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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012569
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】拡張現実提供装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/02 20060101AFI20230119BHJP
   H04N 5/64 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
H04N5/64 511A
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116050
(22)【出願日】2021-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-02-24
(71)【出願人】
【識別番号】519167368
【氏名又は名称】ホログラム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】橋口 和矢
【テーマコード(参考)】
2H199
【Fターム(参考)】
2H199CA05
2H199CA42
2H199CA45
2H199CA47
2H199CA86
(57)【要約】
【課題】画像表示部の画像が歪んで見えるのを抑制することが可能な拡張現実提供装置を提供する。
【解決手段】スマートフォンSを取り付け可能な前側取付部13と、スマートフォンSから出射される画像光を反射させるミラー20と、ミラー20で反射させた画像光を反射させ、現実空間からの光と重ね合わせて視認させるハーフレンズミラー30と、を具備し、ミラー20及びハーフレンズミラー30は、画像光が出射される出射方向と直交する直交方向に対する傾斜角度D20・D30が40度以下となるように配置される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示部を取り付け可能な取付部と、
前記画像表示部から出射される画像光を反射させる反射部と、
前記反射部で反射させた画像光を反射させ、現実空間からの光と重ね合わせて視認させる重畳手段と、
を具備し、
前記反射部及び前記重畳手段は、
前記画像光が出射される出射方向と直交する直交方向に対する傾斜角度が40度以下となるように配置される、
拡張現実提供装置。
【請求項2】
前記反射部は、
前記傾斜角度が20度以上、かつ40度以下となるように配置される、
請求項1に記載の拡張現実提供装置。
【請求項3】
前記反射部及び前記重畳手段は、
前記傾斜角度が30度となるように配置される、
請求項1又は請求項2に記載の拡張現実提供装置。
【請求項4】
前記重畳手段の傾斜方向に沿った長さは、
前記反射部の傾斜方向に沿った長さよりも短い、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の拡張現実提供装置。
【請求項5】
前記重畳手段は、
前記取付部に対して前記直交方向の一方向に位置をずらして配置され、
前記重畳手段の傾斜方向に沿った長さは、
前記画像表示部の前記一方向に沿った長さの略半分となる、
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の拡張現実提供装置。
【請求項6】
前記重畳手段は、
前記取付部に対して隣接するように配置される、
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の拡張現実提供装置。
【請求項7】
前記重畳手段は、
前記出射方向において前記取付部と前記反射部との間に配置される、
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の拡張現実提供装置。
【請求項8】
前記反射部は、
前記重畳手段に対して前記出射方向における位置をずらして配置され、
前記反射部の前記重畳部側の端部は、
前記出射方向における位置が、前記重畳手段の前記反射部側の端部と略同一となるように配置される、
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の拡張現実提供装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示部を用いて拡張現実を提供する拡張現実提供装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、画像表示部を用いて拡張現実を提供する拡張現実提供装置の技術は公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の拡張現実提供装置は、ミラー及びスモークアクリル板を具備する。ミラーは、スマートフォンの後方に配置される。スモークアクリル板は、ミラーの下方に配置される。ミラー及びスモークアクリル板は、スマートフォンに対して約45度傾斜して配置される。前記拡張現実提供装置は、スマートフォンから後方へ向けて出射された画像光をミラーで反射させると共に、当該画像光をスモークアクリル板でさらに反射させ、使用者の目に画像光を導くことができる。
【0004】
特許文献1の拡張現実提供装置では、ミラー及びスモークアクリル板の傾斜角度が大きすぎるため、画像表示部の画像が歪んで見える可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実登3202424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の如き状況を鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、画像表示部の画像が歪んで見えるのを抑制することが可能な拡張現実提供装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0008】
即ち、請求項1においては、画像表示部を取り付け可能な取付部と、前記画像表示部から出射される画像光を反射させる反射部と、前記反射部で反射させた画像光を反射させ、現実空間からの光と重ね合わせて視認させる重畳手段と、を具備し、前記反射部及び前記重畳手段は、前記画像光が出射される出射方向と直交する直交方向に対する傾斜角度が40度以下となるように配置されるものである。
【0009】
請求項2においては、前記反射部は、前記傾斜角度が20度以上、かつ40度以下となるように配置されるものである。
【0010】
請求項3においては、前記反射部及び前記重畳手段は、前記傾斜角度が30度となるように配置されるものである。
【0011】
請求項4においては、前記重畳手段の傾斜方向に沿った長さは、前記反射部の傾斜方向に沿った長さよりも短いものである。
【0012】
請求項5においては、前記重畳手段は、前記取付部に対して前記直交方向の一方向に位置をずらして配置され、前記重畳手段の傾斜方向に沿った長さは、前記画像表示部の前記一方向に沿った長さの略半分となるものである。
【0013】
請求項6においては、前記重畳手段は、前記取付部に対して隣接するように配置されるものである。
【0014】
請求項7においては、前記重畳手段は、前記出射方向において前記取付部と前記反射部との間に配置されるものである。
【0015】
請求項8においては、前記反射部は、前記重畳手段に対して前記出射方向における位置をずらして配置され、前記反射部の前記重畳部側の端部は、前記出射方向における位置が、前記重畳手段の前記反射部側の端部と略同一となるように配置されるものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0017】
請求項1においては、反射部及び重畳手段の傾斜角度を40度以下に留めることで、画像表示部の画像が歪んで見えるのを抑制することができる。
【0018】
請求項2においては、画像表示部、重畳手段及び反射部を比較的近い位置に配置することができ、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0019】
請求項3においては、反射部及び重畳手段の傾斜角度を最適な角度にすることができる。
【0020】
請求項4においては、画像光で視認される画像のピントを合わすことができると共に、画像表示部と重畳手段との干渉を避けることができる。
【0021】
請求項5においては、重畳手段のサイズ(傾斜方向に沿った長さ)を画像表示部の半分程度まで小さくし、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0022】
請求項6においては、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0023】
請求項7においては、拡張現実提供装置の出射方向幅が大きくなるのを抑制し、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0024】
請求項8においては、反射部及び重畳手段を比較的近い位置に配置して、形状のコンパクト化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係る拡張現実提供装置の使用状態を示した側面図。
図2】拡張現実提供装置を示した斜視図。
図3】(a)同じく、側面図。(b)同じく、正面図。
図4】ミラー、ハーフレンズミラー及びスマートフォンの配置を示した側面図。
図5】同じく、平面図。
図6】(a)現実空間からの光及び画像光を示した側面図。(b)画像光の光路を示した側面断面図。
図7】(a)画像光の光路を示した模式図。(b)画像光の光路を展開した図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下では、図中の矢印U、矢印D、矢印F、矢印B、矢印L及び矢印Rで示した方向を、それぞれ上方向、下方向、前方向、後方向、左方向及び右方向と定義して説明を行う。
【0027】
以下では、本発明の一実施形態に係る拡張現実提供装置1について説明する。
【0028】
図1に示す拡張現実提供装置1は、現実空間に仮想的な情報を重ね合わせた拡張現実を提供するためのものである。本実施形態の拡張現実提供装置1は、ヘルメットHに取り付けられ、当該ヘルメットHを使用者がかぶった状態で使用される。このように、拡張現実提供装置1は、手で保持することなく使用可能である。図2及び図3に示すように、拡張現実提供装置1は、本体部10、ミラー20及びハーフレンズミラー30を具備する。
【0029】
本体部10は、拡張現実提供装置1の主たる構造体である。本体部10は、天井部11、後壁部12、前側取付部13、仕切り部14及び後側取付部15を具備する。
【0030】
天井部11は、本体部10の天井を成す部分である。天井部11は、前後方向幅よりも左右方向幅が長くなるように形成される。天井部11は、溝部11aを具備する。
【0031】
溝部11aは、天井部11の下面に形成される窪みである。溝部11aは、天井部11の前後中途部に形成される。溝部11aは、天井部11の左端部から右端部までに亘って形成される。溝部11aの前後方向幅には、スマートフォンSの厚みと同程度の幅が設定される。
【0032】
後壁部12は、本体部10の後部を成す部分である。後壁部12は、天井部11の後端部から後ろ下がりに傾斜するように形成される。
【0033】
前側取付部13は、スマートフォンSを取り付けるための部分である。前側取付部13は、天井部11の前端部における左右中央部から下方へ突出するように形成される。前側取付部13の下端部は、スマートフォンSを載置可能となるように後方へ延出する。
【0034】
仕切り部14は、本体部10の内側の空間を左右方向に区画する部分である。仕切り部14は、板面を左右方向に向けた平板状に形成される。仕切り部14は、本体部10の左右中央部に設けられる。
【0035】
後側取付部15は、本体部10をヘルメットHに取り付けるための部分である。後側取付部15は、板面を左右方向に向けた平板状に形成される。後側取付部15は、後壁部12に固定され、当該後壁部12の後面から後方へ突出するように設けられる。後側取付部15は、長孔15aを具備する。
【0036】
長孔15aは、長手方向を上下方向に向けた孔である。長孔15aは、後側取付部15を左右に貫通するように形成される。
【0037】
上述の如く構成される本体部10は、長孔15aに所定のピンが挿通されて固定されることで、ヘルメットHに取り付けられる(図1参照)。
【0038】
ミラー20は、スマートフォンSから出射される画像光を反射させるためのものである。ミラー20は矩形板状に形成される。ミラー20は、反射面(光を反射することができる面)を前下方に向けて配置される。ミラー20は、後壁部12の内側面(前面)に固定され、前側取付部13の後方に配置される。
【0039】
ハーフレンズミラー30は、透光性及び反射性の両特性を有する板状の部材である。ハーフレンズミラー30は略板状に形成される。ハーフレンズミラー30の前端部は、前側取付部13に取り付けられる。こうしてハーフレンズミラー30は、前側取付部13に隣接するように配置される。当該ハーフレンズミラー30は、前端部(前側取付部13への取り付け部分)を中心に、前側取付部13に対して回動することができる。ハーフレンズミラー30は、回動することで非使用状態(図3(a)に二点鎖線で示す状態)と使用状態(図3(a)に実線で示す状態)とに遷移することができる。
【0040】
非使用状態は、ハーフレンズミラー30の板面を略上下方向に向けた状態である。使用者は、ハーフレンズミラー30を非使用状態に切り替えることで、拡張現実提供装置1をコンパクトに収納することができる。
【0041】
使用状態は、ハーフレンズミラー30の板面をミラー20の反射面と同一方向に向けた状態である。使用者は、ハーフレンズミラー30を使用状態に切り替えることで、目の前方にハーフレンズミラー30を配置して拡張現実提供装置1を使用することができる(図1参照)。なお以下の説明では、ハーフレンズミラー30は使用状態であるものとしている。
【0042】
上述の如く構成される拡張現実提供装置1には、スマートフォンSが取り付けられる。当該スマートフォンSは、横向きの姿勢で前側取付部13に載置される。またスマートフォンSは、上端部が溝部11aに嵌め合わされると共に、本体部10に対して左右方向における位置を合わせて配置される。こうしてスマートフォンSは、カメラS1のレンズが前方へ露出した状態で前側取付部13に取り付けられる。またスマートフォンSは、タッチパネルS2(図1参照)が後方を向くように配置され、画像情報(画像ファイルや動画ファイルに対応する画像)に応じた画像光を後方へ出射可能に配置される。
【0043】
なお、本実施形態のスマートフォンSのタッチパネルS2の左右方向に沿った長さLS2(図5参照)は、100mm~170mmに設定される。また、タッチパネルS2の上下方向に沿った長さHS2(図4参照)は、60mm~80mmに設定される。なお、タッチパネルS2の左右方向に沿った長さLS2及び上下方向に沿った長さHS2とは、前側取付部13に取り付けられた状態(横向きの状態)におけるタッチパネルS2の左右方向幅及び上下方向幅を指す。
【0044】
以下では図4及び図5を参照し、スマートフォンS、ミラー20及びハーフレンズミラー30の配置や位置関係について詳細に説明する。
【0045】
ミラー20(反射面)はスマートフォンSに対して傾斜するように配置される。より詳細にはミラー20は、タッチパネルS2に対して下向きに傾斜するように配置され、上下方向(画像光が出射される後方に対して直交する方向)に対する傾斜角度D20が40度以下となるように配置される。本実施形態のミラー20の傾斜角度D20は30度に設定される。ミラー20の傾斜方向に沿った長さL20には、タッチパネルS2の上下方向に沿った長さHS2と同程度の長さが設定される。
【0046】
ハーフレンズミラー30は、ミラー20で反射された画像光を反射可能となるように、ミラー20の前下方(ミラー20の反射面に対して直交する方向)に間隔をあけて配置される。こうしてハーフレンズミラー30は、ミラー20に対して前後方向に位置をずらして配置される。また上述の如くハーフレンズミラー30は、板面をミラー20の反射面と同一方向に向けて配置される。こうしてハーフレンズミラー30は、上下方向に対する傾斜角度D30が40度以下(具体的には30度)となるように配置される。
【0047】
当該ハーフレンズミラー30の後下端部(前後位置がミラー20に近い側の端部)は、ミラー20の前上端部(前後位置がハーフレンズミラー30に近い側の端部)と前後位置が略同一となるように配置される。なお、前後位置が略同一とは、前後位置が一致する状態、又は前後位置が概ね一致しているとみなせる程度に近い状態を指す。またハーフレンズミラー30の前上端部は、スマートフォンSの下方に配置されると共に、タッチパネルS2と前後位置が略同一となるように配置される。当該ハーフレンズミラー30は、前後方向においてスマートフォンS(前側取付部13)とミラー20との間に配置される。
【0048】
また、ハーフレンズミラー30の傾斜方向に沿った長さL30は、ミラー20の傾斜方向に沿った長さL20及びタッチパネルS2の上下方向に沿った長さHS2よりも短い。本実施形態のハーフレンズミラー30の長さL30には、タッチパネルS2の長さHS2の略半分の長さが設定される。またハーフレンズミラー30は、画像のピントが合うように、使用者の目E(図6(b)参照)の中心に対してハーフレンズミラー30の中心が所定距離離れた位置に配置される。
【0049】
以下では図1及び図6(a)を参照し、拡張現実提供装置1の動作について説明する。なお、図6(a)に破線で示す矢印は、現実空間からの光(以下、「外光」と称する)の進む方向を示している。また、図6(a)に実線で示す矢印は、スマートフォンSから出射される画像光の進む方向を示している。
【0050】
図1に示すように、拡張現実提供装置1は、使用者がヘルメットHを装着し、ハーフレンズミラー30を後方から覗く形で使用される。図6(a)に示すように、外光は、ハーフレンズミラー30に前側(前下面)から入射する。ハーフレンズミラー30は、当該外光を前側から後側(後上面)へと透過させる。こうしてハーフレンズミラー30は、外光を使用者の目に導いて、使用者に現実空間を視認させることができる。
【0051】
拡張現実提供装置1に取り付けられたスマートフォンSは、このような状態で動作され、画像情報に応じた画像光を後方へ出射する。スマートフォンSから出射された画像光は、ミラー20によって前下方へ反射される。当該画像光は、ハーフレンズミラー30に入射し、後方へ反射される。
【0052】
こうして拡張現実提供装置1は、使用者の目に外光及び画像光を導くことができる。これにより使用者は、現実空間に画像情報(仮想的な情報)を重ね合わせた拡張現実を視認することができる。拡張現実提供装置1はこのようにして拡張現実を提供することができる。
【0053】
本実施形態の拡張現実提供装置1は、ミラー20及びハーフレンズミラー30で画像光を合計2回反射させることにより、画像光に対応する画像情報が上下反転することを防止できる。
【0054】
また、拡張現実提供装置1は、仕切り部14で本体部10の内部空間を区画することで、使用者の右目及び左目に異なる画像を重ね合わせて視認させることができる。
【0055】
また、拡張現実提供装置1は、スマートフォンSのカメラS1を露出させることにより、使用者の前方の景色をカメラS1で撮像することができる。拡張現実提供装置1は、当該撮像結果を解析することで、現実世界の種々の情報を取得することができる。具体的には拡張現実提供装置1は、使用者が移動した方向及び移動距離等を取得することができる。拡張現実提供装置1は、当該情報に基づいて画像を作成することで、例えば使用者の移動に合わせて画像を動かすことができる。これによって、拡張現実提供装置1は、よりリアルな画像を使用者に視認させることができる。
【0056】
ここで、本実施形態のようにミラー20やハーフレンズミラー30で画像光を反射させる場合、図6(b)及び図7に示すように、使用者の目Eに画像光を導くため、ミラー20等をタッチパネルS2に対して傾斜させることとなる。なお図6(b)は、図3(b)のA-A断面を示すものである。また図6(b)に示す範囲Rは、使用者の目Eに導かれる無数の画像光(光路)をまとめて示したものである。また図7(a)は、タッチパネルS2の上部、上下中央部及び下部から照射された画像光の光路を模式的に示すものである。また図7(b)は、図7(a)を展開した図である。
【0057】
図7に示すように、ミラー20等をタッチパネルS2に対して傾斜させた場合には、タッチパネルS2の上部と下部でミラー20までの距離(光路に沿った距離)が異なるものとなる。また、タッチパネルS2からハーフレンズミラー30までの距離についてもミラー20と同様に、タッチパネルS2の上部と下部で異なるものとなる。これら距離の違いは、画像の見え方に影響を与える。具体的には、タッチパネルS2からミラー20等に近い側(画像の上部)が大きく見えると共に、遠い側(画像の下部)が小さく見えるようになる。また、ミラー20及びハーフレンズミラー30の傾斜角度D20・D30が大きくなると前記距離の違いが大きくなり(図7に示す傾斜角度が45度のミラー920及びハーフレンズミラー930参照)、画像の上側が下側よりも小さく見える現象(台形歪み)が顕著にあらわれる。
【0058】
本実施形態では、ミラー20及びハーフレンズミラー30の傾斜角度D20・D30を40度以下(具体的には30度)に設定し、傾斜角度D20等が大きくなり過ぎないようにしている。これによって拡張現実提供装置1は、台形歪みを抑制することができる。
【0059】
また、ミラー20の傾斜角度D20を小さくすると、当該ミラー20の反射面が前方を向くようになる。よって傾斜角度D20が小さくなり過ぎると(例えば傾斜角度D20が本実施形態(30度)よりも小さい20度未満の角度となると)、ミラー20からスマートフォンS側へ向けて画像光が反射される。この場合、スマートフォンS、ミラー20及びハーフレンズミラー30を図4に示す状態よりも互いに離して配置して、スマートフォンSに対して下側にずれた位置に画像光を導く必要がある。
【0060】
本実施形態では、ミラー20の傾斜角度D20を20度以上(具体的には30度)に設定することで、ミラー20の反射面が前方を向き過ぎないようにしている。これによりミラー20で反射させた画像光をスマートフォンSに対して下側にずれた位置に導きながらも、スマートフォンS、ミラー20及びハーフレンズミラー30を比較的近い位置に配置することができる。これによって、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0061】
特に、本実施形態では、ミラー20等の傾斜角度D20・D30を30度に設定することで、角度を小さくすることによる台形歪みの効果的な抑制と、上記形状のコンパクト化との両立を図ることができる。
【0062】
ここで、本実施形態のようにミラー20及びハーフレンズミラー30の傾斜角度D20・D30を40度以下まで小さくすると、スマートフォンSとハーフレンズミラー30との上下方向における位置が近くなる。よって、ハーフレンズミラー30のサイズ(傾斜方向に沿った長さL30)が大きい場合、スマートフォンSとハーフレンズミラー30とが干渉するおそれがある。
【0063】
そこで本実施形態では、ハーフレンズミラー30のサイズを比較的小さく(ハーフレンズミラー30の長さL30をミラー20の長さL20よりも短く)している。これにより、拡張現実提供装置1は、ミラー20等の傾斜角度D20・D30を40度以下まで小さくしても、スマートフォンSとハーフレンズミラー30との干渉を避けることができる。また、スマートフォンSとハーフレンズミラー30との干渉を避けたうえで、使用者の視線の先に位置することとなるスマートフォンSの直ぐ下方の位置に、ハーフレンズミラー30の中心を配置することができる。つまり、ハーフレンズミラー30を、スマートフォンSと干渉させずに、画像のピントが合う位置に配置することができる。
【0064】
以上の如く、本実施形態に係る拡張現実提供装置1は、画像表示部(スマートフォンS)を取り付け可能な取付部(前側取付部13)と、前記画像表示部から出射される画像光を反射させる反射部(ミラー20)と、前記反射部で反射させた画像光を反射させ、現実空間からの光と重ね合わせて視認させる重畳手段(ハーフレンズミラー30)と、を具備し、前記反射部及び前記重畳手段は、前記画像光が出射される出射方向(タッチパネルS2が向く方向、本実施形態では後方)と直交する直交方向(本実施形態では上下方向)に対する傾斜角度D20・D30が40度以下となるように配置されるものである。
【0065】
このように、傾斜角度D20・D30を40度以下に留めることで、画像表示部(スマートフォンS)の画像が歪んで見えるのを(台形歪みを)抑制することができる。
【0066】
また、前記反射部(ミラー20)は、前記傾斜角度D20が20度以上、かつ40度以下となるように配置されるものである。
【0067】
このように構成することにより、画像表示部(スマートフォンS)、重畳手段(ハーフレンズミラー30)及び反射部(ミラー20)を比較的近い位置に配置することができ、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0068】
また、前記反射部(ミラー20)及び前記重畳手段(ハーフレンズミラー30)は、前記傾斜角度D20・D30が30度となるように配置されるものである。
【0069】
このように構成することにより、反射部(ミラー20)及び重畳手段(ハーフレンズミラー30)の傾斜角度D20・D30を最適な角度(台形歪みを抑制すると共に形状のコンパクト化を図れる角度)にすることができる。
【0070】
また、前記重畳手段(ハーフレンズミラー30)の傾斜方向に沿った長さL30は、前記反射部(ミラー20)の傾斜方向に沿った長さL20よりも短いものである。
【0071】
このように構成することにより、画像光で視認される画像のピントを合わすことができると共に、画像表示部(スマートフォンS)と重畳手段(ハーフレンズミラー30)との干渉を避けることができる。
【0072】
また、前記重畳手段(ハーフレンズミラー30)は、前記取付部(前側取付部13)に対して前記直交方向の一方向(下方)に位置をずらして配置され、前記重畳手段の傾斜方向に沿った長さL30は、前記画像表示部の前記一方向に沿った長さ(スマートフォンSのタッチパネルS2の長さHS2)の略半分となるものである。
なお、略半分の長さとは、重畳手段の長さL30が画像表示部の長さ(タッチパネルS2の長さHS2)の半分の長さであるか、画像表示部の長さの半分と考えられる程度に近い長さであることを指す。
【0073】
このように構成することにより、重畳手段のサイズ(ハーフレンズミラー30の傾斜方向に沿った長さL30)を画像表示部(スマートフォンS)の半分程度まで小さくし、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0074】
また、前記重畳手段(ハーフレンズミラー30)は、前記取付部(前側取付部13)に対して隣接するように配置されるものである。
なお、「隣接する」には、実際に隣り合っている状態だけではなく、取付部と隣り合っているとみなせる程度に近い状態も含まれる。
【0075】
このように構成することにより、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0076】
また、前記重畳手段(ハーフレンズミラー30)は、前記出射方向において前記取付部(前側取付部13)と前記反射部(ミラー20)との間に配置されるものである。
なお、「前記取付部と前記反射部との間に配置される」とは、取付部の出射方向における一側(反射部に対して遠い側)の端部から、反射部の出射方向における他側(取付部に対して遠い側)の端部までの間に、重畳手段の全体が収まっている状態を指す。よって、重畳手段は、出射方向位置において取付部及び反射部と間隔をあけて配置されてもよいし、少なくとも一部が出射方向位置において取付部及び反射部と重複してもよい。
【0077】
このように構成することにより、拡張現実提供装置1の出射方向幅(前後方向幅)が大きくなるのを抑制し、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0078】
また、前記反射部(ミラー20)及び前記重畳手段(ハーフレンズミラー30)は、前記出射方向における位置(前後位置)をずらして配置され、前記重畳手段の前記反射部側の端部は、前記出射方向における位置が、前記反射部の前記重畳部側の端部と略同一となるように配置されるものである。
【0079】
このように構成することにより、反射部(ミラー20)及び重畳手段(ハーフレンズミラー30)を比較的近い位置に配置して、形状のコンパクト化を図ることができる。
【0080】
なお、本実施形態に係るスマートフォンSは、本発明に係る画像表示部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係る前側取付部13は、本発明に係る取付部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るミラー20は、本発明に係る反射部の実施の一形態である。
また、本実施形態に係るハーフレンズミラー30は、本発明に係る重畳手段の実施の一形態である。
【0081】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0082】
例えば、拡張現実提供装置1は、ヘルメットHに取り付けられて使用されるものとしたが、拡張現実提供装置1の使用方法は特に限定されるものではない。
【0083】
また本実施形態では、スマートフォンSから画像光が出射されるものとしたが、画像光を出射する機器(画像表示部)は、スマートフォンSに限定されるものではなく、他の機器を用いることができる。例えば、タブレット端末等を用いることができる。
【0084】
また、本実施形態のミラー20及びハーフレンズミラー30の傾斜角度D20・D30は、30度に設定されるものとしたが、傾斜角度D20等は40度以下であれば任意に設定可能である。
【0085】
また、ハーフレンズミラー30は、本体部10の前側取付部13に隣接するように配置されるものとしたが、ハーフレンズミラー30と前側取付部13との位置関係は特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。例えば、ハーフレンズミラー30は、前側取付部13に対して間隔をあけて配置されるものであってもよい。
【0086】
また、ハーフレンズミラー30は、前後方向においてミラー20と前側取付部13との間に配置されるものとしたが、前後方向におけるミラー20及び前側取付部13とハーフレンズミラー30との位置関係は特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。例えば、ハーフレンズミラー30は、前側取付部13よりも前方に配置されるものでもよい。
【0087】
また、ハーフレンズミラー30の長さL30は、ミラー20の長さL20及びタッチパネルS2の長さHS2よりも短いものとしたが、ミラー20、ハーフレンズミラー30及びタッチパネルS2の長さの関係は、特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。例えば、ミラー20、ハーフレンズミラー30及びタッチパネルS2は、互いに同一の長さであってもよい。
【0088】
また、ハーフレンズミラー30の後下端部は、ミラー20の前上端部と前後方向における位置が略同一であるものとしたが、ハーフレンズミラー30の後下端部とミラー20の前上端部との位置関係は特に限定されるものではなく、任意に変更可能である。
【0089】
また、本実施形態では、ハーフレンズミラー30により外光及び画像光を使用者の目に導くものとしたが、外光等を導く手段(重畳手段)はハーフレンズミラー30に限定されるものではなく、任意に変更可能である。拡張現実提供装置1は、例えば、外光等をスモークアクリル板で導くものとしてもよい。
【符号の説明】
【0090】
1 拡張現実提供装置
13 前側取付部(取付部)
20 ミラー(反射部)
30 ハーフレンズミラー(重畳手段)
S スマートフォン(画像表示部)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2021-11-25
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像光を出射可能な略矩形状の画像光出射部を有し、当該画像光出射部の短手方向に沿った長さが60mm~80mmかつ長手方向に沿った長さが100mm~170mmに設定された画像表示部を取り付け可能な取付部と、
画像光が出射される出射方向視において前記画像光出射部と略同一の大きさを有すると共に、前記画像表示部の前記画像光出射部から出射される画像光を反射させる1枚のミラーと
前記ミラーで反射させた画像光を反射させ、現実空間からの光と重ね合わせて視認させる1枚の左右両眼用のハーフレンズミラーと、
を具備し、
前記ミラー及び前記ハーフレンズミラーは、
記出射方向と直交する平面に対する傾斜角度が40度以下となるように配置され
画像光の光路において、前記画像光出射部と前記ミラーとの間、及び、前記ミラーと前記ハーフレンズミラーとの間に、他のレンズを設けない、
拡張現実提供装置。
【請求項2】
前記ハーフレンズミラーは、
前記取付部のうち前記画像表示部の短手方向における一端が配置される部分を中心として、前記ミラーとの角度が変更されるように回動可能に設けられる、
請求項1に記載の拡張現実提供装置。
【請求項3】
前記ミラーは、
前記傾斜角度が20度以上、かつ40度以下となるように配置される、
請求項1又は請求項2に記載の拡張現実提供装置。
【請求項4】
前記ミラー及び前記ハーフレンズミラーは、
前記傾斜角度が30度となるように配置される、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の拡張現実提供装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0008
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0008】
即ち、請求項1においては、画像光を出射可能な略矩形状の画像光出射部を有し、当該画像光出射部の短手方向に沿った長さが60mm~80mmかつ長手方向に沿った長さが100mm~170mmに設定された画像表示部を取り付け可能な取付部と、画像光が出射される出射方向視において前記画像光出射部と略同一の大きさを有すると共に、前記画像表示部の前記画像光出射部から出射される画像光を反射させる1枚のミラーと、前記ミラーで反射させた画像光を反射させ、現実空間からの光と重ね合わせて視認させる1枚の左右両眼用のハーフレンズミラーと、を具備し、前記ミラー及び前記ハーフレンズミラーは、前記出射方向と直交する平面に対する傾斜角度が40度以下となるように配置され、画像光の光路において、前記画像光出射部と前記ミラーとの間、及び、前記ミラーと前記ハーフレンズミラーとの間に、他のレンズを設けないものである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
請求項2においては、前記ハーフレンズミラーは、前記取付部のうち前記画像表示部の短手方向における一端が配置される部分を中心として、前記ミラーとの角度が変更されるように回動可能に設けられるものである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
請求項3においては、前記ミラーは、前記傾斜角度が20度以上、かつ40度以下となるように配置されるものである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
請求項4においては、前記ミラー及び前記ハーフレンズミラーは、前記傾斜角度が30度となるように配置されるものである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
本願発明においては、反射部及び重畳手段の傾斜角度を40度以下に留めることで、画像表示部の画像が歪んで見えるのを抑制することができる。
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0023
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0024
【補正方法】削除
【補正の内容】