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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125721
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】床材の製造方法、床材
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/10 20060101AFI20230831BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
E04F15/10 104A
E04F15/10 104E
E04F15/10 104B
B32B27/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022029979
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】518352477
【氏名又は名称】株式会社RESTA
(74)【代理人】
【識別番号】100085291
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 実
(74)【代理人】
【識別番号】100117798
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 慎一
(74)【代理人】
【識別番号】100166899
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥巣 慶太
(74)【代理人】
【識別番号】100221006
【弁理士】
【氏名又は名称】金澤 一磨
(72)【発明者】
【氏名】平井 泰志
【テーマコード(参考)】
2E220
4F100
【Fターム(参考)】
2E220AA12
2E220AA29
2E220AA33
2E220AC01
2E220BA01
2E220BB02
2E220BB12
2E220CA07
2E220DB09
2E220EA03
2E220FA01
2E220FA02
2E220FA03
2E220GA12X
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GB25X
2E220GB32X
2E220GB34X
4F100AA08A
4F100AK01C
4F100AK01D
4F100AK15A
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA07
4F100BA10A
4F100BA10B
4F100BA10C
4F100BA10D
4F100CA01A
4F100CA02A
4F100CA04A
4F100CA05A
4F100CA08A
4F100CA13A
4F100CA18A
4F100CA19A
4F100CA22A
4F100CC02C
4F100CC02D
4F100EJ19
4F100EJ30
4F100EJ30B
4F100EJ39A
4F100EJ50A
4F100EJ50C
4F100EJ50D
4F100EJ54C
4F100EJ54D
4F100EJ91B
4F100HB00E
4F100JB14C
4F100JB14D
4F100JC00A
4F100JL14A
4F100YY00A
(57)【要約】
【課題】 床材に伸縮が起こりにくく、反りが生じにくい床材の製造方法及び、床材を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明の一の態様にかかる床材の製造方法は、少なくとも炭酸カルシウム及びポリ塩化ビニルを混合してスラリーを生成する工程と、前記スラリーを押し出して基板を成形する工程と、前記基板に転写フィルムを接着する工程と、前記転写フィルムを前記基板から剥離する工程と、前記基板を所定時間冷却する工程と、前記転写フィルムを前記基板から剥離する工程とを備える。
床材は、裏面層、ベース層、意匠層、表面層がこの順に積層され、前記ベース層は、炭酸カルシウム、ポリ塩化ビニルを含み、前記意匠層は、前記ベース層の表面に塗工されたインクにより形成された層である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭酸カルシウム及びポリ塩化ビニルを混合してスラリーを生成する工程と、
前記スラリーを押し出して基板を成形する工程と、
前記基板に転写フィルムを接着する工程と、
前記基板を所定時間冷却する工程と、
前記転写フィルムを前記基板から剥離する工程と、
を備えることを特徴とする、
床材の製造方法。
【請求項2】
前記基板に転写フィルムを接着する工程が、
前記基板を押し出しながら、転写フィルムを接着する工程である、
請求項1記載の床材の製造方法。
【請求項3】
前記基板に転写フィルムを接着する工程が、
前記基板がローラーにより押し出されながら、該ローラーに巻き付けられた転写フィルムを、該基板に接着する工程である、
請求項2記載の床材の製造方法。
【請求項4】
前記基板にエンボスを作成する工程を更に備える、
請求項1乃至3のいずれか1項記載の床材の製造方法。
【請求項5】
前記基板にエンボスを作成する工程が、
前記基板がローラーにより押し出されながら、該ローラーに施された凹凸により、該基板にエンボスを形成する工程である、
請求項4記載の床材の製造方法。
【請求項6】
前記スラリーを生成する工程が、
炭酸カルシウムやポリ塩化ビニルなどの原材料を混合した後、
所定時間保管して、押し出し用のスラリーとする、
請求項1乃至5のいずれか1項記載の床材の製造方法。
【請求項7】
前記転写フィルムによりインクが転写された前記基板の表面にUV塗装を施す工程と、
表面にUV塗装が施された前記基板を所定時間冷却する工程と、
を更に備える、
請求項1乃至6のいずれか1項記載の床材の製造方法。
【請求項8】
前記基板を所定時間冷却する工程よりも前において、
前記基板を切断して所定サイズの基板に分割する工程を更に備える、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の床材の製造方法。
【請求項9】
前記基板の裏面にUV塗装を施す工程と、
裏面にUV塗装が施された前記基板を所定時間冷却する工程と、
を更に備える、
請求項1乃至8のいずれか1項記載の床材の製造方法。
【請求項10】
前記基板を床材サイズに分割する工程と、
分割された前記基板に面取り加工を施す工程と、
を更に備える、
請求項1乃至9のいずれか1項記載の床材の製造方法。
【請求項11】
裏面層、ベース層、意匠層、表面層がこの順に積層され、
前記ベース層は、炭酸カルシウム、ポリ塩化ビニルを含み、
前記意匠層は、前記ベース層の表面に塗工されたインクにより形成された層であることを特徴とする、
床材。
【請求項12】
前記意匠層は、前記ベース層への転写により形成された層である、
請求項11記載の床材。
【請求項13】
前記ポリ塩化ビニルは、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、40~60質量部である、
請求項11又は12記載の床材。
【請求項14】
前記ベース層は、安定剤、可塑剤、着色剤、滑剤、離型剤、架橋剤、帯電防止剤、表面活性剤、難燃剤、発泡剤、抗菌防黴剤の1種又は2種以上の添加剤を含む、
請求項11乃至13のいずれか1項記載の床材。
【請求項15】
前記添加剤は、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、10~20質量部である、
請求項11乃至14のいずれか1項記載の床材。
【請求項16】
前記裏面層及び前記表面層は、UV塗料により形成されている、
請求項11乃至15のいずれか1項記載の床材。
【請求項17】
前記床材の表面角部の形状は、面取り形状である、
請求項11乃至16のいずれか1項記載の床材。
【請求項18】
前記床材の厚みが、1.5mm以下である、
請求項11乃至17のいずれか1項記載の床材。
【請求項19】
前記ベース層が着色されている、
請求項11乃至18のいずれか1項記載の床材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床材の製造方法及び、床材に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、建築業界において、住宅着工件数は減少しているが、賃貸物件や既設戸建て住宅のリフォーム需要が増加している。商業施設をはじめとする各種施設から一般住宅の床に使用する床材としては、様々な種類の床材が広く用いられている。主な床材としては、樹脂製床材、木質フローリング、石材、セラミック床材といったものが存在する。樹脂製床材には、樹脂製床タイル、樹脂製床シート、タイルカーペットなどがある。樹脂系床材の中でも特にポリ塩化ビニル(PVC)を使った床材が多く用いられている。また、一般的にポリ塩化ビニル製の床材には、ポリ塩化ビニルシートの表面に絵柄意匠を印刷することで印刷層を有するポリ塩化ビニルの層が形成される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4-120361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ポリ塩化ビニル製の床材では、気温の変化で床材が伸縮を起こしやすく、収縮により床材と床材の間に隙間が発生する場合や、膨張により床材同士が突き上がる場合があるという問題がある。
【0005】
また、ポリ塩化ビニル製の床材では、ポリ塩化ビニルシートに絵柄意匠を印刷することで印刷層を有するポリ塩化ビニル層が形成されるが、ポリ塩化ビニルシートに絵柄意匠が印刷されることにより、基材と熱膨張率やその他の特性が異なり、床材自体に反りが生じてしまうという問題がある。また、印刷時のポリ塩化ビニルシートに加わるテンションによりポリ塩化ビニルシートが伸び縮みすることで、ポリ塩化ビニルシートの中央と両サイドの伸び縮みの違いにより絵柄が一定でなくなるという問題もある。
【0006】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みなされたもので、床材に伸縮が起こりにくく、反りが生じにくい床材の製造方法及び床材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様にかかる床材の製造方法は、少なくとも炭酸カルシウム及びポリ塩化ビニルを混合してスラリーを生成する工程と、前記スラリーを押し出して基板を成形する工程と、前記基板に転写フィルムを接着する工程と、前記転写フィルムを前記基板から剥離する工程と、前記基板を所定時間冷却する工程と、前記転写フィルムを前記基板から剥離する工程と、を備えることを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、炭酸カルシウムとポリ塩化ビニルを混合しスラリーを生成することにより、熱膨張率の小さい床材を製造することができる。それにより、温度変化による床材の伸縮が起こり難くなるので、床材に反りや膨れが生じず隙間があいてしまうことや、床材同士の突き上げが起こりにくい床材となる。
【0009】
また、基板に転写フィルムを接着し剥離することにより、インクのみが基板に積層されるため、従来のようにポリ塩化ビニル樹脂やオレフィン樹脂等のシートにプリントされた層を床材の中に挟む必要がなく、基板とシートにプリントされた層の特性の違いから生じる床材の反りの発生が生じない床材を製造することができる。また、基板を所定時間冷却させることで、床材の内部応力を緩和することができる。
【0010】
また、この床材の製造方法は、前記基板に転写フィルムを接着する工程が、前記基板を押し出しながら、転写フィルムを接着する工程であることを特徴とする。この構成によれば、基板を押し出しながら、転写フィルムを接着させるので、均一で安定的に転写フィルムを基板に接着することができる。
【0011】
また、この床材の製造方法は、前記基板に転写フィルムを接着する工程が、前記基板がローラーにより押し出されながら、該ローラーに巻き付けられた転写フィルムを、該基板に接着する工程であることを特徴とする。この構成によれば、ローラーを用いることで一連の製造工程に転写フィルムの接着を含めることができる。
【0012】
また、この床材の製造方法は、前記基板にエンボスを作成する工程を更に備えることを特徴とする。この構成によれば、基板にエンボスを作成する工程を更に備えることで、緩衝性を高め、滑りにくい床材を製造することができる。
【0013】
また、この床材の製造方法は、前記基板にエンボスを作成する工程が、前記基板がローラーにより押し出されながら、該ローラーに施された凹凸により、該基板にエンボスを形成する工程であることを特徴とする。この構成によれば、均一に基板にエンボス加工を施すことができ、またエンボス加工を一連の製造工程に含めることができる。
【0014】
また、この床材の製造方法は、前記スラリーを生成する工程が、炭酸カルシウムやポリ塩化ビニルなどの原材料を混合した後、所定時間保管して、押し出し用のスラリーとすることを特徴とする。この構成によれば、所定時間保管することで、原材料を均一に完全に混合でき、材料の不均一による床材の局地的な変形を抑えることができる。
【0015】
また、この床材の製造方法は、前記転写フィルムによりインクが転写された前記基板の表面にUV塗装を施す工程と、表面にUV塗装が施された前記基板を所定時間冷却する工程とを更に備えることを特徴とする。この構成によれば、インクが転写された基板の表面にUV塗装を施すことで、耐摩耗性の高い床材を製造することができる。また、表面にUV塗装が施された基板を所定時間冷却することで、UV塗装を施す際に発生した熱を冷却し、内部応力を再度緩和させ、床材の安定性を高めることができる。
【0016】
また、この床材の製造方法は、前記基板を所定時間冷却する工程よりも前において、前記基板を切断して所定サイズの基板に分割する工程を更に備えることを特徴とする。所定サイズの基板に分割することで、基板の冷却時に効率よく冷却することができる。
【0017】
また、この床材の製造方法は、前記基板の裏面にUV塗装を施す工程と、裏面にUV塗装が施された前記基板を所定時間冷却する工程とを更に備えることを特徴とする。この構成によれば、インクが転写された基板の裏面にUV塗装を施すことで、耐摩耗性の高い床材を製造することができる。また、裏面にUV塗装が施された基板を所定時間冷却することで、UV塗装を施す際に発生した熱を冷却し、内部応力を再度緩和させ、床材の安定性を高めることができる。
【0018】
また、この床材の製造方法は、前記基板を床材サイズに分割する工程と、分割された前記基板に面取り加工を施す工程とを更に備えることを特徴とする。この構成によれば、分割された基板に面取り加工を施すことで、床下地の不陸による段差を緩和させることができる。
【0019】
また、この床材は、裏面層、ベース層、意匠層、表面層がこの順に積層され、前記ベース層は、炭酸カルシウム、ポリ塩化ビニルを含み、前記意匠層は、前記ベース層の表面に塗工されたインクにより形成された層であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、炭酸カルシウムとポリ塩化ビニルを混合することにより、床材の熱膨張率を小さくすることができる。それにより、温度変化による床材の伸縮が起こり難くなるので、床材に反りや膨れが生じず隙間があいてしまうことや、床材同士の突き上げが起こりにくくなる。また、耐荷重性に優れた床材となる。
【0021】
また、意匠層が、ベース層の表面に塗工されたインクにより形成された層であるので、ポリ塩化ビニル樹脂やオレフィン樹脂等のシートにプリントされた層を床材の中に挟む必要がなく、ベース層とシートにプリントされた層の特性の違いから生じる床材の反りの発生を防ぐことができる。
【0022】
また、この床材は、意匠層は、前記ベース層への転写により形成された層であることを特徴とする。この構成によれば、意匠層が転写により形成された層なので、鮮明な意匠を容易かつ確実に付与することができる。
【0023】
また、この床材は、前記ポリ塩化ビニルが、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、40~60質量部であることを特徴とする。この構成によれば、ポリ塩化ビニルが炭酸カルシウム100質量部に対して40~60質量部の配合量とすることで、際だった熱膨張率を抑える効果を得ることができる。
【0024】
また、この床材は、前記ベース層は、安定剤、可塑剤、着色剤、滑剤、離型剤、架橋剤、帯電防止剤、表面活性剤、難燃剤、発泡剤、抗菌防黴剤、衝撃補強剤の1種又は2種以上の添加剤を含む。この構成によれば、添加剤を加えることで、さらに熱膨張率を抑制することができる。
【0025】
また、この床材は、前記添加剤が、前記炭酸カルシウム100質量部に対して、10~20質量部である。前記範囲とすることで、床材の物性を向上させるとともに、熱膨張率を抑制することができる。
【0026】
また、この床材は、前記裏面層及び前記表面層が、UV塗料により形成されることを特徴とする。この構成によれば、裏面層及び表面層がUV塗料により形成されているので、床材の耐摩耗性を高めることができる。また、割れを効果的に防止することができる。また、裏面層と表面層が、同じUV塗料により形成されるので、裏面層と表面層とで異なる素材を用いた場合に、各々の素材の特性の違いから生じる床材の反りの発生を防ぐことができる。
【0027】
また、この床材は、前記床材の表面角部の形状が、面取り形状であることを特徴とする。この構成によれば、床材の表面角部の形状は面取り形状であるので、施工者は、床材の張替え作業の際に、床材間に指先や、カッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛けて床材を剥がすことができる。このため、張替え作業が容易となる。また、床下地の不陸による段差を小さくすることができる。
【0028】
また、この床材は、前記床材の厚みが、1.5mm以下であることを特徴とする。これにより、既存のフローリングの上に上張りしてもドア下などに干渉しない。床材の厚みが1.5mm以下と薄いので、カッター等での切断が容易となる。また、床材が重くなるので、複数枚を梱包して運搬する際の運搬作業が困難となる。
【0029】
また、この床材は、前記ベース層が着色されていることが好ましい。ベース層が意匠層に近い色に顔料を配合し着色することで、色の違いによる違和感を抑制でき、製品の美観が良好になる。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、床材に伸縮が起こりにくく、反りが生じにくい床材の製造方法及び、床材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態にかかる床材の縦断面図である。
図2】ローラーを5基備えるエクストルーダーの概略図である。
図3】実施例1と比較例1の床材の温度と熱膨張率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態にかかる床材について詳細に説明する。なお、この実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は、適宜組み合わせることも可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0033】
(床材の構成)
図1に示すように、本実施形態にかかる床材1は、下から順に、裏面層5、ベース層4、意匠層3、表面層2が積層された層の構成からなる。
【0034】
本発明の床材1の厚みは、1.5mm以下であることが好ましい。床材1の厚みが1.5mm以下と薄いので、既存のフローリングの上に上張りしてもドア下などに干渉せず、またカッター等での切断が容易となる。また、床材1が重くなるので、複数枚を梱包して運搬する際の運搬作業が困難となる。
【0035】
床材1は、その周辺部上端に面取り部6を有している。
床材1における周辺部上端に面取り部6を設けることにより、施工者が床材1を引き剥がす際に面取り部6、及び、床材1の側面部に指先やカッター等の引っかけ治具を引っかけ易くなり、ピールアップ性を向上することができる。
【0036】
また、本発明の床材1は、その周辺部上端に面取り部6が形成されている。このため、床材間の境界に直角の角部が存在せず、床材間の境界を目立たなくすることができる。このことにより、床材相互間の段差を隠蔽することができる。
【0037】
即ち、面取り部6の形成により床材相互間に形成される目地が上部において広く形成されるので、床材相互間に段差が生じた場合でも、その段差は目立たない。
【0038】
さらに、床材相互間に段差が存在する場合、床材1の周辺部上端が直角であると、歩行時に素足や靴などの爪先がその段差部分に引っ掛かって歩行感を損ねたり、床材1の表面層2を損傷する場合があるが、面取り部6の形成により歩行時の素足や靴などの爪先の引っかかりを抑制することができる。
【0039】
本実施形態の面取り部6は平面である。面取り部6は、幅がWで深さがDとなるように設けられている。上記幅Wが0.2~0.8mmであり、深さDが0.2~0.8mmであることが好ましい。また、幅Wが0.4~0.6mmであり、深さDが0.4~0.6mmであることがより好ましい。
【0040】
幅W及び深さDが0.2mm未満であると、施工者が指先や、カッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛け難くなり、ピールアップ性向上効果を損ねるおそれがあり、また歩行感を損ね、床材表面層を損傷するおそれがある。また、幅W及び深さDが0.8mmより大きいと、目地部の清掃が困難になりゴミや埃が溜まりやすくなるおそれがある。
【0041】
面取り部6の各々の角部分の角度は、30~60度であることが好ましい。また、40~50度であることがより好ましい。角度が30度未満であると、床材1を敷設した場合に、面取り部6によって形成される目地の幅が広くなりすぎて、床面に凹凸が生じ、歩行感を損なうおそれがある。また、歩行時に爪先が引っ掛かり床材1の表層部を損傷するおそれもある。
【0042】
また、角度が30度未満であると、目地が浅くなり、施工者が指先やカッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛け治具を引っ掛け難くなるため、ピールアップ性を損ねるおそれがある。また、角度が60度より大きいと、目地の幅が狭くなるので清掃性を損ね、施工者が指先やカッター、目打ち等の引っ掛け治具を引っ掛け難くなるのでピールアップ性を損ねるおそれがある。また、目地が深くなり、床材1を敷設した際に、床材1の境界部分が目立ち、美観を損なうおそれがある。
【0043】
表面層2は、床材1の最上面に積層されており、床材1の表面を保護する層である。
表面層2を備えることにより、住宅やオフィスでの使用に耐えうる耐傷性、耐摩耗性の高い床材1となる。
【0044】
表面層2は、UV塗料により形成される。
UV塗料としては、オリゴマー、モノマー、光重合開始剤、およびその他の添加剤からなる主剤と、イソシアネートと、からなる塗料が挙げられる。
【0045】
表面層2の厚みは、0.05~0.20mmであることが好ましく、0.10~0.15mmであることがより好ましい。表面層2の厚みが0.05mm未満であると、床材1の表面の保護が十分でないおそれがある。また、表面層2の厚みが0.20mmより大きいと、意匠層3が視認し難くなるおそれがある。
【0046】
意匠層3は、例えば絵柄、図柄、模様、文字等の所望の意匠を表現し、床材1に意匠性を与える層である。意匠層3を備えることにより、床材1に所望の意匠性を簡易、かつ、安価に付与することができる。
【0047】
意匠層3は、ベース層4への転写により形成された層であり、ベース層4の表面に塗工されたインクにより形成された層である。これにより、塩化ビニル樹脂やオレフィン樹脂等のシートにプリントされた層を床材の中に挟む必要がなく、インクのみがベース層4に積層されるため、ベース層4とシートにプリントされた層の特性の違いから生じる床材1の反りの発生を防ぐことができる。また鮮明な意匠を容易かつ確実に付与することができる。
【0048】
意匠層3は、例えばベースの表面にインクで絵柄を印刷した転写フィルムを用いて熱転写して形成する。意匠層3の固形分量は、0.1~30g/m2とするのが好ましい。意匠層3の固形分量を0.1~30g/m2とすることにより、熱転写での形成が容易となり、意匠層3の見栄えが良くなる。
【0049】
意匠層3の厚みは、0.01~0.10mmであることが好ましく、0.02~0.05mmであることがより好ましい。
【0050】
なお、本実施形態において意匠層3は転写により形成された層であるが、グラビア印刷、フレキソ印刷、スクリーン印刷、インクジェット印刷などで直接形成する印刷層であってもよく特に本実施形態に限定されるものでない。
【0051】
ベース層4は、基材となる層である。
本実施形態において、ベース層4は炭酸カルシウムとポリ塩化ビニルを含む層であり、床材1の伸縮率を低くする効果を付与する。
【0052】
ベース層4が包含するポリ塩化ビニルとしては、例えば、ポリ塩化ビニル単独重合体、塩化ビニルモノマーと該塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとの共重合体、塩化ビニル以外の他のポリマー(共重合体も含む)に塩化ビニルをグラフト共重合させたグラフト共重合体等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0053】
上記の塩化ビニルモノマーと共重合可能な不飽和結合を有するモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレン等のα-オレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類;ブチルビニルエーテル、セチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル類;スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル類;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド等のN-置換マレイミド類等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0054】
上記のグラフト共重合体に用いられる塩化ビニル以外の他のポリマー(共重合体を含む)としては、塩化ビニルをグラフト共重合できるものであれば特に限定されることなく使用できるが、例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル-一酸化炭素共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-ブチルアクリレート-一酸化炭素共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、エチレン-プロピレン共重合体、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体、ポリウレタン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0055】
上記ポリ塩化ビニルの平均重合度は、特に限定されるものではないが、平均重合度が小さいと得られる成形体の物性低下が起こりやすく、平均重合度が大きいと溶融粘度が高くなって成形が困難になりやすいので、平均重合度が600~3000の範囲内であることが好ましく、700~1500であることがより好ましい。
【0056】
ベース層4が包含する炭酸カルシウムとしては、本実施形態において重質炭酸カルシウムを使用しているが、軽質炭酸カルシウムであってもよく、また粉末の粒子形状は、球状等の定形、或いは不定形、ウィスカー状等の何れであってもよい。また平均粒子径については、0.5~5μmのものが好ましい。また更に、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸などの脂肪酸、並びにこれらの脂肪酸とアルカリ金属(カルシウム等)との塩などによって表面処理されたものを使用することもできる。
【0057】
ベース層4に包含されるポリ塩化ビニルは、炭酸カルシウム100質量部に対して、40~60質量部である。ポリ塩化ビニルが炭酸カルシウム100質量部に対して40~60質量部の配合量とすることで、際だった熱膨張率を抑える効果を得ることができる。
【0058】
また、ベース層4には、安定剤、可塑剤、着色剤、滑剤、離型剤、架橋剤、帯電防止剤、表面活性剤、難燃剤、発泡剤、抗菌防黴剤の1種又は2種以上の添加剤が配合される。添加剤は、炭酸カルシウム100質量部に対して、10~20質量部であることが好ましく、15~18質量部であることがさらに好ましい。
【0059】
上記安定剤としては、例えば、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛等の金属石鹸系安定剤、ジオクチルスズラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズβ-メルカプトプロピオン酸アルキルエステル等の有機錫系安定剤、モノトリデシルジフェニルホスファイト、テトラフェニルジプロピレンジホスファイト等のホスファイト系安定剤、過塩素酸処理ハイドロタルサイト等のハイドロタルサイト系安定剤、ジベンゾイルメタン等のβ ジケトン、ペンタエリスリトール等のポリオールなどが挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0060】
上記可塑剤としては、例えば、ジ2-エチルヘキシルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジイソデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート等のフタル酸エステル、ジイソノニルアジペート、ジ2-エチルヘキシルアジペート等のアジピン酸エステル、トリメリット酸エステル、リン酸エステル、ポリエステル系可塑剤、塩素化パラフィン、エポキシ化大豆油などが挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0061】
上記着色剤としては、例えば、天然系、合成系各種染料や無機系、有機系各種顔料を任意に使用することができる。着色剤を添加することで、ベース層4が意匠層3に近い色に着色することで、色の違いによる違和感を抑制でき、製品の美観が良好になる。
【0062】
上記滑剤としては、例えば、ワックス類、油剤、カプリン類、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マーガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸等の高級脂肪酸類またはこれらの金属塩類、すなわちリチウム塩、カルシウム塩、ナトリウム塩、マグネシウム塩、カリウム塩等、パルミチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール類、カプロン酸アミド、カプリル酸アミド、カプリン酸アミド、ラウリル酸アミド、ミリスチン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド等の脂肪族アミド類、脂肪酸とアルコールとのエステル類、フルオロアルキルカルボン酸またはその金属塩、フルオロアルキルスルホン酸金属塩等のフッ素化合物類等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0063】
上記ワックス類の例としては、モンタンワックス、ピートワックス、オゾケライト・セレシンワックス、石油ワックス等の鉱物性ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックス、Fischer-Tropschワックス、化学修飾炭化水素ワックス、置換アミドワックス等の合成ワックス、植物ろう、動物ろう等が挙げられる。
【0064】
上記油剤の例としては、芳香族系油、ナフテン系油、パラフィン系油の鉱物油、植物油、シリコンオイル等の天然および合成油等が挙げられる。シリコンオイルは粘度10~5000cSt、好ましくは500cStのジメチルポリシロキサンを使用することができる。
【0065】
上記離型剤としては、例えば、高級脂肪酸の低級(C1~4)アルコールエステル(ステアリン酸ブチル等)、脂肪酸(C4~30)の多価アルコールエステル(硬化ヒマシ油等)、脂肪酸のグリコールエステル、流動パラフィン等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0066】
上記架橋剤としては、例えば、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル等の(H1)芳香族アルコール系架橋剤、エチレングリコール、1,3-ブタンジオール(1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の(H2)脂肪族アルコール系架橋剤;フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、1,2-ビス(2-アミノフェニルチオ)エタン、トリメチレングリコール-p-アミノベンゾエート等の(H3)芳香族アミン系架橋剤;、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の(H4)脂肪族アミン系架橋剤等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0067】
上記帯電防止剤としては、例えば、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0068】
上記表面活性剤としては、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤等が挙げられる。
【0069】
上記難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、含窒素難燃剤、アンチモン系難燃剤を使用することができる。
【0070】
上記ハロゲン系難燃剤としては、塩素系および臭素系の種々の難燃剤が使用可能であるが、難燃化効果、成形時の耐熱性、樹脂への分散性、樹脂の物性への影響等の面から、ペンタブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルエーテル、デカブロモジフェニルエーテル、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモベンゼン、ペンタブロモエチルベンゼン、ヘキサブロモビフェニル、デカブロモジフェニル、ヘキサブロモジフェニルオキサイド、オクタブロモジフェニルオキサイド、デカブロモジフェニルオキサイド、ペンタブロモシクロヘキサン、テトラブロモビスフェノールA、およびその誘導体[例えば、テトラブロモビスフェノールA-ビス(ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(ブロモエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールA-ビス(アリルエーテル)等]、テトラブロモビスフェノールS、およびその誘導体[例えば、テトラブロモビスフェノールS-ビス(ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロモビスフェノールS-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)等]、テトラブロモ無水フタル酸、およびその誘導体[例えば、テトラブロモフタルイミド、エチレンビステトラブロモフタルイミド等]、エチレンビス(5,6-ジブロモノルボルネン-2,3-ジカルボキシイミド)、トリス-(2,3-ジブロモプロピル-1)-イソシアヌレート、ヘキサクロロシクロペンタジエンのディールス・アルダー反応の付加物、トリブロモフェニルグリシジルエーテル、トリブロモフェニルアクリレート、エチレンビストリブロモフェニルエーテル、エチレンビスペンタブロモフェニルエーテル、テトラデカブロモジフェノキシベンゼン、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリフェニレンオキサイド、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリカーボネート、ポリペンタブロモベンジルアクリレート、オクタブロモナフタレン、ヘキサブロモシクロドデカン、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N-メチルヘキサブロモジフェニルアミン等の臭素系難燃剤;塩素化パラフィン等の塩素系難燃剤を使用するのが好ましい。
【0071】
上記リン系難燃剤としては、例えば、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(2,3-ジクロロプロピル)ホスフェート、トリス(2-クロロプロピル)ホスフェート、トリス(2,3-ブロモプロピル)ホスフェート、トリス(ブロモクロロプロピル)ホスフェート、2,3-ジブロモプロピル-2,3-クロロプロピルホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート等の含ハロゲン系リン酸エステル難燃剤;トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート等の脂肪族リン酸エステル;トリフェニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、ジクレジルフェニルホスフェート、トリクレジルフホスフェート、トリキシレニルホスフェート、キシレニルジフェニルホスフェート、トリ(イソプロピルフェニル)ホスフェート、イソプロピルフェニルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルフェニルホスフェート、トリ(トリメチルフェニル)ホスフェート、トリ(t-ブチルフェニル)ホスフェート、ヒドロキシフェニルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート等の芳香族リン酸エステル等のノンハロゲン系リン酸エステル難燃剤;ジメチルホスフィン酸アルミニウム、ジエチルホスフィン酸アルミニウム等のホスフィン酸アルミニウム系難燃剤等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0072】
上記含窒素難燃剤としては、メラミンシアヌレート、イソシアヌル酸、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリス(2,3-エポキシプロピル)イソシアヌレート、塩酸グアニジン、硝酸グアニジン、リン酸グアニジン、硫酸グアニジン、スルファミン酸グアニジン、テトラホウ酸グアニジン、炭酸グアニジン、リン酸グアニル尿素、硫酸グアニル尿素、メラミン、メラミン・メラム・メレム、メラミンシアヌレート、リン酸メラミン、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン・メラム・メレム、硫酸メラミン等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0073】
上記アンチモン系難燃剤としては、酸化アンチモン、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、四酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0074】
上記発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム及び亜硝酸アンモニウム等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0075】
上記抗菌防黴剤としては、例えば、ベンゾイミダゾール化合物、メルカプトピリジン-N-オキシド化合物、イソチアゾロン化合物、ベンゾチアゾール化合物等が挙げられ、これらは単独又は2種類以上を併用することもできる。
【0076】
ベース層4の厚みは、1.0~1.4mmであることが好ましく、1.2~1.3mmであることがより好ましい。ベース層4の厚みが1.0mm未満であると、床材1の反りや温度変化によるサイズ変化を効果的に抑制することができないおそれがあり、1.4mmより大きいと、床材1の剛性率が高くなり、折り曲げや反らすことが難しくなる。
【0077】
裏面層5は、床材1の最下面に積層されており、下地面と接する層である。
裏面層5を備えることにより、床材1の裏面を保護することができる。
【0078】
裏面層5は、UV塗料により形成される。
表面層5がUV塗料により形成されているので、床材1の耐摩耗性を高めることができる。また、割れを効果的に防止することができる。
【0079】
UV塗料としては、オリゴマー、モノマー、光重合開始剤、およびその他の添加剤からなる主剤と、イソシアネートと、からなる塗料が挙げられる。
【0080】
また裏面層5は、表面層2と同じUV塗料により形成されるので、表面層2と裏面層5で異なる素材を用いた場合に、各々の素材の特性の違いから生じる床材1の反りの発生を防ぐことができる。
【0081】
裏面層5の厚みは、0.05~0.20mmであることが好ましく、0.10~0.15mmであることがより好ましい。裏面層5の厚みが0.05mm未満であると、床材1の裏面の保護が十分でないおそれがある。また、裏面層5の厚みが0.20mmより大きいと、製造コストの増加や床材1の取扱性低下のおそれがある。
【0082】
(床材の製造方法)
次に、本実施形態にかかる床材1の製造方法について説明する。
本実施形態にかかる床材1は、以下の工程により製造することができる。
【0083】
第1工程:炭酸カルシウム及びポリ塩化ビニルと添加剤を混合しスラリーを形成する工程である。
具体的には、炭酸カルシウムとポリ塩化ビニル顆粒を粉砕し、添加剤とともにブレンダーに投入し、撹拌混合してスラリーを形成し、一定時間保管する。所定時間保管することで原材料を均一に混合でき、材料の分散状態が不均一となり製品の局所的な変形を回避することができる。
【0084】
第2工程:スラリーを押し出して基板を成形し、押し出された基板に転写フィルムを接着し、エンボスを作成する工程である。
生成したスラリーをエクストルーダーの先端に投入し、加熱溶融した後、金型から1.0~1.4mm厚の板に押し出す。そして、押し出された基板に、高温で転写フィルムを接着し、エンボスを付与し、指定サイズの基板に分割する。
【0085】
図2に示すように、本実施形態のエクストルーダーは一例としてローラー7を5基備える。基板がローラー7A、7Bにより押し出されながら設定した厚さに成形され、ローラー7Cにおいて転写フィルムを転写装置8で押しつけながら基板に接着させるとともに、ローラー7D、7Eに施された凹凸により、基板にエンボスを一緒に施すことができる。
【0086】
第3工程:基板を所定時間冷却する工程である。
上記分割された基板を常温で72時間以上自然冷却する。72時間以上冷却することで、基板が十分に冷却され、基板の内部応力を緩和させることができる。そして、転写フィルムを前記基板から剥離する。
【0087】
第4工程:基板の表面にUV塗装を施す工程である。
上記冷却された基板をUV生産ラインに投入し、UVコーティング機でUV塗料を基板の表面に均一付着させ、紫外線UV硬化機で塗料を硬化させる。製品の表面に硬化させたUV層を施して、製品の耐摩耗性を向上させることができる。
【0088】
第5工程:UV塗装が施された基板を冷却する工程である。
硬化されたUV層が積層された基板を常温で24時間以上自然冷却する。24時間以上自然冷却することで、紫外線UV硬化機によって発生した熱量を完全に冷却でき、基板の内部応力を再度緩和させ、製品の安定性を高めることができる。
【0089】
第6工程:基板の裏面にUV塗装を施す工程である。
上記冷却された基板をUV生産ラインに投入し、UVコーティング機でUV塗料を基板の裏面に均一付着させ、紫外線UV硬化機で塗料を硬化させる。製品の表面に硬化させたUV層を施して、製品の耐摩耗性を向上させることができる。
【0090】
第7工程:UV塗装が施された基板を冷却する工程である。
硬化されたUV層が積層された基板を常温で24時間以上放置する。紫外線UV硬化機によって発生した熱量を完全に冷却し、基板の内部応力を再度緩和させ、製品の安定性を高めることができる。
【0091】
第8工程:前記基板を床材サイズに分割する工程である。
前記基板を分割生産ラインに投入し、次に分割機で設定された床材サイズに分割する。分割する際に、機械内部の除塵機で発生した切屑等のゴミを除去する。
【0092】
第9工程:前記分割された基板に面取り加工を施す工程である。
クリックカッターに分割した基板を通し、表面4辺の面取り加工を施す。面取りを施すことで、床下地の不陸による段差を緩和させることができる。
【実施例0093】
次に、実施例により本実施形態の具体的態様を詳細に説明するが、本発明はこれらの記載に限定されるものではない。
【0094】
以下の実施例1で使用した材料は、一例として以下を用いた。
[実施例1]
(表面層)
UV塗料(Mile製)を使用した。
【0095】
(意匠層)
転写フィルム(光成製)を使用した。
【0096】
(ベース層)
100質量部の炭酸カルシウム(桂宝製)と、50質量部のポリ塩化ビニル樹脂(Xinfa製)と、約17質量部の安定剤(maijisen製)を混合したものを使用した。
【0097】
(裏面層)
UV塗料(Mile製)を使用した。
【0098】
床材の製造方法は、炭酸カルシウムとポリ塩化ビニル顆粒とを粉砕し、次にブレンダーに投入し、撹拌混合してスラリーを生成し、3時間保管した。
【0099】
次に生成したスラリーをエクストルーダーの先端に投入し、加熱溶融した後、金型から1.24mm厚の板に押し出して基板を成形した。さらに150℃で転写フィルムを接着し、エンボスを付与し、縦925mm、横1060mmの基板に分割した。なお、転写フィルムの厚みは0.02mmである。
【0100】
次に、この分割された基板を常温で72時間放置し冷却した。そして、転写フィルムを前記基板から剥離した。
【0101】
次に、この冷却された基板をUV生産ラインに投入し、UVコーティング機でUV塗料を基板の表面に均一付着させ、紫外線UV硬化機で塗料を硬化させた。この表面UV層の厚みは0.12mmである。
【0102】
この硬化されたUV層が積層された基板を常温で24時間放置し冷却した。
【0103】
次に、この冷却された基板をUV生産ラインに投入し、UVコーティング機でUV塗料を基板の裏面に均一付着させ、紫外線UV硬化機で塗料を硬化させた。この裏面UV層の厚みは0.12mmであった。
【0104】
この硬化されたUV層が積層された基板を常温で24時間放置し冷却した。
【0105】
次に、この基板を分割生産ラインに投入し、次に分割機で設定されたサイズに分割した。得られた床材は縦914mm、横152mm、厚み1.5mmである。
【0106】
クリックカッターに分割した床材を通し、表面4辺の面取り加工を施した。得られた床材の面取り部6の幅及び深さは、0.5mmである。
【0107】
次に実施例1の床材と、比較例1として従前の一般的なPVC床材を用いて床材の熱膨張率についての試験を実施した。なお、試験を行う環境下の室温は17℃である。
【0108】
本試験では、実施例1及び比較例1の床材を、それぞれ厚さ1.5mm×長さ914mm×幅152mmの試験片1、厚さ1.5mm×長さ229mm×幅152mmの試験片2に切り出した。試験片1を20℃、30℃、40℃、50℃の温度条件でオープンに1時間保存し、試験片2を-10℃、0℃、10℃の温度条件で深度35cmの冷蔵庫に1時間保存した。
【0109】
そして、20℃を基準として、-10℃、0℃、10℃、30℃、40℃、50℃の温度条件における、それぞれの床材の長さと幅を測って熱膨張率を測定し、その結果を図3に示した。
【0110】
図3に示された実施例1と比較例1の結果から、実施例1の床材は-10℃~50℃の間の熱膨張率が6.0×10-6/Kとなり、比較例1の床材は-10℃~50℃の間の熱膨張率が65.5×10-6/Kとなることが明らかになった。
【0111】
よって実施例1の床材は、比較例1の床材と比較して、熱膨張率を約1/10に抑えることができ、温度変化の影響を受けにくい床材となった。よって、床材に反りや膨れが生じにくく、比較例1のような一般的に用いられるPVC床材のように隙間を空けて施工する必要がなく、施工後の温度変化で隙間があいてしまうことや、床材同士の突き上げが起こり難くなる。また、熱に強いので床暖房の上にも施工することが可能となる。
【0112】
以上の通り、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明は上述した各実施形態に限定されないことは勿論であり、特許請求の範囲に記載された範疇における各種の変更例又は修正例についても、本発明の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0113】
1 床材
2 裏面層
3 ベース層
4 意匠層
5 表面層
6 面取り部
7 ローラー
8 転写装置
図1
図2
図3