(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125716
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】画像形成装置及び画像補正方法
(51)【国際特許分類】
H04N 1/407 20060101AFI20230831BHJP
B41J 2/525 20060101ALI20230831BHJP
G03G 15/01 20060101ALI20230831BHJP
G06F 3/12 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H04N1/407
B41J2/525
G03G15/01 S
G06F3/12 308
G06F3/12 342
G06F3/12 373
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029971
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112335
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英介
(74)【代理人】
【識別番号】100101144
【弁理士】
【氏名又は名称】神田 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100101694
【弁理士】
【氏名又は名称】宮尾 明茂
(74)【代理人】
【識別番号】100124774
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 信幸
(72)【発明者】
【氏名】臼井 孝
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 正哉
【テーマコード(参考)】
2C262
2H300
5C077
【Fターム(参考)】
2C262AA04
2C262AB15
2C262AC03
2C262BA16
2C262DA15
2C262FA01
2H300EB04
2H300EC05
2H300EH16
2H300EJ09
2H300GG27
2H300QQ27
2H300QQ28
2H300RR38
2H300RR44
2H300SS07
2H300SS12
2H300TT03
2H300TT04
5C077LL01
5C077MP08
5C077PP15
5C077PP20
5C077PP74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レジストレーションズレの調整の履歴に基づき、適切に画像を補正して出力する画像形成装置等を提供する。
【解決手段】画像形成装置10は、レジストレーションズレを調整するレジスト調整部を有し、複数回のレジスト調整部による調整の履歴の情報に基づき、出力色毎に補正値を決定し、決定した補正値に基づき、出力色のうち少なくとも1つの出力色について、出力する画像に含まれるオブジェクトの大きさを補正する制御部と、補正した画像を形成する画像形成部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レジストレーションズレを調整する調整部と、
複数回の前記調整部による調整の履歴の情報に基づき、出力色毎に補正値を決定する決定部と、
決定された前記補正値に基づき、出力色のうち少なくとも1つの出力色について、出力する画像に含まれるオブジェクトの大きさを補正する補正部と、
前記補正部により補正された前記画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記調整部による調整の回数が閾値を超えた場合、
前記決定部は、前記補正値を決定し、
前記補正部は、決定された前記補正値に基づき前記オブジェクトを補正する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記補正部は、前記出力色のうち少なくとも1つの出力色について、前記画像に含まれる前記オブジェクトを膨張させる補正を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記補正部は、さらに、前記出力色のうち少なくとも1つの出力色について、前記画像に含まれる前記オブジェクトを収縮させる補正を行うことを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記補正部は、
前記オブジェクトを構成する複数の色のうち、白色との明度差が大きい出力色の領域を、当該オブジェクトの領域よりも膨張させることにより当該オブジェクトを膨張させ、
前記オブジェクトを構成する複数の色のうち、白色との明度差が大きい出力色の領域を、当該オブジェクトの領域よりも収縮させることにより当該オブジェクトを収縮させる
ことを特徴とする請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記補正部は、膨張させた前記オブジェクトの濃度を下げ、収縮させた前記オブジェクトの濃度を上げることを特徴とする請求項4又は5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記調整部は、定期的又は所定条件時にレジストレーションズレを調整し、
前記決定部は、前記調整部による複数回の調整の履歴の情報に基づき、レジストレーションズレの方向及びレジストレーションズレの変動幅の最大値から、補正方向毎の前記補正値を決定する
ことを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記決定部は、主走査方向の前記補正値と副走査方向の前記補正値とを独立して決定し、
前記補正部は、主走査方向の前記補正値と副走査方向の前記補正値とに基づき、主走査方向と副走査方向と独立して前記オブジェクトを補正する
ことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記補正部は、前記画像に含まれる前記オブジェクトに対応した補正係数と前記補正値とから算出した補正量に基づき、前記オブジェクトの補正を行うことを特徴とする請求項1から8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
複数回のレジストレーションズレの調整の履歴の情報に基づき、出力色毎に補正値を決定する決定ステップと、
決定された前記補正値に基づき、出力色のうち少なくとも1つの出力色について、出力する画像に含まれるオブジェクトの大きさを補正する補正ステップと、
を含むことを特徴とする画像補正方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、画像形成装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、カラー画像形成装置において、レジストレーションズレ(位置ズレ)による色ズレが生じることで、印刷されたオブジェクト(文字や図形)のエッジ領域に色のにじみが生じ、知覚される色が変化する問題があった。例えば、赤文字が朱色~オレンジ色の文字と知覚されたり、緑文字が黄緑色の文字と知覚されたりする場合があった。これは、カラー画像形成装置において、エンジンベタ濃度が適切に調整されていても、レジストレーションズレにより、文字のエッジ部分の色にじみが生じることで、知覚される色が変化するためである。
【0003】
色ズレを補正するための技術も提案されている。例えば、印刷時の色ズレ補正のために、生じた色ズレの種類ごとに色ズレ補正方法を対応させるシステムにおいて、対象デバイスの印刷結果から色ズレ補正を行うかどうか判断するステップと、色ズレ補正アプリケーションから色ズレ補正箇所を選択するステップと、選択された色ズレ補正箇所の色ズレの種類を選択し、それぞれの色ズレ種類に対応した補正を行うステップと、色ズレ補正されたデータを再度レンダリングし、印刷するステップとを有する補正方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、入力画像に含まれるオブジェクトに対して太らせ処理を行ない、当該太らせ処理が施された入力画像におけるオブジェクトのエッジ部に対して彩度を抑圧することにより、色材に対応する複数の色版が互いにずれたとしても、黒色オブジェクトのエッジ部分における色ズレの発生を防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-165662号公報
【特許文献2】特許第6869709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された技術は、ユーザが色ズレの状況を確認する必要があるという課題がある。また、特許文献2に記載された技術は、過去のレジストレーションズレの調整の回数等が考慮されていない上、処理が複雑であり、黒色のオブジェクトしか対応できないという課題がある。また、カラー画像形成装置の環境変化や、複数の変動要因による複合的な変化が生じたとき、従来技術では、色ズレを適切に補正しきれないという課題がある。
【0006】
本開示は上述した課題に鑑み、レジストレーションズレの調整の履歴に基づき、適切に画像を補正して出力する画像形成装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本開示の画像形成装置は、レジストレーションズレを調整する調整部と、複数回の前記調整部による調整の履歴の情報に基づき、出力色毎に補正値を決定する決定部と、決定された前記補正値に基づき、出力色のうち少なくとも1つの出力色について、出力する画像に含まれるオブジェクトの大きさを補正する補正部と、前記補正部により補正された前記画像を形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする。
【0008】
また、本開示の画像補正方法は、複数回のレジストレーションズレの調整の履歴の情報に基づき、出力色毎に補正値を決定する決定ステップと、決定された前記補正値に基づき、出力色のうち少なくとも1つの出力色について、出力する画像に含まれるオブジェクトの大きさを補正する補正ステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、レジストレーションズレの調整の履歴に基づき、適切に画像を補正して出力する画像形成装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】第1実施形態における画像形成装置の斜視図である。
【
図2】第1実施形態における画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態における調整履歴情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図4】第1実施形態におけるメイン処理の流れを示すフロー図である。
【
図5】第1実施形態におけるレジスト調整処理の流れを示すフロー図である。
【
図6】第1実施形態における印刷処理の流れを示すフロー図である。
【
図7】第1実施形態における動作例を示す図である。
【
図8】第1実施形態における動作例を示す図である。
【
図9】第1実施形態を適用しない場合の例を示す図である。
【
図10】第1実施形態における動作例を示す図である。
【
図11】従来の方法によるレジストレーションズレの修正について示した図である。
【
図12】第2実施形態における印刷処理の流れを示すフロー図である。
【
図13】第3実施形態における画像形成装置の機能構成を示すブロック図である。
【
図14】第3実施形態における補正係数情報のデータ構成の例を示す図である。
【
図15】第3実施形態における印刷処理の流れを示すフロー図である。
【
図16】第3実施形態における動作例を示す図である。
【
図17】第3実施形態における動作例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本開示を実施するための一実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本開示を説明するための一例であり、特許請求の範囲に記載した発明の技術的範囲が、以下の記載に限定されるものではない。
【0012】
[1.第1実施形態]
第1実施形態は、本開示を適用した画像形成装置10について説明する。画像形成装置10は、コピー機能、スキャン機能、文書のプリント機能等を有する情報処理装置であり、MFP(Multi-Function Printer/Peripheral)や複合機とも呼ばれる。また、画像形成装置10は、画像をカラーで出力することが可能なカラー画像形成装置である。
【0013】
[1.1 機能構成]
本実施形態の画像形成装置10の機能構成を説明する。
図1は、画像形成装置10の外観斜視図であり、
図2は、画像形成装置10の機能構成を示すブロック図である。
【0014】
画像形成装置10は、
図2に示すように、制御部100、レジストセンサ110、原稿読取部115、画像形成部120、表示部140、操作部150、記憶部160、通信部190を備えて構成される。
【0015】
制御部100は、画像形成装置10の全体を制御するための機能部である。制御部100は、記憶部160に記憶された各種プログラムを読み出して実行することにより各種機能を実現しており、例えば、1又は複数の演算装置(CPU(Central Processing Unit))等により構成される。また、制御部100は、以下に説明する機能のうち、複数の機能を有するSoC(System on a Chip)として構成されてもよい。
【0016】
また、制御部100は、記憶部160に記憶されたプログラム実行することで、画像補正処理部102及びレジスト調整部104として機能する。
【0017】
画像補正処理部102は、各種画像に関する処理を行う。例えば、画像補正処理部102は、原稿読取部115によって入力された画像に対して、鮮鋭化処理や階調変換処理といった画像処理を実行する。また、本実施形態では、画像補正処理部102は、レジストレーションズレ(位置ズレ)に対応するため、膨張処理及び収縮処理を実行する。
【0018】
ここで、レジストレーションズレとは、記録用紙等の記録媒体に対して形成される出力色毎の画像の形成位置に生じる相対的なズレをいう。
【0019】
また、膨張処理とは、出力する画像に含まれるオブジェクト(文字や矩形、円、線、多角形等の図形)の色成分の領域を拡大する処理であり、オブジェクトのエッジ領域の色が、本来のエッジの位置を超えて出力されるように画像を補正する処理である。すなわち、膨張処理は、オブジェクトの大きさを、本来の大きさよりも大きくする処理である。収縮処理とは、出力する画像に含まれるオブジェクトの色成分の領域(大きさ)を縮小する処理であり、オブジェクトのエッジ領域の色が、当該エッジ領域に出力されないように画像を補正する処理である。すなわち、収縮処理は、オブジェクトの大きさを、本来の大きさよりも小さくする処理である。画像補正処理部102は、膨張処理及び収縮処理を利用して、画像に含まれるオブジェクトの大きさ(色成分の領域)を補正することにより、レジストレーションズレを目立ちにくくする。
【0020】
レジスト調整部104は、レジストレーションズレの調整(レジスト調整)を行う。レジスト調整部104は、例えば、以下の処理を実行する。
【0021】
(1)パターン画像の形成
レジスト調整部104は、出力色毎に、当該出力色の画像を形成する像担持部126にパターン画像の静電潜像を形成する。なお、出力色は、画像を記録用紙に形成するときに用いられる色であり、記録用紙に定着されるトナーの色に対応する。出力色は、例えば、C色、M色、Y色、K色の4色である。また、画像を形成するとき、画像形成装置10は、出力する画像を、出力色であるC色、M色、Y色、K色の4色の画像に分解し、それぞれの色成分に分解した画像の静電潜像を、対応する色の像担持部126に形成する。なお、それぞれの出力色を、出力色チャンネルともいう。
【0022】
また、像担持部126は、いわゆる、感光体(感光体ドラム)であり、静電潜像の形成及び形成された静電潜像の担持を行う。パターン画像は、レジストレーションズレを検出するために用いられる画像であり、例えば、斜線や所定の図形の画像である。像担持部126に形成されたパターン画像の静電潜像はトナーが付着され、後述する転写部128に転写される。
【0023】
(2)レジストレーションズレの検出
レジスト調整部104は、後述するレジストセンサ110により転写部128から検出されたパターン画像の検出結果に基づき、レジストレーションズレを検出する。レジストレーションズレを検出したとき、レジスト調整部104は、レジストレーションズレの状況を取得する。
【0024】
例えば、レジスト調整部104は、出力色毎のパターン画像の検出タイミングと、基準となるタイミングとを比較し、パターン画像の検出タイミングの偏差(歪み量)を求め、さらに、転写部128の移動速度を用いて、位置の偏差(レジストレーションのズレ量)に換算する。レジストレーションのズレ量は、基準となるタイミングとパターン画像の検出タイミングとに基づくレジストレーションのズレの量であり、基準からのズレの方向及び基準からのズレの量とを示す量である。すなわち、レジストレーションのズレ量は、レジストレーションズレの状況を示す量である。なお、レジスト調整部104は、特定の出力色を基準色とし、基準色のパターン画像を、基準色以外の出力色の偏差を求めるときの基準としてもよい。
【0025】
(3)レジストレーションズレの調整
レジスト調整部104は、レジストレーションのズレ量に基づき、レジスト調整を行う。例えば、レジスト調整部104は、像担持部126の回転速度を調整したり、像担持部126に静電潜像を形成するタイミングを調整したりする。
【0026】
なお、上述した処理は、レジスト調整の処理の一例であり、レジスト調整の方法としては、上述の方法以外の既存の方法を用いることができる。例えば、レジスト調整の方法として、特許第4639243号公報に記載された方法を用いることができる。
【0027】
レジストセンサ110は、転写部128に転写されたパターン画像を読み取る。例えば、レジストセンサ110は、転写部128に転写されたパターン画像の反射のレベルを検出する反射型のフォトセンサや、当該フォトセンサによって検出された反射レベルに応じてパターン画像を検出する装置や回路によって構成される。レジストセンサ110によるパターン画像の検出結果は、
図2の鎖線で示すように、制御部100(レジスト調整部104)に出力される。
【0028】
原稿読取部115は、原稿の画像を読み取って、当該画像を画像形成装置10に入力する。例えば、原稿読取部115は、例えば、原稿台に載置された原稿を読み取るスキャナ装置等により構成される。スキャナ装置は、CCD(Charge Coupled Device)やCIS(Contact Image Sensor)等のイメージセンサによって画像を電気信号に変換し、電気信号を量子化及び符号化する装置である。
【0029】
画像形成部120は、記録用紙等の記録媒体に対して画像を形成(印刷)する。画像形成部120は、例えば、電子写真方式を利用したレーザプリンタ等の印刷装置により構成される。画像形成部120は、例えば、
図1の給紙トレイ138から記録用紙を給紙し、記録用紙の表面に画像を形成し、記録用紙を排紙トレイ139から排紙する。
【0030】
また、画像形成部120は、記録用紙を搬送する用紙搬送部122と、光走査部124、像担持部126、転写部128、定着部130を備える。
【0031】
光走査部124は、レーザ光等の光を出射する発光素子(光源)を備え、当該光源から出射された光を像担持部126に照射する。
【0032】
像担持部126は、帯電を行い、光走査部124から出射されたレーザ光が照射されることにより、電気的な潜在画像(静電潜像)を形成する。なお、画像形成装置10は、出力色チャンネル毎に対応する像担持部126を備える。すなわち、画像形成装置10は、複数の像担持部126を備える。また、それぞれの像担持部126は、出力色チャンネル毎に分解された画像のうち、対応する出力色チャンネルの静電潜像を担持し、当該静電潜像に当該出力色のトナーを付着させる。
【0033】
転写部128は、複数の像担持部126のそれぞれに付着したトナーによる像(トナー像)を重畳して転写させ、さらに、重畳したトナー像を記録用紙に転写する。転写部128は、例えば、トナー像を付着させる無端状の転写ベルトや、当該転写ベルトを巻き掛けて回転駆動することにより当該転写ベルトを周回移動させる転写駆動ローラや、トナー像を記録用紙に転写させる転写ローラを備えて構成される。また、定着部130は、記録用紙に転写されたトナー像を、記録用紙に定着させる。
【0034】
表示部140は、各種情報を表示する。表示部140は、例えば、LCD(Liquid crystal display)、有機EL(electro-luminescence)ディスプレイ、マイクロLED(Light Emitting Diode)ディスプレイ等の表示装置により構成される。
【0035】
操作部150は、画像形成装置10を使用するユーザによる操作指示を受け付ける。操作部150は、キースイッチ(ハードキー)やタッチセンサ等の入力装置により構成される。タッチセンサにおいて接触(タッチ)による入力を検出する方式は、例えば、抵抗膜方式、赤外線方式、電磁誘導方式、静電容量方式といった、一般的な検出方式であればよい。なお、画像形成装置10には、表示部140と、操作部150とが一体に形成されたタッチパネルが搭載されてもよい。
【0036】
記憶部160は、画像形成装置10の動作に必要な各種プログラムや、各種データを記憶する。記憶部160は、例えば、半導体メモリであるSSD(Solid State Drive)や、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成される。
【0037】
記憶部160は、記憶領域として、調整履歴情報記憶領域162を確保する。調整履歴情報記憶領域162は、レジスト調整の履歴を示す調整履歴情報(レジスト調整情報)を記憶する。調整履歴情報は、例えば、
図3に示すように、レジスト調整の実施を行なった実施日時(例えば、「2022年1月31日12:00:50」)と、出力色チャンネル(例えば、「C色」)と、調整方向(例えば、「主走査方向」)と、調整量(例えば、「+1」)とが含まれる。
【0038】
出力色チャンネルは、像担持部126が形成する画像の出力色チャンネルを示し、例えば、「C色」「M色」「Y色」「K色」の何れかが記憶される。調整方向及び調整量は、レジスト調整後の画像の形成位置を示す。例えば、調整方向が「主走査方向」で、調整量が「+1」であることは、レジスト調整により、レジスト調整前と比べて、主走査方向の順方向に1画素分移動させた位置に画像を形成するように調整されたことを示す。また、調整方向が「副走査方向」で、調整量が「-1」であることは、レジスト調整により、レジスト調整前と比べて、副走査方向の逆方向に1画素分移動させた位置に画像を形成するように調整されたことを示す。すなわち、調整量が正である場合は、画像を形成するタイミングを遅らせる調整がされたことを示し、調整量が負である場合は、画像を形成するタイミングを早める調整がされたことを示す。
【0039】
通信部190は、LAN(Local Area Network)やWAN(Wide Area Network)を介して外部の装置と通信を行う。通信部190は、例えば、有線/無線LANで利用されるNIC(Network Interface Card)等の通信装置や通信モジュールにより構成され、ネットワークに接続可能なインタフェースを有してもよい。また、通信部190は、公衆回線網、LAN、インターネット等の通信ネットワークに接続し、ファクシミリや電子メール等の通信方法により、通信ネットワークを介して外部へデータを送信可能であってもよい。
【0040】
[1.2 処理の流れ]
画像形成装置10が実行する処理について、
図4から
図6を参照して説明する。
図4から
図6に記載した処理は、制御部100が、記憶部160に記憶されたプログラムを読み出すことにより実行される。
【0041】
[1.2.1 メイン処理]
画像形成装置10が実行する主な処理(メイン処理)について、
図4を参照して説明する。制御部100は、レジスト調整を行うか否かを判定する(ステップS100)。例えば、制御部100は、以下の条件を満たした場合、レジスト調整を行うと判定する。
(1)大量の印刷を行うとき
(2)画像形成装置10の環境が変化したとき
(3)画像形成装置10の電源が投入された直後であるとき
(4)ユーザによってレジスト調整の実行の指示がされたとき
(5)レジスト調整を最後に行ってから所定時間が経過したとき
(6)レジスト調整を最後に行ってから所定の枚数を超えて印刷をしたとき
【0042】
例えば、上記(2)の条件を用いる場合、制御部100は、画像形成装置10の機内環境(機内温度等)の変化に応じて、画像形成装置10の環境が変化したか否かを判定すればよい。この場合、画像形成装置10の内部に湿度や温度を検知するセンサを設け、制御部100は、通常検知される湿度や温度と異なる湿度や温度がセンサにより検知された場合、画像形成装置10の環境が変化したと判定する。なお、上述した条件は一例である。レジスト調整部104は、上述した条件以外の条件に基づいてレジスト調整を行うか否かを判定してもよいし、上述した条件を複数組み合わせて、レジスト調整を行うか否かを判定してもよい。
【0043】
制御部100は、レジスト調整を行うと判定した場合は、レジスト調整処理を実行する(ステップS100;Yes→ステップS102)。レジスト調整処理については後述する。このようにして、制御部100は、定期的又は所定条件時にレジスト調整を実施することで、レジストレーションズレの自動調整を実現する。なお、制御部100は、レジスト調整を行わないと判定した場合、ステップS102の処理を省略する(ステップS100;No)
【0044】
つづいて、制御部100は、印刷を行うか否かを判定する(ステップS104)。例えば、制御部100は、画像形成装置10に接続された他の端末装置から印刷データを取得した場合、印刷を行うと判定する。なお、印刷データとは、例えば、画像形成装置10が実行可能な印刷用のコマンドを含むPDL(Page Description Language)データである。なお、画像形成装置10の記憶部160に、印刷データを記憶する印刷データ記憶領域を予め確保し、当該印刷データ記憶領域に記憶された印刷データの出力(印刷)が指示された場合に、制御部100は、印刷を行うと判定してもよい。
【0045】
制御部100は、印刷を行う場合、印刷処理を実行する(ステップS104;Yes→ステップS106)。印刷処理については後述する。なお、制御部100は、印刷処理を実行しないと判定した場合、ステップS106を省略する(ステップS104;No)。
【0046】
[1.2.2 レジスト調整処理]
図5を参照して、レジスト調整処理について説明する。制御部100(レジスト調整部104)は、光走査部124を介して、像担持部126にパターン画像の静電潜像を形成し、レジストセンサ110を介して、転写部128に転写されたパターン画像を検出する(ステップS120)。つづいて、制御部100(レジスト調整部104)は、検出したパターン画像に基づき、パターン画像の歪み量(例えば、検出タイミングの偏差)を算出する(ステップS122)。
【0047】
つづいて、制御部100(レジスト調整部104)は、パターン画像の歪み量に基づきレジストレーションのズレ量を算出し、当該レジストレーションのズレ量に基づき、レジスト調整を実施する(ステップS124)。また、制御部100(レジスト調整部104)は、実施したレジスト調整の情報(調整方向や調整量)とレジスト調整の実施日時とを含む調整履歴情報を、調整履歴情報記憶領域162に記憶する(ステップS126)。
【0048】
[1.2.3 印刷処理]
図6を参照して、印刷処理について説明する。制御部100は、調整履歴情報記憶領域162から、複数の調整履歴情報を読み出す(ステップS140)。例えば、制御部100は、直近1か月等の所定期間に実施されたレジスト調整の調整履歴情報や、直近10回のレジスト調整の調整履歴情報等、所定の読み出しの条件に従って、調整履歴情報を読み出す。これにより、制御部100は、レジスト調整部104による、複数回のレジスト調整の履歴の情報を取得することができる。
【0049】
つづいて、制御部100は、出力する画像の補正を実施する条件(補正実施条件)を満たすか否かを判定する(ステップS142)。補正実施条件は、例えば、以下の条件である。
(1)レジスト調整の回数(頻度)が所定の閾値を超えるとき
(2)レジストレーションのズレ量又は調整量のばらつきが大きいとき
【0050】
例えば、制御部100は、ステップS140において、所定期間に実施されたレジスト調整の調整履歴情報を読み出した場合、読み出した調整履歴情報の数が予め設定された所定の閾値を超えるとき、(1)の条件を満たすと判定する。なお、所定の閾値は1でもよい。この場合、制御部100は、レジスト調整を1回実施しても、まだレジストレーションズレが生じる場合に、出力する画像の補正を行うことができる。
【0051】
なお、制御部100は、(2)を用いる場合、予め、レジストレーションのズレ量又は調整量のばらつきに対する閾値を記憶部160に記憶し、ステップS140において読み出した調整履歴情報に基づき、レジストレーションのズレ量(例えば、基準からのズレの量)又は調整量が、閾値を超えるか否かを判定する。この場合において、例えば、制御部100は、読み出した調整履歴情報に記憶された調整量のうち少なくとも1つの調整量が閾値を超える場合や、調整量の分散や平均値が閾値を超える場合、レジストレーションのズレ量又は調整量のばらつきが大きいと判定する。
【0052】
なお、上述した条件は一例であって、制御部100は、上述した条件以外の条件を、補正実施条件としてもよい。
【0053】
制御部100は、補正実施条件を満たす場合、ステップS140において読み出した調整履歴情報に基づき、出力色チャンネル毎の補正値を決定する(ステップS142;Yes→ステップS144)。補正値とは、オブジェクトのエッジと膨張処理によりオブジェクトの膨張させたときにおける膨張後のエッジとの距離、又は、オブジェクトのエッジと収縮処理によりオブジェクトの収縮させたときにおける収縮後のエッジとの距離である。すなわち、補正値とは、膨張処理及び収縮処理によって、オブジェクトを膨張又は収縮させるときにおけるエッジ位置の変化量を示す。制御部100は、補正値を、例えば、以下の方法により決定する。
【0054】
(1)膨張処理を行う出力色チャンネル及び収縮処理を行う出力色チャンネルの決定
制御部100は、出力色チャンネルのうち、膨張処理を行う出力色チャンネル及び収縮処理を行う出力色チャンネルを決定する。
【0055】
一般的に、色ズレが生じる場合、色間で相対的に透過度の低い色からはみ出した透過度の高い色が目立ちやすい。そのため、制御部100は、相対的に透過度の高い色を収縮処理の対象とし、逆に透過度の低い色を膨張処理の対象とする。なお、色の特性を透過度で説明したが、画像形成装置10は、色の重ね合わせでフルカラーを再現する減法混色系である。そのため、制御部100は、オブジェクトを構成する複数の色のうち、白色(紙白)との明度差が大きい色成分に対して膨張処理を行い、白色(紙白)との明度差が小さい色成分に対して収縮処理を行なう。
【0056】
例えば、制御部100は、白色との明度差が大きい(相対的に透過度の低い)M色(マゼンタ)と、白色との明度差が小さい(相対的に透過度が高い)Y色(イエロー)との色間においてレジストレーションズレの補正処理を行うとする。この場合、透過度の低い色(マゼンタ)から透過度の高い色(イエロー)がはみ出ると目立つことから、制御部100は、Y色がM色からはみ出さないようにするため、M色を膨張処理を行う出力色チャンネルとし、Y色を収縮処理を行う出力色チャンネルとする。
【0057】
(2)色間の出力位置の差分の取得
制御部100は、膨張処理を行う出力色チャンネルの出力位置と、収縮処理を行う出力色チャンネルの出力位置との位置の差分を取得する。例えば、制御部100は、最後に実施したレジスト調整の調整履歴情報を読み出し、主走査方向及び副走査方向毎に、膨張処理を行う出力色チャンネル(例えば、M色)の調整量と、収縮処理を行う出力色チャンネル(例えば、Y色)の調整量との差分を算出する。そして、制御部100は、主走査方向における調整量の差分の絶対値と、副走査方向における調整量の差分の絶対値とのうち、大きい値を、膨張処理を行う出力色チャンネルの出力位置と、収縮処理を行う出力色チャンネルの出力位置との位置の差分とする。
【0058】
(3)出力色チャンネル毎の補正値の決定
制御部100は、色間の出力位置の差分に基づき、出力色チャンネル毎の補正値を決定する。例えば、制御部100は、膨張処理を行う出力色チャンネル(例えば、M色)と、収縮処理を行う出力色チャンネル(例えば、Y色)との出力位置の差分が2であるとする。この場合、制御部100は、膨張処理及び収縮処理後において、膨張処理を行う出力色チャンネルと収縮処理を行う出力色チャンネルとの色成分の領域の境界の位置が、2画素ずれるようにする。例えば、制御部100は、膨張処理を行う出力色チャンネルの補正値を「1」とし、収縮処理を行う出力色チャンネルの補正値を「1」とすることで、M色で描画されるオブジェクトの境界の位置と、Y色で描画されるオブジェクトの境界の位置とを、2画素ずらす。このようにして、制御部100は、レジスト調整の調整量のばらつきに応じて膨張処理及び収縮処理を行う。このとき、例えば、調整量の差(色間の出力位置の差分)が±1画素以内であれば、制御部100は、膨張処理後及び収縮処理後におけるオブジェクトの境界の位置の差が1画素となるように補正値を決定する。
【0059】
つづいて、制御部100(画像補正処理部102)は、ステップS144において決定した補正値に基づき、膨張処理及び収縮処理を実行する(ステップS146)。例えば、画像補正処理部102は、PDLデータ等の印刷データから、オブジェクトに関する情報を取得し、オブジェクト毎に、出力色チャンネル毎の出力位置を取得する。つづいて、画像補正処理部102は、オブジェクト毎及び出力色チャンネル毎に、補正値に基づき、膨張処理又は収縮処理あるいはその両方を実行する。
【0060】
例えば、画像補正処理部102は、収縮処理を行う出力色チャンネル(例えば、Y色)に対しては補正値が示す値の画素数だけ、オブジェクトの当該出力色チャンネルの色成分の領域を縮小する。具体的には、収縮処理を行う出力色チャンネルがY色である場合、画像補正処理部102は、画像に含まれるオブジェクトに応じて、Y色が描画される領域を特定し、特定した当該領域を収縮する。この結果、画像に含まれるオブジェクトは、Y色のチャンネルにおいては収縮されることになる。このようにして、画像補正処理部102は、収縮処理を行う出力色チャンネルにおけるオブジェクトの色成分の領域の境界を、当該オブジェクトのエッジの位置より内側にする。
【0061】
一方、画像補正処理部102は、膨張処理を行う出力色(例えば、M色)に対しては、補正値が示す値の画素数だけ、オブジェクトの当該出力色チャンネルの色成分の領域を拡大する。具体的には、膨張処理を行う出力色チャンネルがM色である場合、画像補正処理部102は、画像に含まれるオブジェクトに応じて、M色が描画される領域を特定し、特定した当該領域を拡張する。この結果、画像に含まれるオブジェクトは、M色のチャンネルにおいては膨張されることになる。このようにして、画像補正処理部102は、膨張処理を行う出力色チャンネルにおけるオブジェクトの色成分の領域の境界を、当該オブジェクトのエッジの位置より外側にする。
【0062】
このようにして、オブジェクトが、複数の出力色により構成されるカラーオブジェクトである場合、画像補正処理部102は、当該オブジェクトの出力色のうち、少なくとも1つの出力色については、当該オブジェクトを膨張させる膨張処理を実行することができる。また、オブジェクトが、複数の出力色により構成されるカラーオブジェクトである場合、画像補正処理部102は、当該オブジェクトの出力色のうち、少なくとも1つの出力色については、当該オブジェクトを収縮させる収縮処理を実行することができる。
【0063】
つづいて、制御部100は、画像形成部120を介して画像を出力(印刷)する(ステップS146)。これにより、制御部100は、ステップS146において画像を補正した場合、補正後の画像を出力することができる。
【0064】
[1.3 動作例]
本実施形態の動作例について、
図7及び
図8を参照して説明する。
図7及び
図8は、出力(印刷)される画像に含まれるオブジェクトの一例をアルファベットの「A」としたときの、当該オブジェクトに対する膨張処理及び収縮補正の処理の例を示す図である。なお、
図7及び
図8において、鎖線はオブジェクトのエッジを示し、万線は出力画像においてM色のチャンネルの濃度が100%である部分を示し、網点は、出力画像においてY色のチャンネルの濃度が100%である部分を示す。
【0065】
図7(a)は、出力画像に含まれるオブジェクトであるアルファベットの「A」を示す図である。
図7(a)に示すように、当該オブジェクトの出力色毎のチャンネルの濃度は、M色及びY色は100%であり、C色及びK色は0%である。したがって、当該オブジェクトは、M色のトナーとY色のトナーとが重畳して、赤いオブジェクト(赤文字の「A」)が印刷される。
【0066】
図7(b)及び
図7(c)は、
図7(a)の点線で示した領域E100の部分を拡大した図である。レジストレーションズレが生じなければ、M色のトナーとY色のトナーとが同じ位置で重畳して記録用紙に定着することにより、赤色のオブジェクトが知覚される。しかし、レジストレーションズレが生じた場合、M色のトナーとY色のトナーとがずれて重畳し、赤色とは異なるオブジェクトとして知覚される場合がある。
【0067】
本実施形態の画像形成装置10は、レジスト調整の回数が所定の閾値を超えた場合等において、出力色チャンネル毎の補正値(膨張収縮値)を決定し、当該補正値に基づき、膨張処理又は収縮処理あるいはその両方を行う。これにより、画像形成装置10は、レジスト調整に加え、膨張処理や収縮処理を利用して、レジストレーションズレの補正処理を行う。
【0068】
図7(d)は、領域E100の部分に対して膨張処理を行ったときにおける処理後の出力画像の例を示す図である。M色のチャンネルについては、
図7(d)に示すように、エッジ領域の色(濃度が100%であるM色)がエッジを超えて出力されるように出力画像が補正される。また、
図7(e)は、領域E100の部分に対して収縮処理を行ったときにおける処理後の出力画像の例を示す図である。Y色のチャンネルについては、
図7(e)に示すように、エッジ領域の色(濃度が100%であるY色)がエッジの内側に出力されるように出力画像が補正される。
【0069】
図8は、従来技術及び本実施形態の画像形成装置10により出力されるオブジェクト(赤文字の「A」)を示す図である。
図8の(a)から(f)は従来技術の例を示し、
図8の(g)から(v)は画像形成装置10の例を示す。また、
図8のE110内のオブジェクトは、M色のトナーとY色のトナーとでレジストレーションズレが生じていない場合に印刷されるオブジェクトを示す。同様にして、
図8のE112内のオブジェクトは、M色のトナーとY色のトナーとでレジストレーションズレ(M色が右方向、Y色が左方向)が生じている場合に印刷されるオブジェクトを示す。
図8のE114内のオブジェクトは、M色のトナーとY色のトナーとで大きなレジストレーションズレが生じている場合に印刷されるオブジェクトを示す。
【0070】
ここで、赤色を構成するM色(マゼンタ)とY色(イエロー)について、従来技術では、赤文字の「A」(
図8(a))が出力されるとき、「A」の形状を塗りつぶすように、M色(
図8(b))とY色(
図8(c))の出力位置が決定される。レジストレーションズレが生じていなければ、M色とY色とが重畳し、赤色の「A」が出力される(
図8(d))。しかし、M色とY色とで、印刷位置のレジストレーションズレが生じている場合(
図8(e))、僅かなレジストレーションズレであっても、透過度の低い色(M色)からはみ出した色(Y色)が目立ち、実際には赤文字が黄色味寄りに変色し、オレンジ色~朱色に知覚される。レジストレーションズレが大きい場合(
図8(f))は、より変色して知覚される。
【0071】
すなわち、M色(マゼンタ)とY色(イエロー)とでレジストレーションズレ(印刷位置ズレ)が生じている場合、僅かなズレであっても、透過度の低い色(マゼンタ)からはみ出した色(イエロー)が目立ち、実際には、赤文字が黄色味寄りに変色して、オレンジ色~朱色に見えてしまう。
【0072】
一方、本実施形態の画像形成装置10は、補正値に基づき、オブジェクトの膨張収縮処理を行う。例えば、画像形成装置10は、赤色の「A」(
図8(g))を出力するとき、M色のチャンネルに対しては膨張処理が実行され(
図8(h))、Y色のチャンネルに対しては収縮処理が実行される(
図8(i))。このとき、レジストレーションズレが生じていなければ、M色とY色とが重畳して出力される(
図8(j))。一方、僅かなレジストレーションズレが生じている場合であっても、Y色がM色の内部に重畳して出力される(
図8(k))。また、レジストレーションズレが大きい場合であっても、Y色ができるだけM色の内部に重畳されるように出力される(
図8(l))。ここで、オブジェクトの背景である記録用紙の背景色(紙白)との明度差が大きい成分が膨張されることで、背景色との明度差の小さい成分が明度差の大きい成分からはみ出ることが軽減され、オブジェクトの変色が知覚されにくくなる。
【0073】
このように、Y色(イエロー)の色成分の領域が、M色(マゼンタ)の色成分の領域よりも収縮されることにより、レジストレーションズレが生じても、マゼンタに対するイエローのはみ出しがなくなるか、はみ出す量が少なくなる。これにより、赤文字の「A」は、M色とY色とが重畳した領域と、M色のみの領域とで構成されるが、何れの領域も、記録用紙の背景色(紙白)との強コントラスト境界対比効果により、色味の違いが一定量許容(緩和)されることとなる。
【0074】
なお、画像形成装置10は、膨張処理のみを行なってもよい。この場合、画像形成装置10は、相対的に透過度の高い出力色チャンネル(例えば、Y色)の補正値を「0」とし、相対的に透過度の低い出力色チャンネル(例えば、M色)の補正値を、色間の出力位置の差分の値とすればよい。これにより、画像形成装置10は、M色については膨張処理を行い(
図8(m))、Y色については処理を行わない(
図8(n))。この場合、レジストレーションズレが生じていない場合ば、M色とY色とが重畳して出力される(
図8(o))。一方、僅かなレジストレーションズレが生じている場合や(
図8(p))や、レジストレーションズレが大きい場合(
図8(q))においても、Y色ができるだけM色の内部に重畳されるように出力される。
【0075】
同様にして、画像形成装置10は、収縮処理のみを行なってもよい。この場合、画像形成装置10は、相対的に透過度の低い出力色チャンネル(例えば、M色)の補正値を「0」とし、相対的に透過度の高い出力色チャンネル(例えば、Y色)の補正値を、色間の出力位置の差分の値とすればよい。これにより、画像形成装置10は、M色については処理を行わず(
図8(r))、Y色については収縮処理を行う(
図8(s))。この場合、レジストレーションズレが生じていない場合、M色とY色とが重畳して出力される(
図8(t))。一方、僅かなレジストレーションズレが生じている場合や(
図8(u))や、レジストレーションズレが大きい場合(
図8(v))においても、Y色ができるだけM色の内部に重畳されるように出力される。
【0076】
また、本実施形態を適用しない場合の例について、
図9を参照して説明する。
図9(a)及び
図9(e)は、グレー色の「A」の文字の一部分を示した図である。また、
図9(c)、
図9(d)、
図9(g)、
図9(h)、
図9(i)はオブジェクトの印刷例を示す。なお、印刷例において、斜線はC色、M色、Y色、K色のそれぞれのトナーの定着位置を示す。
【0077】
グレー色の「A」を、C色、M色、Y色、K色の何れも50%(
図9(b))の濃度で印刷する場合、レジストレーションズレがなければ、
図9(c)に示すように、オブジェクトの範囲内に、C色、M色、Y色、K色が出力される。しかし、例えば、C色、M色、Y色が右方向にずれ、K色が左方向にずれるレジストレーションズレが生じた場合、
図9(d)の領域E900に示すように、オブジェクトのエッジ領域の外側にC色、M色、Y色が出力されてしまい、エッジ部分の色にじみが生じてしまう。
【0078】
エッジ部分の色にじみを抑える技術として、オブジェクトのエッジ領域をUCR(Under Color Removal)処理によりBK単色化(黒色にする補正)することで、オブジェクトのエッジ領域のUCR量を変える技術がある。
図9(e)に示すように、エッジ領域E910をUCR処理によりBK単色化する補正が行われた場合、エッジ領域E910の濃度は、例えば、
図9(f)に示すように、C色、M色、Y色は0%、K色は100%となる。レジストレーションズレがなければ、
図9(g)に示すように、R910の部分(塗りつぶし部分)はC色、M色、Y色、K色が出力され、R911の部分(エッジ領域)は、エッジ領域のBK単色化により、K色のみが出力される。
【0079】
レジストレーションズレが生じ、C色、M色、Y色が右方向にずれ、K色が左方向にずれても、
図9(h)に示すように、R912の部分(エッジ領域)は、K色に重畳してC色、M色、Y色が出力されることとなる。この結果、C色、M色、Y色のトナーがK色のトナーにより目立たなくなり、エッジ領域に生じる色のにじみが抑制される。
【0080】
また、レジストレーションズレとして、C色、M色、Y色が左方向にずれ、K色が右方向にずれた場合、
図9(i)に示すように、R913の部分はC色、M色、Y色、K色が出力される。しかし、R914の部分はCMY色とK色とで左右にレジストレーションズレが生じた結果、K色のみが出力される領域となる。また、R915の部分はK色のみが出力される領域となる。このとき、R915の部分は、K色100%に置き換えられているが、R914の部分は、K色50%のみとなるため、色が抜けたように見える。このように、K色のみ右方向のレジストレーションズレが生じることで、エッジ領域の内部に色抜けが生じてしまう場合がある。
【0081】
このように、本実施形態を適用しない場合、適切にオブジェクトが印刷できない場合があった。これに対して、本実施形態の画像形成装置10は、出力する画像に含まれるオブジェクトに対する膨張処理や収縮処理を行い、相対的に透過度の高い色が相対的に透過度の低い色からはみ出ないように補正することで、レジストレーションズレに対応することができる。
【0082】
なお、上述した説明では、
図6のステップS144において、膨張処理を行う出力色チャンネルをM色、収縮処理を行う出力色チャンネルをY色としたが、上述した出力色チャンネル以外の色を膨張処理又は収縮処理の何れかを行う出力色チャンネルとしてもよい。例えば、膨張処理を行う出力色チャンネルをC色、収縮処理を行う出力色チャンネルをY色としてもよいし、膨張処理を行う出力色チャンネルをK色、収縮処理を行う出力色チャンネルをY色としてもよい。また、C色とM色との間で膨張処理を行う出力色と補正値を決定した後、膨張処理後のC色又はM色の出力位置とY色の出力位置との差分から、Y色の収縮処理に対する補正値が決定されてもよい。このようにして、画像補正処理部102は、K色-C色及びM色-Y色の順で、出力色毎に、膨張処理又は収縮処理のうち何れを実行するかを切り替えたり、膨張処理も収縮処理も実行しない出力色を決定したりすることができる。
【0083】
また、画像補正処理部102は、膨張処理の対象領域(膨張処理がされたオブジェクトの領域)の画素値(濃度)を下げて、収縮処理の対象領域(収縮処理がされたオブジェクトの領域)の画素値(濃度)を上げてもよい。この場合における動作例を、
図10に示す。
図10の(a)から(e)までは、膨張処理及び収縮処理において、対象領域の画素値を変化させない場合について示した図である。また、
図10の(f)から(j)までは、膨張処理及び収縮処理において、対象領域の画素値を変化させる場合について示した図である。なお、出力するオブジェクトは、赤文字の「A」とする。
【0084】
画素値を変化させない場合、M色に対して膨張処理のみが行われ(
図10(a)→
図10(c))、Y色に対して収縮処理のみが行われる(
図10(b)→
図10(d))。そして、画像形成装置10は、M色の画像とY色の画像とを重畳して出力する(
図10(e))。ここで、膨張処理又は収縮処理あるいはその両方が実行されるにより着色領域の面積が変わることによりカラーバランスが変わってしまうことにより、出力されたオブジェクトの色味が、元々の色味とずれて知覚される場合がある。
【0085】
そこで、画像補正処理部102は、M色に対して膨張処理及び膨張に合わせて濃度を下げる処理を行い(
図10(f)→
図10(h))、Y色に対して収縮処理及び収縮に合わせて濃度を上げる処理を行う(
図10(g)→
図10(i))。そして、画像形成装置10は、濃度が低くなったM色と、濃度が高くなったY色とを、重畳して出力する(
図10(j))。このように、画像補正処理部102は、膨張させたオブジェクトの濃度を下げて、収縮させたオブジェクトの濃度を上げることにより、膨張処理や収縮処理により着色領域の面積が変わることでカラーバランスが変わってしまうことを抑えることができる。
【0086】
また、画像形成装置10は、上述した処理によりレジストレーションズレによる色にじみを抑制する画像処理モードを備えることで、画像処理モードを有効にするか否かを、ユーザによって選択可能であってもよい。
【0087】
このように、本実施形態の画像形成装置は、複数回のレジスト調整の履歴の情報であるレジスト調整履歴を記憶する。そして、画像形成装置は、レジスト調整の回数が所定の閾値を超えた場合等において、記憶したレジスト調整情報を用いて、レジストレーションズレの補正処理を行う。ここで、レジストレーションズレの補正処理として、レジスト調整情報に基づき出力色チャンネル毎に補正値を決定し、当該補正値に基づいて、画像に含まれるオブジェクトのエッジ領域において、出力チャンネル毎に、当該エッジ領域を膨張させたり収縮させたりする。画像形成装置は、このような膨張収縮処理を行うことで、レジストレーションズレによる色にじみを抑制するように画像の補正を行うことができる。
【0088】
また、本実施形態の画像形成装置は、複数回のレジスト調整におけるレジスト調整情報に基づいて、出力色チャンネル毎の補正値を決定することができる。その結果、画像形成装置は、ある時点の周期変化のみならず、実運用中に起こりうる可能性の高い変化に対しても、色ズレによる色変化が知覚されることを抑制できる。また、本実施形態の画像形成装置は、オブジェクトを構成する複数の色のうち、白色(紙白)との明度差が大きい色成分の領域を、本来の画像における色成分の領域よりも拡大し、白色(紙白)との明度差が小さい色成分の領域を、本来の画像における色成分の領域よりも縮小する。これにより、相対的に透過度の低い色からはみ出した相対的に透過度の高い色により、実際の色が変色して知覚されることを低減される。また、本実施形態の画像形成装置は、出力色チャンネル毎に補正を行うため、赤色や緑色といった複数の出力色チャンネルに対して所定の濃度が設定されるカラーオブジェクトに対しても、有効な補正を行うことができる。
【0089】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、第1実施形態における処理において補正値を決定するとき、レジスト調整の履歴情報に基づき、出力色チャンネル毎におけるズレの方向とズレの量(レジストレーションズレ)のそれぞれの変動幅の最大値から、補正方向及び補正値を決定する実施形態である。本実施形態は、第1実施形態の
図6を
図12に置き換えたものである。なお、同一の処理には同一の符号を付し、説明については省略する。
【0090】
図11を参照して、本実施形態の概要について説明する。
図11は、従来の方法によるレジストレーションズレの修正について示した図である。
図11(a)は、同一ページを想定した領域内に形成されたパターン画像を示す。また、
図11(b)は、連続した複数ページ印刷を想定した領域内に形成されたパターン画像を示す。
【0091】
図11(c)から
図11(g)は、形成されたパターン画像を5回読み取った場合における、2つの出力色チャンネル間におけるレジストレーションズレを示す。
図11(c)から
図11(g)において、ベタのパターン画像は、第1の出力色のパターン画像が読み取られたタイミングに基づく当該パターン画像の形成位置を示し、斜線のパターン画像は、第1の出力色とは異なる第2の出力色のパターン画像の読み取りが読み取られたタイミングに基づく当該パターン画像の形成位置を示す。
【0092】
図11(c)は、第1の出力色の画像の形成位置に対して、第2の出力色の画像の形成位置が右方向に1画素、下方向に1画素ずれていることを示す。同様に、第1の出力色の画像の形成位置に対して、
図11(d)は、第2の出力色の画像の形成位置が下方向に1画素、
図11(e)は、右方向に2画素及び下方向に2画素、
図11(f)は、右方向に1画素及び下方向に1画素、
図11(g)は、右方向に1画素ずれていることを示す。
【0093】
図11(c)から
図11(g)に示すように、レジスト調整を行うときのタイミングによって、基準からのズレの方向及び基準からのズレの量(以下、「ズレ量」と記載する)が不均一である場合がある。この場合、ズレ量の平均がゼロとなるように、各色の画像の形成位置を調整(従来どおりのレジスト調整)する。ここで、
図11(c)から
図11(g)までのズレ量の平均は右方向に1画素及び下方向に1画素である。そのため、第1の出力色の画像の出力位置に対して、第2の出力色の画像の出力位置を左方向に1画素及び上方向に1画素ずらすことで、レジストレーションズレが緩和され、
図10(h)から
図10(l)に示す出力が得られる。なお、
図11(h)から
図11(l)に示す出力における、第1の出力色に対する第2の出力色のズレ量の平均は0である。
【0094】
図11(h)及び
図11(k)においては、レジストレーションズレが生じていない。また、
図11(i)におけるレジストレーションのズレ量は左に1画素であり、
図11(j)におけるレジストレーションのズレ量は下に1画素及び右に1画素であり、
図11(l)におけるレジストレーションのズレ量は上に1画素である。しかしながら、レジストレーションのズレ量の平均は0画素であるものの、上下及び左右の逆方向間におけるレジストレーションズレ(逆ズレ)は解消できない。また、従来のレジスト調整だけでは、同一方向の一様なレジストレーションズレは解消できるものの、非周期的な不均一なレジストレーションズレは解消されない。
【0095】
そこで、本実施形態の画像形成装置10は、各色の印刷位置の調整(従来どおりのレジスト調整)で解消できない逆方向のズレを表す「変動幅の最大値」に応じて、補正値を決定する。また、本実施形態の画像形成装置10は、補正方向(主走査方向及び副走査方向)毎に、補正値を決定する。これは、主走査方向におけるレジストレーションズレの要因と、副走査方向におけるレジストレーションズレの要因とが異なるからである。
【0096】
主走査方向は潜像を描画する光学系が主なレジストレーションズレの要因である。そのため、一般的に、光学系や光走査部124等を構成するユニットにおける調整誤差、取り付け誤差による倍率ズレ、温度上昇による変形、駆動時の振動等が、主走査方向のレジストレーションズレの原因として考えられる。しかし、主走査方向の印刷位置のズレは、主に光学系や光走査部124等を構成するユニットに起因するものであり、ズレの要因が限定されていることから、一般的に補正がしやすい。
【0097】
一方で、副走査方向(媒体搬送方向)は、像担持部126(例えば、感光体ドラム)や、転写部128(例えば、転写ベルト)、用紙を搬送する各ローラ等の偏心、形状偏差(真円度)、駆動モータの角速度の安定性、各駆動体のあそび(がたつき)、温度上昇に伴う変形など、色ズレの要因が多く、かつ、それぞれの周期が異なっていたり非周期的であったりすることから、色ズレが起こりやすい上に不安定化しやすい。
【0098】
このように、主走査方向と副走査方向とでは、レジストレーションズレの要因が異なる結果、色ズレの出方が異なる。そのため、本実施形態の画像形成装置10は、主走査方向と副走査方向とのそれぞれに応じた補正値を決定し、主走査方向と副走査方向とのそれぞれに対して、独立して補正を行う。
【0099】
なお、上述した説明は、同一ページを想定した領域内、又は、連続した複数ページ印刷を想定した領域内にパターン画像を形成して読み取って補正がされる例を説明したが、過去の別々のタイミングで実施されたレジスト調整の履歴情報に基づいて補正されてもよい。この場合、例えば、直近(1回前)のレジスト調整時のレジストレーションズレの状態が
図11(c)、2回前のレジスト調整時のレジストレーションズレの状態が
図11(d)、3回前のレジスト調整時のレジストレーションズレの状態が
図11(e)、4回前のレジスト調整時のレジストレーションズレの状態が
図11(f)、5回前のレジスト調整時のレジストレーションズレの状態が
図11(g)となる。直近5回のレジスト調整時におけるズレ量の平均は右方向に1画素及び下方向に1画素となる。
【0100】
各レジスト調整時における、パターン画像の読み取り結果のそれぞれのズレは、1回前の調整で最適化された状態からのズレなので、レジスト調整間におけるズレの実態を表している。したがって、画像形成装置10は、レジスト調整の履歴情報に基づき、最大のズレ量をカバーできるように補正値を決定し、膨張処理又は収縮処理あるいはその両方を行うことで、過去と同様の色ズレによる色変化が起こっても、色のにじみとして視認されにくいように、予防的な対策ができる。
【0101】
本実施形態の画像形成装置10が実行する印刷処理について、
図12を参照して説明する。制御部100は、補正実施条件を満たす場合、出力色チャンネル毎及び補正方向毎に、変動幅の最大値を取得する(ステップS200)。変動幅の最大値とは、所定回数分の調整履歴情報に記憶された調整量の絶対値のうち、最大の値である。
【0102】
例えば、直近5回分の調整履歴情報に記憶されたY色の主走査方向に対する調整量が、-2、+1、0、+1、-1である場合、調整量の絶対値のうち最大の値は2である。これは、レジスト調整を実施しても、主走査方向において、画像の出力位置は、基準の位置(本来の画像の出力位置)から最大2画素変動することを示す。そのため、制御部100は、主走査方向に対する変動幅の最大値として、「2」を取得する。同様にして、制御部100は、副走査方向に対する変動幅の最大値を取得する。また、制御部100は、他の出力色チャンネルにおける、主走査方向及び副走査方向の変動幅の最大値を取得する。
【0103】
つづいて、制御部100は、ステップS200において取得した変動幅の最大値から、補正方向及び補正値を決定する(ステップS202)。なお、制御部100は、出力色チャンネル毎及び補正方向毎に取得した変動幅の最大値を、当該出力色チャンネルの当該補正方向に対する補正値とすればよい。このようにして、制御部100は、出力色チャンネル毎に、主走査方向の補正値と副走査方向の補正値とを独立して決定する。
【0104】
つづいて、制御部100(画像補正処理部102)は、ステップS202において決定した補正方向及び補正値に基づき、出力色チャンネル毎及び補正方向毎(主走査方向及び副走査方向)に、補正値に基づく膨張処理及び収縮処理を実行する(ステップS204)。すなわち、制御部100は、補正方向である主走査方向と副走査方向とで独立して補正を行う。
【0105】
このような処理が実行されることにより、制御部100は、ステップS148において、変動幅の最大値に応じて補正された画像を出力することができる。
【0106】
このように、本実施形態の画像形成装置は、定期的又は所定条件時に実行した複数回のレジスト調整におけるレジスト調整情報に基づき、出力色チャンネル毎におけるズレの方向とズレの量とのそれぞれの変動幅の最大値から補正方向及び補正値を決定し、補正を行う。これにより、画像形成装置は、色ズレに対して、適切に対応することが可能となる。例えば、主走査方向のレジスト調整がされず、副走査方向のレジスト調整が頻繁に実施されている場合において、本実施形態の画像形成装置は、副走査方向のみ膨張処理又は収縮処理あるいはその両方を実行することができる。また、本実施形態の画像形成装置は、主走査方向と副走査方向とに対して、独立して補正値を決定し、独立して補正することができるため、それぞれの補正方向に応じて、適切にレジストレーションズレに対応することができる。
【0107】
[3.第3実施形態]
第3実施形態は、第1実施形態における画像の補正処理において、画像に含まれるオブジェクト毎に補正係数を求め、補正係数と出力色チャンネル毎の補正方向及び補正値とから補正量を決定し、当該補正量に従って画像を修正する実施形態である。本実施形態は、第1実施形態の
図2を
図13に、第1実施形態の
図6を
図15に、それぞれ置き換えたものである。なお、第1実施形態と同一の機能部及び処理には同一の符号を付し、説明については省略する。
【0108】
[3.1 機能構成]
図13は、本実施形態における画像形成装置12の機能構成を示すブロック図である。画像形成装置12は、
図2に示した画像形成装置10と比べて、記憶部160に、補正係数情報記憶領域164を更に確保する点が異なる。
【0109】
補正係数情報記憶領域164は、補正値を修正するための係数である補正係数の情報(補正係数情報)を記憶する。補正係数情報は、例えば、
図14に示すように、オブジェクト特徴(例えば、「フォント種別が明朝体」)と、補正方向(例えば、「主走査方向」)と、補正方法(例えば、「膨張処理」)と、補正係数(例えば、「1」)とを含む。
【0110】
補正方法は、「膨張処理」又は「収縮処理」の何れかが記憶される。また、補正方向や補正方法を指定しない場合は、補正方向や補正方法に所定の情報が記憶されなくてもよい。なお、補正係数情報は予め記憶されていてもよいし、ユーザによって修正可能であってもよい。このようにして、オブジェクトの特徴と、補正係数とが対応付けられる。
【0111】
[3.2 処理の流れ]
本実施形態において、画像形成装置12が実行する印刷処理の流れについて、
図15を参照して説明する。なお、補正係数情報記憶領域164には、
図14に示した補正係数情報が記憶されていることとして説明する。
【0112】
本実施形態では、制御部100(画像補正処理部102)は、補正値を決定したあと、印刷データから未選択のオブジェクトを1つ選択する(ステップS300)。
【0113】
つづいて、制御部100(画像補正処理部102)は、ステップS300において選択したオブジェクトの特徴に基づき、当該オブジェクトに対応する補正係数を取得する(ステップS302)。例えば、画像補正処理部102は、ステップS300において選択したオブジェクトが文字のオブジェクトであり、当該文字のフォント種別が明朝体である場合、副走査方向に対する膨張処理の補正係数として1を、副走査方向に対する収縮処理の補正係数として0を取得する。
【0114】
つづいて、制御部100(画像補正処理部102)は、補正値及び補正係数から、補正量を決定する(ステップS304)。例えば、画像補正処理部102は、明朝体の文字のオブジェクトのM色チャンネルに対する膨張処理を行う場合において、M色の補正値が2で、かつ、
図12に示した補正係数情報が記憶されているとき、下記の通り、補正方向及び補正方法毎の補正量を決定する。
(1)画像補正処理部102は、副走査方向に対する膨張処理の補正量として、補正値「2」に、副走査方向に対する膨張処理の補正係数「1」を掛けることで、補正量を2とする。
(2)画像補正処理部102は、副走査方向に対する収縮処理の補正量として、補正値「2」に、副走査方向に対する膨張処理の補正係数「0」を掛けることで、補正量を0とする。
(3)画像補正処理部102は、主走査方向に対する膨張処理及び収縮処理の補正量として、補正値「2」に、「上記以外」に対応する補正係数「1」を掛けることで、補正量を2とする。
【0115】
なお、文字のサイズや、その他のオブジェクトの特徴に対応する補正係数が設定されている場合も同様に、画像補正処理部102は、ステップS302において、オブジェクトに対応する補正係数を取得し、ステップS304において、補正量を算出する。
【0116】
つづいて、制御部100(画像補正処理部102)は、ステップS304において決定した補正量に基づき、出力色チャンネル毎及び補正方向毎に、膨張処理及び収縮処理を実行する(ステップS306)。
【0117】
例えば、画像補正処理部102は、ステップS300において選択したオブジェクトに対して、副走査方向の膨張処理を行う場合、ステップS304において決定した補正量は2であるため、当該オブジェクトの副走査方向に対して2画素分の膨張処理を行う。同様に、画像補正処理部102は、ステップS300において選択したオブジェクトに対して、副走査方向の収縮処理を行う場合、ステップS304において決定した補正量は0であるため、当該オブジェクトの副走査方向に対して0画素分の収縮処理を行う。すなわち、画像補正処理部102は、副走査方向に対する収縮処理を省略する。また、画像補正処理部102は、ステップS300において選択したオブジェクトに対して、主走査方向の膨張処理又は収縮処理あるいはその両方を行う場合、ステップS304において決定した補正量は2であるため、当該オブジェクトの主走査方向に対して2画素分の膨張処理又は収縮処理あるいはその両方を行う。
【0118】
つづいて、制御部100は、オブジェクトを全て選択したか否かを判定する(ステップS308)。制御部100は、オブジェクトを全て選択していない場合は、ステップS300に戻る(ステップS308;No→ステップS300)。このようにして、制御部100(画像補正処理部102)は、印刷される全てのオブジェクトに対して、補正係数及び補正値から算出される補正量に基づく膨張処理や収縮処理を実行することができる。
【0119】
一方、制御部100は、オブジェクトを全て選択した場合は、画像を出力する(ステップS308;Yes→ステップS148)。
【0120】
[3.3 動作例]
図16は、本実施形態における補正処理の動作例を示す図である。
図14において、出力されるオブジェクトは、赤色のアルファベットの「A」とする。
図14において、鎖線はオブジェクトのエッジを示し、万線は出力画像においてM色のチャンネルの濃度が100%である部分を示し、網点は、出力画像においてY色のチャンネルの濃度が100%である部分を示す。
【0121】
赤色のアルファベットの「A」を出力する場合、「A」の形状に沿って、M色の出力位置(
図16(a))及びY色の出力位置(
図16(b))が決定される。このとき、補正値に基づき膨張処理を行うことで、M色の色成分の領域は拡大される(
図16(c))。一方、Y色の色成分の領域は、文字のサイズや補正値によっては、収縮処理によって消失する場合がある(
図16(d))。このような場合、M色のみが出力され、赤色の文字が出力されないこととなる。
【0122】
これに対して、本実施形態では、補正値を補正係数によって修正する。これにより、「A」の形状に沿って、M色の出力位置(
図16(e))及びY色の出力位置(
図16(f))が決定された後、M色の色成分の領域は、オブジェクトの特徴に応じて拡大される(
図16(g))。また、Y色の色成分の領域は、オブジェクトの特徴に応じて縮小される(
図16(h))。このとき、アルファベット「A」のフォントサイズが小さく、当該フォントサイズのオブジェクトに対応する補正係数が0である場合、補正量は0となる。この場合は、アルファベット「A」に対する収縮処理はされない。この結果、膨張処理がされたM色の色成分と、収縮処理がされなかったY色の色成分とが重畳されることとなり、赤色のアルファベット「A」が出力される。
【0123】
図17は、本実施形態における補正処理の別の動作例を示す図である。
図17(a)は、印刷データに基づく画像E300を示す。また、
図17(b)は、
図17(a)の領域E302を拡大した図である。
【0124】
図17(b)の領域E310は、フォントの種別がゴシック体である文字のオブジェクトを含む領域である。ゴシック体に対しては、主走査方向及び副走査方向に対して、膨張処理又は収縮処理あるいはその両方が実行される。
【0125】
一方、
図17(b)の領域E312は、フォントの種別が明朝体である文字のオブジェクトを含む領域である。明朝体では、水平線が細く描画されることから、収縮処理により水平線が細くなる方向(副走査方向)に対しては、収縮処理を施さないように、明朝体の文字のオブジェクトに対する収縮処理の副走査方向の補正係数を「0」とする。一方、明朝体のオブジェクトに対する膨張処理の副走査方向の補正係数を「1」とする。このようにすることで、明朝体の文字に対しては、副走査方向に対する膨張処理のみが実行される。なお、明朝体の垂直線については、膨張処理と収縮処理とが組み合わせて実行されるように補正係数が設定されてもよい。
【0126】
このように、本実施形態の画像形成装置は、オブジェクトの特徴に応じて、適切に画像の補正を行うことができる。例えば、画像内に、膨張処理や収縮処理の対象となるオブジェクトとして文字が含まれる場合において、文字のサイズが小さいときや文字の細線が細いとき、収縮処理によって、その文字の一部を構成する画素が消失する可能性がある。そのような場合を避けるため、画像形成装置は、補正値に加えて、オブジェクトに対応した補正係数を考慮して補正量を算出し、その補正量に応じて補正を行う。これにより、例えば、文字サイズが小さい文字に対しては、収縮の補正処理を行わず、膨張の補正処理だけを行うことができる。
【0127】
[4.変形例]
本発明は上述した各実施の形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。すなわち、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施の形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本開示に係る画像形成装置がサーバ装置に適当されることにより、画像を補正するサービスとして提供されてもよい。この場合、サーバ装置は、他の装置から印刷データ及び調整履歴情報(レジスト調整情報)を取得し、取得した印刷データに含まれるオブジェクトに対して、調整履歴情報に基づく膨張処理及び収縮処理を実行し、処理後の画像を当該他の装置に送信する。
【0128】
また、上述した実施形態は、説明の都合上、それぞれ別に説明している部分があるが、技術的に可能な範囲で組み合わせて実行してもよいことは勿論である。例えば、第2実施形態と第3実施形態とが組み合わされてもよい。この場合、主走査方向と副走査方向とで独立に決定された補正値と、オブジェクトに応じた補正係数とに応じた補正量により、膨張処理や収縮処理が実行される。
【0129】
また、実施形態において各装置で動作するプログラムは、上述した実施形態の機能を実現するように、CPU等を制御するプログラム(コンピュータを機能させるプログラム)である。そして、これら装置で取り扱われる情報は、その処理時に一時的に一時記憶装置(例えば、RAM)に蓄積され、その後、各種ROM(Read Only Memory)やHDD等の記憶装置に格納され、必要に応じてCPUによって読み出し、修正・書き込みが行なわれる。
【0130】
ここで、プログラムを格納する記録媒体としては、半導体媒体(例えば、ROMや、不揮発性のメモリカード等)、光記録媒体・光磁気記録媒体(例えば、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto Optical Disc)、MD(Mini Disc)、CD(Compact Disc)、BD (Blu-ray(登録商標) Disk) 等)、磁気記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク等)等の何れであってもよい。また、ロードしたプログラムを実行することにより、上述した実施形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムの指示に基づき、オペレーティングシステムあるいは他のアプリケーションプログラム等と共同して処理することにより、本発明の機能が実現される場合もある。
【0131】
また、市場に流通させる場合には、可搬型の記録媒体にプログラムを格納して流通させたり、インターネット等のネットワークを介して接続されたサーバコンピュータに転送したりすることができる。この場合、サーバコンピュータの記憶装置も本発明に含まれるのは勿論である。
【符号の説明】
【0132】
10、12 画像形成装置
100 制御部
102 画像補正処理部
104 レジスト調整部
110 レジストセンサ
115 原稿読取部
120 画像形成部
122 用紙搬送部
124 光走査部
126 像担持部
128 転写部
130 定着部
140 表示部
150 操作部
160 記憶部
162 調整履歴情報記憶領域
164 補正係数情報記憶領域
190 通信部