(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125894
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
E05B 77/04 20140101AFI20230831BHJP
E05B 79/12 20140101ALI20230831BHJP
E05B 79/22 20140101ALI20230831BHJP
B60J 5/00 20060101ALI20230831BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
E05B77/04
E05B79/12
E05B79/22 A
B60J5/00 M
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030245
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】池本 峻
(72)【発明者】
【氏名】駒路 知博
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】五十幡 大地
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】中本 晶子
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸治
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中桐 涼平
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健人
(72)【発明者】
【氏名】東畑 祐輝
(72)【発明者】
【氏名】小松 航輝
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250LL01
2E250PP12
2E250QQ05
2E250QQ09
(57)【要約】
【課題】衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る車両用ドアロック装置を提供する。
【解決手段】アウタハンドル12の動作をラッチ機構20のオープンレバー25に伝達するロッド30は、ラッチ機構20のベース部21に向けて延びる第1部分30bと、第1部分30bから車長方向に延びる第2部分30cと、第2部分30cから下方側に延びる第3部分30dとを備え、第3部分30dは、ハンドルベース11の下部に向けて傾斜して延びる斜行部30eを備える。衝突荷重入力によるアウタパネル5の変形開始時に、ロッド30の第2部分30cがラッチ機構20のベース部21に当接し、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転することが阻止される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、
ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、
一端に前記ハンドルベースの上部に接続された接続部を備え、他端に前記レバーに係合可能な係合部を備え、前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、
前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向である第1方向に対向する対向部と
を備え、
前記ロッドは、
前記接続部から、前記対向部に向けて前記第1方向に沿って延びる第1部分と、
前記第1部分から、前記第1方向と交差し、かつ前記対向部に沿った第2方向に延びる第2部分と、
前記第2部分から下方側に延び、前記係合部に接続された第3部分と
を備え、前記接続部の軸線まわりに回動可能であり、
前記ロッドの前記第3部分は、前記ハンドルベースの下部に向けて傾斜して延びる斜行部を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記ロッドの前記斜行部は、前記係合部よりも前記ハンドルベース側に突出している、請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記斜行部の下端は、前記ハンドルベースの下部のうち最も前記対向部側に位置する内端部に対向している、請求項1又は2に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項4】
前記ハンドルベースの前記内端部には、前記ラッチ機構から離れる向きに窪む凹部が設けられており、
前記ロッドの前記第3部分は、前記斜行部に屈曲部を介して連なり、前記ハンドルベースから離れる向きに延びる下行部を備え、
前記屈曲部が前記ハンドルベースの前記凹部に対向している、
請求項3に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記第2部分と前記対向部の間に隙間を有する、請求項1から4のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記ロッドの前記第1部分は、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びている、請求項1から5のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記ロッドの前記第2部分は、前記対向部に対して平行な方向に沿って延びる、請求項1から6のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項8】
前記第1方向は前記車両の車幅方向で、前記第2方向は前記車両の車長方向であり、
前記ロッドの前記第2部分は、前記車長方向の後方側に向かって延び、
前記ロッドの前記第3部分は、前記第2部分の前記車長方向の前記後方側の端部に連なっている、
請求項1から7のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項9】
前記ラッチ機構は、
前記インナパネルの内側に配置されたベース部と、
前記ベース部の前記車長方向の後方側の部分から前記車幅方向に前記アウタパネルに向けて突出している突出部と
を備え、
前記ベース部が前記対向部を備え、
前記ロッドの前記第2部分は前記突出部の先端よりも前記ベース部側に位置している、請求項8に記載の車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置は、車両のドアに備えられる。車両用ドアロック装置は、アウタハンドルを含むハンドル機構と、ラッチ機構とを備える。ラッチ機構は、車体のストライカに係脱するフォークと、クローレバーとを備える。ラッチ機構は、乗員によるアウタハンドルの操作で、ラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる。ラッチ状態では、クローレバーがフォークをストライカに係止した位置で保持する。ラッチ解除では、クローレバーによるフォークの保持が解除されてフォークはストライカから外れる。ラッチ解除によりドアが開放可能となる。
【0003】
特許文献1には、衝突時には車両に作用する慣性により、アウタハンドルには、乗員による操作時と同様の動き、つまりドアに対して相対的に車幅方向外向きの動きが起こり得ることが記載されている。この動きによりラッチ解除となり得る。
【0004】
特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、衝突時の車両に慣性が作用した時に、アウタハンドルの動きをラッチ機構に伝達するロッドの移動を阻止するストッパ部材を備える。このストッパ部材は、衝突時の慣性によるアウタハンドルの動きに起因するラッチ解除を防止することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアが変形する。特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、かかるドアの変形に起因してラッチ解除となるのを防止することについて、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る車両用ドアロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、一端に前記ハンドルベースの上部に接続された接続部を備え、他端に前記レバーに係合可能な係合部を備え、前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向である第1方向に対向する対向部とを備え、前記ロッドは、前記接続部から、前記対向部に向けて前記第1方向に沿って延びる第1部分と、前記第1部分から、前記第1方向と交差し、かつ前記対向部に沿った第2方向に延びる第2部分と、前記第2部分から下方側に延び、前記係合部に接続された第3部分とを備え、前記接続部の軸線まわりに回動可能であり、前記ロッドの前記第3部分は、前記ハンドルベースの下部に向けて傾斜して延びる斜行部を備える、車両用ドアロック装置を提供する。
【0009】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアのアウタパネルが変形する。ドアの車長方向の長さが大きいドアのデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネルが変形し得る。衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第2部分が対向部に速やかに当接し、ロッドの第1部分が衝突荷重入力を支承する。また、ロッドの斜行部の下端又は斜行部の下端に連なる部分がハンドルベースの下部に速やかに当接し、ロッドの斜行部が衝突荷重入力を支承する。言い換えれば、ハンドルベースと対向部との間にロッドの第1部分と第3部分の斜行部が挟み込まれ、ハンドルベースの対向部に対する相対的な変位を拘束する。この変位の拘束により、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転し、それによってロッドが下向きに移動して、レバーが変位してしまうことが阻止される。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形に起因してラッチ解除となるのを防止し得る。
【0010】
車両用ドアロック装置の組み立てるときには、ロッドを組み付けたハンドルベースをアウタパネルに取り付けた後、ラッチ機構を取り付ける。この際、ラッチ機構のレバーに係合部を係合していないロッドは自重で回動可能なため、ロッドの係合部がハンドルベースの下方に入り込み、ロッドの係合部とラッチ機構のレバーとの係合が困難になり得る。これに対し、ロッドの係合部をラッチ機構のレバーに係合していない状態では、ハンドルベースに対してロッドが自重で回動すると、ロッドの斜行部の下端又は斜行部の下端に連なる部分がハンドルベースの下部に当接する。これにより、ロッドの自重による回動によって、ロッドの係合部がハンドルベースの下方に入り込むのを防止できる。よって、アウタパネルとインナパネルの間の狭いドア内に、ロッドを含むハンドルベースを取り付けた後、引き続いてラッチ機構を取り付けるときの、ロッドの係合部とラッチ機構のレバーとの組み付け性を確保できる。
【0011】
前記ロッドの前記斜行部は、前記係合部よりも前記ハンドルベース側に突出していてもよい。
【0012】
この構成により、ロッドの斜行部が係合部よりも対向部側に位置する場合と比較して、車両用ドアロック装置の組み立て時、ロッドの回動によって斜行部の下端又は斜行部の下端に連なる部分がハンドルベースに当接すると、ロッドの係合部が対向部側に位置する。よって、ロッドとラッチ機構のオープンレバーとの組み付け性を確保できる。
【0013】
前記斜行部の下端は、前記ハンドルベースの下部のうち最も前記対向部側に位置する内端部に対向していてもよい。
【0014】
この構成により、車両用ドアロック装置の組み立て時、ロッドの回動によって斜行部の下端又は斜行部の下端に連なる部分がハンドルベースに当接すると、ロッドの係合部がハンドルベースの内端部の近傍に位置する。ロッドとラッチ機構のオープンレバーとの組み付け性を確保できる。
【0015】
前記ハンドルベースの前記内端部には、前記ラッチ機構から離れる向きに窪む凹部が設けられており、前記ロッドの前記第3部分は、前記斜行部に屈曲部を介して連なり、前記ハンドルベースから離れる向きに延びる下行部を備え、前記屈曲部が前記ハンドルベースの前記凹部に対向していてもよい。
【0016】
この構成によれば、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、屈曲部がハンドルベースの凹部に入り込み、ロッドの下方への移動を阻止できる。これにより、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形に起因してラッチ解除となるのを防止し得る。また、車両用ドアロック装置の組み立て時には、自重によってロッドが回動すると、屈曲部がハンドルベースの凹部に入り込む。これにより、ハンドルベースに対するロッドの回転を抑制できるため、ロッドとラッチ機構のオープンレバーとの組み付け性を確保できる。
【0017】
前記第2部分と前記対向部の間に隙間を有する。
【0018】
この構成により、通常時にロッドに要求される動作が確保される。
【0019】
前記ロッドの前記第1部分は、前記対向部に対して直交する方向に沿って延びていてもよい。
【0020】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第1部分が衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0021】
前記ロッドの前記第2部分は、前記対向部に対して平行な方向に沿って延びてもよい。
【0022】
この構成により、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第1部分を介して作用する衝突荷重入力を、対向部が確実に受け止めることができる。その結果、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0023】
前記第1方向は前記車両の車幅方向で、前記第2方向は前記車両の車長方向であり、前記ロッドの前記第2部分は、前記車長方向の後方側に向かって延び、前記ロッドの前記第3部分は、前記第2部分の前記車長方向の前記後方側の端部に連なっていてもよい。
【0024】
この構成によれば、ロッドの大部分がドアの車長方向の後方側に位置するので、車両用ドアロック装置の組み立て性を確保できる。
【0025】
前記ラッチ機構は、前記インナパネルの内側に配置されたベース部と、前記ベース部の前記車長方向の後方側の部分から前記車幅方向に前記アウタパネルに向けて突出している突出部とを備え、前記ベース部が前記対向部を備え、前記ロッドの前記第2部分は前記突出部の先端よりも前記ベース部側に位置してもよい。
【0026】
この構成によれば、ラッチ機構のベース部が対向部を兼ねるので、部品点数増を抑制できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る車両用ドアロック装置によれば、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のサイドドアの車両幅方向外側から見た図。
【
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のサイドドアの分解斜視図。
【
図5A】ハンドル機構とロッドを車幅方向内側から見た図。
【
図10】車両用ドアロック装置を車高方向上側から見た図。
【
図11】車両用ドアロック装置を車長方向前側から見た図。
【
図12】車両用ドアロック装置を組み立てる状態を示す
図11と同様の図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。添付図面において、X方向、Y方向、及びZ方向はそれぞれ、車長方向、車幅方向、及び車高方向を示す。
【0030】
図1及び
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置1は、車両のドア2と共に、ドア構造3を構成する。本実施形態では、ドア2はリアサイドドアである。本発明は、リアサイドドア以外の車両のドアにも適用できる。
【0031】
ドア2はアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6を備える。アウタパネル4とインナパネル5は、車幅方向(第1方向)に対向している。ドア2のアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6によって閉空間7が画定されている(
図3,4を併せて参照)。以下の説明では、アウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6について、閉空間7側の面について「内側」、閉空間7とは反対側の面について「外側」という用語を、それぞれ使用する場合がある。
【0032】
図2から
図4を参照すると、車両用ドアロック装置1は、ハンドル機構10、ラッチ機構20、及びロッド30を備え、ドア2の車長方向の後方側に配置されている。
【0033】
(ハンドル機構)
図1から
図3を参照すると、ハンドル機構10は、アウタパネル4の内側(閉空間7内)に配置されたハンドルベース11と、アウタパネル4の外側に配置されたアウタハンドル12とを備える。ハンドルベース11とアウタハンドル12はいずれも、車長方向に沿うように配置されている。
【0034】
図5Aも併せて参照すると、アウタハンドル12は、ハンドルベース11に可動状態で保持されている。つまり、アウタハンドル12の車長方向(第2方向)の前方側から突出する第1端部12aがアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって旋回可能に支持され、アウタハンドル12の車長方向の後方側から突出する第2端部12bもアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって車幅方向に進退可能に支持されている。通常時には、乗員によるアウタハンドル12を車幅方向の外側に向けて旋回させる操作(開扉操作)より、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放可能となる。
【0035】
図5A、
図5B、及び
図8を参照すると、ハンドルベース11は、車長方向の後方側であって、車高方向の上側に支持軸16を備える。この支持軸16には、カウンタウェイト13を備えるレバーアーム14が回動可能に支持されている。レバーアーム14の上端のロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが挿通されて、回転可能な状態で保持されている。
【0036】
レバーアーム14は、開扉操作によるアウタハンドル12の第2端部12bの移動に連動して、
図8において矢印A1で示す向きに回転する。この回転により、ロッド保持部14aが車高方向の下向きに移動し、それに伴ってロッド30が車高方向の下向きに降下する。ロッド30が降下すると、ロッド30に設けられた後述の係合部30cが、ラッチ機構20が備えている後述のオープンレバー25を押し下げて下向きに回動させる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。支持軸16には、レバーアーム14を弾性的に付勢するコイルスプリング15が装着されている。コイルスプリング15は、
図8に示すように、矢印A2の向き(前述の矢印A1とは逆向き)、つまりラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる向きとは逆向きに回転するように、レバーアーム14を付勢している。
【0037】
(ラッチ機構)
図3、
図4、及び
図8から
図11を参照すると、ラッチ機構20は、インナパネル5の内側(閉空間7内)に配置されている。ラッチ機構20は、ベース部21と突出部22を備える。ベース部21は、インナパネル5の内側に沿って車長方向に延びるように配置されている。突出部22は、ベース部21の車長方向の後方側の部分から、車幅方向にアウタパネル4に向けて突出している。突出部21は、エンドパネル6の内側に沿って配置されている。ベース部21と突出部22は、半割構造のケーシング23により構成されている。
【0038】
突出部22には、車体のストライカ(図示せず)に係脱するフォーク24(
図8にのみ図示)と、クローレバー(図示せず)が収容されている。
【0039】
ベース部21にはラッチ解除のためのオープンレバー25が備えられている。また、ベース部21には、ラッチ機構20をアンロック状態とロック状態に切り換えるための、リンク、モータのような要素を含む機構(図示せず)が収容されている。通常時、ラッチ機構20がアンロック状態であれば、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられると、ラッチ機構20はラッチ状態(クローレバーがフォーク24をストライカに係止した位置で保持する状態)からラッチ解除(クローレバーによるフォーク24の保持が解除されてフォーク24はストライカから外れる状態)に切り換わる。一方、ラッチ機構20がロック状態であると、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられても、ラッチ機構はラッチ状態からラッチ解除に切り換わらない。
【0040】
(ロッド)
本実施形態におけるロッド30は、直径4.0~6.0mmの鋼製の丸棒を後述する形状に屈曲させたものである。
【0041】
図8を参照すると、ロッド30は、ハンドル機構10のアウタハンドル12の動作を、ラッチ機構20のオープンレバー25に伝達する。具体的には、通常時、アウタハンドル12が開扉操作されると、ハンドル機構10のレバーアーム14の矢印A1の向きの回転に伴い、ロッド30が車高方向の下向きに移動し、係合部30hがオープンレバー25を押し下げる。
【0042】
図5A、
図5B、及び
図8を参照すると、ハンドル機構10とラッチ機構20に関連して既に説明したように、ハンドルベース11の車高方向の上側にレバーアーム14が回動可能に支持され、レバーアーム14の上端に設けられたロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが保持されている。つまり、本実施形態では、ロッド30の一端がハンドルベース11の車高方向の上部にレバーアーム14を介して接続されている。
【0043】
以下、
図6から
図11を参照して、ロッド30の詳細を説明する。
【0044】
ロッド30は、被保持部(接続部)30a、第1部分30b、第2部分30d、第3部分30d、係合部30h、及び差込部30iを備える。ロッド30の一端に被保持部30aがあり、他端に係合部30hと差込部30iがある。
【0045】
図8から
図11に明瞭に示されているように、被保持部30aは車長方向に直線状に延びており、車長方向の前方側からレバーアーム14のロッド保持部14aに挿通されている。被保持部30aはロッド保持部14aに、回転可能な状態で保持されている。これにより、ロッド30は、被保持部30aの軸線まわりに回動可動になっている。
【0046】
被保持部30aの車長方向の前方側の端部に、第1部分30bが接続されている。第1部分30bは、被保持部30aからラッチ機構20のベース部21に向けて車幅方向に直線状に延びている。特に、第1部分30bは、ベース部21の車幅方向での内側面21aに直交する方向に延びている。この内側面21aは、ハンドルベース11に対して車幅方向に対向しており、本発明の対向部の一例である。本実施形態のベース部21のように表面から複数のリブが突出している場合、内側面21aは複数のリブの先端からなる仮想面として定義することもできる。
【0047】
第1部分30bの車幅方向の内側の端部に、第2部分30cが接続されている。第2部分30cは、第1部分30bから車長方向の後方側に延びている。言い換えれば、第2部分30cは、第1部分30bから車幅方向と直交し、かつ内側面21aに平行な方向に延びている。
【0048】
ロッド30の第2部分30cと、ラッチ機構20、より具体的には、ベース部21の内側面21aとの間に隙間Gが設けられている。この隙間Gにより、通常時にロッド30に要求される動作が確保される。隙間Gは、5~15mm、例えば10mmに設定される。
【0049】
図10に最も明瞭に示すように、ロッド30の第2部分30cは、ラッチ機構20の突出部22の先端よりもラッチ機構20のベース部21側、より具体的には前述のように本発明の対向部の一例である内側面21a側に位置している。
【0050】
第2部分30cの車長方向の後方側の端部に、第3部分30dが接続されている。第3部分30dは全体として、第2部分30cから車高方向の下方側に延びている。第3部分30dの下端が係合部30hに接続している。
【0051】
第3部分30dは、斜行部30eと下行部30fとを備え、これらが屈曲部30gを介して連なっている。
【0052】
斜行部30eは、一端が第2接続部30cに接続され、他端が下行部30fに接続されている。
図11を参照すると、車高方向の上方側から見て斜行部30eは、第2部分30cの車長方向の後方側の端部からハンドルベース11の下部に向けて、下方側に傾斜して直線状に延びている。ここで、
図5Aを参照すると、ハンドルベース11の下部とは、カウンタウェイト13を含むレバーアーム14を除いたハンドルベース11の全高Hのうち、半分の位置よりも低い部分であり、半分の位置よりも高い部分が上部である。
【0053】
より具体的には、斜行部30eの下端は、ハンドルベース11の下部のうち最も車幅方向の内側(ベース部21の内側面21a側)に位置する内端部11eに対向している。
図5A及び
図5Bを参照すると、ハンドルベース11は、ハンドルベース本体11a、アウタハンドル12の第1端部12aを支持する軸支部11b、及びアウタハンドル12の第2端部12bを挿通する挿通部11cを備え、挿通部11cの上部にレバーアーム14が回動可能に取り付けられている。ハンドルベース本体11aの車長方向の後方側と、挿通部11cの車長方向の前方側には、その他の部分よりも車幅方向の内側に突出した突出部11dが設けられており、この突出部11dの内側端部が内端部11eである。また、
図5B及び
図10を参照すると、ハンドルベース11のうち突出部11dの車長方向の後方側には、ラッチ機構20のうち最も車幅方向の外側に突出したオープンレバー25の配置空間を確保するために、切欠部11fが設けられている。
【0054】
図5A及び
図10を参照すると、車高方向の上方側から見て斜行部30eは、ハンドルベース11に近づくに従って車長方向の前方側へ向かうように傾斜して直線状に延びている。
図11を参照して車長方向の前方側から見ると、斜行部30eの下端とハンドルベース11の内端部11eとの間には、隙間が設けられている。この隙間により、通常時にロッド30に要求される動作が確保される。
【0055】
下行部30fは、一端が斜行部30eに屈曲部30gを介して接続され、他端が係合部30hに接続されている。
図5A、
図5B、及び
図11を参照すると、下行部30fは、ハンドルベース11から離れるように、車幅方向の内側、かつ車高方向の下方側へ直線状に延びている。つまり、下行部30fの傾斜角度と斜行部30eの傾斜角度とは異なっている。これにより、斜行部30eと下行部30fの間には屈曲部30gが形成されている。
【0056】
下行部30fの車高方向の下方側の端部に、係合部30hが接続されている。係合部30hは、下行部30fからオープンレバー25の上方まで、車長方向の後方側に直線状に延び、かつ車高方向の下方側に僅かに傾斜している。
図8を参照すれば理解できるように、ロッド30が車高方向の下向きに降下すると係合部30hがラッチ機構20のオープンレバー25を押し下げて回動させる。
【0057】
係合部30hの車高方向の下方側の端部に、差込部30dが接続されている。差込部30dは、係合部30hから、車高方向の下側に直線状に延びている。差込部30dは、ロッド30のオープンレバー25に対する相対的な昇降が許容されるように、オープンレバー25に差し込まれている。
【0058】
(衝突時の車両用ドアロック装置の挙動)
ロッド30について上述した形状を採用しないと仮定した場合、衝突、特に側突に際して、車両用ドアロック装置1は以下のような挙動を示す。
【0059】
衝突荷重入力によりドア2のアウタパネル4が変形する。ドア2の車長方向の長さが大きいドア2のデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、
図3において矢印Bで概念的に示すように、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネル4が変形する。ハンドルベース11の上部が
図3の矢印Bのように回転すると、ロッド30が下向きに移動してオープンレバー25が押し下げられる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放してしまう可能性がある。
【0060】
これに対し、本実施形態の車両用ドアロック装置1の場合、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第2部分30cがラッチ機構20のベース部21、より具体的にはベース部21の内側面21aに速やかに当接し、ロッド30の第1部分30bが衝突荷重入力を支承する。また、ロッド30の斜行部30eの下端の屈曲部30g又は下行部30fがハンドルベース11の内端部11eの下部に速やかに当接し、ロッド30の斜行部30eが衝突荷重入力を支承する。言い換えれば、ハンドルベース11とラッチ機構20のベース部21との間にロッド30の第1部分30bと第3部分30dの斜行部30eが挟み込まれ、ロッド30のラッチ機構20のベース部21に対する相対的な移動を拘束する。この移動の拘束により、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転し、それによってロッド30が車長方向の下方側へ移動することが阻止される。そして、ロッド30の降下が阻止されることで、ロッド30によってオープンレバー25が押し下げられることが阻止される。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形に起因してラッチ解除となるのを防止し得る。
【0061】
(車両用ドアロック装置の組み立て時の挙動)
ロッド30について上述した形状を採用しないと仮定した場合、ドア2の閉空間7で車両用ドアロック装置1を組み立てる際、ロッド30は以下のような挙動を示す。
【0062】
ドア2の閉空間7にハンドルベース11、ロッド30、及びラッチ機構20を取り付けるときには、まず、ロッド30を組み付けたハンドルベース11をアウタパネル4に取り付けた後、インナパネル5のサービスホール5a(
図2参照)からラッチ機構20を取り付ける。この際、ロッド30はハンドルベース11に対して回動可能であり、ハンドルベース11のうちラッチ機構20のオープンレバー25と対向する位置には、配置空間の確保のための切欠部11fが形成されている。そのため、ロッド30の係合部30hをオープンレバー25に係合していない状態では、ロッド30が切欠部11f内に進入し、
図12に破線で示すように、ロッド30の係合部30hがハンドルベース11の下方に入り込み、アウタパネル4の近傍に位置する角度位置までロッド30が自重で回動し得る。この場合、ラッチ機構20のケーシング23がハンドルベース11に干渉、又はラッチ機構20のオープンレバー25がアウタパネル4に干渉するため、オープンレバー25にロッド30の差込部30iを差し込んで係合部30hと係合させるのは困難である。
【0063】
これに対し、本実施形態のロッド30は、ハンドルベース11の下部に向けて傾斜して延びる斜行部30eを有する第3部分30dを備える。そのため、
図12に示すように、ロッド30の係合部30hをオープンレバー25に係合していない状態では、ハンドルベース11に対してロッド30が自重で回動すると、斜行部30eの下端の屈曲部30g及び斜行部30eに連なる下行部30fのうち少なくとも一方が、ハンドルベース11の内端部11eの下部に当接する。これにより、ロッド30の自重による回動によって、ロッド30の係合部30hが、ハンドルベース11の下方に入り込み、アウタパネル4の近傍に位置するのを防止できる。よって、アウタパネル4とインナパネル5の間の狭いドア内に、ロッド30を含むハンドルベース11を取り付けた後、引き続いてラッチ機構を取り付けるときの、ロッド30とラッチ機構20のオープンレバー25との組み付け性を確保できる。
【0064】
前述のように、ロッド30の斜行部30eは、係合部30hよりもハンドルベース11側に突出している。そのため、ロッド30の斜行部30eが係合部30hよりもラッチ機構20のベース部21側に位置する場合と比較して、車両用ドアロック装置1の組み立て時、ロッド30の斜行部30eの下端又は下行部30fがハンドルベース11に当接すると、ロッド30の係合部30hがラッチ機構20のベース部21側に位置する。よって、ロッド30とラッチ機構20のオープンレバー25との組み付け性を確保できる。
【0065】
前述のように、斜行部30eの下端は、ハンドルベース11の下部のうち最もラッチ機構20のベース部21側に位置する内端部11eに対向している。そのため、車両用ドアロック装置1の組み立て時、ロッド30の回動によって斜行部30eの下端又は下行部30fがハンドルベース11に当接すると、ロッド30の係合部30hがハンドルベース11の内端部11eの近傍に位置する。よって、ロッド30とラッチ機構20のオープンレバー25との組み付け性を確保できる。
【0066】
前述のように、ロッド30の第1部分30bは、ラッチ機構20のベース部21に対して直交する方向に沿って延びている。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第1部分30bが衝突荷重入力を確実に支承できる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0067】
前述のように、ロッド30の第2部分30cは、ラッチ機構20のベース部21に対して平行な方向に沿って延びている。そのため、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第1部分30bを介して作用する衝突荷重入力を、ラッチ機構20のベース部21が確実に受け止めることができる。その結果、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するのを、より確実に阻止できる。
【0068】
前述のように、ロッド30の第2部分30cは車長方向の後方側に向かって延び、ロッド30の第3部分30dは、第2部分30cから車高方向の下方側に向かって延び、第3部分30dが係合部30hに接続されている。従って、ロッド30の大部分がドア2の車長方向の後方側に配置される。かかるロッド30の後方配置により、車両用ドアロック装置1の組み立て時に、インナパネル5のサービスホール5a(
図2参照)からラッチ機構20を閉空間7に配置する際、ロッド30がラッチ機構20に干渉するのを回避できる。よって、車両用ドアロック装置1の組み立て性を確保できる。
【0069】
前述のように、ラッチ機構20のベース部21が、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時にロッド30が当接する機能、つまり本発明の対向部の機能を兼ねている。そのため、対向部として機能する部品を別途設ける場合と比較して部品点数増を抑制できる。しかし、ラッチ機構20のベース部21以外を対向部としても良いし、対向部として機能する部品を別途設けても良い。
【0070】
本発明は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、ロッド30の屈曲部30gを、
図5A及び
図5Bに示すハンドルベース11のうち、アウタハンドル12の第2端部12bを挿通する挿通孔11gの第2端部12bが配置されていない凹部11hに対向させてもよい。この凹部11hの車高方向の高さは、第3部分30dの車高方向の長さよりも小さい。凹部11hは、ハンドルベース11の内端部11eに形成されラッチ機構20から離れる向きに窪む本発明の凹部の一例である。但し、凹部11hは、車高方向の下側の孔壁と車長方向の両側の孔壁によって画定され、車高方向の上方側は開放されていてもよい。
【0072】
このようにすれば、ハンドルベース11に対してロッド30が回動すると、屈曲部30g、斜行部30eの下方側の一部、及び下行部30fの上方側の一部が、ハンドルベース11の凹部11hに入り込むことが可能になる。よって、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、屈曲部30gがハンドルベース11の凹部11hに入り込み、凹部11hを画定する孔壁に上方から下行部30fが干渉し、ロッド30のラッチ機構20のベース部21に対する下向きの移動を規制する。これにより、ロッド30の降下が阻止されることで、ロッド30によってオープンレバー25が押し下げられることを確実に阻止できる。また、車両用ドアロック装置1の組み立て時にも、ハンドルベース11に対してロッド30が自重で回動すると、屈曲部30gが凹部11hに入り込み、凹部11hの孔壁に下行部30fが干渉する。つまり、ロッド30の第3部分30dの一部が挿通孔11gに係合する。これにより、ハンドルベース11に対するロッド30の回動を抑制できるため、ロッド30とラッチ機構20のオープンレバー25との組み付け性を確保できる。
【符号の説明】
【0073】
1 車両用ドアロック装置
2 ドア
3 ドア構造
4 アウタパネル
5 インナパネル
5a サービスホール
6 エンドパネル
7 閉空間
10 ハンドル機構
11 ハンドルベース
11a ハンドルベース本体
11b 軸支部
11c 挿通部
11d 突出部
11e 内端部
11f 切欠部
11g 挿通孔
11h 凹部
12 アウタハンドル
12a 第1端部
12b 第2端部
13 カウンタウェイト
14 レバーアーム
14a ロッド保持部
15 コイルスプリング
16 支持軸
20 ラッチ機構
21 ベース部
21a 内側面(対向部)
22 突出部
23 ケーシング
24 フォーク
25 オープンレバー
30 ロッド
30a 被保持部(接続部)
30b 第1部分
30c 第2部分
30d 第3部分
30e 斜行部
30f 下行部
30g 屈曲部
30h 係合部
30i 差込部
G 隙間
A1 レバーアームの回転の向き
A2 レバーアームの回転と逆の向き
B 衝突時のハンドルベースの上部の動き