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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125895
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】車両用ドアロック装置
(51)【国際特許分類】
   E05B 77/04 20140101AFI20230831BHJP
   E05B 79/12 20140101ALI20230831BHJP
   E05B 79/22 20140101ALI20230831BHJP
   B60J 5/00 20060101ALI20230831BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
E05B77/04
E05B79/12
E05B79/22 A
B60J5/00 M
B60J5/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030247
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000138462
【氏名又は名称】株式会社ユーシン
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【弁理士】
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】池本 峻
(72)【発明者】
【氏名】駒路 知博
(72)【発明者】
【氏名】中山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】五十幡 大地
(72)【発明者】
【氏名】辻 大介
(72)【発明者】
【氏名】中本 晶子
(72)【発明者】
【氏名】松下 幸治
(72)【発明者】
【氏名】古賀 俊之
(72)【発明者】
【氏名】中桐 涼平
(72)【発明者】
【氏名】河野 雄
(72)【発明者】
【氏名】大塚 健人
(72)【発明者】
【氏名】中 敦司
(72)【発明者】
【氏名】橋▲崎▼ 勇一
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ32
2E250LL01
2E250PP12
2E250QQ05
2E250QQ09
(57)【要約】
【課題】
衝突荷重入力によるアウタパネルの変形に起因してラッチ解除となるのを防止する。
【解決手段】
アウタハンドル12の動作をラッチ機構20のオープンレバー25に伝達するロッド30は、車幅方向に延びる第1部分30bと、車長方向に延びる第2部分30cを備える。ラッチ機構20の突出部22は車幅方向に延びる係止部40を備える。衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30の第2部分30cが当接して係止され、ロッド30の車長方向の下方側への移動が規制される。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、
ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、
一端に前記ハンドルベースの上部に接続された接続部を備え、他端に前記レバーに係合可能な係合部を備え、前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、
前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向である第1方向に対向する対向部と
を備え、
前記ロッドは、前記接続部から、前記対向部に向けて前記第1方向に沿って延びる第1部分と、前記第1部分から、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2部分とを備え、
前記対向部は、前記第1方向に沿って延び、前記ロッドの前記第2部分の下方に設けられた係止部を備える、車両用ドアロック装置。
【請求項2】
前記第1方向は前記車両の車幅方向であり、前記第2方向は前記車両の車長方向である、請求項1に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項3】
前記ロッドの前記第2部分と、前記対向部の前記係止部とは、前記車両の車高方向から見て互いに重なり合っている、請求項2に記載の車両ドアロック装置。
【請求項4】
前記ロッドの前記第2部分と、前記対向部の前記係止部との間に、前記アウタハンドルの動作と連動した前記ロッドの移動を許容する隙間が設けられている、請求項2又は3に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項5】
前記ロッドの前記第2部分は、
前記第1部分から、前記車長方向の後方側に斜め下方に向かって延びる第1傾斜部と、
前記第1傾斜部から、前記車長方向の後方側に斜め上方に向かって延び、前記係止部に当接される第2傾斜部と
を備える、請求項2から4のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項6】
前記対向部の前記係止部は、
前記車幅方向に延びる第1段部と、
前記第1段部に対して前記車高方向の下方に位置し、前記車幅方向に延びる第2段部と
を備える、請求項5に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項7】
前記車幅方向から見て、前記ロッドの前記第2部分の前記第2傾斜部は、前記対向部の前記係止部の第1段部と第2段部の外形輪郭がなす傾斜線に沿って延びている、請求項6に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項8】
前記ロッドは、前記第2部分から車高方向の下方側に向かって延びる第3部分を備え、
前記ロッドの前記第3部分の下端が前記係合部に接続している、請求項2から7のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項9】
前記ラッチ機構が前記対向部を備える、請求項2から8のいずれか1項に記載の車両用ドアロック装置。
【請求項10】
前記ラッチ機構は、
前記インナパネルの内側に配置されたベース部と、
前記ベース部の前記車長方向の後方側の部分から前記車幅方向に前記アウタパネルに向けて突出している突出部と
を備え、
前記突出部が前記対向部を備える、請求項9に記載の車両用ドアロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置は、車両のドアに備えられる。車両用ドアロック装置は、アウタハンドルを含むハンドル機構と、ラッチ機構とを備える。ラッチ機構は、車体のストライカに係脱するフォークと、クローレバーとを備える。ラッチ機構は、乗員によるアウタハンドルの操作で、ラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる。ラッチ状態では、クローレバーがフォークをストライカに係止した位置で保持する。ラッチ解除では、クローレバーによるフォークの保持が解除されてフォークはストライカから外れる。ラッチ解除によりドアが開放可能となる。
【0003】
特許文献1には、衝突時には車両に作用する慣性により、アウタハンドルには、乗員による操作時と同様の動き、つまりドアに対して相対的に車幅方向外向きの動きが起こり得ることが記載されている。この動きによりラッチ解除となり得る。
【0004】
特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、衝突時の車両に慣性が作用した時に、アウタハンドルの動きをラッチ機構に伝達するロッドの移動を阻止するストッパ部材を備える。このストッパ部材は、衝突時の慣性によるアウタハンドルの動きに起因するラッチ解除を防止することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009-243102号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアが変形する。特許文献1に記載の車両用ドアロック装置は、かかるドアの変形に起因してラッチ解除となるのを防止することについて、改善の余地がある。
【0007】
本発明は、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る車両用ドアロック装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、車両のドアのアウタパネルの内側に配置されたハンドルベースと、前記ハンドルベースに可動状態で保持されたアウタハンドルとを備えるハンドル機構と、ラッチ解除のためのレバーを備えるラッチ機構と、一端に前記ハンドルベースの上部に接続された接続部を備え、他端に前記レバーに係合可能な係合部を備え、前記アウタハンドルの動作を前記レバーに伝達するロッドと、前記ハンドルベースに対して前記アウタパネルと前記ドアのインナパネルが対向する方向である第1方向に対向する対向部とを備え、前記ロッドは、前記接続部から、前記対向部に向けて前記第1方向に沿って延びる第1部分と、前記第1部分から、前記第1方向と交差する第2方向に延びる第2部分とを備え、前記対向部は、前記第1方向に沿って延び、前記ロッドの前記第2部分の下方に設けられた係止部を備える、車両用ドアロック装置を提供する。
【0009】
衝突時、特に側突時、衝突荷重入力によりドアのアウタパネルが変形する。ドアの車長方向の長さのようなドアのデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、ハンドルベースの上部がインナパネルに接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネルが変形し得る。衝突荷重入力によるアウタパネルの変形開始時に、ロッドの第2部分が対向部に設けられた係止部に当接して係止され、それによって対向部に対するロッドの下向きの相対的な移動が規制される。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネルの変形に起因してラッチ解除となるのを防止し得る。
【0010】
例えば、前記第1方向は前記車両の車幅方向であり、前記第2方向は前記車両の車長方向である。
【0011】
前記ロッドの前記第2部分と、前記対向部の前記係止部とは、前記車両の車高方向から見て互いに重なり合っていてもよい。
【0012】
この構成により、衝突荷重入力時に、ロッドの第2部分が確実に対向面の係止部に当接して係止される。その結果、対向部に対するロッドの下向きの相対的な移動がより確実に規制される。言い換えれば、この構成により、衝突荷重入力時の対向部に対するロッドの下向きの相対的な移動規制についてのロバスト性が向上する。
【0013】
前記ロッドの前記第2部分と、前記対向部の前記係止部との間に、前記アウタハンドルの動作と連動した前記ロッドの移動を許容する隙間が設けられていてもよい。
【0014】
この構成により、通常時のアウタハンドルの操作に連動するロッドの移動、つまり通常時の車両用ドアロック装置の動作は保証しつつ、衝突荷重入力時の対向部に対するロッドの下向きの相対的な移動規制を実現できる。
【0015】
前記ロッドの前記第2部分は、前記第1部分から、前記車長方向の後方側に斜め下方に向かって延びる第1傾斜部と、前記第1傾斜部から、前記車長方向の後方側に斜め上方に向かって延び、前記係止部に当接される第2傾斜部とを備えてもよい。
【0016】
この構成によれば、ロッドの第2部分は車幅方向から見てV字状を呈するので、第2部分の強度を確保できる。その結果、衝突荷重入力時の対向部に対するロッドの下向きの相対的な移動をより確実に規制できる。
【0017】
前記対向部の前記係止部は、前記車幅方向に延びる第1段部と、前記第1段部に対して前記車高方向の下方に位置し、前記車幅方向に延びる第2段部とを備えてもよい。
【0018】
この構成によれば、衝突荷重入力時に、ロッドの第2部分の第2傾斜部が、対向部の係止部の第1段部と第2段部の少なくともいずれか一方に当接して係止される。その結果、衝突荷重入力時の対向部に対するロッドの下向きの相対的な移動をより確実に規制できる。
【0019】
前記車幅方向から見て、前記ロッドの前記第2部分の前記第2傾斜部は、前記対向部の前記係止部の第1段部と第2段部の外形輪郭がなす傾斜線に沿って延びていてもよい。
【0020】
この構成により、衝突荷重入力時、ロッドの第2部分の第2傾斜部が、対向部の係止部の第1段部と第2段部の2箇所に当接して係止され得る。ロッドが2箇所で係止部に当接して係止されることで、ロッドが係止部によって係止される強度が向上する。その結果、衝突荷重入力時の対向部に対するロッドの下向きの相対的な移動をより確実に規制できる。
【0021】
前記ロッドは、前記第2部分から車高方向の下方側に向かって延びる第3部分を備え、前記ロッドの前記第3部分の下端が前記係合部に接続していてもよい。
【0022】
この構成によれば、ロッドの大部分がドアの車長方向の後方側に位置するので、車両用ドアロック装置の組み立て性を確保できる。
【0023】
前記ラッチ機構が前記対向部を備えてもよい。
【0024】
この構成によれば、ラッチ機構が対向部を兼ねるので、部品点数増を抑制できる。
【0025】
例えば、前記ラッチ機構は、前記インナパネルの内側に配置されたベース部と、前記ベース部の前記車長方向の後方側の部分から前記車幅方向に前記アウタパネルに向けて突出している突出部とを備え、前記突出部が前記対向部を備えてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る車両用ドアロック装置によれば、衝突荷重入力によるドアの変形に起因して、ラッチ解除となるのを防止し得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のリアサイドドアの車両幅方向外側から見た図。
図2】本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置を備える車両のサイドドアの分解斜視図。
図3図1のIII-III線に沿った断面図。
図4図3のIV-IV線に沿った断面図。
図5】ハンドル機構とロッドを車幅方向内側から見た図。
図6】ロッドの斜視図。
図7】ロッドの斜視図。
図8】車両用ドアロック装置の斜視図。
図9】車両用ドアロック装置の斜視図。
図10】車両用ドアロック装置を車高方向上側から見た図。
図11】車両用ドアロック装置を車長方向前方側から見た図。
図12】ラッチ機構とロッドを車高方向上側から見た図。
図13】ラッチ機構とロッドを車長方向前方側から見た図。
図14図12のXII-XII線に沿った断面図。
図15】ラッチ機構の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明する。添付図面において、X方向、Y方向、及びZ方向はそれぞれ、車長方向、車幅方向、及び車高方向を示す。
【0029】
図1及び図2を参照すると、本発明の実施形態に係る車両用ドアロック装置1は、車両のドア2と共に、ドア構造3を構成する。本実施形態では、ドア2はリアサイドドアである。本発明は、リアサイドドア以外の車両のドアにも適用できる。
【0030】
ドア2はアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6を備える。アウタパネル4とインナパネル5は、車幅方向(第1方向)に対向している。ドア2のアウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6によって閉空間7が画定されている(図3,4を併せて参照)。以下の説明では、アウタパネル4、インナパネル5、及びエンドパネル6について、閉空間7側の面について「内側」、閉空間7とは反対側の面について「外側」という用語を、それぞれ使用する場合がある。
【0031】
図2から図4を参照すると、車両用ドアロック装置1は、ハンドル機構10、ラッチ機構20、及びロッド30を備え、ドア2の車長方向の後方側に配置されている。
【0032】
(ハンドル機構)
図1から図3を参照すると、ハンドル機構10は、アウタパネル4の内側(閉空間7内)に配置されたハンドルベース11と、アウタパネル4の外側に配置されたアウタハンドル12とを備える。ハンドルベース11とアウタハンドル12はいずれも、車長方向に沿うように配置されている。
【0033】
図5も併せて参照すると、アウタハンドル12は、ハンドルベース11に可動状態で保持されている。つまり、アウタハンドル12の車長方向(第2方向)の前方側から突出する第1端部12aがアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって旋回可能に支持され、アウタハンドル12の車長方向の後方側から突出する第2端部12bもアウタパネル4を貫通してハンドルベース11によって車幅方向に進退可能に支持されている。通常時には、乗員によるアウタハンドル12を車幅方向の外側に向けて旋回させる操作(開扉操作)より、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放可能となる。
【0034】
図5及び図8を参照すると、ハンドルベース11は、車長方向の後方側であって、車高方向の上側に支持軸16を備える。この支持軸16には、カウンタウェイト13を備えるレバーアーム14が回動可能に支持されている。レバーアーム14の上端のロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが挿通されて、回転可能な状態で保持されている。
【0035】
レバーアーム14は、開扉操作によるアウタハンドル12の第2端部12bの移動に連動して、図8において矢印A1で示す向きに回転する。この回転により、ロッド保持部14aが車高方向の下向きに移動し、それに伴ってロッド30が車高方向の下向きに降下する。ロッド30が降下すると、ロッド30に設けられた後述の係合部30jが、ラッチ機構20が備えている後述のオープンレバー25を押し下げて下向きに回動させる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わる。支持軸16には、レバーアーム14を弾性的に付勢するコイルスプリング15が装着されている。カウンタウェイト13とコイルスプリング15は、図8に示すように、矢印A2の向き(前述の矢印A1とは逆向き)、つまりラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換えられる向きとは逆向きに回転するように、レバーアーム14を付勢している。
【0036】
(ラッチ機構)
図3図4、及び図8から図11を参照すると、ラッチ機構20は、インナパネル5の内側(閉空間7内)に配置されている。ラッチ機構20は、ベース部21と突出部22を備える。ベース部21は、インナパネル5の内側に沿って車長方向に延びるように配置されている。突出部22は、ベース部21の車長方向の後方側の部分から、車幅方向にアウタパネル4に向けて突出している。突出部21は、エンドパネル6の内側に沿って配置されている。ベース部21と突出部22は、半割構造のケーシング23により構成されている。
【0037】
突出部22には、車体のストライカ(図示せず)に係脱するフォーク24(図8にのみ図示)と、クローレバー(図示せず)が収容されている。
【0038】
ベース部21にはラッチ解除のためのオープンレバー25が備えられている。また、ベース部21には、ラッチ機構20をアンロック状態とロック状態に切り換えるための、リンク、モータのような要素を含む機構(図示せず)が収容されている。通常時、ラッチ機構20がアンロック状態であれば、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられると、ラッチ機構20はラッチ状態(クローレバーがフォーク24をストライカに係止した位置で保持する状態)からラッチ解除(クローレバーによるフォーク24の保持が解除されてフォーク24はストライカから外れる状態)に切り替わる。一方、ラッチ機構20がロック状態であると、アウタハンドル12の操作によりオープンレバー25が押し下げられても、ラッチ機構はラッチ状態からラッチ解除に切り換わらない。
【0039】
図12から図15を併せて参照すると、突出部22の内側面22a、つまり閉空間7に臨む面に係止部40が設けられている。後に詳述するように、ドア4に対する衝突荷重入力時には、係止部40にロッド30が当接して係止され、それによってラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な移動が規制される。つまり、係止部40は本発明の対向部の一例である。
【0040】
係止部40は、第1段部41と第2段部42とを備える。第1段部41と第2段部42はいずれも、ラッチ機構20のベース部21側からハンドルベース11に向かって、車幅方向に延びている。第2段部42は、第1段部41に対して車高方向の下方に位置する。
【0041】
第1段部41は、車高方向の上方を向いた平面状の横面41a、車長方向の前方側を向いた平面状の縦面41b、及び横面41aと縦面41bとの間に設けられた曲面状の接続面41cを備える。横面41aは、車長方向には傾斜していないが、車幅方向には、ハンドルベース11側に近づくほど車高方向で下方側に向かう傾斜を有する。
【0042】
第2段分42は、車高方向の上方を向いた平面状の横面42a、車長方向の前方側を向いた平面状の縦面42b、及び横面42aと縦面42bとの間に設けられた曲面状の接続面42cをえる。横面42aは、車長方向及び車幅方向のいずれにも傾斜していない。
【0043】
(ロッド)
本実施形態におけるロッド30は、直径4.0~6.0mmの鋼製の丸棒を後述する形状に屈曲させたものである。
【0044】
図8を参照すると、ロッド30は、ハンドル機構10のアウタハンドル12の動作を、ラッチ機構20のオープンレバー25に伝達する。具体的には、通常時、アウタハンドル12が開扉操作されると、ハンドル機構10のレバーアーム14の矢印A1の向きの回転に伴い、ロッド30が車幅方向の下向きに移動し、係合部30jがオープンレバー25を押し下げる。
【0045】
図5及び図8を参照すると、ハンドル機構10とラッチ機構20に関連して既に説明したように、ハンドルベース11の車高方向の上側にレバーアーム14が回動可能に支持され、レバーアーム14の上端に設けられたロッド保持部14aには、ロッド30の被保持部(接続部)30aが保持されている。つまり、本実施形態では、ロッド30の一端がハンドルベース11の車高方向の上部にレバーアーム14を介して接続されている。
【0046】
図6から図15を参照して、ロッド30の詳細を説明する。
【0047】
ロッド30は、被保持部(接続部)30a、第1部分30b、第2部分30d、第3部分30f、係合部30j、及び差込部30kを備える。ロッド30の一端に被保持部30aがあり、他端に係合部30jと差込部30kがある。
【0048】
図8から図13に明瞭に示されているように、被保持部30aは車長方向に直線状に延びており、車長方向の前方側からレバーアーム14のロッド保持部14aに挿通されている。被保持部30aはロッド保持部14aに、回転可能な状態で保持されている。
【0049】
被保持部30aの車長方向の前方側の端部に、第1部分30bが接続されている。第1部分30bは、被保持部30aからラッチ機構20のベース部21に向けて車幅方向に直線状に延びている。
【0050】
第1部分30bの車幅方向の内側の端部に、第2部分30cが接続されている。第2部分30cは、第1部分30bから車長方向の後方側に延びている。
【0051】
本実施形態では、第2部分3cは、車幅方向から見てV字状を呈する。具体的には、第2部分30cは、第1部分30bから、車長方向の後方側に斜め下方に向かって延びる直線状の第1傾斜部30dと、第1傾斜部30dから、車長方向の後方側に斜め上方に向かって延びる第2傾斜部30eとを備える。後に詳述するように、衝突荷重入力時には、第2傾斜部30eがラッチ機構20の突出部22に設けられた係止部40に当接して係止される。第2部分30cは折れ曲がった部分を備えない直線状であってもよい。
【0052】
ロッド30の第2部分30cと、ラッチ機構20、より具体的には、ベース部21の内側面21a及び突出部22の内側面22aとの間に隙間Gが設けられている。この隙間Gにより、通常時にロッド30に要求される動作が確保される。隙間Gは、5~15mm、例えば10mmに設定される。
【0053】
図10に最も明瞭に示すように、本実施形態では、ロッド30の第2部分30c、より具体的には第2傾斜部30eと、ラッチ機構20の突出部22の係止部40とは、車高方向の上方側から見て互いに重なり合っている。
【0054】
図14を参照すると、車幅方向から見て、ロッド30の第2部分30cの第2傾斜部30eは、ラッチ機構20の突出部22の係止部40の第1段部41と第2段部42の外形輪郭がなす傾斜線Lに沿って延びている。
【0055】
第2部分30cの車長方向の後方側の端部に、第3部分30fが接続されている。第3部分30fは全体として、第2部分30cから車高方向の下方側に延びている。第3部分30fの下端が係合部30jの一端に接続している。また、係合部30jの他端が差込部30kに接続している。
【0056】
第3部分30fは、オフセット部30g、斜行部30h、及び垂下部30iを備える。
【0057】
オフセット部30gは、一端が第2部分30cの第2傾斜部30eに接続され、他端が斜行部30hに接続されている。オフセット部30gは、第2傾斜部30eの車長方向の後方側の端部からハンドルベース11に向けて、ハンドルベース11に近づくほど車高方向の下方側へ向かうように傾斜して直線状に延びている。
【0058】
斜行部30hは、一端がオフセット部30gに接続され、他端が垂下部30iに接続されている。斜行部30hは、オフセット部30gから、車長方向及び車幅方向に傾斜して、車高方向の下方側に直線状に延びている。
【0059】
垂下部30iは、一端が斜行部30hに接続され、他端が係合部30jに接続されている。垂下部30iは、斜行部30hから斜行方向の下方側へ直線状に延びている。
【0060】
係合部30jは、一端が垂下部30iに接続され、他端が差込部30kに接続されている。平面視でラッチ機構20のベース部21に向かって僅かに傾斜し、かつ車高方向にも僅かに傾斜して直線状に延びている。
【0061】
例えば図8を参照すれば理解できるように、ロッド30が車長方向の下向きに降下すると係合部30jがラッチ機構20のオープンレバー25を押し下げて回動させる。
【0062】
差込部30kは、係合部30jから、車長方向の下側に直線状に延びている。差込部30kは、ロッド30のオープンレバー25に対する相対的な昇降が許容されるように、オープンレバー25に差し込まれている。
【0063】
(衝突時の車両用ドアロック装置の挙動)
ロッド30について上述した形状を採用しないと仮定した場合、衝突、特に側突に際して、車両用ドアロック装置1は以下のような挙動を示す。
【0064】
衝突荷重入力によりドア2のアウタパネル4が変形する。ドア2の車長方向の長さのようなドア2のデザインよっては、あるいは車重によっては、衝突荷重入力により、図3において矢印Bで概念的に示すように、ハンドルベース11の上部がインナパネル5に接近しつつ下向きに回転するように、アウタパネル4が変形する。ハンドルベース11の上部が図3の矢印Bのように回転すると、ロッド30が下向きに移動してオープンレバー25が押し下げられる。その結果、ラッチ機構20がラッチ状態からラッチ解除に切り換わり、ドア2が開放してしまう可能性がある。
【0065】
これに対し、本実施形態の車両用ドアロック装置1の場合、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時に、ロッド30は、ベース部21の内側面21aに向かって倒れ、さらに下方側に移動しようとする。このとき、隙間Gは解消されているため、ロッド30の第2部分30cがラッチ機構20の突出部22、より具体的には突出部22の内側面22aに設けられた係止部40(第1段部41と第2段部42を備える)に当接して係止される。この係止により、ラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な変位が規制され、オープンレバー25がロッド30によって押し下げられることがない。その結果、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形に起因してラッチ解除となるのを防止し得る。
【0066】
前述のように、ロッド30の第2部分30cの第2傾斜部30eは、ラッチ機構20の突出部22の係止部40に対して、車高方向の上方側から見て互いに重なり合っている。そのため、衝突荷重入力時に、ロッド30の第2部分30cの第2傾斜部30eが確実にラッチ機構20の突出部22の係止部40に当接して係止される。その結果、ラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な移動がより確実に規制される。言い換えれば、衝突荷重入力時のラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な移動規制についてのロバスト性が向上する。さらに、図10に示すようにベース部21の内側面21aに向かってロッド30が倒れることで、オフセット部30gも突出部22の内側面22aに設けられた係止部40(第1段部41と第2段部42を備える)に当接するため、ロッド30の第2部分30と協働してラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な変位が規制される。
【0067】
前述のように、ロッド30の第2部分30cと、ラッチ機構20、より具体的には、ベース部21の内側面21a及び突出部22の内側面22aとの間に隙間Gが設けられている。そのため、通常時のアウタハンドル12の操作に連動するロッド30の移動、つまり通常時の車両用ドアロック装置1の動作は保証しつつ、衝突荷重入力時のラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な移動規制を実現できる。
【0068】
ロッド30の第2部分30cの第1傾斜部30dと第2傾斜部30eは車幅方向から見てV字状を呈するので、第2部分30cの強度を確保できる。その結果、衝突荷重入力時のラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な移動をより確実に規制できる。
【0069】
前述のように、ラッチ機構20の突出部22に設けられた係止部40は、第1段部41と、第1段部41よりも車長方向で下方側に位置する第2段部42を備える。そのため、衝突荷重入力時に、ロッド30の第2部分30cの第2傾斜部30eが、係止部40の第1段部41と第2段部52の少なくともいずれか一方に当接して係止される。その結果、衝突荷重入力時のラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な移動をより確実に規制できる。
【0070】
前述のように、ロッド30の第2部分30cの第2傾斜部30eは、ラッチ機構20の突出部22の係止部40の第1段部41と第2段部42の外形輪郭がなす傾斜線Lに沿って延びている。そのため、衝突荷重入力時、ロッド30の第2部分30cの第2傾斜部30eが、係止部40の第1段部41と第2段部42の2箇所に当接して係止され得る。ロッド30が2箇所で係止部40に当接して係止されることで、ロッド30が係止部40によって係止される強度が向上する。その結果、衝突荷重入力時のラッチ機構20に対するロッド30の下向きの相対的な移動をより確実に規制できる。
【0071】
ラッチ機構20の突出部22が、衝突荷重入力によるアウタパネル4の変形開始時にロッド30が当接し、ロッド30の車高方向の下方側への移動を規制する機能、つまり本発明の対向部の機能を兼ねている。そのため、対向部として機能する部品を別途設ける場合と比較して部品点数増を抑制できる。しかし、ラッチ機構20の突出部22以外に対向部を設けても良いし、対向部として機能する部品を別途設けても良い。例えば、衝突荷重入力により、ロッド30が車幅方向に移動し、第1傾斜部30dと第2傾斜部30eがラッチ機構20のベース部21の内側面21aに車両幅方向から当接し、さらに車高方向の下方側への移動した場合にその移動を規制する突出部をラッチ機構20のベース部21の内側面21aに設けてもよい。
【0072】
ロッド30は、第2部分30eの車長方向の後方側の端部に接続されて全体として車高方向の下方側に延びる第3部分30fを備え、この第3部分30fの下端に係合部30jと差込部30kが設けられている。従って、ロッド30の大部分がドア2の車長方向の後方側に配置される。かかるロッド30の後方配置により、車両用ドアロック装置1の組み立て時に、インナパネル5のサービスホール5a(図2参照)からラッチ機構20を閉空間7に持ち込む際、ロッド30がラッチ機構20に干渉するのを回避できる。従って、車両用ドアロック装置1の組み立て性を確保できる。
【符号の説明】
【0073】
1 車両用ドアロック装置
2 ドア
3 ドア構造
4 アウタパネル
5 インナパネル
5a サービスホール
6 エンドパネル
7 閉空間
10 ハンドル機構
11 ハンドルベース
12 アウタハンドル
12a 第1端部
12b 第2端部
13 カウンタウェイト
14 レバーアーム
14a ロッド保持部
15 コイルスプリング
16 支持軸
20 ラッチ機構
21 ベース部
21a 内側面
22 突出部
22a 内側面
23 ケーシング
24 フォーク
25 オープンレバー(レバー)
30 ロッド
30a 被保持部(接続部)
30b 第1部分
30c 第2部分
30d 第1傾斜部
30e 第2傾斜部
30f 第3部分
30g オフセット部
30h 斜行部
30i 垂下部
30j 係合部
30k 差込部
40 係止部
41 第1段部
41a 横面
41b 縦面
41c 接続面
42 第2段部
42a 横面
42b 縦面
42c 接続面
A1 レバーアームの回転の向き
A2 レバーアームの回転と逆の向き
B 衝突時のハンドルベースの上部の動き
G 隙間
L 傾斜線
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15