(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125887
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/04 20140101AFI20230831BHJP
E05B 79/12 20140101ALI20230831BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
E05B77/04
E05B79/12
B60J5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030238
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129791
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 真由美
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】池本 峻
(72)【発明者】
【氏名】駒路 知博
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】五十幡 大地
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】中本 晶子
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸治
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中桐 涼平
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健人
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250LL01
2E250PP12
(57)【要約】
【課題】
衝突荷重入力によるアウタパネルの変形に起因してラッチ解除となるのを防止する。
【解決手段】
アウタハンドル12の動作をラッチ機構20のオープンレバー25に伝達するロッド30は、ラッチ機構20のベース部21に向けて車幅方向に延びる第1部分30bと、第1部分30aから車長方向に延びる第2部分30cとを備える。衝突荷重入力によるアウタパネル5の変形開始時に、ロッド30の第2部分30cがラッチ機構20のベース部21に当接し、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転することが阻止される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、
ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、
一端に前記ハンドルベースの上部に接続された接続部を備え、他端に前記レバーに係合可能な係合部を備え、前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、
前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向である第1方向に対向する対向部と
を備え、
前記ロッドは、
前記接続部から、前記対向部に向けて前記第1方向に沿って延びる第1部分と、
前記第1部分から、前記第1方向と交差し、かつ前記対向部に沿った第2方向に延びる第2部分と
を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記ロッドの前記第2部分と前記対向部との間に隙間が設けられている、請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記第1方向は前記車両の車幅方向であり、前記第2方向は前記車両の車長方向である、請求項1又は2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記ロッドの前記第1部分は、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びる、請求項1から3のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記ロッドの前記第2部分は、前記対向部に対して平行な方向に沿って延びる、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両ドアロック装置。
【請求項6】
前記ロッドの前記第2部分は、前記車長方向の後方側に向かって延び、
前記ロッドは、前記第2部分の前記車長方向の前記後方側の端部から車高方向の下方側に向かって延びる第3部分を備え、
前記ロッドの前記第3部分の下端が前記係合部に接続している、請求項3に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記ラッチ機構が前記対向部を備える、請求項3又は6に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項8】
前記ラッチ機構は、
前記インナパネルの内側に配置されたベース部と、
前記ベース部の前記車長方向の後方側の部分から前記車幅方向に前記アウタパネルに向けて突出している突出部と
を備え、
前記ベース部が前記対向部を備え、
前記ロッドの前記第2部分は前記突出部の先端よりも前記ベース部側に位置している、請求項7に記載の車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置は、車両のドアに備えられる。車両用ドアロック装置は、アウタハンドルを含むハンドル機構と、ラッチ機構とを備える。ラッチ機構は、車体のストライカに係脱するフォークと、クローレバーとを備える。ラッチ機構は、乗員によるアウタハンドルの操作で、ラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる。ラッチ状態では、クローレバーがフォークをストライカに係止した位置で保持する。ラッチ解除では、クローレバーによるフォークの保持が解除されてフォークはストライカから外れる。ラッチ解除によりドアが開放可能となる。
【0003】
特許文献1には、衝突時には車両に作用する慣性により、アウタハンドルには、乗員による操作時と同様の動き、つまりドアに対して相対的に車幅方向外向きの動きが起こり得ることが記載されている。この動きによりラッチ解除となり得る。
【0004】
特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、衝突時の車両に慣性が作用した時に、アウタハンドルの動きをラッチ機構に伝達するロッドの移動を阻止するストッパ部材を備える。このストッパ部材は、衝突時の慣性によるアウタハンドルの動きに起因するラッチ解除を防止することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアが変形する。特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、かかるドアの変形に起因してラッチ解除となるのを防止することについて、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る車両用ドアロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、一端に前記ハンドルベースの上部に接続された接続部を備え、他端に前記レバーに係合可能な係合部を備え、前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向である第1方向に対向する対向部とを備え、前記ロッドは、前記接続部から、前記対向部に向けて前記第1方向に沿って延びる第1部分と、前記第1部分から、前記第1方向と交差し、かつ前記対向部に沿った第2方向に延びる第2部分とを備える、車両用ドアロック装置を提供する。
【0009】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアのアウタパネルが変形する。ドアの車長方向の長さが長いドアのデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネルが変形し得る。衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第2部分が対向部に速やかに当接し、ロッドの第1部分が衝突荷重入力を支承する。言い換えれば、ハンドルベースと対向部との間にロッドの第1部分が挟み込まれ、ハンドルベースの対向部に対する相対的な移動を拘束する。この移動の拘束により、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転し、それによってレバーが移動してしまうことが阻止される。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形に起因してラッチ解除となるのを防止し得る。
【0010】
前記ロッドの前記第2部分と前記対向部との間に隙間が設けられる。
【0011】
この構成により、通常時にロッドに要求される動作が確保される。
前記第1方向は前記車両の車幅方向であり、前記第2方向は前記車両の車長方向であってもよい。
【0012】
前記ロッドの前記第1部分は、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びてもよい。
【0013】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第1部分が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0014】
前記ロッドの前記第2部分は、前記対向部に対して平行な方向に沿って延びてもよい。
【0015】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第1部分を介して作用する衝突荷重入力を、対向部が確実に受け止めることできる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0016】
前記ロッドの前記第2部分は、前記車長方向の後方側に向かって延び、前記ロッドは、前記第2部分の前記車長方向の前記後方側の端部から車高方向の下方側に向かって延びる第3部分を備え、前記ロッドの前記第3部分の下端が前記係合部に接続してもよい。
【0017】
この構成によれば、ロッドの大部分がドアの車長方向の後方側に位置するので、車両用ドアロック装置の組み立て性を確保できる。
【0018】
前記ラッチ機構が前記対向部を備えてもよい。
【0019】
この構成によれば、ラッチ機構が対向部を兼ねるので、部品点数増を抑制できる。
【0020】
前記ラッチ機構は、前記インナパネルの内側に配置されたベース部と、前記ベース部の前記車長方向の後方側の部分から前記車幅方向に前記アウタパネルに向けて突出している突出部とを備え、前記ベース部が前記対向部を備え、前記ロッドの前記第2部分は前記突出部の先端よりも前記ベース部側に位置してもよい。
【0021】
この構成によれば、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第2部分が確実に対向部に当接する。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る車両用ドアロック装置によれば、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のサイドドアの車両幅方向外側から見た図。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のサイドドアの分解斜視図。
【
図5】ハンドル機構とロッドを車幅方向内側から見た図。
【
図10】車両用ドアロック装置を車高方向上側から見た図。
【
図11】車両用ドアロック装置を車長方向前方側から見た図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。添付図面において、X方向、Y方向、及びX方向はそれぞれ、車長方向、車幅方向、及び車高方向を示す。
【0025】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置1は、車両のドア2と共に、ドア構造3を構成する。本実施形態では、ドア2はリアサイドドアである。本発明は、リアサイドドア以外の車両のドアにも適用できる。
【0026】
ドア2はアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6を備える。アウタパネル4とインナパネル5は、車幅方向(第1方向)に対向している。ドア2のアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6によって閉空間7が画定されている(
図3,4を併せて参照)。以下の説明では、アウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6について、閉空間7側の面について「内側」、閉空間7とは反対側の面について「外側」という用語を、それぞれ使用する場合がある。
【0027】
図2から
図4を参照すると、車両用ドアロック装置1は、ハンドル機構10、ラッチ機構20、及びロッド30を備え、ドア2の車長方向の後方側に配置されている。
【0028】
(ハンドル機構)
図1から
図3を参照すると、ハンドル機構10は、アウタパネル4の内側(閉空間7内)に配置されたハンドルベース11と、アウタパネル4の外側に配置されたアウタハンドル12とを備える。ハンドルベース11とアウタハンドル12はいずれも、車長方向に沿うように配置されている。
【0029】
図5も併せて参照すると、アウタハンドル12は、ハンドルベース11に可動状態で保持されている。つまり、アウタハンドル12の車長方向(第2方向)の前方側から突出する第1端部12aがアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって旋回可能に支持され、アウタハンドル12の車長方向の後方側から突出する第2端部12bもアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって車幅方向に進退可能に支持されている。通常時には、乗員によるアウタハンドル12を車幅方向の外側に向けて旋回させる操作(開扉操作)より、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放可能となる。
【0030】
図5及び
図8を参照すると、ハンドルベース11は、車長方向の後方側であって、車長方向の上側に支持軸16を備える。この支持軸16には、カウンタウェイト13を備えるレバーアーム14が回動可能に支持されている。レバーアーム14の上端のロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが挿通されて、回転可能な状態で保持されている。
【0031】
レバーアーム14は、開扉操作によるアウタハンドル12の第2端部12bの移動に連動して、
図8において矢印A1で示す向きに回転する。この回転により、ロッド保持部14aが車高方向の下向きに移動し、それに伴ってロッド30が車高方向の下向きに降下する。ロッド30が降下すると、ロッド30に設けられた後述のクランク状部30gが、ラッチ機構20が備えている後述のオープンレバー25を押し下げて下向きに回動させる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。支持軸16には、レバーアーム14を弾性的に付勢するコイルスプリング15が装着されている。カウンタウェイト13とコイルスプリング15は、
図8に示すように、矢印A2の向き(前述の矢印A1とは逆向き)、つまりラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる向きとは逆向きに回転するように、レバーアーム14を付勢している。
【0032】
(ラッチ機構)
図3、
図4、及び
図8から
図11を参照すると、ラッチ機構20は、インナパネル5の内側(閉空間7内)に配置されている。ラッチ機構20は、ベース部21と突出部22を備える。ベース部21は、インナパネル5の内側に沿って車長方向に延びるように配置されている。突出部22は、ベース部21の車長方向の後方側の部分から、車幅方向にアウタパネル4に向けて突出している。突出部21は、エンドパネル6の内側に沿って配置されている。ベース部21と突出部22は、半割構造のケーシング23により構成されている。
【0033】
突出部22には、車体のストライカ(図示せず)に係脱するフォーク24(
図8にのみ図示)と、クローレバー(図示せず)が収容されている。
【0034】
ベース部21にはラッチ解除のためのオープンレバー25が備えられている。また、ベース部21には、ラッチ機構20をアンロック状態とロック状態に切り換えるための、リンク、モータのような要素を含む機構(図示せず)が収容されている。通常時、ラッチ機構20がアンロック状態であれば、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられると、ラッチ機構20はラッチ状態(クローレバーがフォーク24をストライカに係止した位置で保持する状態)からラッチ解除(クローレバーによるフォーク24の保持が解除されてフォーク24はストライカから外れる状態)に切り替わる。一方、ラッチ機構20がロック状態であると、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられても、ラッチ機構はラッチ状態からラッチ解除に切り換わらない。
【0035】
(ロッド)
本実施形態におけるロッド30は、直径4.0~6.0mmの鋼製の丸棒を後述する形状に屈曲させたものである。
【0036】
図8を参照すると、ロッド30は、ハンドル機構10のアウタハンドル12の動作を、ラッチ機構20のオープンレバー25に伝達する。具体的には、通常時、アウタハンドル12が開扉操作されると、ハンドル機構10のレバーアーム14の矢印A1の向きの回転に伴い、ロッド30が車幅方向の下向きに移動し、クランク状部30gがオープンレバー25を押し下げる。
【0037】
図5及び
図8を参照すると、ハンドル機構10とラッチ機構20に関連して既に説明したように、ハンドルベース11の車高方向の上側にレバーアーム14が回動可能に支持され、レバーアーム14の上端に設けられたロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが保持されている。つまり、本実施形態では、ロッド30の一端がハンドルベース11の車高方向の上部にレバーアーム14を介して接続されている。
【0038】
以下、
図6から
図11を参照して、ロッド30の詳細を説明する。
【0039】
ロッド30は、被保持部(接続部)30a、第1部分30b、第2部分30d、クランク状部(係合部)30g、及び差込部30kを備える。ロッド30の一端に被保持部30aがあり、他端にクランク状部30gと差込部30kがある。
【0040】
図8から
図11に明瞭に示されているように、被保持部30aは車長方向に直線状に延びており、車長方向の前方側からレバーアーム14のロッド保持部14aに挿通されている。被保持部30aはロッド保持部14aに、回転可能な状態で保持されている。
【0041】
被保持部30aの車長方向の前方側の端部に、第1部分30bが接続されている。第1部分30bは、被保持部30aからラッチ機構20のベース部21に向けて車幅方向に直線状に延びている。特に、第1部分30bは、ベース部21の車幅方向での内側面21aに直交する方向に延びている。この内側面21aは、ハンドルベース11に対して車幅方向に対向しており、本発明の対向部の一例である。
【0042】
第1部分30bの車幅方向の内側の端部に、第2部分30cが接続されている。第2部分30cは、第1部分30bから車長方向の後方側に延びている。言い換えれば、第2部分30cは、第1部分30bから車幅方向と直交し、かつ内側面21aに平行な方向に延びている。
【0043】
ロッド30の第2部分30cと、ラッチ機構20、より具体的には、ベース部21の内側面21aとの間に隙間Gが設けられている。この隙間Gにより、通常時にロッド30に要求される動作が確保される。隙間Gは、5~15mm、例えば10mmに設定される。
【0044】
図10に最も明瞭に示すように、ロッド30の第2部分30cは、ラッチ機構20の突出部22の先端よりもラッチ機構20のベース部21側、より具体的には前述のように本発明の対向部の一例である内側面21a側に位置している。
【0045】
第2部分30cの車長方向の後方側の端部に、第3部分30dが接続されている。第3部分30dは全体として、第2部分30cから車高方向の下方側に延びている。第3部分30dの下端がクランク状部30gに接続している。また、クランク状部30gの下端が差込部30kに接続している。
【0046】
第3部分30dは、斜行部30eと垂下部30fとを備える。
【0047】
斜行部30eは、一端が第2接続部30cに接続され、他端が垂下部30fに接続されている。斜行部30eは、平面視では、第2部分30cの車長方向の後方側の端部からインナパネル5に向けて、インナパネル5に近づくほど車長方向の後方側へ向かうように傾斜して直線状に延びている。また、斜行部30eは、平面視では、インナパネル5に近づくほど車高方向の下方側に向かうように僅かに傾斜して直線状に延びている。
【0048】
垂下部30fは、一端が斜行部30eに接続され、他端がクランク状部30gに接続されている。垂下部30fは、斜行部30eから車高方向の下方側へ直線状に延びている。
【0049】
クランク状部30gは、上側部30h、中央部30i、及び下側部30jを備える。
【0050】
上側部分30hは、第3部分30dの垂下部30fから、平面視でアウタパネル4に向かって僅かに傾斜し、かつ車高方向にも僅かに傾斜して直線状に延びている。
【0051】
中央部30iは、上側部分30hから、車長方向の下方側に直線状に延びている。
【0052】
下側部30jは、中央部30iから、平面視でアウタパネル4に向かって僅かに傾斜し、かつ車高方向にも僅かに傾斜して直線状に延びている。
【0053】
例えば
図8を参照すれば理解できるように、ロッド30が車長方向の下向きに降下するとクランク状部30g、より具体的には下側部30jがラッチ機構20のオープンレバー25を押し下げて回動させる。
【0054】
差込部30kは、クランク状部30gの下側部30jから、車長方向の下側に直線状に延びている。差込部30kは、ロッド30のオープンレバー25に対する相対的な昇降が許容されるように、オープンレバー25に差し込まれている。
【0055】
(衝突時の車両用ドアロック装置の挙動)
ロッド30について上述した形状を採用しないと仮定した場合、衝突、特に側突に際して、車両用ドアロック装置1は以下のような挙動を示す。
【0056】
衝突荷重入力によりドア2のアウタパネル4が変形する。ドア2の車長方向の長さのようなドア2のデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、
図3において矢印Bで概念的に示すように、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネル4が変形する。ハンドルベース11の上部が
図3の矢印Bのように回転すると、ロッド30が下向きに移動してオープンレバー25が押し下げられる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放してしまう可能性がある。
【0057】
これに対し、本実施形態の車両用ドアロック装置1の場合、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第2部分30cがラッチ機構20のベース部21、より具体的にはベース部21の内側面21aに速やかに当接し、ロッド30の第1部分30bが衝突荷重入力を支承する。言い換えれば、ハンドルベース11とラッチ機構20のベース部21との間にロッド30の第1部分30bが挟み込まれ、ハンドルベース11のラッチ機構20のベース部21に対する相対的な移動を拘束する。この移動の拘束により、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転し、それによってロッド30が車長方向の下方側へ移動することが阻止される。そして、ロッド30の降下が阻止されることで、ロッド30によってオープンレバー25が押し下げられることが阻止される。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形に起因してラッチ機構20がラッチ解除となるのを防止し得る。
【0058】
前述のように、ロッド30の第1部分30bは、ラッチ機構20のベース部21の内側面21aに対して直交する方向に延びている。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第1部分30bが衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0059】
前述のように、ロッド30の第2部分30cは、ラッチ機構20のベース部21の内側面21aに対して平行に延びている。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第1部分30bを介して作用する衝突荷重入力を、ベース部21の内側面21aが確実に受け止めることできる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0060】
前述のように、ロッド30の第2部分30cは、ラッチ機構20の突出部22の先端よりもラッチ機構20のベース部21側に位置している。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第2部分30aが確実にラッチ機構20のベース部21の内側面21aに当接する。
【0061】
ラッチ機構20のベース部21が、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時にロッド30が当接し、衝突荷重を支承する機能、つまり本発明の対向部の機能を兼ねている。そのため、対向部として機能する部品を別途設ける場合と比較して部品点数増を抑制できる。しかし、ラッチ機構20のベース部21以外を対向部としても良いし、対向部として機能する部品を別途設けても良い。
【0062】
ロッド30は、第2部分30cの車長方向の後方側の端部に接続されて全体として車高方向の下方側に延びる第3部分30dを備え、この第3部分30dの下端にクランク状部30gと差込部30kが設けられている。従って、ロッド30の大部分がドア2の車長方向の後方側に配置される。かかるロッド30の後方配置により、車両用ドアロック装置1の組み立て時に、インナパネル5のサービスホール5a(
図2参照)からラッチ機構20を閉空間7に持ち込む際、ロッド30がラッチ機構20に干渉するのを回避できる。従って、車両用ドアロック装置1の組み立て性を確保できる。
【符号の説明】
【0063】
1 車両用ドアロック装置
2 ドア
3 ドア構造
4 アウタパネル
5 インナパネル
5a サービスホール
6 エンドパネル
7 閉空間
10 ハンドル機構
11 ハンドルベース
12 アウタハンドル
12a 第1端部
12b 第2端部
13 カウンタウェイト
14 レバーアーム
14a ロッド保持部
15 コイルスプリング
16 支持軸
20 ラッチ機構
21 ベース部
21a 内側面
22 突出部
23 ケーシング
24 フォーク
25 オープンレバー(レバー)
30 ロッド
30a 被保持部(接続部)
30b 第1部分
30c 第2部分
30d 第3部分
30e 斜行部
30f 垂下部
30g クランク状部(係合部)
30k 差込部
A1 レバーアームの回転の向き
A2 レバーアームの回転と逆の向き
B 衝突時のハンドルベースの上部の動き
G 隙間