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特開2023-125801圧電振動デバイスの周波数調整方法および圧電振動デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125801
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】圧電振動デバイスの周波数調整方法および圧電振動デバイス
(51)【国際特許分類】
   H03H 3/04 20060101AFI20230831BHJP
   H03H 9/02 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H03H3/04 B
H03H9/02 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030102
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000149734
【氏名又は名称】株式会社大真空
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】丸本 学
【テーマコード(参考)】
5J108
【Fターム(参考)】
5J108AA02
5J108BB02
5J108CC04
5J108CC11
5J108DD02
5J108EE03
5J108EE04
5J108EE07
5J108EE13
5J108FF05
5J108FF11
5J108GG03
5J108GG07
5J108GG14
5J108HH04
5J108HH06
5J108KK06
5J108NA02
5J108NB05
(57)【要約】
【課題】溶融した金属層がボール状の塊となって下地金属層上に残存することを抑制可能な圧電振動デバイスの周波数調整方法を提供する。
【解決手段】水晶振動子100の周波数調整方法において、第2封止部材30の第2励振電極112と対向する第1主面301に、下地金属層36aとこれに積層された金属層36bからなる周波数調整用金属膜36が形成されてなり、第2封止部材30が水晶からなる。第2封止部材30の外部から周波数調整用金属膜36に対して所定間隔を隔てて複数箇所にレーザを照射し、レーザを第2封止部材30の内部を透過させて下地金属層36aを加熱することにより金属層36bの少なくとも一部を溶融によって蒸発させ、第2励振電極112に付着させることにより周波数調整を行う。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板の少なくとも前記振動部が、封止部材によって気密に封止された圧電振動デバイスの周波数調整方法であって、
前記封止部材の前記励振電極と対向する主面に、下地金属層とこれに積層された金属層からなる周波数調整用金属膜が形成されてなり、
前記周波数調整用金属膜が形成される前記封止部材の少なくともその一部が透光性材料からなり、
前記封止部材の外部から前記周波数調整用金属膜に対して所定間隔を隔てて複数箇所にビームを照射し、
前記ビームを前記封止部材の内部を透過させて前記下地金属層を加熱することにより前記金属層の少なくとも一部を溶融によって蒸発させ、前記励振電極に付着させることにより周波数調整を行うことを特徴とする圧電振動デバイスの周波数調整方法。
【請求項2】
請求項1に記載の圧電振動デバイスの周波数調整方法において、
前記ビームが、前記周波数調整用金属膜に対して平面視で線状に照射されることを特徴とする圧電振動デバイスの周波数調整方法。
【請求項3】
請求項2に記載の圧電振動デバイスの周波数調整方法において、
前記ビームの線状の照射が、前記複数箇所のそれぞれにおいて複数回行われることを特徴とする圧電振動デバイスの周波数調整方法。
【請求項4】
励振電極が形成された振動部が、封止部材によって気密に封止された圧電振動デバイスであって、
前記封止部材の前記励振電極に対向する主面に、下地金属層とこれに積層された金属層からなる周波数調整用金属膜が形成されてなり、
前記周波数調整用金属膜は、前記下地金属層の一部が前記金属層で覆われずに露出した露出部を有し、前記露出部が、所定間隔を隔てて複数箇所に形成されていることを特徴とする圧電振動デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧電振動デバイスの周波数調整方法および圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水晶振動子等の圧電振動デバイスの製造工程には周波数調整工程が含まれており、この周波数調整工程によって、水晶振動子の周波数が所定の目標周波数範囲内に調整される(例えば、特許文献1参照)。水晶振動板の振動部を封止部材によって封止した後において周波数調整工程を行う場合、レーザ等のビームが水晶振動子の外部から照射される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5762811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したような圧電振動デバイスの周波数調整に用いられる周波数調整用金属膜は、例えば、圧電振動デバイスの封止部材上に形成された下地金属層と、下地金属層上に形成された金属層とからなる。そして、ビームの照射によって、下地金属層上の金属層を溶融させて蒸発させ、蒸発した金属を水晶振動板の振動部の励振電極に付着させることにより、周波数調整を行うようにしている。しかしながら、溶融した金属層の一部がボール状の塊となって固体化し、下地金属層上に異物として残存する可能性がある。この場合、ボール状の塊となった金属層が下地金属層から剥離し、振動部の励振電極に付着することが懸念される。
【0005】
本発明は上述したような実情を考慮してなされたもので、溶融した金属層がボール状の塊となって下地金属層上に残存することを抑制可能な圧電振動デバイスの周波数調整方法、および圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するための手段を以下のように構成している。すなわち、本発明は、励振電極が形成された振動部を有する圧電振動板の少なくとも前記振動部が、封止部材によって気密に封止された圧電振動デバイスの周波数調整方法であって、前記封止部材の前記励振電極と対向する主面に、下地金属層とこれに積層された金属層からなる周波数調整用金属膜が形成されてなり、前記周波数調整用金属膜が形成される前記封止部材の少なくともその一部が透光性材料からなり、前記封止部材の外部から前記周波数調整用金属膜に対して所定間隔を隔てて複数箇所にビームを照射し、前記ビームを前記封止部材の内部を透過させて前記下地金属層を加熱することにより前記金属層の少なくとも一部を溶融によって蒸発させ、前記励振電極に付着させることにより周波数調整を行うことを特徴とする。
【0007】
上記圧電振動デバイスの周波数調整方法によれば、下地金属層の上側の金属層を溶融させて蒸発させ、蒸発した金属が励振電極に付着することにより、励振電極の質量が増加し、周波数を低い側へシフトさせることができる。この場合、周波数調整用金属膜に対して所定間隔を隔てて複数箇所にビームが照射されるので、周波数調整用金属膜の表面では、金属層と、下地金属層が金属層で覆われずに露出した露出部とが交互に形成される。このため、溶融したが蒸発しなかった金属層の近傍に、溶融せずに残留した金属層が位置しているので、溶融したが蒸発しなかった金属層は、その残留した金属層側へ引き寄せられていき、残留した金属層に付着して固体化する。これにより、溶融したが蒸発しなかった金属層がボール状の塊となって固体化し、下地金属層上に残存することを抑制できる。その結果、ボール状の塊となった金属層が下地金属層から剥離し、振動部の励振電極に付着することを抑制できる。
【0008】
上記圧電振動デバイスの周波数調整方法において、前記ビームが、前記周波数調整用金属膜に対して平面視で線状に照射されることが好ましい。また、前記ビームの線状の照射が、前記複数箇所のそれぞれにおいて複数回行われることが好ましい。
【0009】
また、本発明は、励振電極が形成された振動部が、封止部材によって気密に封止された圧電振動デバイスであって、前記封止部材の前記励振電極に対向する主面に、下地金属層とこれに積層された金属層からなる周波数調整用金属膜が形成されてなり、前記周波数調整用金属膜は、前記下地金属層の一部が前記金属層で覆われずに露出した露出部を有し、前記露出部が、所定間隔を隔てて複数箇所に形成されていることを特徴とする。
【0010】
上記圧電振動デバイスによれば、周波数調整の際、周波数調整用金属膜へのレーザ照射によって、溶融したが蒸発しなかった金属層の近傍に、溶融せずに残留した金属層が位置しているので、溶融したが蒸発しなかった金属層は、その残留した金属層側へ引き寄せられていき、残留した金属層に付着して固体化する。これにより、溶融したが蒸発しなかった金属層がボール状の塊となって固体化し、下地金属層上に残存することを抑制できる。その結果、周波数調整の後、ボール状の塊となった金属層が下地金属層から剥離し、振動部の励振電極に付着することを抑制できる。これに加えて、周波数調整用金属膜の露出部によって露出した下地金属層をゲッタ材として機能させることにより、圧電振動デバイスの内部空間において発生したガスを下地金属層によって捕捉することができる。これにより、ガスの発生に起因する圧電振動デバイスの周波数の経年変化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の圧電振動デバイスの周波数調整方法によれば、周波数調整用金属膜に対して所定間隔を隔てて複数箇所にビームが照射されるので、周波数調整用金属膜の表面では、金属層と、下地金属層が金属層で覆われずに露出した露出部とが交互に形成される。このため、溶融したが蒸発しなかった金属層の近傍に、溶融せずに残留した金属層があるので、溶融したが蒸発しなかった金属層は、その残留した金属層側へ引き寄せられていき、残留した金属層に付着して固体化する。これにより、溶融したが蒸発しなかった金属層がボール状の塊となって固体化し、下地金属層上に残存することを抑制できる。その結果、ボール状の塊となった金属層が下地金属層から剥離し、振動部の励振電極に付着することを抑制できる。
【0012】
また、本発明の圧電振動デバイスによれば、周波数調整の際、周波数調整用金属膜へのレーザ照射によって、溶融したが蒸発しなかった金属層の近傍に、溶融せずに残留した金属層が位置しているので、溶融したが蒸発しなかった金属層は、その残留した金属層側へ引き寄せられていき、残留した金属層に付着して固体化する。これにより、溶融したが蒸発しなかった金属層がボール状の塊となって固体化し、下地金属層上に残存することを抑制できる。その結果、周波数調整の後、ボール状の塊となった金属層が下地金属層から剥離し、振動部の励振電極に付着することを抑制できる。これに加えて、周波数調整用金属膜の露出部によって露出した下地金属層をゲッタ材として機能させることにより、圧電振動デバイスの内部空間において発生したガスを下地金属層によって捕捉することができる。これにより、ガスの発生に起因する圧電振動デバイスの周波数の経年変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態にかかる水晶振動子の各構成を模式的に示した概略構成図である。
図2】水晶振動子の第1封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図3】水晶振動子の第1封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図4】本実施形態にかかる水晶振動板の第1主面側の概略平面図である。
図5】本実施形態にかかる水晶振動板の第2主面側の概略平面図である。
図6】水晶振動子の第2封止部材の第1主面側の概略平面図である。
図7】水晶振動子の第2封止部材の第2主面側の概略平面図である。
図8】本実施形態にかかる水晶振動子の周波数調整方法を模式的に示した概略断面図である。
図9】変形例にかかる周波数調整用金属膜を示す図8相当図である。
図10】周波数調整用金属膜へのレーザ照射方法を模式的に示した概略平面図である。
図11】本実施形態にかかる水晶振動子の周波数調整用金属膜を模式的に示した概略平面図である。
図12】変形例にかかる水晶振動子の第2封止部材の第1主面を示す図6相当図である。
図13】変形例にかかる水晶振動子の周波数調整方法を示す図8相当図である。
図14】第2実施形態にかかる水晶振動子の各構成を模式的に示した概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔第1実施形態〕
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、本発明を適用する圧電振動デバイスが水晶振動子である場合について説明する。
【0015】
まず、本実施形態にかかる水晶振動子100の基本的な構造を説明する。水晶振動子100は、図1に示すように、水晶振動板(圧電振動板)10、第1封止部材20、および第2封止部材30を備えて構成されている。この水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが接合されることによって、略直方体のサンドイッチ構造のパッケージが構成される。すなわち、水晶振動子100においては、水晶振動板10の両主面のそれぞれに第1封止部材20および第2封止部材30が接合されることでパッケージの内部空間(キャビティ)が形成され、この内部空間に振動部11(図4図5参照)が気密封止される。
【0016】
本実施形態にかかる水晶振動子100は、例えば、1.0×0.8mmのパッケージサイズであり、小型化と低背化とを図ったものである。また、小型化に伴い、パッケージでは、キャスタレーションを形成せずに、後述するスルーホールを用いて電極の導通を図っている。また、水晶振動子100は、外部に設けられる外部回路基板(図示省略)に半田を介して電気的に接続されるようになっている。
【0017】
次に、上記した水晶振動子100における水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30の各部材について、図1図7を用いて説明する。なお、ここでは、接合されていないそれぞれ単体として構成されている各部材について説明を行う。図2図7は、水晶振動板10、第1封止部材20および第2封止部材30のそれぞれの一構成例を示しているに過ぎず、これらは本発明を限定するものではない。
【0018】
本実施形態にかかる水晶振動板10は、図4図5に示すように、水晶からなる圧電基板であって、その両主面(第1主面101、第2主面102)がポリッシュ加工(鏡面加工)によって平坦平滑面に形成されている。本実施形態では、水晶振動板10として、厚みすべり振動を行うATカット水晶板が用いられている。図4図5に示す水晶振動板10では、水晶振動板10の両主面101,102が、XZ´平面とされている。このXZ´平面において、水晶振動板10の短手方向(短辺方向)に平行な方向がX軸方向とされ、水晶振動板10の長手方向(長辺方向)に平行な方向がZ´軸方向とされている。なお、ATカットは、人工水晶の3つの結晶軸である電気軸(X軸)、機械軸(Y軸)、および光学軸(Z軸)のうち、Z軸に対してX軸周りに35°15′だけ傾いた角度で切り出す加工手法である。ATカット水晶板では、X軸は水晶の結晶軸に一致する。Y´軸およびZ´軸は、水晶の結晶軸のY軸およびZ軸からそれぞれ概ね35°15′傾いた(この切断角度はATカット水晶振動板の周波数温度特性を調整する範囲で多少変更してもよい)軸に一致する。Y´軸方向およびZ´軸方向は、ATカット水晶板を切り出すときの切り出し方向に相当する。
【0019】
水晶振動板10の両主面101,102には、一対の励振電極(第1励振電極111、第2励振電極112)が形成されている。水晶振動板10は、略矩形に形成された振動部11と、この振動部11の外周を取り囲む外枠部12と、振動部11と外枠部12とを連結することで振動部11を保持する保持部(連結部)13とを有している。すなわち、水晶振動板10は、振動部11、外枠部12および保持部13が一体的に設けられた構成となっている。保持部13は、振動部11の+X方向かつ-Z´方向に位置する1つの角部のみから、-Z´方向に向けて外枠部12まで延びている(突出している)。そして、振動部11と外枠部12との間には、水晶振動板10の厚み方向に貫通する貫通部(スリット)10aが設けられている。本実施形態では、水晶振動板10には、振動部11と外枠部12とを連結する保持部13が1つのみ設けられており、貫通部10aが振動部11の外周囲を囲うように連続して形成されている。
【0020】
第1励振電極111は振動部11の第1主面101側に設けられ、第2励振電極112は振動部11の第2主面102側に設けられている。第1励振電極111、第2励振電極112には、これらの励振電極を外部電極端子に接続するため入出力用の引出配線(第1引出配線113、第2引出配線114)が接続されている。入力側の第1引出配線113は、第1励振電極111から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン14に繋がっている。出力側の第2引出配線114は、第2励振電極112から引き出され、保持部13を経由して、外枠部12に形成された接続用接合パターン15に繋がっている。
【0021】
水晶振動板10の両主面(第1主面101、第2主面102)には、水晶振動板10を第1封止部材20および第2封止部材30に接合するための振動板側封止部がそれぞれ設けられている。第1主面101の振動板側封止部としては振動板側第1接合パターン121が形成されており、第2主面102の振動板側封止部としては振動板側第2接合パターン122が形成されている。振動板側第1接合パターン121および振動板側第2接合パターン122は、外枠部12に設けられており、平面視で環状に形成されている。
【0022】
また、水晶振動板10には、図4図5に示すように、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第1スルーホール161は、外枠部12の4隅(角部)の領域にそれぞれ設けられている。第2スルーホール162は、外枠部12であって、振動部11のZ´軸方向の一方側(図4図5では、-Z´方向側)に設けられている。第1スルーホール161の周囲には、それぞれ接続用接合パターン123が形成されている。また、第2スルーホール162の周囲には、第1主面101側では接続用接合パターン124が、第2主面102側では接続用接合パターン15が形成されている。
【0023】
第1スルーホール161および第2スルーホール162には、第1主面101と第2主面102とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第1スルーホール161および第2スルーホール162それぞれの中央部分は、第1主面101と第2主面102との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。振動板側第1接合パターン121の外周縁は、水晶振動板10(外枠部12)の第1主面101の外周縁に近接して設けられている。振動板側第2接合パターン122の外周縁は、水晶振動板10(外枠部12)の第2主面102の外周縁に近接して設けられている。なお、本実施形態では、第1主面101と第2主面102との間を貫通する5つのスルーホールが形成されている例を挙げたが、スルーホールを形成せずに、第1封止部材20の側面の一部を切り欠き、当該切り欠かれた領域の内壁面に電極が被着したキャスタレーションを形成してもよい(第2封止部材30についても同様)。
【0024】
第1封止部材20は、図2図3に示すように、透光性材料である1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第1封止部材20の第2主面202(水晶振動板10に接合する面)はポリッシュ加工(鏡面加工)によって平坦平滑面に形成されている。なお、第1封止部材20は振動部を有するものではないが、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用いることで、水晶振動板10と第1封止部材20の熱膨張率を同じにすることができ、水晶振動子100における熱変形を抑制することができる。また、第1封止部材20におけるX軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとされている。
【0025】
第1封止部材20の第1主面201(水晶振動板10に面しない外方の主面)には、図2に示すように、配線用の第1、第2端子22,23と、シールド用(アース接続用)の金属膜28とが形成されている。配線用の第1、第2端子22,23は、水晶振動板10の第1、第2励振電極111,112と、第2封止部材30の外部電極端子32とを電気的に接続するための配線として設けられている。第1、第2端子22,23は、Z´軸方向の両端部に設けられており、第1端子22が、+Z´方向側に設けられ、第2端子23が、-Z´方向側に設けられている。第1、第2端子22,23は、X軸方向に延びるように形成されている。第1端子22および第2端子23は、略矩形状に形成されている。
【0026】
金属膜28は、第1、第2端子22,23の間に設けられており、第1、第2端子22,23とは所定の間隔を隔てて配置されている。金属膜28は、第1封止部材20の第1主面201の第1、第2端子22,23が形成されていない領域のうち、ほとんど全ての領域に設けられている。金属膜28は、第1封止部材20の第1主面201の+X方向の端部から-X方向の端部にわたって設けられている。
【0027】
第1封止部材20には、図2図3に示すように、第1主面201と第2主面202との間を貫通する6つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第3スルーホール211が、第1封止部材20の4隅(角部)の領域に設けられている。第4、第5スルーホール212,213は、図2図3の+Z´方向および-Z´方向にそれぞれ設けられている。
【0028】
第3スルーホール211および第4、第5スルーホール212,213には、第1主面201と第2主面202とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、スルーホールそれぞれの内壁面に沿って形成されている。また、第3スルーホール211および第4、第5スルーホール212,213それぞれの中央部分は、第1主面201と第2主面202との間を貫通した中空状態の貫通部分となる。そして、第1封止部材20の第1主面201の対角に位置する2つの第3スルーホール211,211(図2図3の+X方向かつ+Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211と、-X方向かつ-Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211)の貫通電極同士が、金属膜28によって電気的に接続されている。また、-X方向かつ+Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211の貫通電極と、第4スルーホール212の貫通電極とが、第1端子22によって電気的に接続されている。+X方向かつ-Z´方向の角部に位置する第3スルーホール211の貫通電極と、第5スルーホール213の貫通電極とが、第2端子23によって電気的に接続されている。
【0029】
第1封止部材20の第2主面202には、水晶振動板10に接合するための封止部材側第1封止部としての封止部材側第1接合パターン24が形成されている。封止部材側第1接合パターン24は、平面視で環状に形成されている。また、第1封止部材20の第2主面202では、第3スルーホール211の周囲に接続用接合パターン25がそれぞれ形成されている。第4スルーホール212の周囲には接続用接合パターン261が、第5スルーホール213の周囲には接続用接合パターン262が形成されている。さらに、接続用接合パターン261に対して第1封止部材20の長軸方向の反対側(-Z´方向側)には接続用接合パターン263が形成されており、接続用接合パターン261と接続用接合パターン263とは配線パターン27によって接続されている。封止部材側第1接合パターン24の外周縁は、第1封止部材20の第2主面202の外周縁に近接して設けられている。
【0030】
第2封止部材30は、図6図7に示すように、透光性材料である1枚のATカット水晶板から形成された直方体の基板であり、この第2封止部材30の第1主面301(水晶振動板10に接合する面)および第2主面302(水晶振動板10に面しない外方の主面)はポリッシュ加工(鏡面加工)によって平坦平滑面に形成されている。なお、第2封止部材30においても、水晶振動板10と同様にATカット水晶板を用い、X軸、Y軸およびZ´軸の向きも水晶振動板10と同じとすることが望ましい。
【0031】
この第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動板10に接合するための封止部材側第2封止部としての封止部材側第2接合パターン31が形成されている。封止部材側第2接合パターン31は、平面視で環状に形成されている。封止部材側第2接合パターン31の外周縁は、第2封止部材30の第1主面301の外周縁に近接して設けられている。
【0032】
また、第2封止部材30の第1主面301には、水晶振動子100の周波数調整に用いられる周波数調整用金属膜36が形成されている。周波数調整用金属膜36は、溶融温度(融点)が異なる2種類の金属による2層構造になっており、図8に示すように、下地金属層36aと、この下地金属層36a上に積層された金属層36bとを備えている。下地金属層36aの厚みは、例えば50nmであり、金属層36bの厚みは、例えば100nmである。なお、下地金属層36aの厚みは、50~500nmであることが好ましく、金属層36bの厚みは、100~500nmであることが好ましい。下地金属層36aの厚みが、50nm未満の場合、レーザの照射に耐えられないため、好ましくない。また、下地金属層36aの厚みが、500nmよりも大きい場合、ウエハが反ってしまい、厚膜化により生産効率が低下してしまうため、好ましくない。また、金属層36bの厚みが、100nm未満の場合、レーザの照射に耐えられないため、好ましくない。また、金属層36bの厚みが、500nmよりも大きい場合、ウエハが反ってしまい、厚膜化により生産効率が低下してしまうため、好ましくない。
【0033】
周波数調整用金属膜36においては下地金属層36aの溶融温度が金属層36bの溶融温度よりも高くされており、かつ、下地金属層36aと金属層36bとの溶融温度差は1500℃以上であることが好ましい。さらに、金属層36bは、第2励振電極112と同じ材料(例えばAu)からなり、この場合、Auの溶融温度が1064℃であることから、下地金属層36aは、例えばW(タングステン:溶融温度3387℃)、Mo(モリブデン:溶融温度2623℃)、Ta(タンタル:溶融温度3020℃)、Re(レニウム:溶融温度3186℃)の何れかを用いることができる。
【0034】
周波数調整用金属膜36は、第2励振電極112と所定の間隔を隔てて対向する位置に設けられている。第2励振電極112と周波数調整用金属膜36との間の鉛直方向(Y軸方向)における距離L1が2~200μmになっている。
【0035】
第2封止部材30の第1、第2主面301,302は、ポリッシュ加工による平滑面になっており、第1、第2主面301,302の算術平均粗さRaが1nm以下になっている。また、周波数調整用金属膜36の金属層36bの表面の算術平均粗さRaが3nm以下になっている。
【0036】
第2封止部材30の第2主面302には、水晶振動子100の外部に設けられる外部回路基板に電気的に接続する4つの外部電極端子32が設けられている。外部電極端子32は、第2封止部材30の第2主面302の4隅(隅部)にそれぞれ位置する。
【0037】
第2封止部材30には、図6図7に示すように、第1主面301と第2主面302との間を貫通する4つのスルーホールが形成されている。具体的には、4つの第6スルーホール33は、第2封止部材30の4隅(角部)の領域に設けられている。第6スルーホール33には、第1主面301と第2主面302とに形成された電極の導通を図るための貫通電極が、第6スルーホール33それぞれの内壁面に沿って形成されている。このように第6スルーホール33の内壁面に形成された貫通電極によって、第1主面301に形成された電極と、第2主面302に形成された外部電極端子32とが導通されている。また、第6スルーホール33それぞれの中央部分は、第1主面301と第2主面302との間を貫通した中空状態の貫通部分となっている。また、第2封止部材30の第1主面301では、第6スルーホール33の周囲には、それぞれ接続用接合パターン34が形成されている。
【0038】
上記構成の水晶振動板10、第1封止部材20、および第2封止部材30を含む水晶振動子100では、水晶振動板10と第1封止部材20とが振動板側第1接合パターン121および封止部材側第1接合パターン24を重ね合わせた状態で拡散接合され、水晶振動板10と第2封止部材30とが振動板側第2接合パターン122および封止部材側第2接合パターン31を重ね合わせた状態で拡散接合されて、図1に示すサンドイッチ構造のパッケージが製造される。これにより、パッケージの内部空間、つまり、振動部11の収容空間が気密封止される。
【0039】
この際、上述した接続用接合パターン同士も重ね合わせられた状態で拡散接合される。そして、接続用接合パターン同士の接合により、水晶振動子100では、第1励振電極111、第2励振電極112、外部電極端子32の電気的導通が得られるようになっている。具体的には、第1励振電極111は、第1引出配線113、配線パターン27、第4スルーホール212、第1端子22、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。第2励振電極112は、第2引出配線114、第2スルーホール162、第5スルーホール213、第2端子23、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、外部電極端子32に接続される。また、金属膜28は、第3スルーホール211、第1スルーホール161、および第6スルーホール33を順に経由して、アース接続(グランド接続、外部電極端子32の一部を利用)されている。
【0040】
水晶振動子100において、各種接合パターンは、複数の層が水晶板上に積層されてなり、その最下層側からTi(チタン)層とAu(金)層とが蒸着またはスパッタリングにより形成されているものとすることが好ましい。また、水晶振動子100に形成される他の配線や電極も、接合パターンと同一の構成とすれば、接合パターンや配線および電極を同時にパターニングでき、好ましい。
【0041】
上述のように構成された水晶振動子100では、水晶振動板10の振動部11を気密封止する封止部(シールパス)115,116は、平面視で、環状に形成されている。シールパス115は、上述した振動板側第1接合パターン121および封止部材側第1接合パターン24の拡散接合(Au-Au接合)によって形成され、シールパス115の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。同様に、シールパス116は、上述した振動板側第2接合パターン122および封止部材側第2接合パターン31の拡散接合(Au-Au接合)によって形成され、シールパス116の外縁形状および内縁形状が略八角形に形成されている。
【0042】
次に、本実施形態にかかる水晶振動子100の周波数調整方法について、図8を参照して説明する。本実施形態の周波数調整は、水晶振動板10の振動部11の第2励振電極112の質量を調整して発振周波数を所望の値に調整する工程になっている。周波数調整は、水晶振動子100の製造工程において、ウエハ状態の水晶振動子100のそれぞれに対して行われるが、ウエハ状態から個片化された水晶振動子100のそれぞれに対して行ってもよい。
【0043】
具体的には、図8に示すように、第2封止部材30の外部から周波数調整用金属膜36に対してレーザを照射し、レーザを第2封止部材30の内部を透過させて下地金属層36aを加熱することにより金属層36bの少なくとも一部を溶融によって蒸発(気化)させ、蒸発した金属を第2励振電極112に付着させることにより周波数調整を行う。つまり、レーザによって、下地金属層36aの上側の金属層36bを溶融させて蒸発させ、蒸発した金属が第2励振電極112に付着することにより、第2励振電極112の質量が増加し、周波数が低い側へシフトする。
【0044】
第2封止部材30に対してレーザは垂直に照射される。レーザとしては、水晶からなる第2封止部材30を透過することが可能な可視光レーザが用いられる。詳細には、波長が約532nmのグリーンレーザを用いることが可能である。レーザの出力は、周波数調整用金属膜36の下地金属層36aを貫通しないような値に調整される。レーザによって下地金属層36aが加熱され、これに伴って下地金属層36aの上側の金属層36bも加熱される。上述したように、下地金属層36aの溶融温度が、金属層36bの溶融温度よりも高いため、下地金属層36aが金属層36bの溶融温度よりも高い温度まで加熱されると、金属層36bが溶融し、溶融した金属層36bの一部が蒸発する。水晶振動子100の内部は真空であるため、蒸発した金属が略直線的に上方へ移動し、第2励振電極112の表面112aに到達すると、第2励振電極112の表面112aで冷却され、固体化する。これにより、周波数調整用金属膜36から蒸発した金属が第2励振電極112の表面112aに付着する。
【0045】
なお、金属層36bは複数の金属層による多層構造としてもよく、この場合、金属層36bに、Au以外にAg(銀:溶融温度962℃)やAl(アルミニウム:溶融温度660℃)を用いることができる。金属層36bを多層構造とする場合は、最上層の金属層が第2励振電極112と同じ材料(例えばAu)によって形成されていればよい。また、下地金属層36aについても複数の金属層による多層構造としてもよく、この場合、溶融温度の高い金属層(例えばW層)ほど下層(第2封止部材30に近い側)に配置し、溶融温度の低い金属層(例えばMo層)ほど上層(金属層36bに近い側)に配置することが好ましい。
【0046】
また、下地金属層36aと第2封止部材30との間には、補助金属層36d(図9参照)が形成されていてもよい。このとき、水晶との密着性が高い金属、例えばTi(チタン)、Cr(クロム)、Ni(ニッケル)等を補助金属層36dとすることで、周波数調整用金属膜36と第2封止部材30との密着性を高めることができる。なお、補助金属層36dは、その溶融温度が金属層36bの溶融温度よりも十分に高いことが求められるが、下地金属層36aのように金属層36bとの溶融温度差が1500℃以上であることは求められない。例えば、補助金属層36dをTi、金属層36bをAuとした場合、Tiの溶融温度は1672℃であり、Auとの溶融温度差は約600℃となる。周波数調整時のレーザ照射によって、補助金属層36dにおいて若干の溶融が生じたとしても、補助金属層36dの上に下地金属層36aが存在することによって、溶融した補助金属層36dが第2励振電極112に飛散することは防止できる。
【0047】
また、レーザ照射の熱によって溶融した補助金属層36dが上層の下地金属層36aに拡散し、下地金属層36aの溶融温度が低下する虞があるが、これについても、下地金属層36aの膜厚に対して補助金属層36dの膜厚を薄くすることにより、下地金属層36aを溶融させずにレーザ照射することが可能である(金属層36bだけを蒸発させることができる)。
【0048】
下地金属層36aに照射するレーザのパルス数、掃引距離、掃引回数等を制御することによって、第2励振電極112に付着する金属の質量を制御することができ、周波数調整量を制御することができる。例えば、レーザの出力を低くしてパルス間隔を狭くして連続して照射することによって、下地金属層36aを効率よく加熱して金属層36bのみを蒸発させることができる。この場合、レーザの掃引距離に応じた周波数調整量を得ることが可能になり、高精度の周波数調整が可能になる。
【0049】
周波数調整用金属膜36へのレーザ照射は、レーザスポットSPを掃引しながら線状に照射することで行われる。図10に示すように、レーザスポットSPの掃引による照射ラインLNを平行に並べることによって、周波数調整用金属膜36の所望の領域にレーザ照射が行われるようになっている。このとき、レーザスポットSPの掃引方向(矢印A方向)が、全ての照射ラインLNにおいて同一となっている。各照射ラインLNに対してはレーザスポットSPの掃引が複数回繰り返して行われ、1ライン分の照射ラインLNに対して複数回のレーザ掃引が行われた後、隣の照射ラインLNに対してのレーザ掃引が行われる。また、レーザ掃引のピッチ(掃引方向と直交する方向の間隔)P1が、レーザスポットSPの直径(照射径)D1よりも大きく設定されており(P1>D1)、掃引方向と直交する方向で隣り合う照射ラインLN同士が、平面視において互いに干渉しない(重なり合わない)。
【0050】
このような周波数調整用金属膜36へのレーザ照射によって、下地金属層36aが加熱され、下地金属層36aの上側の金属層36bが溶融・蒸発する。金属層36bが蒸発した領域では下地金属層36aが露出する。そして、周波数調整後、図11に示すように、周波数調整用金属膜36に、下地金属層36aの一部が金属層36bで覆われずに露出した露出部361が形成される。露出部361は、線状に形成されており、所定間隔を隔てて複数箇所に形成されている。露出部361は、図10に示す照射ラインLNに対応する位置に形成されており、周波数調整用金属膜36の表面では、金属層36bと露出部361とがストライプ状に交互に形成されている。
【0051】
ここで、隣り合う照射ラインLN同士が互いに重なり合うように、周波数調整用金属膜36へのレーザ照射を行った場合(図10において、P1<D1の場合)、ほとんど全ての金属膜36bが溶融してしまう可能性がある。この場合、溶融した金属層36bの一部がボール状の塊(Auボール)となって固体化し、下地金属層36a上に異物として残存する可能性がある。そして、周波数調整後、ボール状の塊となった金属層36bが下地金属層36aから剥離し、第2励振電極112に付着する可能性がある。
【0052】
これに対し、本実施形態によれば、隣り合う照射ラインLN同士が重なり合わないように、周波数調整用金属膜36へのレーザ照射が行われ、周波数調整用金属膜36の表面では、金属層36bと露出部361とがストライプ状に交互に形成される(図11参照)。このため、溶融したが蒸発しなかった金属層36bの近傍に、溶融せずに残留した金属層36bが位置しているので、溶融したが蒸発しなかった金属層36bは、その残留した金属層36b側へ引き寄せられていき、残留した金属層36bに付着して固体化する。これにより、溶融したが蒸発しなかった金属層36bがボール状の塊(Auボール)となって固体化し、下地金属層36a上に残存することを抑制できる。その結果、ボール状の塊となった金属層36bが下地金属層36aから剥離し、第2励振電極112に付着することを抑制できる。
【0053】
露出部361の幅(隣り合う金属層36b同士の間隔)は、レーザスポットSPの直径(照射径)D1に対応した大きさになっている。本実施形態では露出部361の幅は、レーザスポットSPの直径(照射径)D1に対して僅かに小さくなっている。露出部361の幅が小さくなるほど、レーザの照射条件が厳しくなるため、金属層36bを溶融させるための最低限の照射量や、レーザが下地金属層36aを貫通しないための最大限の照射量を考慮すると、露出部361の幅は、30~55μmであることが好ましく、45~55μmであることがより好ましい。露出部361の幅が30μm以下の場合、レーザの照射条件が厳しくなり、安定した周波数調整が困難になる。一方、露出部361の幅が55μm以上の場合、レーザスポットSPのセンターから、残留した金属層36bまでの距離が大きくなる。そのため、溶融した金属層36bの一部が、残留した金属層36bに引き寄せられる条件を満たせなくなり、固体化したボール状の塊が発生する。
【0054】
また、レーザスポットSPの掃引による照射ラインLN(図10参照)に対応する部分の金属層(露出部361が形成される位置の金属層)36bを、それ以外の部分の金属層36bに比べて予め薄肉に形成しておくことが好ましい。このような薄肉部および厚肉部を金属層36bに設けることで、金属層36bの厚肉部のほうが薄肉部よりも熱容量が相対的に大きくなる。これにより、金属層36bの厚肉部は薄肉部に比べて温まりにくくなるため、相対的に低い温度となる金属層36bの厚肉部に溶融した金属層36bがとどまりやすくなる。その結果、溶融した金属層36bが横方向(掃引方向と直交する方向)へ拡大することを抑制できる。
【0055】
本実施形態の水晶振動子100の周波数調整方法によれば、下地金属層36aの上側の金属層36bを溶融させて蒸発させ、蒸発した金属が第2励振電極112に付着することにより、第2励振電極112の質量が増加し、周波数を低い側へシフトさせることができる。この場合、レーザのパルス数、掃引距離等を制御することによって、所望の周波数調整量を得ることができる。そして、レーザが周波数調整用金属膜36を貫通しないようにすることによって、第2励振電極112にダメージを与えることを抑制できる。これにより、第1、第2封止部材20,30によって水晶振動板10の振動部11を封止した後においても水晶振動子100の特性を著しく低下させることなく周波数調整を行うことができる。
【0056】
本実施形態では、下地金属層36aを貫通させないようにレーザを照射しており、レーザが周波数調整用金属膜36を貫通しないため、第2励振電極112にダメージを与えることをより確実に回避できる。これにより、第1、第2封止部材20,30によって水晶振動板10の振動部11を封止した後においても水晶振動子100の特性を低下させることなく周波数調整を容易に行うことができる。
【0057】
また、本実施形態では、下地金属層36aの溶融温度と、金属層36bの溶融温度との差が、1500℃以上になっており、レーザの照射によって、金属層36bの溶融温度以上、かつ下地金属層36aの溶融温度以下の温度に下地金属層36aを加熱することにより、下地金属層36aは溶融せず、金属層36bのみが溶融し、溶融した金属の一部を蒸発させることができる。蒸発した金属が第2励振電極112に付着することにより、第2励振電極112の質量が増加し、周波数を低い側へシフトさせることができる。これにより、第1、第2封止部材20,30によって水晶振動板10の振動部11を封止した後においても水晶振動子100の特性を低下させることなく周波数調整を容易に行うことができる。なお、下地金属層36aの溶融温度が金属層36bの溶融温度より大きくても、その溶融温度差が小さければ、金属層36bのみを溶融させることは困難となり、下地金属層36aの溶融が同時に起こりうる。
【0058】
本実施形態では、第2封止部材30の第1主面301、および当該第1主面301の反対側の第2主面302が、平滑面になっており、レーザが第2封止部材30の第2主面302から入射する際、およびレーザが第2封止部材30の第1主面301から出射する際、レーザの反射や屈折を抑制するこができ、レーザのエネルギー損失を低減することができる。これにより、第1、第2封止部材20,30によって水晶振動板10の振動部11を封止した後においても、レーザのパルス数、掃引距離、掃引回数等に応じた高精度の周波数調整を行うことができる。
【0059】
また、金属層36bが、第2励振電極112と同じAu(金)によって形成されており、金属層36bが第2励振電極112と同じ材料であるため、周波数の調整前後で特性が変化しないので、封止後の水晶振動子100の特性の変動を抑制することができる。
【0060】
また、下地金属層36aが、W(タングステン)等によって形成されており、水晶振動子100の内部空間に露出した下地金属層36aをゲッタ材として機能させることにより、水晶振動子100の内部空間において発生したガスを下地金属層36aによって捕捉することができる。なお、下地金属層36aと同じ金属層(例えばW層)37(図12参照)を下地金属層36aとは別領域に単独の層として形成し、この金属層37をゲッタ材として機能させてもよい。この場合の金属層37は、第2励振電極112と対向しない領域に形成することが好ましい。
【0061】
また、レーザとして、例えば水晶やガラスからなる第2封止部材30に対する吸収率が低く、かつ透過率が高い可視光レーザを使用することにより、パワーの損失や第2封止部材30へのダメージを抑えることができるので、周波数調整に好適である。
【0062】
また、水晶振動板10の振動部11を封止した空間が真空になっており、蒸発した金属を略直線的に移動させることができるので、周囲への飛散を抑制することができる。また、蒸発した金属の温度を下げることなく第2励振電極112に付着させることができる。
【0063】
本実施形態では、第2励振電極112と周波数調整用金属膜36との間の鉛直方向における距離L1が2~200μmになっている。このように、第2励振電極112と周波数調整用金属膜36との距離L1を微小にすることで、周波数調整用金属膜36から蒸発した金属を略直線的に移動させて、周囲へ飛散することを抑制できる。これにより、蒸発した金属を確実に第2励振電極112に付着させることができ、第1、第2封止部材20,30によって水晶振動板10の振動部11を封止した後においても、高精度の周波数調整を容易に行うことができる。
【0064】
また、平面視で、周波数調整用金属膜36の外周縁が、第2励振電極112の外周縁よりも内側に位置しているので、外部衝撃を受けて振動部11が撓んだ際に、周波数調整用金属膜36の下地金属層36aの露出している部分が第2励振電極112と接触した場合であっても、下地金属層36aと第2励振電極112との付着を防止することができる。さらに、周波数調整用金属膜36から蒸発した金属が第2励振電極112の外側へ飛散することを抑制でき、蒸発した金属を確実に第2励振電極112に付着させることができる。これにより、第1、第2封止部材20,30によって水晶振動板10の振動部11を封止した後においても、高精度の周波数調整を容易に行うことができる。
【0065】
本実施形態では、水晶振動子100は、水晶振動板10の振動部11の第1主面側を覆う第1封止部材20と、水晶振動板10の振動部11の第2主面側を覆う第2封止部材30とを備え、第1封止部材20と水晶振動板10とが接合され、かつ第2封止部材30と水晶振動板10とが接合されることによって、水晶振動板10の振動部11が気密封止された構成になっており、第1封止部材20および第2封止部材30が、水晶からなる。このように、3枚重ね構造の水晶振動子100を用いた場合、水晶振動子100の小型化および薄型化を図ることが可能であるが、そのような小型化および薄型化を図った水晶振動子100において、第1、第2封止部材20,30によって水晶振動板10の振動部11を封止した後であっても、高精度の周波数調整を行うことができる。
【0066】
また、上述した本実施形態の水晶振動子100では、第2封止部材30の第2励振電極112に対向する第1主面301に、周波数調整用金属膜36が形成されてなり、周波数調整用金属膜36は、下地金属層36aの一部が金属層36bで覆われずに露出した露出部361を有し、露出部361が、所定間隔を隔てて複数箇所に形成されている。このように、周波数調整用金属膜36の表面では、金属層36bと露出部361とがストライプ状に交互に形成される(図11参照)。これによれば、周波数調整の際、周波数調整用金属膜36へのレーザ照射によって、溶融したが蒸発しなかった金属層36bの近傍に、溶融せずに残留した金属層36bが位置しているので、溶融したが蒸発しなかった金属層36bは、その残留した金属層36b側へ引き寄せられていき、残留した金属層36bに付着して固体化する。これにより、溶融したが蒸発しなかった金属層36bがボール状の塊(Auボール)となって固体化し、下地金属層36a上に残存することを抑制できる。その結果、周波数調整の後、ボール状の塊となった金属層36bが下地金属層36aから剥離し、第2励振電極112に付着することを抑制できる。
【0067】
これに加えて、周波数調整用金属膜36の露出部361によって露出した下地金属層36aをゲッタ材として機能させることにより、水晶振動子100の内部空間において発生したガスを下地金属層36aによって捕捉することができる。このような下地金属層36aの材料としては、例えばW(タングステン)、Ti(チタン)等が好ましい。これにより、ガスの発生に起因する水晶振動子100の周波数の経年変化を抑制することができる。
【0068】
また、水晶振動板10が、振動部11と、振動部11を囲む外枠部12を備えた構成になっているので、接着剤を用いて封止部材をベースに接合する構成に比べて、第2励振電極112と周波数調整用金属膜36との距離L1を微小にすることができ、上述したように、高精度の周波数調整を行うことができる。
【0069】
今回開示した実施形態はすべての点で例示であって、限定的な解釈の根拠となるものではない。従って、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態のみによって解釈されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて画定される。また、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0070】
上記実施形態では、第2封止部材30の第2励振電極112に対向する第1主面301に周波数調整用金属膜36を設けたが、第2封止部材30には周波数調整用金属膜を設けず、第1封止部材20の第1励振電極111に対向する第2主面202に周波数調整用金属膜を設けてもよい。あるいは、図13に示すように、第1封止部材20の第2主面202に周波数調整用金属膜26を設けるとともに、第2封止部材30の第1主面301に周波数調整用金属膜36を設けてもよい。第1封止部材20の周波数調整用金属膜26は、上記実施形態の第2封止部材30の周波数調整用金属膜36と同様の構成になっている。周波数調整用金属膜26は、例えばW(タングステン)からなる下地金属層26aと、第1励振電極111と同じ材料(例えばAu)からなる金属層26bとが積層された構成になっている。
【0071】
図13に示す変形例によれば、周波数調整用金属膜26,36の両方を用いて周波数調整を行うことができる。水晶振動子100の第1封止部材20側においてもレーザを周波数調整用金属膜26に対し照射することによって、第1封止部材20側と第2封止部材30側の2箇所で周波数調整を行うことができる。この場合、第1封止部材20側と第2封止部材30側の2箇所で同時に周波数調整を行ってもよいし、1箇所ずつ順番に周波数調整を行ってもよい。
【0072】
上記実施形態では、可視光レーザを用いて周波数調整を行ったが、例えば電子ビーム等のようなビームを用いて周波数調整を行ってもよい。この場合、ビームの出力、照射時間等を制御することによって、所望の周波数調整量を得ることができる。
【0073】
上記実施形態では、水晶振動子100の内部空間を真空としたが、例えば低圧の窒素やアルゴン等を水晶振動子100の内部空間に封入してもよい。
【0074】
上記実施形態では、水晶振動板10がATカット水晶板であったが、これ以外のものを用いてもよい。また、水晶振動板10の振動部11が矩形であったが、振動部を音叉型形状としてもよい。
【0075】
上記実施形態では、第1封止部材20および第2封止部材30を水晶板によって形成したが、第1封止部材20および第2封止部材30を、例えば、ガラスによって形成してもよい。この場合、第1封止部材20および第2封止部材30を透過可能な赤外光レーザを用いればよい。赤外光レーザとして、例えば波長が約1064nmのYAGレーザを用いることが可能である。なお、第1封止部材20および第2封止部材30の一部分のみが、水晶やガラス等の透光性材料によって形成されていてもよい。
【0076】
上記実施形態では、水晶振動板10に、振動部11と外枠部12とを連結する保持部13が1つのみ設けられたが、保持部13が2つ以上設けられていてもよい。また、振動部11と外枠部12との間に、水晶振動板10の厚み方向に貫通する貫通部10aが設けられたが、貫通部が設けられていない構成の水晶振動板を用いてもよい。また、上記実施形態では、振動部11と、振動部11を囲む外枠部12を備えた枠体付きの水晶振動板10を用いたが、外枠部を備えていない構成の水晶振動板を用いてもよい。
【0077】
〔第2実施形態〕
上記第1実施形態では、水晶振動板10が第1封止部材20および第2封止部材30の間に挟まれた3枚重ね構造の水晶振動子100を用いたが、これ以外の構造の水晶振動子を用いてもよい。例えば、凹部を有する、セラミックやガラスや水晶等の絶縁材料から成るベースの内部に水晶振動板を収容し、当該ベースに蓋体(リッド)を接合した構造の水晶振動子を用いてもよい。
【0078】
図14は、第2実施形態に係る水晶振動子(圧電振動デバイス)400の各構成を模式的に示した概略構成図である。水晶振動子400は、図14に示すように、凹部401を有するベース40の内部に水晶振動板(振動部)60を収容し、ベース40にリッド50を接合した構造とされている。水晶振動板60には、両主面のそれぞれに第1励振電極601および第2励振電極602が形成されている。
【0079】
水晶振動子400においては、封止部材となるリッド50の裏面(ベース40との対向面)に周波数調整用金属膜51が形成される。周波数調整用金属膜51は、第1実施形態の周波数調整用金属膜36と同様に、下地金属層51aおよび金属層51bを備えて構成されている。また、リッド50はレーザに対する透過率が高い材料(例えば水晶やガラス)により形成され、ベース40にリッド50を接合して水晶振動板60をパッケージ内に封止した後で、リッド50の表面(ベース40との非対向面)からのレーザ照射により下地金属層51aを加熱できるようになっている。
【0080】
これにより、水晶振動子400においても、ベース40の外部から周波数調整用金属膜51に対してレーザを照射し、レーザをベース40の内部を透過させて下地金属層51aを加熱することにより金属層51bの少なくとも一部を溶融によって蒸発(気化)させ、蒸発した金属を励振電極(この例では、第1励振電極601)に付着させることにより周波数調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0081】
100 水晶振動子(圧電振動デバイス)
10 水晶振動板(圧電振動板)
11 振動部
111 第1励振電極
112 第2励振電極
20 第1封止部材(封止部材)
30 第2封止部材(封止部材)
301 第1主面
36 周波数調整用金属膜
36a 下地金属層
36b 金属層
361 露出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
図12
図13
図14