(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125614
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】印刷配線板および印刷配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 1/02 20060101AFI20230831BHJP
H05K 1/11 20060101ALI20230831BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20230831BHJP
H05K 3/24 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H05K1/02 J
H05K1/11 H
H05K3/18 Z
H05K3/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029818
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勝宗
【テーマコード(参考)】
5E317
5E338
5E343
【Fターム(参考)】
5E317AA11
5E317AA24
5E317BB01
5E317BB12
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5E317CC33
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5E343BB24
5E343DD33
5E343DD43
5E343ER16
5E343GG01
(57)【要約】
【課題】銅めっき層が貫通孔の壁面から絶縁基板の表面に亘る構成の場合にも、その銅めっき層が剥離しにくい印刷配線板、およびそのような印刷配線板の製造方法を得る。
【解決手段】印刷配線板は、絶縁基板と、前記絶縁基板の第1面に配置された第1導体層と、前記絶縁基板の第1面と反対側の第2面に配置された第2導体層と、前記第1導体層、前記絶縁基板および前記第2導体層を厚さ方向に貫通する貫通孔とを備える。印刷配線板は、また、前記貫通孔の壁面に設けられた第1めっき層と、前記第1導体層の前記第1面と反対側の面、前記第1めっき層の前記壁面側と反対側の面および第2導体層の前記第2面と反対側の面に亘って設けられた一つながりの第2めっき層を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、第1導体層と、第2導体層と、貫通孔と、第1めっき層と、第2めっき層とを有しており、
前記第1導体層は、前記絶縁基板の第1面に配置されており、
前記第2導体層は、前記絶縁基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面に配置されており、
前記貫通孔は、前記第1導体層、前記絶縁基板、前記第2導体層を厚さ方向に貫いており、
前記第1めっき層は、前記貫通孔の壁面に設けられており、前記第1導体層および前記第2導体層に接する部分がそれぞれ端部となっており、
前記第2めっき層は、前記第1導体層、前記第1めっき層、前記第2導体層を、一繋がりで覆う、
印刷配線板。
【請求項2】
前記第1めっき層の前記端部は、前記第1導体層側および前記第2導体層側の少なくとも一方が先細り状である、請求項1に記載の印刷配線板。
【請求項3】
前記端部は、前記第1導体層側および前記第2導体層側が先細り状である、請求項2に記載の印刷配線板。
【請求項4】
前記第1めっき層の前記絶縁基板側の面を第3面、該第3面とは反対の面を第4面とした場合に、前記第1めっき層の前記端部は、前記第4面が湾曲している、請求項3に記載の印刷配線板。
【請求項5】
前記第2めっき層は、前記第1導体層、前記第1めっき層および第2導体層の各表面に沿うように配置されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の印刷配線板。
【請求項6】
絶縁基板の両面にそれぞれ金属膜を有する導体付き基板を準備する工程と、
前記導体付き基板に貫通孔を形成する工程と、
前記導体付き基板の前記金属膜の表面にレジスト層を形成する工程と、
前記貫通孔の壁面に第1銅めっき膜を形成する工程と、
前記導体付き基板から前記レジスト層を除去した後、めっき処理を行い、前記導体付き基板の前記金属膜上、前記第1銅めっき膜上に、前記金属膜から前記第1銅めっき膜にまで一繋がりを成す第2銅めっき膜を形成する工程と、
を含む、印刷配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、印刷配線板および印刷配線板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、銅張積層板に貫通孔を形成し、その貫通孔の壁面とともに、当該銅張積層板の表面に電解銅めっき層を形成した印刷配線板が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたプリント配線板100は、
図4に示すように、銅張積層板(絶縁基板を含む)101に形成した貫通孔103の壁面103Aに、一次銅めっき層105、中間銅めっき層107、二次銅めっき層109がこの順に配置された構成となっている。ここで、一次銅めっき層105は、貫通孔103の壁面103Aから表層銅箔101aにまで亘るように一体的に形成されている。言い換えると、一次銅めっき層105は、貫通孔103の壁面103Aを成す銅張積層板101の絶縁基材101bと、これとは材質を異にする表層銅箔101aとに亘る配置である。この場合、銅張積層板101の絶縁基材101bと表層銅箔101aとは、材質に起因して熱膨張率などの物性が異なる。このような要因から、一次銅めっき層105が、貫通孔103の壁面103Aから表層銅箔101aにまで亘るような構成においては、一次銅めっき層105が貫通孔103の壁面103Aの領域で剥離しやすいという問題を有している。
【0005】
本開示の目的は、銅めっき層が貫通孔の壁面から絶縁基板の表面に亘る構成の場合にも、その銅めっき層が剥離しにくい印刷配線板、およびそのような印刷配線板の製造方法を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る印刷配線板は、
絶縁基板と、第1導体層と、第2導体層と、貫通孔と、第1めっき層と、第2めっき層とを備える。
前記第1導体層は、前記絶縁基板の第1面に配置されている。前記第2導体層は、前記絶縁基板の前記第1面とは反対側に位置する第2面に配置されている。前記貫通孔は、前記第1導体層、前記絶縁基板、前記第2導体層を厚さ方向に貫いている。前記第1めっき層は、前記貫通孔の壁面に設けられており、前記第1導体層および前記第2導体層に接する部分がそれぞれ端部となっている。前記第2めっき層は、前記第1導体層、前記第1めっき層、前記第2導体層を、一繋がりで覆う。
【0007】
また、本開示の他の一の態様に係る印刷配線板の製造方法は、絶縁基板の両面にそれぞれ金属膜を有する導体付き基板を準備する工程と、前記導体付き基板に貫通孔を形成する工程と、前記導体付き基板の前記金属膜の表面にレジスト層を形成する工程と、前記貫通孔の壁面に第1銅めっき膜を形成する工程と、前記導体付き基板から前記レジスト層を除去した後、めっき処理を行い、前記導体付き基板の前記金属膜上、前記第1銅めっき膜上に、前記金属膜から前記第1銅めっき膜にまで一繋がりを成す第2銅めっき膜を形成する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一実施形態に係る印刷配線板によれば、当該印刷配線板が、貫通孔の壁面から絶縁基板の表面に亘る銅めっき層を有する場合にも、その銅めっき層の剥離が発生しにくい。
また、本開示の一実施形態に係る印刷配線板の製造方法によれば、銅めっき層が貫通孔の壁面から絶縁基板に亘る構成の場合にも銅めっき層の剥離が発生しにくい印刷配線板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る印刷配線板の断面図である。
【
図3A】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3B】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3C】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3D】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【
図3E】第1の実施形態の印刷配線板の製造方法を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示による印刷配線板を実施するための形態(以下、「実施形態」と記載する)について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示による印刷配線板が限定されるものではない。また、各実施形態は、処理内容を矛盾させない範囲で適宜組み合わせることが可能である。
【0011】
また、以下に示す実施形態では、「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」といった表現が用いられる場合があるが、これらの表現は、厳密に「一定」、「直交」、「垂直」あるいは「平行」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、例えば、製造精度、設置精度などのずれを許容するものとする。
【0012】
また、以下で参照する各図は、説明の便宜上の模式的なものである。したがって、各図において細部は省略されることがあり、また、各図中の部材の寸法は、実際の構成部材の寸法及び寸法比率などを忠実に表したものではない。
【0013】
図1は、第1の実施形態に係る印刷配線板10Aの断面図である。
図2は、
図1の点線で囲まれた角部の拡大図である。
【0014】
本明細書では、印刷配線板10Aの厚み方向をZ方向とするXYZ直交座標系で印刷配線板10Aの各部の向きを説明する。また、本明細書では、印刷配線板10Aおよび印刷配線板10Aを構成する各層の+Z方向を向く方向を「上」または「上面」とした表現をすることがある。-Z方向を向く方向を「下」または「下面」とした表現をすることがある。また、平面視は、特に断りが無い限り、Z方向に見ることを指す。
【0015】
印刷配線板10Aは、絶縁基板1を有する。絶縁基板1の第1面S1に第1導体層2が配置されている。
絶縁基板1の第1面S1とは反対側の第2面S2に、第2導体層3が配置されている。
印刷配線板10Aは、第1導体層2、絶縁基板1および第2導体層3を厚さ方向(Z方向)に貫通する貫通孔11を備える。
貫通孔11は、第1導体層2側に開口部11aおよび第2導体層3側に開口部11bを有する。
【0016】
上記に従い、以下の説明において、
図1に示す絶縁基板1の第1面S1を上面、第2面S2を下面ということがある。
【0017】
本明細書において、「面に層が配置される」という表現は、当該面に当該層が接するように直接設けられる態様の他に、当該面に別の層を介して当該層が設けられる場合を含む。
【0018】
印刷配線板10Aでは、貫通孔11の壁面S3に第1めっき層4が設けられている。
第2めっき層5は、第1導体層2の第1面S1側と反対側の面S4、第1めっき層4の壁面S3側と反対側の面S5および第2導体層3の第2面S2側と反対側の面S6に亘って一繋がりとなっている。
第1めっき層4は、貫通孔11の壁面S3に設けられており、第1導体層2および第2導体層3に接する部分がそれぞれ端部4Aとなっている。
【0019】
印刷配線板10Aによれば、当該印刷配線板10Aが、貫通孔11の壁面S3から絶縁基板11の第1面S1および第2面S2に亘る銅めっき層(ここでは、第2めっき層5)を有する場合においても、その銅めっき層(第2めっき層5)の剥離が発生しにくい。
この場合、第2めっき層5は、第1めっき層4を貫通孔11内の他、絶縁基板1の第1面S1付近、第2面S2付近で覆う配置となっている。
【0020】
なお、貫通孔11は、第1導体層2、絶縁基板1、第2導体層3を厚さ方向に、この順に貫いている。
貫通孔11は、第1導体層2、絶縁基板1、第2導体層3を厚さ方向に段差無く貫いている。
第2めっき層5は、第1導体層2、第1めっき層4、第2導体層5を、一繋がりで覆うように配置されている。
【0021】
図4に示した従来のプリント配線板100の構成では、銅張積層板(絶縁基板を含む)に形成された貫通孔103の壁面103Aに一次銅めっき層105が設けられている。
その一次銅めっき層105は、前述のように、貫通孔103の壁面103Aから表層銅箔101aにまで亘るように一繋がりの配置となっている。
【0022】
プリント配線板100に、貫通孔103の壁面103Aから表層銅箔101aにまで亘るように一繋がりの一次銅めっき層105を設けるのは、貫通孔103の開口部付近にめっき膜の隙間などが存在することによって、水分やめっき液などの浸入による信頼性の低下を抑えることができるとされているからである。
以下、一次銅めっき層105のことをスルーホール導体という場合がある。
【0023】
近年、プリント配線板100は、5G通信に使用される基地局用のマザーボードに用いられている。
マザーボードは、高周波帯(例えば、GHz)の電波が多数のアンテナに同時に入出力する機能を発現する。
このため、このようなアンテナに用いられるマザーボードは高積層の構成であり、従来の4G以下の通信用基地局に用いられるものに比べて2倍以上の厚みとなる場合がある。
【0024】
こうした厚みの厚いマザーボードにおいて、貫通孔103付近に形成されるスルーホール導体が
図4に示したような構成である場合、スルーホール導体の中の一次銅めっき層105が貫通孔103の壁面103Aから剥離しやすい。
【0025】
その理由は、一次銅めっき層105と貫通孔103の壁面103Aとは材質が異なるからである。
つまり、一次銅めっき層105と貫通孔103の壁面103Aとは、互いに異種材料であることから、これらの部材間ではそもそも強固に接着された状態になりにくい。
また、一次銅めっき層105と貫通孔103の壁面103Aとは、互いに異種材料であることに起因して、熱膨張率、弾性率が大きく異なる。
【0026】
このことから、温度が変化する環境下では両者の界面に応力が発生しやすい。
また、用途によっては、スルーホール導体を構成するめっき層の厚みを厚くする場合がある。
ここで、
図4に示す断面図において、一次銅めっき層105の表面に中間銅めっき層107のみが設けられた構造を想定する。
【0027】
スルーホール導体の中で厚みを厚くした部分は、
図4では、中間銅めっき層107にあたる。
この場合、中間銅めっき層107は、一次銅めっき層105とは形状が異なる。
中間銅めっき層107は、貫通孔103の壁面103Aに沿う形状である。
中間銅めっき層107は、いわゆる筒状の単純な形状である。
中間銅めっき層107は、銅張積層板(絶縁基板)の表層側に曲がっておらず、貫通孔103の開口部付近の位置が端部となっている。
【0028】
厚みの厚いマザーボードにおいては、中間銅めっき層107が筒状の単純な形状であるため、その中間銅めっき層107は、一次銅めっき層105からはがれやすい。
これは、
図4に示すように、中間銅めっき層107の端部が平坦であるため、その端部は角部を有しており、その角部の先端に応力が集中しやすいためと考えられる。
【0029】
厚みの厚い印刷配線板10Aを試作してみると、中間銅めっき層107が一次銅めっき層105からはがれやすいという傾向は、
図4に示すように、中間銅めっき層107の表面に二次銅めっき層111が設けられる構成であっても変わらない。
【0030】
これに対し、本開示の印刷配線板10Aは、まず、貫通孔11の壁面S3上から絶縁基板1の第1面S1および第2面S2の上下の両方向に亘る第2めっき層5が、貫通孔11の壁面S3側に設けた第1めっき層4に接した構成となっている。
【0031】
また、印刷配線板10Aでは、貫通孔11の壁面S3の領域において、貫通孔11の壁面S3に近いところに、貫通孔11の壁面S3の長さにほぼ相当する第1めっき層4が配置されている。
言い換えると、貫通孔11の壁面S3から絶縁基板1の第1面S1および第2面S2の上下の両方向に亘る第2めっき層5が第1めっき層4を介して貫通孔11の壁面S3上に配置されている。
つまり、第2めっき層5が貫通孔11の壁面S3ではなく、第1めっき層4に接する構成である。
印刷配線板10Aでは、第2めっき層5がこれよりも面積の小さい第1めっき層4を3方向から把持する配置である。
【0032】
ここで、3方向というのは、貫通孔11の壁面S3に交差する1つの方向と、壁面S3に沿う第1面S1、第2面S2の2つの方向である。
面積の小さいめっき層(第1めっき層4)が、これよりも面積の大きいめっき層(第2めっき層5)によって囲まれる配置となっている。
【0033】
第2めっき層5は、第1導体層2および第2導体層3を含めて、絶縁基板1を3方向から第1めっき層4を挟む構造であるため、第2めっき層5は第1めっき層4から剥がれにくい。
また、第2めっき層5は第1めっき層4とともに貫通孔11の壁面S3からも剥がれにくい。
【0034】
第2めっき層5は、絶縁基板1の第1面S1上において、第1導体層2に重なっている。
言い換えると、第2めっき層5は、絶縁基板1の第1面S1上において第1導体層2上に設けられている。
【0035】
第2めっき層5は、絶縁基板1の第2面S2上において、第2導体層3に重なっている。
言い換えると、第2めっき層5は、絶縁基板1の第2面S2上において、第2導体層3上に設けられている。
【0036】
第1導体層2、第2導体層3、第1めっき層4および第2めっき層5は、互いに接する界面では金属的に結合している。ここで、金属的に結合しているとは、電解めっき法、無電解めっき法等により積層された2層の金属膜が形成されたときに現れる結合状態のことを意味する。
【0037】
印刷配線板10Aは以下のように説明することができる。
以下の説明においては、面S4を第1導体層2の表面S4、面S5を第1めっき層4の表面S5、面S6を第2導体層3の表面S6という場合がある。
【0038】
ここで、
図1に示す印刷配線板10Aにおいては、第1めっき層4は、具体的には、貫通孔11の壁面S3に設けられている。
また、印刷配線板10Aにおいて、第1導体層2の表面S4と、第1めっき層4の表面S5と、第2導体層3の表面S6は、隣接する配置となっている。第2めっき層5は、表面S4上、表面S5上および表面S6上でが一繋がりとして配置されている。
【0039】
印刷配線板10Aは、上記構成により、貫通孔11の壁面S3に第1めっき層4と第2めっき層5とを有する。
この場合、第1めっき層4および第2めっき層5は、スルーホール導体層14Aを構成する。
また、絶縁基板1の第1面S1は、表層導体層12A(第1表層導体層12A)を有する。
表層導体層12A(第1表層導体層12A)は、第1導体層2と第2めっき層5とを有する。
絶縁基板1の第2面S2は、表層導体層13A(第2表層導体層13A)を有する。
表層導体層13A(第2表層導体層13A)は、第2導体層3と第2めっき層5とを有する。
第2めっき層5が、一繋がりの連続層として、表層導体層12A、スルーホール導体層14A、および表層導体層12Bの最表層を構成している。
【0040】
このため、応力が掛かりやすい角部CAにおいて耐クラック性が向上し、信頼性の向上に貢献できる。ここで、角部CAは、
図1に示すように、印刷配線板10Aの一部を断面視したときに、貫通孔11の開口部を形成する部分のことである。
【0041】
また、印刷配線板10Aでは、
図1および
図2に示しているように、第1めっき層4の端部4Aは、第1導体層2側および第2導体層3側の少なくとも一方が先細り状であるのがよい。
【0042】
とりわけ、端部4Aは、第1導体層2側および第2導体層3側が先細り状であるのがよい。
【0043】
言い換えると、第1めっき層4の絶縁基板1側の面を第3面S5a、第3面S5aとは反対の面を第4面S5bとした場合に、第1めっき層4の端部4Aは第4面S5bが湾曲しているのがよい。
【0044】
つまり、第1めっき層4の端部4Aは、第4面S5b側が湾曲面を成しているのがよい。
さらに言い換えると、
図1に示す印刷配線板10Aでは、絶縁基板1の厚さ方向(Z方向)の断面において、第1めっき層4の端部4Aにおける第4面S5bの輪郭形状が、貫通孔11の第1導体層2側および第2導体層3側の開口部11a、11bから貫通孔11の内側に掛けて、それぞれ第1の円弧Ar1の形状を成しているのがよい。
【0045】
さらにまた、第2めっき層5は、第1導体層2、第1めっき層4および第2導体層3の各表面に沿うように配置されているのがよい。
ここで、第2めっき層5の第1めっき層4側の表面を第5面S7a、第5面S7aとは反対側の表面を第6面S7bとする。
【0046】
第2めっき層5の第5面S7aのうち、第1めっき層4の端部4Aに接した表面は、第1めっき層5の端部4Aの形状に沿う形状となっているのがよい。
特には、第2めっき層5の第5面S7aのうち、第1めっき層5の端部4Aの部分は、表面が湾曲しているのが良い。
【0047】
さらに、印刷配線板10Aを構成する絶縁基板1の厚さ方向(Z方向)の断面において、第2めっき層5の第5面S7aのうち、第1めっき層5の端部4Aの部分は、輪郭形状が丸みを帯びた形状であるのがよい。
【0048】
例えば、第2めっき層5の第5面S7aのうち、第1めっき層5の端部4Aの部分は、好適には、
図2に示すような第2の円弧Ar2の形状であるのがよい。また、第2めっき層5の第6面S7bも第2の円弧Ar2の形状であるのがよい。
【0049】
上述したように、印刷配線板10Aを構成する第1めっき層4の端部4Aが湾曲した形状であると、第1めっき層4の端部4A付近において、第2めっき層5が重ねられたことで発生する応力を分散させることができる。
【0050】
例えば、第1めっき層4の端部4Aが、貫通孔11の壁面S3に沿う方向と、絶縁基板1の第1面S1に沿う方向との間が直角である場合には、第1めっき層4の端部4Aの角に応力が集中しやすい。
このような理由から、第1めっき層4の端部4Aが湾曲した形状であると、印刷配線板10Aが、温度が変化する環境に置かれたときに、第2めっき層5の熱膨張に起因して発生する応力を軽減することが可能になる。
【0051】
これにより、第2めっき層5の角部CAへの応力集中が抑制され、耐クラック性が向上し、第2めっき層5が剥がれにくくなる。その結果、印刷配線板10Aの信頼性を向上させることができる。
【0052】
この場合、第1めっき層4の端部4Aにおける第1の円弧Ar1の曲率半径r1と、端部4Aに対応する第2めっき層5の第2の円弧Ar2の曲率半径r2とは、r2/r1比が1以上2以下であるのがよい。
【0053】
第2めっき層5の第5面S7a側の円弧の形状は、第1めっき層4の第4面S5bの円弧Ar1と同じであるのがよい。
【0054】
さらに、第1めっき層4の第4面S5bの第1の円弧Ar1と第2めっき層5の第6面S7bの第2の円弧Ar2とは、曲率半径が同じであるのがよい。
ここで、曲率半径が同じというのは、曲率半径の差を平均値で除したときの値が10%以内にあるという意味である。
【0055】
平均値は、第1の円弧Ar1の曲率半径と第2の円弧Ar2の曲率半径とから求められる値である。
また、第2めっき層5は、第1導体層2上から第1めっき層4上を経て、第2導体層3上に至る範囲で同じ厚みであるのがよい。
【0056】
この場合、同じ厚みというのは、第2めっき層5の中で最小厚みをt1、最大厚みをt2としたときに、t1-t2の絶対値をt1とt2との間で求まる平均値で除したときの値が10%以内にあるという意味である。
【0057】
さらにまた、第1の円弧Ar1と第2の円弧Ar2は、同じ中心点を有していてもよい。
つまり、第1の円弧Ar1と第2の円弧Ar2とは、これらの円弧をもとにそれぞれ円を描いたときに、それらの円が同心円であってもよい。
【0058】
上記では、第1めっき層4と第1めっき層5との関係を述べたが、本開示の配線基板10Aは、必要に応じて、第2めっき層5の表面にこれを覆う第3めっき層を有してもよい。
【0059】
本開示の印刷配線板10Aについては、上述したように、貫通孔11の壁面S3に第1めっき層4を設け、この表面に第2めっき層5を配置したものである。
ここで、第2めっき層5は、絶縁基板1の両面に設けた第1導体層2および第2導体層3を第1めっき層4とともに、3方向から把持する第2めっき層5を有する配置である。
このような構成により、第2めっき層5は剥がれにくい。
こうした構成は厚みの厚い印刷配線板に好適なものとなる。
【0060】
印刷配線板10Aの厚みとしては、5mm以上を挙げることができる。
具体的には、5mm以上15mm以下、7mm以上15mm以下である。
【0061】
導体層は、第1導体層2、第2導体3の他、絶縁基板1の内部に、これらの第1導体層2、第2導体層3と平行に配置された複数の内部導体層を有する。
本開示はこのような場合にも好適なものとなる。
導体層の積層数としては30層以上、50層以上であるのがよい。
導体層の上限としては、上記した印刷配線板10Aの厚みの上限を考慮したときに100層以下であるのがよい。
【0062】
〔印刷配線板の製造方法〕
次に、実施形態の印刷配線板の製造方法について、
図3A~
図3Eを基に説明する。
【0063】
本実施形態に係る印刷配線板10Aの製造方法は、下記の各工程の前後に、任意の工程を有してもよい。各部材の材質は上に説明したとおりである。
【0064】
まず、
図3Aに示すように、導体付き基板Pcに貫通孔11を形成する。貫通孔11の形成は、従来公知の方法で行うことができる。例えば、ドリルを用いるのがよい。またレーザを用いてもよい。
ここで、導体付き基板Pcの導体は、後のパターン加工後に第1導体層2、第2導体層3となる金属膜Pcaである。
【0065】
次に、
図3Bに示すように、貫通孔11を形成した導体付き基板Pcの表面にレジスト層Reを形成する。
【0066】
レジスト層Reの形成は、従来公知の方法で行うことができる。
例えば、ドライフィルムのめっきレジストを用いる。
【0067】
次に、
図3Cに示すように、レジスト層Reを形成した導体付き基板Pcにめっき処理を行い、第1めっき層4となる第1銅めっき膜4aを形成する。
【0068】
この工程では、レジスト層Reが導体付き基板Pcの表面に形成されているため、第1銅めっき膜4aは、主に、レジスト層Reが形成されていない貫通孔11の壁面S3に形成される。
このめっき処理において、第1銅めっき膜4aは、金属膜Pcaの端面Pcaaにも形成される。
金属膜Pcaの端面Pcaaは、金属膜Pcaの貫通孔11側の端の面である。
金属膜Pcaの端面Pcaaは、絶縁基板1の第1面S1上、第2面S2上に位置する。
金属膜Pcaの端面Pcaaは、貫通孔11の壁面S3に沿う面を、例えば、絶縁基板1の第1面S1上側、第2面S2上側にそれぞれ延長した部分である。
【0069】
レジスト層Reの端面Reaは、おおよそ金属膜Pcaの端面Pcaaに沿う面である。
第1銅めっき膜4aは、レジスト層Reの端面Reaには形成されにくい。
このため、第1銅めっき膜4aは、金属膜Pcaの厚みの方向に次第に厚みを減ずるように形成される。
【0070】
この場合、第1銅めっき膜4aは、貫通孔11の壁面S3の範囲では、厚みの変化のほとんど無い形状であるが、導体付き基板Pcの表面の金属膜Pcaにさしかかるところから、レジスト層Re側へ向かうにつれて、第1銅めっき膜4aの厚みは次第に小さくなるように形成される。
【0071】
言い換えると、第1銅めっき膜4aを、例えば、電解めっきにより形成する場合、電流を面で受けるため、角部CAに対応する部分では電解めっきの析出はなだらかに丸みを帯びて形成される。
こうして、印刷配線板10Aを製造する際に、第1めっき層4の第4面S5bの中で、その角部S5bcの輪郭形状を第1の円弧Ar1の形状とすることができる。
【0072】
こうして、絶縁基板1に形成した貫通孔11の壁面S3に、第1めっき層4を形成することができる。
このとき、金属膜Pcaの貫通孔11側の端面Pcaaは、貫通孔11の壁面S3と面一であるのがよい。
【0073】
レジスト層Reの貫通孔11側の端面Reaも貫通孔11の壁面S3と面一であるのがよいが、貫通孔11の壁面S3の延長線上からわずかに貫通孔11側に突き出ていてもよい。
レジスト層Reの貫通孔11側の端面Reaが、貫通孔11の壁面S3の延長線上から貫通孔11側に突き出ていてもよい長さとしては、0.1μm以上2μm以下を目安とすることができる。
【0074】
レジスト層Reの貫通孔11側の端面Reaが貫通孔11側へ突き出る長さが2μmを超える場合には、第1銅めっき膜4aの厚みが小さく変化しにくくなるからである。
第1銅めっき膜4aの厚みが小さく変化する方向は、貫通孔11の壁面S3から導体付き基板Pcの第1面S1、第2面S2の金属膜Pcaの厚みの方向である。
第1銅めっき膜4aの形成には電解めっき法を用いるのがよい。
電解めっき法は、めっき液から銅の析出速度を制御しやすいうえに、厚みを厚くする場合にも析出速度を容易に高めることができる。電解めっき法は印刷配線板10Aの生産に好適である。
【0075】
次に、
図3Dに示すように、レジスト層Reを除去する。レジスト層Reの除去も従来公知の方法で行うことができる。
【0076】
次に、
図3Eに示すように、第2めっき層5となる第2銅めっき膜5aを第1銅めっき膜4a上に形成する。
【0077】
この場合、第1銅めっき膜4aを形成した導体付き基板Pcから、予めレジスト層Reを除去しているため、第2銅めっき膜5aは、第1銅めっき膜4a上以外の領域にも同時に形成される。
第1銅めっき膜4a上以外の領域とは、導体付き基板Pcに予め設けられている金属膜Pcaの表面のことである。
【0078】
こうして、導体付き基板Pcの貫通孔11に形成した第1銅めっき膜4a上から導体付き基板Pcの両面の金属膜Pcaの表面にまで及ぶ一繋がりの第2銅めっき膜5aを形成できる。
この後、第2銅めっき膜5a上に第3めっき層となる第3銅めっき膜を形成してもよい。
【0079】
この後、絶縁基板1の第1面S1上、第2面S2上においては、第2銅めっき膜5aに必要に応じてエッチング処理を施し、配線パターンに加工する。第2銅めっき膜5a上に第3銅めっき膜を形成したときには、第2銅めっき膜5aと第3銅めっき膜とを同時に配線パターンに加工するようにしてもよい。
【0080】
ここで、
図4に示した従来のプリント配線板100と比較する。
プリント配線板100を製造する工程では、銅張積層板(絶縁基板を含む)に貫通孔103を形成した後、その貫通孔103の壁面103Aから、銅張積層板に予め設けられている表層銅箔101aの表面に至る領域に同時に一次銅めっき層105を形成する。
【0081】
そうすると、銅張積層板(絶縁基板を含む)の表層銅箔101a側は、最初の一次銅めっき層105を形成したときから、表層銅箔101aと一次銅めっき層105とを合わせた厚みの金属層が形成されることになる。
【0082】
通常、銅箔からエッチングにより形成される配線パターンの幅、加工精度は、銅張積層板上に形成された金属層の厚みに依存する。
つまり、金属層の厚みが薄いほど、配線パターンの幅を狭くできる。また、加工精度を高めることができる。
【0083】
このような点から、本開示の印刷配線板10Aを見ると、印刷配線板10Aは、
図4に示した従来のプリント配線板100とは異なり、最初に貫通孔11の壁面S3に形成する第1銅めっき膜4aが、貫通孔11の壁面S3に沿う面にだけ形成される。
【0084】
一方、従来のプリント配線板100では、上述のように、一次銅めっき層105は、貫通孔103の壁面103Aから、その銅張積層板に予め設けられている表層銅箔101aの表面に至る領域に形成される。
【0085】
従来のプリント配線板100を構成する銅張積層板(絶縁基板を含む)の表層銅箔101a側に形成された金属層は、表層銅箔101aに一次銅めっき層105が重なる分だけ厚い。
このため、従来のプリント配線板100では、銅張積層板(絶縁基板を含む)の表層銅箔101a側の金属層から形成される配線パターンを微細かつ高い寸法精度で形成することが困難である。
【0086】
これに対し、本開示の印刷配線板10Aを製造する工程では、貫通孔11の壁面S3に第1銅めっき膜4aを形成した後でも、絶縁基板1の第1面S1上、第2面S2上には、絶縁基板1に最初に設けられている1層の金属膜Pcaが存在するだけである。
【0087】
この次の第2銅めっき膜5aを形成した時点においても、絶縁基板1の第1面S1上、第2面S2上には、第1銅めっき膜4aが存在しない。
絶縁基板1の第1面S1上、第2面S2上に第1銅めっき膜4aが存在しない分だけ、厚みが薄い。
【0088】
本開示の印刷配線板10Aを製造する工程によれば、絶縁基板1の第1面S1上、第2面S2上に第1銅めっき膜4aが存在しない分だけ厚みが薄いことから、従来のプリント配線板100の製造方法に比べて、絶縁基板1の第1面S1上、第2面S2上における配線パターンの微細化が可能である。
また、配線パターンの寸法精度も高まる。
【0089】
具体的に、
図1および
図4に示した構成のテスト用の印刷配線板を上記した製造方法により作製し、評価を行った。
【0090】
テスト用基板のサイズは、面積が100mm×100mm、厚みが7mm、導体層の総数が50層、貫通孔の直径が0.2mm、貫通孔(スルーホール導体)のピッチが0.4mm、貫通孔(スルーホール導体)の数は200×200個(格子状に等間隔の配置)、貫通孔(スルーホール導体)間には配線幅0.2mmの配線パターンを配置するようにし、すべての貫通孔(スルーホール導体)が格子状に結線されるようにパターン加工した。
【0091】
図1に示した印刷配線板の第1めっき層の厚みは0.035mm、第2めっき層の厚みは0.035mm、第1導体層および第2導体層の厚みは0.035mmとした。
【0092】
図4に示したプリント配線板は、表層銅箔の厚みが0.035mm、一次銅めっき層の厚みが0.035mm、中間銅めっき層の厚みが0.035mmとした。
評価は温度サイクル試験により行った。
【0093】
条件は、最高温度が125℃、最低温度が-65℃、最高温度および最低温度に保持する時間がそれぞれ30分、最高温度から最低温度までの降下にかかる時間、およびその逆の方向への時間がそれぞれ1分以内とした。
【0094】
サイクルは、最高温度から最低温度まで降下し、再び、最高温度に戻る工程とした。
サイクル数は1000回とした。
サイクル数1000回後にテスト用の印刷配線板をスルーホール導体が並ぶラインで切断し、研磨して、スルーホール導体の断面の観察を行った。
【0095】
図1の構成の印刷配線板は、印刷配線板の最外周に位置する2カ所のスルーホール導体にわずかにクラックの発生が見られたが、これらを除いた内側の領域のスルーホール導体にはクラックは認められなかった。
【0096】
図4の構成のプリント配線板の場合には、断面の中央部分に位置する10カ所以外のスルーホール導体にクラックが発生していることが認められた。
スルーホール導体の中でクラックが発生していた場所は、いずれの印刷配線板においても貫通孔の開口部付近であった。
【0097】
以上説明した、印刷配線板10Aおよび印刷配線板10Bの製造方法は、例示であり、様々な変更が可能である。上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係及び形状などの具体的な細部は、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、本開示の趣旨を逸脱しない範囲において、上記実施の形態で示した構成、構造、位置関係及び形状を適宜組み合わせ可能である。
【符号の説明】
【0098】
10A 印刷配線板
1 絶縁基板
2 第1導体層
3 第2導体層
4 第1めっき層
5 第2めっき層
11 貫通孔
S1 絶縁基板の第1面
S2 絶縁基板の第2面
S3 貫通孔の壁面
S4 第1導体層の表面
S5 第1めっき層の表面
S6 第2導体層の表面
S7 第2めっき層の表面