(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125645
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】磁気浮上式電動機および磁気浮上式ポンプ
(51)【国際特許分類】
H02K 7/09 20060101AFI20230831BHJP
F16C 32/04 20060101ALI20230831BHJP
F04D 29/048 20060101ALI20230831BHJP
F04D 29/058 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H02K7/09
F16C32/04 Z
F04D29/048
F04D29/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029867
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】504147243
【氏名又は名称】国立大学法人 岡山大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 真紹
【テーマコード(参考)】
3H130
3J102
5H607
【Fターム(参考)】
3H130AB12
3H130AB22
3H130AB42
3H130BA61E
3H130DA02X
3H130DB01X
3H130DB02X
3H130DB10X
3H130DB15X
3H130DD01Z
3H130DF01Z
3J102AA01
3J102BA03
3J102BA19
3J102CA40
3J102DA07
3J102DA11
3J102DA26
3J102DA28
3J102GA06
3J102GA13
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD01
5H607DD02
5H607DD03
5H607DD16
5H607GG19
(57)【要約】
【課題】スラスト方向の1軸を能動制御する磁気浮上式電動機において、ラジアル方向の支持力を確保しつつ、スラスト方向の支持力を高める。
【解決手段】磁気浮上式電動機10は、ケーシング11に設けられた固定永久磁石部20と、回転軸12において固定永久磁石部20と対向して設けられ固定永久磁石部20との反発力により回転軸12を軸線Cと直交するラジアル方向に非接触で支持する回転永久磁石部30とを備える。固定永久磁石部20は、ラジアル方向に着磁された一対の第1固定永久磁石21と、ラジアル方向において第1固定永久磁石21と逆向きに着磁された一対の第2固定永久磁石22とを有する。回転永久磁石部30は、ラジアル方向において第1固定永久磁石21と逆向きに着磁された一対の第1回転永久磁石31と、ラジアル方向において第2固定永久磁石22と逆向きに着磁された一対の第2回転永久磁石32とを有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性体からなるケーシングと、
前記ケーシング内に配置され、所定の軸線回りに回転可能な回転軸と、
前記ケーシングに設けられた固定子、および前記固定子と対向して前記回転軸に設けられた回転子を有するモータ部と、
前記ケーシングに設けられた固定永久磁石部と、
前記回転軸において前記固定永久磁石部と対向して設けられ、前記固定永久磁石部との反発力によって前記回転軸を前記軸線と直交するラジアル方向に非接触で支持する回転永久磁石部と、
前記ケーシングに設けられ、前記軸線回りに巻回された支持コイルと、
前記支持コイルに付与される電流を制御し、前記支持コイルによって生じる磁束を前記固定永久磁石部および前記回転永久磁石部の各磁束に重畳させて前記軸線に沿うスラスト方向の支持力を前記回転軸に作用させる制御部と、を備え、
前記固定永久磁石部は、
前記固定子を挟んで前記スラスト方向に一対配置され、前記ラジアル方向に着磁された環状の第1固定永久磁石と、
前記各第1固定永久磁石の前記固定子側に配置され、前記ラジアル方向において前記第1固定永久磁石と逆向きに着磁された一対の環状の第2固定永久磁石と、
を有し、
前記回転永久磁石部は、
一対の前記第1固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記ラジアル方向において前記第1固定永久磁石と逆向きに着磁された一対の環状の第1回転永久磁石と、
一対の前記第2固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記ラジアル方向において前記第2固定永久磁石と逆向きに着磁された一対の環状の第2回転永久磁石と、を有する、磁気浮上式電動機。
【請求項2】
前記固定永久磁石部は、
前記各第1固定永久磁石の前記固定子側に隣接して配置されるとともに、前記各第2固定永久磁石の前記固定子側と反対側に隣接して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁された一対の環状の第3固定永久磁石をさらに有し、
前記回転永久磁石部は、
一対の前記第3固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁されるともに、対向する前記第3固定永久磁石と同向きに着磁された一対の環状の第3回転永久磁石をさらに有する、請求項1に記載の磁気浮上式電動機。
【請求項3】
前記固定永久磁石部は、
前記各第1固定永久磁石の前記反対側に隣接して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁された一対の環状の第4固定永久磁石と、
前記各第2固定永久磁石の前記固定子側に隣接して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁された一対の環状の第5固定永久磁石と、をさらに有し、
前記各第4固定永久磁石は、隣接する前記第1固定永久磁石の前記固定子側に隣接している前記第3固定永久磁石と逆向きに着磁され、
前記各第5固定永久磁石は、隣接する前記第2固定永久磁石の前記反対側に隣接している前記第3固定永久磁石と逆向きに着磁されている、請求項2に記載の磁気浮上式電動機。
【請求項4】
前記回転永久磁石部は、
一対の前記第4固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁されるとともに、対向する前記第4固定永久磁石と同向きに着磁された一対の環状の第4回転永久磁石と、
一対の前記第5固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁されるとともに、対向する前記第5固定永久磁石と同向きに着磁された一対の環状の第5回転永久磁石と、をさらに有する、請求項3に記載の磁気浮上式電動機。
【請求項5】
移送流体の吸込口および吐出口を有するハウジングと、
前記ハウジングに設けられた、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の磁気浮上式電動機と、
前記回転軸における前記スラスト方向の一端部に設けられたインペラと、
前記回転軸側と前記ケーシング側との間を隔てる隔壁部と、を備える磁気浮上式ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気浮上式電動機および磁気浮上式ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ケーシングに対して回転軸を機械的に接触させずに支持するベアリングレスモータとして、回転軸を磁気により浮上させて支持する磁気浮上式電動機が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された磁気浮上式電動機は、ケーシングに対する回転軸の浮上位置を制御するために、スラスト方向の1軸(γ軸方向)とラジアル方向の4軸(α軸方向,β軸方向,α軸回り,β軸回り)をそれぞれ能動制御している。しかし、このような磁気浮上式電動機では、5軸それぞれを能動制御する必要があるので、製造コストが高くなる。そこで、スラスト方向の1軸だけを能動制御し、ラジアル方向の4軸を受動制御する、いわゆる1軸制御が検討されている。
【0003】
図22は、従来の1軸制御が行われる磁気浮上式電動機の断面図である。この磁気浮上式電動機は、ケーシング90と、ケーシング90内に配置された回転軸91およびモータ部92と、を備えている。モータ部92は、ケーシング90内の軸方向中央部に設けられた固定子92aと、回転軸91において固定子92aと対向する位置に設けられた回転子92bと、を有している。
【0004】
前記磁気浮上式電動機は、ケーシング90内に設けられた一対の支持コイル93および一対の環状の固定永久磁石94と、回転軸91に取り付けられた一対の環状の回転永久磁石95と、をさらに備えている。固定永久磁石94は、ケーシング90の軸方向両端に設けられている。回転永久磁石95は、回転軸91の軸方向両端において、固定永久磁石94と対向して設けられている。互いに対向する固定永久磁石94と回転永久磁石95は、ラジアル方向に反発力が生じるように着磁されている。この反発力は、ケーシング90に対して回転軸91を非接触で支持するラジアル方向の支持力として、回転軸91に作用する。
【0005】
支持コイル93は、固定子92aの軸方向両側にそれぞれ配置され、回転軸91回りの周方向に巻回されている。支持コイル93に電流を付与すると、支持コイル93によって生じる磁束が、固定永久磁石94および回転永久磁石95の各磁束に重畳されることによって、回転軸91の軸方向両端における磁界の磁束密度に疎密が発生する。この磁束密度の疎密が発生することで、回転軸91をスラスト方向に支持する支持力が発生する。以上により、支持コイル93に付与する電流を制御することで、回転軸91のスラスト方向の1軸を能動制御することができる。また、固定永久磁石94と回転永久磁石95との間で生じる反発力により、回転軸91のラジアル方向の4軸を受動制御することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記1軸制御が行われる磁気浮上式電動機を備えた磁気浮上式ポンプでは、ケーシング90および回転軸91を移送流体から保護するための隔壁が、固定永久磁石94と回転永久磁石95との間に配置される。このため、固定永久磁石94と回転永久磁石95とのギャップ(隙間)を大きく形成する必要がある。前記ギャップを大きくすると、固定永久磁石94と回転永久磁石95との反発力(磁力)が弱まり、回転軸91のラジアル方向の支持力が低下してしまう。このため、前記ギャップを広くするには、回転軸91のラジアル方向の支持力を確保するために、固定永久磁石94と回転永久磁石95との反発力を強くする必要がある。
【0008】
しかし、前記反発力を強くすると、固定永久磁石94に対して回転永久磁石95がスラスト方向の一方側へずれたときに、当該一方側へ回転軸91を押し出す力が大きくなる。この押し出し力が、回転軸91をスラスト方向に支持する支持力よりも大きくなると、回転軸91をスラスト方向に支持することができなくなるおそれがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、スラスト方向の1軸を能動制御する磁気浮上式電動機において、ラジアル方向の支持力を確保しつつ、スラスト方向の支持力を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本発明は、磁性体からなるケーシングと、前記ケーシング内に配置され、所定の軸線回りに回転可能な回転軸と、前記ケーシングに設けられた固定子、および前記固定子と対向して前記回転軸に設けられた回転子を有するモータ部と、前記ケーシングに設けられた固定永久磁石部と、前記回転軸において前記固定永久磁石部と対向して設けられ、前記固定永久磁石部との反発力によって前記回転軸を前記軸線と直交するラジアル方向に非接触で支持する回転永久磁石部と、前記ケーシングに設けられ、前記軸線回りに巻回された支持コイルと、前記支持コイルに付与される電流を制御し、前記支持コイルによって生じる磁束を前記固定永久磁石部および前記回転永久磁石部の各磁束に重畳させて前記軸線に沿うスラスト方向の支持力を前記回転軸に作用させる制御部と、を備え、前記固定永久磁石部は、前記固定子を挟んで前記スラスト方向に一対配置され、前記ラジアル方向に着磁された環状の第1固定永久磁石と、前記各第1固定永久磁石の前記固定子側に配置され、前記ラジアル方向において前記第1固定永久磁石と逆向きに着磁された一対の環状の第2固定永久磁石と、を有し、前記回転永久磁石部は、一対の前記第1固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記ラジアル方向において前記第1固定永久磁石と逆向きに着磁された一対の環状の第1回転永久磁石と、一対の前記第2固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記ラジアル方向において前記第2固定永久磁石と逆向きに着磁された一対の環状の第2回転永久磁石と、を有する、磁気浮上式電動機である。
【0011】
本発明の磁気浮上式電動機によれば、第1固定永久磁石と第1回転永久磁石との反発力、および第2固定永久磁石と第2回転永久磁石との反発力により、回転軸をラジアル方向に非接触で支持することができる。これにより、従来の1組の固定永久磁石と1組の回転永久磁石との反発力だけで回転軸を支持する場合よりもラジアル方向の支持力を高めることができる。したがって、固定永久磁石部と回転永久磁石部とのギャップ(隙間)が大きくなっても、回転軸のラジアル方向の支持力を確保することができる。
【0012】
また、支持コイルによって生じる磁束は、固定子を挟んだスラスト方向両側それぞれにおいて、第1固定永久磁石および第2固定永久磁石のうちの一方の磁束に重畳されるとともに他方の磁束で相殺され、第1回転永久磁石および第2回転永久磁石のうちの一方の磁束に重畳されるとともに他方の磁束で相殺される。これにより、前記スラスト方向両側それぞれにおいて、磁界の磁束密度に疎密が発生する。その結果、支持コイルによって生じる磁束が、重畳された第1固定永久磁石および第2回転永久磁石の間(または重畳された第2固定永久磁石および第1回転永久磁石の間)を流れることで、回転軸をスラスト方向に支持する支持力を発生させることができる。
【0013】
また、支持コイルによって生じる磁束によりスラスト方向の支持力を回転軸に作用させる際に、固定永久磁石部では、第1(または第2)固定永久磁石→第2(または第1)固定永久磁石→回転永久磁石部とのギャップ→第1(または第2)固定永久磁石の順に流れるループ状の磁束が発生するので、第1および第2固定永久磁石からの漏洩磁束を低減することができる。同様に、回転永久磁石部では、第1(または第2)回転永久磁石→第2(または第1)回転永久磁石→固定永久磁石部とのギャップ→第1(または第2)回転永久磁石の順に流れるループ状の磁束が発生するので、第1および第2回転永久磁石からの各漏洩磁束を低減することができる。これにより、前記ギャップを流れる磁束の磁束密度が大きくなるので、スラスト方向の支持力を高めることができる。
【0014】
(2)前記固定永久磁石部は、前記各第1固定永久磁石の前記固定子側に隣接して配置されるとともに、前記各第2固定永久磁石の前記固定子側と反対側に隣接して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁された一対の環状の第3固定永久磁石をさらに有し、前記回転永久磁石部は、一対の前記第3固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁されるともに、対向する前記第3固定永久磁石と同向きに着磁された一対の環状の第3回転永久磁石をさらに有するのが好ましい。
【0015】
この場合、第3固定永久磁石と第3回転永久磁石との反発力により、回転軸のラジアル方向の支持力をさらに高めることができる。また、支持コイルによって生じる磁束によりスラスト方向の支持力を回転軸に作用させる際に、固定永久磁石部では、第3固定永久磁石により、第1(または第2)固定永久磁石から第2(または第1)固定永久磁石へ磁束が流れ易くなるので、第1および第2固定永久磁石からの漏洩磁束をさらに低減することができる。同様に、回転永久磁石部では、第3回転永久磁石により、第1(または第2)回転永久磁石から第2(または第1)回転永久磁石へ磁束が流れ易くなるので、第1および第2回転永久磁石からの各漏洩磁束をさらに低減することができる。これにより、前記ギャップを流れる磁束の磁束密度がさらに大きくなるので、スラスト方向の支持力をさらに高めることができる。
【0016】
(3)前記固定永久磁石部は、前記各第1固定永久磁石の前記反対側に隣接して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁された一対の環状の第4固定永久磁石と、前記各第2固定永久磁石の前記固定子側に隣接して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁された一対の環状の第5固定永久磁石と、をさらに有し、前記各第4固定永久磁石は、隣接する前記第1固定永久磁石の前記固定子側に隣接している前記第3固定永久磁石と逆向きに着磁され、前記各第5固定永久磁石は、隣接する前記第2固定永久磁石の前記反対側に隣接している前記第3固定永久磁石と逆向きに着磁されているのが好ましい。
【0017】
この場合、支持コイルによって生じる磁束によりスラスト方向の支持力を回転軸に作用させる際に、固定永久磁石部では、第4固定永久磁石→回転永久磁石部とのギャップ(または第1固定永久磁石)→第1固定永久磁石(または回転永久磁石部とのギャップ)→第4固定永久磁石の順に流れるループ状の磁束が発生する。また、固定永久磁石部では、第5固定永久磁石→回転永久磁石部とのギャップ(または第2固定永久磁石)→第2固定永久磁石(または回転永久磁石部とのギャップ)→第5固定永久磁石の順に流れるループ状の磁束が発生する。これにより、前記ギャップを流れる磁束の磁束密度がさらに大きくなるので、スラスト方向の支持力をさらに高めることができる。
【0018】
(4)前記回転永久磁石部は、一対の前記第4固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁されるとともに、対向する前記第4固定永久磁石と同向きに着磁された一対の環状の第4回転永久磁石と、一対の前記第5固定永久磁石それぞれと対向して配置され、前記スラスト方向において互いに逆向きに着磁されるとともに、対向する前記第5固定永久磁石と同向きに着磁された一対の環状の第5回転永久磁石と、をさらに有するのが好ましい。
【0019】
この場合、支持コイルによって生じる磁束によりスラスト方向の支持力を回転軸に作用させる際に、回転永久磁石部では、第4回転永久磁石→固定永久磁石部とのギャップ(または第1回転永久磁石)→第1回転永久磁石(または固定永久磁石部とのギャップ)→第4回転永久磁石の順に流れるループ状の磁束が発生する。また、回転永久磁石部では、第5回転永久磁石→固定永久磁石部とのギャップ(または第2回転永久磁石)→第2回転永久磁石(または固定永久磁石部とのギャップ)→第5回転永久磁石の順に流れるループ状の磁束が発生する。これにより、前記ギャップを流れる磁束の磁束密度がさらに大きくなるので、スラスト方向の支持力をさらに高めることができる。
【0020】
(5)他の観点からみた本発明は、移送流体の吸込口および吐出口を有するハウジングと、前記ハウジングに設けられた、前記(1)から(4)のいずれかに記載の磁気浮上式電動機と、前記回転軸における前記スラスト方向の一端部に設けられたインペラと、前記回転軸側と前記ケーシング側との間を隔てる隔壁部と、を備える磁気浮上式ポンプである。
【0021】
本発明の磁気浮上式ポンプによれば、上記磁気浮上式電動機と同様の作用効果を奏する。特に、磁気浮上式ポンプでは、回転軸側とケーシング側との間を隔てる隔壁部を配置するために、固定永久磁石部と回転永久磁石部とのギャップが大きくなるので、上記作用効果がより有効となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、スラスト方向の1軸を能動制御する磁気浮上式電動機において、ラジアル方向の支持力を確保しつつ、スラスト方向の支持力を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る磁気浮上式ポンプの断面図である。
【
図2】磁気浮上式電動機の一部を拡大した断面図である。
【
図3】
図2の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図4】
図2の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図5】
図2の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図6】
図2の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図7】
図2の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図8】
図2の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図9】本発明の第2実施形態に係る磁気浮上式電動機10の一部を拡大した断面図である。
【
図10】
図9の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図11】
図9の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図12】
図9の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図13】
図9の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図14】
図9の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図15】
図9の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図16】本発明の第3実施形態に係る磁気浮上式電動機10の一部を拡大した断面図である。
【
図17】
図16の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図18】
図16の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図19】本発明の第4実施形態に係る磁気浮上式電動機10の一部を拡大した断面図である。
【
図20】
図19の支持コイルに電流を一方向に付与している状態を示す図である。
【
図21】
図19の支持コイルに電流を他方向に付与している状態を示す図である。
【
図22】従来の1軸制御が行われる磁気浮上式電動機の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
[磁気浮上式ポンプ]
図1は、本発明の第1実施形態に係る磁気浮上式ポンプの断面図である。
図1において、本実施形態の磁気浮上式ポンプ1(以下、単に「ポンプ1」ともいう)は、例えば遠心ポンプからなる。ポンプ1は、ハウジング2と、ポンプ部5と、磁気浮上式電動機10(以下、単に「電動機10」ともいう)と、を備えている。なお、本明細書では、電動機10の軸線Cに沿う方向を「軸方向」といい、
図1の左側を「軸方向一方側」、
図1の右側を「軸方向他方側」という(
図2~
図21も同様)。
【0025】
ハウジング2は、第1ハウジング3と、第1ハウジング3の軸方向一方側に設けられた第2ハウジング4と、を有している。第1ハウジング3は、軸線Cを中心として略有底円筒状に形成されている。具体的には、第1ハウジング3は、円筒部3aと、円筒部3aの軸方向一方側に固定された環状の第1壁部3bと、円筒部3aの軸方向他方側に固定された円板状の第2壁部3cと、を有している。
【0026】
第2ハウジング4は、軸線Cを中心として略円筒状に形成されている。第2ハウジング4の軸方向他方側の端部は、第1ハウジング3の第1壁部3bに連結されている。第2ハウジング4の軸方向一方側の端部には、移送流体を吸い込む吸込口4aが形成されている。第2ハウジング4の外周面には、移送流体を吐出する吐出口4bが形成されている。
【0027】
ポンプ部5は、インペラ6と、隔壁部7と、によって構成されている。インペラ6は、第1ハウジング3内と第2ハウジング4内とに跨って配置されている。インペラ6は、電動機10の回転軸12に一体回転可能に取り付けられている。インペラ6が回転軸12と共に回転することで、吸込口4aから吸い込まれた移送流体が、遠心力によって吐出口4bから吐出されるようになっている。
【0028】
隔壁部7は、電動機10の回転軸12側とケーシング11側との間を隔てるものである。本実施形態の隔壁部7は、電動機10の回転軸12側に設けられた、円筒状の第1隔壁7aと、環状の第2隔壁7bと、円筒状の第3隔壁7cと、を有している。第1隔壁7aは、回転軸12およびインペラ6の各内周面を覆っている。第2隔壁7bは、第1隔壁7aの軸方向他端に固定されている。第2隔壁7bは、回転軸12の軸方向他方側の端面を覆っている。第3隔壁7cは、電動機10の回転軸12側の構成部材(回転軸12、回転子15、および回転永久磁石部30)を外側から覆っている。第3隔壁7cの軸方向一端部は、インペラ6により閉塞された状態で当該インペラ6に固定されている。第3隔壁7cの軸方向他端部は、第2隔壁7bの外周端に固定されている。これにより、第1~第3隔壁7a~7cは、インペラ6および回転軸12と共に回転するようになっている。
【0029】
本実施形態の隔壁部7は、電動機10のケーシング11側に設けられた、有底円筒状の第4隔壁7dと、環状のフランジ7eと、をさらに有している。第4隔壁7dは、第3隔壁7cの径方向外側に配置されている。第4隔壁7dは、電動機10のケーシング11側の構成部材(ケーシング11、固定子14、支持コイル17、および固定永久磁石部20)を内側から覆っている。フランジ7eは、第4隔壁7dの軸方向一端部に設けられ、第1ハウジング3と第2ハウジング4との間に挟まれた状態で保持されている。これにより、第4隔壁7dおよびフランジ7eは、電動機10のケーシング11に固定されている。
【0030】
第1隔壁7aの内周側、第2隔壁7bと第4隔壁7dの底面(軸方向他端面)との間、および第3隔壁7cの外周面と第4隔壁7dの内周面との間には、それぞれ移送流体が流れる流路8a,8b,8cが連続して形成されている。流路8aは、流路8c,8bに流れた移送流体をインペラ6側に戻すためのスルーホールとして機能する。流路8a内を移送流体が流れることで、インペラ6による移送流体の圧送時に発生する軸方向の外乱力を抑制することができる。また、流路8cを流れる移送流体は,流体摩擦によって加熱されるが、その加熱された移送流体を、流路8aを通過してインペラ6側に戻すことで、ポンプ部5内の温度が上昇するのを抑制することができる。さらに、第1隔壁7a~第4隔壁7dは、回転軸12側およびケーシング11側の各構成部材を、各流路8a,8b,8cを流れる移送流体から保護している。
【0031】
[磁気浮上式電動機]
磁気浮上式電動機10は、インペラ6を回転駆動させるものである。磁気浮上式電動機10は、ケーシング11、回転軸12、モータ部13、固定永久磁石部20、回転永久磁石部30、支持コイル17、センサ18、および制御部19を備えている。センサ18および制御部19を除く磁気浮上式電動機10の構成部材11~17は、ハウジング2内に設けられている。
【0032】
ケーシング11は、磁性体によって構成されている。本実施形態のケーシング11は、軸線Cを中心として円筒状に形成された磁性筒部11aと、磁性筒部11aの軸方向一方側に固定された環状の第1磁性壁部11bと、磁性筒部11aの軸方向他方側に固定された環状の第2磁性壁部11cと、を有している。
【0033】
磁性筒部11aの外周面は、第1ハウジング3の円筒部3aの内周面に嵌合されている。第1磁性壁部11bは、第1ハウジング3の第1壁部3bの内面に沿って配置されている。第2磁性壁部11cは、第1ハウジング3の第2壁部3cの内面に沿って配置されている。第1磁性壁部11bの内周側には、軸方向他方側に突出す略円筒状の支持部11dが形成されている。同様に、第2磁性壁部11cの内周側には、軸方向一方側に突出する円筒状の支持部11eが形成されている。
【0034】
回転軸12は、円筒状に形成された磁性体からなり、ケーシング11内において軸線C回りに回転可能に配置される。回転軸12の軸方向一端部は、第1磁性壁部11bの支持部11d内に配置されている。回転軸12の軸方向他端部は、第2磁性壁部11cの支持部11e内に配置されている。回転軸12の軸方向一方側の端面には、インペラ6が固定されている。これにより、回転軸12を軸線C回りに回転させることで、インペラ6が軸線C回りに回転するようになっている。
【0035】
モータ部13は、磁性筒部11aの内周面の軸方向中央部に設けられた固定子14と、固定子14と対向して回転軸12の外周面に設けられた回転子15と、を有している。固定子14は、鉄等の磁性体からなる固定磁性部14aと、固定磁性部14aに巻回された巻線14bと、を有している。回転子15は、回転軸12の周方向に沿って配置された複数の永久磁石15aを有している。固定子14の巻線14bは、制御部19を介して電源(図示省略)に接続されている。固定子14の巻線14bに電流を付与すると、回転磁界が発生することで、回転子15は回転軸12と共を回転する。
【0036】
[固定永久磁石部]
図2は、磁気浮上式電動機10の一部を拡大した断面図である。
図2に示すように、固定永久磁石部20は、ケーシング11に設けられた複数の永久磁石によって構成されている。本実施形態の固定永久磁石部20は、第1固定永久磁石21と、第2固定永久磁石22と、第3固定永久磁石23と、第4固定永久磁石24と、第5固定永久磁石25と、を有している。各固定永久磁石21,22,23,24,25は、環状に形成されている。各固定永久磁石21,22,23,24,25の径方向の厚みは、同一である。
【0037】
第1固定永久磁石21は、モータ部13の固定子14を挟んで、軸線Cに沿うスラスト方向(軸方向)に一対配置されている。一対の第1固定永久磁石21は、スラスト方向一方側の支持部11dの内周面に嵌合して固定された第1固定永久磁石21Aと、スラスト方向他方側の支持部11eの内周面に嵌合して固定された第1固定永久磁石21Bと、からなる。第1固定永久磁石21は、軸線Cと直交するラジアル方向(径方向)に着磁されている。本実施形態では、第1固定永久磁石21は、ラジアル方向の外周側がN極、ラジアル方向の内周側がS極となるように着磁されている。
【0038】
第2固定永久磁石22は、各第1固定永久磁石21の固定子14側に離れて一対配置されている。一対の第2固定永久磁石22は、第1固定永久磁石21Aのスラスト方向他方側に離れて配置された第2固定永久磁石22Aと、第3固定永久磁石23Bのスラスト方向一方側に離れて配置された第2固定永久磁石22Bと、からなる。第2固定永久磁石22Aは、支持部11dの内周面に嵌合して固定されている。第2固定永久磁石22Bは、支持部11eの内周面に嵌合して固定されている。
【0039】
第2固定永久磁石22は、ラジアル方向において第1固定永久磁石21と逆向きに着磁されている。本実施形態では、第2固定永久磁石22は、ラジアル方向の外周側がS極、ラジアル方向の内周側がN極となるように着磁されている。第2固定永久磁石22のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第1固定永久磁石21のスラスト方向の長さと同一である。
【0040】
第3固定永久磁石23は、各第1固定永久磁石21の固定子14側に隣接するとともに、各第2固定永久磁石22の固定子14側と反対側(以下、反固定子14側ともいう)に隣接して、一対配置されている。一対の第3固定永久磁石23は、第1固定永久磁石21Aのスラスト方向他方側に隣接して配置された第3固定永久磁石23Aと、第1固定永久磁石21Bのスラスト方向一方側に隣接して配置された第3固定永久磁石23Bと、からなる。第3固定永久磁石23Aは、支持部11dの内周面に嵌合して固定されている。第3固定永久磁石23Bは、支持部11eの内周面に嵌合して固定されている。
【0041】
第3固定永久磁石23A,23Bは、スラスト方向において互いに逆向きに着磁されている。本実施形態では、第3固定永久磁石23Aは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるように着磁されている。第3固定永久磁石23Bは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるように着磁されている。第3固定永久磁石23のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第1固定永久磁石21のスラスト方向の長さよりも短い。
【0042】
第4固定永久磁石24は、各第1固定永久磁石21の反固定子14側に隣接して一対配置されている。一対の第4固定永久磁石24は、第1固定永久磁石21Aのスラスト方向一方側に隣接して配置された第4固定永久磁石24Aと、第1固定永久磁石21Bのスラスト方向他方側に隣接して配置された第4固定永久磁石24Bと、からなる。第4固定永久磁石24Aは、支持部11dの内周面に嵌合して固定されている。第4固定永久磁石24Bは、支持部11eの内周面に嵌合して固定されている。
【0043】
第4固定永久磁石24A,24Bは、スラスト方向において互いに逆向きに着磁されている。また、第4固定永久磁石24Aは、自身に隣接する第1固定永久磁石21Aの固定子14側に隣接している第3固定永久磁石23Aと逆向きに着磁されている。同様に、第4固定永久磁石24Bは、自身に隣接する第1固定永久磁石21Bの固定子14側に隣接している第3固定永久磁石23Bと逆向きに着磁されている。
【0044】
本実施形態では、第4固定永久磁石24Aは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるように着磁されている。第4固定永久磁石24Bは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるように着磁されている。第4固定永久磁石24のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第3固定永久磁石23のスラスト方向の長さよりも短い。
【0045】
第5固定永久磁石25は、各第2固定永久磁石22の固定子14側に隣接して一対配置されている。一対の第5固定永久磁石25は、第2固定永久磁石22Aのスラスト方向他方側に隣接して配置された第5固定永久磁石25Aと、第2固定永久磁石22Bのスラスト方向一方側に隣接して配置された第5固定永久磁石25Bと、からなる。第5固定永久磁石25Aは、支持部11dの内周面に嵌合して固定されている。第5固定永久磁石25Bは、支持部11eの内周面に嵌合して固定されている。
【0046】
第5固定永久磁石25A,25Bは、スラスト方向において互いに逆向きに着磁されている。また、第5固定永久磁石25Aは、自身に隣接する第2固定永久磁石22Aの反固定子14側に隣接している第3固定永久磁石23Aと逆向きに着磁されている。同様に、第5固定永久磁石25Bは、自身に隣接する第2固定永久磁石22Bの反固定子14側に隣接している第3固定永久磁石23Bと逆向きに着磁されている。
【0047】
本実施形態では、第5固定永久磁石25Aは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるように着磁されている。第5固定永久磁石25Bは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるように着磁されている。第5固定永久磁石25のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第4固定永久磁石24のスラスト方向の長さと同一である。
【0048】
[回転永久磁石部]
回転永久磁石部30は、固定永久磁石部20と対向するように回転軸12の外周面に設けられた複数の永久磁石によって構成されている。本実施形態の回転永久磁石部30は、第1回転永久磁石31と、第2回転永久磁石32と、第3回転永久磁石33と、を有している。各回転永久磁石31,32,33は、環状に形成されている。各回転永久磁石31,32,33の径方向の厚みは、同一である。
【0049】
第1回転永久磁石31は、一対の第1固定永久磁石21それぞれと対向するように一対配置されている。一対の第1回転永久磁石31は、回転軸12のスラスト方向一端部の外周面に嵌合して固定された第1回転永久磁石31Aと、回転軸12のスラスト方向他端部の外周面に嵌合して固定された第1回転永久磁石31Bと、からなる。第1回転永久磁石31Aは、第1固定永久磁石21Aと対向して配置されている。第1回転永久磁石31Bは、第1固定永久磁石21Bと対向して配置されている。
【0050】
第1回転永久磁石31は、ラジアル方向において第1固定永久磁石21と逆向きに着磁されている。本実施形態では、第1回転永久磁石31は、ラジアル方向の外周側がS極、ラジアル方向の内周側がN極となるように着磁されている。第1回転永久磁石31のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第1固定永久磁石21のスラスト方向の長さよりも長い。これにより、第1回転永久磁石31のS極は、第1固定永久磁石21のS極、および第4固定永久磁石24のS極と対向して配置されている。
【0051】
第2回転永久磁石32は、一対の第2固定永久磁石22それぞれと対向するように一対配置されている。一対の第2回転永久磁石32は、第2固定永久磁石22Aに対向して配置される第2回転永久磁石32Aと、第2固定永久磁石22Bに対向して配置される第2回転永久磁石32Bと、からなる。第2回転永久磁石32Aは、第1回転永久磁石31Aのスラスト方向他方側に離れて配置され、回転軸12の外周面に嵌合して固定されている。第2回転永久磁石32Bは、第1回転永久磁石31Bのスラスト方向一方側に離れて配置され、回転軸12の外周面に嵌合して固定されている。
【0052】
第2回転永久磁石32は、ラジアル方向において第2固定永久磁石22と逆向きに着磁されている。本実施形態では、第2回転永久磁石32は、ラジアル方向の外周側がN極、ラジアル方向の内周側がS極となるように着磁されている。第2回転永久磁石32のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第2固定永久磁石22のスラスト方向の長さよりも長い。これにより、第2回転永久磁石32のN極は、第1固定永久磁石21のN極、および第5固定永久磁石25のN極と対向して配置されている。
【0053】
第3回転永久磁石33は、一対の第3固定永久磁石23それぞれと対向するように一対配置されている。一対の第3回転永久磁石33は、第3固定永久磁石23Aに対向して配置される第3回転永久磁石33Aと、第3固定永久磁石23Bに対向して配置される第3回転永久磁石33Bと、からなる。第3回転永久磁石33Aは、第1回転永久磁石31Aのスラスト方向他方側に隣接するとともに第2回転永久磁石32Aのスラスト方向一方側に隣接して配置され、回転軸12の外周面に嵌合して固定されている。第3回転永久磁石33Bは、第1回転永久磁石31Bのスラスト方向一方側に隣接するとともに第2回転永久磁石32Bのスラスト方向他方側に隣接して配置され、回転軸12の外周面に嵌合して固定されている。
【0054】
第3回転永久磁石33A,33Bは、スラスト方向において互いに逆向きに着磁されている。また、第3回転永久磁石33Aは、対向する第3固定永久磁石23Aと同向きに着磁されている。同様に、第3回転永久磁石33Bは、対向する第3固定永久磁石23Bと同向きに着磁されている。本実施形態では、第3回転永久磁石33Aは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるように着磁されている。第3回転永久磁石33Bは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるように着磁されている。第3回転永久磁石33のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第3固定永久磁石23のスラスト方向の長さよりも僅かに短い。
【0055】
以上の構成により、第1固定永久磁石21と第1回転永久磁石31との間、第2固定永久磁石22と第2回転永久磁石32との間、および第3固定永久磁石23と第3回転永久磁石33との間で、それぞれ反発力が作用する。また、第4固定永久磁石24のS極と第1回転永久磁石31のS極との間、および第5固定永久磁石25のN極と第2回転永久磁石32のN極との間で、それぞれ反発力が作用する。これらの反発力によって、互いに対向する第1~第5固定永久磁石21~25と第1~第3回転永久磁石31~33との間には、環状のギャップ(隙間)Gが形成される。そして、前記反発力が回転軸12をラジアル方向に支持する支持力Frとして回転軸12に作用する。これにより、回転軸12は、支持力Frによりケーシング11に対してラジアル方向に非接触で支持される。
【0056】
[支持コイル]
支持コイル17は、回転軸12にスラスト方向の支持力を作用させるためのものである。支持コイル17は、ケーシング11内においてモータ部13の固定子14を挟んでスラスト方向に一対設けられている。一対の支持コイル17は、スラスト方向一方側において磁性筒部11aと第1磁性壁部11bとの角部分に配置された支持コイル17Aと、スラスト方向他方側において磁性筒部11aと第2磁性壁部11cとの角部分に配置された支持コイル17Bと、からなる。
【0057】
支持コイル17A,17Bは、それぞれ固定子14に対してスラスト方向に間隔をあけて配置されている。支持コイル17A,17Bは、それぞれ磁性筒部11aに沿って軸線C回りに巻回されている。支持コイル17A,17Bは、それぞれ制御部19を介して電源(図示省略)に接続されている(
図1参照)。
【0058】
[スラスト方向一方側の支持力]
図3~
図5は、支持コイル17に電流を一方向に付与している状態を示す図である。なお、便宜上、
図3~
図5における各固定永久磁石21~25および各回転永久磁石31~33には、各磁石内の磁束の向きを矢印で示している(
図6~
図8,
図10~
図15,
図17~
図18,
図20~
図21も同様)。
図3に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc1が発生する。磁束Ψc1は、磁性筒部11a、第1磁性壁部11b、スラスト方向一方側の固定永久磁石部20、スラスト方向一方側の回転永久磁石部30、回転軸12、スラスト方向他方側の回転永久磁石部30、スラスト方向他方側の固定永久磁石部20、第2磁性壁部11c、磁性筒部11aの順にループ状に流れる。
【0059】
その際、磁束Ψc1は、スラスト方向一方側において、第1固定永久磁石21Aの磁束Ψ21aで相殺され、第2固定永久磁石22Aの磁束Ψ22aに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Aで疎になり、第2固定永久磁石22Aで密になる。また、磁束Ψc1は、スラスト方向一方側において、第1回転永久磁石31Aの磁束Ψ31aにより重畳され、第2回転永久磁石32Aの磁束Ψ32aで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Aで密になり、第2回転永久磁石32Aで疎になる。
【0060】
一方、磁束Ψc1は、スラスト方向他方側において、第1回転永久磁石31Bの磁束Ψ31bで相殺され、第2回転永久磁石32Bの磁束Ψ32bに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Bで疎になり、第2回転永久磁石32Bで密になる。また、磁束Ψc1は、スラスト方向他方側において、第1固定永久磁石21Bの磁束Ψ21bに重畳され、第2固定永久磁石22Bの磁束Ψ22bで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Bで密になり、第2固定永久磁石22Bで疎になる。
【0061】
以上のように、スラスト方向の一方側および他方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生することで、磁束Ψc1の大部分は、
図4に示すように流れる。すなわち、スラスト方向一方側における磁束Ψc1の大部分は、第2固定永久磁石22Aから第1回転永久磁石31Aに向かって流れるようになる。また、スラスト方向他方側における磁束Ψc1の大部分は、第2回転永久磁石32Bから第1固定永久磁石21Bに向かって流れるようになる。その結果、第1回転永久磁石31Aおよび第2回転永久磁石32Bでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向他方側に向かって磁束Ψc1の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向他方側への支持力Fs1が作用する。
【0062】
本実施形態では、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第3回転永久磁石31~33によって支持力Fs1を高めることができる。その理由を
図5を用いて説明する。
図5に示すように、スラスト方向一方側では、第1~第3固定永久磁石21A~23Aの磁束Ψ21a,Ψ22a,Ψ23aにより、これらの固定永久磁石21A~23Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ20aが発生する。また、スラスト方向一方側では、第1~第3回転永久磁石31A~33Aの磁束Ψ31a,Ψ32a,Ψ33aにより、これらの回転永久磁石31A~33Aの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ30aが発生する。さらに、スラスト方向一方側では、第2および第5固定永久磁石22A,25Aの磁束Ψ22a,Ψ25aにより、これらの固定永久磁石22A,25Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27aが発生する。
【0063】
ループ状の磁束Ψ20aが発生することで、第1~第3固定永久磁石21A~23Aのうちスラスト方向両端に配置された第1固定永久磁石21Aおよび第2固定永久磁石22Aからの各漏洩磁束を低減することができる。同様に、ループ状の磁束Ψ30aが発生することで、第1~第3回転永久磁石31A~33Aのうちスラスト方向両端に配置された第1回転永久磁石31Aおよび第2回転永久磁石32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。さらに、ループ状の磁束Ψ27aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20a,Ψ27aの間を磁束Ψc1が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc1の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs1を高めることができる。
【0064】
一方、スラスト方向他方側では、第1~第3固定永久磁石21B~23Bの磁束Ψ21b,Ψ22b,Ψ23bにより、これらの固定永久磁石21B~23Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ20bが発生する。また、スラスト方向他方側では、第1~第3回転永久磁石31B~33Bの磁束Ψ31b,Ψ32b,Ψ33bにより、これらの回転永久磁石31B~33Bの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ30bが発生する。さらに、スラスト方向他方側では、第1および第4固定永久磁石21B,24Bの磁束Ψ21b,Ψ24bにより、これらの固定永久磁石21B,24Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26bが発生する。
【0065】
ループ状の磁束Ψ20bが発生することで、第1~第3固定永久磁石21B~23Bのうちスラスト方向両端に配置された第1固定永久磁石21Bおよび第2固定永久磁石22Bからの各漏洩磁束を低減することができる。また、ループ状の磁束Ψ30bが発生することで、第1~第3回転永久磁石31B~33Bのうちスラスト方向両端に配置された第1回転永久磁石31Bおよび第2回転永久磁石32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。さらに、ループ状の磁束Ψ26bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20b,Ψ26bの間を磁束Ψc1が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc1の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs1をさらに高めることができる。
【0066】
[スラスト方向他方側の支持力]
図6~
図8は、支持コイル17に電流を他方向に付与している状態を示す図である。
図6に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc2が発生する。磁束Ψc2は、磁性筒部11a、第2磁性壁部11c、スラスト方向他方側の固定永久磁石部20、スラスト方向他方側の回転永久磁石部30、回転軸12、スラスト方向一方側の回転永久磁石部30、スラスト方向一方側の固定永久磁石部20、第1磁性壁部11b、磁性筒部11aの順にループ状に流れる。
【0067】
その際、磁束Ψc2は、スラスト方向他方側において、第1固定永久磁石21Bの磁束Ψ21bで相殺され、第2固定永久磁石22Bの磁束Ψ22bに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Bで疎になり、第2固定永久磁石22Bで密になる。また、磁束Ψc2は、スラスト方向他方側において、第1回転永久磁石31Bの磁束Ψ31bにより重畳され、第2回転永久磁石32Bの磁束Ψ32bで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Bで密になり、第2回転永久磁石32Bで疎になる。
【0068】
一方、磁束Ψc2は、スラスト方向一方側において、第1回転永久磁石31Aの磁束Ψ31aで相殺され、第2回転永久磁石32Aの磁束Ψ32aに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Aで疎になり、第2回転永久磁石32Aで密になる。また、磁束Ψc2は、スラスト方向一方側において、第1固定永久磁石21Aの磁束Ψ21aに重畳され、第2回転永久磁石32Aの磁束Ψ32aで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Aで密になり、第2回転永久磁石32Aで疎になる。
【0069】
以上のように、スラスト方向の他方側および一方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生することで、磁束Ψc2の大部分は、
図7に示すように流れる。すなわち、スラスト方向他方側における磁束Ψc2の大部分は、第2固定永久磁石22Bから第1回転永久磁石31Bに向かって流れるようになる。また、スラスト方向一方側における磁束Ψc2の大部分は、第2回転永久磁石32Aから第1固定永久磁石21Aに向かって流れるようになる。その結果、第1回転永久磁石31Bおよび第2回転永久磁石32Aでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向一方側に向かって磁束Ψc2の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向一方側への支持力Fs2が作用する。
【0070】
本実施形態では、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第3回転永久磁石31~33によって支持力Fs2を高めることができる。その理由を
図8を用いて説明する。
図8に示すように、スラスト方向一方側では、
図5に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20a、およびループ状の磁束Ψ30aが発生する。さらに、スラスト方向一方側では、第1および第4固定永久磁石21A,24Aの磁束Ψ21a,Ψ24aにより、これらの固定永久磁石21A,24Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26aが発生する。
【0071】
ループ状の磁束Ψ20aが発生することで、第1固定永久磁石21Aおよび第2固定永久磁石22Aからの各漏洩磁束を低減することができる。また、ループ状の磁束Ψ30aが発生することで、第1回転永久磁石31Aおよび第2回転永久磁石32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。さらに、ループ状の磁束Ψ26aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ26a,Ψ20aの間を磁束Ψc2が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc2の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs1を高めることができる。
【0072】
一方、スラスト方向他方側では、
図5に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20b、およびループ状の磁束Ψ30bが発生する。さらに、スラスト方向他方側では、第2および第5固定永久磁石22B,25Bの磁束Ψ22b,Ψ25bにより、これらの固定永久磁石22B,25Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27bが発生する。
【0073】
ループ状の磁束Ψ20bが発生することとで、第1固定永久磁石21Bおよび第2固定永久磁石22Bからの各漏洩磁束を低減することができる。また、ループ状の磁束Ψ30bが発生することで、第1回転永久磁石31Bおよび第2回転永久磁石32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。さらに、ループ状の磁束Ψ27bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ27b,Ψ20bの間を磁束Ψc2が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc2の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs2をさらに高めることができる。
【0074】
[センサ]
図1において、センサ18は、ハウジング2の第2壁部3cに取り付けられている。センサ18は、ケーシング11に対する回転軸12のスラスト方向の位置を検出する。センサ18は、例えば、回転軸12のスラスト方向他端部に設けられたセンサーターゲット(図示省略)の変位を検出する変位センサである。センサ18は、制御部19に接続されている。センサ18の検出信号は、制御部19に入力される。
【0075】
[制御部]
制御部19は、CPU等を有するコンピュータを備えて構成されている。制御部19は、ハウジング2の外側に配置されている。制御部19は、モータ部13の巻線14bに付与する電流を制御し、回転子15の回転速度を調整する。また、制御部19は、回転軸12に対して、スラスト方向の1軸(軸方向)だけを能動制御する、いわゆる1軸制御を行う。回転軸12に対するラジアル方向の4軸(軸方向と直交する2軸方向と当該2軸それぞれの軸回り)は、固定永久磁石部20と回転永久磁石部30との反発力によって受動制御される。
【0076】
前記1軸制御において、制御部19は、センサ18の検出信号に基づいて、支持コイル17に付与する電流の大きさと方向を制御し、回転軸12に作用させるスラスト方向の支持力Fs1,Fs2を調整することで、回転軸12を
図1に示す所定の支持位置に保持する。前記支持位置は、ハウジング2に対して回転軸12がスラスト方向およびラジアル方向にそれぞれ非接触の状態で支持される位置である。支持力Fs1,Fs2の具体的な調整について、以下説明する。
【0077】
回転軸12と共にインペラ6が回転されると、ハウジング2内の吸込口4a付近が負圧となり、その負圧によって吸込口4aからハウジング2内に移送流体が吸い込まれる。その際、前記負圧によって、回転軸12にはスラスト方向一方側(吸込口4a側)に向かう外力が作用する。その外力によって回転軸12は、
図1に示す支持位置からスラスト方向一方側にずれる。制御部19は、前記外力により回転軸12の軸方向一端がハウジング2に接触しないように、センサ18の検出信号に基づいて、支持コイル17に付与する電流の大きさと方向を制御し、スラスト方向他方側への支持力Fs1を回転軸12に作用させる(
図4参照)。
【0078】
回転軸12が前記支持位置にあるとき、第1~第3回転永久磁石31~33は、第1~第5固定永久磁石21~25に対してスラスト方向他方側に僅かにずれている。この状態から電動機10の駆動を停止し、支持コイル17に電流が付与されなくなると、固定永久磁石部20と回転永久磁石部30との反発力により、回転軸12にはスラスト方向他方側へ押し出す力が作用する。この押し出し力によって、回転軸12は、前記支持位置からスラスト方向他方側に移動し、第2隔壁7bが第4隔壁7dのスラスト方向他端部に押し当てられた状態で保持される。これにより、電動機10の駆動を停止したときに、回転軸12のスラスト方向他方側への移動が規制されるので、インペラ6が第2ハウジング4の内面に接触して損傷するのを抑制することができる。
【0079】
上記のように回転軸12がスラスト方向他方側で保持されている状態から電動機10を駆動させる際、制御部19は、前記押し出し力に抗して回転軸12を前記支持位置に戻すために、支持コイル17に付与する電流の大きさと方向を制御し、スラスト方向一方側への支持力Fs2を回転軸12に作用させる(
図7参照)。
【0080】
[作用効果]
第1実施形態によれば、第1~第3固定永久磁石21~23と第1~第3回転永久磁石31~33との各反発力、第4固定永久磁石24のS極と第1回転永久磁石31のS極との反発力、および第5固定永久磁石25のN極と第2回転永久磁石32のN極との反発力により、回転軸12をラジアル方向に非接触で支持することができる。これにより、従来の1組の固定永久磁石と1組の回転永久磁石との反発力だけで回転軸を支持する場合よりもラジアル方向の支持力Frを高めることができる。したがって、固定永久磁石部20と回転永久磁石部30とのギャップGが大きくなっても、回転軸12のラジアル方向の支持力Frを確保することができる。
【0081】
また、支持コイル17によって生じる磁束Ψc1,Ψc2は、回転軸12のスラスト方向両端部それぞれにおいて、第1固定永久磁石21および第2固定永久磁石22のうちの一方の磁束に重畳されるとともに他方の磁束で相殺され、第1回転永久磁石31および第2回転永久磁石32のうちの一方の磁束に重畳されるとともに他方の磁束で相殺される。これにより、回転軸12のスラスト方向両端部それぞれにおいて、磁界の磁束密度に疎密が発生する。その結果、支持コイル17によって生じる磁束Ψc1,Ψc2が、重畳された第1固定永久磁石21および第2回転永久磁石32の間(または重畳された第2固定永久磁石22および第1回転永久磁石31の間)を流れることで、回転軸12をスラスト方向に支持する支持力Fs1,Fs2を発生させることができる。
【0082】
また、支持コイル17によって生じる磁束Ψc1,Ψc2によりスラスト方向の支持力Fs1,Fs2を回転軸12に作用させる際に、固定永久磁石部20では、第1~第3固定永久磁石21~23によりループ状の磁束Ψ20a,Ψ20bが発生する。また、回転永久磁石部30では、第1~第3回転永久磁石31~33により、ループ状の磁束Ψ30a,Ψ30bが発生する。ループ状の磁束Ψ20a,Ψ20bにより、第1固定永久磁石21および第2固定永久磁石22からの漏洩磁束を低減することができる。また、ループ状の磁束Ψ30a,Ψ30bにより、第1回転永久磁石31および第2回転永久磁石32からの各漏洩磁束を低減することができる。これにより、ギャップGを流れるΨc1,Ψc2の磁束密度が大きくなるので、スラスト方向の支持力Fs1,Fs2を高めることができる。
【0083】
特に、本実施形態の磁気浮上式ポンプ1では、ケーシング11側と回転軸12側との間を隔てる隔壁部7を配置するために、固定永久磁石部20と回転永久磁石部30とのギャップGが大きくなる。このため、上記のようにラジアル方向の支持力Frを確保しつつ、スラスト方向の支持力Fs1,Fs2を高めることが、より有効となる。
【0084】
また、支持コイル17によって生じる磁束Ψc1,Ψc2によりスラスト方向の支持力Fs1,Fs2を回転軸12に作用させる際に、固定永久磁石部20では、第4固定永久磁石24および第5固定永久磁石25により、ループ状の磁束Ψ26a,Ψ26b,Ψ27a,Ψ27bが発生する。これにより、ギャップGを流れる磁束Ψc1,Ψc2の磁束密度がさらに大きくなるので、スラスト方向の支持力Fs1,Fs2をさらに高めることができる。
【0085】
<第2実施形態>
図9は、本発明の第2実施形態に係る磁気浮上式電動機10の一部を拡大した断面図である。本実施形態の電動機10では、第1~第5固定永久磁石21~25の各着磁方向、および第1~第3回転永久磁石31~33の各着磁方向が、第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0086】
[固定永久磁石部]
第1固定永久磁石21は、ラジアル方向の外周側がS極、ラジアル方向の内周側がN極となるようにラジアル方向に着磁されている。第2固定永久磁石22は、ラジアル方向の外周側がN極、ラジアル方向の内周側がS極となるようにラジアル方向に着磁されている。第3固定永久磁石23Aは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるようにスラスト方向に着磁されている。第3固定永久磁石23Bは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるようにスラスト方向に着磁されている。
【0087】
第4固定永久磁石24Aは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるようにスラスト方向に着磁されている。第4固定永久磁石24Bは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるようにスラスト方向に着磁されている。第5固定永久磁石25Aは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるようにスラスト方向に着磁されている。第5固定永久磁石25Bは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるようにスラスト方向に着磁されている。
【0088】
[回転永久磁石部]
第1回転永久磁石31は、ラジアル方向の外周側がN極、ラジアル方向の内周側がS極となるようにラジアル方向に着磁されている。第2回転永久磁石32は、ラジアル方向の外周側がS極、ラジアル方向の内周側がN極となるように着磁されている。第3回転永久磁石33Aは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるようにスラスト方向に着磁されている。第3回転永久磁石33Bは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるようにスラスト方向に着磁されている。
【0089】
以上の構成により、第1固定永久磁石21と第1回転永久磁石31との間、第2固定永久磁石22と第2回転永久磁石32との間、および第3固定永久磁石23と第3回転永久磁石33との間で、それぞれ反発力が作用する。また、第4固定永久磁石24のN極と第1回転永久磁石31のN極との間、および第5固定永久磁石25のS極と第2回転永久磁石32のS極との間で、それぞれ反発力が作用する。これらの反発力によって、互いに対向する第1~第5固定永久磁石21~25と第1~第3回転永久磁石31~33との間には、環状のギャップGが形成される。そして、前記反発力が回転軸12をラジアル方向に支持する支持力Frとして回転軸12に作用する。これにより、回転軸12は、支持力Frによりケーシング11に対してラジアル方向に非接触で支持される。
【0090】
[スラスト方向一方側の支持力]
図10~
図12は、本実施形態において支持コイル17に電流を一方向に付与している状態を示す図である。
図10に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc3が発生する。磁束Ψc3は、磁性筒部11a、第2磁性壁部11c、スラスト方向他方側の固定永久磁石部20、スラスト方向他方側の回転永久磁石部30、回転軸12、スラスト方向一方側の回転永久磁石部30、スラスト方向一方側の固定永久磁石部20、第1磁性壁部11b、磁性筒部11aの順にループ状に流れる。
【0091】
その際、磁束Ψc3は、スラスト方向他方側において、第1固定永久磁石21Bの磁束Ψ21bに重畳され、第2固定永久磁石22Bの磁束Ψ22bで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Bで密になり、第2固定永久磁石22Bで疎になる。また、磁束Ψc3は、スラスト方向他方側において、第1回転永久磁石31Bの磁束Ψ31bで相殺され、第2回転永久磁石32Bの磁束Ψ32bに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Bで疎になり、第2回転永久磁石32Bで密になる。
【0092】
一方、磁束Ψc3は、スラスト方向一方側において、第1回転永久磁石31Aの磁束Ψ31aに重畳され、第2回転永久磁石32Aの磁束Ψ32aで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Aで密になり、第2回転永久磁石32Aで疎になる。また、磁束Ψc3は、スラスト方向一方側において、第1固定永久磁石21Aの磁束Ψ21aで相殺され、第2固定永久磁石22Aの磁束Ψ22aに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Aで疎になり、第2固定永久磁石22Aで密になる。
【0093】
以上のように、スラスト方向の他方側および一方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生することで、磁束Ψc3の大部分は、
図11に示すように流れる。すなわち、スラスト方向他方側における磁束Ψc3の大部分は、第1固定永久磁石21Bから第2回転永久磁石32Bに向かって流れるようになる。また、スラスト方向一方側における磁束Ψc3の大部分は、第1回転永久磁石31Aから第2固定永久磁石22Aに向かって流れるようになる。その結果、第2回転永久磁石32Bおよび第1回転永久磁石31Aでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向他方側に向かって磁束Ψc3の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向他方側への支持力Fs1が作用する。
【0094】
本実施形態においても、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第3回転永久磁石31~33によって支持力Fs1を高めることができる。その理由を
図12を用いて説明する。
図12に示すように、スラスト方向一方側では、第1~第3固定永久磁石21A~23Aの磁束Ψ21a~Ψ23aにより、これらの固定永久磁石21A~23Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ20aが発生する。また、スラスト方向一方側では、第1~第3回転永久磁石31A~33Aの磁束Ψ31a~Ψ33aにより、これらの回転永久磁石31A~33Aの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ30aが発生する。さらに、スラスト方向一方側では、第2および第5固定永久磁石22A,25Aの磁束Ψ22a,Ψ25aにより、これらの固定永久磁石22A,25Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27aが発生する。
【0095】
ループ状の磁束Ψ20aが発生することで、第1固定永久磁石21Aおよび第2固定永久磁石22Aからの各漏洩磁束を低減することができる。また、ループ状の磁束Ψ30aが発生することで、第1回転永久磁石31Aおよび第2回転永久磁石32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。さらに、ループ状の磁束Ψ27aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20a,Ψ27aの間を磁束Ψc3が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc3の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs1を高めることができる。
【0096】
一方、スラスト方向他方側では、第1~第3固定永久磁石21B~23Bの磁束Ψ21b~Ψ23bにより、これらの固定永久磁石21B~23Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ20bが発生する。また、スラスト方向他方側では、第1~第3回転永久磁石31B~33Bの磁束Ψ31b~Ψ33bにより、これらの回転永久磁石31B~33Bの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ30bが発生する。さらに、スラスト方向他方側では、第1および第4固定永久磁石21B,24Bの磁束Ψ21b,Ψ24bにより、これらの固定永久磁石21B,24Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26bが発生する。
【0097】
ループ状の磁束Ψ20bが発生することで、第1固定永久磁石21Bおよび第2固定永久磁石22Bからの各漏洩磁束を低減することができる。また、ループ状の磁束Ψ30bが発生することで、第1回転永久磁石31Bおよび第2回転永久磁石32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。さらに、ループ状の磁束Ψ26bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20b,Ψ26bの間を磁束Ψc3が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc3の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs1をさらに高めることができる。
【0098】
[スラスト方向他方側の支持力]
図13~
図15は、本実施形態において支持コイル17に電流を他方向に付与している状態を示す図である。
図13に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc4が発生する。磁束Ψc4は、磁性筒部11a、第1磁性壁部11b、スラスト方向一方側の固定永久磁石部20、スラスト方向一方側の回転永久磁石部30、回転軸12、スラスト方向他方側の回転永久磁石部30、スラスト方向他方側の固定永久磁石部20、第2磁性壁部11c、磁性筒部11aの順にループ状に流れる。
【0099】
その際、磁束Ψc4は、スラスト方向一方側において、第1固定永久磁石21Aの磁束Ψ21aに重畳され、第2固定永久磁石22Aの磁束Ψ22aで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Aで密になり、第2固定永久磁石22Aで疎になる。また、磁束Ψc4は、スラスト方向一方側において、第1回転永久磁石31Aの磁束Ψ31aで相殺され、第2回転永久磁石32Aの磁束Ψ32aに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Aで疎になり、第2回転永久磁石32Aで密になる。
【0100】
一方、磁束Ψc4は、スラスト方向他方側において、第1回転永久磁石31Bの磁束Ψ31bにより重畳され、第2回転永久磁石32Bの磁束Ψ32bで相殺される。これにより、磁界の磁束密度は、第1回転永久磁石31Bで密になり、第2回転永久磁石32Bで疎になる。また、磁束Ψc4は、スラスト方向他方側において、第1固定永久磁石21Bの磁束Ψ21bで相殺され、第2固定永久磁石22Bの磁束Ψ22bに重畳される。これにより、磁界の磁束密度は、第1固定永久磁石21Bで疎になり、第2固定永久磁石22Bで密になる。
【0101】
以上のように、スラスト方向の一方側および他方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生することで、磁束Ψc4の大部分は、
図14に示すように流れる。すなわち、スラスト方向一方側における磁束Ψc4の大部分は、第1固定永久磁石21Aから第2回転永久磁石32Aに向かって流れるようになる。また、スラスト方向他方側における磁束Ψc4の大部分は、第1回転永久磁石31Bから第2固定永久磁石22Bに向かって流れるようになる。その結果、第2回転永久磁石32Aおよび第1回転永久磁石31Bでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向一方側に向かって磁束Ψc4の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向他一方側への支持力Fs2が作用する。
【0102】
本実施形態においても、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第3回転永久磁石31~33によって支持力Fs2を高めることができる。その理由を
図15を用いて説明する。
図15に示すように、スラスト方向一方側では、
図12に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20a、およびループ状の磁束Ψ30aが発生する。ループ状の磁束Ψ20a,Ψ30aが発生することで、第1および第2固定永久磁石21A,22Aからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31A,32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0103】
さらに、スラスト方向一方側では、第1および第4固定永久磁石21A,24Aの磁束Ψ21a,Ψ24aにより、これらの固定永久磁石21A,24Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26aが発生する。ループ状の磁束Ψ26aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ26a,Ψ20aの間を磁束Ψc4が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc4の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs2を高めることができる。
【0104】
一方、スラスト方向他方側では、
図12に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20b、およびループ状の磁束Ψ30bが発生する。ループ状の磁束Ψ20b,Ψ30bが発生することで、第1および第2固定永久磁石21B,22Bからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31B,32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0105】
さらに、スラスト方向他方側では、第2および第5固定永久磁石22B,25Bの磁束Ψ22b,Ψ25bにより、これらの固定永久磁石22B,25Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27bが発生する。ループ状の磁束Ψ27bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ27b,Ψ20bの間を磁束Ψc4が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc4の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs2さらに高めることができる。
【0106】
本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。以上より、本実施形態のポンプ1および電動機10においても、第1実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0107】
<第3実施形態>
図16は、本発明の第3実施形態に係る磁気浮上式電動機10の一部を拡大した断面図である。本実施形態は、第1実施形態の変形例である。本実施形態の電動機10では、回転永久磁石部30の構成が、第1実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0108】
[回転永久磁石部]
本実施形態の回転永久磁石部30は、第1~第3回転永久磁石31~33に加えて、第4回転永久磁石34と、第5回転永久磁石35と、を有している。各回転永久磁石31~35は、環状に形成されている。各回転永久磁石31~35の径方向の厚みは、同一である。
【0109】
第1回転永久磁石31は、一対の第1固定永久磁石21それぞれと対向するように一対配置されている。第1回転永久磁石31のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第1固定永久磁石21のスラスト方向の長さと同一である。第2回転永久磁石32は、一対の第2固定永久磁石22それぞれと対向するように一対配置されている。第2回転永久磁石32のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第2固定永久磁石22のスラスト方向の長さと同一である。
【0110】
第4回転永久磁石34は、一対の第4固定永久磁石24それぞれと対向するように一対配置されている。一対の第4回転永久磁石34は、第4固定永久磁石24Aに対向して配置される第4回転永久磁石34Aと、第4固定永久磁石24Bに対向して配置される第4回転永久磁石34Bと、からなる。
【0111】
第4回転永久磁石34A,34Bは、スラスト方向において互いに逆向きに着磁されている。また、第4回転永久磁石34Aは、対向する第4固定永久磁石24Aと同向きに着磁されている。同様に、第4回転永久磁石34Bは、対向する第4固定永久磁石24Bと同向きに着磁されている。本実施形態では、第4回転永久磁石34Aは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるように着磁されている。第4回転永久磁石34Bは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるように着磁されている。第4回転永久磁石34のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第4固定永久磁石24のスラスト方向の長さと同一である。
【0112】
第5回転永久磁石35は、一対の第5固定永久磁石25それぞれと対向するように一対配置されている。一対の第5回転永久磁石35は、第5固定永久磁石25Aに対向して配置される第5回転永久磁石35Aと、第5固定永久磁石25Bに対向して配置される第5回転永久磁石35Bと、からなる。
【0113】
第5回転永久磁石35A,35Bは、スラスト方向において互いに逆向きに着磁されている。また、第5回転永久磁石35Aは、対向する第5固定永久磁石25Aと同向きに着磁されている。同様に、第5回転永久磁石35Bは、対向する第5固定永久磁石25Bと同向きに着磁されている。本実施形態では、第5回転永久磁石35Aは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるように着磁されている。第5回転永久磁石35Bは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるように着磁されている。第5回転永久磁石35のスラスト方向の長さは、特に限定されないが、本実施形態では第5固定永久磁石25のスラスト方向の長さと同一である。
【0114】
以上の構成により、第1固定永久磁石21と第1回転永久磁石31との間、第2固定永久磁石22と第2回転永久磁石32との間、第3固定永久磁石23と第3回転永久磁石33との間、第4固定永久磁石24と第4回転永久磁石34との間、および第5固定永久磁石25と第5回転永久磁石35との間で、それぞれ反発力が作用する。これらの反発力によって、互いに対向する第1~第5固定永久磁石21~25と第1~第5回転永久磁石31~35との間には、環状のギャップGが形成される。そして、前記反発力が回転軸12をラジアル方向に支持する支持力Frとして回転軸12に作用する。これにより、回転軸12は、第1実施形態(
図3参照)よりも大きな支持力Frによりケーシング11に対してラジアル方向に非接触で支持される。
【0115】
[スラスト方向一方側の支持力]
図17は、本実施形態において支持コイル17に電流を一方向に付与している状態を示す図である。
図17に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc5が発生する。磁束Ψc5は、第1実施形態の磁束Ψc1(
図3参照)と同様に、ループ状に流れることで、スラスト方向の一方側および他方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生する。
【0116】
これにより、磁束Ψc5の大部分は、
図17に示すように流れる。すなわち、スラスト方向一方側における磁束Ψc5の大部分は、第2固定永久磁石22Aから第1回転永久磁石31Aに向かって流れるようになる。また、スラスト方向他方側における磁束Ψc5の大部分は、第2回転永久磁石32Bから第1固定永久磁石21Bに向かって流れるようになる。その結果、第1回転永久磁石31Aおよび第2回転永久磁石32Bでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向他方側に向かって磁束Ψc5の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向他方側への支持力Fs1が作用する。
【0117】
本実施形態においても、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第5回転永久磁石31~35によって支持力Fs1を高めることができる。その理由について、以下説明する。スラスト方向一方側では、第1実施形態(
図5参照)と同様に、ループ状の磁束Ψ20a、およびループ状の磁束Ψ30aが発生する。ループ状の磁束Ψ20a,Ψ30aが発生することで、第1および第2固定永久磁石21A,22Aからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31A,32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0118】
さらに、スラスト方向一方側では、第1実施形態(
図5参照)と同様に、固定永久磁石22A,25Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27aが発生する。ループ状の磁束Ψ27aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20a,Ψ27aの間を磁束Ψc5が流れ易くなる。また、第1および第4回転永久磁石31A,34Aの磁束Ψ31a,Ψ34aにより、これらの回転永久磁石31A,34Aの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ36aが発生する。ループ状の磁束Ψ36aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ36a,Ψ30aの間を磁束Ψc5が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc5の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs1を高めることができる。
【0119】
一方、スラスト方向他方側では、第1実施形態(
図5参照)と同様に、ループ状の磁束Ψ20b、およびループ状の磁束Ψ30bが発生する。ループ状の磁束Ψ20b,Ψ30bが発生することで、第1および第2固定永久磁石21B,22Bからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31B,32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0120】
さらに、スラスト方向他方側では、第1実施形態(
図5参照)と同様に、固定永久磁石21B,24Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26bが発生する。ループ状の磁束Ψ26bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20b,Ψ26bの間を磁束Ψc5が流れ易くなる。また、第2および第5回転永久磁石32B,35Bの磁束Ψ32b,Ψ35bにより、これらの回転永久磁石32B,35Bの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ37bが発生する。ループ状の磁束Ψ37bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ37b,Ψ30bの間を磁束Ψc5が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc5の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs1をさらに高めることができる。
【0121】
[スラスト方向他方側の支持力]
図18は、本実施形態において支持コイル17に電流を他方向に付与している状態を示す図である。
図18に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc6が発生する。磁束Ψc6は、第1実施形態の磁束Ψc2(
図6参照)と同様に、ループ状に流れることで、スラスト方向の一方側および他方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生する。
【0122】
これにより、磁束Ψc6の大部分は、
図18に示すように流れる。すなわち、スラスト方向他方側における磁束Ψc6の大部分は、第2固定永久磁石22Bから第1回転永久磁石31Bに向かって流れるようになる。また、スラスト方向一方側における磁束Ψc6の大部分は、第2回転永久磁石32Aから第1固定永久磁石21Aに向かって流れるようになる。その結果、第1回転永久磁石31Bおよび第2回転永久磁石32Aでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向一方側に向かって磁束Ψc6の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向一方側への支持力Fs2が作用する。
【0123】
本実施形態においても、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第5回転永久磁石31~35によって支持力Fs2を高めることができる。その理由について、以下説明する。スラスト方向一方側では、
図17に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20a、およびループ状の磁束Ψ30aが発生する。ループ状の磁束Ψ20a,Ψ30aが発生することで、第1および第2固定永久磁石21A,22Aからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31A,32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0124】
さらに、スラスト方向一方側では、第1実施形態(
図8参照)と同様に、固定永久磁石21A,24Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26aが発生する。ループ状の磁束Ψ26aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ26a,Ψ20aの間を磁束Ψc6が流れ易くなる。また、第2および第5回転永久磁石32A,35Aの磁束Ψ32a,Ψ35aにより、これらの回転永久磁石32A,35Aの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ37aが発生する。ループ状の磁束Ψ37aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ30a,Ψ37aの間を磁束Ψc6が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc6の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs2を高めることができる。
【0125】
一方、スラスト方向他方側では、
図17に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20b、およびループ状の磁束Ψ30bが発生する。ループ状の磁束Ψ20b,Ψ30bが発生することで、第1および第2固定永久磁石21B,22Bからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31B,32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0126】
さらに、スラスト方向他方側では、第1実施形態(
図8参照)と同様に、固定永久磁石22B,25Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27bが発生する。ループ状の磁束Ψ27bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ27b,Ψ20bの間を磁束Ψc6が流れ易くなる。また、第1および第4回転永久磁石31B,34Bの磁束Ψ31b,Ψ34bにより、これらの回転永久磁石31B,34Bの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ36bが発生する。ループ状の磁束Ψ36bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ30b,Ψ36bの間を磁束Ψc6が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc6の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs2をさらに高めることができる。本実施形態の他の構成は、第1実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0127】
[作用効果]
第3実施形態によれば、第1~第3固定永久磁石21~23と第1~第3回転永久磁石31~33との各反発力、第4固定永久磁石24と第4回転永久磁石34との反発力、および第5固定永久磁石25と第5回転永久磁石35との反発力が作用するので、ラジアル方向の支持力Frをさらに高めることができる。したがって、固定永久磁石部20と回転永久磁石部30とのギャップGがさらに大きくなっても、回転軸12のラジアル方向の支持力Frを確保することができる。
【0128】
また、支持コイル17によって生じる磁束Ψc5,Ψc6は、回転軸12のスラスト方向両端部それぞれにおいて、第1固定永久磁石21および第2固定永久磁石22のうちの一方の磁束に重畳されるとともに他方の磁束で相殺され、第1回転永久磁石31および第2回転永久磁石32のうちの一方の磁束に重畳されるとともに他方の磁束で相殺される。これにより、回転軸12のスラスト方向両端部それぞれにおいて、磁界の磁束密度に疎密が発生する。その結果、支持コイル17によって生じる磁束Ψc5,Ψc6が、重畳された第1固定永久磁石21および第2回転永久磁石32の間(または重畳された第2固定永久磁石22および第1回転永久磁石31の間)を流れることで、回転軸12をスラスト方向に支持する支持力Fs1,Fs2を発生させることができる。
【0129】
また、支持コイル17によって生じる磁束Ψc5,Ψc6によりスラスト方向の支持力Fs1,Fs2を回転軸12に作用させる際に、固定永久磁石部20では、第1~第3固定永久磁石21~23によりループ状の磁束Ψ20a,Ψ20bが発生する。また、回転永久磁石部30では、第1~第3回転永久磁石31~33により、ループ状の磁束Ψ30a,Ψ30bが発生する。ループ状の磁束Ψ20a,Ψ20bにより、第1固定永久磁石21および第2固定永久磁石22からの漏洩磁束を低減することができる。また、ループ状の磁束Ψ30a,Ψ30bにより、第1回転永久磁石31および第2回転永久磁石32からの各漏洩磁束を低減することができる。これにより、ギャップGを流れるΨc5,Ψc26磁束密度が大きくなるので、スラスト方向の支持力Fs1,Fs2を高めることができる。
【0130】
また、支持コイル17によって生じる磁束Ψc5,Ψc6によりスラスト方向の支持力Fs1,Fs2を回転軸12に作用させる際に、固定永久磁石部20では、第4固定永久磁石24および第5固定永久磁石25により、ループ状の磁束Ψ27a,Ψ27b,Ψ26a,Ψ26bが発生する。また、回転永久磁石部30では、第4回転永久磁石34および第5回転永久磁石35により、ループ状の磁束Ψ36a,Ψ36b,Ψ37a,Ψ37b,が発生する。これにより、ギャップGを流れる磁束Ψc5,Ψc6の磁束密度がさらに大きくなるので、スラスト方向の支持力Fs1,Fs2をさらに高めることができる。
【0131】
<第4実施形態>
図19は、本発明の第4実施形態に係る磁気浮上式電動機10の一部を拡大した断面図である。本実施形態は、第3実施形態の変形例である。本実施形態の電動機10では、第1~第5固定永久磁石21~25の各着磁方向、および第1~第5回転永久磁石31~35の各着磁方向が、第3実施形態と相違する。以下、その相違点について説明する。
【0132】
第1~第5固定永久磁石21~25の各着磁方向、および第1~第3回転永久磁石31~33の各着磁方向は、第2実施形態(
図9参照)と同様であるため、説明を省略する。第4回転永久磁石34Aは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるようにスラスト方向に着磁されている。第4回転永久磁石34Bは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるようにスラスト方向に着磁されている。第5回転永久磁石35Aは、スラスト方向の一方側がS極、スラスト方向の他方側がN極となるようにスラスト方向に着磁されている。第5回転永久磁石35Bは、スラスト方向の一方側がN極、スラスト方向の他方側がS極となるようにスラスト方向に着磁されている。
【0133】
以上の構成により、第1固定永久磁石21と第1回転永久磁石31との間、第2固定永久磁石22と第2回転永久磁石32との間、第3固定永久磁石23と第3回転永久磁石33との間、第4固定永久磁石24と第4回転永久磁石34との間、および第5固定永久磁石25と第5回転永久磁石35との間で、それぞれ反発力が作用する。これらの反発力によって、互いに対向する第1~第5固定永久磁石21~25と第1~第5回転永久磁石31~35との間には、環状のギャップGが形成される。そして、前記反発力が回転軸12をラジアル方向に支持する支持力Frとして回転軸12に作用する。これにより、回転軸12は、第2実施形態(
図9参照)よりも大きな支持力Frにより、ケーシング11に対してラジアル方向に非接触で支持される。
【0134】
[スラスト方向一方側の支持力]
図20は、本実施形態において支持コイル17に電流を一方向に付与している状態を示す図である。
図20に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc7が発生する。磁束Ψc7は、第2実施形態の磁束Ψc3(
図10参照)と同様に、ループ状に流れることで、スラスト方向の一方側および他方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生する。
【0135】
これにより、磁束Ψc7の大部分は、
図20に示すように流れる。すなわち、スラスト方向他方側における磁束Ψc7の大部分は、第1固定永久磁石21Bから第2回転永久磁石32Bに向かって流れるようになる。また、スラスト方向一方側における磁束Ψc7の大部分は、第1回転永久磁石31Aから第2固定永久磁石22Aに向かって流れるようになる。その結果、第2回転永久磁石32Bおよび第1回転永久磁石31Aでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向他方側に向かって磁束Ψc7の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向他方側への支持力Fs1が作用する。
【0136】
本実施形態においても、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第5回転永久磁石31~35によって支持力Fs1を高めることができる。その理由について、以下説明する。スラスト方向一方側では、第2実施形態(
図12参照)と同様に、ループ状の磁束Ψ20a、およびループ状の磁束Ψ30bがそれぞれ発生する。ループ状の磁束Ψ20a,Ψ30aが発生することで、第1および第2固定永久磁石21A,22Aからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31A,32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0137】
さらに、スラスト方向一方側では、第2実施形態(
図12参照)と同様に、固定永久磁石22A,25Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27aが発生する。ループ状の磁束Ψ27aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20a,Ψ27aの間を磁束Ψc7が流れ易くなる。また、第1および第4回転永久磁石31A,34Aの磁束Ψ31a,Ψ34aにより、これらの回転永久磁石31A,34Aの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ36aが発生する。ループ状の磁束Ψ36aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ36a,Ψ30aの間を磁束Ψc7が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc7の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs1を高めることができる。
【0138】
一方、スラスト方向他方側では、第2実施形態(
図12参照)と同様に、ループ状の磁束Ψ20a、およびループ状の磁束Ψ30bがそれぞれ発生する。ループ状の磁束Ψ20b,Ψ30bが発生することで、第1および第2固定永久磁石21B,22Bからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31B,32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0139】
さらに、スラスト方向他方側では、第2実施形態(
図12参照)と同様に、固定永久磁石21B,24Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26bが発生する。ループ状の磁束Ψ26bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ20b,Ψ26bの間を磁束Ψc7が流れ易くなる。また、第2および第5回転永久磁石32B,35Bの磁束Ψ32b,Ψ35bにより、これらの回転永久磁石32B,35Bの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ37bが発生する。ループ状の磁束Ψ37bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ37b,Ψ30bの間を磁束Ψc7が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc7の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs1をさらに高めることができる。
【0140】
[スラスト方向他方側の支持力]
図21は、本実施形態において支持コイル17に電流を他方向に付与している状態を示す図である。
図21に示すように、支持コイル17に直流電流を図示の方向に付与すると、支持コイル17よって磁束Ψc8が発生する。磁束Ψc8は、第2実施形態の磁束Ψc4(
図13参照)と同様に、ループ状に流れることで、スラスト方向の一方側および他方側のそれぞれにおいて磁界の磁束密度に疎密が発生する。
【0141】
これにより、磁束Ψc8の大部分は、
図21に示すように流れる。すなわち、スラスト方向一方側における磁束Ψc8の大部分は、第1固定永久磁石21Aから第2回転永久磁石32Aに向かって流れるようになる。また、スラスト方向他方側における磁束Ψc8の大部分は、第1回転永久磁石31Bから第2固定永久磁石22Bに向かって流れるようになる。その結果、第2回転永久磁石32Aおよび第1回転永久磁石31Bでは、これらの各外周面からギャップGのスラスト方向一方側に向かって磁束Ψc8の磁束線が傾斜するので、回転軸12には、前記磁束線が向いているスラスト方向一方側への支持力Fs2が作用する。
【0142】
本実施形態においても、第1~第5固定永久磁石21~25および第1~第5回転永久磁石31~35によって支持力Fs2を高めることができる。その理由について、以下説明する。スラスト方向一方側では、
図20に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20a、およびループ状の磁束Ψ30bがそれぞれ発生する。ループ状の磁束Ψ20a,Ψ30aが発生することで、第1および第2固定永久磁石21A,22Aからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31A,32Aからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0143】
さらに、スラスト方向一方側では、第2実施形態(
図15参照)と同様に、固定永久磁石21A,24Aの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ26aが発生する。ループ状の磁束Ψ26aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ26a,Ψ20aの間を磁束Ψc8が流れ易くなる。また、第2および第5回転永久磁石32A,35Aの磁束Ψ32a,Ψ35aにより、これらの回転永久磁石32A,35Aの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ37aが発生する。ループ状の磁束Ψ37aが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ30a,Ψ37aの間を磁束Ψc8が流れ易くなる。以上により、スラスト方向一方側のギャップGを流れる磁束Ψc8の磁束密度が大きくなるので、支持力Fs2を高めることができる。
【0144】
一方、スラスト方向他方側では、
図20に示す場合と同様に、ループ状の磁束Ψ20b、およびループ状の磁束Ψ30bがそれぞれ発生する。ループ状の磁束Ψ20b,Ψ30bが発生することで、第1および第2固定永久磁石21B,22Bからの各漏洩磁束と、第1および第2回転永久磁石31B,32Bからの各漏洩磁束を低減することができる。
【0145】
さらに、スラスト方向他方側では、第2実施形態(
図15参照)と同様に、固定永久磁石22B,25Bの内周側とギャップGの外周側とに跨って、図中の反時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ27bが発生する。ループ状の磁束Ψ27bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ27b,Ψ20bの間を磁束Ψc8が流れ易くなる。また、第1および第4回転永久磁石31B,34Bの磁束Ψ31b,Ψ34bにより、これらの回転永久磁石31B,34Bの外周側とギャップGの内周側とに跨って、図中の時計回り方向に流れるループ状の磁束Ψ36bが発生する。ループ状の磁束Ψ36bが発生することで、スラスト方向に隣り合う2つのループ状の磁束Ψ30b,Ψ36bの間を磁束Ψc8が流れ易くなる。以上により、スラスト方向他方側のギャップGを流れる磁束Ψc8の磁束密度も大きくなるので、支持力Fs2をさらに高めることができる。
【0146】
本実施形態の他の構成は、第3実施形態と同様であるため、同一の符号を付し、その説明を省略する。以上より、本実施形態のポンプ1および電動機10においても、第3実施形態と同様の作用効果を奏する。
【0147】
<その他>
上記各実施形態では、磁気浮上式電動機10を磁気浮上式ポンプ1に適用する場合について説明したが、磁気浮上式電動機10は、ポンプ以外の他の機器に適用してもよい。第1実施形態および第2実施形態において、固定永久磁石部20は、第4~第5固定永久磁石24,25を有していなくてもよい。
【0148】
固定永久磁石部20は、少なくとも第1固定永久磁石21と第2固定永久磁石22とを有していればよい。その場合、第1固定永久磁石21と第2固定永久磁石22とをスラスト方向に隣接して配置すればよい。同様に、回転永久磁石部30は、少なくとも第1回転永久磁石31と第2回転永久磁石32とを有していればよい。その場合も、第1回転永久磁石31と第2回転永久磁石32とをスラスト方向に隣接して配置するのが好ましい。
【0149】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0150】
1 磁気浮上式ポンプ
2 ハウジング
4a 吸込口
4b 吐出口
6 インペラ
7 隔壁部
10 磁気浮上式電動機
11 ケーシング
12 回転軸
13 モータ部
14 固定子
15 回転子
17 支持コイル
19 制御部
20 固定永久磁石部
21 第1固定永久磁石
22 第2固定永久磁石
23 第3固定永久磁石
24 第4固定永久磁石
25 第5固定永久磁石
30 回転永久磁石部
31 第1回転永久磁石
32 第2回転永久磁石
33 第3回転永久磁石
34 第4回転永久磁石
35 第5回転永久磁石
C 軸線
Ψc1,Ψc2,Ψc3,Ψc4 支持コイルによる磁束
Ψc5,Ψc6,Ψc7,Ψc8 支持コイルによる磁束
Ψ21a,Ψ21b 第1固定永久磁石の磁束
Ψ22a,Ψ22b 第2固定永久磁石の磁束
Ψ23a,Ψ23b 第3固定永久磁石の磁束
Ψ31a,Ψ31b 第1回転永久磁石の磁束
Ψ32a,Ψ32b 第2回転永久磁石の磁束
Ψ33a,Ψ33b 第3回転永久磁石の磁束
Fs1,Fs2 スラスト方向の支持力