(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125800
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】集塵装置、樹脂成形装置、及び、フィルタ部材
(51)【国際特許分類】
B01D 46/02 20060101AFI20230831BHJP
B01D 46/52 20060101ALI20230831BHJP
B01D 46/62 20220101ALI20230831BHJP
B29C 31/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B01D46/02 A
B01D46/52 A
B01D46/62
B29C31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030101
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390002473
【氏名又は名称】TOWA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【弁理士】
【氏名又は名称】立花 顕治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良平
(72)【発明者】
【氏名】前田 直也
(72)【発明者】
【氏名】小澤 雅満
(72)【発明者】
【氏名】太田 泰司
(72)【発明者】
【氏名】森 宣和
【テーマコード(参考)】
4D058
4F201
【Fターム(参考)】
4D058JA04
4D058JA09
4D058JB48
4D058KA06
4D058KB11
4D058KC34
4D058KC39
4D058QA01
4D058QA03
4D058QA11
4D058QA21
4D058SA20
4D058UA25
4F201AC04
4F201BA06
4F201BC02
4F201BD02
4F201BQ09
4F201BQ31
4F201BQ44
(57)【要約】
【課題】安定的な吸引により集塵を行うことが可能な集塵装置、樹脂成形装置、及びフィルタ部材を提供する。
【解決手段】本発明に係る集塵装置は、開口部を有し、少なくとも一部が通気性のある通気材料で形成された袋状のフィルタ部材を設置可能な集塵装置であって、吸気口及び排気口が形成された筐体と、前記排気口から吸気可能な気体吸引源と、前記筐体の内部において前記排気口を覆うように配置され、複数の通気孔が形成された設置部材と、を備え、前記フィルタ部材の開口部を前記吸気口に接続するとともに前記通気材料の少なくとも一部を前記設置部材上に配置した状態で、前記気体吸引源を駆動することにより、前記吸気口から流入した気体が、当該フィルタ部材を介して、前記排気口から排出されるように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を有し、少なくとも一部が通気性のある通気材料で形成された袋状のフィルタ部材を設置可能な集塵装置であって、
吸気口及び排気口が形成された筐体と、
前記排気口から吸気可能な気体吸引源と、
前記筐体の内部において前記排気口を覆うように配置され、複数の通気孔が形成された設置部材と、
を備え、
前記フィルタ部材の開口部を前記吸気口に接続するとともに前記通気材料の少なくとも一部を前記設置部材上に配置した状態で、前記気体吸引源を駆動することにより、前記吸気口から流入した気体が、当該フィルタ部材を介して、前記排気口から排出されるように構成されている、集塵装置。
【請求項2】
前記筐体の内面において前記排気口が形成された面と、前記設置部材との間に隙間が形成され、
前記フィルタ部材の前記通気材料から外部に流出した気体が、前記隙間に流入し、前記排気口から吸引されるように構成されている、請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記排気口と前記気体吸引源との間に、補助フィルタ部材をさらに備えている、請求項1または2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記設置部材には、前記通気孔が形成された少なくとも1つの凸部が形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の集塵装置。
【請求項5】
樹脂成形を行う樹脂成形モジュールと、
前記樹脂成形モジュール内の粉塵を集塵する、請求項1から4のいずれかに記載の集塵装置と同一構成の集塵モジュールと、
を備えている、樹脂成形装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載の集塵装置に設置されるフィルタ部材であって、
上部に開口部を有し、袋状に形成されたフィルタ本体を備え、
前記フィルタ本体の底部が略平坦な面により形成され、
前記フィルタ本体は、少なくとも前記底部が通気性のある通気材料で形成されている、フィルタ部材。
【請求項7】
前記フィルタ本体の外周面には、前記底部と前記開口部との間で上下方向に延びる複数のヒダが形成されている、請求項6に記載のフィルタ部材。
【請求項8】
前記フィルタ本体の外周面の外側に、当該フィルタ部材の形状を保持するための環状のベルト部材をさらに備えている、請求項6または7に記載のフィルタ部材。
【請求項9】
前記開口部の周縁に沿うように紐状部材が設けられ、当該紐状部材を引っ張ることで、前記開口部が閉じられる閉鎖構造を有する、請求項6から8のいずれか記載のフィルタ部材。
【請求項10】
請求項4に記載の集塵装置に設置されるフィルタ部材であって、
上部に開口部を有し、通気性のある通気材料で袋状に形成されたフィルタ本体を備え、
前記フィルタ本体の底部が略平坦な面により形成されており、
前記フィルタ本体は、少なくとも前記底部が通気性のある通気材料で形成され、
前記平坦な面に、前記設置部材の凸部が嵌まる凹部が形成されている、フィルタ部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集塵装置、樹脂成形装置、及び、フィルタ部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、樹脂成形装置には、樹脂カスや粉塵(以下、「粉塵等」と称する。)を回収する集塵装置が備えられている。集塵装置には、回収した粉塵等を捕らえるフィルタが備えられている。例えば、特許文献1に記載の集塵装置には、袋状の一次フィルタと板状の二次フィルタとが備えられている。
【0003】
適切な集塵を行うためには、目詰まりする前に、粉塵等が付着したフィルタを交換し、また交換したフィルタを再利用する場合は付着したフィルタを掃除する必要がある。しかし、フィルタ交換(取り外し)時にフィルタから粉塵が飛散し、樹脂成形装置が設置されているクリーンルーム内を汚染するおそれがある。特許文献1の集塵装置の袋状の一次フィルタは、粉塵を袋内に溜めることができるため、一次フィルタの取り外し時の粉塵の飛散を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この一次フィルタは、筐体内で吸気管に吊下げられ、一次フィルタから離れた下方の吸気管によって空気が吸引されている。そのため、吸引時に一次フィルタが動いたり、あるいは不安定な形状で筐体の内部に張り付くおそれがあり、安定的な吸引を行うことができないおそれがある。その結果、集塵機能が低下する可能性がある。
【0006】
本発明は、この問題を解決するためになされたものであり、安定的な吸引により集塵を行うことが可能な集塵装置、樹脂成形装置、及びフィルタ部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る集塵装置は、開口部を有し、少なくとも一部が通気性のある通気材料で形成された袋状のフィルタ部材を設置可能な集塵装置であって、吸気口及び排気口が形成された筐体と、前記排気口から吸気可能な気体吸引源と、前記筐体の内部において前記排気口を覆うように配置され、複数の通気孔が形成された設置部材と、を備え、前記フィルタ部材の開口部を前記吸気口に接続するとともに前記通気材料の少なくとも一部を前記設置部材上に配置した状態で、前記気体吸引源を駆動することにより、前記吸気口から流入した気体が、当該フィルタ部材を介して、前記排気口から排出されるように構成されている。
【0008】
本発明に係る樹脂成形装置は、樹脂成形を行う樹脂成形モジュールと、前記樹脂成形モジュール内の粉塵を集塵する、上記集塵装置と同一構成の集塵モジュールと、を備えている。
【0009】
本発明に係るフィルタ部材は、上述した集塵装置に設置されるフィルタ部材であって、上部に開口部を有し、袋状に形成されたフィルタ本体を備え、前記フィルタ本体の底部が略平坦な面により形成され、前記フィルタ本体は、少なくとも前記底部が通気性のある通気材料で形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、安定的な吸引により集塵を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図9】集塵モジュールの動作を説明する断面図である。
【
図10】集塵モジュールの動作を説明する断面図である。
【
図11】集塵モジュールの動作を説明する断面図である。
【
図12】使用後のフィルタ部材の動作を示す正面図である。
【
図13】設置部材に設けられる凸部の他の例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る樹脂成形装置の一実施形態について、図面を参照しつつ説明する。この樹脂成形装置には、本発明に係る集塵装置の一実施形態である集塵モジュールが設けられている。各図面は、理解の容易のために、適宜対象を省略又は誇張して模式的に描かれていることがある。
【0013】
<1.樹脂成形装置の構成>
図1は、本実施形態に係る樹脂成形装置100の概略平面図である。この樹脂成形装置100は、半導体チップ、抵抗素子、キャパシタ素子等の電子素子、樹脂封止済みの電子部品(以下、これらを合わせて電子部品と称することとする)が接続された基板(樹脂成形対象物)Wにトランスファ成形により樹脂成形(樹脂封止)を施し、樹脂成形品を製造するように構成されている。より詳細に説明すると、基板Wの一方の面に電子部品を固定した後、この面を樹脂で封止する。その後、さらに、基板Wの他方の面に電子部品を固定した後、この面を樹脂で封止する場合もある。このように、基板Wの各面を樹脂で封止する際に、本実施形態に係る樹脂成形装置100が用いられ、電子部品の基板への固定は他の装置にて行われる。
【0014】
ここで用いられる基板Wの一例としては、シリコンウェーハ等の半導体基板、リードフレーム、プリント配線基板、金属製基板、樹脂製基板、ガラス製基板、セラミック製基板等を挙げることができる。基板Wは、FOWLP(Fan Out Wafer Level Packaging)、FOPLP(Fan Out Panel Level Packaging)に用いられるキャリアであってもよい。基板Wにおいては、配線が既に施されていてもよいし、配線が施されていなくてもよい。
【0015】
図1に示すように、樹脂成形装置100は、基板・樹脂材料供給モジュールA(以下、単に「モジュールA」とも称する。)と、2つの樹脂成形モジュールB(以下、単に「モジュールB」とも称する。)と、基板収納モジュールC(以下、単に「モジュールC」とも称する。)と、制御部14と、を有している。制御部としては、例えば、PLC(Programmable Logic Controller)、PC(Personal Computer)等を用いることができる。制御部14は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)等を含み、情報処理に応じてモジュールA~Cの各々の制御を行なうように構成されている。以下、各モジュールA~Cについて詳細に説明する。なお、モジュールの各々は、他のモジュールに着脱可能かつ交換可能である。また、樹脂成形装置100において、モジュールA~Cの各々は増減可能である。
【0016】
<1-1.モジュールA>
モジュールAは、成形前の基板Wの供給、及び樹脂材料Pの供給を行うモジュールであり、基板供給ユニット42と、インマガジン78と、整列機構70と、樹脂供給機構79と、を有している。基板供給ユニット42 、インマガジン78、及び整列機構70は、モジュールAにおいて、ガイドGよりも正面側(
図1の下側)に配置されている。基板供給ユニット42は、複数の基板Wを鉛直方向に間隔を空けて収容する収容容器であるインマガジン78から基板Wを一枚ずつ押し出して整列機構70へ搬送する。本実施形態では、基板供給ユニット42は、アクチュエータにより基板Wをインマガジン78から押し出して、インマガジン78に隣接して配置されている整列機構70に移動させる。整列機構70は、回転円盤を有し、基板Wが載置されると、回転円盤を回転させて、ローダ40によるピックアップに適した状態になるように基板Wを整列させる。樹脂供給機構79は、樹脂成形のためのタブレット状の樹脂材料Pを供給して、ローダ40によるピックアップに適した状態に配列させる。
【0017】
<1-2.モジュールB>
各モジュールBは、樹脂材料の成形を行うモジュール(樹脂成形モジュール)であり、トランスファ成形によって成形済みの基板W(樹脂成形品)を製造する成形部5を有している。成形部5は、上型52と、上型52に対向する下型51と、型締め機構53と、プランジャ(不図示)と、を有している。下型51は、上面に基板Wを保持するように構成されており、樹脂材料Pを収容するポットを有している。一方、上型52は、凹状のキャビティを有している。型締め機構53は、上型52と、基板W及び樹脂材料Pが供給された下型51とを型締めするように構成されている。本実施形態では、上型52には、さらに、カル部、ランナ、及びゲートが形成されており、カル部、ランナ、及びゲートは、ポット内の溶融した樹脂材料Pがプランジャによって押し出されキャビティに至るまでの樹脂流通路を構成する。
【0018】
<1-3.モジュールC>
モジュールCは、成形済みの基板Wから不要樹脂を除去して収納するためのモジュールである。
図1に示すように、モジュールCは、ゲートブレイク機構771と、アウトマガジン772と、を有している。ゲートブレイク機構771は、成形済みの基板Wから不要樹脂を除去する。アウトマガジン772は、不要樹脂が除去された成形済みの基板Wを収納する。
【0019】
<1-4.ローダ及びアンローダ>
本実施形態の樹脂成形装置100には、モジュールA、モジュールB、及びモジュールCに亘って直線状に配設されたガイドGが設けられている。ガイドGは、ローダ40及びアンローダ44を走行させるレール状の部材である。ガイドG は、各モジュールのそれぞれにおける背面側(
図1の上側)に配設されている。ローダ40は、モジュールAからモジュールBに亘って移動可能であり、モジュールAにおいて基板Wと樹脂材料Pをピックアップして、モジュールBに搬送し、基板Wと樹脂材料Pを下型51に供給する。アンローダ44は、モジュールBからモジュールCに亘って移動可能であり、モジュールBにおいて成形済みの基板Wをピックアップして、モジュールCに搬送し、ゲートブレイク機構771に受け渡す。
【0020】
<2.集塵モジュール>
次に、集塵モジュールについて説明する。
図2に示すように、集塵モジュール200は、モジュールBに隣接して設けられ、モジュールBにおいて成形部5の周囲の空気を吸引する吸気管50と連結されている。なお、吸気管50は、さらに、モジュールA、モジュールCにも設けられていてもよい。そして、吸気管50により吸引された空気は、集塵モジュール200を通過し、濾過された空気が集塵モジュール200の外部に排出されるように構成されている。以下、集塵モジュール200について詳細に説明する。
【0021】
図3は集塵モジュール200の概略構成図である。
図3に示すように、この集塵モジュール200は、袋状のフィルタ部材300が収容される第1筐体7、シート状の補助フィルタ部材80が収容される第2筐体8、及びブロアモータ91が収容される第3筐体9を備えており、これら3つの筐体7~9が隣接して配置されている。
【0022】
図4は第1筐体7を正面から見た断面図である。
図4に示すように、第1筐体7は直方体状に形成され、側面の一部が扉(図示省略)として開閉可能となっており、扉を開くことで、フィルタ部材300の取り付けなど、内部空間のメンテナンスを行うことができる。第1筐体7の上壁部71には上述した吸気管50の端部が取り付けられている。吸気管50の端部は円筒状に形成され、上壁部71から下方へ延びている。そして、後述する
図9に示すように、この吸気管50の下端部にフィルタ部材300が取り付けられる。これにより、吸気管50を介して、モジュールBから吸引された粉塵や樹脂のバリなどのゴミ(以下、まとめて樹脂片という)が第1筐体7の内部に導入され、フィルタ部材300の内部に溜まるようになっている。なお、第1筐体7に取り付けられている吸気管50が、本発明の吸気口に相当する。
【0023】
一方、第1筐体7の底壁部72には、矩形状の排気口721が形成されており、この排気口721を覆うように矩形の板状の設置部材73が配置されている。この設置部材73には多数の通気孔が形成されており、この設置部材73上にフィルタ部材300が設置される。
【0024】
設置部材73は、第1筐体7の底壁部72に配置された複数の支持部74によって支持されている。より詳細に説明すると、底壁部72において排気口721の外縁の四隅には、上方に突出する直方体状の支持部74が配置されており、これら支持部74によって、設置部材73の四隅が支持されている。これにより、設置部材73と底壁部72との間には隙間が形成されており、この隙間へは設置部材73の側方から空気が流入可能となっている。また、設置部材73の上面には、ドーム状(半球状)の凸部75が形成されており、この凸部75にも多数の通気孔が形成されている。
【0025】
底壁部72の下面には排気管76が取り付けられており、この排気管76が第2筐体8に連結されている。
図3に示すように、第2筐体8は水平方向の厚みが小さい直方体状に形成され、その内部に上述した補助フィルタ部材81が取り付けられている。補助フィルタ部材81には、シート材を蛇腹状に折り曲げて形成された公知のフィルタ(例えば、HPEAフィルタ)が収容されている。この補助フィルタ部材81によって、第2筐体8の内部が水平方向に2つの領域、つまり、上流領域84及び下流領域85に仕切られている。
【0026】
上述した排気管76は上流領域84に連結されている。したがって、第1筐体7から排出された空気は、上流領域84に流入し、補助フィルタ部材81を通過して下流領域85に流れるようになっている。すなわち、補助フィルタ部材81によって、粉塵等が捕捉され空気が浄化される。下流領域85における第2筐体8の壁面は第3筐体9に連結されており、下流領域85の空気が第3筐体9に流れるようになっている。
【0027】
図3に示すように、第3筐体9の内部にはブロアモータ(気体吸引源)91が配置されており、これが駆動することで、モジュールBから第1~第3筐体7~9を介して空気を吸引できるようになっている。吸引した空気は、第3筐体9の上部に配置された排気管92から排出されるようになっている。
【0028】
<3.フィルタ部材>
次に、フィルタ部材について、
図5~
図8を参照しつつ説明する。
図5はフィルタ部材の側面図、
図6は
図5の平面図、
図7はフィルタ部材のヒダを示す断面図、
図8はフィルタ部材の底面図である。
図5~
図8に示すように、このフィルタ部材300は、袋状のフィルタ本体31と、このフィルタ本体31の外面に配置される配置されるベルト部材32と、上下に延びる2つの支持部材33とを有している。
【0029】
フィルタ本体31は、底部311が平坦な円形状に形成されている。一方、フィルタ本体31の上部には、底部311よりも小径の円形状の開口部312が形成されている。開口部312は、フィルタ本体31の上端開口付近が内側に折り返され縫い付けられることで形成されており、これによって開口部312の周囲に紐状部材34が通る通路314が形成されている。そして、この通路314には外部に通じる切り欠き313が形成されており、この切り欠き313から紐状部材34の両端がそれぞれ引き出され、外部に延びている。すなわち、フィルタ本体31の開口部312は巾着のような閉鎖構造を有しており、紐状部材34の両端を引っ張ると開口部312が締めつけられて閉じるようになっている。
【0030】
また、フィルタ本体31の外周面において、紐状部材34の下方には、周方向に延びる環状の弾性部材35が取り付けられている。これにより、開口部312から挿入された吸気管50を締めつけることができる。なお、弾性部材35は例えば、ゴムなどで形成することができる。
【0031】
フィルタ本体31の外面には、上下方向に延びる複数のヒダ(プリーツ)315が形成されており、周方向に所定間隔を開けて並んでいる。
図7に示すように、ヒダ315は、フィルタ本体31を折り曲げることで形成されている。そのため、ヒダ315が広がることによって、フィルタ本体31の容積が大きくなる。
【0032】
図5に示すように、ベルト部材32は、フィルタ本体31の上下方向の中間付近において、フィルタ本体31を周方向に囲むように環状に形成されている。ベルト部材32の周方向の長さは、フィルタ本体31の外周よりもやや長く形成されている。一方、各支持部材33は、フィルタ本体31の外面において、弾性部材35の近傍と底部311の周縁近傍とを連結するように取り付けられている。各支持部材33は帯状に形成され、フィルタ本体31の周方向において、約180度ずれた位置に配置されている。そして、これら支持部材33に、ベルト部材32が固定されることで、ベルト部材32の上下方向の位置が保持される。
【0033】
フィルタ本体31を形成する材料は特には限定されないが、ポリエステルなどのフィルタ材として利用される公知の多孔質の織布、不織布などの柔軟性のある材料で形成することができる。すなわち、樹脂片等を捕捉し、空気が流通するような材料であればよい。また、1種類の材料だけでなく、複数の材料でフィルタ本体31を形成することもできる。例えば、フィルタ本体31のうち、開口部312の周囲は吸気管50に取り付けられるため、強度を考慮して気体が通過しない樹脂材料で形成することができる。したがって、フィルタ本体31において、通気性を有さない材料以外の部分が、本発明の通気材料で構成されている。
【0034】
<4.集塵モジュールの動作>
次に、上記のよう構成された集塵モジュールの動作について、
図9~
図11も参照しつつ説明する。まず、
図9に示すように、第1筐体7にフィルタ部材300を設置する。すなわち、第1筐体7の扉を開き、フィルタ部材300の開口部312に吸気管50を差し込む。開口部312の周縁部には弾性部材35が配置されているため、弾性部材35を伸ばしながら、開口部312を押し広げ、吸気管50を挿入する。次に、フィルタ本体31の底部311が設置部材73の上面に接するように、吸気管50の挿入長さを調整しながら、フィルタ本体31の上下の位置を調整する。こうして、フィルタ本体31の位置が決まると、フィルタ本体31の外周面に環状の固定部材98を取り付け、締め付ける。これにより、フィルタ本体31の開口部312が固定部材98によって吸気管50の外周面に押し付けられる。その結果、吸気管50とフィルタ本体31とが緊密に固定される。
【0035】
この状態で、フィルタ本体31の底部311の中央付近は、凸部75によって上方に押し上げられ、内部空間側に凸となるように変形し、凸部318が形成される(
図11参照)。
【0036】
続いて、第1筐体7の扉を閉じた後、ブロアモータ91を駆動し、モジュールBから、樹脂片が含まれた空気を吸引する。
図10に示すように、この空気の一部F1は吸気管50を介して、フィルタ本体31に流れ込み、フィルタ本体31の底部311から設置部材73を介して排気管76に向かって吸引される。この過程において、
図11に示すように、樹脂片Sはフィルタ本体31の底部311に溜まっていく。このとき、樹脂片Sは底部311に形成された凸部318の周囲に溜まっていく。また、凸部318に衝突した樹脂片Sは、凸部318から転がり、その周囲に溜まっていく。
【0037】
図10に示すように、排気管76には、フィルタ部材300の内部を通過する空気F1だけでなく、フィルタ部材300の周囲の空気F2も吸引される。これは、設置部材73と排気口721との間に隙間が形成されているからであり、この隙間と連通するフィルタ部材300の周囲の空気も吸引されるからである。そのため、第1筐体7の内部において、フィルタ部材300の周囲は負圧になり、これによって、フィルタ本体31に流入する空気は、底部311に向かうだけでなく(F1)、底部311以外の外周面からフィルタ部材300から外部に流出する(F2)。そのため、樹脂片Sはフィルタ本体31の底部311だけでなく、外周面においても捕捉される。
【0038】
こうして、フィルタ本体31を通過した空気は、
図3に示すように、排気口721から排気管76を介して第2筐体8に流れ込み、上流領域84から補助フィルタ部材81を介して下流領域85に流れていく。このとき、補助フィルタ部材81を通過する空気には樹脂片はほぼ残留していないが、仮にフィルタ部材300が損傷するなど不具合が生じたときには、補助フィルタ部材81によって樹脂片が捕捉される。そして、この空気は第3筐体9へ流れ、排気管92から集塵モジュール200の外部に排出される。
【0039】
フィルタ部材300は定期的に交換される。この場合、第1筐体7の扉を開き、固定部材98を取り外した後、フィルタ部材300を吸気管50から取り外す。その後、
図12に示すように、紐状部材34を引っ張れば、開口部312を簡単に閉じることができ、樹脂片がフィルタ部材300から外部に漏れるのを防止することができる。このように処理されたフィルタ部材300は適宜廃棄することができる。
【0040】
<5.特徴>
以上のように構成された集塵モジュール200においては、次のような効果を得ることができる。
【0041】
(1)フィルタ本体31が袋状に形成されているため、樹脂片を捕捉した後、吸気管50から取り外せば、そのまま廃棄することができる。したがって、フィルタ部材300の交換時の樹脂片の飛散を防止することができる。また、交換時には、フィルタ部材300の開口部312を吸気管50に取り付け、底部311を設置部材73上に配置するだけであるため、交換も容易である。したがって、本実施形態に係るフィルタ部材300を用いれば、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0042】
(2)本実施形態では、フィルタ部材300を設置部材73上に配置した上で、吸引を行っている。そのため、フィルタ部材300の設置の方向(重力方向)と吸引の方向が一致するため、第1筐体7内でフィルタ部材300が動くのを抑制することができる。その結果、空気の吸引及び樹脂片の捕捉を安定的に行うことができる。特に、本実施形態のフィルタ部材300は、平坦な底部311を有しているための、フィルタ部材300を設置部材73上に安定的に配置することができる。
【0043】
(3)
図10に示すように、設置部材73と排気口721との間に隙間が形成されているため、この隙間からも吸引された空気F2が流入する。そのため、第1筐体7の内部では、フィルタ部材300の周囲を負圧にすることができるため、フィルタ本体31の底部311以外の外周面からも空気が排出される。その結果、樹脂片は、フィルタ本体31の底部311だけでなく、外周面においても捕捉することができる。したがって、樹脂片の捕捉面積を大きくすることができる。
【0044】
また、フィルタ部材300の使用初期は底部311からの空気の吸引力が大きいため、樹脂片は主として底部311に溜まっていくが、底部311に樹脂片が積層し目詰まりした場合でも、フィルタ本体31の外周面を利用して樹脂片の捕捉ができるため、フィルタ部材300の稼働時間を長くすることができる。
【0045】
(4)設置部材73に凸部75を形成しているため、フィルタ本体31の底部311は、吸引も手伝って、この凸部75に沿うように内部空間側に凸となるように変形し、凸部318が形成される。このため、
図11に示すように、捕捉された樹脂片Sは、上述したように、主として底部311における凸部318の周囲に溜まっていく。その結果、溜まった樹脂片Sで凸部318の周囲が覆われても、凸部318において空気の流通が可能であるため、フィルタ機能が低下するのを抑制することができる。したがって、フィルタ部材300の稼働時間を長くすることができる。
【0046】
(5)フィルタ本体31の外周を囲むようにベルト部材32が設けられているため、フィルタ本体31が膨れすぎるなど、フィルタ本体31の形状が崩れないように保持することできる。
【0047】
(6)万一、フィルタ部材300が破断するなどして、フィルタ機能が低下しても、補助フィルタ部材81が設けられているため、樹脂片を確実に捕捉することができる。
【0048】
<6.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は適宜組み合わせることができる。
【0049】
(1)フィルタ本体31の構造は特には限定されず、少なくとも一部が通気性のある通気材料で形成され、吸気管50が取り付け可能な開口部312が形成されていればよい。したがって、紐状部材34、弾性部材35、ヒダ315、支持部材33、ベルト部材32は、必要に応じて適宜設ければよい。また、フィルタ本体31の形状も特には限定されない。例えば、底部311は必ずしも平坦でなくてもよく、設置部材73上に配置可能な形状であればよく、フィルタ本体31において、この設置部材73上に配置される部分が通気材料で形成されていればよい。
【0050】
(2)上記実施形態では、設置部材73上に凸部75を形成しているが、凸部75の形状は特には限定されず、通気性があり、上方に突出していればよい。例えば、上述したドーム状(半球状)のほか、円錐台状(
図13(a))、円錐状(
図13(b))、円柱状(
図13(c))、多角柱状、多角錘状、多角錘台状等、種々の形状にすることができる。但し、樹脂片を底部311に転がりやすくするため、上部に設ける平坦部分はできるだけ小さいことが好ましい。なお、凸部75は必ずしも必要ではないが、設けた方が上述した原理でフィルタ部材300の稼働時間を長くできることが、本発明者によって確認されている。また、上記実施形態では、設置部材73上に凸部75が別に設けられているが、凸部75は、設置部材73の一部を凸形状にすることによって形成されてもよい。
【0051】
(3)フィルタ部材300の底部311には、設置部材73の凸部75が嵌まる凹部を予め形成しておくこともできる。この場合、凹部の形状は特には限定されないが、上述した凸部75の形状に合わせた形状にすることが好ましい。
【0052】
(4)上記実施形態では、気体の吸引源としてブロアモータを用いているが、特には限定されず、気体を吸引可能であればよい。
【0053】
(5)第1筐体7においては、吸気口としての吸気管50と、排気口721が形成され、フィルタ部材300が設置される設置部材73が設けられていればよい。設置部材73と排気口721との間の隙間は必ずしも必要ではなく、必要に応じて設ければよいが、このような隙間を設けると、上記のようにフィルタ部材300の外周面でも樹脂片を捕捉することができる。
【0054】
(6)補助フィルタ部材81は必ずしも必要ではなく、必要に応じて設ければよい。なお、補助フィルタ部材の種類は特には限定されず、種々の形態のフィルタを用いることができる。
【0055】
(7)上記実施形態に係る樹脂成形装置は、トランスファーモールド法による樹脂成形を行う装置であるが、本発明の集塵装置は、コンプレッションモールド法による樹脂成形を行う装置にも適用可能である。したがって、上述したモジュールA~Cは樹脂成形装置の一例であり、適宜変更することができる。
【0056】
(8)本発明に係るフィルタ部材は、上述した集塵モジュール200に限られず、他の集塵装置にも使用することができる。
【符号の説明】
【0057】
7 :第1筐体(筐体)
31 :フィルタ本体
311 :底部
32 :ベルト部材
34 :紐状部材
50:吸気管(吸気口)
73 :設置部材
75 :凸部
81 :補助フィルタ部材
100 :樹脂成形装置
200 :集塵モジュール(集塵装置)
300 :フィルタ部材
31 :フィルタ本体
311 :底部
312 :開口部
315 :ヒダ
318 :凸部
721 :排気口
B :樹脂成形モジュール