(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125831
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】糸巻取機
(51)【国際特許分類】
B65H 57/02 20060101AFI20230831BHJP
B65H 63/06 20060101ALI20230831BHJP
B65H 67/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B65H57/02
B65H63/06 Z
B65H67/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030154
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】502455511
【氏名又は名称】TMTマシナリー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】吉野 恭平
(72)【発明者】
【氏名】川合 雅士
【テーマコード(参考)】
3F110
3F112
3F115
【Fターム(参考)】
3F110AA04
3F110CA04
3F110CA05
3F110DA02
3F110DB01
3F110DB15
3F112AA06
3F112BA03
3F112EC03
3F115BA03
3F115BA27
3F115CA13
3F115CG04
(57)【要約】
【課題】ボビンを切り替えて糸の巻取りを継続する際にトラバース装置から糸を外す必要がある糸巻取機において、糸がパッケージの軸方向外側に落ちることを抑制可能な糸巻取機を提供する。
【解決手段】糸巻取機1は、トラバース装置21と、接触ローラ31と、ターレット板と、糸外し装置と、規制ガイド75と、を備える。ターレット板は、ボビン切替時において、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更する。糸外し装置は、ボビン切替時において、第1ボビン91に巻き取られている糸をトラバース装置21から外す。規制ガイド75は、一対で設けられ、糸外し装置によるトラバース装置21から糸を外す動作が完了する前に、第1ボビン91に巻き取られている糸をパッケージ94の軸方向においてにおいて第1ボビン91の糸層領域内に規制する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボビンを保持する第1ボビンホルダと、
第2ボビンを保持する第2ボビンホルダと、
前記第1ボビン又は前記第2ボビンに巻き取られる糸をトラバースするトラバース装置と、
前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに接触し、前記トラバース装置でトラバースされた糸を前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに送る接触ローラと、
前記第2ボビンが前記接触ローラから離れ前記第1ボビン又はパッケージが前記接触ローラに接触して前記第1ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態から、前記第1ボビンが前記接触ローラから離れ前記第2ボビン又はパッケージが前記接触ローラに接触して前記第2ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態へ切り替えるボビン切替時において、前記第1ボビンホルダと前記第2ボビンホルダの位置を変更するボビンホルダ移動機構と、
前記ボビン切替時において、前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記トラバース装置から外す糸外し装置と、
前記糸外し装置による前記トラバース装置から糸を外す動作が完了する前に、前記第1ボビンに巻き取られている糸をパッケージの軸方向において前記第1ボビンの糸層領域内に規制する一対の規制ガイドと、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記一対の規制ガイドが、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラとの間にある糸のうち、前記第1ボビンに近い側の部分を規制することを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸に作用して当該糸を前記第2ボビンに巻き付ける巻付装置を備え、
前記一対の規制ガイドが前記巻付装置に取り付けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸が前記巻付装置により前記第2ボビンに巻き付けられ、
前記一対の規制ガイドに規制された後に、前記糸外し装置が前記トラバース装置から糸を外すことを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸が前記巻付装置により前記第2ボビンに巻き付けられた後に前記第2ボビンと前記第1ボビンとの間の糸を切断する切断装置を備え、
前記切断装置が前記巻付装置に取り付けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記一対の規制ガイドのそれぞれは、
前記第1ボビンの前記糸層領域内に位置するように設けられて前記第1ボビンに巻き取られている糸が前記糸層領域を越えることを阻止する壁部と、
前記壁部から前記壁部の外側の少なくとも糸層領域の範囲に設けられていて、前記壁部の外側を越えた前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記壁部の内側にガイドする補助部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
糸寄せ装置を備え、
前記第2ボビンには、前記ボビン切替時において、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸を前記第2ボビンに捕捉させるためのスリット状の糸捕捉部が形成されており、
前記糸寄せ装置は、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸を前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せ、
前記一対の規制ガイドのうちの前記糸捕捉部に近い側の規制ガイドは、前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せられた糸を前記第1ボビンの前記糸層領域内に規制することを特徴とする糸巻取機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のボビンホルダを備える糸巻取機に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1の紡糸巻取機は、糸をトラバースしながらボビンに巻き取ってパッケージを製造する。紡糸巻取機は、2つのボビンホルダと、ガイドバーと、を備える。紡糸巻取機は、一方のボビンホルダでのパッケージへの糸の巻取りが完了した後に、ボビンホルダの位置を切り替える。これにより、巻取位置に空ボビンが位置する。ガイドバーは、ボビンホルダの位置の切替え後に、パッケージに供給されている糸を空ボビンに巻き付ける。その後、空ボビンとパッケージの間の糸が切断される。これにより、ボビンを切り替えて糸の巻取りを継続できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の糸巻取機では、トラバース装置に糸を保持した状態でボビンを切り替えて糸の巻取りを継続する。しかし、別の構成の糸巻取機では、空ボビンの糸巻取領域外の端部にスリット状の糸捕捉部が形成されており、パッケージに供給されている糸を糸捕捉部に沿わせるようにして空ボビンに当該糸を捕捉させている。このタイプの糸巻取機では、パッケージに供給されている糸を空ボビン端部の糸捕捉部までに移動させるために、トラバース装置から当該糸を外す必要がある。しかしながら、トラバース装置から当該糸を外したタイミングにおいてトラバース幅の端部に当該糸が位置している場合、当該糸がパッケージの糸層の軸方向外側のボビン端部に落ち、糸の張力が低下してその後の処理を継続できなくなることが起こっていた。
【0005】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、ボビンを切り替えて糸の巻取りを継続する際にトラバース装置から糸を外す必要がある糸巻取機において、糸がパッケージの軸方向外側に落ちることを抑制可能な糸巻取機を提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、第1ボビンホルダと、第2ボビンホルダと、トラバース装置と、接触ローラと、ボビンホルダ移動機構と、糸外し装置と、規制ガイドと、を備える。前記第1ボビンホルダは、第1ボビンを保持する。前記第2ボビンホルダは、第2ボビンを保持する。前記トラバース装置は、前記第1ボビン又は前記第2ボビンに巻き取られる糸をトラバースする。前記接触ローラは、前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに接触し、前記トラバース装置でトラバースされた糸を前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに送る。前記ボビンホルダ移動機構は、前記第2ボビンが前記接触ローラから離れ前記第1ボビン又はパッケージが前記接触ローラに接触して前記第1ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態から、前記第1ボビンが前記接触ローラから離れ前記第2ボビン又はパッケージが前記接触ローラに接触して前記第2ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態へ切り替えるボビン切替時において、前記第1ボビンホルダと前記第2ボビンホルダの位置を変更する。前記糸外し装置は、前記ボビン切替時において、前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記トラバース装置から外す。前記規制ガイドは、一対で設けられ、前記糸外し装置による前記トラバース装置から糸を外す動作が完了する前に、前記第1ボビンに巻き取られている糸を巻幅方向において前記第1ボビンの糸層領域内に規制する。
【0008】
これにより、規制ガイドにより糸が第1ボビンの糸層領域内に規制されるので、ボビン切替時において糸がパッケージの軸方向外側に落ちることを抑制できる。
【0009】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記一対の規制ガイドが、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラとの間にある糸のうち、前記第1ボビンに近い側の部分を規制する。
【0010】
これにより、第1ボビン(パッケージ)に近い位置で糸を規制できるので、糸がパッケージの軸方向外側に落ちることをより確実に抑制できる。
【0011】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸に作用して当該糸を前記第2ボビンに巻き付ける巻付装置を備える。前記一対の規制ガイドが前記巻付装置に取り付けられている。
【0012】
これにより、一対の規制ガイドと巻付装置を一体化できるので、糸巻取機の構造を単純化できる。
【0013】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸が前記巻付装置により前記第2ボビンに巻き付けられる。前記一対の規制ガイドに規制された後に、前記糸外し装置が前記トラバース装置から糸を外す。
【0014】
これにより、トラバース装置から糸を外す前に一対の規制ガイドによる糸の規制が行われるため、糸がパッケージの軸方向外側に落ちることをより確実に抑制できる。
【0015】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸が前記巻付装置により前記第2ボビンに巻き付けられた後に、前記第2ボビンと前記第1ボビンとの間の糸を切断する切断装置を備える。前記切断装置が前記巻付装置に取り付けられている。
【0016】
これにより、巻付装置に切断装置と規制ガイドが取り付けられているので、接続糸に対して作用する部材をまとめて配置することができる。その結果、構造を単純化できる。
【0017】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、一対の前記規制ガイドのそれぞれは、壁部と、補助部と、を備える。前記壁部は、前記第1ボビンの前記糸層領域内に位置するように設けられ、前記第1ボビンに巻き取られている糸が前記糸層領域を越えることを阻止する。前記補助部は、前記壁部から前記壁部の外側の少なくとも糸層領域の範囲に設けられていて、前記壁部の外側を越えた前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記壁部の内側にガイドする。
【0018】
これにより、補助部により糸が壁部の内側にガイドされ、壁部により糸が壁部から外側に出ることが阻止される。その結果、糸層領域の範囲に糸が位置するように、より確実に規制できる。
【0019】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、糸寄せ装置を備える。前記第2ボビンには、前記ボビン切替時に前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと前記接触ローラとの間の糸を前記第2ボビンに捕捉させるためのスリット状の糸捕捉部が形成されている。前記糸寄せ装置は、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと前記接触ローラとの間の糸を前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せる。前記一対の規制ガイドのうちの前記糸捕捉部に近い側の規制ガイドは、前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せられた糸を前記第1ボビンの前記糸層領域内に規制する。
【0020】
これにより、一対の規制ガイドの一方を用いて、糸寄せ時の糸層表面からの糸落ちを防止できる。つまり、1つの規制ガイドが2つの機能を有するため、機能毎の個別のガイドを設ける構成と比較して、構造を単純化できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る糸巻取機の正面図。
【
図3】第1ハウジング及び第2ハウジングの周囲の斜視図。
【
図6】第1ボビンでパッケージを製造する状態から、第2ボビンでパッケージを製造する状態に切り替える処理を示すフローチャート。
【
図7】第1ボビンでパッケージを製造する状態から、第2ボビンでパッケージを製造する状態に切り替える処理の前半部を示す説明図。
【
図8】第1ボビンでパッケージを製造する状態から、第2ボビンでパッケージを製造する状態に切り替える処理の後半部を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る糸巻取機1の正面図である。
図2は、糸巻取機1のブロック図である。以下の説明では、糸の走行方向の上流又は下流を単に上流又は下流と称することがある。
【0023】
図1に示す糸巻取機1の上流には、図略の紡糸機が配置されている。紡糸機は、糸93を製造して糸巻取機1に供給する。糸巻取機1は、糸93を第1ボビン91又は第2ボビン92に巻き取ってパッケージ94を製造する。
図1では、第1ボビン91に糸93が巻き取られて糸層が形成されパッケージ94が製造されている状態が示されている。一方、第2ボビン92は、糸93が巻き取られていない空ボビンの状態である。糸93は、例えばスパンデックス等の弾性糸である。ただし、糸93の種類は弾性糸に限定されず、例えばナイロン又はポリエステル等の合繊糸であってもよい。
【0024】
また、本実施形態では、紡糸機から糸巻取機1には、パッケージ94の軸方向に並ぶ複数の糸93が供給される。また、第1ボビン91は、パッケージ94の軸方向に並べて複数設けられている。糸巻取機1は、複数の糸93をそれぞれ第1ボビン91に巻き取って、複数のパッケージ94を製造する。
【0025】
以下、糸巻取機1の詳細について説明する。
図1に示すように、糸巻取機1は、フレーム11と、第1ハウジング20と、第2ハウジング30と、ターレット板(ボビンホルダ移動機構)40と、を備える。
【0026】
フレーム11は、糸巻取機1が備える各部を保持する部材である。第1ハウジング20には、トラバース装置21が取り付けられている。トラバース装置21は、後述するトラバースガイド23が糸93と係合した状態で巻幅方向(パッケージ94の軸方向)に往復動することにより、下流側に送られる糸93をトラバースさせる。この糸93のトラバース動作により第1ボビン91又は第2ボビン92に糸層が形成される。
図2に示すように、トラバース装置21は、トラバースカム22と、トラバースガイド23と、を備える。
【0027】
トラバースカム22は、第1ボビン91及び第2ボビン92と平行に配置されたローラ状の部材である。トラバースカム22の外周面には、螺旋状のカム溝が形成されている。トラバースカム22は、トラバースモータ51により回転駆動される。
【0028】
トラバースモータ51は、制御装置50によって制御される。制御装置50は、CPU、ROM、RAM等を備える。CPUは、ROMに記憶されたプログラムをRAMに読み出して実行することにより、糸巻取機1に関する様々な制御を実行する。
【0029】
トラバースガイド23は、糸93と係合する部分である。トラバースガイド23の先端は例えば略U字状のガイド部を有しており、糸93を巻幅方向で挟み込むようにして、糸93と係合する。トラバースガイド23の基端はトラバースカム22のカム溝に位置している。この構成により、トラバースカム22を回転駆動することで、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることができる。
【0030】
第2ハウジング30には、接触ローラ31が回転可能に取り付けられている。接触ローラ31は、糸93の巻取り時にパッケージ94の糸層に所定の圧力で接触しながら従動回転することにより、トラバースガイド23からの糸93をパッケージ94の糸層に送るとともにパッケージ94の糸層形状を整える。なお、モータ等の駆動部を用いて接触ローラ31を回転駆動してもよい。
【0031】
第2ハウジング30には、操作パネル32が設けられている。操作パネル32は、オペレータによって操作される装置である。オペレータは、操作パネル32を操作することにより、糸巻取機1に対して指示を行う。オペレータが行う指示としては、例えば、巻取りの開始、巻取りの停止、巻取条件の変更等である。
【0032】
図2に示すように、糸巻取機1は、昇降装置60を備える。昇降装置60は、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を一体的に昇降させる。具体的には、第1ハウジング20及び第2ハウジング30は、昇降部材65に取り付けられている。この昇降部材65には、ボールナット61が取り付けられている。また、フレーム11にはネジ棒62が取り付けられている。昇降モータ63を用いてネジ棒62を回転させることにより、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を昇降させることができる。昇降モータ63は、制御装置50により制御される。なお、昇降装置60は、ボールネジに代えてシリンダを用いて実現されていてもよい。
【0033】
ターレット板40は、円板状の部材である。ターレット板40は、フレーム11に回転可能に取り付けられている。ターレット板40の回転軸は、ターレット板40の中心位置である。ターレット板40は、
図2に示すターレットモータ53により回転駆動される。ターレットモータ53は、制御装置50により制御される。
【0034】
ターレット板40のうち、中心位置を挟んで対向する2箇所には、それぞれ第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42が設けられている。第1ボビンホルダ41には、軸方向に並べて複数の第1ボビン91を装着可能である。第2ボビンホルダ42には、軸方向に並べて複数の第2ボビン92を装着可能である。ターレット板40を回転させることにより、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更することができる。なお、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更可能であれば、ターレット板40に代えて別の装置を用いてもよい。
【0035】
第1ボビンホルダ41は、第1ボビンホルダ41の軸位置を回転中心として、ターレット板40に対して回転可能である。第1ボビンホルダ41は、
図2に示す第1ボビンホルダモータ54により回転駆動される。同様に、第2ボビンホルダ42は、第2ボビンホルダ42の軸位置を回転中心として、ターレット板40に対して回転可能である。第2ボビンホルダ42は、
図2に示す第2ボビンホルダモータ55により回転駆動される。第1ボビンホルダモータ54及び第2ボビンホルダモータ55は、制御装置50により制御される。
【0036】
図1に示すように、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42が上下に並んだ状態において、高い方の第1ボビンホルダ41の位置が巻取位置であり、低い方の第2ボビンホルダ42の位置が待機位置である。糸巻取機1は、巻取位置にある第1ボビンホルダ41の第1ボビン91に対して糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する。
【0037】
また、所定量の糸93を巻き取って、第1ボビンホルダ41のパッケージ94が満巻となった場合、ターレット板40が回転することにより、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置が切り替わる。その後、満巻となって待機位置にある第1ボビンホルダ41のパッケージ94が回収され、巻取位置にある第2ボビンホルダ42の第2ボビン92に対して糸93が巻き取られる。パッケージ94が回収された第1ボビンホルダ41には、新たに第1ボビン91が装着される。以下では、第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態から、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態へ切り替えるまでの時間(期間)を「ボビン切替時」と称する。
【0038】
図3及び
図4に示すように、糸巻取機1は、巻付装置71を備える。巻付装置71は、ボビン切替時に巻付動作を行う。巻付動作とは、後述の
図8の上図に示すように、第1ボビン91と第2ボビン92の間に掛け渡された接続糸93aに作用する(接続糸93aを押圧する)ことにより、第2ボビン92に糸93を所定角度巻き付ける動作である。巻付装置71は、巻付動作を行うための図略のアクチュエータ(シリンダ、ソレノイド、又はモータ等)を備える。巻付装置71のアクチュエータは、制御装置50により制御される。これにより、巻付装置71の先端(接続糸93aを押圧する部分)は、接続糸93aを押圧する動作位置と、動作位置から退避した退避位置との間で移動可能である。
【0039】
巻付装置71の先端には、規制ガイド75が取り付けられている。規制ガイド75は、ボビン切替時において、後述の糸外し装置85によるトラバース装置21から糸を外す動作が完了する前に、接続糸93aの位置を規制する。
図4に示すように、規制ガイド75は、壁部76と、補助部77と、を備える。規制ガイド75は、ボビンホルダ41,42に装着された各ボビン91,92に対して1対ずつ設けられている。
【0040】
壁部76は、1つのボビン91,92に対して2つ設けられており、2つの壁部76は対向するように位置している。2つの壁部76の位置(詳細には壁面の位置)が規制位置である。また、
図4に示すように、第1ボビン91のうち糸93が巻かれる領域を糸層領域と称する。パッケージ94の軸方向において糸層領域内に2つの壁部76の規制位置が位置している。これにより、規制ガイド75(壁部76)は、第1ボビン91に巻き取られている糸93を糸層領域内に規制する(糸93が糸層領域を越えることを阻止する)。
【0041】
補助部77は、接続糸93aが2つの壁部76の内側に位置するようにガイドする部分である。補助部77は、パッケージ94の軸方向において、壁部76から、その外側であって、かつ、糸層領域を越えた位置までの範囲に設けられている。補助部77は、パッケージ94の軸方向において糸層領域の中央に近づくにつれて、巻付装置71に近づくように傾斜又は湾曲する部分を有している。これにより、補助部77は、第1ボビン91に巻き取られている糸93を2つの壁部76の内側にガイドする。具体的には、巻付装置71による巻付動作時において、接続糸93aが規制ガイド75に近接する。このとき、接続糸93aが補助部77に接触した場合(即ち接続糸93aの位置が壁部76の外側を越えている場合)、補助部77が有する傾斜面に沿って接続糸93aがガイドされる。その結果、接続糸93aが2つの壁部76の内側にガイドされる。なお、接続糸93aのガイド時に糸93を傷つけないように、補助部77と壁部76の境界が円弧状に面取りされている。
【0042】
本実施形態の複数の規制ガイド75は、基端部74に接続されている。言い換えれば、基端部74及び複数の規制ガイド75は、一体的に形成されており、更に言えば1枚の平板状の部材として構成されている。これに代えて、個別の規制ガイド75を巻付装置71にそれぞれ取り付けてもよい。また、本実施形態の規制ガイド75の形状は一例であり、適宜変更可能である。例えば、補助部77を省略してもよい。
【0043】
巻付装置71の先端には、更に、切断装置81が取り付けられている。切断装置81は、巻付装置71により糸93が第2ボビン92に巻き付けられた後に、接続糸93aを切断する装置である。切断装置81は、固定刃82と、可動刃83と、を備える。切断装置81は可動刃83を動かすための図略のアクチュエータを備える。切断装置81は、固定刃82と可動刃83で糸93を挟むことにより糸93を切断する。切断装置81のアクチュエータは、制御装置50により制御される。切断装置81は、ボビンホルダ41,42に装着された各ボビン91,92に対して1つずつ設けられている。切断装置81が設けられる位置は、後述する糸捕捉部92aから糸捕捉部92a側の壁部76に至る糸93を切断可能な位置とされている。
【0044】
本実施形態の切断装置81及び規制ガイド75は、巻付装置71に共締めされている。具体的には、切断装置81の取付孔、規制ガイド75の取付孔、及び巻付装置71の取付孔を合わせてボルト等でまとめて締結されている。なお、切断装置81と規制ガイド75が個別に巻付装置71に取り付けられていてもよい。また、本実施形態の切断装置81は一例であり、固定刃82と可動刃83に分かれていない構成であってもよい。
【0045】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の第2ボビン92の軸方向の端部の近傍(例えば巻幅方向よりも外側)には、スリット状の糸捕捉部92aが形成されている(第1ボビン91も同様)。糸捕捉部92aは、ボビン切替時に接触ローラ31から離れた第1ボビン91と、接触ローラ31と、の間の糸93を第2ボビン92に捕捉させるために用いられる。糸捕捉部92aは、一般的に高い伸縮性を有する比較的太い弾性糸のパッケージ94を製造する際に用いられる。なお、糸捕捉部92aは必須では無く、省略されていてもよい。この場合、例えば糸93を第2ボビン92に棒巻きすることにより、糸93を第2ボビン92に固定することができる。
【0046】
図3に示すように、トラバース装置21の上方には、糸寄せ装置88が配置されている。糸寄せ装置88は、ボビン切替時において、後述の糸外し装置85がトラバースガイド23から糸93を外した後に、接触ローラ31から離れた第1ボビン91と、接触ローラ31と、の間の糸93を第2ボビン92の糸捕捉部92aに寄せる。
図5に示すように、糸寄せ装置88は、ベース板88aと、スライド板88cと、糸寄せ部材88dと、駆動装置88eと、を備える。
【0047】
ベース板88aには、スライド孔88bが形成されている。スライド板88cは、ベース板88aに対してスライド孔88bに沿ってスライド可能に構成されている。スライド板88cには、複数の糸寄せ部材88dが一定間隔で固定されている。それぞれの糸寄せ部材88dは、スライド板88cがスライドすることにより、巻幅方向に並べて配置された複数の糸93を糸捕捉部92aに向けて寄せる。駆動装置88eはシリンダであり、基端部(ピストン側)がベース板88aに固定されており、先端部(ロッド側)がスライド板88cに固定されている。駆動装置88eが伸縮することにより、ベース板88aに対してスライド板88c(糸寄せ部材88d)を動作させることができる。また、駆動装置88eは制御装置50により制御される。上述した糸寄せ装置88は一例であり、異なる構成で糸寄せ装置88が実現されていてもよい。
【0048】
次に、
図6から
図8を参照して、第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態から、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態に切り替える処理について説明する。
【0049】
図7の上図には、第1ボビンホルダ41の第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態が記載されている。具体的には、トラバース装置21は、第1ボビン91に巻き取られる糸93をトラバースしている。接触ローラ31は、第1ボビン91(パッケージ94)に接触し、トラバース装置21でトラバースされた糸93を第1ボビン91(パッケージ94)に送る。これにより、第1ボビン91に糸93が巻き取られてパッケージ94が製造される。糸93の巻取り中において、制御装置50は、第1ボビンホルダ41のパッケージ94が満巻になったか否かを判定する(S101)。制御装置50は、例えば、パッケージ94の巻き太りに伴う接触ローラ31等の位置を検出するセンサ又は糸93の巻取り長さを検出するセンサ等の検出値に基づいて、パッケージ94が満巻になったか否かの判定を行う。
【0050】
制御装置50は、第1ボビンホルダ41のパッケージ94が満巻になったと判定した場合、昇降装置60を制御することにより、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を上昇させる(S102)。
【0051】
次に、制御装置50は、第2ボビン92が接触ローラ31から離れており、第1ボビン91(パッケージ94)が接触ローラ31に接触して第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態から、第1ボビン91が接触ローラ31から離れており、第2ボビン92(パッケージ94)が接触ローラ31に接触して第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態へ切り替える。初めに、制御装置50は、ターレットモータ53を制御することにより、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を切り替える(S103)。これにより、第2ボビンホルダ42が巻取位置に位置し、第1ボビンホルダ41が待機位置に位置する。
図7の下図には、ステップS103の完了後の状態が示されている。この図に示すように、2つのボビンの位置が切り替わることにより、第1ボビン91(パッケージ94)と第2ボビン92の間に糸93が掛け渡されることになる。上述したように、この糸93が接続糸93aに相当する。
【0052】
次に、制御装置50は、昇降装置60を制御することにより、第1ハウジング20及び第2ハウジング30を下降させる(S104)。これにより、接触ローラ31が第2ボビンホルダ42の第2ボビン92に接触する。
【0053】
次に、制御装置50は、巻付装置71を制御することにより、巻付装置71に巻付動作を行わせる(S105)。これにより、巻付装置71の先端が接続糸93aを押圧することにより、第2ボビン92に対する糸93の接触長さが長くなる。その状態で第2ボビンホルダ42が回転駆動されることにより、糸93が第2ボビン92に巻き付けられる。
図8の上図には、巻付装置71が巻付動作を行った後の状態が示されている。上述したように、巻付装置71の先端には、規制ガイド75が取り付けられている。従って、巻付装置71が巻付動作を行うことにより、第1ボビン91に巻き取られている糸93がパッケージ94の軸方向において第1ボビン91の糸層領域内に規制される。また、規制ガイド75は、接触ローラ31から離れた第1ボビン91と、接触ローラ31と、の間にある糸93のうち、第1ボビン91に近い側の部分を規制する。具体的には、
図8の上図に示すように、接触ローラ31と第1ボビン91(パッケージ94)の間において、鉛直方向において中央よりも第1ボビン91側の空間(符号Aで示す空間)にある糸93を規制ガイド75が規制する。これにより、パッケージ94に近い位置で糸93を糸層領域内に規制できる。
【0054】
次に、制御装置50は、糸外し装置85を制御することにより、トラバース装置21から糸93を外す(S106)。つまり、規制ガイド75による糸93の規制は、糸外し装置85がトラバース装置21から糸93を外す動作が完了する前に行われる。糸外し装置85は、糸93を第2ハウジング30側に押圧して糸道を偏位させることにより、トラバースガイド23から糸93を外す構成である。本実施形態では、糸93が第2ボビン92に巻き付けられており、かつ、糸93が第1ボビン91の糸層領域内に規制されている。そのため、トラバースガイド23から糸93を外しても、糸93がパッケージ94の巻幅方向の外側に落ちることがない。
【0055】
次に、制御装置50は、糸寄せ装置88を制御することにより、糸93を第2ボビン92の糸捕捉部92aに向けて寄せる(S107)。これにより、糸93が糸捕捉部92aに入り込み、糸93が第2ボビン92に固定される。このとき、一対の規制ガイド75のうち、パッケージ94の軸方向で糸捕捉部92aに近い側の規制ガイド75(
図8の左側の75)は、糸捕捉部92aに向けて寄せられた糸93を第1ボビン91の糸層領域内に規制する。これにより、糸寄せ時においてパッケージ94から糸93が落ちることを防止できる。そして、制御装置50は、切断装置81を制御することにより、接続糸93aを切断する(S108)。以上により、第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態から、第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態への切替えが完了する。
【0056】
その後、制御装置50は、
図8の下図に示すように、糸外し装置85、及び糸寄せ装置88を待機状態に戻し、次いで、巻付装置71を待機位置に戻し、第2ボビン92への通常の巻取りを再開する(S109)。
【0057】
以上に説明したように、本実施形態の糸巻取機1は、第1ボビンホルダ41と、第2ボビンホルダ42と、トラバース装置21と、接触ローラ31と、ターレット板40と、糸外し装置85と、規制ガイド75と、を備える。第1ボビンホルダ41は、第1ボビン91を保持する。第2ボビンホルダ42は、第2ボビン92を保持する。トラバース装置21は、第1ボビン91又は第2ボビン92に巻き取られる糸93をトラバースする。接触ローラ31は、第1ボビン91、第2ボビン92、又はパッケージ94に接触し、トラバース装置21でトラバースされた糸を第1ボビン91、第2ボビン92、又はパッケージ94に送る。ターレット板40は、第2ボビン92が接触ローラ31から離れ第1ボビン91又はパッケージ94が接触ローラ31に接触して第1ボビン91に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態から、第1ボビン91が接触ローラ31から離れ第2ボビン92又はパッケージ94が接触ローラ31に接触して第2ボビン92に糸93を巻き取ってパッケージ94を製造する状態へ切り替えるボビン切替時において、第1ボビンホルダ41と第2ボビンホルダ42の位置を変更する。糸外し装置85は、ボビン切替時において、第1ボビン91に巻き取られている糸93をトラバース装置21から外す。規制ガイド75は、一対で設けられ、糸外し装置85によるトラバース装置21から糸93を外す動作が完了する前に、第1ボビン91に巻き取られている糸93をパッケージ94の軸方向においてにおいて第1ボビン91の糸層領域内に規制する。
【0058】
これにより、規制ガイド75により糸93が第1ボビン91の糸層領域内に規制されるので、ボビン切替時において糸93がパッケージ94の軸方向外側に落ちることを抑制できる。
【0059】
本実施形態の糸巻取機1は、一対の規制ガイド75が、接触ローラ31から離れた第1ボビン91と、接触ローラ31と、の間にある糸93のうち、第1ボビン91に近い側の部分を規制する。
【0060】
これにより、第1ボビン91(パッケージ94)に近い位置で糸を規制できるので、糸93がパッケージ94の軸方向外側に落ちることをより確実に抑制できる。
【0061】
本実施形態の糸巻取機1において、接触ローラ31から離れた第1ボビン91と、接触ローラ31と、の間の糸93に作用して当該糸93を第2ボビン92に巻き付ける巻付装置71を備える。一対の規制ガイド75が巻付装置71に取り付けられている。
【0062】
これにより、一対の規制ガイド75と巻付装置71を一体化できるので、糸巻取機1の構造を単純化できる。
【0063】
本実施形態の糸巻取機1において、接触ローラ31から離れた第1ボビン91と、接触ローラ31と、の間の糸93が巻付装置71により第2ボビン92に巻き付けられる。一対の規制ガイド75に規制された後に、糸外し装置85がトラバース装置21から糸を外す。
【0064】
これにより、トラバース装置21から糸93を外す前に一対の規制ガイド75による糸93の規制が行われるため、糸93がパッケージ94の軸方向外側に落ちることをより確実に抑制できる。
【0065】
本実施形態の糸巻取機1は、接触ローラ31から離れた第1ボビン91と、接触ローラ31と、の間の糸93が巻付装置71により第2ボビン92に巻き付けられた後に、第2ボビン92と第1ボビン91との間の糸93を切断する切断装置81を備える。切断装置81が巻付装置71に取り付けられている。
【0066】
これにより、巻付装置71に切断装置81と規制ガイド75が取り付けられているので、接続糸93aに対して作用する部材をまとめて配置することができる。その結果、構造を単純化できる。
【0067】
本実施形態の糸巻取機1において、一対の規制ガイド75のそれぞれは、壁部76と、補助部77と、を備える。壁部76は、第1ボビン91の糸層領域内に位置するように設けられ、第1ボビン91に巻き取られている糸93が糸層領域を越えることを阻止する。補助部77は、壁部76から壁部76の外側の少なくとも糸層領域の範囲に設けられていて、壁部76の外側を越えた第1ボビン91に巻き取られている糸93を壁部76の内側にガイドする。
【0068】
これにより、補助部77により糸93が壁部76の内側にガイドされ、壁部76により糸93が壁部76から外側に出ることが阻止される。その結果、糸層領域の範囲に糸93が位置するように、より確実に規制できる。
【0069】
本実施形態の糸巻取機1は、糸寄せ装置88を備える。第2ボビン92には、ボビン切替時に接触ローラ31から離れた第1ボビン91と接触ローラ31との間の糸93を第2ボビン92に捕捉させるためのスリット状の糸捕捉部92aが形成されている。糸寄せ装置88は、接触ローラ31から離れた第1ボビン91と接触ローラ31との間の糸93をスリット状の糸捕捉部92aに向けて寄せる。一対の規制ガイド75のうちの糸捕捉部92aに近い側の規制ガイド75は、スリット状の糸捕捉部92aに向けて寄せられた糸93を第1ボビン91の糸層領域内に規制する。
【0070】
これにより、一対の規制ガイド75の一方を用いて、糸寄せ時の糸層表面からの糸落ちを防止できる。つまり、1つの規制ガイド75が2つの機能を有するため、機能毎に個別のガイドを設ける構成と比較して、構造を単純化できる。
【0071】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0072】
上記実施形態では、巻付装置71に規制ガイド75が取り付けられているが、別の部材に規制ガイド75が取り付けられていてもよい。この場合、接続糸93aに対して規制ガイド75を近接及び離間させるためのアクチュエータが設けられ、巻付装置71に対して規制ガイド75を独立して駆動できる。規制ガイド75は、糸外し装置85による糸外し後に、即座に待機位置に戻ってもよい。
【0073】
規制ガイド75が糸93の位置を規制するタイミングは、上記実施形態で示した例に限られない。例えば、規制ガイド75は、接触ローラ31と第2ボビン92が接触する前に糸93の位置を規制してもよい。
【0074】
規制ガイド75の規制位置が糸層領域の端部に近過ぎる場合、糸層の端部に丸みがあることが原因で、糸93がパッケージ94から軸方向の外側に落ちる可能性がある。そのため、規制ガイド75の規制位置は、糸層領域の端部から所定距離内側にあることが好ましい。また、規制ガイド75を糸寄せ時の糸落ちを防止するためのガイドとしても利用する場合、規制ガイド75の規制位置が糸層領域の中央側に近過ぎると、糸捕捉部92aから遠くなるので、糸93が糸捕捉部92aに捕捉されにくくなる。従って、規制ガイド75の規制位置は上記を考慮して定めることが好ましい。
【0075】
糸捕捉部92aは、糸層領域よりも外側に限られず、糸層領域内に形成されていてもよい。この場合であっても、トラバース装置21から糸93を外す必要があるため、本発明の規制ガイド75を活用できる。なお、糸捕捉部92aが糸層領域の中央に形成されている場合は、糸寄せ装置88を省略することができる。
【0076】
上記実施形態では糸93が糸捕捉部92aに捕捉された後に、切断装置81を用いて糸93を切断する。ただし、糸93が糸捕捉部92aに捕捉されることで、第1ボビン91に接続される糸93が引きちぎられる場合、切断装置81を省略することもできる。
【0077】
上記実施形態で示したフローチャートは一例であり、一部の処理を省略したり、一部の処理の内容を変更したり、新たな処理を追加したりしてもよい。また、1つの処理が完了する前に次の処理を開始してもよい。例えば、巻付装置71の先端の規制ガイド75に接続糸93aが案内された後であれば、巻付装置71の巻付動作が完了する前に、糸外し装置85を動作させてもよい。
【0078】
上記実施形態のトラバース装置21はカムドラム式であるが、トラバースガイド23を巻幅方向に往復動させることが可能であれば異なる構成であってもよい。例えば、トラバース装置21に代えて、ベルト式のトラバース装置を用いることもできる。
【符号の説明】
【0079】
1 糸巻取機
21 トラバース装置
31 接触ローラ
40 ターレット板(ボビンホルダ移動機構)
41 第1ボビンホルダ
42 第2ボビンホルダ
71 巻付装置
75 規制ガイド
76 壁部
77 補助部
81 切断装置
85 糸外し装置
88 糸寄せ装置
91 第1ボビン
92 第2ボビン
93 糸
93a 接続糸
94 パッケージ
【手続補正書】
【提出日】2023-02-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ボビンを保持する第1ボビンホルダと、
第2ボビンを保持する第2ボビンホルダと、
前記第1ボビン又は前記第2ボビンに巻き取られる糸をトラバースするトラバース装置と、
前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに接触し、前記トラバース装置でトラバースされた糸を前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに送る接触ローラと、
前記第2ボビンと前記接触ローラとが離間した状態で、かつ、前記第1ボビン又はパッケージと前記接触ローラとが接触した状態で、前記第1ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態から、前記第1ボビンと前記接触ローラとが離間した状態で、かつ、前記第2ボビン又はパッケージと前記接触ローラとが接触した状態で、前記第2ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態へ切り替えるボビン切替時において、前記第1ボビンホルダと前記第2ボビンホルダの位置を変更するボビンホルダ移動機構と、
前記ボビン切替時において、前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記トラバース装置から外す糸外し装置と、
前記第1ボビンの糸層領域の両側部に対応するようにそれぞれ設けられており、前記糸外し装置による前記トラバース装置から糸を外す動作が完了する前に、前記第1ボビンに巻き取られている糸をパッケージの軸方向において前記第1ボビンの糸層領域内に規制する規制ガイドと、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項2】
請求項1に記載の糸巻取機であって、
前記規制ガイドが、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラとの間にある糸のうち、前記第1ボビンに近い側の部分を規制することを特徴とする糸巻取機。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸に作用して当該糸を前記第2ボビンに巻き付ける巻付装置を備え、
前記規制ガイドが前記巻付装置に取り付けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項4】
請求項3に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸が前記巻付装置により前記第2ボビンに巻き付けられ、
前記規制ガイドに規制された後に、前記糸外し装置が前記トラバース装置から糸を外すことを特徴とする糸巻取機。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の糸巻取機であって、
前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸が前記巻付装置により前記第2ボビンに巻き付けられた後に前記第2ボビンと前記第1ボビンとの間の糸を切断する切断装置を備え、
前記切断装置が前記巻付装置に取り付けられていることを特徴とする糸巻取機。
【請求項6】
請求項1から4までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
前記規制ガイドは、
前記第1ボビンの前記糸層領域内に位置するように設けられて前記第1ボビンに巻き取られている糸が前記糸層領域を越えることを阻止する壁部と、
前記壁部から前記壁部の外側の少なくとも糸層領域の範囲に設けられていて、前記壁部の外側を越えた前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記壁部の内側にガイドする補助部と、
を備えることを特徴とする糸巻取機。
【請求項7】
請求項1から6までの何れか一項に記載の糸巻取機であって、
糸寄せ装置を備え、
前記第2ボビンには、前記ボビン切替時において、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸を前記第2ボビンに捕捉させるためのスリット状の糸捕捉部が形成されており、
前記糸寄せ装置は、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸を前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せ、
前記糸捕捉部に近い側の前記規制ガイドは、前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せられた糸を前記第1ボビンの前記糸層領域内に規制することを特徴とする糸巻取機。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
本発明の観点によれば、以下の構成の糸巻取機が提供される。即ち、糸巻取機は、第1ボビンホルダと、第2ボビンホルダと、トラバース装置と、接触ローラと、ボビンホルダ移動機構と、糸外し装置と、規制ガイドと、を備える。前記第1ボビンホルダは、第1ボビンを保持する。前記第2ボビンホルダは、第2ボビンを保持する。前記トラバース装置は、前記第1ボビン又は前記第2ボビンに巻き取られる糸をトラバースする。前記接触ローラは、前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに接触し、前記トラバース装置でトラバースされた糸を前記第1ボビン、前記第2ボビン、又はパッケージに送る。前記ボビンホルダ移動機構は、前記第2ボビンと前記接触ローラとが離間した状態で、かつ、前記第1ボビン又はパッケージと前記接触ローラとが接触した状態で、前記第1ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態から、前記第1ボビンと前記接触ローラとが離間した状態で、かつ、前記第2ボビン又はパッケージと前記接触ローラとが接触した状態で、前記第2ボビンに糸を巻き取ってパッケージを製造する状態へ切り替えるボビン切替時において、前記第1ボビンホルダと前記第2ボビンホルダの位置を変更する。前記糸外し装置は、前記ボビン切替時において、前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記トラバース装置から外す。前記規制ガイドは、前記第1ボビンの糸層領域の両側部に対応するようにそれぞれ設けられており、前記糸外し装置による前記トラバース装置から糸を外す動作が完了する前に、前記第1ボビンに巻き取られている糸をパッケージの軸方向において前記第1ボビンの糸層領域内に規制する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、前記規制ガイドが、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラとの間にある糸のうち、前記第1ボビンに近い側の部分を規制する。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸に作用して当該糸を前記第2ボビンに巻き付ける巻付装置を備える。前記規制ガイドが前記巻付装置に取り付けられている。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
これにより、規制ガイドと巻付装置を一体化できるので、糸巻取機の構造を単純化できる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと、前記接触ローラと、の間の糸が前記巻付装置により前記第2ボビンに巻き付けられる。前記規制ガイドに規制された後に、前記糸外し装置が前記トラバース装置から糸を外す。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0014
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0014】
これにより、トラバース装置から糸を外す前に規制ガイドによる糸の規制が行われるため、糸がパッケージの軸方向外側に落ちることをより確実に抑制できる。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記規制ガイドは、壁部と、補助部と、を備える。前記壁部は、前記第1ボビンの前記糸層領域内に位置するように設けられ、前記第1ボビンに巻き取られている糸が前記糸層領域を越えることを阻止する。前記補助部は、前記壁部から前記壁部の外側の少なくとも糸層領域の範囲に設けられていて、前記壁部の外側を越えた前記第1ボビンに巻き取られている糸を前記壁部の内側にガイドする。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0019】
前記の糸巻取機においては、以下の構成とすることが好ましい。即ち、糸巻取機は、糸寄せ装置を備える。前記第2ボビンには、前記ボビン切替時に前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと前記接触ローラとの間の糸を前記第2ボビンに捕捉させるためのスリット状の糸捕捉部が形成されている。前記糸寄せ装置は、前記接触ローラから離れた前記第1ボビンと前記接触ローラとの間の糸を前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せる。前記糸捕捉部に近い側の前記規制ガイドは、前記スリット状の糸捕捉部に向けて寄せられた糸を前記第1ボビンの前記糸層領域内に規制する。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
これにより、規制ガイドの一方を用いて、糸寄せ時の糸層表面からの糸落ちを防止できる。つまり、1つの規制ガイドが2つの機能を有するため、機能毎の個別のガイドを設ける構成と比較して、構造を単純化できる。