(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012579
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】溝蓋用受枠及び溝蓋工事方法
(51)【国際特許分類】
E03F 5/04 20060101AFI20230119BHJP
F16B 37/04 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
E03F5/04 E
E03F5/04 F
E03F5/04 Z
F16B37/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116077
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】595172067
【氏名又は名称】ホクセイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 佳代子
【テーマコード(参考)】
2D063
【Fターム(参考)】
2D063CA44
2D063CB01
2D063CB26
2D063CB30
(57)【要約】
【課題】ナット構造部を受枠より溝の内側に突出させることで、ナット及びその周辺に泥や砂などが詰まりにくく、仮に詰まっても容易に排出させることができるようにする。
【解決手段】溝40の上部に設けられる受枠10の内縦面12に設けられるナット構造部20を備え、前記ナット構造部は、ボルト3のねじ径より大きく構成される上孔23を備える上板22、前記上孔に対応する位置と大きさの下孔25を備える下板24、及び前記上板と前記下板とを所定の距離を空けて接合する側板26を備え、前記内縦面から溝の内側に向かって突出する箱状部材21と、前記上板と前記下板との間に配置され、その縁が前記側板に当接されることで所定の角度以上回動せずかつ前記ボルトが貫通する貫通孔29を備える回り止め板28と、前記回り止め板の前記貫通孔に対応する位置に設けられるナット30と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝の上部に設けられて、溝蓋を載置させるための水平受面、及び溝の内側面に添った内縦面を備える受枠を備え、ボルトで前記溝蓋を固定する溝蓋用受枠であって、
前記内縦面に設けられるナット構造部を備え、
前記ナット構造部は、
前記ボルトのねじ径より大きく構成される上孔を備える上板、前記上孔に対応する位置と大きさの下孔を備える下板、及び前記上板と前記下板とを所定の距離を空けて接合する側板を備え、前記内縦面から溝の内側に向かって突出する箱状部材と、
前記上板と前記下板との間に配置され、その縁が前記側板に当接されることで所定の角度以上回動せずかつ前記ボルトが貫通する貫通孔を備える回り止め板と、
前記回り止め板の前記貫通孔に対応する位置に設けられるナットと、
を備えることを特徴とする溝蓋用受枠。
【請求項2】
前記箱状部材の側面のうち2つの面が開口とされている請求項1に記載の溝蓋用受枠。
【請求項3】
前記ナットが前記回り止め板の上面に突出するとともに前記ナットの径よりも前記上孔の径が大きく構成されて、前記ボルトで前記溝蓋を固定したときに前記回り止め板が前記上板と前記下板との間に浮かんだ状態となるとともに、前記ナット構造部を裏返しに配置して前記ボルトで前記溝蓋を固定したとき、前記回り止め板が前記下板に押し付けられる状態となる請求項1又は2に記載の溝蓋用受枠。
【請求項4】
前記回り止め板からの前記ナットの突出寸法が前記上板及び前記下板の厚さより小さく構成されるとともに前記ナットの径よりも前記上孔の径が大きく構成されて、前記ナット構造部を表向き及び裏返しに配置して前記ボルトで前記溝蓋を固定したときに前記回り止め板が前記上板又は前記下板に押し付けられる状態となる請求項1又は2に記載の溝蓋用受枠。
【請求項5】
前記上孔及び前記下孔の位置が前記上板及び前記下板の中心から離れており、前記箱状部材を裏返し又は前記内縦面に接合される前記箱状部材の辺を変えることで異なるボルトの位置に対応可能とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の溝蓋用受枠。
【請求項6】
前記下板又は前記上板のうち下側に配置される方の下面に、溝の内側面に当接される補強リブを備える請求項1ないし5のいずれか1項に記載の溝蓋用受枠。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項に記載の溝蓋用受枠を用いる溝蓋工事方法であって、
前記溝蓋用受枠を先に製造する受枠製造工程と、
前記溝蓋用受枠を設置場所に設置する受枠設置工程と、
前記溝蓋を前記受枠製造工程の後から製造する溝蓋製造工程と、
前記溝蓋を前記溝蓋用受枠に設置し前記ボルトで固定する溝蓋設置工程と、
を含むことを特徴とする溝蓋工事方法。
【請求項8】
請求項3に記載の溝蓋用受枠を用いる溝蓋工事方法であって、
前記ナット構造部を表向きに配置して前記溝蓋用受枠を製造する受枠製造工程と、
前記溝蓋用受枠を設置場所に設置する受枠設置工程と、
前記溝蓋を製造する溝蓋製造工程と、
前記溝蓋を前記溝蓋用受枠に設置し前記ボルトで固定する溝蓋設置工程と、
前記溝蓋を前記ボルトで固定した後に必要に応じて前記溝蓋の位置を前記ナットと前記上孔との遊び分調整する位置調整工程と、
を含むことを特徴とする溝蓋工事方法。
【請求項9】
請求項3に記載の溝蓋用受枠を用いる溝蓋工事方法であって、
前記ナット構造部を裏返しに配置して前記溝蓋用受枠を製造する受枠製造工程と、
前記溝蓋用受枠を設置場所に設置する受枠設置工程と、
前記溝蓋を製造する溝蓋製造工程と、
前記溝蓋を前記溝蓋用受枠に設置し前記ボルトで固定する溝蓋設置工程と、
を含むことを特徴とする溝蓋工事方法。
【請求項10】
既設の受枠を利用して請求項1ないし6のいずれか1項に記載の溝蓋用受枠を製造し、該溝蓋用受枠を用いてなされる溝蓋工事方法であって、
新たな溝蓋を製造する溝蓋製造工程と、
古い溝蓋を撤去する撤去工程と、
既設の受枠の内縦面に前記ナット構造部を接合して請求項1ないし6のいずれか1項に記載の溝蓋用受枠を製造する受枠製造工程と、
新たな溝蓋を該溝蓋用受枠に設置しボルトで固定する溝蓋設置工程と、
を含むことを特徴とする溝蓋工事方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝蓋を載置させるための溝蓋用受枠、及び該溝蓋用受枠を用いる溝蓋工事方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、グレーチングの固定構造として、特開2014-114643号公報に、グレーチングを載置させる受枠に、連結ボルトのねじ部の径より大きく連結ボルトが水平方向に位置調整可能に挿通される受枠孔と、受枠孔が形成された位置の受枠の下面に固定されて上面が開口した箱体と、箱体内に水平方向に位置調整可能に収容されて箱体の周壁に係止して回り止めされるナットとを備える技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示されている技術では、箱体が受枠の下に配置されることでコンクリートに埋設されており、箱体の中に泥や砂などが入り込んだときに排出しづらいという課題があった。一応、特許文献1の請求項4等には、箱体の一部を開口させて溝内に連通させる旨が記載されているが、程度の差はあるもののやはり同様の課題があった。
【0005】
本発明は上記の点に鑑みなされたもので、浮動ナットとして機能しながら、ナット構造部を受枠より溝の内側に突出させることで、ナット及びその周辺に泥や砂などが詰まりにくく、仮に詰まっても容易に排出させることができる溝蓋用受枠及び溝蓋工事方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の溝蓋用受枠は、
溝の上部に設けられて、溝蓋を載置させるための水平受面、及び溝の内側面に添った内縦面を備える受枠を備え、ボルトで前記溝蓋を固定する溝蓋用受枠であって、
前記内縦面に設けられるナット構造部を備え、
前記ナット構造部は、
前記ボルトのねじ径より大きく構成される上孔を備える上板、前記上孔に対応する位置と大きさの下孔を備える下板、及び前記上板と前記下板とを所定の距離を空けて接合する側板を備え、前記内縦面から溝の内側に向かって突出する箱状部材と、
前記上板と前記下板との間に配置され、その縁が前記側板に当接されることで所定の角度以上回動せずかつ前記ボルトが貫通する貫通孔を備える回り止め板と、
前記回り止め板の前記貫通孔に対応する位置に設けられるナットと、
を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の溝蓋用受枠によれば、ナット構造部が受枠から溝の内側に向かって突出して設けられており、ナット構造部の下には何もない。また、箱状部材の上板と下板にそれぞれ上孔と下孔が設けられているとともに、回り止め板にも貫通孔が設けられており、上板から下板までが貫通した状態となっている。これらにより、ナット構造部に入り込んだ泥や砂などを容易に排出させることができる。また、回り止め板及びナットが、箱状部材の中である程度自由に移動できる浮動ナットとして機能する。これにより、溝蓋のボルト用孔の位置が多少ずれていても問題なくボルトを締結することができる。
【0008】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例は、
前記箱状部材の側面のうち2つの面が開口とされている。
【0009】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例によれば、箱状部材の側面が開口とされているため、より効果的に箱状部材の中の泥や砂を排出させることができる。また2つの面が開口とされているため、箱状部材のどの辺(側面)を受枠の内縦面に接合しても、少なくとも1つの開口が保たれる。
【0010】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例は、
前記ナットが前記回り止め板の上面に突出するとともに前記ナットの径よりも前記上孔の径が大きく構成されて、前記ボルトで前記溝蓋を固定したときに前記回り止め板が前記上板と前記下板との間に浮かんだ状態となるとともに、前記ナット構造部を裏返しに配置して前記ボルトで前記溝蓋を固定したとき、前記回り止め板が前記下板に押し付けられる状態となる。
【0011】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例によれば、ボルトを締結したときに、ナットの上端が溝蓋の裏面に当接され、回り止め板が上板と下板のどちらにも押し付けられることがない。このため、溝蓋をボルトで締結した後も、ナットと上孔との遊び分ほど溝蓋を動かすことができ、ボルト締結後に溝蓋の位置調整を行なうことができる。また、ナット構造部を裏返しにして用いれば、溝蓋をボルトで締結したときに、回り止め板が下板に押し付けられ、溝蓋が動くことがない。さらに、上孔がナットより大きく構成されるとともに、下孔も上孔に対応する位置及び大きさとなるため、箱状部材の中に入り込んだ泥や砂などの排出がより容易となる。
【0012】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例は、
前記回り止め板からの前記ナットの突出寸法が前記上板及び前記下板の厚さより小さく構成されるとともに前記ナットの径よりも前記上孔の径が大きく構成されて、前記ナット構造部を表向き及び裏返しに配置して前記ボルトで前記溝蓋を固定したときに前記回り止め板が前記上板又は前記下板に押し付けられる状態となる。
【0013】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例によれば、ナット構造部を表裏のどちらで使用しても、ボルト締結後に溝蓋が動くことがない。
【0014】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例は、
前記上孔及び前記下孔の位置が前記上板及び前記下板の中心から離れており、前記箱状部材を裏返し又は前記内縦面に接合される前記箱状部材の辺を変えることで異なるボルトの位置に対応可能とする。
【0015】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例によれば、受枠の角などにおいて、溝蓋のボルト用孔が端に寄っているときなどに、ナット構造部を裏返しにして使用する、又は内縦面に接合するナット構造部の辺(側面)を変更することで、溝を挟んだ対向する側に同じナット構造部を使用することができる。また、同様に溝蓋のボルト用孔の複数種類の位置に対応させることができる。
【0016】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例は、
前記下板又は前記上板のうち下側に配置される方の下面に、溝の内側面に当接される補強リブを備える。
【0017】
本発明の溝蓋用受枠の好ましい例によれば、内縦面の高さが低い受枠にナット構造部を取付けた場合においても、内縦面との接合箇所が折れることがない。
【0018】
本発明の溝蓋工事方法は、
上記の溝蓋用受枠を用いる溝蓋工事方法であって、
前記溝蓋用受枠を先に製造する受枠製造工程と、
前記溝蓋用受枠を設置場所に設置する受枠設置工程と、
前記溝蓋を前記受枠製造工程の後から製造する溝蓋製造工程と、
前記溝蓋を前記溝蓋用受枠に設置し前記ボルトで固定する溝蓋設置工程と、
を含むことを特徴とする。
【0019】
本発明の溝蓋工事方法によれば、上記の溝蓋用受枠の作用効果に加え、工事において先に必要となる溝蓋用受枠を先に製造することができる。一般に、溝蓋のボルト用孔の位置と受枠のナットとの位置を合わせるために、溝蓋用受枠と溝蓋とを対にして製造している。特に、溝蓋の上に突起が生じないように皿ボルトを用いることがあるが、係る場合にはより厳密に位置合わせが必要になり、溝蓋用受枠と溝蓋とを対にして製造することが必須であった。このため、工事現場では先に溝蓋用受枠が必要になるにもかかわらず、製造現場では溝蓋と溝蓋用受枠とを同時に製造していた。一方、本発明の溝蓋工事方法では、溝蓋のボルト用孔の位置を厳密に決める必要がなくなり、先に溝蓋用受枠を製造して納品し、後から溝蓋を製造することができ、納期の短縮や仕掛品の削減をすることができる。
【0020】
本発明の溝蓋工事方法は、
上記の溝蓋用受枠を用いる溝蓋工事方法であって、
前記ナット構造部を表向きに配置して前記溝蓋用受枠を製造する受枠製造工程と、
前記溝蓋用受枠を設置場所に設置する受枠設置工程と、
前記溝蓋を製造する溝蓋製造工程と、
前記溝蓋を前記溝蓋用受枠に設置し前記ボルトで固定する溝蓋設置工程と、
前記溝蓋を前記ボルトで固定した後に必要に応じて前記溝蓋の位置を前記ナットと前記上孔との遊び分調整する位置調整工程と、
を含むことを特徴とする。
【0021】
本発明の溝蓋工事方法は、
上記の溝蓋用受枠を用いる溝蓋工事方法であって、
前記ナット構造部の少なくとも一部を裏返しに配置して前記溝蓋用受枠を製造する受枠製造工程と、
前記溝蓋用受枠を設置場所に設置する受枠設置工程と、
前記溝蓋を製造する溝蓋製造工程と、
前記溝蓋を前記溝蓋用受枠に設置しボルトで固定する溝蓋設置工程と、
を含むことを特徴とする。
【0022】
これら本発明の溝蓋工事方法によれば、上記の溝蓋用受枠と同様の作用効果を奏することができる。
【0023】
本発明の溝蓋工事方法は、
既設の受枠を利用して上記の溝蓋用受枠を製造し、該溝蓋用受枠を用いてなされる溝蓋工事方法であって、
新たな溝蓋を製造する溝蓋製造工程と、
古い溝蓋を撤去する撤去工程と、
既設の受枠の内縦面に前記ナット構造部を接合して上記の溝蓋用受枠を製造する受枠製造工程と、
新たな溝蓋を該溝蓋用受枠に設置しボルトで固定する溝蓋設置工程と、
を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の溝蓋工事方法によれば、工事現場で既設の受枠を用いて上記の発明に係る溝蓋用受枠を製造することができる。これにより、受枠の撤去と新設に係るコンクリートの削りと打設が不要となり、工事のコストダウンと工事期間の短縮を図ることができる。
【発明の効果】
【0025】
上述したように本発明の溝蓋用受枠及び溝蓋工事方法によれば、浮動ナットとして機能しながら、ナット構造部を受枠より溝の内側に突出させることで、ナット及びその周辺に泥や砂などが詰まりにくく、仮に詰まっても容易に排出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態に係る溝蓋用受枠を説明する図である。
【
図4】受枠の角において一部のナット構造部を裏返しにして取付けた例を説明する図である。
【
図5】ナット構造部の内部の位置関係を説明する図である。
【
図6】ナット構造部の内部の位置関係を説明する他の図である。
【
図7】補強リブを設けたナット構造部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の溝蓋用受枠1及び溝蓋工事方法の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、
図1は本実施形態の溝蓋用受枠1を模式的に表わした図である。
図2(A)はナット構造部20の斜視図、
図2(B)はナット構造部20の見る方向を変えた斜視図、
図2(C)はナット構造部20の平面図、
図2(D)はナット構造部20の底面図、
図2(E)はナット構造部20の上板22を外した状態の平面図、
図2(F)は
図2(C)のc1線断面図である。
図3(A)は上孔123及び下孔125の位置を上板122及び下板124の中心から離し、かつナット130が回り止め板128の両面に突出しているナット構造部120の平面図、
図3(B)は
図3(A)に示すナット構造部120の底面図、
図3(C)は
図3(A)のA-A線断面図である。
【0028】
先ず、溝蓋用受枠1を説明する。
図1に示すように、本実施形態の溝蓋用受枠1は、受枠10とナット構造部20とを備える。受枠10は、溝40の上部に設けられて溝40の上端近傍の縁を構成するとともに溝蓋2を載置させるためのものであり、水平受面11、内縦面12、及び外縦面13を備える。水平受面11は、その上に溝蓋2の端部が載置されるものである。内縦面12は、溝40の内側面41に添って、内縦面41と実質的に同じ面に構成される縦の面であり、この内縦面12にナット構造部20が溶接等の方法で取付けられる。外縦面13は、溝蓋2の幅方向への動きを規制するものであり、溝蓋2の厚さと略同じ高さを有する。なお、溝蓋2はボルト用孔4に通されるボルト3によってナット構造部20に固定される。
【0029】
ナット構造部20は、
図2(A)~(F)に示すように、箱状部材21と、回り止め板28と、ナット30とを備える。箱状部材21は、上板22、下板24、及び側板26を備える略直方体のものである。上板22は、ボルト3のねじ径より大きく構成される上孔23を備える平面視矩形のもので、ナット構造部20の上面を構成する。下板24は、上板22の上孔23に対応する位置と大きさの下孔25を備える底面視矩形のもので、ナット構造部20の下面を構成する。この上孔23と下孔25の位置であるが、
図2(C)に示すように、平面視で箱状部材21の中心線c1に添わせつつ中心線c1に直交する中心線c2からは離して配置している。これにより、箱状部材21のそれぞれの辺(側面)e1,e2,e3からナット30までの距離d1,d2,d3を変えることができる。そして、受枠10の内縦面12に所望の距離d1,d2,d3に対応する辺e1,e2,e3を接合することで、様々なボルト用孔4の位置に対応させることができる。また、本実施形態では、上孔23と下孔25の径がナット30の径ndより大きく構成されている。側板26は、上板22と下板24とを所定の距離を空けて接合するもので、ナット構造部20の側面を構成する。この側板26は、箱状部材21を構成する側面のうち対向する2つの面のみに設けられ、他の2つの面は開口27とされている。
【0030】
回り止め板28は、ボルト3が貫通する貫通孔29を備える平面視矩形のもので、その縁が側板26に当接されることで所定の角度以上回動しないように構成される。また、回り止め板28の大きさは箱状部材21の内側寸法より小さく構成される。ナット30は、回り止め板28の上面かつ貫通孔29に対応する位置に接合されるもので、ボルト3が締結されることによって溝蓋2が固定される。このナット30は、その上端が上孔23の中に入れられている。これにより、ナット30の周辺が上孔23の縁に当接されるまで上孔23の中で水平方向に動かすことができる(
図2(F)寸法線ed参照)とともに、箱状部材21の開口27からの回り止め板28及びナット30の脱落を防止することができる。
【0031】
また、
図3(A)に示すように、ナット構造部120における上孔123と下孔125の位置を、平面視で箱状部材121の中心線c3,c4の双方から離して配置することができる。これにより、箱状部材121のそれぞれの辺e4,e5,e6,e7からナット130までの距離d4,d5,d6,d7を変えることができる。さらに、このナット構造部120では、回り止め板128の両面にナット130が突出されており、
図3(B)に示すように、ナット構造部120を裏返しにしても同じように使用することができる。これを
図4に示すように受枠10の角において用いることで、同じナット構造部120を図中の角の右側と左側とで共用させることができる。なお、このナット構造部120は、
図2(F)に示すような、ナット30が回り止め板28の上面のみに突出するように構成してもよい。
【0032】
次に、
図5(A)~(D)を参照して、ナット構造部20の内部の詳細な位置関係を説明する。
図5(A)は
図2(F)に示すナット構造部20を拡大して回り止め板28を下板24に当接させた状態を示す図である。この状態(表向き)で、ナット30の上端から回り止め板28の下面までの高さ寸法h1より、上板22の外面から下板24の内面までの高さ寸法h2の方が高く構成されている。これにより、ナット30の上端は上孔23の中に入れられているとともに、上板22の外面より寸法s1の分だけ下がっている。このため、
図5(B)に示すように、溝蓋2をボルト3でナット30に固定したとき、回り止め板28が寸法s1の分だけ上昇して上板22と下板24との間に浮かんだ状態となる。これにより、溝蓋2をボルト3でナット構造部20に固定した状態であっても、ナット30と上孔23との遊び分(
図2(F)符号ed)ほど溝蓋2を動かすことができる。また、
図5(C)に示すように、溝蓋2を持ち上げることができ、溝蓋2をより容易に動かすことができる。
【0033】
一方、溝蓋2をボルト3でナット構造部20に固定した後に溝蓋2が動くことを防止するには、
図5(A)に示すナット構造部20を裏返しにして、
図5(D)に示すようにして用いればよい。係る場合、溝蓋2をボルト3で締結すると、回り止め板28が下板24の内面に押し付けられる。これにより、ナット30と上孔23とに遊びがあっても動くことがなく、溝蓋2を完全に固定することができる。
【0034】
また、
図6(A)に示すナット構造部120は、
図3(C)に示すナット構造部120を拡大して回り止め板128を上板122に当接させた状態を示す図である。ここでは、回り止め板128からのナット130の突出寸法h3が、上板122の厚さh4より小さく構成されている。また、上孔123の径がナット130より大きく構成されて、ナット130の上端が上孔123の中に入れられている。これらにより、ボルト3をナット130に締結したときに、回り止め板128が上板122の内面に押し付けられて、ナット130及び回り止め板128は動くことがない。
【0035】
さらに、
図6(B)に示すナット構造部120は、
図6に示すナット構造部120を裏返しにして使用する場合を想定したもので、
図6(A)に示すナット構造部120の回り止め板128を下板124に当接させた状態を示す図である。ここでも、回り止め板128からのナット130の突出寸法h5が、下板124の厚さh6より小さく構成されている。また、下孔125の径がナット130より大きく構成されて、ナット130の下端が下孔125の中に入れられている。これらにより、ボルト3をナット130に締結したときに、回り止め板128が下板124の内面に押し付けられて、ナット130及び回り止め板128が動くことがない。
【0036】
また、
図5(A)及び
図6(A)(B)に示すナット構造部20,120は、箱状部材21の側面のうち2つの面が開放されて開口27,127とされているとともに、上孔23,123と下孔25,125が同じ位置と大きさに設けられている。さらに、ナット構造部20,120は、内縦面12から溝40の内側に突出されている。これらにより、箱状部材21,121の中に泥や砂などが入り込んでも、開口27,127及び下孔25,125から速やかに排出させることができる。仮に、箱状部材21,121の中で泥が固まりとなっても、ナット30,130に持ち手代わりのボルトをねじ込んで回り止め板28,128を上板22,122と下板24,124との間で動かすととともに、開口27,127からドライバー等の工具を差し込んで掃除することで、中の泥を容易に除去させることができる。
【0037】
また、
図7(A)に示すように、下板224の下面に、溝40の内縦面41に当接される補強リブ231を備えるナット構造部220とすることもできる。これは
図7(B)に示すように、受枠210の種類によっては内縦面212の高さ(幅)が少ないものがある。このような受枠210の場合、ナット構造部20との接合強度が弱くなりがちであり、上からナット構造部220及び箱状部材221を足で踏んだ場合などに折損しやすくなる。これを防止するために、補強リブ231を溝40の内縦面41に当接させてナット構造部220の折損を防止するのである。なお、ナット構造部220を裏返しにして上板222を下側にして使用するときは、補強リブ231は上板222の下面に設けられる。
【0038】
次に、上述した溝蓋用受枠1の構成及び作用を踏まえ、溝蓋用受枠1を用いた溝蓋工事方法の実施形態について説明する。
【0039】
[第1実施形態]
本実施形態の溝蓋工事方法は、受枠製造工程と、受枠設置工程と、溝蓋製造工程と、溝蓋設置工程とを含む。
受枠製造工程は
図1に示すような溝蓋用受枠1を工場等で製造する工程である。このとき、一般には溝蓋2のボルト用孔と受枠10側のナット30との位置を合わせるため、溝蓋2と溝蓋用受枠1とは同時にかつ互いを対にして製造する。しかし、本実施形態ではナット構造部20の中でナット30が動くため、ボルト用孔4とナット30との位置を厳密に合わせる必要がない。これにより、溝蓋用受枠1を溝蓋3より先行して製造し納品することができる。なお、受枠製造工程では、対になる受枠10の間隔を所定の距離に保つため、受枠設置工程が終わるまで受枠10間に幅決め材14を設けている(
図8参照)。
【0040】
次に、
図8に示すように、受枠設置工程として設置場所に溝蓋用受枠1を設置する。これは、下地コンクリート43からアンカー45と差筋46を使って溝蓋用受枠1を所定の位置に配置する。次に、必要に応じて型枠等を用いて破線で示す箇所まで仕上げコンクリート44を打設するのである。仕上げコンクリート44の養生が終われば、幅決め材14を除去すればよい。そして、
図11に示すように、溝蓋用受枠1はコンクリート42で固定された状態になる。
【0041】
次に、溝蓋製造工程として、溝蓋2を受枠製造工程の後から製造する。なお、溝蓋2の製造は、溝蓋用受枠1の製造後に行なえばよく、上記の受枠設置工程と順序が前後又は平行しても構わない。
【0042】
次に、
図12に示すように、溝蓋設置工程として溝蓋2を溝蓋用受枠1に設置して、ボルト3で固定すればよい。このとき、ナット30が上孔23との遊び分ほど動くため、溝蓋2の位置を微調整しながら設置することができる。また、溝蓋2のボルト用孔4の加工位置が多少ずれていても、問題なくボルト3をナット30に締結することができる。
【0043】
[第2実施形態]
本実施形態の溝蓋工事方法は、受枠製造工程と、受枠設置工程と、溝蓋製造工程と、溝蓋設置工程と、位置調整工程とを含む。
【0044】
受枠製造工程、受枠設置工程、溝蓋製造工程、溝蓋設置工程は、上述の第1実施形態を参照すれば理解できるため説明を省略する。このとき、
図5(A)に示すように、ナット構造部20を上板22が上側になる表向きにして受枠10に接合させる。なお、本実施形態では、第1実施形態のように溝蓋製造工程を受枠製造工程の後にしてもよいが、必ずしも溝蓋製造工程を受枠製造工程の後にする必要はない(第3実施形態、第4実施形態においても同様)。
【0045】
そして、位置調整工程として、溝蓋2をボルト3で固定した後に必要に応じて溝蓋2の位置をナット30と上孔23との遊び分(
図2(F)符号ed参照)調整する。これは、既に説明した
図5(A)~(C)及び
図6(A)(B)に示すナット構造部20,120の作用によってなされる。この位置調整工程は、溝蓋2をボルト3で固定した後、1枚ずつの溝蓋2に対して行なってもよいし、複数枚の溝蓋2をボルト3で固定した後に行なってもよい。
[第3実施形態]
本実施形態の溝蓋工事方法は、受枠製造工程と、受枠設置工程と、溝蓋製造工程と、溝蓋設置工程とを含む。
【0046】
受枠製造工程、受枠設置工程、溝蓋製造工程、溝蓋設置工程は、上述の第1実施形態を参照すれば理解できるため説明を省略する。但し、本実施形態では受枠製造工程において、
図5(A)に示すナット構造部20を用いて、下板24を上側にする裏返しの状態で受枠10に接合する。係る場合、溝蓋2の設置時にはナット30が上孔23との遊び分(
図2(F)符号ed参照)ほど動くため、溝蓋2の位置を微調整しながら設置することができる。そして、ボルト3を締結した後は、回り止め板28が下板24に押し付けられて、溝蓋2を完全に固定することができる(
図5(D)参照)。
【0047】
[第4実施形態]
本実施形態の溝蓋工事方法は、溝蓋製造工程と、撤去工程と、受枠製造工程と、溝蓋設置工程とを含む。これは、
図9に示すような、既設の受枠310を用いて行なわれる工事である。
【0048】
先ず、溝蓋製造工程として、新たな溝蓋2(
図1参照)を製造する。この溝蓋製造工程は、下記の撤去工程及び受枠製造工程と並行して進めることもできる。次に、撤去工程として、
図9に示すような溝蓋302及び受枠310から、古い溝蓋302を取外して
図10に示すような状態にする。このとき、溝蓋302は図示しないボルト等で固定されているためこのボルトも除去する。
【0049】
次に、受枠製造工程として、
図10に示す既設の受枠310の内縦面312にナット構造部20を接合して、
図11に示すような溝蓋用受枠1を製造する。このとき、従来では、新たに製作した溝蓋2のボルト用孔4の位置と、既設の受枠310のナットの位置とが合わないことが多いため、既設の受枠310の周囲のコンクリート42を削って受枠310を除去し、新たに製作した受枠を設置する。しかし、本実施形態では、ナット構造部20でナット30の位置の調整が可能なため、既設の受枠310を利用して溝蓋用受枠1を現地で製造することができる。次に、溝蓋設置工程として、
図12に示すように、新たな溝蓋2を、既設の受枠310を用いて製造した溝蓋用受枠1にボルト3で固定する。
【0050】
以上説明したように、本実施形態の溝蓋用受枠によれば、ナット構造部が溝の内側に突出しており、下孔が上孔と同じ位置と大きさに設けられている。さらに、箱状部材の側板が2面しかなく、残りの2面は開口とされている。これらにより、ナット構造部の中が泥や砂などで汚れにくく、詰まりにくい。また、万一、ナット構造部の中が泥で詰まっても、回り止め板を箱状部材の中で上下方向及び水平方向に動かすことができ、さらに開口から工具を差し込むことができるため、容易に掃除することができる。
【0051】
また、ナット構造部を裏返しにして使用することが可能なこと、上孔及び下孔の位置を箱状部材の中心線c1,c2,c3,c4からずらして配置していることにより、様々なボルトの位置に対応させて使用することができる。また、回り止め板の上側のみにナットを設けることで、ナット構造部を表向きにしたときはボルト締結後も溝蓋の位置調整が可能となる。一方、ナット構造部を裏返しにすることで溝蓋の完全な固定が可能となる。
【0052】
また、本実施形態の溝蓋工事方法によれば、溝蓋と溝蓋用受枠とを対にして製造する必要がなく、工事において先に必要になる溝蓋用受枠のみを先に製造して納品することができる。これにより、納期の短縮と仕掛品の削減を図ることができる。また、ナット構造部に溝蓋をボルトで固定した後も、溝蓋の位置調整ができるため、工事を早く済ませることができる。また、既設の受枠を利用する実施形態では、受枠の交換が不要になるため、コンクリートの削り及び打設が不要になり、工期の短縮とコストダウンを図ることができる。
【0053】
なお、上述した溝蓋用受枠及び溝蓋工事方法は、本発明の例示であり発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0054】
1・・溝蓋用受枠、2,302・・溝蓋、3・・ボルト、4・・ボルト用孔、
10,210,310・・受枠、11・・水平受面、12,212,312・・内縦面、13・・外縦面、14・・幅決め材、
20,120,220・・ナット構造部、21,121・・箱状部材、22,122,222・・上板、23,123・・上孔、24,124,224・・下板、25,125・・下孔、26,126・・側板、27,127・・開口、28,128・・回り止め板、29・・貫通孔、30,130・・ナット、231・・補強リブ、
40・・溝、41・・内側面、42・・コンクリート、43・・下地コンクリート、44・・仕上げコンクリート、45・・アンカー、46・・差筋、