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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125690
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】発光装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20230831BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20230831BHJP
   H10K 50/10 20230101ALI20230831BHJP
   H05B 33/22 20060101ALI20230831BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H05B33/04
H01L27/32
H05B33/14 A
H05B33/22 Z
G09F9/30 348A
G09F9/30 365
G09F9/30 309
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029933
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000221926
【氏名又は名称】東北パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】高橋 正樹
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 真滋
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107BB02
3K107CC23
3K107CC45
3K107DD39
3K107DD90
3K107DD91
3K107DD92
3K107DD93
3K107EE42
5C094AA38
5C094BA27
5C094DA07
5C094DA15
5C094DB01
5C094FA01
5C094FA02
5C094FA04
5C094FB02
5C094FB15
(57)【要約】
【課題】封止部材及び配線を電気的に互いに絶縁しつつ、封止領域の外側から内側への水分の透過を抑制する。
【解決手段】無機絶縁層400は、陽極配線212の第3方向Zに封止部材110と重なる部分の少なくとも一部を覆っている。無機絶縁層400の少なくとも一部分は、傾斜部112の少なくとも一部分と第3方向Zに重なっている。無機絶縁層400の少なくとも一部分は、陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面と、接着層120の第3方向Zの負方向側の面と、の間に位置している。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板の少なくとも一部分を覆う導電性の封止部材と、
前記基板及び前記封止部材によって封止された封止領域の内部に位置する発光部と、
前記発光部に電気的に接続され、前記封止領域の内部から外部へ引き出された配線と、
前記配線の前記封止部材と重なる部分の少なくとも一部分を覆う無機絶縁層と、
を備える発光装置。
【請求項2】
請求項1に記載の発光装置において、
前記封止部材が前記基板に対して傾斜した傾斜部を有し、
前記無機絶縁層の少なくとも一部分が前記傾斜部の少なくとも一部分と重なっている、発光装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発光装置において、
前記封止部材が接着層を介して前記基板に接着されており、
前記無機絶縁層の少なくとも一部分が前記配線と前記接着層との間に位置している、発光装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記発光部の一部分が前記無機絶縁層と同一材料を含む、発光装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記無機絶縁層が蒸着層である、発光装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の発光装置において、
前記無機絶縁層が発光部の少なくとも一部分を覆っている、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子を備える様々な発光装置が開発されている。例えば特許文献1に記載されている発光装置は、有機EL素子を封止する封止領域を画定する金属製の封止部材を備えている。この発光装置では、封止領域の内側から外側へ配線が引き出されている。配線の一部分は絶縁層によって覆われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2004-522283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば特許文献1に記載されているように、金属性の封止部材によって有機EL素子が封止されることがある。この場合、封止部材と、封止領域の内側から外側へ引き出される配線と、の間の気中放電等の要因によって配線に損傷が発生することがある。このため、封止部材及び配線を電気的に互いに絶縁するため、配線を樹脂等の絶縁層によって覆うことがある。しかしながら、この場合、絶縁層を経由して水分が封止領域の外側から内側へ透過することがある。
【0005】
本発明が解決しようとする課題としては、封止部材及び配線を電気的に互いに絶縁しつつ、封止領域の外側から内側への水分の透過を抑制することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、
基板と、
前記基板の少なくとも一部分を覆う導電性の封止部材と、
前記基板及び前記封止部材によって封止された封止領域の内部に位置する発光部と、
前記発光部に電気的に接続され、前記封止領域の内部から外部へ引き出された配線と、
前記配線の前記封止部材と重なる部分の少なくとも一部分を覆う無機絶縁層と、
を備える発光装置である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る発光装置の平面図である。
図2図1のA-A断面図である。
図3】変形例に係る発光装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「AがB上に位置する」という表現は、例えば、AとBの間に他の要素(例えば、層)が位置せずにAがB上に直接位置することを意味してもよいし、又はAとBの間に他の要素(例えば、層)が部分的又は全面的に位置することを意味してもよい。さらに、「上」、「下」、「左」、「右」、「前」及び「後ろ」等の向きを示す表現は、基本的に図面の向きと合わせて用いるものであって、例えば本明細書に記載された発明品の使用する向きに限定して解釈されるものではない。
【0009】
本明細書において「A及びBが重なる」という表現は、特に断らない限り、ある方向からの投影像において、Aの少なくとも一部がBの少なくとも一部と同じ場所にあることを意味する。このとき複数の要素同士は直接接していてもよいし、又は離間していてもよい。
【0010】
本明細書において「Aの外側」という表現は、特に断らない限り、Aの縁を境にAが位置しない側の部分のことを意味する。
【0011】
本明細書中における陽極とは、発光材料を含む層(例えば有機層)に正孔を注入する電極のことを示し、陰極とは、発光材料を含む層に電子を注入する電極のことを示す。また、「陽極」及び「陰極」という表現は、「正孔注入電極」及び「電子注入電極」又は「正極」及び「負極」等の他の文言を意味することもある。
【0012】
本明細書において「Aの端」という表現は、一方向から見たときのAとその他の要素との境界を意味し、「Aの端部」という表現は、当該境界を含むAの一部の領域を意味し、「Aの端点」という表現は、当該境界のある一点を意味する。
【0013】
本明細書における「発光装置」とは、ディスプレイや照明等の発光素子を有するデバイスを含む。また、発光素子と直接的、間接的又は電気的に接続された配線、IC(集積回路)又は筐体等も「発光装置」に含む場合もある。
【0014】
本明細書において「接続」とは、複数の要素が直接的又は間接的を問わずに接続している状態を表す。例えば、複数の要素の間に接着剤又は接合部材が介して接続している場合も単に「複数の要素は接続している」と表現することがある。また、複数の要素の間に、電流、電圧又は電位を供給可能又は伝送可能な部材が存在しており、「複数の要素が電気的に接続している」場合も単に「複数の要素は接続している」と表現することがある。
【0015】
本明細書において、特に断りがない限り「第1、第2、A、B、(a)、(b)」等の表現は要素を区別するためのものであり、その表現により該当要素の本質、順番、順序又は個数等が限定されるものではない。
【0016】
本明細書において、各部材及び各要素は単数であってもよいし、又は複数であってもよい。ただし、文脈上、「単数」又は「複数」が明確になっている場合はこれに限らない。
【0017】
本明細書において、「AがBを含む」という表現は、特に断らない限り、AがBのみによって構成されていることに限定されず、AがB以外の要素によって構成され得ることを意味する。
【0018】
本明細書において「断面」とは、特に断らない限り、発光装置を画素や発光材料等が積層した方向に切断したときに現れる面を意味する。
【0019】
本明細書において「有さない」、「含まない」、「位置しない」等の表現は、ある要素が完全に排除されていることを意味してもよいし、又はある要素が技術的な効果を有さない程度に存在していることを意味してもよい。
【0020】
本明細書において、「~後に」、「~に続いて」、「~次に」、「~前に」等の時間的前後関係を説明する表現は、相対的な時間関係を表しているものであり、時間的前後関係が用いられた各要素が必ずしも連続しているとは限らない。各要素が連続していることを表現する場合、「直ちに」又は「直接」等の表現を用いることがある。
【0021】
本明細書において、「実質的に平行」という表現は、特に断らない限り、技術的効果を有する程度に斜めになっている状態も含む。例えば、二つの要素A及びBが-10°以上10°以下の角度で位置されている状態で、-10°以上10°以下の角度において臨界的な技術的効果を有さない場合は「A及びBは実質的に平行」と表現する。製造上の誤差により2つの要素A及びBが-10°以上10°以下の角度で位置されている状態も「A及びBは実質的に平行」と表現する。「平行」という表現は、二つの要素が数学的な意味で平行であることを意味する。
【0022】
本明細書において「AがBを覆う」という表現は、特に断らない限り、AとBの間に他の要素(例えば、層)が位置せずにAがBに接触することを意味してもよいし、又はAとBの間に他の要素(例えば、層)が部分的又は全面的に位置することを意味してもよい。
【0023】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0024】
図1は、実施形態に係る発光装置10の平面図である。図2は、図1のA-A断面図である。
【0025】
図1及び図2において、第1方向X、第2方向Y又は第3方向Zを示す矢印は、矢印の基端から先端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の正方向であり、矢印の先端から基端に向かう方向が当該矢印によって示される方向の負方向であることを示している。図1において、第3方向Zを示す黒点付き白丸は、紙面の奥から手前に向かう方向が第3方向Zの正方向であり、紙面の手前から奥に向かう方向が第3方向Zの負方向であることを示している。図2において、第2方向Yを示すX付き白丸は、紙面の手前から奥に向かう方向が第2方向Yの正方向であり、紙面の奥から手前に向かう方向が第2方向Yの負方向であることを示している。
【0026】
図1及び図2において、第1方向Xは、後述する基板100の一対の長辺の延在方向に平行な方向である。第2方向Yは、第1方向Xに直交している。第2方向Yは、基板100の他の一対の短辺の延在方向に平行な方向である。第3方向Zは、第1方向X及び第2方向Yの双方に直交している。第3方向Zの正方向は、基板100が位置する側から後述する封止部材110が位置する側に向かう方向である。第3方向Zの負方向は、封止部材110が位置する側から基板100が位置する側に向かう方向である。
【0027】
図1及び図2に示すように、実施形態に係る発光装置10は、基板100、封止部材110、複数の有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子200、絶縁層310、複数の隔壁320及び無機絶縁層400を備えている。図2に示すように、各有機EL素子200は、陽極層210、有機層220及び陰極層230の第3方向Zに重なり合う部分を有している。
【0028】
基板100は、透光性を有している。基板100の可視光の第3方向Zの透過率は、例えば、75%以上100%以下である。基板100は、単層であってもよいし、又は複数層であってもよい。基板100は、例えば、ガラス基板である。或いは、基板100は、PEN(ポリエチレンナフタレート)、PES(ポリエーテルサルホン)、PET(ポリエチレンテレフタラート)、ポリイミド等の有機材料を含む樹脂基板であってもよい。基板100が樹脂基板である場合、基板100の第3方向Zの正方向側の面と、基板100の第3方向Zの負方向側の面と、の少なくとも一方は、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物等の無機絶縁層によって覆われていてもよい。
【0029】
図1に示すように、第3方向Zから見て、基板100は、実質的に長方形形状となっている。具体的には、第3方向Zから見て、基板100は、第1方向Xに実質的に平行な一対の長辺と、第2方向Yに実質的に平行な他の一対の短辺と、を有している。ただし、基板100の形状はこの例に限定されない。
【0030】
図1に示すように、基板100は、発光領域102を有している。図2に示すように、発光領域102の第3方向Zの正方向側には、複数の有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子200が位置している。第3方向Zから見て、発光領域102は、実質的に正方形形状となっている。具体的には、第3方向Zから見て、基板100は、第1方向Xに実質的に平行な一対の辺と、第2方向Yに実質的に平行な他の一対の辺と、を有している。ただし、発光領域102の形状はこの例に限定されない。
【0031】
封止部材110は、導電性を有している。封止部材110は、例えば、アルミニウム、鉄等の金属や、ステンレス材料等の合金からなっている。封止部材110は、発光領域102の第3方向Zの正方向側の面の少なくとも一部分を覆っている。これによって、基板100及び封止部材110は、封止領域を画定している。実施形態において、封止領域は中空となっている。
【0032】
図2に示すように、封止部材110は、傾斜部112及び接合部114を有している。傾斜部112は、基板100に対して傾斜している。具体的には、傾斜部112は、第3方向Zの正方向側に向かうにつれて、封止領域の内側に向けて傾斜している。接合部114は、傾斜部112の第3方向Zの負方向側の端に位置している。接合部114は、基板100の第3方向Zの正方向側の面に接合されている。具体的には、接合部114の第3方向Zの負方向側の面の少なくとも一部分は、接着層120を介して無機絶縁層400の第3方向Zの正方向側の面に接着されている。第3方向Zから見て、傾斜部112及び接合部114は、封止部材110の全周に亘って設けられている。
【0033】
図2に示すように、接着層120は、複数のスペーサ122を含んでいる。各スペーサ122は、例えば、酸化シリコン(シリカ)、窒化シリコン、酸化アルミニウム(アルミナ)等の化学的に安定な絶縁性無機材料である。或いは、各スペーサ122は、樹脂材料であってもよい。図2に示す例において、スペーサ122は、実質的に球形状となっている。或いは、スペーサ122は、実質的にロッド形状であってもよい。スペーサ122の第3方向Zの正方向側の端は、接合部114の第3方向Zの負方向側の面に接している。スペーサ122の第3方向Zの負方向側の端は、無機絶縁層400の第3方向Zの正方向側の面に接している。これによって、接着層120の第3方向Zの厚さは、スペーサ122の大きさによって決定されている。接着層120の第3方向Zの厚さは、特に限定されないが、例えば、3μm以上50μm以下である。
【0034】
図2に示すように、複数の有機EL素子200は、基板100及び封止部材110によって封止された封止領域の内部に位置している。実施形態に係る発光領域102において、第3方向Zから見て、複数の有機EL素子200は、第1方向Xに実質的に平行な行及び第2方向Yに実質的に平行な列を有する行列状に配置されている。具体的には、基板100の第3方向Zの正方向側の面上には、絶縁層310が位置している。絶縁層310は、ポリイミド等の有機絶縁層又はシリコン酸化物等の無機絶縁層である。絶縁層310は、複数の開口312を画定している。第3方向Zから見て、複数の開口312は、第1方向Xに実質的に平行な行及び第2方向Yに実質的に平行な列を有する行列状に配置されている。図2に示すように、各開口312は、第3方向Zの正方向側に向けて開口している。各開口312では、陽極層210の一部分、有機層220の一部分及び陰極層230の一部分が第3方向Zに重なり合っている。これによって、各有機EL素子200は、発光領域102の画素として機能する発光部となっている。ただし、有機EL素子200の配列はこの例に限定されない。例えば、第3方向Zから見て、単一の有機EL素子200が発光領域102の全体に亘って位置していてもよい。
【0035】
実施形態では、第3方向Zから見て、複数の陽極層210が第1方向Xに実質的に平行に延在している。複数の陽極層210は、基板100の第3方向Zの正方向側の面上に位置している。各陽極層210は、透光性を有している。各陽極層210の可視光の第3方向Zの透過率は、例えば、75%以上100%以下となっている。陽極層210は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、IWZO(Indium Tungsten Zinc Oxide)、ZnO(Zinc Oxide)、IGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)等の酸化物半導体を含んでいる。ただし、陽極層210の材料はこの例に限定されない。
【0036】
図2に示すように、各陽極層210の第1方向Xの負方向側の端部には、陽極配線212が接続されている。実施形態において、陽極配線212は陽極層210と一体となっている。ただし、陽極配線212は、陽極層210と異なる材料からなっていてもよい。陽極配線212は、基板100の第3方向Zの正方向側の面と、接合部114の第3方向Zの負方向側の面と、の間の領域を経由して、封止領域の内側から外側へ引き出されている。これによって、封止領域の外側から陽極配線212を介して陽極層210に所定の電圧を供給することができる。
【0037】
実施形態では、第3方向Zから見て、複数の有機層220が第2方向Yに実質的に平行に延在している。第3方向Zから見て、複数の有機層220は、複数の陽極層210の開口312から露出した部分と第3方向Zに重なっている。各有機層220は、発光層を含んでいる。各有機層220は、陽極層210及び発光層の間に正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。各有機層220は、陰極層230及び発光層の間に電子注入層及び電子輸送層の少なくとも一方をさらに含んでいてもよい。
【0038】
実施形態では、第3方向Zから見て、複数の陰極層230が第2方向Yに実質的に平行に延在している。複数の陰極層230の各々は、複数の有機層220の各々の第3方向Zの正方向側に位置している。各陰極層230は、遮光性、具体的には光反射性を有している。陰極層230は、金属又は合金を含んでいる。金属又は合金は、例えば、Al、Au、Ag、Pt、Mg、Sn、Zn及びInからなる群の中から選択される少なくとも1つの金属又はこの群から選択される金属の合金である。ただし、陰極層230の材料はこの例に限定されない。
【0039】
陽極層210と同様にして、各陰極層230には、不図示の陰極配線が接続されている。陰極配線は、基板100の第3方向Zの正方向側の面と、接合部114の第3方向Zの負方向側の面と、の間の領域を経由して、封止領域の内側から外側へ引き出されている。これによって、封止領域の外側から陰極配線を介して陰極層230に所定の電圧を供給することができる。
【0040】
図2に示すように、絶縁層310の第3方向Zの正方向側の面上には、複数の隔壁320が位置している。第3方向Zから見て、複数の隔壁320は、第2方向Yに実質的に平行に延在している。各隔壁320は、例えば、ポリイミド等の有機絶縁層である。図2に示すように、第1方向Xの負方向側の最も端に位置する隔壁320を除いて、各隔壁320は、第1方向Xに隣り合う有機層220の間と、第1方向Xに隣り合う陰極層230の間と、に位置している。これによって、各隔壁320は、第1方向Xに隣り合う有機層220を互いに隔て、第1方向Xに隣り合う陰極層230を互いに隔てている。
【0041】
実施形態に係る発光装置10は、ボトムエミッションとなっている。具体的には、各有機EL素子200における有機層220から発せられた光は、陽極層210及び基板100を透過して基板100の第3方向Zの負方向側の面から第3方向Zの負方向側に向けて出射されている。
【0042】
図2に示すように、無機絶縁層400は、陽極配線212の第3方向Zに封止部材110と重なる部分の少なくとも一部を覆っている。したがって、陽極配線212が無機絶縁層400によって覆われていない場合と比較して、封止部材110及び陽極配線212を電気的に互いに絶縁することができる。また、無機絶縁層400が樹脂等の有機絶縁層である場合と比較して、無機絶縁層400を経由しての封止領域の外側から内側への水分の透過を抑制することができる。
【0043】
無機絶縁層400は、例えば、リチウム酸化物等のリチウム化合物である。
無機絶縁層400は、単層であってもよいし、又は複数層であってもよい。無機絶縁層400の第3方向Zの厚さは、特に限定されないが、例えば、0.1μm以上である。
【0044】
実施形態では、図2に示すように、無機絶縁層400の少なくとも一部分は、傾斜部112の少なくとも一部分と第3方向Zに重なっている。傾斜部112の封止領域側の内側面の少なくとも一部分は、陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面と第3方向Zに対向している。しかしながら、実施形態によれば、傾斜部112の封止領域側の内側面と、陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面と、の間の領域の少なくとも一部分に無機絶縁層400が位置している。このため、無機絶縁層400が設けられていない場合と比較して、傾斜部112の封止領域側の内側面と、陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面と、を電気的に絶縁することができる。
【0045】
実施形態では、図2に示すように、無機絶縁層400の少なくとも一部分は、陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面と、接着層120の第3方向Zの負方向側の面と、の間に位置している。したがって、接着層120及び無機絶縁層400の双方によって、接合部114の第3方向Zの負方向側の面と、陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面と、を電気的に絶縁することができる。このため、無機絶縁層400が設けられずに接着層120のみによって接合部114の第3方向Zの負方向側の面と陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面とを電気的に絶縁する場合と比較して、接着層120の第3方向Zの厚さを薄くすることができる。よって、上述した場合と比較して、接着層120を経由しての封止領域の外側から内側への水分の透過を抑制することができる。ただし、陽極配線212の第3方向Zの正方向側の面と、接着層120の第3方向Zの負方向側の面と、の間には、無機絶縁層400が位置していなくてもよい。
【0046】
実施形態では、図2に示すように、無機絶縁層400の一部分が封止領域の外側に位置している。具体的には、第3方向Zから見て、無機絶縁層400の一部分が接合部114の第1方向Xの負方向側の端に対して第1方向Xの負方向側に位置している。この場合、封止領域の外側に無機絶縁層400が位置しない場合と比較して、封止部材110と、陽極配線212の封止領域の外側に位置する部分と、の間の気中放電を抑制することができる。ただし、封止領域の外側には、無機絶縁層400が位置していなくてもよい。なお、陽極配線212の第1方向Xの負方向側の端部には、不図示の集積回路(IC)が接続されている。したがって、陽極配線212の当該ICとの接続部には、無機絶縁層400が設けられていない。
【0047】
次に、図1及び図2を参照して、実施形態に係る発光装置10の製造方法について説明する。
【0048】
まず、基板100の第3方向Zの正方向側の面上にリソグラフィによって複数の陽極層210を形成する。次いで、基板100の第3方向Zの正方向側の面上にリソグラフィによって絶縁層310を形成する。次いで、基板100の第3方向Zの正方向側の面上にリソグラフィによって複数の隔壁320を形成する。
【0049】
次いで、基板100の第3方向Zの正方向側の面上に蒸着によって複数の有機層220となる材料を形成する。この材料は、各隔壁320によって複数の有機層220に分断される。
【0050】
次いで、基板100の第3方向Zの正方向側の面上にマスクを用いた蒸着によって無機絶縁層400を形成する。すなわち、無機絶縁層400は蒸着層である。これによって、陽極配線212の第3方向Zに封止部材110と重なる部分の少なくとも一部が無機絶縁層400によって覆われる。
【0051】
実施形態において、無機絶縁層400の蒸着においては、無機絶縁層400となる材料が有機層220の第3方向Zの正方向側の面上にも形成される。この材料は、例えば、リチウム酸化物等のリチウム化合物である。この例において、有機層220の第3方向Zの正方向側の面上に堆積された当該材料は、有機EL素子200の電子注入層となる。このため、有機EL素子200の一部分は、無機絶縁層400と同一材料を含むことになる。この例においては、無機絶縁層400を形成する工程を、有機EL素子200を形成する工程に含めることができる。このため、無機絶縁層400を形成する工程と、有機EL素子200を形成する工程と、が別工程である場合と比較して、発光装置10の製造コストを抑制することができる。
【0052】
なお、図2に示す例において、無機絶縁層400の第1方向Xの正方向側の端部は、第1方向Xの負方向側の最も端に位置する有機EL素子200から離間している。
【0053】
次いで、基板100の第3方向Zの正方向側の面上に蒸着によって陰極層230となる材料を形成する。この材料は、各隔壁320によって複数の陰極層230に分断される。
【0054】
次いで、接着層120を介して基板100の第3方向Zの正方向側の面に封止部材110を接着させる。封止部材110の基板100への接着においては、接合部114の第3方向Zの負方向側の面と、無機絶縁層400の第3方向Zの正方向側の面と、を第3方向Zに互いに押し当てる。この場合、接合部114の第3方向Zの負方向側の面と無機絶縁層400の第3方向Zの正方向側の面との間に存在するスペーサ122の大きさによって接着層120の第3方向Zの厚さが決定される。
【0055】
このようにして、発光装置10が製造される。
【0056】
発光装置10の製造方法は、上述した例に限定されない。例えば、無機絶縁層400を形成する工程と、有機EL素子200を形成する工程と、が別工程であってもよい。例えば、複数の陰極層230を形成した後、無機絶縁層400を蒸着によって形成してもよい。また、無機絶縁層400は、蒸着と異なる方法によって形成されてもよい。
【0057】
図3は、変形例に係る発光装置10Aの断面図である。変形例に係る発光装置10Aは、以下の点を除いて、実施形態に係る発光装置10と同様である。
【0058】
変形例に係る無機絶縁層400Aは、有機EL素子200を構成する陽極層210、有機層220、陰極層230と、絶縁層310と、複数の隔壁320と、を覆っている。無機絶縁層400Aは、原子層堆積(ALD)によって形成された層である。無機絶縁層400AはALD層であるため、段差被覆性に比較的優れている。したがって、無機絶縁層400Aは、有機EL素子200、絶縁層310及び複数の隔壁320によって形成された凹凸に沿って延在している。ただし、無機絶縁層400Aは、蒸着によって形成された層であってもよい。
【0059】
無機絶縁層400Aは、単層であってもよいし、又は複数層であってもよい。無機絶縁層400Aは、例えば、アルミニウム酸化物、チタン酸化物等の金属酸化物である。或いは、無機絶縁層400Aは、シリコン酸化物、シリコン窒化物、シリコン酸窒化物等のシリコン化合物であってもよい。
【0060】
変形例においても、無機絶縁層400Aは、陽極配線212の第3方向Zに封止部材110と重なる部分の少なくとも一部を覆っている。このため、実施形態と同様にして、陽極配線212が無機絶縁層400Aによって覆われていない場合と比較して、封止部材110及び陽極配線212を電気的に互いに絶縁することができる。また、無機絶縁層400Aが樹脂等の有機絶縁層である場合と比較して、無機絶縁層400Aを経由しての封止領域の外側から内側への水分の透過を抑制することができる。
【0061】
また、変形例に係る無機絶縁層400Aは、有機EL素子200の少なくとも一部分を覆っている。したがって、無機絶縁層400Aは、有機EL素子200の封止層としても機能している。すなわち、変形例においては、無機絶縁層400Aを形成する工程を、有機EL素子200の封止層を形成する工程に含めることができる。このため、無機絶縁層400Aを形成する工程と、有機EL素子200の封止層を形成する工程と、が別工程である場合と比較して、発光装置10Aの製造コストを抑制することができる。
【0062】
以上、図面を参照して実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【0063】
例えば、実施形態及び変形例において、無機絶縁層は、陽極配線の第3方向Zに封止部材と重なる部分の少なくとも一部を覆っている。しかしながら、無機絶縁層は、陰極配線の第3方向Zに封止部材と重なる部分の少なくとも一部を覆っていてもよい。この場合、陰極配線が無機絶縁層によって覆われていない場合と比較して、封止部材及び陰極配線を電気的に互いに絶縁することができる。また、無機絶縁層が樹脂等の有機絶縁層である場合と比較して、無機絶縁層を経由しての封止領域の外側から内側への水分の透過を抑制することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 発光装置
10A 発光装置
100 基板
102 発光領域
110 封止部材
112 傾斜部
114 接合部
120 接着層
122 スペーサ
200 有機EL素子
210 陽極層
212 陽極配線
220 有機層
230 陰極層
310 絶縁層
312 開口
320 隔壁
400 無機絶縁層
400A 無機絶縁層
X 第1方向
Y 第2方向
Z 第3方向
図1
図2
図3