(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125717
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】包装袋用積層体フィルム、包装袋、輸送用梱包体、及び包装袋用積層体フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 65/40 20060101AFI20230831BHJP
B32B 7/027 20190101ALI20230831BHJP
【FI】
B65D65/40 D
B32B7/027
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029972
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000162113
【氏名又は名称】共同印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(72)【発明者】
【氏名】豊島 幸輔
(72)【発明者】
【氏名】森 菜月
(72)【発明者】
【氏名】渕田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】吉村 亘由
【テーマコード(参考)】
3E086
4F100
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AB01
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3E086AD01
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3E086DA08
4F100AK06C
4F100AK07A
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4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】本発明は、包装袋用積層体フィルムにおけるピンホールの発生等を抑制することができる、包装袋用積層体フィルム、包装袋、輸送用梱包体、及びそのような包装袋用積層体フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】本開示の包装袋用積層体フィルムは、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層、基材層、及びシーラント層がこの順に積層されている。前記保護層は、包装袋用積層体フィルムの最外面に配置されているのが好ましい。包装袋用積層体フィルムの厚さ方向の可視光透過率は、50%以上であるのが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層、基材層、及びシーラント層がこの順に積層されている、包装袋用積層体フィルム。
【請求項2】
前記保護層が最外面に配置されている、請求項1に記載の包装袋用積層体フィルム。
【請求項3】
厚さ方向の可視光透過率が50%以上である、請求項1又は2に記載の包装袋用積層体フィルム。
【請求項4】
前記保護層の厚さが10μm~40μmである、請求項1~3のいずれか一項に記載の包装袋用積層体フィルム。
【請求項5】
110℃~175℃における前記融解熱量が100mJ/mg以下である材料がポリプロピレンを含有している、請求項1~4のいずれか一項に記載の包装袋用積層体フィルム。
【請求項6】
少なくとも一部が、請求項1~5のいずれか一項に記載の包装袋用積層体フィルムで構成されている、包装袋。
【請求項7】
ピロー形状である、請求項6に記載の包装袋。
【請求項8】
長手方向の長さが300mm以上かつ幅方向の長さが150mm以上である、請求項6又は7に記載の包装袋。
【請求項9】
内部に内容物が充填されている、請求項6~8のいずれか一項に記載の包装袋。
【請求項10】
前記内容物が液体を含有している、請求項9に記載の包装袋。
【請求項11】
前記内容物の重量が1kg以上である、請求項9又は10に記載の包装袋。
【請求項12】
複数の請求項9~11のいずれか一項に記載の包装袋が、互いに積み重ねられた状態で段ボールによって梱包されている、輸送用梱包体。
【請求項13】
請求項1~5のいずれか一項に記載の包装袋用積層体フィルムの製造方法であって、
110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg超である保護層前駆体を熱処理して変性させて、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である保護層にすること、
を含む、包装袋用積層体フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、包装袋用積層体フィルム、包装袋、輸送用梱包体、及び包装袋用積層体フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1によれば、概して包装袋は、特に内容物が流動性であったり、低温保存用であったり或いは大容量の場合に、流通過程においてピンホールが発生しがちであるという技術的課題を有していた。同文献は、延伸ナイロンフィルムの内層に熱融着性層が設けられているフィルムにおいて、外層にポリオレフィン系フィルムからなる保護層を積層したことを特徴とする耐ピンホール性袋用積層フィルムを包装袋に採用することで、上記技術的課題を解決できるとしている。
【0003】
なお、特許文献2は、自動車部品といった工業用途のポリプロピレン樹脂の作製方法について記載しており、特にポリプロピレン樹脂の機械的強度の確認手法の一つとして、作製した樹脂の融解熱量を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8-323937号公報
【特許文献2】特開平8-81594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来から、包装袋は、製袋充填時や輸送時等に、ねじり、衝撃、摩擦といった様々な負荷がかかることで、包装袋を構成している包装袋用積層体フィルムにピンホール等が発生する場合があるという問題があった。
【0006】
包装袋用積層体フィルムにピンホール等が発生すると、内容物のロスに繋がる。また、輸送時に包装袋用積層体フィルムにピンホール等の破壊が発生すると、場合によっては輸送していた製品全てを廃棄せざるを得ない場合も生じ得る。
【0007】
これに対して、特許文献1は、このようなピンホールの発生等を抑制するために、外層にポリオレフィン系フィルムからなる保護層を積層することを開示している。
【0008】
しかしながら、包装袋用積層体フィルムにおけるピンホールの発生等を更に抑制することが求められている。
【0009】
すなわち、本発明は、包装袋用積層体フィルムにおけるピンホールの発生等を抑制することができる、包装袋用積層体フィルム、包装袋、輸送用梱包体、及びそのような包装袋用積層体フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
《態様1》
110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層、基材層、及びシーラント層がこの順に積層されている、包装袋用積層体フィルム。
《態様2》
前記保護層が最外面に配置されている、態様1に記載の包装袋用積層体フィルム。
《態様3》
厚さ方向の可視光透過率が50%以上である、態様1又は2に記載の包装袋用積層体フィルム。
《態様4》
前記保護層の厚さが10μm~40μmである、態様1~3のいずれか一つに記載の包装袋用積層体フィルム。
《態様5》
110℃~175℃における前記融解熱量が100mJ/mg以下である材料がポリプロピレンを含有している、態様1~4のいずれか一つに記載の包装袋用積層体フィルム。
《態様6》
少なくとも一部が、態様1~5のいずれか一つに記載の包装袋用積層体フィルムで構成されている、包装袋。
《態様7》
ピロー形状である、態様6に記載の包装袋。
《態様8》
長手方向の長さが300mm以上かつ幅方向の長さが150mm以上である、態様6又は7に記載の包装袋。
《態様9》
内部に内容物が充填されている、態様6~8のいずれか一つに記載の包装袋。
《態様10》
前記内容物が液体を含有している、態様9に記載の包装袋。
《態様11》
前記内容物の重量が1kg以上である、態様9又は10に記載の包装袋。
《態様12》
複数の態様9~11のいずれか一つに記載の包装袋が、互いに積み重ねられた状態で段ボールによって梱包されている、輸送用梱包体。
《態様13》
態様1~5のいずれか一つに記載の包装袋用積層体フィルムの製造方法であって、
110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg超である保護層前駆体を熱処理して変性させて、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である保護層にすること、
を含む、包装袋用積層体フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、包装袋用積層体フィルムにおけるピンホールの発生等を抑制することができる、包装袋用積層体フィルム、包装袋、輸送用梱包体、及びそのような包装袋用積層体フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第一の実施形態に従う包装袋用積層体フィルム1の模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の第一の実施形態に従う包装袋2の模式図である。
【
図4】
図4は、本発明の第一の実施形態に従う輸送用梱包体3の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、開示の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0014】
《包装袋用積層体フィルム》
本発明の包装袋用積層体フィルムは、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層、基材層、及びシーラント層がこの順に積層されている。
【0015】
本発明の包装袋用積層体フィルムは、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層を有していることにより、包装袋に適用した際に、包装袋の製造、輸送、及び保管の際等におけるピンホールの発生等を抑制することができる。
【0016】
包装袋用積層体フィルムにおけるピンホール等の発生は、例えば、これらに限定されないが、包装袋の製造時における、包装袋用積層体フィルムと製造機械との間の摩擦、輸送、保管、及び陳列時における包装袋同士及び包装袋を梱包している段ボール等との衝突による衝撃や摩擦等、様々な機械的作用によって生じ得る。
【0017】
110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層は、結晶性が有意に低いため、柔らかく、これらに限定されないが、様々な機械的作用等に起因するピンホール等が発生しにくい。
【0018】
そのため、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層を有している本発明の包装袋用積層体フィルムを用いた包装袋は、ピンホールの発生等による破壊が生じにくい。
【0019】
図1は、本発明の第一の実施形態に従う包装袋用積層体フィルム1の模式図である。また、
図2は、本発明の第一の実施形態に従う包装袋2の模式図である。なお、
図1及び2は、本発明を限定する趣旨ではない。
【0020】
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に従う包装袋用積層体フィルム1は、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる保護層11、基材層12、及びシーラント層13がこの順に積層されている。また、保護層11と基材層12とは、接着層14aによって互いに接着されている。同様に、基材層12とシーラント層13とは、接着層14bによって互いに接着されている。
【0021】
例えば、本発明の第1の実施形態に従う包装袋用積層体フィルム1を1枚又は複数枚、互いのシーラント層13同士を熱融着によって貼り合わせて袋形状とすることにより、
図2に示すような包装袋2を形成することができる。
【0022】
このような包装袋2では、保護層11が包装袋2の最も外側の面を形成し、シーラント層13が包装袋2の最も内側の面を形成する。保護層11が包装袋2の最も外側の面を形成するため、衝撃や摩擦等の様々な機械的作用等から包装袋2が保護されやすい。
【0023】
なお、本発明の包装袋用積層体フィルムは、ピンホールの発生等を抑制することができることから、輸送用の包装袋に適用することが特に好ましい。
【0024】
輸送用の包装袋は、内容物を外部から確認できるように高い視認性が求められる場合がある。そのため、本発明の包装袋用積層体フィルムは、厚さ方向の可視光透過率が50%以上であることが特に好ましい。
【0025】
厚さ方向の可視光透過率は、50%以上100%未満であってよい。厚さ方向の可視光透過率は、50%以上、60%以上、70%以上、又は80%以上であってよく、100%未満、95%以下、90%以下、又は85%以下であってよい。
【0026】
なお、厚さ方向の可視光透過率は、JIS K 7361に準拠して測定することができる。
【0027】
〈保護層〉
本発明の包装袋用積層体フィルムが有している保護層は、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料からなる。
【0028】
このような融解熱量を有する材料は、結晶性が低く、柔軟であるため、摩擦や衝撃によるピンホールの発生等が生じにくい。
【0029】
包装袋用積層体フィルムの他の層を保護する観点から、保護層は、包装袋用積層体フィルムの最外面に配置されていることが特に好ましい。
【0030】
また、保護層の厚さは、10μm~40μmであることが好ましい。保護層の厚さが10μm以上であると、保護層の強度が高くなり、摩擦や衝撃によるピンホールの発生等がより生じにくい。他方、保護層の厚さが40μm以下であると、包装袋用積層体フィルムの柔軟性を大きくすることができる。包装袋は、内容物を充填させることにより変形するため、包装袋を構成する包装袋用積層体フィルムの柔軟性が適度に大きいことは有利である。
【0031】
保護層の厚さは、10μm以上、15μm以上、20μm以上、又は25μm以上であってよく、40μm以下、35μm以下、30μm以下、又は25μm以下であってよい。
【0032】
保護層を構成する材料は、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料であれば特に限定されない。このような材料は、融解熱量が100mJ/mg以下であることを前提として、例えば有機樹脂、具体的には熱可塑性樹脂、更に具体的にはポリオレフィンであってよい。
【0033】
耐屈曲性の観点から、保護層を構成する材料は、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下であるポリプロピレンを含有していることが特に好ましい。保護層は、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下であるポリプロピレンからなる層であることが好ましい。保護層は、ポリプロピレン以外の成分を更に含有していてもよい。
【0034】
110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料は、例えば市販のポリプロピレンシートのうち、そのような融解熱量を有するものを採用することができる。なお、市販のポリプロピレンシートは、ポリプロピレン以外の成分を更に含有しているものであってもよい。また、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である材料、例えばそのような融解熱量を有するポリプロピレンシートは、そのような融解熱量を有しない材料、例えばそのような融解熱量を有しないポリプロピレンシートに対して、以下の《包装袋用積層体フィルムの製造方法》において記載する熱処理を行うことで得ることができる。
【0035】
なお、融解熱量は、JIS K 7122:1987(「プラスチックの転移熱測定方法」)に準拠して、標準状態で調整した試料の融解熱量(転移熱量)として、入力補償DSCにおいて測定することができる。
【0036】
〈基材層〉
基材層としては、例えばポリエチレン(PE)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリブチレンテレフタラート(PBT)等のポリエステル、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド、ポリスチレン(PS)、又は塩化ビニル(PVC)等を挙げることができる。
【0037】
基材層は、延伸された材料を用いて構成されてもよい。この延伸は、1軸延伸であっても2軸延伸であってもよい。
【0038】
基材層の厚さは特に限定されないが、得られる包装袋に十分な強度を与えるためには、例えば、7μm以上とすることができ、10μm以上とすることが好ましい。また包装袋を切り裂いて開封することを想定する場合には、カット性を与えるために、50μm以下とすることができ、30μm以下とすることが好ましい。
【0039】
基材層の厚さは、7μm以上、10μm以上、20μm以上、又は25μm以上であってよく、50μm以下、40μm以下、35μm以下、又は30μm以下であってよい。
【0040】
〈シーラント層〉
シーラント層としては、例えば熱可塑性樹脂、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、ポリメチルペンテン、及びポリブテン等の材料を挙げることができる。
【0041】
シーラント層の厚さは、例えば20μm以上又は30μm以上とすることができ、例えば、80μm以下又は70μm以下とすることができる。
【0042】
〈その他の層〉
本発明の包装袋用積層体フィルムは、上記の層以外にも、随意に他の層を有していることができる。他の層としては、例えば接着層及びバリア層等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0043】
接着層は、例えば包装袋用積層体フィルムを構成する各層同士、例えば保護層と基材層とを、及び/又は基材層とシーラント層とを互いに接着するために、それらの間に配置することができる、接着剤の層である。
【0044】
接着層に用いられる接着剤は、包装袋の製造に一般的に使用されるものを用いることができる。
【0045】
バリア層は、外界からのガス(特に酸素)、水分、及び/又は光の侵入を抑制し、内容物を保護する機能を有する層である。
【0046】
バリア層としては、例えば、アルミニウム、アルミナ、シリカ、ポリ塩化ビニリデン、及びポリビニルアルコール等の層を挙げることができる。なお、バリア層としてアルミニウムの層を採用する場合には、包装袋の外部から内部への視認性が損なわれる可能性が有るが、包装袋用積層体フィルムは、視認性が求められない包装袋への適用も可能である。
【0047】
バリア層は、独立の膜又は箔として本発明に用いられる包装袋用積層体フィルムの製造に供されてもよいし、適当な基材層の片面又は両面上に予め層状に形成された状態で供給される積層材料をそのまま用いてもよい。
【0048】
バリア層の厚さは、該バリア層が独立の膜又は箔として供される場合には、例えば、1μm以上、3μm以上、又は5μm以上であってよく、10μm以下、又は8μm以下であってよい。バリア層が基材層上に形成された層として供される場合には、例えば、1nm以上、3nm以上、又は5nm以上であってよく、500nm以下、300nm以下、又は200nm以下であってよい。
【0049】
《包装袋》
本発明の包装袋は、本発明の包装袋用積層体フィルムで構成されている。
【0050】
本発明の包装袋は、本発明の包装袋用積層体フィルムによって構成されているため、衝撃や摩擦等の様々な機械的作用等によるピンホール等の発生が抑制されている。
【0051】
図2は、本発明の第一の実施形態に従う包装袋2の模式図である。また、
図3は、
図2のA-A’断面図である。なお、
図2及び3は、本発明を限定する趣旨ではない。
【0052】
図2及び3に示すように、本発明の第一の実施形態に従う包装袋2は、本発明の第一の実施形態に従う包装袋用積層体フィルム1を2枚貼り合わせた構成を有している。包装袋2は、その縁部21において包装袋用積層体フィルム1のシーラント層13同士が熱融着されて袋形状を形成している。包装袋2の収容部22には、内容物が収容される。なお、
図3においては、簡略化の為、接着層14a及びbを省略して表現している。
【0053】
本発明の包装袋は、衝撃や摩擦等の様々な機械的作用等によるピンホール等の発生が抑制されているという観点から、輸送用の包装袋に特に適している。
【0054】
〈形状・寸法等〉
本発明の包装袋の形状は、内容物を収容できる形状であれば特に限定されないが、例えば三方袋、四方袋、又はピロー型袋等であってよい。
【0055】
本発明の包装袋が輸送用の包装袋である場合、例えば包装袋内に内容物が充填された状態で、段ボールやコンテナ内に互いに積層するように配置されて輸送されることが想定される。この場合、包装袋が互いに接触して擦れ合う等によるピンホール等の発生を抑制する観点から、包装袋が互いに重なり合う部分を包装袋の平面、即ち端部以外の部分とすることが好ましい。このような観点からすると、本発明の包装袋の形状は、ピロー型であることが特に好ましい。
【0056】
本発明の包装袋の寸法は、特に限定されないが、例えば三方袋、四方袋、又はピロー形状等である場合、長手方向の長さが300mm以上かつ幅方向の長さが150mm以上であってよい。
【0057】
本発明の包装袋の長手方向の長さは、300mm以上、400mm以上、500mm以上、又は600mm以上であってよい。また、長手方向の長さは、1000mm以下、900mm以下、又は800mm以下であってよい。
【0058】
〈内容物〉
本発明の包装袋は、その内部、すなわち収容部内に内容物が充填されていることができる。
【0059】
内容物は、特に限定されないが、例えば流動体、粉体、粒体又はそれらの組み合わせであってよい。流動体は、気体、液体、ゾル、ゲル、又はスラリーであってよい。
【0060】
内容物は、水、食品、又はその他の資材等であってよい。水は、例えば飲料水であってよい。食品は、例えばジュース若しくはお茶等の清涼飲料水;砂糖、塩、胡椒、しょうゆ、ソース、若しくはドレッシング等の調味料;レトルトカレー等のレトルト食品;シリアル、小麦粉、又はパン粉等であってよい。その他の資材としては、例えばせっけん液、シャンプー液、若しくは洗剤等の薬剤;家畜用の飼料;砂利、砂、若しくは石灰等の建築資材;又は農薬、若しくは堆肥等の農業用資材等であってよいが、特に限定されない。
【0061】
もっとも、ピンホール等の発生による内容物の流出及び周囲の汚染等の影響が特に大きい流動体、特には液体を内容物とする場合に、本発明の包装袋は特に有意である。
【0062】
本発明の包装袋に充填される内容物は、包装袋の大きさ及び包装袋を構成する包装袋用積層体フィルムの強度に応じて、1kg以上100kg以下であってよい。
【0063】
本発明の包装袋に充填される内容物は、1kg以上、2kg以上、5kg以上、又は10kg以上であってよく、100kg以下、50kg以下、40kg以下、又は20kg以下であってよい。
【0064】
1kg以上の内容物が充填されている包装袋は、重量が大きいため、包装袋同士及び包装袋を梱包している段ボール等との衝突による衝撃や摩擦等、様々な機械的作用が大きく、概して包装袋にピンホール等が生じやすい状態にある。そのため、本発明の包装袋は、このような重量の内容物が充填される包装袋に適用されるのが特に有意である。
【0065】
《輸送用梱包体》
本発明の輸送用梱包体は、内容物が充填されている本発明の包装袋が、互いに積み重ねられた状態で段ボールによって梱包されている。
【0066】
本発明の輸送用梱包体は、内容物入りの本発明の包装袋が梱包されている。そのため、輸送の際に、包装袋同士及び包装袋を梱包している段ボール等との衝突による衝撃や摩擦等、様々な機械的作用による包装袋の破壊が生じにくい。したがって、内容物を安全に輸送することができる。
【0067】
図4は、本発明の第一の実施形態に従う輸送用梱包体3の模式図である。なお、
図4は、本発明を限定する趣旨ではない。
【0068】
図4に示すように、本発明の第一の実施形態に従う輸送用梱包体3は、内容物入りの包装袋2’が2つ、互いに積層されて段ボール31によって梱包されている。なお、
図4は、直方体形状の輸送用梱包体3の断面図として示している。
【0069】
概して、
図4に示すような輸送用梱包体3では、輸送の際に、輸送車等の発進、停止、減速、及び加速等によって、内容物入りの包装袋2’同士が接触している部分や、内容物入りの包装袋2’と段ボール31とが接触している部分において、内容物入りの包装袋2’の表面が衝撃や摩擦等、様々な機械的作用を受けやすい。
【0070】
本発明の第一の実施形態に従う輸送用梱包体3は、これらのような様々な機械的作用による包装袋の破壊が生じにくい、内容物入りの包装袋2’を採用しているため、内容物を安全に輸送することができる。
【0071】
《包装袋用積層体フィルムの製造方法》
本発明の包装袋用積層体フィルムは、例えば上記の《包装袋用積層体フィルム》における保護層、基材層、シーラント層、及び随意のその他の層を互いに、少なくとも保護層、基材層、及びシーラント層がこの順になるように貼り合わせることによって形成することができる。
【0072】
各層の貼り合わせは、それらの層を、例えばドライラミネート法を用いて接着層によって貼り合わせる等、公知の方法によって行うことができる。
【0073】
保護層に使用する材料シート、すなわち保護層前駆体が110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg超である場合であっても、保護層前駆体を熱処理し、それによって110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg超である保護層前駆体を変性して、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg以下である保護層にすることができる。
【0074】
したがって、本発明の包装袋用積層体フィルムは、例えば、110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg超の材料シート、即ち保護層前駆体を熱処理し、それによって融解熱量が100mJ/mg超である保護層前駆体を変性して、融解熱量が100mJ/mg以下である保護層にしたうえで、保護層及び基材層、並びに随意にシーラント層をこの順に積層して、包装袋用積層体フィルムを形成することができる。
【0075】
また、保護層前駆体に対する熱処理は、先に保護層前駆体、基材層、並びに随意のシーラント層をこの順に積層して、包装袋用積層体フィルム前駆体を形成したうえで、包装袋用積層体フィルム前駆体を熱処理して、包装袋用積層体フィルムを形成してもよい。
【0076】
熱処理は、例えば保護層前駆体が110℃~175℃における融解熱量が100mJ/mg超である材料である場合には、50℃~100℃の温度で12時間~120時間、当該保護層前駆体を加熱することによって行うことができる。
【0077】
熱処理における加熱温度は、50℃以上、55℃以上、60℃以上、又は65℃以上であってよく、100℃以下、95℃以下、90℃以下、又は85℃以下であってよい。
【0078】
熱処理の時間は、12時間以上、15時間以上、18時間以上、又は24時間以上であってよく、120時間以下、100時間以下、80時間以下、又は60時間以下であってよい。
【実施例0079】
《実施例1~4及び比較例1》
〈比較例1〉
保護層としての110℃~175℃における融解熱量が103.5mJ/mgであるポリプロピレンシートA(厚み20μm)、基材層としてのナイロンシート(厚み15μm)、及びシーラント層としての低密度ポリエチレンフィルム(厚み70μm)を、それぞれこの順になるようにして、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法によって貼り合わせて、40℃96時間のエージングを行い比較例1の包装袋用積層体フィルムを作製した。
【0080】
比較例1の包装袋用積層体フィルムを用いて、長さ380mm、幅200mmのピロー型の包装袋を作製し、比較例1の包装袋とした。具体的には、包装袋用積層体フィルムに対して、シーラント層同士が相対するようにして熱融着によってシールして、筒を形成した。次いで筒状の成型体のシール部に直行する方向にシールを施した。
【0081】
比較例1の包装袋の内部、即ち収容部に、水を2kg充填して封止して、比較例1の、内容物が充填された包装袋とした。
【0082】
なお、ポリプロピレンシートAの静摩擦係数は0.13であった。
【0083】
包装袋の構成を表1に示す。
【0084】
〈実施例1〉
比較例1で使用した保護層としての110℃~175℃における融解熱量が103.5mJ/mgであるポリプロピレンシートA(厚み20μm)を24時間、80℃で加熱処理して、ポリプロピレンシートの融解熱量を低下させたのち、実施例1と同様に基材層としてのナイロンシート(厚み15μm)、及びシーラント層としての低密度ポリエチレンフィルム(厚み70μm)を、それぞれこの順になるようにして、ドライラミネート用接着剤を用いてドライラミネート法によって貼り合わせて、40℃96時間のエージングを行い包装袋用積層体フィルムとした。なお、加熱処理後のポリプロピレンシートA´を、JIS K 7122:1987(「プラスチックの転移熱測定方法」)に準拠した方法によって110℃~175℃における融解熱量を求めたところ、92.8mJ/mgであった。上記の加熱処理を行ったことを除いて比較例1と同様にして、実施例1の、内容物が充填された包装袋を作製した。
【0085】
なお、ポリプロピレンシートA´の静摩擦係数は0.12であった。
【0086】
包装袋の構成を表1に示す。
【0087】
〈実施例2〉
保護層として110℃~175℃における融解熱量が84.0mJ/mgであるポリプロピレンシートB(厚み20μm)を用いたことを除いて比較例1と同様にして、実施例2の、内容物が充填された包装袋を作製した。
【0088】
なお、ポリプロピレンシートBの静摩擦係数は0.17であった。
【0089】
包装袋の構成を表1に示す。
【0090】
〈実施例3〉
保護層として110℃~175℃における融解熱量が84.7mJ/mgであるポリプロピレンシートC(厚み25μm)を用いたことを除いて比較例1と同様にして、実施例2の、内容物が充填された包装袋を作製した。
【0091】
なお、ポリプロピレンシートCの静摩擦係数は0.21であった。
【0092】
包装袋の構成を表1に示す。
【0093】
〈実施例4〉
保護層として110℃~175℃における融解熱量が99.2mJ/mgであるポリプロピレンシートD(厚み20μm)を用いたことを除いて比較例1と同様にして、実施例2の、内容物が充填された包装袋を作製した。
【0094】
なお、ポリプロピレンシートDの静摩擦係数は0.26であった。
【0095】
包装袋の構成を表1に示す。
【0096】
〈振動試験〉
奥行き293mm、幅176mm、高さ118mmの段ボール箱内に、内容物が充填された各例の包装袋2つを互いに積み重ねるようにして配置し、梱包して、輸送用梱包体とした。より具体的には、
図4に示すように配置し、梱包した。輸送用梱包体は、それぞれ3つ用意した。
【0097】
輸送用梱包体を5℃以下で24時間以上保管し、アイデックス社製の輸送包装機BF-100UTを用いて輸送試験(試験条件:重力加速度3.5G、5分間掃引(10Hz~40Hz)×4回、合計20分(1000km相当))を行った。
【0098】
振動試験の結果、3つの輸送用梱包体のいずれでも液漏れが生じなかったものを「可」とし、3つの輸送用梱包体のいずれかで液漏れが生じたものを「不可」とした。
【0099】
結果を表1に示す。
【0100】
〈結果〉
表1は、各例の包装袋の構成及び振動試験の結果を示す表である。
【0101】
【0102】
表1に示すように、保護層の110℃~175℃における融解熱量が103.5mJ/mgであった比較例1の包装袋は、振動試験において液漏れが生じた。これに対して、保護層の110℃~175℃における融解熱量がそれぞれ順に92.8mJ/mg、84.0mJ/mg、84.7mJ/mg、及び99.2mJ/mgであった実施例1~4の包装袋では、いずれも振動試験において液漏れが生じなかった。この結果は、実施例1~4の包装袋が、ピンホールの発生に対する高い耐性を有することを示している。
【0103】
なお、表1からは、実施例1~4の保護層の静止摩擦係数が、比較例1の保護層の静止摩擦係数と同等かそれよりも大きいにも関わらず、すなわち実施例1~4の包装袋では、比較例1の包装袋と比べて摩擦によって生じる力が同等かそれよりも大きいにもかかわらず、実施例1~4の包装袋が、ピンホールの発生に対する高い耐性を有することが理解される。