(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125862
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】プログラム、情報処理装置及び情報処理方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/00 20180101AFI20230831BHJP
G16H 10/40 20180101ALI20230831BHJP
【FI】
G16H20/00
G16H10/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030204
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】517448489
【氏名又は名称】合同会社H.U.グループ中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】加藤 聡史
(72)【発明者】
【氏名】岡 祐馬
(72)【発明者】
【氏名】須田 明里
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA03
5L099AA15
(57)【要約】
【課題】介入に対する複数のアウトカムを認識することができるプログラム等を提供する。
【解決手段】プログラムは、対象者及び非対象者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得し、取得した各介入項目値及びアウトカム値に基づいて、アウトカム毎に、複数の介入項目を軸として前記対象者及び非対象者における前記各介入項目値を示すグラフを出力する処理をコンピュータに実行させる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者及び非対象者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得し、
取得した各介入項目値及びアウトカム値に基づいて、アウトカム毎に、複数の介入項目を軸として前記対象者及び非対象者における前記各介入項目値を示すグラフを出力する
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項2】
前記対象者に対して劣解となる非対象者における介入項目値を除く前記グラフを出力する
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記各介入項目値とアウトカム値との相関関係を示す相関図を前記グラフ上に重畳させる
請求項1又は請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記対象者及び非対象者の特性に基づいて、前記対象者と同一の特性グループに分類される非対象者における介入項目値を示す前記グラフを出力する
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記対象者と同一の特性グループに分類される非対象者における介入項目値を示すグラフと、前記対象者と異なる特性グループに分類される非対象者における介入項目値を示すグラフとを重畳させる
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記グラフ上における位置の指定を受け付け、
指定された位置に対応するアウトカム値及び各軸の介入項目値を出力する
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項7】
特性、介入項目又はアウトカムに対する選択を受け付け、
受け付けた選択に応じて前記グラフを切り替える
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項8】
アウトカム毎に出力された複数のグラフのうちのいずれか1つのグラフ上にて受け付けた位置の選択に基づいて、選択された位置に応じた他のグラフにおけるアウトカムの目標値を出力する
請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項9】
前記対象者に対して非劣解となる非対象者における介入項目値と、前記対象者に対して劣解となる非対象者における介入項目値とを識別可能に示す前記グラフを出力する
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項10】
前記グラフの時系列変化を示す情報を出力する
請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項11】
前記介入項目値は、運動量、カロリー摂取量、歩数、有酸素運動時間、無酸素運動時間及び睡眠時間から選択される少なくとも2つを含む
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項12】
前記アウトカム値は、血糖値、栄養状態及び生活習慣改善の脱落の程度から選択される少なくとも2つを含む
請求項1から請求項11のいずれか1項に記載のプログラム。
【請求項13】
対象者及び非対象者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得し、
取得した各介入項目値及びアウトカム値に基づいて、アウトカム毎に、複数の介入項目を軸として前記対象者及び非対象者における前記各介入項目値を示すグラフを出力する
処理を実行する制御部を備える
情報処理装置。
【請求項14】
対象者及び非対象者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得し、
取得した各介入項目値及びアウトカム値に基づいて、アウトカム毎に、複数の介入項目を軸として前記対象者及び非対象者における前記各介入項目値を示すグラフを出力する
処理をコンピュータが実行する情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、情報処理装置及び情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床現場において、患者のアウトカムを改善するために各種の介入指導や治療が行われている。このようなアウトカムを評価するための方法が提案されている。
【0003】
例えば特許文献1には、被検者の臨床転帰を特性化するために有用な方法が開示されている。特許文献1の技術によれば、新たな徴候の標識拡張、患者部分母集団、安全性に対する懸念の改善のために発表する適応臨床研究を通して、鍵となる薬物の標識化を改良することが可能であることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の技術は、単に1種類のアウトカムを評価するものである。患者におけるアウトカムの種類は複数存在しており、介入に対してそれぞれ独立的にその値が変化する。アウトカムの検討においては、それら複数のアウトカムを考慮することが重要である。介入に対する複数のアウトカムを認識することのできる技術は未だ実現されていないのが現状である。
【0006】
本開示の目的は、介入に対する複数のアウトカムを認識することができるプログラム等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るプログラムは、対象者及び非対象者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得し、取得した各介入項目値及びアウトカム値に基づいて、アウトカム毎に、複数の介入項目を軸として前記対象者及び非対象者における前記各介入項目値を示すグラフを出力する処理をコンピュータに実行させる。
【0008】
本開示の一態様に係る情報処理装置は、対象者及び非対象者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得し、取得した各介入項目値及びアウトカム値に基づいて、アウトカム毎に、複数の介入項目を軸として前記対象者及び非対象者における前記各介入項目値を示すグラフを出力する処理を実行する制御部を備える。
【0009】
本開示の一態様に係る情報処理方法は、対象者及び非対象者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得し、取得した各介入項目値及びアウトカム値に基づいて、アウトカム毎に、複数の介入項目を軸として前記対象者及び非対象者における前記各介入項目値を示すグラフを出力する処理をコンピュータが実行する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、介入に対する複数のアウトカムを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る情報処理システムの概要図である。
【
図2】解析DBに記憶される情報の内容例を示す図である。
【
図3】介入項目値とアウトカム値との関係を示すグラフを説明する図である。
【
図6】グラフの生成に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】クロスバーの操作受付に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】第2実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
【
図9】第2実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
【
図10】第2実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
【
図11】第2実施形態の情報処理システムにより実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】第3実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
【
図13】第3実施形態の情報処理システムにより実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】第4実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
【
図15】第4実施形態の情報処理システムにより実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図16】第5実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
【
図17】第5実施形態の情報処理システムにより実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態に係るプログラム、情報処理装置及び情報処理方法の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する各実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
なお、以下に記載する各実施形態に示すシーケンスは限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各処理手順はその順序を変更して実行されてもよく、また並行して複数の処理が実行されてもよい。各処理の処理主体は限定されるものではなく、矛盾の無い範囲で、各装置の処理を他の装置が実行してもよい。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る情報処理システム100の概要図である。情報処理システム100は、情報処理装置1と、複数の情報端末装置2とを備える。情報処理装置1と情報端末装置2とは、インターネット等のネットワークNに通信接続され、ネットワークNを介してデータの送受信が可能である。
【0014】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な装置であり、例えばサーバコンピュータ、パーソナルコンピュータ、量子コンピュータ等である。情報処理装置1は、情報端末装置2からの問い合わせに応じて介入に対する複数のアウトカムを示す情報を出力する。情報端末装置2は、例えばパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末等である。情報端末装置2は、例えば病院や検査機関等の施設内に設置され、医師等の医療従事者により使用される。情報端末装置2は、通信により情報処理装置1とデータを送受信可能である。
【0015】
上述のように構成される情報処理システム100で実施される処理内容について、以下では具体的に、対象者として2型糖尿病の患者の介入に対するアウトカムの改善のために適用する例を挙げて説明する。なお対象者は2型糖尿病の患者に限定されず、例えば生活習慣病、癌等、その他疾患の患者であってもよく、あるいは疾患の予防に取り組む者、生活習慣の改善に取り組む者、検査を受ける被検者等であってもよい。
【0016】
図1に示すように、情報処理装置1は、制御部11、記憶部12及び通信部13を備える。なお、情報処理装置1は複数のコンピュータからなるマルチコンピュータであってもよく、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。
【0017】
制御部11は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等を用いたプロセッサを備える。制御部11は、内蔵するROM(Read Only Memory)又はRAM(Random Access Memory)等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0018】
記憶部12は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等の不揮発性メモリを備える。記憶部12は情報処理装置1に接続された外部記憶装置であってもよい。記憶部12は、制御部11が参照するプログラム及びデータを記憶する。記憶部12に記憶されるプログラムには、介入に対する複数のアウトカムを示す情報の出力に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム1Pが含まれる。記憶部12にはまた、解析DB(Data Base :データベース)121が記憶されている。解析DB121の詳細は後述する。
【0019】
記憶部12に記憶されるプログラム(プログラム製品)は、記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様であってもよい。記憶部12は、図示しない読出装置によって記録媒体1Aから読み出されたプログラムを記憶する。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムをダウンロードし、記憶部12に記憶させたものであってもよい。
【0020】
通信部13は、ネットワークNを介して外部装置と通信するための通信モジュールを備える。制御部11は、通信部13を介して情報端末装置2との間でデータを送受信する。
【0021】
情報処理装置1の構成は上述の例に限定されず、例えばユーザの操作を受け付けるための操作部、各種情報を表示するための表示部等を備えてもよい。
【0022】
情報端末装置2は、制御部21、記憶部22、通信部23、表示部24及び操作部25を備える。
【0023】
制御部21は、一又は複数のCPU、GPU等を用いたプロセッサを備える。制御部21は、内蔵するROM又はRAM等のメモリ、クロック、カウンタ等を用い、各構成部を制御して処理を実行する。
【0024】
記憶部22は、例えばハードディスク、フラッシュメモリ、SSD等の不揮発性メモリを備える。記憶部22は、制御部21が参照するプログラム及びデータを記憶する。記憶部22に記憶されるプログラムには、アウトカムの取得に関する処理をコンピュータに実行させるためのプログラム2Pが含まれる。記憶部22に記憶されるプログラムは、記録媒体にコンピュータ読み取り可能に記録されている態様であってもよい。記憶部22は、図示しない読出装置によって記録媒体2Aから読み出されたプログラムを記憶する。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムをダウンロードし、記憶部22に記憶させたものであってもよい。
【0025】
通信部23は、通信に関する処理を行うための通信モジュールである。制御部21は、通信部23を介して情報処理装置1との間でデータを送受信する。
【0026】
表示部24は、例えば液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence )ディスプレイ等のディスプレイ装置を備える。表示部24は、制御部21からの指示に従って各種の情報を表示する。操作部25は、ユーザの操作を受け付けるインタフェースである。操作部25は、例えばキーボード、ディスプレイ内蔵のタッチパネルデバイス、スピーカ及びマイクロフォン等を備える。操作部25は、ユーザからの操作入力を受け付け、操作内容に応じた制御信号を制御部21へ送出する。
【0027】
図2は、解析DB121に記憶される情報の内容例を示す図である。解析DB121は、アウトカムの出力に使用するための解析データであって、複数の患者(非対象者)における介入指導に関するデータを格納するデータベースである。解析DB121には、例えば解析データを識別するための解析IDをキーに、患者を識別するための患者ID、特性、詳細、介入項目値、アウトカム値等の情報を紐付けたレコードが格納されている。
【0028】
特性列には、患者IDに係る患者の特性に関する情報が含まれている。特性は、後述する特性グループの分類に用いられる。特性の項目には、例えば患者の性別、食事パターン等が含まれる。食事パターンは、患者の食生活に関する情報であり、複数の食事パターンに分類される。一例として、食事パターンは、自炊中心、外食中心、惣菜中心等が挙げられる。特性となり得る情報は上記の例に限定されず、後述する特性グループの分類に使用される任意の情報を含んでよい。
【0029】
詳細列には、患者IDに係る患者に関する詳細が含まれている。詳細には、例えば患者の食生活に関する情報(例えば3食毎日食べる、魚が多め等)、介入項目に関する情報(例えば毎日運動している、ジムに通っている等)等が含まれる。
【0030】
介入項目値列には、患者IDに係る患者における複数の介入項目の値が含まれている。
図2に示す例では、介入項目値として、運動量、カロリー摂取量及び歩数が含まれている。介入項目値となり得るものは上記の例に限定されず、疾患の種類や対象とするアウトカムに応じて適宜設定されてよい。介入項目は、有酸素運動時間、無酸素運動時間、睡眠時間等を含んでもよい。
【0031】
アウトカム値列には、患者IDに係る患者におけるアウトカムの値が含まれている。アウトカムは複数種類を含み、アウトカムの種類毎に評価値がそれぞれ記憶されている。
図2に示す例では、アウトカム値として、血糖値、栄養状態及び脱落までの期間が含まれている。アウトカム値となり得るものは上記の例に限定されず、疾患の種類や改善目的に応じて適宜設定されてよい。
【0032】
血糖値は、例えばHbA1c(ヘモグロビンA1c)を含んでよい。栄養状態は、患者の栄養状態に関する情報を示す値であり、例えば3群点数法による点数、ビタミン血中濃度等を含んでよい。脱落までの期間は、脱落の程度を示す情報であり、具体的には生活習慣改善のための介入指導における患者の脱落までの期間である。脱落の程度は、脱落率等により示されてもよい。
【0033】
情報処理装置1は、複数の既存患者に関する介入時の状態及び介入に対するアウトカムを収集し、ビッグデータとして解析DB121に蓄積する。なお解析DB121には、同一患者に関する複数のデータが記憶されるものであってよい。例えば患者の特性が変化する度、解析DB121に新たなデータとして追加される。解析DB121にデータを記憶する対象となる者(非対象者)は、疾患に罹患した患者に限定されず、疾患の予防に取り組む者、生活習慣の改善に取り組む者、検査を受ける被検者等であってもよい。また解析DB121には、非対象者、すなわち対象となる患者以外の他患者のみならず、対象となる患者における過去のデータが記憶されてもよい。情報処理装置1は、解析DB121を用いて、評価対象となる患者(以下、対象患者とも称する。)の介入に対するアウトカムを出力する。
【0034】
介入に対するアウトカムは患者毎に異なる。複数の患者間において、介入項目値が類似する患者同士のアウトカムは類似の挙動を示す可能性が高い。発明者らはそれらの知見に基づき、介入項目値とアウトカム値との関係をグラフ(マップ)を用いて示すことができるとの着想を得た。さらに、アウトカムの種類毎にグラフを生成し、それらを連動させることで、複数のアウトカムを統合的に評価できることを見出した。
【0035】
図3は、介入項目値とアウトカム値との関係を示すグラフを説明する図である。
図3を用いて、本実施形態における介入項目値とアウトカム値との関係を示すグラフ及びその生成手順について具体的に説明する。以下では、一例として、介入項目として運動量及びカロリー摂取量を用い、アウトカムとしてのHbA1cとの関係を示すグラフを生成する場合を説明する。
【0036】
情報処理装置1はアウトカムの評価時、情報端末装置2を介して、対象患者の介入項目値及び特性を取得する。例えば情報処理装置1は、情報端末装置2において医療従事者から入力された介入項目値及び特性を取得してもよい。また情報処理装置1は、患者のデータを管理するカルテシステムと連携することにより介入項目値及び特性の一部又は全部を取得してもよい。この場合、情報処理装置1は、情報端末装置2を介して対象患者を識別するための対象患者識別情報(例えば患者ID)を受け付ける。情報処理装置1は、カルテシステムに記憶されるカルテデータを参照することにより、受け付けた対象患者識別情報にて識別される対象患者の介入項目値及び特性を取得する。
【0037】
情報処理装置1は、解析DB121に記憶する情報に基づき、対象患者以外の複数の他患者(以下、患者群とも称する。)における介入項目値とアウトカム値とを取得する。
【0038】
情報処理装置1は、解析DB121から読み出した患者群のデータを、患者の特性に応じて複数の特性グループに分類する。本実施形態では一例として、食事パターン及び性別に基づき特性グループを構成する。特性グループとしては、食事パターンが自炊中心であり且つ性別が男性である自炊男性グループ、同様に外食中心且つ男性である外食男性グループ、自炊中心且つ女性である自炊女性グループ、外食中心且つ女性である外食女性グループ等が例示される。情報処理装置1は、解析DB121に記憶する各患者の食事パターン及び性別に応じて、患者群を各特性グループに分類する。なお、患者の分類手法は限定されず、公知のクラスタリング手法を用いて分類してもよい。
【0039】
患者の食事パターンや性別等の特性は、介入項目値に大きく影響を与える。従って、特性グループによってアウトカムが大きく変化する。本実施形態では、このような患者毎の特性グループを考慮してアウトカムを評価することで、より患者の実態に即した情報の提供を可能とする。なお特性グループは食事パターン及び性別に基づき構成されるものに限定されず、例えば運動状況、食事の好み等、介入項目値に影響する因子に基づき適宜グループが構成されてよい。
【0040】
情報処理装置1は、対象患者の属する特性グループと同一の特性グループに属する患者群のデータを抽出する。例えば、対象患者の特性は自炊中心及び男性であり、情報処理装置1は、自炊男性グループに属する患者群のデータのみを抽出する。
【0041】
情報処理装置1は、対象患者の介入項目値に対するアウトカム値を取得する。情報処理装置1は、複数の介入項目の中から選択される任意の介入項目の組み合わせ及びアウトカムの種類毎に、アウトカム値を求める。なお、アウトカム値の取得に際し、初期設定として所定の介入項目の組み合わせが規定されているものであってよい。以下の例にて情報処理装置1は、介入項目として運動量及びカロリー摂取量を用いる。
【0042】
情報処理装置1は、対象患者における運動量及びカロリー摂取量と、抽出した患者群における運動量及びカロリー摂取量並びにアウトカム値とに基づき、対象患者の運動量及びカロリー摂取量に対するアウトカム値を推算する。具体的には、情報処理装置1は、対象患者の運動量及びカロリー摂取量に近似する運動量及びカロリー摂取量を有する患者のアウトカム値を特定し、特定したアウトカム値を対象患者のアウトカム値として取得する。情報処理装置1は、介入項目値の近似する複数患者のアウトカム値を用いて補間することにより、対象患者のアウトカム値を算出するものであってよい。なお、アウトカム値は2つの介入項目を用いて求められるものに限定されず、3つ以上の介入項目を用いて求められてもよい。
【0043】
情報処理装置1は、得られた対象患者及び患者群の介入項目値及びアウトカム値に基づき、
図3に示すように、介入項目値とアウトカム値との関係を示すグラフを生成する。グラフの縦軸及び横軸はアウトカムの評価に用いた介入項目値である。
図3に示す例では、グラフはY軸(縦軸)を運動量、X軸(横軸)をカロリー摂取量とする。なお、グラフは2つの介入項目値を2軸で示すものに限定されず、3つ以上の介入項目値を軸とするものであってもよい。
【0044】
情報処理装置1は、
図3Aのグラフ中において黒丸のマーカーで示すように、患者群に含まれる各患者における運動量及びカロリー摂取量をグラフ上にプロットする。上述の通り、グラフは特性グループ毎に生成されており、例えば
図3Aは自炊男性グループの運動量及びカロリー摂取量の分布を示すグラフである。また情報処理装置1は、
図3Aのグラフ中において白丸のマーカーで示すように、対象患者の運動量及びカロリー摂取量をグラフ上にプロットする。
【0045】
なお、
図3Aに示すグラフには表示されていないが、グラフはZ軸をHbA1c(アウトカム値)とするものであり、情報処理装置1は、グラフのZ軸方向に対象患者及び患者群におけるHbA1cをプロットしている。
【0046】
情報処理装置1は、
図3Aのグラフから、対象患者に対して劣解となる他患者のデータを除外し、対象患者に対して非劣解となる他患者のデータのみを取り出す。対象患者に対して非劣解となる他患者とは、他患者における複数のアウトカムのうちいずれかのアウトカムの値が対象患者よりも優れている他患者を意味する。
【0047】
非劣解となる他患者のデータの取り出し方は限定的ではないが、例えば非優越ソートを用いてよい。非優越ソートとは、優越比較の定義に基づいて優越比較を行い、対象患者に優越されない他患者のデータのみを選別するものである。上記の非優越ソートには、典型的にはNSGA-II(Non-dominated Sorting Genetic Algorithms-II)を用いてもよいし、粒子群最適化やその他のいかなる探索アルゴリズムを用いてもよい。これにより、
図3Bに示すように、対象患者に対して非劣解となる他患者のデータのみがプロットされたグラフが生成される。
【0048】
情報処理装置1はさらに、Z軸方向にプロットされたアウトカム値の分布を示す等高線を生成し、グラフ上に重畳表示させる。これにより、
図3Cに示すように介入項目値とアウトカム値との相関関係を示すグラフが生成される。等高線は、介入項目値とアウトカム値との相関関係を示す相関図に対応する。
【0049】
情報処理装置1は、患者群の各介入項目値のプロットに対応するHbA1cの値に基づき、HbA1cの値、すなわちZ軸方向の位置を示す等高線を生成する。情報処理装置1は、生成した等高線を介入項目値のプロット位置に対応させるようグラフ上に重畳する。等高線は、アウトカムの最良値が等高線の中心となるよう生成される。アウトカムの最良値は、例えば患者群のアウトカム値の最良値に基づき決定されてもよく、ガイドラインの推奨値に基づき決定されてもよい。等高線は、アウトカム値そのものの分布を示すものであってもよく、アウトカム値を所定ルールに従い変換させた変換値の分布を示すものであってもよい。
【0050】
アウトカム値の分布は等高線により表される例に限定されず、例えばヒートマップにより表わされてもよい。また、グラフは2次元で生成されるものに限定されず、例えばアウトカム値を3D等高線により示す3次元のグラフであってもよい。
【0051】
情報処理装置1は、アウトカムの種類毎に上述のグラフを生成する。情報処理装置1は、生成したアウトカム毎のグラフを含む解析画面情報を情報端末装置2へ送信する。情報端末装置2は、情報処理装置1から受信した解析画面情報に基づく解析画面を医療従事者へ表示する。
【0052】
図4及び
図5は、解析画面の例を示す模式図である。解析画面には、対象患者受付欄31、実行ボタン32、グラフ表示欄33、及び評価情報表示欄34が含まれている。対象患者受付欄31は、対象患者の属性や特性等、対象患者に関する情報を受け付けるための情報を含む。グラフ表示欄33は、アウトカム毎に生成された複数のグラフ33aを表示する。評価情報表示欄34は、対象患者の介入項目値及びアウトカム値を表示する。
【0053】
情報端末装置2は、対象患者受付欄31を介して、医療従事者が操作部25を操作することによる対象患者に関する情報の入力を受け付ける。
図4に示す例にて、対象患者受付欄31における入力項目には、対象患者の患者ID、氏名、性別、食事パターン、現在のアウトカム値が含まれている。対象患者受付欄31における入力項目には、対象患者の介入項目値が含まれていてもよい。情報端末装置2は、受け付けた対象患者に関する情報を情報処理装置1へ送信する。
【0054】
情報処理装置1は、受け付けた対象患者に関する情報に基づき上述の処理手順を行い、対象患者の介入に対するアウトカムを取得するとともにグラフを生成する。情報処理装置1は、アウトカム毎に生成した複数のグラフ33aを並べてグラフ表示欄33に表示させるとともに、対象患者の各介入項目値及び各介入項目値に対するアウトカム値をそれぞれ評価情報表示欄34に表示させる。
【0055】
図4に示す例では、グラフ表示欄33には、アウトカム値、すなわちグラフ33aのZ軸をそれぞれHbA1c、栄養状態、及び脱落までの期間とする3種類のグラフ33aが表示されている。各グラフ33aは、同一の介入項目値の組み合わせに対し、アウトカムの種類毎にZ軸方向のアウトカム値を異ならせたものである。医療従事者は、解析画面に表示される情報により、介入指標に対する複数のアウトカム指標を視覚的に容易に把握することができる。
【0056】
解析画面に示される各グラフ33a上には、その位置を任意に移動可能に構成されるクロスバー33bが表示されている。クロスバー33bは、グラフ上における位置の指定を受け付けるためのオブジェクトとして機能する。クロスバー33bは、各グラフ33a上にそれぞれ表示されている。
【0057】
医療従事者は、クロスバー33bを用いて各種指標の変化を確認することができる。具体的には、グラフ33a上に表示されるクロスバー33bを移動させることにより、介入項目値の変化によるアウトカムの目標値の変化を認識することができる。
【0058】
医療従事者は、例えば
図4に示す解析画面が表示されている状態で、グラフ表示欄33の左側のHbA1cを示すグラフ33aに対応付けられるクロスバー33bを操作することにより、クロスバー33bの中心位置を等高線の中心方向(グラフの左上方向)へ移動させる。これにより、
図5に示すように、グラフ33a上のクロスバー33bの位置が変化する。
【0059】
ここで、各グラフ33a上に表示される全てのクロスバー33bは、各クロスバー33bの位置が連動するよう構成されるものであってよい。すなわち、各グラフ33aに対応付けられる全てのクロスバー33bおいて、クロスバー33bの中心位置の座標が常に一致する。
図5に示すように、例えばHbA1cを示すグラフ33a上のクロスバー33bを移動させることにより、栄養状態を示すグラフ33a上のクロスバー33bと、脱落までの期間を示すグラフ33a上のクロスバー33bとが連動して同じ位置へ移動される。
【0060】
その後、医療従事者が実行ボタン32を押下すると、クロスバー33bを操作することによる位置の指定が入力される。情報端末装置2は、操作部25を介してクロスバー33bの中心位置の座標情報(X座標及びY座標)を取得し、取得した座標情報を情報処理装置1へ送信する。
【0061】
情報処理装置1は、情報端末装置2を介して受け付けた座標情報に基づき、座標情報に対応する縦軸及び横軸それぞれの介入項目値を特定する。さらに、情報処理装置1は、特定した縦軸及び横軸それぞれの介入項目値に対するアウトカム毎の評価値を特定する。情報処理装置1は、得られた新たな介入項目値及び各アウトカム値を評価情報表示欄34に表示させる。情報処理装置1は、更新した更新画面情報を情報端末装置2へ送信する。
【0062】
情報端末装置2は、情報端末装置2から受信した更新画面情報に基づき、更新画面を表示する。医療従事者は、更新画面を通して介入による各アウトカムの変化を確認することができる。
【0063】
このように、介入指標の同じ値について、異なるアウトカム指標のグラフが連動して動作することにより、アウトカム毎の評価値が統合的に示される。医療従事者と対象患者とは、目標とするアウトカムに応じて、他のアウトカムと比較検討しながら最適な介入項目値を効率的に設定することができる。例えば、HbA1cを目標値に近づけるためには、運動量及びカロリー摂取量をどのように組み合わせることで栄養状態の悪化を最小限に抑えることができるかといった、達成すべきアウトカムに至るための介入指標設定の最適な経路(道筋)を視覚的に容易に認識することができる。
【0064】
図6は、グラフの生成に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。以下の各フローチャートにおける処理は、情報処理装置1の記憶部12に記憶するプログラム1Pに従って制御部11により実行されるとともに情報端末装置2の記憶部22に記憶するプログラム2Pに従って制御部21により実行されてもよく、制御部11及び制御部21それぞれに備えられた専用のハードウェア回路(例えばFPGA又はASIC)により実現されてもよく、それらの組合せによって実現されてもよい。
【0065】
情報処理装置1の制御部11は、情報端末装置2からの問い合わせに対応して、対象患者における複数の介入項目値及び特性を取得する(ステップS11)。制御部11は、例えば情報端末装置2から送信される対象患者の介入項目値及び特性を受信することによりそれらの情報を取得してもよく、カルテシステム等と連携することによりそれらの情報を取得してもよい。
【0066】
制御部11は、解析DB121に記憶する情報に基づき、患者群の他患者における複数の介入項目値及び複数のアウトカム値を取得する(ステップS12)。制御部11は、取得した患者群のデータを、患者の特性に応じて複数の特性グループに分類する(ステップS13)。
【0067】
制御部11は、取得した対象患者の特性に基づき対象患者の属する特性グループを特定し、特性した特性グループと同一の特性グループに属する患者群のデータを抽出する(ステップS14)。
【0068】
制御部11は、対象患者における各介入項目値と、抽出した患者群における各介入項目値及びアウトカム値とに基づき、所定の介入項目の組み合わせに対する対象患者のアウトカム値をアウトカム毎に取得する(ステップS15)。
【0069】
制御部11は、得られた対象患者及び患者群の介入項目値及びアウトカム値に基づき、介入項目値とアウトカム値との関係を示すグラフを生成する(ステップS16)。制御部11は、グラフのX軸及びY軸をそれぞれ異なる介入項目値とし、Z軸をアウトカム値とするグラフを生成し、対象患者及び患者群の各データをグラフ上にプロットする。
【0070】
制御部11は、生成したグラフに対し非優越ソートを行うことにより、対象患者に対し劣解となる他患者のデータを除外し、対象患者に対し非劣解となる他患者のデータのみを取得する(ステップS17)。なお制御部11は、対象患者に対し劣解及び非劣解となる全ての他患者のデータをプロットした後、非劣解となる他患者のデータのみを取り出すものに限定されない。制御部11は、解析DB121に記憶する情報に基づき、対象患者に対し非劣解となる他患者のデータを特定し、特定したデータに基づいてグラフを生成してもよい。
【0071】
制御部11は、Z軸方向のアウトカム値に基づき、アウトカム値の分布を示す等高線を生成し、生成した等高線をグラフ上に重畳させる(ステップS18)。制御部11は、予め設定される複数のアウトカムそれぞれについて上述の処理を実行し、アウトカム毎に上記グラフを生成する。
【0072】
制御部11は、生成したアウトカム毎のグラフを含む解析画面を情報端末装置2へ送信する(ステップS19)。
【0073】
情報端末装置2の制御部21は、解析画面を受信する(ステップS20)。制御部21は、受信した解析画面を表示部24へ表示し(ステップS21)、処理を終了する。
【0074】
図7は、クロスバーの操作受付に関する処理手順の一例を示すフローチャートである。
情報端末装置2の制御部21は、医療従事者が操作部25を操作することによる位置の指定を受け付ける(ステップS31)。詳細には制御部21は、医療従事者がクロスバーを移動することによる位置の指定を受け付ける。ステップS31において制御部21は、各グラフ33a上に表示される複数のクロスバー33bのうちのいずれか1つのクロスバー33bを利用して位置の指定を受け付ける。この場合において、制御部21は、いずれか1つのクロスバー33bに対する操作の受け付けに対応して、各グラフ33a上における他のクロスバー33bの位置を同期させる。
【0075】
制御部21は、受け付けたクロスバー33bの中心位置の座標情報を特定し、特定した中心位置の座標情報を情報処理装置1へ送信する(ステップS32)。
【0076】
情報処理装置1の制御部11は、中心位置の座標情報を受信する(ステップS33)。制御部11は、情報端末装置2を介して受け付けた中心位置の座標情報に対応する介入項目値及びアウトカム値を特定する(ステップS34)。具体的には、制御部11は、座標情報に対応する縦軸及び横軸それぞれの介入項目値を特定する。さらに、情報処理装置1は、特定した縦軸及び横軸それぞれの介入項目値に対するアウトカム毎の評価値を特定する。
【0077】
制御部11は、特定した介入項目値及びアウトカム値を情報端末装置2へ送信する(ステップS35)。
【0078】
情報端末装置2の制御部21は、介入項目値及びアウトカム値を受信する(ステップS36)。制御部21は、解析画面の情報を更新し、受信した介入項目値及び各アウトカム値を表示部24に表示させる(ステップS37)。
【0079】
上記の各フローチャートにおける処理の主体は限定されるものではない。例えば情報処理装置1が実行する処理の一部又は全部を情報端末装置2が実行してもよい。情報処理装置1と情報端末装置2とは別個の装置である構成に限定されず、共通する1台の情報処理装置であってもよい。
【0080】
本実施形態によれば、介入に対する複数のアウトカムを統合的に提供することができる。医師と対象患者とは、グラフを用いて複数の独立したアウトカムについての介入の程度を視覚的に認識しながら、アウトカムを改善するための介入の程度を検討することができる。アウトカム毎に生成される複数のグラフにおけるツールバーを連動させることにより、複数の介入因子と複数の異なるアウトカム指標との関係を統合して評価することができる。このように、情報処理システム100は、介入指導における医師と対象患者との円滑な意思決定を支援する支援ツールとして機能する。
【0081】
グラフは、過去の実際の患者データに基づき生成されるため、対象患者のアウトカムを精度よく推定することができる。患者の特性グループに応じたグラフを生成することで、対象患者の特性に即したアウトカムの推定が可能となる。
【0082】
(第2実施形態)
第2実施形態では、グラフに対する各種変更を受け付ける構成について説明する。以下では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0083】
図8から
図10は、第2実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
図8に示すように、第2実施形態における解析画面には、設定受付欄35がさらに含まれている。設定受付欄35は、グラフに対する各種設定を受け付けるための情報を含む。設定受付欄35は、例えば特性(
図8に示す例では食事パターン)、介入項目及びアウトカムに対する選択をそれぞれ受け付け可能に構成されている。
【0084】
医療従事者は、例えば設定受付欄35において、食事パターンの選択を受け付けるためのプルダウンメニューの中から任意の食事パターンを選択することにより、生成対象となるグラフの特性グループを変更することができる。設定受付欄35は、食事パターンの入力を受け付けるための入力欄を備え、直接的に食事パターンを受け付け可能に構成されてもよい。
【0085】
同様に、設定受付欄35において介入項目を変更することにより、グラフの縦軸や横軸の介入項目の種類を変更することができる。設定受付欄35においてアウトカムを変更することにより、生成対象となるグラフのアウトカムの種類を変更することができる。あるいは、設定受付欄35においてアウトカムの設定を「なし」に変更することにより、表示対象とするアウトカムの種類を変更することができる。
【0086】
例えば、
図8に示すように、食事パターンが自炊中心である自炊男性グループのグラフを含む解析画面が表示されている状態で、食事パターンのプルダウンメニューにて外食中心が選択されると、
図9に示すように、グラフ表示欄33に示されるグラフ33aが外食男性グループのグラフ33aに切り替わる。
【0087】
情報処理装置1は、情報端末装置2を介して特性、介入項目又はアウトカムの少なくともいずれか1つに対する選択を受け付け、受け付けた選択に応じて解析画面の情報を更新する。具体的には情報処理装置1は、特性の選択を受け付けた場合、選択された特性に応じて、グラフの生成対象とする特性グループを特定する。
図8に示す例において情報処理装置1は、変更された食事パターンの「外食中心」と、既に取得した対象患者の性別「男性」とに基づき、新たな特性グループを外食男性グループと特定する。情報処理装置1は、特定した外食男性グループの患者群におけるデータを用いて、新たなグラフを生成する。
【0088】
同様に情報処理装置1は、介入項目の選択を受け付けた場合、選択された介入項目に応じてグラフの縦軸及び横軸を変更し、各介入項目値をプロットする。さらに、新たな介入項目に対するアウトカムの等高線をグラフ上に重畳する。また情報処理装置1は、アウトカムの選択を受け付けた場合、選択されたアウトカムに対応するグラフを生成する。あるいは、選択されたアウトカムに応じて、グラフの表示又は非表示を切り替える。
【0089】
なお、特性グループを指定するための食事パターンは、複数種類を同時に選択可能に構成されてもよい。複数種類の食事パターンの選択を受け付けた場合、情報処理装置1は、
図10に示すように複数の特性グループのグラフを重畳してグラフ表示欄33に表示させる。
【0090】
例えば、食事パターンとして自炊中心及び外食中心が選択された場合、情報処理装置1は、自炊男性グループに属する患者群のデータを用いて第1のグラフを生成するとともに、外食男性グループに属する患者群のデータを用いて第2のグラフを生成する。情報処理装置1は、生成した第1のグラフと第2のグラフとを重ね合わせることにより、自炊男性グループの介入項目値のプロットと、外食男性グループの介入項目値のプロットとの両方を含むグラフを生成する。また情報処理装置1は、自炊男性グループのアウトカムを示す等高線と、外食男性グループのアウトカムを示す等高線との両方をグラフ上に重畳表示する。
【0091】
この場合において情報処理装置1は、特性グループ毎のグラフを識別可能に表示することが好ましい。情報処理装置1は、例えば介入項目値のマーカーの形や表示色、等高線の線種や表示色を特性グループに応じて変更するなど、介入項目値のマーカーや等高線の表示態様を特性グループに応じて異ならせるものであってよい。
図10に示す例では、自炊男性グループが黒丸のマーカー及び実線の等高線により表示され、外食男性グループが黒上向き三角のマーカー及び破線の等高線により表示されている。これにより、医療従事者は、複数の情報を効率的に把握できるとともに、特性グループ毎のデータを明確に認識することができる。
【0092】
図8から
図10では一例として、設定受付欄35において、特性グループを規定するための特性に対する選択を受け付けるものとしたが、設定受付欄35の構成は限定的されるものではない。設定受付欄35は、特性グループ(例えば自炊男性グループ、外食男性グループ等)に対する選択を受け付け可能に構成されてもよい。
【0093】
図11は、第2実施形態の情報処理システム100により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0094】
情報端末装置2の制御部21は、医療従事者が操作部25を操作することによる設定に対する選択を受け付ける(ステップS41)。ステップS41において制御部21は、
図8から
図10に示した設定受付欄35を利用して選択を受け付ける。制御部21は、受け付けた設定に対する選択に関する情報を情報処理装置1へ送信する(ステップS42)。
【0095】
情報処理装置1の制御部11は、設定に対する選択を受信する(ステップS43)。制御部11は、情報端末装置2を介して受け付けた設定に対する選択に対応するよう、解析画面におけるグラフを切り替える(ステップS44)。制御部11は、例えばグラフの生成対象とする特性グループ、グラフの各軸に対応する介入項目、グラフのアウトカム等を切り替える。
【0096】
制御部11は、切り替え後のグラフを含む更新画面を情報端末装置2へ送信する(ステップS45)。
【0097】
情報端末装置2の制御部21は、更新画面を受信する(ステップS46)。制御部21は、受信した更新画面を表示部24に表示させ(ステップS47)、一連の処理を終了する。
【0098】
本実施形態によれば、グラフの要素を任意に変更することができるため、より多様な観点からアウトカムを検討することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0099】
(第3実施形態)
第3実施形態では、グラフに劣解データを表示する構成について説明する。以下では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0100】
図12は、第3実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
図12に示すように、グラフ表示欄33に表示される各グラフ33aには、対象患者に対し非劣解となる他患者のデータ(以下、単に非劣解データとも称する。)に加え、対象患者に対し劣解となる他患者のデータ(以下、単に劣解データとも称する。)がさらに表示されている。
【0101】
情報処理装置1は、グラフの生成にあたり、例えば非優越ソートを用いて劣解データと非劣解データとを分類する。情報処理装置1は、劣解データと非劣解データとの両方を含むグラフを生成する。
【0102】
この場合において情報処理装置1は、劣解データと非劣解データとを識別可能に表示することが好ましい。情報処理装置1は、例えば介入項目値のマーカーの形や表示色、等高線の線種や表示色をデータ種類(劣解データ又は非劣解データ)に応じて変更するなど、介入項目値のマーカーや等高線の表示態様をデータ種類に応じて異ならせるものであってよい。
図12に示す例では、非劣解データが黒丸のマーカー及び実線の等高線により表示され、劣解データが黒下向き三角のマーカー及び二点鎖線の等高線により表示されている。
【0103】
図13は、第3実施形態の情報処理システム100により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0104】
情報処理装置1の制御部11は、第1実施形態における
図6のステップS11からステップS15と同様の手順で対象患者における介入項目値及び特性を取得し(ステップS51)、患者群の他患者における介入項目値及びアウトカム値を取得し(ステップS52)、特性グループに分類し(ステップS53)、対象患者と同一の特性グループに属する患者群のデータを抽出し(ステップS54)、所定の介入項目の組み合わせに対する対象患者のアウトカム値をアウトカム毎に取得する(ステップS55)。
【0105】
制御部11は、例えば非優越ソートを用いて、抽出した患者群のデータを劣解データと非劣解データとに分類する(ステップS56)。
【0106】
制御部11は、対象患者及び患者群の介入項目値及びアウトカム値に基づき、介入項目値とアウトカム値との関係を示すグラフを生成する(ステップS57)。この場合において、制御部11は、劣解データと非劣解データとのマーカーの表示態様を異ならせる。
【0107】
制御部11は、劣解データ及び非劣解データそれぞれについて、アウトカム値の分布を示す等高線を生成し、生成した等高線をグラフ上に重畳させる(ステップS58)。この場合において、制御部11は、劣解データと非劣解データとの等高線の表示態様を異ならせる。制御部11は、予め設定される複数のアウトカムそれぞれについて上述の処理を実行し、アウトカム毎に上記グラフを生成する。
【0108】
制御部11は、生成したアウトカム毎のグラフを含む解析画面を情報端末装置2へ送信する(ステップS19)。ステップS19以降の処理は、第1実施形態と同様であるため、詳細は省略する。
【0109】
本実施形態によれば、多様なアウトカムを示す患者のデータに基づきより多くの情報を提示することができる。従って、より多様な観点からアウトカムを検討することができ、ユーザの利便性が向上する。
【0110】
(第4実施形態)
第4実施形態では、他患者に関する詳細を表示する構成について説明する。以下では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0111】
図14は、第4実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
図14に示すように、解析画面には、他患者に関する詳細を表示する詳細表示欄36が含まれている。詳細表示欄36は、グラフ上の各マーカーに対応する他患者に関する詳細を表示する。
【0112】
情報処理装置1は、情報端末装置2を介してグラフ上におけるいずれかのマーカーの選択を受け付けると、受け付けたマーカーに対応する他患者に関する詳細を詳細表示欄36に表示させる。詳細表示欄36には、例えば3食毎日食べる、毎日運動している等、該当患者に関するさらなる情報が表示される。これにより、アウトカムの目標値に近い他患者に関するより詳細な情報を把握することができる。
【0113】
図15は、第4実施形態の情報処理システム100により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0114】
情報端末装置2の制御部21は、医療従事者が操作部25を操作することによる他患者の選択を受け付ける(ステップS61)。ステップS61において制御部21は、例えば
図14に示した解析画面において、グラフに示すいずれかのマーカーのタップ操作を受け付けることにより、当該マーカーに対応する他患者の選択を受け付ける。
【0115】
制御部21は、受け付けた他患者の選択に関する情報を情報処理装置1へ送信する(ステップS62)。制御部21は、例えば選択されたマーカーの位置座標を情報処理装置1へ送信するものであってもよい。
【0116】
情報処理装置1の制御部11は、他患者の選択に関する情報を受信する(ステップS63)。制御部11は、選択された他患者に関する詳細を取得する(ステップS64)。具体的には、制御部11は、受信したマーカーの位置座標に基づいて、選択されたマーカーに対応する介入項目値を有する患者IDを特定する。制御部11は、解析DB121に記憶する情報に基づき、特定した患者IDに対応付けられる詳細を取得する。制御部11は、取得した詳細を情報端末装置2へ送信する(ステップS65)。
【0117】
情報端末装置2の制御部21は、詳細を受信する(ステップS66)。制御部21は、解析画面の情報を更新し、受信した詳細を詳細表示欄36に表示させる(ステップS67)。
【0118】
本実施形態によれば、目標とするアウトカムを実現するためのより具合的な情報を提示することができるため、情報処理システム100の活用度が向上する。
【0119】
(第5実施形態)
第5実施形態では、対象患者における時系列変化を表示する構成について説明する。以下では主に第1実施形態との相違点を説明し、第1実施形態と共通する構成については同一の符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0120】
図16は、第5実施形態における解析画面の例を示す模式図である。
図16に示すように、解析画面のグラフ表示欄33に示される各グラフ33aには、対象患者のデータを示す白丸のマーカーが複数個含まれている。各マーカーは、評価時点及び評価時点よりも過去の時点において取得した対象患者のデータを示している。また評価情報表示欄34には、各時点における介入項目値及びアウトカム値が表示されている。情報処理装置1は、各時点における対象患者のデータを時系列順に記憶部12に記憶しておく。そして、情報処理装置1は、評価時点を含む複数時点における過去数回分のデータを読み出し、グラフ上に表示させる。
【0121】
図17は、第5実施形態の情報処理システム100により実行される処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0122】
情報端末装置2の制御部21は、医療従事者が操作部25を操作することによる時系列データの要求を受け付ける(ステップS71)。ステップS71において制御部21は、例えば
図16に示した解析画面に含まれる時系列データの表示要求ボタン37を利用して要求を受け付ける。制御部21は、受け付けた時系列データの要求を情報処理装置1へ送信する(ステップS72)。
【0123】
情報処理装置1の制御部11は、時系列データの要求を受信する(ステップS73)。制御部11は、時系列データを含む更新画面を生成する(ステップS74)。具体的には、制御部11は、記憶部12に記憶する情報に基づいて、評価時点を含む複数時点における過去数回分の対象患者の介入項目値及びアウトカム値を取得する。制御部11は、取得した過去数回分の対象患者のデータをグラフ上にプロットする。また、制御部11は、過去数回分の対象患者のデータを評価情報表示欄34に時系列順に表示させる。
【0124】
制御部11は、生成した時系列データを含む更新画面を情報端末装置2へ送信する(ステップS75)。
【0125】
情報端末装置2の制御部21は、更新画面を受信する(ステップS76)。制御部21は、受信した更新画面を表示部24に表示させ(ステップS77)、一連の処理を終了する。
【0126】
上述の処理において、制御部11は、対象患者の介入項目値のマーカーの形や表示色を時点に応じて変更するなど、介入項目値のマーカーの表示態様を時点毎に異ならせるものであってよい。また制御部11は、各マーカーと、各マーカーにより示される時点の情報と紐付けすることにより、いずれかのマーカーが選択された場合に、当該マーカーにより示される時点を解析画面上にテキストデータ等により表示させてもよい。
【0127】
また上述の処理において、解析画面には、各時点における過去のグラフがそれぞれ表示されてもよい。情報処理装置1は、各時点における対象患者の介入項目値及びアウトカム値に対応付けて、当該時点における他患者の介入項目値及びアウトカム値を示すグラフを記憶しておく。情報処理装置1は、時系列データの要求を受け付けた場合、過去数回分におけるアウトカムの毎のグラフをそれぞれ解析画面に表示させる。解析画面には、例えば今回、前回、及び前々回それぞれの時点における3種類のアウトカム毎のグラフが含まれる。本構成によれば、対象患者のデータの時系列変化に加えて、グラフの時系列変化を確認することができる。
【0128】
本実施形態によれば、グラフ上において対象患者のデータの軌跡が示される。過去の経路を考慮して、アウトカムを実現するための最適な経路を検討することができる。
【符号の説明】
【0129】
1 情報処理装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
1P プログラム
1A 記録媒体
2 情報端末装置
21 制御部
22 記憶部
23 通信部
24 表示部
25 操作部
2P プログラム
2A 記録媒体