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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125884
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/04 20140101AFI20230831BHJP
   E05B 85/16 20140101ALI20230831BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
E05B77/04
E05B85/16 Z
B60J5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030235
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】駒路 知博
(72)【発明者】
【氏名】池本 峻
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】五十幡 大地
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】中本 晶子
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸治
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中桐 涼平
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健人
(72)【発明者】
【氏名】福田 知也
(72)【発明者】
【氏名】橋▲崎▼ 勇一
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250LL01
2E250PP12
(57)【要約】
【課題】衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る車両用ドアロック装置を提供する。
【解決手段】車両用ドアロック装置1は、ハンドルベース11とアウタハンドル12を備えるハンドル機構10と、オープンレバー25を備えるラッチ機構20と、アウタハンドル12の動作をオープンレバー25に伝達するロッド30と、ハンドルベース11の上部に位置するように、ハンドルベース11とラッチ機構20の間に設けられた支持部材40とを備える。衝突荷重入力によるアウタパネル5の変形開始時に、支持部材40がラッチ機構20のベース部21に当接し、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転することが阻止される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、
ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、
前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、
前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向に対向する対向部と、
前記ハンドルベースの上部に位置するように、前記ハンドルベースと前記対向部の間に設けられた変位抑制部材と
を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記変位抑制部材と前記ハンドルベースの間、又は前記変位抑制部材と前記対向部の間に、隙間が設けられている、請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記変位抑制部材は、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びている、請求項1又は2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記変位抑制部材が前記ハンドルベースに取り付けられている、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記変位抑制部材の前記対向部と対向する前記先端面は、上方側から下方側に向けて前記対向部から離れる向きに傾斜している、請求項4に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記変位抑制部材の前記先端面の上端は、前記対向部に対して平行な方向に沿って延びている、請求項5に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記ハンドルベースは、車高方向に対して直交する方向に沿って延びる板状の上壁部を備え、
前記変位抑制部材は、前記上壁部に取り付けられている、
請求項4から6のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項8】
前記上壁部は、車高方向に貫通した貫通孔を備え、
前記変位抑制部材は、
前記上壁部を差し込む差込溝と、
前記差込溝の上方側を画定し、前記上壁部の上面側に配置された溝壁と、
前記貫通孔と対応するように前記溝壁に設けられ、締結部材を貫通させる取付孔と
を備える、
請求項7に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項9】
前記ラッチ機構が前記対向部を備える、請求項4から8のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項10】
前記変位抑制部材は、
前記対向部に対して直交する方向に沿って延びる板状の基部と、
前記基部の外周に設けられた枠壁と、
前記枠壁内に設けられ、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びるリブと
を備える、請求項1から9のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項11】
前記ドアは前記車両の側面後部に配置されたリアドアであり、
前記ハンドルベースは前記リアドアの車長方向の中央よりも後方側に取り付けられ、
前記変位抑制部材は前記ロッドよりも車長方向の前方側に配置されている、
請求項1から10のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置は、車両のドアに備えられる。車両用ドアロック装置は、アウタハンドルを含むハンドル機構と、ラッチ機構とを備える。ラッチ機構は、車体のストライカに係脱するフォークと、クローレバーとを備える。ラッチ機構は、乗員によるアウタハンドルの操作で、ラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる。ラッチ状態では、クローレバーがフォークをストライカに係止した位置で保持する。ラッチ解除では、クローレバーによるフォークの保持が解除されてフォークはストライカから外れる。ラッチ解除によりドアが開放可能となる。
【0003】
特許文献1には、衝突時には車両に作用する慣性により、アウタハンドルには、乗員による操作時と同様の動き、つまりドアに対して相対的に車幅方向外向きの動きが起こり得ることが記載されている。この動きによりラッチ解除となり得る。
【0004】
特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、衝突時の車両に慣性が作用した時に、アウタハンドルの動きをラッチ機構に伝達するロッドの移動を阻止するストッパ部材を備える。このストッパ部材は、衝突時の慣性によるアウタハンドルの動きに起因するラッチ解除を防止することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-243102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアが変形する。特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、かかるドアの変形に起因してラッチ解除となるのを防止することについて、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る車両用ドアロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向に対向する対向部と、前記ハンドルベースの上部に位置するように、前記ハンドルベースと前記対向部の間に設けられた変位抑制部材とを備える、車両用ドアロック装置を提供する。
【0009】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアのアウタパネルが変形する。ドアの車長方向の長さが大きいドアのデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネルが変形し得る。衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、変位抑制部材が対向部に速やかに当接し、衝突荷重入力を支承する。言い換えれば、ハンドルベースと対向部の間に変位抑制部材が挟み込まれ、ハンドルベースの対向部に対する相対的な変位を拘束する。この変位の拘束により、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転し、それによってロッドが下向きに移動して、レバーが変位してしまうことが阻止される。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形に起因してラッチ解除となるのを防止し得る。
【0010】
前記変位抑制部材と前記ハンドルベースの間、又は前記変位抑制部材と前記対向部の間に、隙間が設けられている。
【0011】
この構成により、アウタパネルとインナパネルの間の狭いドア内にハンドルベース及び変位抑制部材を組み付ける際の作業性を確保できる。しかも、車両の振動によって微動し得る変位抑制部材が、ハンドルベース又は対向部に干渉することによる異音の発生を抑制できる。
【0012】
前記変位抑制部材は、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びてもよい。
【0013】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、変位抑制部材が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0014】
前記変位抑制部材が前記ハンドルベースに取り付けられてもよい。
【0015】
この構成によれば、アウタパネルとインナパネルの間の狭いドア内に、変位抑制部材を組み付けたハンドルベースを一体に取り付ければよいため、車両用ドアロック装置の組み立て性を確保できる。
【0016】
前記変位抑制部材の前記対向部と対向する前記先端面は、上方側から下方側に向けて前記対向部から離れる向きに傾斜していてもよい。
【0017】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、変位抑制部材の先端面の上端が対向部に線接触する。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0018】
前記変位抑制部材の前記先端面の上端は、前記対向部に対して平行な方向に沿って延びてもよい。
【0019】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、変位抑制部材の先端を介して作用する衝突荷重入力を、対向部が確実に受け止めることができる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0020】
前記ハンドルベースは、車高方向に対して直交する方向に沿って延びる板状の上壁部を備え、前記変位抑制部材は、前記上壁部に取り付けられてもよい。
【0021】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、変位抑制部材が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0022】
前記上壁部は、車高方向に貫通した貫通孔を備え、前記変位抑制部材は、前記上壁部を差し込む差込溝と、前記差込溝の上方側を画定し、前記上壁部の上面側に配置された溝壁と、前記貫通孔と対応するように前記溝壁に設けられ、締結部材を貫通させる取付孔とを備えてもよい。
【0023】
この構成により、ハンドルベースの上壁部の定位置に変位抑制部材を取り付けることができる。
【0024】
前記ラッチ機構が前記対向部を備えてもよい。
【0025】
この構成によれば、ラッチ機構が対向部を兼ねるので、部品点数増を抑制できる。また、ラッチ機構はインナパネルよりもハンドルベースの近くに位置するため、インナパネルを対向部とする場合と比較して、変位抑制部材の全長を短くできる。よって、入力された衝突荷重に対する変位抑制部材の剛性を確保できる。
【0026】
前記変位抑制部材は、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びる板状の基部と、前記基部の外周に設けられた枠壁と、前記枠壁内に設けられ、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びるリブとを備えてもよい。
【0027】
この構成により、変位抑制部材の配置に伴う重量化を抑制しつつ、入力された衝突荷重に対する変位抑制部材の剛性を確保できる。よって、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、変位抑制部材が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0028】
前記ドアは前記車両の側面後部に配置されたリアドアであり、前記ハンドルベースは前記リアドアの車長方向の中央よりも後方側に取り付けられ、前記変位抑制部材は前記ロッドよりも車長方向の前方側に配置されてもよい。
【0029】
車両のセンタピラーの付近への衝突荷重入力によるアウタパネルの変形は、車長方向の後方側よりも車長方向の前方側の方が大きい。これに対して、変位抑制部材は、リアドアの車長方向の後方側に取り付けられたハンドルベースのロッドの車長方向の前方側に配置されている。そのため、アウタパネルの変形に伴うロッドの変位を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明に係る車両用ドアロック装置によれば、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のサイドドアの車両幅方向外側から見た図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のサイドドアの分解斜視図。
図3図1のIII-III線に沿った断面図。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図。
図5】ハンドル機構、支持部材、及びロッドを車幅方向内側から見た図。
図6】支持部材の斜視図。
図7】支持部材の斜視図。
図8】車両用ドアロック装置の斜視図。
図9】車両用ドアロック装置の斜視図。
図10】車両用ドアロック装置を車高方向上側から見た図。
図11図10のXI-XI線に沿った車両用ドアロック装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。添付図面において、X方向、Y方向、及びZ方向はそれぞれ、車長方向、車幅方向、及び車高方向を示す。
【0033】
図1及び図2を参照すると、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置1は、車両のドア2と共に、ドア構造3を構成する。本実施形態では、ドア2はリアサイドドアである。本発明は、リアサイドドア以外の車両のドアにも適用できる。
【0034】
ドア2はアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6を備える。アウタパネル4とインナパネル5は、車幅方向(第1方向)に対向している。ドア2のアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6によって閉空間7が画定されている(図3,4を併せて参照)。以下の説明では、アウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6について、閉空間7側の面について「内側」、閉空間7とは反対側の面について「外側」という用語を、それぞれ使用する場合がある。
【0035】
図2から図4を参照すると、車両用ドアロック装置1は、ハンドル機構10、ラッチ機構20、ロッド30、及び支持部材(変位抑制部材)40を備え、ドア2の車長方向の後方側に配置されている。
【0036】
(ハンドル機構)
図1から図3を参照すると、ハンドル機構10は、アウタパネル4の内側(閉空間7内)に配置されたハンドルベース11と、アウタパネル4の外側に配置されたアウタハンドル12とを備える。ハンドルベース11とアウタハンドル12はいずれも、車長方向に沿うように配置されている。
【0037】
図5も併せて参照すると、アウタハンドル12は、ハンドルベース11に可動状態で保持されている。つまり、アウタハンドル12の車長方向(第2方向)の前方側から突出する第1端部12aがアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって旋回可能に支持され、アウタハンドル12の車長方向の後方側から突出する第2端部12bもアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって車幅方向に進退可能に支持されている。通常時には、乗員によるアウタハンドル12を車幅方向の外側に向けて旋回させる操作(開扉操作)より、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放可能となる。
【0038】
図5及び図8を参照すると、ハンドルベース11は、車長方向の後方側であって、車高方向の上側に支持軸16を備える。この支持軸16には、カウンタウェイト13を備えるレバーアーム14が回動可能に支持されている。レバーアーム14の上端のロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが挿通されて、回転可能な状態で保持されている。
【0039】
レバーアーム14は、開扉操作によるアウタハンドル12の第2端部12bの移動に連動して、図8において矢印A1で示す向きに回転する。この回転により、ロッド保持部14aが車高方向の下向きに移動し、それに伴ってロッド30が車高方向の下向きに降下する。ロッド30が降下すると、ロッド30に設けられた後述の係合部30cが、ラッチ機構20が備えている後述のオープンレバー25を押し下げて下向きに回動させる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。支持軸16には、レバーアーム14を弾性的に付勢するコイルスプリング15が装着されている。コイルスプリング15は、図8に示すように、矢印A2の向き(前述の矢印A1とは逆向き)、つまりラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる向きとは逆向きに回転するように、レバーアーム14を付勢している。
【0040】
(ラッチ機構)
図3図4、及び図8から図11を参照すると、ラッチ機構20は、インナパネル5の内側(閉空間7内)に配置されている。ラッチ機構20は、ベース部21と突出部22を備える。ベース部21は、インナパネル5の内側に沿って車長方向に延びるように配置されている。突出部22は、ベース部21の車長方向の後方側の部分から、車幅方向にアウタパネル4に向けて突出している。突出部21は、エンドパネル6の内側に沿って配置されている。ベース部21と突出部22は、半割構造のケーシング23により構成されている。
【0041】
突出部22には、車体のストライカ(図示せず)に係脱するフォーク24(図8にのみ図示)と、クローレバー(図示せず)が収容されている。
【0042】
ベース部21にはラッチ解除のためのオープンレバー25が備えられている。また、ベース部21には、ラッチ機構20をアンロック状態とロック状態に切り換えるための、リンク、モータのような要素を含む機構(図示せず)が収容されている。通常時、ラッチ機構20がアンロック状態であれば、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられると、ラッチ機構20はラッチ状態(クローレバーがフォーク24をストライカに係止した位置で保持する状態)からラッチ解除(クローレバーによるフォーク24の保持が解除されてフォーク24はストライカから外れる状態)に切り換わる。一方、ラッチ機構20がロック状態であると、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられても、ラッチ機構はラッチ状態からラッチ解除に切り換わらない。
【0043】
(ロッド)
図8を参照すると、ロッド30は、ハンドル機構10のアウタハンドル12の動作を、ラッチ機構20のオープンレバー25に伝達する。具体的には、通常時、アウタハンドル12が開扉操作されると、ハンドル機構10のレバーアーム14の矢印A1の向きの回転に伴い、ロッド30が車高方向の下向きに移動し、係合部30cがオープンレバー25を押し下げる。
【0044】
図5及び図8を参照すると、ハンドル機構10とラッチ機構20に関連して既に説明したように、ハンドルベース11の車高方向の上方側にレバーアーム14が回動可能に支持され、レバーアーム14の上端に設けられたロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが保持されている。つまり、本実施形態では、ロッド30の一端がハンドルベース11の車高方向の上部にレバーアーム14を介して接続されている。
【0045】
ロッド30は、被保持部(接続部)30a、斜行部30b、係合部30c、及び差込部30dを備える。ロッド30の一端に被保持部30aがあり、他端に係合部30cと差込部30dがある。
【0046】
被保持部30aは車長方向に直線状に延びており、車長方向の後方側からレバーアーム14のロッド保持部14aに挿通されている。被保持部30aはロッド保持部14aに、回転可能な状態で保持されている。
【0047】
被保持部30aの車長方向の後方側の端部に、斜行部30bが接続されている。斜行部30bは、被保持部30aから、車高方向の下方側にオープンレバー25に向けて直線状に延びている。より具体的には、斜行部30bは、オープンレバー25よりも車長方向の後方側に位置する被保持部30aの端部から、オープンレバー25の車長方向の前方側に向けて、車高方向の下方側に傾斜している。
【0048】
斜行部30bの車高方向の下方側の端部に、係合部30cが接続されている。係合部30cは、斜行部30bからオープンレバー25の上方まで、車長方向の後方側に直線状に延び、かつ車高方向の下方側に僅かに傾斜している。ロッド30が車高方向の下向きに降下すると係合部30cがラッチ機構20のオープンレバー25を押し下げて回動させる。
【0049】
係合部30cの車高方向の下方側の端部に、差込部30dが接続されている。差込部30dは、係合部30cから、車高方向の下側に直線状に延びている。差込部30dは、ロッド30のオープンレバー25に対する相対的な昇降が許容されるように、オープンレバー25に差し込まれている。
【0050】
(支持部材)
図8から図11を参照すると、支持部材40は、ハンドル機構10のハンドルベース11とラッチ機構20のベース部21との間に配置され、後に詳述する衝突荷重入力によるアウタパネル4(図2参照)の変形時にハンドル機構10とラッチ機構20の間を支承する。支持部材40は、ハンドルベース11の車高方向の上部に取り付けられている。ここで、ハンドルベース11の上部とは、カウンタウェイト13を含むレバーアーム14を除いたハンドルベース11の全高Hのうち、半分の位置よりも高い部分である。
【0051】
より具体的には、支持部材40は、ハンドルベース11の上壁部11dに取り付けられている。図5及び図11を参照すると、ハンドルベース11は、ハンドルベース本体11a、アウタハンドル12の第1端部12aを支持する軸支部11b、及びアウタハンドル12の第2端部12bを挿通する挿通部11cを備え、挿通部11cの上部にレバーアーム14が回動可能に取り付けられている。ハンドルベース本体11aは、上壁部11d、下壁部11e、一対の端壁部11f、及びこれらの壁部11c~11fで画定された空間を塞ぐ隔壁部11gを備える。上壁部11dと下壁部11eの間には補強リブ11h,11iが設けられている。図9及び図11を参照すると、上壁部11dは、車長方向の後方側である挿通部11c側に、ラッチ機構20に向けて突出した突出部11jを備える。この突出部11jに車高方向に貫通した貫通孔11kが設けられ、支持部材40が取り付けられる。
【0052】
支持部材40は、全体として枠体状で、突出部11jを差し込む差込溝40aを備える。支持部材40は、上壁部11dへの取付状態で、ロッド30よりも車長方向の前方側に位置し、ラッチ機構20のベース部21の車幅方向での内側面21aに直交する方向に延びている。この内側面21aは、ハンドルベース11に対して車幅方向に対向しており、本発明の対向部の一例である。本実施形態のベース部21のように表面から複数のリブが突出している場合、内側面21aは複数のリブの先端からなる仮想面として定義することもできる。
【0053】
以下、図6図7、及び図11を参照して、支持部材40の詳細を説明する。
【0054】
支持部材40は、車高方向の中央に位置する基部40bと、基部40bの外周に設けられた枠壁40fとを備える。また、支持部材40は、枠壁40f内に設けられた一対のリブ40jと、ハンドルベース11の上壁部11dに支持部材40を取り付けるための取付孔40kと備える。
【0055】
基部40bは、ハンドルベース11の上壁部11dからベース部21に向けて突出する基部本体40c、上壁部11dの上面側に配置される第1溝壁40d、及び上壁部11dの下面側に配置される第2溝壁40eを備える。基部本体40cは、ベース部21の内側面21aに対して交差するようにXY平面に沿って延びる板状である。第1溝壁40dと第2溝壁40eはいずれも、XY平面に沿って延びる板状で、基部本体40cを挟んで車高方向に間隔をあけて位置し、基部本体40cから車幅方向の外方側に突出している。第1溝壁40dの車幅方向の寸法は、第2溝壁40eの車幅方向の寸法よりも大きい。基部本体40cの車幅方向の外端、第1溝壁40d、及び第2溝壁40eによって差込溝40aが画定されている。
【0056】
枠壁40fは、一対の側壁40g、内端壁40h、及び外端壁40iを備える。
【0057】
一対の側壁40gは、基部40bの車長方向の両端からYZ平面に沿って突出する板状である。側壁40gは、差込溝40aの形成領域には設けられていない。つまり、側壁40gは、基部本体40cから上下に突出する第1部分と、第1溝壁40dから上向きに突出する第2部分と、第2溝壁40eから下向きに突出する第3部分とを備える。
【0058】
内端壁40hは、基部本体40c及び一対の側壁40gそれぞれの車幅方向の内端に連なっている。図11に最も明瞭に示すように、内端壁40hのうちベース部21の内側面21aと対向する外面(先端面)は、平坦面であり、上方側から下方側に向けて内側面21aから離れる向きに傾斜している。内端壁40hの外面と内側面21aとがなす角θは、15度以上30度以下の範囲に設定され、本実施形態では20度に設定されている。
【0059】
図10を参照すると、車高方向から見て、内端壁40hは車長方向に延びている。つまり、内端壁40hの上端は、ベース部21の内側面21aに対して平行な車長方向に延びている。内端壁40hと、ラッチ機構20、より具体的には、ベース部21の内側面21aとの間に隙間Gが設けられている。図11を参照すると、内端壁40hと内側面21aの間隔が最も小さい上端部分での隙間Gは、5mm以上15mm以下の範囲に設定され、本実施形態では10mmに設定されている。
【0060】
図6及び図7を参照すると、外端壁40iは、第1溝壁40d及び一対の側壁40gそれぞれの車幅方向の外端に連なっている。第2溝壁40e及び一対の側壁40gそれぞれの車幅方向の外端には外端壁は設けられていない。
【0061】
一対のリブ40jはそれぞれ、車長方向に間隔をあけて一対の側壁40g間に設けられている。一対のリブ40jはそれぞれ、側壁40gと同様にYZ平面に沿って延びる板状であり、基部本体40cから上下に突出する第1部分と、第1溝壁40dから上向きに突出する第2部分と、第2溝壁40eから下向きに突出する第3部分とを備える。
【0062】
取付孔40kは、ハンドルベース11の貫通孔11kと対応するように第1溝壁40dに設けられている。より具体的には、取付孔40kは、第1溝壁40d、外端壁40i、及び一対のリブ40jそれぞれに連なるように設けられた厚肉部40mを貫通している。
【0063】
取付孔40kの車高方向の下方側に位置するように、第2溝壁40eにはボス40nが設けられている。図示しないネジ(締結部材)を取付孔40kの上方から差し込み、貫通孔11kを貫通させてボス40nにネジ締めすることで、支持部材40がハンドルベース11の上壁部11dの定位置に移動不可能に取り付けられている。但し、締結部材は、リベット、又はボルトとナットが用いられてもよく、上壁部11dへの支持部材40の取り付けが可能な構成であればよい。
【0064】
(衝突時の車両用ドアロック装置の挙動)
支持部材40を採用しないと仮定した場合、衝突、特に側突に際して、車両用ドアロック装置1は以下のような挙動を示す。
【0065】
衝突荷重入力によりドア2のアウタパネル4が変形する。ドア2の車長方向の長さが大きいドア2のデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、図3において矢印Bで概念的に示すように、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネル4が変形する。ハンドルベース11の上部が図3の矢印Bのように回転すると、ロッド30が下向きに移動してオープンレバー25が押し下げられる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放してしまう可能性がある。
【0066】
これに対し、本実施形態の車両用ドアロック装置1の場合、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、支持部材40がラッチ機構20のベース部21、より具体的にはベース部21の内側面21aに速やかに当接し、支持部材40が衝突荷重入力を支承する。言い換えれば、ハンドルベース11とラッチ機構20のベース部21との間に支持部材40が挟み込まれ、ハンドルベース11のラッチ機構20のベース部21に対する相対的な移動を拘束する。この移動の拘束により、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転し、それによってロッド30が車高方向の下方側へ移動することが阻止される。そして、ロッド30の降下が阻止されることで、ロッド30によってオープンレバー25が押し下げられることが阻止される。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形に起因してラッチ機構20がラッチ解除となるのを防止し得る。
【0067】
前述のように、支持部材40とラッチ機構20のベース部21との間に隙間Gが設けられている。そのため、アウタパネル4とインナパネル5の間の狭いドア2内に、インナパネル5のサービスホール5a(図2参照)を通してハンドルベース11及び支持部材40の組み付ける際の作業性を確保できる。しかも、車両の振動によって微動し得る支持部材40が、ハンドルベース11又はラッチ機構20の内側面21aに干渉することによる異音の発生を抑制できる。
【0068】
前述のように、支持部材40は、ラッチ機構20の内側面21aに対して直交する車幅方向に延びている。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、支持部材40が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0069】
前述のように、支持部材40がハンドルベース11に取り付けられている。そのため、ドア2内には、サービスホール5aを通して支持部材40を組み付けたハンドルベース11を一体に取り付ければよい。よって、車両用ドアロック装置1の組み立て性を確保できる。しかし、支持部材40は、ラッチ機構20のベース部21に取り付けられてもよいし、アウタパネル4又はインナパネル5に取り付けられてもよい。
【0070】
前述のように、支持部材40の内端壁40hの外面は、上方側から下方側に向けて内側面21aから離れる向きに傾斜している。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、支持部材40の先端面の上端がラッチ機構20の内側面21aに線接触する。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0071】
前述のように、支持部材40の内端壁40hの上端は、ラッチ機構20の内側面21aに対して平行な車長方向に延びている。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、支持部材40を介して作用する衝突荷重入力を、ラッチ機構20の内側面21aが確実に受け止めることができる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0072】
前述のように、支持部材40は、ハンドルベース11の上壁部11dに取り付けられている。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、支持部材40が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0073】
前述のように、支持部材40は、ハンドルベース11の上壁部11dを差し込む差込溝40aと、締結部材を貫通させる取付孔40kとを備える。そのため、ハンドルベース11の上壁部11dの定位置に支持部材40を取り付けることができる。
【0074】
前述のように、ラッチ機構20のベース部21が、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に支持部材40が当接し、衝突荷重を支承する機能、つまり本発明の対向部の機能を兼ねている。そのため、対向部として機能する部品を別途設ける場合と比較して部品点数増を抑制できる。また、ラッチ機構20はインナパネル5よりもハンドルベース11の近くに位置するため、インナパネル5を対向部とする場合と比較して、支持部材40の全長を短くできる。よって、入力された衝突荷重に対する支持部材40の剛性を確保できる。しかし、ラッチ機構20のベース部21以外を対向部としても良いし、対向部として機能する部品を別途設けても良い。
【0075】
前述のように、支持部材40は、ラッチ機構20の内側面21aに対して直交する方向に沿って延びる基部40bと、基部40bの外周に設けられた枠壁40fとを有する枠体状であり、枠壁40f内には内側面21aに対して直交する方向に延びるリブ40jが設けられている。そのため、支持部材40の配置に伴う重量化を抑制しつつ、入力された衝突荷重に対する支持部材40の剛性を確保できる。よって、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、支持部材40が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを確実に阻止できる。
【0076】
前述のように、車両用ドアロック装置1が配置されるドア2は車両の側面後部に配置されたリアドアである。この場合、センタピラーの付近への衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形は、車長方向の後方側よりも車長方向の前方側の方が大きい。これに対し、本実施形態では、ハンドルベース11はリアドア2の車長方向の中央よりも後方側に取り付けられ、支持部材40はロッド30よりも車長方向の前方側に配置されている。そのため、アウタパネル4の変形に伴うロッド30の変位を最小限に抑えることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 車両用ドアロック装置
2 ドア
3 ドア構造
4 アウタパネル
5 インナパネル
5a サービスホール
6 エンドパネル
7 閉空間
10 ハンドル機構
11 ハンドルベース
11a ハンドルベース本体
11b 軸支部
11c 挿通部
11d 上壁部
11e 下壁部
11f 端壁部
11g 隔壁部
11h 補強リブ
11i 補強リブ
11j 突出部
11k 貫通孔
12 アウタハンドル
12a 第1端部
12b 第2端部
13 カウンタウェイト
14 レバーアーム
14a ロッド保持部
15 コイルスプリング
16 支持軸
20 ラッチ機構
21 ベース部
21a 内側面(対向部)
22 突出部
23 ケーシング
24 フォーク
25 オープンレバー
30 ロッド
30a 被保持部(接続部)
30b 斜行部
30c 係合部
30d 差込部
40 支持部材(変位抑制部材)
40a 差込溝
40b 基部
40c 基部本体
40d 第1溝壁
40e 第2溝壁
40f 枠壁
40g 側壁
40h 内端壁
40i 外端壁
40j リブ
40k 取付孔
40m 厚肉部
40n ボス
G 隙間
A1 レバーアームの回転の向き
A2 レバーアームの回転と逆の向き
B 衝突時のハンドルベースの上部の動き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11