を具現化するコンピュータである。端末6は、サーバ5にアクセスするための入出力機器である。使用環境情報センサ58は、プラントPを構成する機器の使用環境を検知するセンサである。腐食電位センサ4は、プラントPを構成する機器の腐食環境情報を検知するセンサである。
【0030】
図3は、原子力発電のプラントPの構成図である。
プラントPは、沸騰水型の原子力発電プラントであり、原子炉圧力容器20、原子炉格納容器21、タービン22、再循環系配管23、原子炉浄化系24および複数の腐食電位測定装置を備えている。原子炉格納容器21内に設置された原子炉圧力容器20は内部に複数の燃料集合体(図示せず)を装荷した炉心25を配置している。
【0031】
2系統の再循環系は、それぞれ、再循環系配管23および再循環ポンプ26を有する。原子炉圧力容器20に接続された主蒸気配管27が、タービン22に接続される。タービン22に連絡される復水器28が、復水配管29の後、給水配管30により原子炉圧力容器20に接続される。オフガス系配管31が復水器28に接続される。オフガス系配管31が復水配管29に接続され、線量率モニタ32が主蒸気配管27の近傍に設置される。
【0032】
原子炉浄化系24は、再循環系配管23に接続された配管並びに原子炉圧力容器20の底部に接続されたドレン配管33を有し、浄化装置(図示せず)を系内に有する。原子炉浄化系24は給水配管30に接続される。
【0033】
水質測定装置34aがサンプリング配管35aによってドレン配管33に接続され、水質測定装置34bがサンプリング配管35bによって原子炉浄化系24に接続される。水質測定装置34cがサンプリング配管35cによって給水配管30に接続され、水質測定装置34dがサンプリング配管35dによって主蒸気配管27に接続される。
【0034】
腐食電位センサ4は、局所出力領域モニタ外筒管1を用いて沸騰水型原子力プラントの該当箇所に設置される。腐食電位センサ4は、原子炉圧力容器20の下部の下部プレナム36内の水質を測定するために、下部プレナム36内の対応する位置に設置されている。この場合は圧力容器下鏡8付近の腐食電位を測定するために、圧力容器下鏡付近の高さに腐食電位センサ4が設置され、その高さに腐食電位測定窓が開孔されている(図示せず)。
【0035】
局所出力領域モニタを利用した腐食電位測定では、酸素、過酸化水素などのサンプリングした水質との直接的な対応が得られない。しかし、上記のような圧力容器下鏡8付近の腐食電位測定の場合には、サンプリング配管35aを用いて炉水を採取し、水質測定装置34aで測定することができる。
【0036】
このような腐食電位の測定により、下部プレナム36内での腐食電位が目標とする値にまで低下するように、水素注入装置であるオフガス系配管31から給水に注入する水素量を調節する。原子炉圧力容器20内の炉水に注入した水素の余剰分は、主蒸気配管27、タービン22および復水器28を経てオフガス系配管31に排気される。オフガス系配管31に排気された水素の余剰分は、オフガス系配管31に設けられた再結合器(図示せず)で酸素と結合されて処理される。
【0037】
給水の水素濃度は、サンプリング配管35cでサンプリングされた給水を水質測定装置34cで測定することによって得られる。また、水素注入時の主蒸気配管27の線量率は線量率モニタ32で監視される。
【0038】
この方法では複数の腐食電位センサ4を局所出力領域モニタ外筒管1上に配置できるので、沸騰水型原子力プラントの複数の箇所に設置することによって、沸騰水型原子力プラントの構造部材に応力腐食割れ(SCC:Stress Corrosion Cracking)が発生する腐食環境を下部プレナム36内で立体的にマッピングすることができる。その結果、原子力プラントの長期的な安全性、健全性および信頼性を確保するための保全策を提供することができる。
【0039】
図4は、サーバ5のハードウェア構成図である。
サーバ5は、例えば、データセンタに設置されたコンピュータである。サーバ5は、CPU(Central Processing Unit)51、記憶部57、ROM(Read Only Memory)52、RAM(Random Access Memory)53、操作部54、表示部55及び通信部56を含んで構成される。
【0040】
CPU51は、中央処理装置であり、記憶部57に格納されたプログラム571を実行する。プログラム571は、CPU51によって実行されて、
図1に示す各処理を実行するプログラムである。
CPU61は、プログラム571を実行することにより、
図6に示した各機能部を具現化する。なお、CPU61が実行する各処理については、
図1と
図7と
図8を用いて後述する。
【0041】
記憶部57は、大容量の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどで構成される。
【0042】
RAM53は揮発性メモリであり、CPU51で実行可能な各種プログラム、入力データ、出力データ、及びパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。ROM52は不揮発性メモリであり、例えばBIOS(Basic I/O System)などが格納されている。
【0043】
操作部54は、カーソルキー、数字入力キー、及び各種機能キーなどを備えたキーボードと、マウスなどのポインティングデバイスを備えて構成される。操作部54は、キーボードで押下操作されたキーの押下信号やマウスによる操作信号を検知する。CPU51は、操作部54からの操作信号に基づいて、各種処理を実行する。
【0044】
表示部55は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のモニタディスプレイを備えて構成される。表示部55は、CPU51から入力される表示信号により各種画面を表示する。また、表示部55、及び操作部54は、タッチパネルディスプレイを採用することもできる。
【0045】
図5は、端末6のハードウェア構成図である。
端末6は、例えば、各作業者が有するタブレット端末である。端末6は、CPU61、記憶部67、ROM62、RAM63、タッチパネルディスプレイ64及び通信部66を含んで構成される。
【0046】
CPU61は、中央処理装置であり、記憶部67に格納されたプログラム671を実行する。プログラム671は、例えばブラウザであり、CPU61によって実行されて、サーバ5との間の入出力処理を実現する。
【0047】
記憶部67は、大容量の記憶装置であり、例えば、ハードディスクドライブ(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリなどで構成される。
【0048】
RAM63は揮発性メモリであり、CPU61で実行可能な各種プログラム、入力データ、出力データ、及びパラメータ等を一時的に記憶するワークエリアとして機能する。ROM62は不揮発性メモリであり、例えばBIOSなどが格納されている。
【0049】
タッチパネルディスプレイ64は、LCD等のディスプレイ上に透明なタッチパネルが重畳されたものである。タッチパネルディスプレイ64は、タッチパネルで押下操作された押下信号を検知する。CPU61は、タッチパネルディスプレイ64からの操作信号に基づいて、各種処理を実行する。そして、タッチパネルディスプレイ64は、CPU61から入力される表示信号により各種画面を表示する。
【0050】
図6は、原子力発電プラントの信頼性評価システムSの機能ブロック図である。
信頼性評価システムSは、検知部511、重要度分類部512、定期点検情報受付部513、健全性監視部514、予防保全部515、ライフサイクルマネジメント部516を備える。
検知部511は、運転中のプラントPの環境情報を検知する。検知部511が検知する環境情報は、運転中の原子炉圧力容器の炉水に含まれる化学物質の種類及び濃度、材料の種類、並びに、建設時の施工データのうち何れかを含む。
【0051】
健全性監視部514は、運転中のプラントPの環境情報、このプラントPを構成する機器の重要性情報に基づき、プラントPを構成する機器の健全性を常時監視する。なお、健全性監視部514は、更にプラントPの定期点検情報および/または規格基準情報に基づいて、プラントPを構成する機器の健全性を常時監視してもよく、限定されない。
【0052】
予防保全部515は、健全性監視部514による運転中のプラントPを構成する機器の健全性評価結果に基づき、各機器に対する予防保全を指示する。
ライフサイクルマネジメント部516は、予防保全部515による機器の腐食に対する予防保全指示、および、健全性監視部514による機器の健全性評価結果に基づき、プラントPに対する修繕計画を立案する。
【0053】
定期点検情報受付部513は、プラントPの定期点検情報および/または規格基準情報の入力を受け付ける。なお、この定期点検情報受付部513は、必須の構成要素ではない。
【0054】
重要度分類部512は、プラントPを構成する機器の重要性を分類する。なお、この重要度分類部512は必須の構成要素ではなく、機器の重要性は、手作業で分類されてもよい。
【0055】
図7は、原子力発電プラントの溶接線の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図である。
溶接線の種類には、原子炉圧力容器、シュラウド、シュラウドサポート、ジェットポンプ、格子板など炉内構造物と制御棒の挿入に関連する機器、タービンの車室、軸受け、復水器、発電機及び水素供給設備、旧復水系の熱交換器などの構造物や配管の接合部分などがある。
【0056】
信頼性評価システムSは、溶接線を重要度で分類する(ステップS20)。溶接線の重要度は、炉内の安全系、炉内燃料の健全性、放射性物質の系統外への放出に影響するか否か、法律で決まっているか否か、従来の知見、溶接方法、溶接の種類、溶接に用いた金属、溶接後の研磨などの後工程などで長期的な健全性評価に影響を与える因子、接触する流体、運転中の原子炉圧力容器の炉水に含まれる化学物質の種類及び濃度などの影響因子で決定される。
【0057】
信頼性評価システムSは、溶接線の健全性を監視する(ステップS21)。具体的にいうと、溶接線の健全性監視とは、以前の検査結果とプラントPの運用状態、維持規格、基準、論文などの従来の知見から、溶接線の現在の信頼性を評価するものである。
【0058】
ステップS20にて分類された溶接線の種類に基づき、信頼性評価システムSは、継続的に機器の信頼性を改善する(ステップS23)。具体的にいうと、信頼性評価システムSは、検査と緩和を実行する(ステップS24)。信頼性評価システムSは、検査にて、検査結果、維持規格、法律、定期点検の工程を踏まえて、信頼性を確保しつつコストを最小化する点検頻度と、検査手法を選定する。そして信頼性評価システムSは、緩和にて、応力緩和または/および環境緩和を指示する(ステップS24)。これを受けて作業員は、溶接線に対して応力緩和または/および環境緩和を実行する。
【0059】
信頼性評価システムSは、溶接線の健全性の監視結果に基づき、運用方法を対策する(ステップS22)。ここで運用方法の対策とは、プラントPの運転及び運用方法の改善、サンプリング強化、緩和技術の運転変更などをいう。
【0060】
信頼性評価システムSは、健全性の監視結果と、運用方法の対策結果と、継続的な機器の信頼性改善結果に基づき、修繕計画を適正化する(ステップS25)。ここで修繕計画の適正化とはライフサイクルマネジメントであり、大規模工事や点検が必要になる。そのため、信頼性評価システムSは、長期的な定期点検工程を踏まえて、設備と機器の信頼性を確保しつつ、コストが最小化するように適正化を行う。
【0061】
図8は、原子力発電プラントの配管の信頼性とライフサイクルマネジメントを示す図である。
配管の種類には、その配管を流れる流体の種類、材質、原子炉側、タービン側、ラド設備に設置されるか否かが有る。液体の種類とは、水、水蒸気、化学物質を含むか否かである。
【0062】
信頼性評価システムSは、配管を重要度で分類する(ステップS30)。配管の重要度分類は、炉内の安全系、炉内燃料の健全性、放射性物質の系統外への放出に影響するか否か、法律や社内規定、規格基準で決まっているか否か、放射性物質の濃度、化学物質の種類及び濃度などの環境因子などで決定される。
【0063】
信頼性評価システムSは、配管の健全性を監視する(ステップS31)。具体的にいうと、配管の健全性監視とは、以前の検査結果とプラントの運用状態、維持規格、基準、論文などの従来の知見から、配管の現在の信頼性を評価する。
【0064】
ステップS30にて分類された溶接線の種類に基づき、信頼性評価システムSは、継続的に機器の信頼性を改善する(ステップS33)。具体的にいうと、信頼性評価システムSは、検査と緩和を実行する(ステップS34)。信頼性評価システムSは、検査にて、検査結果、維持規格、法律、定期点検の工程を踏まえて、信頼性を確保しつつコストを最小化する点検頻度と、検査手法を選定する。そして信頼性評価システムSは、緩和にて、応力緩和または/および環境緩和を実行する。
【0065】
信頼性評価システムSは、溶接線の健全性の監視結果に基づき、運用方法を対策する(ステップS32)。ここで運用方法の対策とは、プラントPの運転及び運用方法の改善、サンプリング強化、緩和技術の運転変更などをいう。
【0066】
信頼性評価システムSは、健全性の監視結果と、運用方法の対策結果と、継続的な機器の信頼性改善結果に基づき、修繕計画を適正化する(ステップS35)。ここで修繕計画の適正化とはライフサイクルマネジメントであり、大規模工事や点検が必要になる。そのため、信頼性評価システムSは、長期的な定期点検工程を踏まえて、設備の信頼性を確保しつつ、コストが最小化するように適正化を行う。
【0067】
米国の原子力発電運転協会(INPO:Institute of Nuclear Power Operations)が規定する機器の信頼性になく、供用期間中検査で行っていた腐食環境、材料組成、材料の劣化データ、検査結果を機器の信頼性に取り込むことで、常時、構造物、機器、系統の劣化状況の監視を行うことが可能になり、プラントPの健全性の常時監視と、プラントライフサイクルの評価が容易となる。
【0068】
《変形例》
本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば上記した実施形態は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【0069】
上記の各構成、機能、処理部、処理手段などは、それらの一部または全部を、例えば集積回路などのハードウェアで実現してもよい。上記の各構成、機能などは、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈して実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイルなどの情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)などの記録装置、または、フラッシュメモリカード、DVD(Digital Versatile Disk)などの記録媒体に置くことができる。
【0070】
各実施形態に於いて、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0071】
S 信頼性評価システム
1 局所出力領域モニタ外筒管
20 原子炉圧力容器
21 原子炉格納容器
22 タービン
23 再循環系配管
24 原子炉浄化系
25 炉心
26 再循環ポンプ
27 主蒸気配管
28 復水器
29 復水配管
30 給水配管
31 オフガス系配管
32 線量率モニタ
33 ドレン配管
34a~34d 水質測定装置
35a~35c サンプリング配管
35d サンプリング配管
4 腐食電位センサ
5 サーバ
51 CPU
511 検知部
512 重要度分類部
513 定期点検情報受付部
514 健全性監視部
515 予防保全部
516 ライフサイクルマネジメント部
52 ROM
53 RAM
54 操作部
55 表示部
56 通信部
57 記憶部
58 使用環境情報センサ
6 端末
61 CPU
62 ROM
63 RAM
64 タッチパネルディスプレイ
66 通信部
67 記憶部