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  • 特開-流体分配供給装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125823
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】流体分配供給装置
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/06 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
F16K11/06 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030139
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(72)【発明者】
【氏名】小原 俊治
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA12
3H067CC55
3H067CC60
3H067DD03
3H067DD12
3H067DD32
3H067DD45
3H067EA05
3H067ED02
3H067GG03
3H067GG27
3H067GG28
(57)【要約】
【課題】ステッピングモータのような高価なモータを用いることなく、また、モータを長期間に亘り使用可能な流体分配供給装置を提供する。
【解決手段】内部の中空部20と連通する複数の排気ポート21を側面に形成した筒状の本体2と、連通する流入口32と流出口33とを形成し、本体2の中空部20に回転可能に嵌装される柱状のプラグ3と、プラグ3と係合する、ゼネバ歯車40を周面に形成した従動伝達軸4と、ゼネバ歯車40の係合溝部41と係合する係合ピン51を有し、駆動機構6によって回転する駆動伝達軸5とを備え、プラグ3は、一端側に従動伝達軸4が係合する係合部30、他端側に作動用の流体の流入口32を形成するとともに、中空部20の内周面に摺接する大径部31の外周面に、作動流体の流出口33及び当該流出口33と連通しない部分に切欠き部34を形成し、当該切欠き部には外部と連通する排気受容口34aを開口するようにしている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部の中空部と連通する複数の排気ポートを側面に形成した筒状の本体と、
連通する流入口と流出口とを形成し、前記本体の中空部に回転可能に嵌装される柱状のプラグと、
該プラグと係合する、ゼネバ歯車を周面に形成した従動伝達軸と、
前記ゼネバ歯車の係合溝部と係合する係合ピンを有し、駆動機構によって回転する駆動伝達軸と、を備え、
前記プラグは、一端に前記従動伝達軸が係合する係合部、他端に作動用の流体の流入口を形成するとともに、前記中空部の内周面に摺接する大径部の外周面に、作動流体の流出口及び当該流出口と連通しない部分に切欠き部を形成し、当該切欠き部には外部と連通する排気受容口を開口する流体分配供給装置。
【請求項2】
前記ゼネバ歯車の係合溝部間の凹弧状部周面には、全体に亘って、突出した補強部を備えるようにした請求項1に記載の流体分配供給装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクチュエータ等にエア等の作動流体を分配して供給する流体分配供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や化学プラントにおいて、材料ガスやエッチングガス等の流量を制御するために、種々の流量計及び流量制御装置が利用されており、これらの流路にはエア等の作動流体によって作動するアクチュエータにより開閉する開閉弁が多用されている。また、薬剤、食品の製造工場においても、使用する流体を分配・供給を行うラインにはアクチュエータで作動する開閉弁が不可欠である。さらに、マッサージチェア等でも人体の複数の部位をマッサージするため作動用エアを、複数のセルに分配供給するための分配装置(ロータリバルブや分配弁)が用いられている(例えば、特許文献1~2)。
【0003】
また、図6に示すマルチバルブボディは、流入ポート90から1種類の流体を流入させ、8つの流出ポート91A~91H(以下、単に流出ポート91という。)に分配して流すことができるもので、流入ポート90と流出ポート91との間には弁座と弁体、例えばダイヤフラムバルブが配設され、弁体を動作させるアクチュエータ92A~92H(以下、単にアクチュエータ92という。)によって、流体の連通遮断を行うようにしている。このマルチボディは、例えば、食品関連や薬剤関連の生産設備で用いられ、流入ポート90から流入する流体を、アクチュエータ92の開閉によって複数の流出ポート91に順次切り替えて流出する使われ方をすることが多い。
【0004】
そして、通常、流出ポート91Aから流出ポート91Hまで順に流体を流すような使い方がなされ、各流出ポート91と流入ポート90との連通は時間は一定とされる。これによって、供給する流体は略同量を各流出ポート91と連通されるチャンバ等の容器へ供給されることとなる。この場合、各流出ポート91を開閉するアクチュエータ92の作動流体供給ポート93A~93H(以下、単に作動流体供給ポート93という。)への作動流体を供給する供給装置は作動流体供給源と接続された上記特許文献1~2に記載されるような分配装置が採用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002-310311号公報
【特許文献2】特開平11-253516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1~2に記載される作動流体の分配供給装置では、供給側と排気側のポートを連通させるために回転体が用いられ、その回転体を回転させる駆動源として、高精度な回転角度制御が可能な所謂ステッピングモータが採用される。
【0007】
しかし、作動流体の圧力・流量によって回転体を回転させるための作動トルクが大きい場合、大型で高価なステッピングモータが必要となるとともに、回転制御と動作のオンオフを頻繁に繰り返すことでステッピングモータにかかる負荷は過大となり、その寿命は短くなる。
【0008】
本発明は、係る点に鑑みなされたもので、ステッピングモータのような高価なモータを用いることなく、また、モータを長期間に亘り使用可能な流体分配供給装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態による流体分配供給装置は、
内部の中空部と連通する複数の排気ポートを側面に形成した筒状の本体と、
連通する流入口と流出口とを形成し、前記本体の中空部に回転可能に嵌装される柱状のプラグと、
該プラグと係合するゼネバ歯車を周面に形成した従動伝達軸と、
前記ゼネバ歯車の係合溝部と係合する係合ピンを有し、駆動機構によって回転する駆動伝達軸と、を備え、
前記プラグは、一端に前記従動伝達軸が係合する係合部、他端に作動用の流体の流入口を形成するとともに、前記中空部の内周面に摺接する大径部の外周面に、作動流体の流出口及び当該流出口と連通しない部分に切欠き部を形成し、当該切欠き部には外部と連通する排気受容口を開口するようにしている。
【0010】
複数の排気ポートと順次連通する作動流体の流出口を備えたプラグを回転させる従動伝達軸は、ゼネバ機構で間歇して動作し、駆動伝達軸は一定回転する駆動機構を採用できる。
【0011】
上記構成において、前記ゼネバ歯車の係合溝部間の凹弧状部周面には、全体に亘って、突出した補強部を備えるようにすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態の流体分配供給装置によれば、ゼネバ機構を用いて複数のアクチュエータを一定間隔で同じ時間だけ作動させることができ、しかも駆動源としては安価で堅牢なモータを使用することができる。また、ゼネバ歯車には、駆動伝達軸の係合ピンが係合する際の負荷により生じる場合がある損傷を低減する補強部を備え、長期間損傷なく稼働せることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態による流体分配供給装置を示し、(a)は一部切欠断面の正面図、(b)は本体部にプラグを嵌着した状態の断面図である。
図2】同流体分配供給装置の回転体であるプラグを示し、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は平面図、(d)は斜視図である。
図3】同流体分配供給装置の従動伝達軸を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は斜視図である。
図4】同流体分配供給装置の駆動伝達軸を示し、(a)は平面図、(b)は正面図、(c)は斜視図である。
図5】同流体分配供給装置の駆動伝達軸と従動伝達軸の係合を説明する平面図で、(a)は駆動伝達軸が0°の状態、(b)は係合ピンが係合溝部の最奥に移動した状態、(c)は係合ピンが係合溝部から離れる瞬間の状態、(d)は駆動伝達軸が360°回転した状態を示す。
図6】流体を8つに分配する開閉弁を備えた流路の例を示し、(a)は上方から見た斜視図、(b)は下方から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明するが、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
【0015】
図1は、本実施形態による流体分配供給装置1を示す。この流体分配供給装置1は、内部の中空部20と連通する複数の排気ポート21を側面に形成した筒状の本体2と、連通する流入口32と流出口33とを形成し、本体2の中空部20に回転可能に嵌装される柱状のプラグ3と、プラグ3と係合する、ゼネバ歯車40を周面に形成した従動伝達軸4と、ゼネバ歯車40の係合溝部41と係合する係合ピン51を有し、駆動機構6によって回転する駆動伝達軸5とを備えている。そして、プラグ3は、一端側に従動伝達軸4が係合する係合部30、他端側に作動用の流体の流入口32を形成するとともに、中空部20の内周面に摺接する大径部31の外周面に、作動流体の流出口33及び当該流出口33と連通しない部分に切欠き部34を形成し、当該切欠き部には外部と連通する排気受容口34aを開口している。
【0016】
<本体2>
本体2は、連通する流入口32と流出口33とを形成したプラグ3嵌装される中空部20を形成した本体2からなる筒状体で、その周面には複数の排気ポート21を形成している。排気ポート21の数は、特に限定するものではないが、本実施形態では8個のポートを形成する。本体2は円柱形状であても良いし、ポートの数に合わせた多角柱形状であってもよい。本実施形態では、ポート数に合わせた八角柱形状としている。
【0017】
本体2の中空部20の一端側の開口端には平板状の台座7が取り付けられ、駆動伝達軸5の一端が回転可能に取り付けられている。また、この台座7には本体2の中空部20から突出するプラグ3の係合部30が貫通する貫通孔70が開口されている。また、中空部20の他端側の開口端はプラグ3の流入口32が形成される他端側を保持する蓋体22が固定される。この蓋体22はボルト等の固定手段(図示省略)で本体に固定され、流入口32と対応する位置に作動流体供給源と接続するための供給ポート22aが形成されている。
【0018】
本体2の中空部20の一端側の開口端の内側には、中区部20内の圧力によって受けるため、プラグ3の回転を補助するための摺動機構が配備されている。この摺動機構は、例えばスラストベアリングを用いることができる。また、プラグ3の他端側の開口端を固定する蓋体22の端部や、一端側先端(従動伝達軸4からの突出端)にも摺動機構を配備することができる。両端に配備する摺動機構は、例えば、単列深溝玉軸受を用いることができる。
【0019】
<プラグ3>
プラグ3は、一端側から係合部30、大径部31及び係合部と略同径で流入口22が形成される他端側とから構成され、本体2の係合部20に回転可能に嵌装される筒状体で、一端側が台座7の貫通孔70から、従動伝達軸4に係合する係合部30が突出するように配備される。
【0020】
プラグ3の他端側は端面に作動用の流体の流入口32が開口され、この流入口32は大径部31の周面に開口される流出口33と連通される。大径部31の周面には流出口33を囲うようにシール部材を装着するための環状シール溝33aが形成されている。流出口33、換言すると大径部31の位置は、本体2に嵌着したとき、流出口33が本体2の排出口21と対応する位置となるように寸法調整されている。
【0021】
大径部31の流出口33以外の周面には、切欠き部34が形成されている。この切欠き部34には外部と連通する排気受容口34aが開口されいる。排気受容口34aは、本体2に嵌着したとき台座7から突出する係合部30近傍に開口した排気吐出口35と連通し、流出口33と連通しない本体の排出口21からアクチュエータから戻る作動流体を外部に排出する。
【0022】
大径部31の一端側の環状端面には上述したスラストベアリングが嵌合される環状溝31aが形成されている。
【0023】
プラグ3の一端側係合部30は、従動伝達軸4の回転を伝達することができれば特にその形状を限定するものではないが、本実施形態では円柱部の先端部を平面に切り欠いた二面幅としている。
【0024】
またプラグ3と台座7の貫通孔70との間隙及び蓋体22のプラグ3保持部分には、作動流体の外部への漏洩を防止するために、Oリング等のシール部材Sが配備されている。
【0025】
<従動伝達軸4>
従動伝達軸4は、プラグ3と係合するゼネバ歯車40を周面に形成している。ゼネバ歯車40は、係合溝部41と歯車部42とからなり、周知の通り、歯車部42の外周面は凹弧状部42aとなっている。従動伝達軸4の中心には、上述したプラグ3の二面幅に合わせた小判状の係合穴部44が開口している。
【0026】
一般に、ゼネバ歯車用いた機構では、駆動伝達軸の係合ピンが従動伝達軸の係合溝部に係合する際、従動伝達軸の位置が若干でもずれると歯車側に負荷が係り、歯車側が破損する場合がある。通常、係合溝部の端部にR部を設け若干のずれを許容するようにしているものの、R取りだけで完全にはズレを許容できない。
【0027】
このような問題を解決するため、本発明の流体分配供給装置1に用いるゼネバ歯車40では歯車部42の凹弧状部42aには、全体に亘って、突出した補強部43を形成するようにしている。この補強部43によって、多少の負荷による歯車部42の破損を有効に防止することができる。この補強部43を容易に形成する観点から、従動伝達軸4を3Dプリンタ(3D金属プリンタ含む)で製作することが好ましい。
【0028】
<駆動伝達軸5>
駆動伝達軸5は、カム50より大径の円盤状基体52、52によってカム50と係合ピン51を挟持し。カム50の中心軸と同軸上に駆動機構6と係合する係合部53を形成されている。
【0029】
カム50は、係合ピン51側に従動伝達軸4のゼネバ歯車40の通過を許容する欠損部50aと、欠損部50a以外の周面に、従動伝達軸4の突出した補強部43に合わせた溝部50bを形成している。
【0030】
カム50の一端面からは駆動機構6側の円盤状基体52を貫通して駆動機構6と係合する係合部53が形成されている。係合部53は駆動機構6の回転を伝達するものであれば、従動伝達軸4と同様、小判状の係合穴部としても構わないが、本実施形態では図4に示すように、駆動機構6の回転軸先端のスプラインに合わせたスプライン穴としている。
【0031】
カム50の他端面からは突出軸54が、反駆動機構6側の円盤状基体52を貫通し、台座7に配設されるベアリング71に嵌合し、駆動伝達軸5を駆動機構6の回転に同期し、スムーズに回転させる。
【0032】
また、係合ピン51は、カム50の欠損部50aの中心を通る半径線上に位置する円柱状である。
【0033】
図5は、駆動機構6によって回転する駆動伝達軸5と、ゼネバ歯車40を周面に形成した従動伝達軸4との動作の説明図である。
【0034】
図5(a)は、係合溝部41に、反時計回りの駆動伝達軸5の係合ピン51が係合を開始した状態を示し、同図(b)に示す位置(駆動伝達軸5、従動伝達軸4及び係合ピン51の中心が一直線上に並ぶ位置)まで従動伝達軸4が回動することで、従動伝達軸4に係合されているプラグ3も同じ角度回動する。(回動量は図例Aの位置で示す。)
【0035】
次いで、同図(c)の位置まで駆動伝達軸5が回動すると、係合ピン51は係合溝部41から離間を始め、従動伝達軸4は停止する。排気ポート21を8箇所有する本実施形態では、ゼネバ歯車40の係合溝部41も8本となり、同図(a)から(c)までの回動で従動伝達軸4及びプラグ3は45°回動する。
【0036】
そして、同図(d)の位置まで駆動伝達軸5が回転(同図(a)から一回転)すると、係合ピン51は、再び係合溝部41と係合を開始し、同様の動作を繰り返す。
【0037】
同図(c)~(d)の間は、従動伝達軸4及びプラグ3は停止しており、その間に作動流体供給源から流入口32、流出口33、排気ポート21を介し、アクチュエータに作動流体が供給される。駆動機構6は、一定速度で回転を続けるよう設定するだけで、所定間隔で所定時間各ポートに作動用流体を安定して供給することができ、駆動機構6としてステッピングモータのような高価なモータを使うことなく安価なモータを使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の実施形態による流体分配供給装置は、食品関連や薬剤関連の生産設備で一の流体を複数の装置に等間隔の時間で分配して供給するラインに好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0039】
1 流体分配供給装置
2 本体
20 中空部
21 排気ポート
3 プラグ
30 係合部
31 大径部
32 流入口
33 排出口
4 従動伝達軸
40 ゼネバ歯車
41 係合溝部
5 駆動伝達軸
50 カム
51 係合ピン
6 駆動機構
7 台座
図1
図2
図3
図4
図5
図6