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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125767
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】緑化資材
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/70 20220101AFI20230831BHJP
   B09B 3/00 20220101ALI20230831BHJP
   C05F 9/04 20060101ALI20230831BHJP
   C05F 11/00 20060101ALI20230831BHJP
   C05B 3/00 20060101ALI20230831BHJP
   A01G 24/10 20180101ALI20230831BHJP
   A01G 24/25 20180101ALI20230831BHJP
   A01G 24/28 20180101ALI20230831BHJP
【FI】
B09B3/00 304G
B09B3/00 ZAB
C05F9/04
C05F11/00
C05B3/00
A01G24/10
A01G24/25
A01G24/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030044
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】522078484
【氏名又は名称】大森 僚次
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】繁泉 恒河
(72)【発明者】
【氏名】久保田 洋
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼地 春菜
(72)【発明者】
【氏名】大森 僚次
【テーマコード(参考)】
2B022
4D004
4H061
【Fターム(参考)】
2B022AB01
2B022BA07
2B022BA13
2B022BA14
2B022BA18
2B022BB10
4D004AA36
4D004AA41
4D004AC05
4D004BA04
4D004CA13
4D004CA15
4D004CA35
4D004CA36
4D004CB05
4D004CB21
4D004CC01
4D004CC20
4D004DA03
4D004DA09
4D004DA17
4H061AA01
4H061BB01
4H061BB21
4H061CC47
4H061CC55
4H061GG42
4H061KK02
4H061LL22
(57)【要約】
【課題】低費用かつ確保が容易な代替材料を使用した緑化資材を提供すること。
【解決手段】緑化資材1は、バイオマスの燃焼によって発生したバイオマス燃焼灰に二酸化炭素を含む炭酸ガスを触れさせることによって中性化処理した中性化燃焼灰と、脱水処理された浄水発生土と、バーク堆肥と、が混練され、pHが6以上9以下、電気伝導度が0.15S/m未満、飽和透水性係数が10-4m/s超過、有効水分が120L/m超過である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスの燃焼によって発生したバイオマス燃焼灰に二酸化炭素を含む炭酸ガスを触れさせることによって中性化処理した中性化燃焼灰と、脱水処理された浄水発生土と、バーク堆肥と、が混練され、
pHが6以上9以下、電気伝導度が0.15S/m未満、飽和透水性係数が10-4m/s超過、有効水分が120L/m超過である、緑化資材。
【請求項2】
前記バイオマス燃焼灰は、主灰である、
請求項1に記載の緑化資材。
【請求項3】
酸性肥料がさらに添加される、
請求項1又は2に記載の緑化資材。
【請求項4】
前記酸性肥料は、りん酸質肥料、窒素質肥料又は有機質肥料を含み、
pHが6以上8以下である、
請求項3に記載の緑化資材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、緑化資材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浄水場で発生する浄水発生土、水分調整材としてのヤシ殻繊維、及び排水材としてのクリンカアッシュ(石炭灰)を混合した緑化資材が知られている。例えば、特許文献1には、浄水発生土、バーク堆肥、ピートモス、ヤシ解砕物、及び炭を添加した植生基盤材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000-73372号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の緑化資材に使用されるヤシ殻繊維は、海外から輸入して購入されるため、費用がかかる。また、クリンカアッシュは、今後、石炭火力が縮小されて、材料の確保が難しくなることが予想される。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、低費用かつ確保が容易な代替材料を使用した緑化資材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様の緑化資材は、バイオマスの燃焼によって発生したバイオマス燃焼灰に二酸化炭素を含む炭酸ガスを触れさせることによって中性化処理した中性化燃焼灰と、脱水処理された浄水発生土と、バーク堆肥と、が混練され、pHが6以上9以下、電気伝導度が0.15S/m未満、飽和透水性係数が10-4m/s超過、有効水分が120L/m超過である。
【0007】
緑化資材の望ましい態様として、前記バイオマス燃焼灰は、主灰である。
【0008】
緑化資材の望ましい態様として、酸性肥料がさらに添加される。
【0009】
緑化資材の望ましい態様として、前記酸性肥料は、りん酸質肥料、窒素質肥料又は有機質肥料を含み、pHが6以上8以下である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、低費用かつ確保が容易な代替材料を使用した緑化資材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態の緑化資材を製造する製造システムを示す模式図である。
図2図2は、図1に示す中性化処理装置に相当する試験装置の一例を示す模式図である。
図3図3は、バイオマス燃焼灰のpH依存性試験の結果を示すグラフである。
図4図4は、酸性肥料の添加量とpHとの関係を示すグラフである。
図5図5は、植害試験の播種7日目における発芽状況を示す図である。
図6図6は、植害試験の播種21日目における草丈を示すグラフである。
図7図7は、植害試験の播種21日目における生育状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本開示につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、本開示は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能、且つ、容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した実施形態における構成要素は、本開示の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。以下の実施形態では、本開示の実施形態を例示する上で、必要となる構成要素を説明し、その他の構成要素を省略する。
【0013】
(実施形態)
図1は、実施形態の緑化資材1を製造する製造システムを示す模式図である。緑化資材1は、バイオマス11の燃焼によって発生するバイオマス燃焼灰12が中性化処理された中性化燃焼灰10と、浄水場で発生する浄水発生土20と、バーク堆肥30と、酸性肥料40と、が混練された土壌である。以下の説明では、緑化資材1を図1に示す製造システムで製造する流れとともに、適宜、緑化資材1を構成する中性化燃焼灰10、浄水発生土20、バーク堆肥30、及び酸性肥料40についても説明する。
【0014】
バイオマス11は、実施形態において、木質バイオマスである。木質バイオマスは、森林から得られる枝、葉、梢、根株等の林地残材、製材工場から出るオガ粉、バーク(樹皮)、端材、背板等の残廃材、建築廃材、建築解体材等の産業廃棄物等を含む。図1に示すバイオマス発電施設50は、実施形態において、バイオマス11を直接燃焼して蒸気タービンを回すことで発電を行う施設、又はバイオマス11を直接燃焼して発生する可燃性ガスによりエンジンを稼働させることで発電を行う施設である。バイオマス発電施設50では、バイオマス11が燃焼されることによって、バイオマス燃焼灰12と、二酸化炭素(CO)を含む排ガスと、が発生する。
【0015】
バイオマス燃焼灰12は、バイオマス11を燃焼する燃焼炉等から回収される残留物である。バイオマス燃焼灰12は、実施形態において、燃焼炉等の底部から回収される主灰を示し、燃焼ガスと共に巻き上がり集塵装置で回収される飛灰とは区別される。バイオマス燃焼灰12の成分は、主に、酸化カルシウム(CaO)、二酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)等を含む。
【0016】
バイオマス発電施設50で発生したバイオマス燃焼灰12は、中性化処理装置60に搬送される。また、バイオマス11の燃焼により発生した二酸化炭素を含む排ガスは、燃焼炉の煙突前又は煙突の点検孔等から引き込まれる。排ガスは、排ガス中の酸性成分を脱硝装置等の処理装置で除去した後、中性化処理装置60へ送られる。
【0017】
中性化処理装置60では、バイオマス発電施設50から搬送されたバイオマス燃焼灰12に、二酸化炭素を含有する排ガス(以下、炭酸ガスと称する)を触れさせて炭酸塩化させることでpHを下げ、中性化する処理を行う。なお、以下の説明では、中性化されたバイオマス燃焼灰12を、中性化燃焼灰10と称する。バイオマス燃焼灰12と反応させる炭酸ガスは、必ずしもバイオマス発電施設50で発生する排ガスでなくてもよく、石炭、石油、天然ガス等を燃料とする火力発電所や、セメントの製造工場等の工場、化学プラント、焼却施設等から発生する排ガスであってもよい。
【0018】
中性化処理装置60は、例えば、コンテナ型、ヤードピット型、機械攪拌型等を含む。コンテナ型の中性化処理装置60は、例えば、車両の荷台に載せることが可能な略直方体状の可搬式コンテナであって、運搬距離が長い場合に有用である。コンテナは、内部空間を鉛直方向に分割する隔壁を備える二重床の処理槽を含む。隔壁は、処理槽の底面と平行な板状部材であって、複数の通気口を備える。コンテナ型の中性化処理装置60において、搬入されたバイオマス燃焼灰12は、隔壁の上に置かれる。炭酸ガスは、隔壁より下側の空間に導入され、隔壁の通気口を通ってバイオマス燃焼灰12に下方から接触する。
【0019】
ヤードピット型の中性化処理装置60は、例えば、バイオマス燃焼灰12を積層可能な広大な処理ヤードと、積層されたバイオマス燃焼灰12の層内に炭酸ガスを吹き込むガス供給ノズルと、を含む。ヤードピット型の中性化処理装置60は、バイオマス燃焼灰12の排出量が多い場合に有用である。なお、処理ヤードを壁及び天井を有する屋内に施設し、屋内に炭酸ガスを導入することで、積層されたバイオマス燃焼灰12の上方から炭酸ガスを接触させてもよい。
【0020】
機械攪拌型の中性化処理装置60は、バイオマス燃焼灰12を収容する処理槽内に炭酸ガスを供給しつつ内部を自動攪拌することが可能な装置である。なお、コンテナ型の中性化処理装置60に攪拌手段を設けていてもよい。バイオマス燃焼灰12に炭酸ガスを触れさせる処理を施す間、バイオマス燃焼灰12を攪拌することで、バイオマス燃焼灰12に対して均一に炭酸ガスを触れさせることができる。
【0021】
バイオマス燃焼灰12は、炭酸ガスを吸収することで炭酸塩化する。具体的には、バイオマス燃焼灰12に含有される酸化カルシウム等のカルシウム成分が炭酸塩化し、炭酸カルシウム(CaCO)が生成される。すなわち、中性化処理装置60では、二酸化炭素が、炭酸塩としてバイオマス燃焼灰12に固定化される。また、中性化処理によって、バイオマス燃焼灰12に含有される鉛(Pb)等の重金属が難溶化するとともに、電気伝導度(Electrical Conductivity;EC)が低下する。中性化処理を施されたバイオマス燃焼灰12、すなわち中性化燃焼灰10は、混練機90へ搬送される。
【0022】
ここで、中性化処理によるpH緩衝能の変化について、本開示の発明者らによる検証結果を、図2及び図3を参照して説明する。図2は、図1に示す中性化処理装置60に相当する試験装置60Aの一例を示す模式図である。図3は、バイオマス燃焼灰12のpH依存性試験の結果を示すグラフである。
【0023】
本検証では、中性化処理を実施した中性化燃焼灰10と、中性化処理を実施していないバイオマス燃焼灰12と、にそれぞれ硝酸を添加した際の、pHの変化を計測した。本検証で使用した中性化燃焼灰10は、含水率が15wt%となるように加水して混練したバイオマス燃焼灰12を、図2に示す試験装置60Aに重量が2500gDWとなるように充填し、中性化処理を実施したものである。本検証で使用した中性化処理を実施していないバイオマス燃焼灰12は、含水率が15wt%となるように加水して混練したものである。
【0024】
試験装置60Aは、実施形態において、ポリ塩化ビニルで形成されたカラムを含む。試験装置60Aは、反応部61と、樹脂網62と、給気部63と、を備える。反応部61は、鉛直方向に延びる筒形状であり、バイオマス燃焼灰12が充填される部分である。樹脂網62は、反応部61の下端部を塞ぎ、バイオマス燃焼灰12を上部に載置させる樹脂状の網である。
【0025】
給気部63は、反応部61及び樹脂網62の下方に位置し、樹脂網62を介して反応部61に連通する。給気部63には、内部に下部支持材64が充填されている。下部支持材64は、実施形態において、砂利である。給気部63は、給気口65を有し、給気口65から炭酸ガスを受け入れる。給気口65は、給気ライン66を介して、炭酸ガスを給気部63へ供給する。給気ライン66には、流量計67が設けられる。流量計67は、給気部63に供給される炭酸ガスの流量を計測する。
【0026】
試験装置60Aでは、樹脂網62の上にバイオマス燃焼灰12が載った状態で、給気部63に炭酸ガスが導入されると、炭酸ガスが、樹脂網62を通って、バイオマス燃焼灰12に下方から順に接触する。本検証では、二酸化炭素濃度が10%、通気速度が0.7L/m、通気時間が24h、二酸化炭素供給量が80g-CO/kgDW、の条件で中性化処理を実施した。
【0027】
図3の横軸は、バイオマス燃焼灰12及び中性化燃焼灰10それぞれへの硝酸(HNO)の添加量(μL)であり、図3の縦軸は、バイオマス燃焼灰12及び中性化燃焼灰10それぞれのpHである。また、図3に示す「主灰(未処理)」は、中性化処理を実施していないバイオマス燃焼灰12であり、「主灰(中性化)」は、バイオマス燃焼灰12に対して試験装置60Aで中性化処理を実施した中性化燃焼灰10である。図3に示すように、pHは、バイオマス燃焼灰12と比較して、中性化燃焼灰10の方が低い。また、pHは、硝酸を添加することによって下がる。すなわち、pH緩衝能は、中性化処理を実施することによって低下する。
【0028】
図1に示す浄水発生土20は、浄水場において水を処理する過程において発生する粘土質の土である。浄水場では、例えば、沈殿池70において、懸濁質、粉末活性炭及び凝集剤等と一体となって汚泥21が沈降分離される。汚泥21は、脱水設備80に移送されて、脱水処理される。脱水設備80は、プレス等の機械式により脱水するものでもよいし、天日により乾燥することで脱水するものでもよい。脱水処理された汚泥21は、浄水発生土20となって、混練機90へ移送される。
【0029】
混練機90では、中性化燃焼灰10と、浄水発生土20と、バーク堆肥30と、酸性肥料40と、を混練し、緑化資材1を製造する。バーク堆肥30は、樹皮を発酵させて作った有機質肥料である。酸性肥料40は、例えば、りん酸質肥料、又は窒素質肥料である。酸性肥料40を添加することによって、緑化資材1のpH値を調整する。
【0030】
緑化資材1は、中性化燃焼灰10と、浄水発生土20と、バーク堆肥30とを、4~10:3~5:0.3~1の割合で混練機90に投入され、混練機90によって、5~10s混練される。混練機90では、まず、中性化燃焼灰10及び浄水発生土20を先に5~10s混練し、次いで、バーク堆肥30を5~10s混練してもよい。
【0031】
混練機90によって、中性化燃焼灰10、浄水発生土20、及びバーク堆肥30を混練する際には、さらに、酸性肥料40を添加することによって、緑化資材1のpH値を調整してもよい。表1は、実施形態の緑化資材1の物理性能を示す表である。表1に示すように、緑化資材1は、pHが6以上9以下、電気伝導度が0.15S/m未満、飽和透水性係数が10-4m/s超過、有効水分が120L/m超過であるように製造される。
【0032】
【表1】
【0033】
ここで、酸性肥料40の添加によるpHの変化について、本開示の発明者らによる検証結果を、図4を参照して説明する。図4は、酸性肥料40の添加量とpHとの関係を示すグラフである。図4に示す「添加前」とは、中性化燃焼灰10、浄水発生土20、及びバーク堆肥30を、4~10:3~5:0.3~1の割合で混練した試作土壌のpHを示す。
【0034】
また、図4に示す「りん酸質肥料」とは、添加前の試作土壌に対し、酸性肥料40としてりん酸質肥料を、0.5wt%、1wt%、3wt%、及び5wt%の添加率で各々添加して混練した試作土壌のpHを示す。また、図4に示す「窒素質肥料」とは、中性化燃焼灰10、浄水発生土20、及びバーク堆肥30に加え、酸性肥料40としてりん酸質肥料を各々の割合で添加して混練した試作土壌のpHを示す。また、図4に示す「有機質肥料」とは、酸性肥料40として有機質肥料を、0.1wt%、0.3wt%、0.5wt%、及び1.0wt%の添加率で各々添加して混練した試作土壌のpHを示す。
【0035】
図4に示すように、酸性肥料40を添加していない試作土壌は、pH=8.1であり、表1に示すpHの目標値であるpH=8.0をわずかに上回っている。試作土壌に対し、りん酸質肥料を添加した場合には、添加率が1wt%以上で目標値を達成した。また、試作土壌に対し、窒素質肥料を添加した場合には、添加率が3wt%で目標値を達成した。また、試作土壌に対し、有機質肥料を添加した場合には、添加率が0.3wt%以上で目標値を達成した。緑化資材1は、中性化燃焼灰10、浄水発生土20、及びバーク堆肥30の混練比や、添加する酸性肥料40の種類に応じて、適宜pHの目標値を達成するように酸性肥料40の添加率を決定することが好ましい。
【0036】
次に、実施形態の緑化資材1の性能について、本開示の発明者らによる検証結果を、表2、及び図5から図7までを参照して説明する。本検証では、コマツナを、真砂土W、黒ボク土X、市販土壌Y、市販土壌Z、試作土壌A、試作土壌B、試作土壌C、及び試作土壌Dに播種し、播種3日目及び播種7日目の発芽状況と、播種21日目の生育状況と、を検証した。
【0037】
試作土壌Aは、中性化処理を実施した中性化燃焼灰10、浄水発生土20、バーク堆肥30、pH調整のための酸性肥料40、及び生育用の肥料を混練した土壌である。試作土壌Bは、中性化処理を実施した中性化燃焼灰10、浄水発生土20、バーク堆肥30及びpH調整のための酸性肥料40を混練した土壌である。試作土壌Cは、中性化処理を実施した中性化燃焼灰10、浄水発生土20、バーク堆肥30、及び生育用の肥料を混練した土壌である。試作土壌Dは、中性化処理を実施した中性化燃焼灰10、浄水発生土20、及びバーク堆肥30を混練した土壌である。なお、酸性肥料40としては、重過りん酸石灰を添加した。
【0038】
表2は、発芽試験の結果を示す表である。図5は、植害試験の播種7日目における発芽状況を示す図である。なお、表2において、「pH調整処理」とは、酸性肥料40が混練されているか否かを示している。また、表2において、「施肥」とは、生育用の肥料が混練されているか否かを示している。表2及び図5に示すように、pH調整処理を実施した試作土壌A、Bでは、真砂土W、黒ボク土X、及び市販土壌Y、Zと比較しても同等の発芽率が実現できた。これに対し、pH調整処理を実施していない試作土壌C、Dは、一般的な発芽率の目標値である指標の80%を超えなかった。
【0039】
【表2】
【0040】
図6は、植害試験の播種21日目における草丈を示すグラフである。図7は、植害試験の播種21日目における生育状況を示す図である。図6及び図7に示すように、試作土壌A、B、C、Dでは、黒ボク土、及び市販土壌X、Yと比較しても同等の生育状況を確認できた。特に、pH調整処理を実施した試作土壌A、Bでは、平均草丈が市販土壌X、Yより高く生長した。
【0041】
以上で説明したように、実施形態の緑化資材1は、バイオマス11の燃焼によって発生したバイオマス燃焼灰12に二酸化炭素を含む炭酸ガスを触れさせることによって中性化処理した中性化燃焼灰10と、脱水処理された浄水発生土20と、バーク堆肥30と、が混練され、pHが6以上9以下、電気伝導度が0.15S/m未満、飽和透水性係数が10-4m/s超過、有効水分が120L/m超過である。
【0042】
燃焼灰は、優れた吸湿及び吸水性を有する。すなわち、バイオマス11を燃焼したバイオマス燃焼灰12を従来の水分調整材の代替とすることで、浸透性の高い緑化資材1を得ることができる。また、浄水発生土20と混練する前に、バイオマス燃焼灰12を炭酸ガスに触れさせて中性化処理することによって、バイオマス燃焼灰12に含有する鉛等の重金属を難溶化することができるので、中性化処理された中性化燃焼灰10を含む緑化資材1からの鉛等の重金属の溶出を抑制することができる。また、中性化処理に使用する炭酸ガスは、バイオマス11を燃焼した際に排出される排ガスを利用できるので、バイオマス発電施設50で発生するバイオマス燃焼灰12に加えて二酸化炭素を有効利用することで、費用を削減することができる。また、バイオマス発電施設50で発生する排ガスを炭酸塩として固定することによって大気への発生量をマイナスして、脱炭素社会の形成に貢献することができる。
【0043】
また、実施形態の緑化資材1において、バイオマス燃焼灰12は、主灰である。主灰は、多孔質な細孔構造を有し、この細孔構造によって優れた吸湿及び吸水性、排水性、通気性を有する。すなわち、バイオマス11を燃焼したバイオマス燃焼灰12のうち主灰を従来の排水材の代替とすることで、排水性の高い緑化資材1を得ることができる。
【0044】
また、実施形態の緑化資材1は、酸性肥料40がさらに添加される。中性化燃焼灰10は、アルカリ性であるバイオマス燃焼灰12を中性化処理することによってpHを下げている。中性化燃焼灰10、浄水発生土20、及びバーク堆肥30の成分や混練比によって、pHが目標値(pH≦8)に達さない場合は、酸性肥料40を添加することにより、pHを調整することができる。酸性肥料40を添加されることでpH調整処理が実施された実施形態の緑化資材1は、pHが6以上8以下である。
【0045】
また、実施形態の緑化資材1において、酸性肥料40は、りん酸質肥料、窒素質肥料又は有機質肥料を含み、pHが6以上8以下である。りん酸質肥料又は窒素質肥料を添加することは、中性化燃焼灰10、浄水発生土20、及びバーク堆肥30を混練した土壌に、りん酸や窒素の成分が少ない場合に特に有用であり、これにより、pHを好適に調整できる。また、有機質肥料には、重金属が含まれないため、重金属を低減することができる。
【0046】
なお、各実施形態において説明した各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態内の他の構成と組み合わせてもよい。また、これらの各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態とは異なる他の実施形態内の構成と組み合わせてもよい。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の改変を行ってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1 緑化資材
10 中性化燃焼灰
11 バイオマス
12 バイオマス燃焼灰
20 浄水発生土
21 汚泥
30 バーク堆肥
40 酸性肥料
50 バイオマス発電施設
60 中性化処理装置
60A 試験装置
61 反応部
62 樹脂網
63 給気部
64 下部支持材
65 給気口
66 給気ライン
67 流量計
70 沈殿池
80 脱水設備
90 混練機
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7