(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012587
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】電動ファン装置付きマスク
(51)【国際特許分類】
A41D 13/11 20060101AFI20230119BHJP
A62B 18/02 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A41D13/11 Z
A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116089
(22)【出願日】2021-07-14
(71)【出願人】
【識別番号】593161375
【氏名又は名称】山真製鋸株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098936
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 晃司
(74)【代理人】
【識別番号】100098888
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 明子
(72)【発明者】
【氏名】山本 剛
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA09
2E185CC32
(57)【要約】
【課題】装着者が圧迫感を覚えることがなく、快適に使用することができる電動ファン装置付きマスクを提供する。
【解決手段】電動ファン装置付きマスク1を装着すると、連結用挿通部43、挿通部53を連結用開口部9、開口部11へそれぞれ挿通することによって、連結用開口部9、開口部11が大きく拡径されて、覆い部5の連結用開口部9の周辺と開口部11の周辺が外方へ膨出しているので、覆い部5の内側と鼻、口との間に空間59が形成されることになる。従って、装着者が圧迫感を覚えることがなく、快適に使用することができる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性変形可能な材料によって構成され、顔に装着されて鼻と口を覆う覆い部を有するマスク本体と、
前記覆い部に取り付けられ回転駆動するファンによって外気を前記マスク本体の内方へ流入させる電動ファン装置を有する電動ファン装置付きマスクであって、
前記覆い部には連結用開口部が形成され、
前記電動ファン装置は、前記マスク本体の外側に備えられ前記ファンを収容する筒状のファン収容部を有する装置本体と、
前記連結用開口部へ挿通されて、前記ファン収容部に着脱可能に連結されることで前記装置本体を前記覆い部に取り付ける筒状の連結用挿通部を有する内側ベースを具備する電動ファン装置付きマスクにおいて、
前記連結用開口部は前記連結用挿通部より小さいサイズに形成されており、前記連結用挿通部が挿通されることで拡開されて、前記覆い部の連結用開口部の周辺を外方へ膨出させることを特徴とする電動ファン装置付きマスク。
【請求項2】
請求項1に記載した電動ファン装置付きマスクにおいて、
連結用開口部は覆い部の中央部分に設けられていることを特徴とする電動ファン装置付きマスク。
【請求項3】
請求項1または2に記載した電動ファン装置付きマスクにおいて、
連結用開口部の径寸法と連結用挿通部の径寸法の比が1:2以上であることを特徴とする電動ファン装置付きマスク。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載した電動ファン装置付きマスクにおいて、
内側ベースの連結用挿通部の近傍には、装置本体に連結されない挿通部が設けられ、連結用開口部の近傍には前記挿通部が挿通される開口部が設けられ、前記開口部は前記挿通部より小さいサイズに形成されており、前記挿通部が挿通されることで拡開されて、前記覆い部の開口部の周辺を外方へ膨出させることを特徴とする電動ファン装置付きマスク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔に装着して鼻と口を覆うマスクに関し、詳しくは、外気をファンで内側へ取り込む電動ファン装置付きマスクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本出願の出願人によって特許文献1に示す電動ファン装置付きマスクが開発されている。この電動ファン装置付きマスクではマスクに形成された開口部を利用して電動ファンを取り付けている。すなわち、マスク本体の覆い部に形成された開口部に、内側アタッチメントに設けられた挿通部を挿通し、これらの挿通部を外側アタッチメントに対し嵌合することで連結して、電動ファンをマスク本体に取り付けている。上記のマスク本体の開口部と挿通部は、ほぼ同じサイズに形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特願2020-131370号
【特許文献2】特開2021-59828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の電動ファン装置付きマスクでは、内側アタッチメントがマスク本体の内側に備えられているので、口、鼻とマスク本体との間の空間がどうしても狭くなってしまうことになり、この電動ファン装置付きマスクを装着した者が圧迫感を覚えるおそれがある。
特に、新型コロナウィルスに対する感染予防の見地から、特許文献2に示すような衛生マスクを装着して、この衛生マスクの上に重ねて電動ファン装置付きマスクを装着することも想定される。このような場合は、アタッチメントを備えた電動ファン装置付きマスクと衛生マスクとの間の空間が殆どなくなってしまうので、マスクの装着者はかなり圧迫感を覚えることになり、更に蒸れによる不快感も生じてしまうことになる。
【0005】
本発明はこのような現状に鑑みて創案されたもので、装着者が圧迫感を覚えることがなく、しかも蒸れによる不快感を抑えることが可能で、快適に使用することができる電動ファン装置付きマスクの提供を、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために為されたものであり、請求項1の発明は、弾性変形可能な材料によって構成され、顔に装着されて鼻と口を覆う覆い部を有するマスク本体と、前記覆い部に取り付けられ回転駆動するファンによって外気を前記マスク本体の内方へ流入させる電動ファン装置を有する電動ファン装置付きマスクであって、前記覆い部には連結用開口部が形成され、前記電動ファン装置は、前記マスク本体の外側に備えられ前記ファンを収容する筒状のファン収容部を有する装置本体と、前記連結用開口部へ挿通されて、前記ファン収容部に着脱可能に連結されることで前記装置本体を前記覆い部に取り付ける筒状の連結用挿通部を有する内側ベースを具備する電動ファン装置付きマスクにおいて、前記連結用開口部は前記連結用挿通部より小さいサイズに形成されており、前記連結用挿通部が挿通されることで拡開されて、前記覆い部の連結用開口部の周辺を外方へ膨出させることを特徴とする電動ファン装置付きマスクである。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1に記載した電動ファン装置付きマスクにおいて、連結用開口部は覆い部の中央部分に設けられていることを特徴とする電動ファン装置付きマスクである。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載した電動ファン装置付きマスクにおいて、連結用開口部の径寸法と連結用挿通部の径寸法の比が1:2以上であることを特徴とする電動ファン装置付きマスクである。
【0009】
請求項4の発明は、請求項1から3のいずれかに記載した電動ファン装置付きマスクにおいて、内側ベースの連結用挿通部の近傍には、装置本体に連結されない挿通部が設けられ、連結用開口部の近傍には前記挿通部が挿通される開口部が設けられ、前記開口部は前記挿通部より小さいサイズに形成されており、前記挿通部が挿通されることで拡開されて、前記覆い部の開口部の周辺を外方へ膨出させることを特徴とする電動ファン装置付きマスクである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電動ファン装置付きマスクによれば、装着者が圧迫感を覚えることがなく、蒸れによる不快感を抑えることが可能で快適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電動ファン装置付きマスクの分解斜視図である。
【
図2】
図1で示した電動ファン装置付きマスクのマスク本体の右側面図である。
【
図4】
図1の電動ファン装置付きマスクのマスク本体に電動ファン装置を取り付ける方法を説明するための図である。
【
図5】
図1の電動ファン装置付きマスクのマスク本体に電動ファン装置を取り付けるための機構の動作を説明するための図である。
【
図6】
図1の電動ファン装置付きマスクのマスク本体に電動ファン装置を取り付けるための機構の動作を説明するための図である。
【
図7】
図1の電動ファン装置付きマスクのマスク本体に電動ファン装置を取り付けることでマスク本体の一部が膨出する状態を示す図である。
【
図9】
図1の電動ファン装置付きマスクを装着した状態を示す図である。
【
図10】
図1の電動ファン装置付きマスクの内側に衛生マスクを重ねて装着した状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る電動ファン装置付きマスク1を図面にしたがって説明する。
以下の説明において
図1で示す電動ファン装置付きマスク1の矢印Fで示す方向を前面、矢印Bで示すその反対方向を背面とする。
符号3は弾性変形可能なポリウレタン製のマスク本体を示し、このマスク本体3は鼻と口を覆う覆い部5と、一対の耳かけ部7とを有している。覆い部5の図中右側には、円形の連結用開口部9が形成されており、更に連結用開口部9の近傍には円形の開口部11が形成されている(
図2、
図3参照)。連結用開口部9の径寸法は12mmであり、開口部11の径寸法は6mmである。
符号13は電動ファン装置を示し、この電動ファン装置13は装置本体15と内側ベース17とから構成されている。
【0013】
装置本体15の構成について説明する。
図4に装置本体15を背面側から見た図とマスク本体3に装着した状態の内側ベース17の前面側から見た図を示す。
装置本体15のボディ19は横長に形成され、一端側に円筒状のファン収容部21が設けられている。ファン収容部21の前面には多数の通気口20を有する略円盤状のカバー23が取り付けられている。またファン収容部21にはフィルタ(図示せず)が収容されている。
ファン収容部21の内周面の背面寄りには、内周面に沿うように形成された突出縁部25が形成されている。この突出縁部25には4本の板状部材とリング状部材から成る補強部26が一体に形成されている。
また、ファン収容部21内にはモータ支持部27が設けられ、このモータ支持部27は円盤状部材と、この円盤状部材をファン収容部21の内周面に支持する3本の板状部材とから構成されている。モータ支持部27にはモータ(図示せず)が支持されており、モータの回転軸にはファン31が固定され、ファン31はファン収容部21内に備えられている。
【0014】
ファン収容部21の背面寄りには3つの立ち上がり部33が形成されており、立ち上がり部33は突出縁部25とファン収容部21の内周面に対し一体に形成されて円弧状を為している(
図4参照)。立ち上がり部33はファン収容部21の背面側の縁まで到達している。3つの立ち上がり部33は互いに間隔を開けて設けられているので、立ち上がり部33どうしの間には空間部35が形成されている。空間部35は突出縁部25と対向している。
【0015】
3つの空間部35には抜け止め部37が設けられており、これらの抜け止め部37は立ち上がり部33とファン収容部21の内周面に対し一体に形成されている。抜け止め部37はファン収容部21の内周面に沿う円弧状に形成されており、空間部35の半分程度まで突出している。すなわち、抜け止め部37は、
図4における時計回り方向側の端部が、隣の立ち上がり部33の半時計回り方向側の側面に進入空間部38を開けて対向している。また、抜け止め部37は突出縁部25と離間しており、抜け止め部37と突出縁部25は空間を開けて対向している(
図5、
図6参照)。
また、ボディ19にはモータを駆動するための電源としてのリチウムイオン電池等の二次電池(図示せず)が収容されている。ボディ19の下面にはスイッチ39が備えられている。
【0016】
内側ベース17の構成について説明する。
符号41は背面プレートを示し、この背面プレート41は
図1において左側の端面が円弧状に形成され、右側へいくに従って徐々に高さ寸法が小さくなる板状に形成されている。背面プレート41の左半部には円形の開口42が形成され、この開口42の背面側の縁には放射状に配置された5本の棒状部材と、これら棒状部材に一体に形成されたリング状部材からなる網状部44が設けられている。
背面プレート41には開口42に連続する連結用挿通部43が設けられており、この連結用挿通部43は前方へ突出している。連結用挿通部43の径寸法は30mmである。
連結用開口部9の径寸法と連結用挿通部43の径寸法の比が1:2.5であり、1:2以上となっている。
【0017】
連結用挿通部43は装置本体15の立ち上がり部33の内側に僅かな隙間を開けて嵌るサイズに形成されている。また、連結用挿通部43の外周面には3つのロック凸部45が形成されており、これらのロック凸部45は装置本体15の三か所の進入空間部38にそれぞれ対応するように配置されている。
図5、
図6に示すようにロック凸部45の背面(
図5、
図6において上側の面)は、
図4において半時計回りの方向(
図5、
図6において右方向)へいくに従って高さ寸法が徐々に大きくなり、半時計回りの方向の端部には背面側へ突出する圧接部47が形成されている。
【0018】
符号49が前面プレートを示し、この前面プレート49は背面プレート41と同じ外形に形成されている。また、前面プレート49の左半部には背面プレート41の連結用挿通部43とロック凸部45に対応する形状の開口51が形成されている。
また、前面プレート49の前面には前方へ突出する挿通部53が形成されており、挿通部53は外周部が丸みを帯びた略長方形で縦方向の長さ寸法が20mmで、幅寸法が15mmである。この挿通部53の前面には放射状に配置された7本の棒状部材と、これら棒状部材に一体に形成され中心部に位置する円盤状部材からなる網状部55が設けられている。
【0019】
背面プレート41と前面プレート49は互いに間隔を開けて重ねられて連結されており、連結用挿通部43はロック凸部45と共に開口51へ挿通されて、前面プレート49の前面から突出している。
【0020】
次に、この電動ファン装置付きマスク1の使用方法を説明する。
図4に示すように、連結用挿通部43を連結用開口部9へ、挿通部53を開口部11へそれぞれ挿通する。これにより、
図7、
図8に示すように、連結用開口部9、開口部11は大きく拡径されて、覆い部5の連結用開口部9の周辺と開口部11の周辺が外方へ膨出することになる。
次いで、ロック凸部45をファン収容部21の進入空間部38に対応させるようにして連結用挿通部43を立ち上がり部33の内側へ嵌める。そして、内側ベース17を
図4において時計回りの方向へ回動させる。これにより、
図6に示すようにロック凸部45の圧接部47が抜け止め部37の前面(下面)に圧接し、且つ連結用挿通部43の前端面と突出縁部25が当接して、装置本体15と内側ベース17とが連結される。なお、ロック凸部45は半時計回りの方向(
図5、
図6において右方向)へいくに従って高さ寸法が徐々に大きくなる形状に形成されているので、スムーズな動作で圧接部47を抜け止め部37の前面(
図5、
図6において下面)に圧接させることができる。
【0021】
図9に示すように電動ファン装置付きマスク1を装着すると、上記したように連結用挿通部43、挿通部53を連結用開口部9、開口部11にそれぞれ挿通することによって、連結用開口部9、開口部11が大きく拡径されて、覆い部5の連結用開口部9の周辺と開口部11の周辺が外方へ膨出するので、覆い部5の内側と鼻、口との間に空間59が開くことになる。従って、装着者が圧迫感を覚えることがなく、快適に使用することができる。
電動ファン装置付きマスク1を装着した状態で、スイッチ39を長押しして、モータを作動させ、ファン31を回転させる。これにより、通気口20から連結用挿通部43を介して外気がマスク本体3の内側へ送られる。
【0022】
図10に不織布等によって構成された衛生マスクを装着し、その上に重ねて電動ファン装置付きマスク1を装着した状態を示す。この場合には衛生マスク57を装着することによる衛生マスク57内の蒸れによる不快感を抑えることができる。
【0023】
以上のように本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれに限定されず、例えば、連結用挿通部43は円筒状に限らず、筒状であれば多角形の筒状であってもよい。
また、覆い部5に開口部11を設けず、装置本体15に挿通部53を設けない構成とすることも可能である。
マスク本体3はポリウレタン製のものに限定されず、連結用挿通部43を挿通することで連結用開口部9を大きく拡径でき、覆い部5の連結用開口部9の周辺を外方へ膨出させることができるものであれば、他の合成樹脂でもよく、更に不織布、綿等であってもよい。
上記の実施の形態では、連結用開口部9の径寸法と連結用挿通部43の径寸法の比が1:2.5であるが、マスク本体3の構成材の弾性変形する度合いに応じて1:4程度の範囲で変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、マスク製造業に利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0025】
1…電動ファン装置付きマスク 3…マスク本体 5…覆い部
7…耳かけ部 9…連結用開口部 11…開口部 13…電動ファン装置
15…装置本体 17…内側ベース 19…ボディ 20…通気口
21…ファン収容部 23…カバー 25…突出縁部 26…補強部
27…モータ支持部 31…ファン 33…立ち上がり部 35…空間部
37…抜け止め部 38…進入空間部 39…スイッチ 41…背面プレート
42…開口 43…連結用挿通部 44…網状部 45…ロック凸部
47…圧接部 49…前面プレート 51…開口 53…挿通部
55…網状部 57…衛生マスク 59…空間