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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125627
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】積層吸音体
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/16 20060101AFI20230831BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20230831BHJP
   B32B 5/24 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G10K11/16 120
G10K11/168
B32B5/24 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029838
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】518148478
【氏名又は名称】シーシーアイホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100194803
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 理弘
(72)【発明者】
【氏名】新川 正志
(72)【発明者】
【氏名】後藤 嵩博
(72)【発明者】
【氏名】田宮 朋幸
【テーマコード(参考)】
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AK01A
4F100AK01B
4F100AK36A
4F100AK36B
4F100AK51A
4F100AK51B
4F100AK51C
4F100DJ00C
4F100DJ01A
4F100DJ01B
4F100EJ82C
4F100JA13C
4F100JK15A
4F100JK15B
4F100YY00A
4F100YY00B
5D061AA06
5D061AA25
5D061AA26
5D061BB24
(57)【要約】
【課題】より薄く、かつ低周波帯での吸音性が特に高い積層吸音体を得ること。
【解決手段】 積層吸音体の一方の面の最外層を構成するA層、及び他方の面の最外層を構成するC層、及び内部に設けた多孔層であるB層を含有し、
A層及びC層それぞれは樹脂発泡体層であり、B層に接する面が平滑であり、
積層吸音体は、300Hzの音の吸音率が0.50以上で、かつ1000Hz~5000Hzの範囲の音の最低吸音率が0.60以上である、
積層吸音体。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層吸音体の一方の面の最外層を構成するA層、及び他方の面の最外層を構成するC層、及び内部に設けた多孔層であるB層を含有し、
A層及びC層それぞれは樹脂発泡体層であり、B層に接する面が平滑であり、
積層吸音体は、300Hzの音の吸音率が0.50以上で、かつ1000Hz~5000Hzの範囲の音の最低吸音率が0.60以上である、
積層吸音体。
【請求項2】
A層及びC層は、1.0cm/cmsec以上の通気度を有する、ウレタン樹脂発泡体及び/又はメラミン樹脂発泡体であり、
B層は、密度が70kg/m以上で、両面が平滑な多孔層である請求項1記載の積層吸音体。
【請求項3】
積層吸音体の総厚が90mm以下であって、A層及びC層の厚さは同じ、及び/又は、一方の面の最外層を構成するC層の厚さは40~60mmであってC層はA層よりも厚い、請求項1又は2に記載の積層吸音体。
【請求項4】
B層を2層以上有し、そのB層の間にはA層又はC層を有する請求項1~3のいずれかに記載の積層吸音体。
【請求項5】
B層は液体で含浸された層である請求項1~4のいずれかに記載の積層吸音体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層吸音体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吸音体とは音を吸収する機能を有する製品であって、建築分野や自動車分野において多用されている。前記吸音体としては、幅広い用途に適用可能とするために、幅広い周波数に対して吸音性能を有することが望まれている。
特許文献1に記載のように、積層吸音体として垂直入射吸音率α=0.5を超えることが、その周波数帯で良い吸音性能を持つとされている。しかし、幅広い周波数領域で吸音性能を改善しようとすると、積層吸音体を分厚くしなければならず、積層吸音体の用途及び(または)使用場所が制限されるという問題がある。
【0003】
特許文献2に記載のように、樹脂発泡体と特定の薄膜層を組み合わせることにより、1000~2000Hzの音に対する吸音性を向上させることは公知であるが、さらに低い周波数までを対象にしていない。
また、膜振動型の材料を用いる別の方法がある。しかしながら、膜振動型の材料を使用すると、積層吸音体を薄くすることは可能であるが、ある特定の狭い範囲の周波数にしか効果がなく、低周波帯や、その他の周波数帯では明らかに吸音率が落ち込む特性を有している(図8を参照)。
したがって、優れた吸音性能と薄型化を両立し得る積層吸音体が強く望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-41528号公報
【特許文献2】特開2019-2996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、より薄く、かつさらに低周波帯での吸音性が特に高い積層吸音体を得ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題の解決のために本発明者は以下の方法を発明した。
1.積層吸音体の一方の面の最外層を構成するA層、及び他方の面の最外層を構成するC層、及び内部に設けた多孔層であるB層を含有し、
A層及びC層それぞれは樹脂発泡体層であり、B層に接する面が平滑であり、
積層吸音体は、300Hzの音の吸音率が0.50以上で、かつ1000Hz~5000Hzの範囲の音の最低吸音率が0.60以上である、
積層吸音体。
2.A層及びC層は、1.0cm/cmsec以上の通気度を有する、ウレタン樹脂発泡体及び/又はメラミン樹脂発泡体であり、
B層は、密度が70kg/m以上で、両面が平滑な多孔層である1記載の積層吸音体。
3.積層吸音体の総厚が90mm以下であって、A層及びC層の厚さは同じ、及び/又は、一方の面の最外層を構成するC層の厚さは40~60mmであってC層はA層よりも厚い、1又は2に記載の積層吸音体。
4.B層を2層以上有し、そのB層の間にはA層又はC層を有する1~3のいずれかに記載の積層吸音体。
5.B層は液体で含浸された層である1~4のいずれかに記載の積層吸音体。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、より薄く、かつさらに低周波帯での吸音性が高い積層吸音体を得ることができるという効果を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】B層を検討した測定結果を示す図
図2】A層とC層を検討した測定結果を示す図
図3】異種材料でB層を挟んだ例の測定結果を示す図
図4】7層構造の測定結果を示す図
図5】B層を検討した測定結果を示す図
図6】A層を検討した測定結果を示す図
図7】A層とC層の厚さを検討した例の測定結果を示す図
図8】膜振動型の測定結果を示す図
図9】B層を設けなかったときの測定結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、
積層吸音体の一方の面の最外層を構成するA層、及び他方の面の最外層を構成するC層、及び内部に設けたB層を含有し、
A層及びC層それぞれのB層に接する面が平滑であり、
積層吸音体は、300Hzの音の吸音率が0.50以上で、かつ1000Hz~5000Hzの範囲の音の最低吸音率が0.60以上である積層吸音体を基本としている。
【0010】
[本発明の積層吸音体の全体構造]
本発明の積層吸音体は、一方の面の最外層を構成する下記A層、及び他方の面、つまり一方の面からみて反対の面である最外層を構成するC層、及び該A層と該C層に挟まれた下記B層からなる。該A層と該C層は同じ厚さでも良く、該A層より該C層が厚くても良い。及び、該A層に挟まれて積層吸音体の最外層を構成しないB層(密度が70kg/m以上)の構造を有し、該A層と該C層の、該B層に接する面は平滑である。
本発明において、A層、B層及びC層はいずれも樹脂を含むことが好ましく、樹脂発泡体であることがさらに好ましい。
本発明の積層吸音体は従来の吸音体よりも全体の合計厚さである総厚が薄いものである。その総厚としては90mm以下が好ましく、85mm以下がより好ましく、83mm以下がさらに好ましく、82mm以下が最も好ましい。
また上記B層は、両面が平滑な発泡体層等の多孔層から選ばれた1種以上であることが好ましい。
本発明における通気度は、厚さが40mmの試料について、通気性試験機(製品名:KES-F8-API、カトーテック社、定常流差圧測定方式)によって測定された通気抵抗を変換して得た。(一定の流量V(m/(msec)を通し、このときの圧力差ΔP(kPA)を測定し、通気抵抗R=ΔP/Vを求め、さらに通気度=12.5/Rで求める)。
ここでいう通気度は、各層の厚さを40mmとしたときの各層単独の通気度である。厚いほど通気度が低下するので、このように厚さにより変化する通気度自体を考慮した。
ここで、最外層を構成するA層による積層吸音体の一方の面とは、積層吸音体が設置される際に、吸音しようとする音の音源側に向く面とすることが好ましい。そしてA層はB層が構成する積層吸音体の他方の面とはその反対面であるとすることが好ましい。積層吸音体の最外層を構成する層とは、音源側を向く層と、音が透過して出ていく吸音体の表面となる層である。
そして、全体の形状としては、平板状、曲面を有する板状、筒状、棒状等、積層吸音体として公知の形状にすることができる。
さらに、本発明の積層吸音体の外表面を構成するA層及びC層の外面は、平滑でも良く、凹凸形状を有しても良い。
本発明における吸音率は、JIS A1405-2に従って測定される。
【0011】
[本発明の積層吸音体の細部構造]
1層のA層と1層のC層に挟まれた1層のB層の計3層からなる積層吸音体としても良い。
そして、2層のA層と2層のB層と1層のC層を有する、A層/B層/A層/B層/C層、の順に積層された5層構造、1層のA層と2層のB層と2層のC層を有する、A層/B層/C層/B層/C層、の順に積層された5層構造でも良い。さらに、A層/B層/C層/B層/A層/B層/C層、の順に積層された7層構造、A層/B層/A層/B層/A層/B層/C層、の順に積層された7層構造、A層/B層/A層/B層/C層/B層/C層、の順に積層された7層構造、A層/B層/C層/B層/C層/B層/C層、の順に積層された7層構造でも良い。又はそれ以上の数の層からなるものでも良い。
【0012】
このとき、吸音性向上の点から、複数のA層を有する場合には、全てのA層は同じ厚さ及び/又は同じ材料からなる層であることが好ましい。また複数のC層を有する場合には、全てのC層が同じ厚さ及び/又は同じ材料からなる層であることが好ましい。また全てのA層及びC層が同じ材料の層に統一されていることが好ましい。複数のBの層を有する場合には、全てのB層は同じ厚さであることが好ましい。
そして、全てのA層と全てのC層は同じ厚さを有しても良く、A層よりもC層が厚くても良い。
中でも、全てのA層は同じ厚さであり、全てのC層は同じ厚さであり、A層とC層は同じ厚さであることが好ましい。
【0013】
本発明において、積層吸音体の両面を構成するA層とC層は互いに同じ厚さであることが好ましい。そして積層吸音体が表面層ではないA層又はC層を有する場合、この層は、表面を構成するA層及びC層と同じ厚さでも良く、A層及びC層よりも厚い層であったり、逆に薄い層であったりしてもよい。
また、1つの積層吸音体にて、全てのA層が同じ樹脂であっても良く、異なる樹脂であっても良い。またB層が2層以上ある場合、これらのB層は互いに同じ樹脂であっても良く、互いに異なる樹脂であっても良い。
【0014】
1つのA層と1つのB層のみを積層してなる構造の場合には、より低周波側での吸音率が高くなるが、高周波側での吸音率が特に低下する可能性がある。または、周波数に対する吸音率の変化が、B層を設けない場合と特に変わらない場合がある。
また、音の入射方向の最外層にB層を設けたときには、低周波側での吸音率が高くなるが、高周波側での吸音率が特に低下する傾向がある。逆に音の入射方向とは反対側の最外層にB層を設けたときには、B層を設けた効果が低下する傾向がある。
本発明における平滑な面にするには、A層の表面及びB層の表面を形成させるための手段として、通常の切断による形成や、金型の内面の表面による形成等の公知の手段を採用でき、意図して粗面や平滑でない面を形成させる手段を採用しない。
【0015】
[本発明の積層吸音体の吸音性能]
本発明の積層吸音体は吸音性能に優れるものであり、300Hzの音の吸音率が0.50以上であり、0.60以上がより好ましく、0.70以上が更に好ましい。なお以下「吸音率」は「積層吸音体の厚さ方向に透過する音の吸音率」である。
1000Hz~5000Hzの全範囲における音の最低吸音率(その範囲の周波数における最も低い吸音率(以下同じ))が0.60以上であり、0.70以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.80以上がさらに好ましく、0.85以上が最も好ましい。
400~5000Hzの周波数帯における最低吸音率は0.70以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.80以上がさらに好ましい。
また、1層あたりのB層の厚さを3.0mmとした場合の、本発明の吸音率について、300Hzの音の吸音率は0.55以上であり、0.57以上が好ましく、0.60以上がより好ましく、0.63以上が更に好ましく、0.65以上が最も好ましい。さらに上記の吸音率に加えて、1層あたりのB層の厚さを3.0mmとした場合には、1000Hz~5000Hzの周波数帯の全ての範囲において、本発明の積層吸音体の厚さ方向に透過する音の最低吸音率が0.60以上であり、0.70以上が好ましく、0.75以上がより好ましく、0.80以上が更に好ましく、0.90以上が最も好ましい。
又は、400~5000Hzの周波数帯における最低吸音率が0.70以上、好ましくは0.80以上である。
【0016】
<A層及びC層>
[A層及びC層に共通の事項]
A層及びC層としては、下記B層に接する面が平滑な樹脂発泡体層からなり、樹脂発泡体の素材としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、メラミン樹脂、シリコーン樹脂、天然ゴム、合成ゴム等が挙げられる。中でも、メラミン樹脂発泡体層及びウレタン樹脂発泡体層であることが好ましい。本発明の積層吸音体において、複数のA層を構成する材料としては、互いに同じ材料からなっていても良く、互いに異なる材料からなっていても良い。中でも、A層及びC層が共にメラミン樹脂の発泡体層であることが好ましく、A層及びC層は通気度を有することがより好ましい。
本発明中の積層吸音体が有する1層以上のA層及びC層の総厚である合計の厚さは、十分な吸音性を発揮させるために、50.0mm以上が好ましく、60.0mm以上がより好ましく、70.0mm以上が更に好ましく、75.0mm以上が最も好ましい。また、吸音性と全体の層の厚さのバランスを考慮して、90.0mm以下が好ましく、85.0mm以下がより好ましく、83.0mm以下がさらに好ましく、80.0mm以下が最も好ましい。この合計の厚さは、例えばA層とC層が合わせて3層以上である場合においても、その3層以上の層の合計の厚さである。
A層とC層の厚さは同じでも良く、A層よりもC層が厚くても良い。
例えば、A層が1層、及びC層が1層ある場合、A層及びC層は独立して20mm~60mmであることが好ましい。
【0017】
A層及びC層の両面のうち、少なくともB層に接する面は平滑であることが必要である。ここでいう平滑とは、A層の発泡体層表面が有する孔の開口部に起因する表面の微細凹凸は有するものの、その微細な凹凸以外の凹凸を意図して形成しないことである。直線の刃で切断して得た表面や、表面が平滑な金型により形成した表面等である。そのため、該微細凹凸の存在によっても該面は平滑であるとする。つまり、該面の平滑とは、例えば表面を加工してあえて凹凸形状にしたり、表面に成形による凸部や凹部を設けていないことである。
A層及びC層の通気度は、それぞれ独立して1.0cm/cmsec以上が好ましく、5.0cm/cmsec以上がより好ましく、10.0cm/cm以上がさらに好ましく、15.0cm/cm以上が最も好ましく、25.0cm/cm以上が特に好ましい。また、100.0cm/cmsec以下が好ましく、50.0cm/cmsec以下がより好ましく、40.0cm/cmsec以下が更に好ましい。
【0018】
(メラミン樹脂発泡体層)
A層及びC層で使用するメラミン樹脂発泡体層は、メラミン樹脂を原料として発泡させた連通気泡を有する発泡体である。メラミン樹脂の発泡体は、メラミンに、ホルムアルデヒド、発泡剤、触媒及び乳化剤等の添加剤を配合し、これを発泡及び硬化させることや、メラミン-ホルムアルデヒド、発泡剤、触媒及び乳化剤等の添加剤を配合し、これを発泡及び硬化させること等の公知の方法により得ることができる。メラミン樹脂以外の樹脂を含有しても良く、しなくても良い。そして無機及び有機のいずれの繊維状物質も含有しないことが好ましく、発泡体層内部は、製造時に形成された多孔構造以外の孔や加工された構造を有することがなく、その層全体に孔が分散した均一な層からなることが好ましい。
そして、JIS K 7222により測定した密度は、4.0kg/m以上が好ましく、5.0kg/m以上がより好ましく、6.0kg/m以上がさらに好ましい。また、15.0kg/m以下が好ましく、13.0kg/m以下がより好ましく、11.0kg/m以下がさらに好ましい。
特にメラミン樹脂発泡体層の通気度は、10.0cm/cmsec以上が好ましく、13.0cm/cmsec以上がより好ましく、15.0cm/cmsec以上が更に好ましい。また、100.0cm/cmsec以下が好ましく、50.0cm/cmsec以下がより好ましく、35.0cm/cmsec以下が更に好ましい。
【0019】
(ウレタン樹脂発泡体層)
ウレタン樹脂発泡体層は、ウレタン樹脂を合成する際に発泡させて得た連通気泡を有する発泡体である。
ウレタン樹脂の発泡体は、イソシアネート化合物に、イソシアネートと反応する成分を反応させ、同時に発泡剤等の添加剤等を配合したり、作用させたりしたものであり、発泡ポリウレタン樹脂として公知の手段により得ることができる。ウレタン樹脂以外の樹脂を含有しても良く、しなくても良い。そして無機及び有機のいずれの繊維状物質も含有しないことが好ましく、発泡体層内部は、製造時に形成された多孔構造以外の孔や加工された構造を有することがなく、その層全体に孔が分散した均一な層からなることが好ましい。
そして、JIS K 7222により測定した密度は、15.0kg/m以上が好ましく、18.0kg/m以上がより好ましく、20.0kg/m以上がさらに好ましい。また、30.0kg/m以下が好ましく、27.0kg/m以下がより好ましく、25.0kg/m以下がさらに好ましい。
特に、ウレタン樹脂発泡体層の通気度は、1.0cm/cmsec以上が好ましく、1.5cm/cmsec以上がより好ましく、1.7cm/cmsec以上が更に好ましい。また、30.0cm/cmsec以下が好ましく、20.0cm/cmsec以下がより好ましく、18.0cm/cmsec以下が更に好ましい。
【0020】
<B層>
[B層に共通する事項]
B層に使用できる各材料は多孔層であり、密度が70kg/m以上であり、100kg/以上が好ましく、150kg/m以上がより好ましく、200kg/m以上が更に好ましく、210kg/m以上が最も好ましい。中でも、ポリビニルアルコール樹脂層、ポリウレタン樹脂層、クロロプレンゴム層、ポリエチレン樹脂層及びポリエステル不織布層から選ばれた1種以上が好ましい。中でもポリウレタン樹脂層の発泡体が好ましい。
さらに、本発明中の積層吸音体が有する1層以上のB層の合計の厚さは、十分な吸音性を発揮させるために、1.0mm以上が好ましく、1.5mm以上がより好ましく、1.8mm以上が更に好ましい。また、吸音性を考慮して、10.0mm以下が好ましく、6.0mm以下がより好ましく、4.0mm以下がさらに好ましく、3.0mm以下が最も好ましい。例えば、B層が2層ある場合、各B層は独立して1.0mm~10.0mmであり、各B層は同じ厚さであることが好ましく、各B層の合計の厚さは3.0mm~6.0mmであることが好ましい。
【0021】
また、通気性を有しないものでも良く、通気性を有するものでも良い。通気性を有する場合には、A層よりも通気度が低くても良く、高くても良い。ここでいう通気度は、単位厚さ当たりの通気度ではなく、各B層の厚さを反映した各B層の通気度である。同じ材料でも厚いほど通気度が低下するので、このように厚さにより変化する通気度自体を考慮する。なお、通気度の測定は、試料の厚さ以外は、A層やC層の通気度の測定方法と同じ方法とした。
また、B層にのみ液体を含浸させることにより積層吸音体の吸音率を向上させることができる。この場合の液体としては、B層を溶解しない液体が挙げられる。
含浸の程度としては、B層に対して含浸できる上限の量を含浸させても良く、上限に至らなくても、乾燥したB層の体積1000mm当たり、0.10g以上が好ましく、0.20g以上がより好ましく、0.30g以上が更に好ましい。また含浸できる上限以下及び0.60g以下が好ましく、0.50g以下がより好ましく、0.40g以下が更に好ましい。
このようにB層に液体を含浸させることにより積層吸音体全体の吸音性能を向上させることができる。
【0022】
(ポリビニルアルコール樹脂層)
ポリビニルアルコール樹脂は、ポリ酢酸ビニル樹脂をけん化することにより製造するのが通常である。ポリビニルアルコール樹脂のけん化度は、30mol%以上が好ましく、50mol%以上がより好ましい。また99.9mol%以下が好ましく、99.3mol%以下がさらに好ましい。ポリビニルアルコール樹脂のけん化度が30mol%未満であると、機械的強度に劣る可能性があり、99.9mol%を超えると、液体を含浸させることが困難になる可能性がある。
【0023】
上記ポリビニルアルコール樹脂の重合度は500以上が好ましく、1000以上がより好ましい。また5000以下が好ましく、4000以下がより好ましい。ポリビニルアルコール樹脂の重合度が500未満であると、ポリビニルアルコール樹脂層の機械的強度が低下する可能性があり、重合度が5000を超えるとポリビニルアルコール樹脂層の形成が困難になる可能性がある。
B層がポリビニルアルコール樹脂層である場合において、液体を含浸しなくても良いが、含浸しても良い。含浸してもよい液体として、特に水、エチレングリコール、プロピレングリコール及びグリセリン等の多価アルコールを選択できる。これらを選択して含浸することにより、含浸後のポリビニルアルコール樹脂層の吸音性能が向上する。
【0024】
上記ポリビニルアルコール樹脂層における水や上記多価アルコールの含有量は特に限定されないが、上記ポリビニルアルコール樹脂100重量部に対する好ましい下限は20重量部、好ましい上限は150重量部である。上記多価アルコールの含有量が20重量部未満であると、合わせガラス用中間膜が硬くなりすぎるために取り扱い性に問題が生じることがあり、150重量部を超えると、合わせガラス用中間膜の耐貫通性が低下することがある。上記多価アルコールの含有量のより好ましい下限は30重量部、より好ましい上限は100重量部である。
【0025】
(ポリウレタン樹脂層)
B層として使用できるポリウレタン樹脂層は、ポリウレタン樹脂を合成する際に発泡させて得た発泡体である。ポリウレタン樹脂層に液体を含浸しなくても良いが、含浸しても良い。
ポリウレタン樹脂の発泡体は、イソシアネート化合物に、イソシアネートと反応する成分を反応させ、同時に発泡剤等の添加剤等を配合したり、作用させたりしたものであり、発泡ポリウレタン樹脂として公知の手段により得ることができる。
そして、JIS K 7222により測定した密度は、20.0kg/m以上が好ましく、50.0kg/m以上がより好ましく、100.0kg/m以上がさらに好ましく、200.0kg/m以上がさらに好ましい。
ポリウレタン樹脂層が通気性を有する場合、ポリウレタン樹脂層1層当たりの通気度は、1.00cm/cmsec以上が好ましく、0.150cm/cmsec以上でも良い。また、2000.00cm/cmsec以下が好ましく、1200.00cm/cmsec以下がより好ましく、10.00cm/cmsec以下が更に好ましく、5.00cm/cmsec以下が最も好ましい。
【0026】
(クロロプレンゴム層)
B層として使用できるクロロプレンゴム層は、密度が50kg/m以上のものであれば任意のものを採用可能である。そして、必要に応じて架橋剤等を混合してなるクロロプレンゴムに発泡剤を加え、この発泡剤を発泡させることにより得ることができる。
【0027】
(エチレン酢酸ビニル樹脂発泡体層)
B層として使用できるエチレン酢酸ビニル樹脂発泡体層は、公知のエチレン酢酸ビニル樹脂の密度が50kg/m以上のものであれば任意のものを採用可能である。
【0028】
[積層吸音体の製造方法]
本発明の積層吸音体を製造する方法としては、積層体を製造する公知の方法から任意に選択して採用できる。
必要な数のA層とB層を準備し、これらを1層ずつ積層しながら、層間を接着剤で接着したり、溶着したりすることができる。また単に重ねておき、これらの層を密着させた状態で機械的に固定する方法を採用できる。なお、接着剤を使用する際、溶着する際には、吸音性の向上を阻害しないように考慮することが必要である。
液体が含浸されたB層を有する積層吸音体を得る場合には、予めB層に液体を含浸させておき、これを用いて上記のように積層を行うこともできる。
【0029】
また本発明の積層吸音体において、A層及びB層共に、本発明による効果を毀損しない範囲において、顔料、可塑剤、紫外線安定剤、酸化防止剤等の樹脂に含有できる公知の添加剤を配合できる。
【0030】
[積層吸音体の用途]
本発明の積層吸音体は、内部で発生する騒音を外部に出さないために防音が必要な建築物、その逆に外部の騒音を内部に入れないための防音が必要な建築物、自動車や電車等の低減すべき騒音を発生する移動手段等の、構造材や壁、天井、床下等に設置するためのものとして使用できる。設置方法としては公知の積層吸音体や防音材の設置と同様の手段を採用できる。
【実施例0031】
以下に本発明の実施例と比較例を示して説明する。
下記表1~3に記載の材料をA層、B層及びC層として使用し、任意の厚さ等に調整して、各実施例及び比較例で使用する積層吸音体の材料を得た。これらの積層吸音体はそれぞれの材料を接着などせずに重ねて得たものである。
【0032】
メラミン発泡体1:バソテクトUF(BASF社、通気度31.09cm/cmsec、密度6.2kg/m
メラミン発泡体2:バソテクトG(BASF社、通気度19.60cm/cmsec、密度10.3kg/m
EVA(エチレン酢酸ビニル)発泡体:EVA60-0.20(グローリ産業社、密度210kg/m
EPDM(エチレンプロピレンジエンゴム)発泡体:ルシーラ(東洋クオリティワン社、通気度0.39cm/cmsec)
ウレタン発泡体1:ルビーセル(トーヨーポリマー社、密度250kg/m
ウレタン発泡体2:ソフラス(アイオン社、密度210kg/m
ウレタン発泡体3:ACスポンジ(エー・シーケミカル社、密度250kg/m
ウレタン発泡体4:HDZ(東洋クオリティワン社、通気度1.81cm/cmsec、密度23.2kg/m
ウレタン発泡体5:NH(東洋クオリティワン社、通気度16.49cm/cmsec、密度23.2kg/m
膜振動型材料:J-700 (日東紡マテリアル社、厚さ1mm、密度2100kg/m)
ポリスチレン:スタイロフォーム(登録商標) (デュポン・スタイロ社)(密度27kg/m
PVA(ポリビニルアルコール樹脂)発泡体:PVA吸水クロス (ダイソー社、密度320kg/m)(直径39.5mm、厚さ2mmあたり0.4gの水を含浸したもの)
ポリエチレン発泡体:PEライトA-8(イノアックコーポレーション社、密度70kg/m
クロロプレンゴム発泡体:C―4205(イノアックコーポレーション社、密度180kg/m
上記の通気度は厚さが40mmのときの通気度である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
各実施例及び比較例の周波数に対する吸音率の変化を測定し、その結果を図1~9に示した。試料No.1~6、10~20はA層/B層/C層の3層の構造を基本とした例であり、試料No.7はA層/B層/C層/B層/A層/B層/C層からなる7層の構造とした例であり、試料No.8及び9は1層のみからなる例である。
全ての実施例及び比較例で使用した積層吸音体は直径が39.5mmの円筒形状である。
また、それぞれの円筒形状の積層吸音体は、A層からC層に向けて音が入射するように設置され、JIS A1405-2に従い吸音率を測定した。
【0037】
試料No.1~3はA層及びC層を共通にし、それぞれのB層を変更した例であり、試料No.4は、試料No.1のA層とC層を変更した例であり、試料No.5及び6は、試料No.1のA層とC層の一方のみを変更した例である。
試料No.7は、積層吸音体を7層からなる構造にした例である。表中のB層総厚は6mmである。それぞれの厚さが2mmのB層が3層あるために、合計で6mmとなる。
試料No.8及び9は1層のみからなる例であり、試料No.10はB層の密度が低い例であり、試料No.11はA層の通気度が低い例である。
試料No.12はB層のPVA層が上記のとおり水を含有した例であり、
試料No.13はA層及びC層にウレタン発泡体を採用した例であり、試料No.14はA層をウレタン発泡体としC層をメラミン発泡体とし、試料No.15はA層をメラミン発泡体としC層をウレタン発泡体とした例である。
試料No.16はA層を厚さ20mmメラミン発泡体とし、C層を厚さ60mmメラミン発泡体とした例であり、試料No.17はA層を厚さ60mmメラミン発泡体とし、C層を厚さ20mmメラミン発泡体とした例である。
試料No.18~20は、いずれも試料No.1におけるB層を変更した例である。
【0038】
以下、各図と共に実施例及び比較例を確認する。
試料No.1~3のようにA層及びC層を共通にし、それぞれのB層を変更すると、周波数による吸音率の推移も変化する。No.1及び2によれば、300Hzでの吸音率は0.60を超えるが、No.3の場合には、特に高い周波数の吸音率が高いものであった。
試料No.1の積層吸音体のA層とC層を別のメラミン発泡体にしたNo.4、試料No.1の積層吸音体のA層とC層のいずれかを別のメラミン発泡体にしたNo.5及び6では、300Hzでの吸音率を向上できた。さらに7層からなる積層吸音体にすることにより、300Hzでの吸音率を向上できた。
【0039】
試料No.1の積層吸音体のB層を水が含浸されたPVA発泡体に代えたNo.12では、特に1000Hz以上での最低吸音率を向上できた。
試料No.1の積層吸音体のA層とC層をウレタン発泡体としたNo.13、及び、試料No.1の積層吸音体のA層のみを別のウレタン発泡体にしたNo.14では、300Hzでの吸音率、及び1000Hz以上での最低吸音率を向上できた。そして、試料No.1の積層吸音体のC層のみを別のウレタン発泡体にしたNo.15では、試料No.1の積層吸音体と同程度の300Hzでの吸音率、及び同程度の1000Hz以上での最低吸音率であった。
【0040】
試料No.1の積層吸音体のA層の厚さを20mmとし、C層の厚さを60mmとしたNo.16では、特に300Hzでの吸音率が向上したが、試料No.1の積層吸音体のA層の厚さを60mmとし、C層の厚さを20mmとした比較例であるNo.17では、300Hzでの吸音率が低下した。
試料No.1の積層吸音体のB層を変更したNo.18及び19では、試料No.1の300Hzでの吸音率、及び同程度の1000Hz以上での最低吸音率の結果と大きくは変わらなかったか、若干劣っていた。
試料No.1の積層吸音体のB層を変更したNo.20では、特に300Hzでの吸音率が向上した。
【0041】
これらの実施例に対して、1層のみからなり比較例であるNo.8及び9では十分な結果を得ることができなかった。
さらにB層の密度が低いNo.10、A層の通気度が低いNo.11でも十分な結果を得ることができなかった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9