IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 太陽誘電株式会社の特許一覧

特開2023-125912磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法
<>
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図1
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図2
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図3
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図4
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図5
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図6
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図7
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図8
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図9
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図10
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図11a
  • 特開-磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法 図11b
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125912
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】磁性複合体、磁性複合体を備えるコイル部品、及び磁性複合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 1/24 20060101AFI20230831BHJP
   H01F 1/33 20060101ALI20230831BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20230831BHJP
   H01F 27/06 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H01F1/24
H01F1/33
H01F17/04 F
H01F27/06 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030267
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【弁理士】
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】制野 博太朗
(72)【発明者】
【氏名】土屋 健吾
(72)【発明者】
【氏名】八矢 正大
【テーマコード(参考)】
5E041
5E070
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041BC01
5E041BD03
5E041BD13
5E041CA01
5E041HB11
5E041HB15
5E070AA01
5E070AB03
5E070BB03
5E070CB13
5E070DA13
5E070DB02
(57)【要約】
【課題】金属磁性粒子及び絶縁性の微粒子を含む磁性複合体において磁気飽和特性を向上させる。
【解決手段】
磁性複合体10は、第1金属磁性粒子31a及び第2金属磁性粒子を含み、この第1金属磁性粒子31a及び第2金属磁性粒子31bに接するように微粒子41が配置されている。微粒子は、絶縁性で非磁性である。第1金属磁性粒子31aの表面には、第1酸化膜32aが設けられており、第2金属磁性粒子31bの表面には第2酸化膜32bが設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1金属磁性粒子及び前記第1金属磁性粒子に隣接する第2金属磁性粒子を含む複数の金属磁性粒子と、
前記第1金属磁性粒子及び前記第2金属磁性粒子に接するように配置された絶縁性で非磁性の第1微粒子と、
前記第1金属磁性粒子の表面に設けられており前記第1金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む絶縁性の第1酸化膜と、
前記第2金属磁性粒子の表面に設けられており前記第2金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む絶縁性の第2酸化膜と、
を備える磁性複合体。
【請求項2】
前記第1酸化膜は、前記第2酸化膜と結合している、
請求項1に記載の磁性複合体。
【請求項3】
前記第1微粒子は、前記第1酸化膜及び前記第2酸化膜により覆われている、
請求項1又は2に記載の磁性複合体。
【請求項4】
前記第1微粒子の平均粒径は、10nm以上110nm以下である、
請求項1又は2に記載の磁性複合体。
【請求項5】
前記第1金属磁性粒子の表面に互いから離間して配置された複数の微粒子を備え、
前記複数の微粒子の各々は、絶縁性で且つ非磁性であり、
前記複数の微粒子の各々の少なくとも一部は、前記第1酸化膜で覆われており、
前記複数の微粒子は、前記第1微粒子を含む、
請求項1又は2に記載の磁性複合体。
【請求項6】
前記複数の微粒子は、前記第1微粒子に隣接する第2微粒子を含み、
前記第1微粒子と前記第2微粒子との間の距離は、前記第1微粒子の粒径及び前記第2微粒子の粒径のいずれよりも大きい、
請求項5に記載の磁性複合体。
【請求項7】
前記複数の微粒子の各々は、疎水処理されたSiO2粒子である、
請求項5に記載の磁性複合体。
【請求項8】
前記複数の金属磁性粒子の各々は、Fe基金属磁性粒子である、
請求項1又は2に記載の磁性複合体。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の磁性複合体と、
前記磁性複合体に設けられたコイル導体と、
を備えるコイル部品。
【請求項10】
請求項9に記載のコイル部品を備える回路基板。
【請求項11】
請求項10に記載の回路基板を備える電子機器。
【請求項12】
複数の軟磁性金属粉及び絶縁性且つ非磁性の複数の微粒子粉を混合することにより混合粉を得る工程と、
前記混合粉を樹脂と混合することで混合樹脂組成物を得る工程と、
前記混合樹脂組成物を圧縮して前記複数の軟磁性金属粉のうち隣接する軟磁性金属粉の間に前記複数の微粒子粉のうちの少なくとも一つが配置された圧縮成型体を得る工程と、
前記圧縮成型体を加熱することで、前記樹脂を脱脂し、前記複数の軟磁性金属粉の各々の表面に酸化膜を形成する加熱工程と、
を備える磁性複合体の製造方法。
【請求項13】
前記混合粉に含まれる前記複数の軟磁性金属粉の各々の表面には、前記複数の微粒子粉の一部が付着している、
請求項12に記載の磁性複合体の製造方法。
【請求項14】
前記加熱工程により、前記複数の軟磁性金属粉のうち隣接する軟磁性金属粉の各々の表面に形成された酸化膜同士が結合する、
請求項12又は13に記載の磁性複合体の製造方法。
【請求項15】
前記複数の軟磁性金属粉の各々は、Fe基軟磁性金属粉である、
請求項12又は13に記載の磁性複合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属磁性粒子を含む磁性複合体及びかかる磁性複合体を備えるコイル部品に関する。本発明はまた、磁性複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コイル部品は、様々な電子機器に搭載されている。コイル部品は、例えば、回路の電源ラインや信号ラインにおいてノイズを除去するために用いられる。一般的なコイル部品は、磁性基体と、磁性基体に設けられたコイル導体と、を備える。近年、コイル部品の磁性基体として、軟磁性材料から構成された多数の金属磁性粒子を含む軟磁性基体が用いられている。軟磁性基体の金属磁性粒子同士は、絶縁膜を介して互いに結合している。軟磁性基体は、フェライトから構成される磁性基体よりも磁気飽和が起こりにくいため、大電流が流れる回路に適している。
【0003】
他方、軟磁性基体においては、金属磁性粒子の表面を覆う絶縁膜において絶縁破壊が起きやすい。このため、軟磁性基体は、フェライトから構成された磁性基体よりも耐電圧特性において劣る。耐電圧特性を向上させるために、金属磁性粒子の周囲に絶縁性の微粒子が配置された磁性複合体を磁性基体として用いることが提案されている。例えば、特開2020-170823号公報(特許文献1)には、金属磁性粒子と、金属磁性粒子の表面に固定された絶縁性の微粒子と、絶縁性の微粒子の表面を被覆する絶縁膜と、を備えるコーティング粒子が記載されている。特許文献1では、このコーティング粒子と樹脂とを混合した樹脂組成物を成型することで磁性基体が作製される。また、特開2016-92403号公報(特許文献2)には、絶縁膜でコーティングされた金属磁性粒子と、樹脂と、その樹脂内に分散されている絶縁性の微粒子と、を備える磁性複合体が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-170823号公報
【特許文献2】特開2016-092403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
絶縁性の微粒子を含む従来の磁性複合体においては、隣接する金属磁性粒子の間に絶縁性の微粒子及び絶縁膜が介在しているため、金属磁性粒子の充填率が低くなる。絶縁膜が非磁性材料から構成される場合には、金属磁性粒子の充填率の低下により、磁性複合体の透磁率が劣化してしまう。特許文献1の絶縁膜(無機絶縁層30)は、例えばTEOS(テトラエトキシシラン)から構成され、特許文献2の絶縁膜(絶縁層120)は、例えばエポキシ等の高分子樹脂から構成される。TEOS及びエポキシはいずれも非磁性材料であるから、金属磁性粒子の周囲にこれらの絶縁膜が設けられる場合には、磁性複合体の透磁率が劣化する。
【0006】
金属磁性粒子の表面に設けられる絶縁膜は、当該金属磁性粒子に含まれる元素の酸化物から構成される場合がある。例えば、特許文献2には、絶縁層120が、金属磁性粒子(Fe-Si-Cr系、Fe-Ni-Mo系またはFe-Si-Al系軟磁性金属粉末)の酸化物であってもよいことが記載されている。金属磁性粒子に含まれる元素の酸化物には、強磁性を呈するものが含まれるため、酸化膜で覆われた金属磁性粒子を有する磁性複合体は、非磁性のコーティング膜で覆われた金属磁性粒子を有する磁性複合体よりも優れた透磁率を有することが多い。
【0007】
しかしながら、酸化処理における処理条件(例えば、酸素濃度や加熱温度)を磁性複合体の全領域で均一にすることはできないため、金属磁性粒子の表面における酸化膜の厚さは、各粒子の周りの環境により影響を受けて均一な厚さとはならない。つまり、金属磁性粒子の表面に形成される酸化膜の膜厚は区々となる。このため、酸化膜で覆われた金属磁性粒子を有する磁性基体においては、隣接する金属磁性粒子間の間隔のばらつきが大きく、その結果、隣接する金属磁性粒子間の間隔が小さい磁路において局所的な磁気飽和が起こりやすいという問題がある。この局所的な磁気飽和のため、従来の磁性複合体においては定格電流を高くできないという問題、すなわち、優れた磁気飽和特性が得られないという問題がある。
【0008】
本発明の目的は、上述した問題の少なくとも一部を解決又は緩和することである。本発明のより具体的な目的の一つは、金属磁性粒子及び絶縁性の微粒子を含む磁性複合体において磁気飽和特性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態による磁性複合体は、第1金属磁性粒子及び前記第1金属磁性粒子に隣接する第2金属磁性粒子を含む複数の金属磁性粒子と、前記第1金属磁性粒子及び前記第2金属磁性粒子に接するように配置された絶縁性で非磁性の第1微粒子と、前記第1金属磁性粒子の表面に設けられており前記第1金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む絶縁性の第1酸化膜と、前記第2金属磁性粒子の表面に設けられており前記第2金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む絶縁性の第2酸化膜と、を備える。
【0010】
本発明の一態様は、上記のいずれかのコイル部品を備える回路基板に関する。
【0011】
本発明の一態様は、上記の回路基板を備える電子機器に関する。
【0012】
本発明の一実施形態による磁性複合体の製造方法は、複数の軟磁性金属粉及び絶縁性且つ非磁性の複数の微粒子粉を混合することにより混合粉を得る工程と、前記混合粉を樹脂と混合することで混合樹脂組成物を得る工程と、前記混合樹脂組成物を圧縮して前記複数の軟磁性金属粉のうち隣接する軟磁性金属粉の間に前記複数の微粒子粉のうちの少なくとも一つが配置された圧縮成型体を得る工程と、前記圧縮成型体を加熱することで、前記樹脂を脱脂し、前記複数の軟磁性金属粉の各々の表面に酸化膜を形成する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一又は複数の実施形態によれば、金属磁性粒子及び絶縁性の微粒子を含む磁性複合体において磁気飽和特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】一実施形態による磁性複合体を備えるコイル部品を模式的に示す斜視図である。
図2図1のコイル部品の分解斜視図である。
図3図1のコイル部品をI-I線で切断した断面を模式的に示す断面図である。
図4図3の領域Aを拡大して示す拡大断面図である。
図5】一実施形態における磁性複合体に含まれる金属磁性粒子同士の結合を説明するための模式図である。
図6】一実施形態における磁性複合体に含まれる隣接する金属磁性粒子の境界を拡大して示す模式図である。
図7】一実施形態による磁性複合体の製造方法を示すフロー図である。
図8】表面に微粒子が付着した金属磁性粒子を模式的に示す図である。
図9】金属磁性粒子の表面に付着した微粒子を説明するための模式図である。
図10】磁性複合体の製造過程で得られる圧縮成型体の断面を模式的に示す図である。
図11a】従来の金属磁性粒子同士の結合を説明するための模式図である。
図11b】従来の金属磁性粒子同士の結合を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照し、本発明の様々な実施形態を説明する。複数の図面において共通する構成要素には同一の参照符号が付されている。各図面は、説明の便宜上、必ずしも正確な縮尺で記載されているとは限らない点に留意されたい。以下で説明される本発明の実施形態は、必ずしも特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。以下の実施形態で説明されている諸要素が発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0016】
本明細書に開示される発明の一実施形態は、多数の金属磁性粒子と、絶縁性で且つ非磁性の多数の微粒子と、を含む磁性複合体に関する。磁性複合体は、コイル部品の磁性基体として用いられ得る。金属磁性粒子の表面には酸化膜が設けられている。磁性複合体に含まれる多数の金属磁性粒子のうち隣接するもの同士は、酸化膜を介して結合される。以下では、まず、図1から図3を参照して、一実施形態による磁性複合体を備えるコイル部品1について説明し、その後に、図4ないし図6を参照して複合磁性体の微細構造について説明する。
【0017】
図1は、コイル部品1を模式的に示す斜視図であり、図2は、コイル部品1の分解斜視図である。図3は、図1のI-I線に沿ってコイル部品1を切断したコイル部品1の模式的な断面図である。図2及び図3においては、説明の便宜のために、外部電極の図示が省略されている。
【0018】
図1から図3には、コイル部品1の例として、積層インダクタが示されている。図示されている積層インダクタは、本発明を適用可能なコイル部品1の一例であり、本発明は積層インダクタ以外の様々な種類のコイル部品に適用され得る。例えば、コイル部品1は、巻線型のコイル部品や平面コイルにも適用され得る。
【0019】
図示されているように、コイル部品1は、基体10と、基体10の内部に設けられたコイル導体25と、基体10の表面に設けられた外部電極21と、基体10の表面において外部電極21から離間した位置に設けられた外部電極22と、を備える。基体10は、磁性基体である。基体10は、特許請求の範囲に記載されている「磁性複合体」の例である。後述するように、基体10は、多数の金属磁性粒子と、絶縁性で非磁性の微粒子と、を含む。
【0020】
外部電極21は、コイル導体25の一端と電気的に接続されており、外部電極22は、コイル導体25の他端と電気的に接続されている。
【0021】
コイル部品1は、実装基板2aに実装され得る。実装基板2aには、ランド部3a、3bが設けられている。コイル部品1は、外部電極21とランド部3aとを接合し、また、外部電極22とランド部3bとを接続することで実装基板2aに実装される。本発明の一実施形態による回路基板2は、コイル部品1と、このコイル部品1が実装される実装基板2aと、を備える。回路基板2は、様々な電子機器に搭載され得る。回路基板2が搭載され得る電子機器には、スマートフォン、タブレット、ゲームコンソール、自動車の電装品、サーバ及びこれら以外の様々な電子機器が含まれる。
【0022】
コイル部品1は、インダクタ、トランス、フィルタ、リアクトル、インダクタアレイ、及びこれら以外の様々なコイル部品であってもよい。コイル部品1は、カップルドインダクタ、チョークコイル及びこれら以外の様々な磁気結合型コイル部品であってもよい。コイル部品1の用途は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0023】
一実施形態において、基体10は、L軸方向における寸法(長さ寸法)がW軸方向における寸法(幅寸法)及びT軸方向における寸法(高さ寸法)よりも大きくなるように構成される。例えば、長さ寸法は、1.0mm~6.0mmの範囲にあり、幅寸法は0.5mm~4.5mmの範囲にあり、高さ寸法は0.5mm~4.5mmの範囲にある。基体10の寸法は、本明細書で具体的に説明される寸法には限定されない。本明細書において「直方体」又は「直方体形状」という場合には、数学的に厳密な意味での「直方体」のみを意味するものではない。基体10の寸法及び形状は、本明細書で明示されるものには限定されない。
【0024】
基体10は、第1主面10a、第2主面10b、第1端面10c、第2端面10d、第1側面10e、及び第2側面10fを有する。基体10は、これらの6つの面によってその外表面が画定されている。第1主面10aと第2主面10bとはそれぞれ基体10の高さ方向両端の面を成し、第1端面10cと第2端面10dとはそれぞれ基体10の長さ方向両端の面を成し、第1側面10eと第2側面10fとはそれぞれ基体10の幅方向両端の面を成している。図1に示されているように、第1主面10aは基体10の上側にあるため、第1主面10aを「上面」と呼ぶことがある。同様に、第2主面10bを「下面」又は「底面」と呼ぶことがある。コイル部品1は、第2主面10bが実装基板2aと対向するように配置されるので、第2主面10bを「実装面」と呼ぶこともある。上面10aと下面10bとの間は基体10の高さ寸法だけ離間しており、第1端面10cと第2端面10dとの間は基体10の長さ寸法だけ離間しており、第1側面10eと第2側面10fとの間は基体10の幅寸法だけ離間している。
【0025】
図2に示されているように、基体10は、磁性体層20と、磁性体層20の下面に設けられた下側カバー層19と、磁性体層20の上面に設けられた上側カバー層18と、を有する。上側カバー層18、下側カバー層19、及び磁性体層20は、基体10の構成要素である。
【0026】
磁性体層20は、磁性膜11~17を備える。磁性体層20においては、T軸方向のマイナス側からプラス側に向かって、磁性膜17、磁性膜16、磁性膜15、磁性膜14、磁性膜13、磁性膜12、磁性膜11の順に積層されている。
【0027】
磁性膜11~17の上面には、導体パターンC11~C17がそれぞれ形成されている。複数の導体パターンC11~C17の各々は、コイル軸Ax1に直交する平面(LW平面)内でコイル軸Ax1周りに延びている。導体パターンC11~C17は、例えば、導電性に優れた金属又は合金から成る導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することにより形成される。この導電ペーストの材料としては、Ag、Pd、Cu、Al又はこれらの合金を用いることができる。導体パターンC11~C17は、これ以外の材料及び方法により形成されてもよい。導体パターンC11~C17、例えば、スパッタ法、インクジェット法、又はこれら以外の公知の方法で形成されてもよい。
【0028】
磁性膜11~磁性膜16の所定の位置には、ビアV1~V6がそれぞれ形成される。ビアV1~V6は、磁性膜11~磁性膜16の所定の位置に、磁性膜11~磁性膜16をT軸方向に貫く貫通孔を形成し、当該貫通孔に導電材料を埋め込むことにより形成される。
【0029】
導体パターンC11~C17の各々は、隣接する導体パターンとビアV1~V6を介して電気的に接続される。このようにして接続された導体パターンC11~C17及びビアV1~V6が、スパイラル状のコイル導体25を形成する。すなわち、コイル導体25は、導体パターンC11~C17及びビアV1~V6を有する。
【0030】
導体パターンC11のビアV1に接続されている端部と反対側の端部は、外部電極22に接続される。導体パターンC17のビアV6に接続されている端部と反対側の端部は、外部電極21に接続される。
【0031】
上側カバー層18は、磁性材料から成る磁性膜18a~18dを備え、下側カバー層19は、磁性材料から成る磁性膜19a~19dを備える。本明細書においては、磁性膜18a~18d及び磁性膜19a~19dを総称して「カバー層磁性膜」と呼ぶことがある。
【0032】
図3に示されているように、コイル導体25は、厚さ方向(T軸方向)に沿って延びるコイル軸Ax1の周りに巻回されている周回部25aと、周回部25aの一端から基体10の第1端面10cまで延伸する引出部25b1と、周回部25aの他端から基体10の第2端面10dまで延伸する引出部25b2と、を有する。
【0033】
次に、図4ないし図6を参照して、基体10の微細構造を説明する。図4は、図3に示されている領域Aを模式的に示す拡大断面図である。領域Aは、基体10をT軸に沿って切断した断面の一部の領域である。領域Aは、基体10をT軸に沿って切断した断面の一部を占める任意の領域とすることができる。
【0034】
図4に示されているように、基体10は、表面に酸化膜32が形成された複数の金属磁性粒子31と、複数の微粒子41と、を含む。金属磁性粒子31及び酸化膜32は、原料となる軟磁性金属粉を加熱することで得られる。金属磁性粒子31は、Fe基の軟磁性材料から構成されたFe基金属磁性粒子であってもよい。微粒子41は、原料となる微粒子粉から生成される。微粒子41の原料粉は、熱的な安定性が高い粉末であってもよい。この場合、微粒子41の原料粉は、軟磁性金属粉とともに加熱されても、加熱の前後で組成や粒径に変化がないか、または、ほとんど変化がない。微粒子41の原料粉の詳細については後述する。
【0035】
金属磁性粒子31の平均粒径は、例えば1μm~50μmの範囲とすることができる。金属磁性粒子31の平均粒径は、基体10をその厚さ方向(T軸方向)に沿って切断して断面を露出させ、当該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影したSEM像に基づいて求められる体積基準の粒度分布に基づいて定められる。例えば、SEM像に基づいて求められた体積基準の粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))を、金属磁性粒子31の平均粒径とすることができる。
【0036】
表面に酸化膜32が形成された金属磁性粒子31は、軟磁性金属粉を酸化することで得られる。軟磁性金属粉は、Feを主成分とする軟磁性材料から構成されてもよい。つまり、軟磁性金属粉は、Fe基の軟磁性材料から構成されたFe基軟磁性金属粉であってもよい。軟磁性金属粉は、例えば、Feに加えて、Si、Cr、Zr、Al、及びTiから成る群より選択される少なくとも一つの元素を含有してもよい。軟磁性金属粉は、上記した元素(つまり、Fe、Cr、Si、Zr、Al、及びTiから成る群より選択される少なくとも一つの元素、)以外の元素、例えばボロン(B)、炭素(C)、及びニッケル(Ni)のうちの少なくとも一つを含有してもよい。金属磁性粒子31は、(1)Fe-Si-Cr合金、Fe-Si-Al合金、Fe-Si-Al-Cr合金、Fe-Si合金等の結晶質合金粒子、(2)Fe-Si-B合金、Fe-Si-Cr-B-C合金、Fe-Si-Cr-B合金等のアモルファス合金粒子、又は(3)これらが混合された混合粒子であってもよい。金属磁性粒子31の組成は、上記のものに限られない。
【0037】
金属磁性粒子31の表面には酸化膜32が形成される。隣接する金属磁性粒子31同士は、互いの金属磁性粒子の表面に形成された酸化膜32を介して結合されていてもよい。金属磁性粒子31の表面に形成される酸化膜32は、金属磁性粒子に含有されているFe、Cr、Si、Zr、Al、及びTiから成る群より選択される少なくとも一つの元素の酸化物を含む。金属磁性粒子31がFe基金属磁性粒子である場合には、酸化膜32は、Feの酸化物を含む。酸化膜32は、絶縁性に優れた酸化物の被膜である。隣接する金属磁性粒子31は、互いから酸化膜32により電気的に絶縁される。一実施形態において、酸化膜32は、強磁性を有する酸化物を含む。酸化膜32は、例えば、Feの酸化物であるマグネタイト(Fe34)を含んでいてもよい。酸化膜32は、絶縁性に優れた酸化物を含んでいてもよい。酸化膜は、例えば、Fe23、SiO2、CrO、及びSiO2のうちの一又は複数を含んでもよい。酸化膜32にFe、Cr、Si、Zr、Al、及びTiから成る群より選択される少なくとも一つの元素の酸化物が含まれることは、エネルギー分散型X線分光(EDS)検出器を搭載した透過電子顕微鏡(TEM)を用いて、露出させた基体10の断面を観察領域が250nm四方となる倍率(例えば、50000倍程度の倍率)で撮影して得られるTEM像においてEDS分析を行い、Fe元素、Cr元素、Si元素、Zr元素、Al元素、又はTi元素の分布画像を得て、この分布画像を解析することで確認できる。TEMの観察領域は、金属磁性粒子の表面に設けられる酸化膜32を含むように定められる。
【0038】
微粒子41は、金属磁性粒子31の表面に付着している。基体10に含まれる複数の金属磁性粒子31の各々の表面には、複数の微粒子41が付着している。金属磁性粒子31の表面に付着している複数の微粒子41は、互いから離間している。言い換えると、複数の微粒子41が金属磁性粒子31の表面の一部の領域に凝集していない。各金属磁性粒子31の表面には、例えば100~1000個程度の微粒子41が付着する。金属磁性粒子31の表面に付着している微粒子41は、その少なくとも一部が、当該金属磁性粒子31の表面に設けられた酸化膜32により覆われている。
【0039】
微粒子41は、絶縁性で非磁性の粒子である。微粒子41は、原料となる微粒子粉を、金属磁性粒子31の原料となる軟磁性金属粉と混合し、この混合粉に熱処理を行うことで得られる。上述のように、熱処理時に、軟磁性金属粉が酸化することで表面に酸化膜32が形成された金属磁性粒子31となるが、微粒子粉は、電子部品の製造過程の熱処理で加えられる可能性がある900℃程度の温度での熱処理に対して安定的な無機材料から構成される。微粒子粉は、例えば、SiO2、Al23、Cr23、又はTi23の粉末である。SiO2、Al23、Cr23、又はTi23の粉末は、900℃近辺の温度で加熱しても溶融せず、安定的な形状を維持することができる。
【0040】
微粒子41は、疎水処理されていてもよい。微粒子41は、例えば、疎水処理されたSiO2粒子であってもよい。疎水処理された微粒子41は、基体10の製造工程において凝集しにくいため、金属磁性粒子31の表面に分散して付着することができる。凝集しにくい微粒子41を用いることにより、基体10における微粒子41の含有比率を低くすることができる。微粒子41は、非磁性を呈するから、基体10における微粒子41の含有比率を低くすることにより、基体10の透磁率を向上させることができる。
【0041】
金属磁性粒子31の表面に付着している複数の微粒子41の各々は、金属磁性粒子31の表面において隣接する位置にある微粒子41から離間している。隣接する微粒子41間の距離は、微粒子41の平均粒径より大きくてもよい。微粒子41を金属磁性粒子31の表面に疎に分布させることにより、金属磁性粒子31のうち微粒子41で被覆されている領域の面積(被覆面積)の金属磁性粒子31の表面積に対する比(被覆率)を、例えば1/3とすることができる。被覆率を1/3以下とすることにより、軟磁性金属粉の加熱時に金属磁性粒子31の酸化が促進される。また、被覆率を1/3以下とすることにより、基体10における微粒子41の割合が過大とならないようにすることができる。これにより、微粒子41の割合が過大となることによる基体10の透磁率の低下を抑制することができる。
【0042】
金属磁性粒子31の原料となる軟磁性金属粉を含む樹脂組成物を成型する際に、当該軟磁性金属粉の表面に微粒子41が付着していると、軟磁性金属粉間に作用する引力(例えば、ファンデルワースル力)を低減させることができる。このため、樹脂組成物における軟磁性金属粉の流動性を高めることができるので、成型及び加熱後に得られる基体10において金属磁性粒子31がより密に充填される。このように、金属磁性粒子31の表面に付着した微粒子41には、基体10における金属磁性粒子31の充填率を向上させる作用がある。
【0043】
微粒子41の粒径は、金属磁性粒子31の粒径よりも小さい。微粒子41の平均粒径は、例えば、1μm未満である。微粒子41の平均粒径は、体積基準で測定した粒度分布から算出される平均粒径(メジアン径(D50))とすることができる。微粒子41の平均粒径は、10nm以上である。後述するように、基体10において隣接する金属磁性粒子31同士の間隔は、微粒子41の直径と等しくなる。隣接する金属磁性粒子31の間隔が5nm未満となると、隣接する金属磁性粒子31間に絶縁材が介在していても、その隣接する金属磁性粒子31間の絶縁性が確保できない。微粒子41の粒径を10nm以上とすることにより、金属磁性粒子31の表面に付着する微粒子41の径のうち多くを5nm以上とすることができる。公知のナノ粒子の分級技術を用いて、原料粉から、粒径の下限が10nmとなるように微粒子41を分取してもよい。隣接する金属磁性粒子31の間に、平均粒径又は粒径の下限が10nmである絶縁性の微粒子41を介在させることにより、金属磁性粒子31間の電気的な絶縁を確保することができる。
【0044】
微粒子41の粒径が過大になると、基体10において微粒子41の占める体積が大きくなるとともに金属磁性粒子31間の間隔が大きくなるので、基体10における金属磁性粒子31の充填率が低下し、その結果、基体10の透磁率が低下する。このため、微粒子41の平均粒径には上限が設けられてもよい。例えば、微粒子41の平均粒径は、金属磁性粒子31の平均粒径の1/10以下とすることができる。微粒子41の平均粒径の上限は、例えば、次のようにして定めることができる。まず、金属磁性粒子31を含む一方で微粒子41を含まない磁性基体を作製してその磁性基体の透磁率を測定する。次に、金属磁性粒子31及び10nm以上の互いに異なる平均粒径を有する複数種類の微粒子41を準備する。例えば、平均粒径が10nm、30nm、80nm、110nm、及び170nmの微粒子41をそれぞれ準備する。次に、準備した微粒子41のうち、平均粒径が最も小さい微粒子41(上記の例では、平均粒径が10nmの微粒子41)を所定割合含む基体10を作製し、基体10の透磁率を測定する。基体10における微粒子41の含有量は、例えば、1.0wt%とする。このようにして作製した微粒子41を含む基体10の透磁率が微粒子41を含まない磁性基体の透磁率以上であれば、その基体10に含まれる微粒子41は上限以下と判断し、次に、より大きな平均粒径を有する微粒子41(例えば、平均粒径が30nmの微粒子41)を含む基体10を作製し、その基体10の透磁率を測定する。基体10の透磁率が微粒子41を含まない磁性基体の透磁率を下回った場合には、その微粒子41の平均粒径は、上限を超えていると判断することができる。例えば、上記の例において、平均粒径が110nmの微粒子41を含む基体10の透磁率が微粒子41を含まない磁性基体の透磁率以上であり、平均粒径が170nmの微粒子41を含む基体10の透磁率が微粒子41を含まない磁性基体の透磁率を下回ることが確認できた場合には、110nmを微粒子41の上限とすることができる。金属磁性粒子31の平均粒径が1μm~50μmの場合には、微粒子41の平均粒径の上限は、例えば、30nm~110nmとすることができる。
【0045】
次に、主に図5及び図6を参照して、隣接する金属磁性粒子31同士の結合についてさらに説明する。図5には、基体10に含まれる複数の金属磁性粒子31のうちの第1金属磁性粒子31a、第2金属磁性粒子31b、及び基体10に含まれる複数の微粒子41のうちの第1微粒子41aが示されている。簡潔さのために、図5では、複数の微粒子41のうち第1微粒子41aのみが図示されているが、第1金属磁性粒子31a及び第2金属磁性粒子31bの表面には、第1微粒子41a以外にも多数の微粒子41が付着している。
【0046】
図示されているように、基体10において、第1金属磁性粒子31aは、第2金属磁性粒子31bと隣接して配置されている。第1金属磁性粒子31aと第2金属磁性粒子31bとの間には、第1微粒子41aが介在している。第1微粒子41aは、第1金属磁性粒子31a及び第2金属磁性粒子31bの両方に接している。このため、第1金属磁性粒子31aと第2金属磁性粒子31bとの間の間隔は、第1微粒子41aの直径と等しい。
【0047】
第1金属磁性粒子31aの表面は、第1微粒子41aとの接触位置を除き、第1酸化膜32aで覆われている。第2金属磁性粒子31bの表面は、第1微粒子41aとの接触位置を除き、第2酸化膜32bで覆われている。第1酸化膜32a及び第2酸化膜32bはいずれも、酸化膜32の例である。第1酸化膜32aは、第2酸化膜32bと接している。第1酸化膜32aは、第2酸化膜32bと結合している。第1金属磁性粒子31aと第2金属磁性粒子31bとは、第1酸化膜32a及び第2酸化膜32bにより結合されている。第1金属磁性粒子31aと第2金属磁性粒子31bとは、第1酸化膜32aの一部及び第2酸化膜32bの一部から成る結合部により結合されている。第1微粒子41aは、この結合部の内部にある。
【0048】
図6に示されているように、第1微粒子41aは、第1金属磁性粒子31aの表面及び第2金属磁性粒子31bの表面と接している。第1微粒子41aの表面のうち、第1金属磁性粒子31aとの接合点(又は接合面)及び第2金属磁性粒子31bとの接合点(又は接合面)以外の領域は、第1酸化膜32a及び第2酸化膜32bにより覆われている。SEM像で基体10の断面を観察すると、第1酸化膜32aと第2酸化膜32bとの境界は明瞭に確認できないことがある。
【0049】
図5及び図6には、基体10に含まれている複数の金属磁性粒子31のうち第1金属磁性粒子31a及び第2金属磁性粒子31bが示されているが、図5及び図6を参照した説明は、基体10に含まれる第1金属磁性粒子31a及び第2金属磁性粒子31b以外の互いに隣接する金属磁性粒子31の組にも当てはまる。つまり、基体10に含まれている複数の金属磁性粒子31のうち隣接するものの間には微粒子41が介在しており、隣接する金属磁性粒子31間の間隔は、その間に介在している微粒子41の直径と等しい。
【0050】
微粒子41の粒度分布がシャープであるほど、隣接する金属磁性粒子31間の間隔を均一にすることができる。シャープな粒度分布を有する微粒子41として、市販の微粒子を用いることができる。微粒子41として用いることができる市販の微粒子の例は、信越化学工業株式会社からQSGシリーズとして提供されているシリカ球状微粒子である。市販の微粒子を分級することにより、微粒子41の粒度分布をよりシャープにすることができる。一実施形態において、微粒子41の粒径の変動係数は、0.6以下とされる。
【0051】
次に、図7から図9を参照して、本発明の一実施形態による磁性複合体10を備えるコイル部品1の製造方法の一例を説明する。まず、ステップS11において、金属磁性粒子31の原料となる軟磁性金属粉及び微粒子41の原料となる微粒子粉を準備し、この軟磁性金属粉と微粒子粉とを混合することにより混合粉を得る。軟磁性金属粉と微粒子粉との混合は、例えばプラネタリーミキサーを用いて行われる。混合粉においては、軟磁性金属粉の表面に微粒子粉が吸着されている。微粒子粉は、軟磁性金属粉100wt%に対して、0.1~1.0wt%の割合で添加される。微粒子粉は、疎水処理されていてもよい。
【0052】
本発明者は、以下のようにして、軟磁性金属粉の表面に吸着された微粒子粉を観察した。まず、Fe-Si-Cr合金の軟磁性金属粉と平均粒径が30nmの微粒子粉(信越化学工業株式会社製のQSG-30)とをプラネタリーミキサーで混合して、微粒子粉が軟磁性金属粉の表面に吸着した混合粉を作製した。そして、この混合粉を走査型電子顕微鏡(SEM)により30000倍の倍率で撮影したSEM像を得た。図8は、このようにして取得したSEM像を示している。このSEM像(図8)に示されているように、混合粉に含まれる軟磁性金属粉131の表面には、多数の微粒子粉141が付着していることが確認できた。図8に示されているように、上記のSEM像においては、微粒子粉141は、凝集することなく、互いから離間して軟磁性金属粉131の表面に付着していた。図9に示されているように、軟磁性金属粉131の表面131aにおいて、隣接する微粒子粉141、141間の間隔dは、当該微粒子粉141、141のいずれの直径よりも大きかった。
【0053】
次に、ステップS12において、ステップS11で調製された混合粉を樹脂及び溶剤と混練して混合樹脂組成物を生成する。樹脂として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、又は前記以外の公知の樹脂を用いることができる。
【0054】
次に、ステップS13において、ステップS11で生成された混合樹脂組成物を所定形状に成型して成型体を作製し、この成型体を加圧することで圧縮成型体を得る。この成型体は、例えば、混合樹脂組成物をPETフィルムなどの基材上にシート状に塗工し、この塗工された混合樹脂組成物を乾燥させて溶剤を揮発させることで得られる。これにより、樹脂中に複数の軟磁性金属粉が分散した成型体が作成される。この軟磁性金属粉の表面には、微粒子粉が付着している。このようにして作成した成型体を型内に配置して加圧することにより、圧縮成型体が得られる。成型圧力は、例えば、10~100MPaとされる。軟磁性金属粉の表面には微粒子粉が付着しているから、加圧時に、成型体内において、軟磁性金属粉間には微粒子粉の直径以上の間隔が確保されている。このため、表面に微粒子粉が付着した軟磁性金属粉を含む成型体を圧縮する際には、微粒子粉が付着していない軟磁性金属粉を含む成型体を圧縮する場合と比べて、軟磁性金属粉間に作用する引力(例えば、ファンデルワースル力)を低減させることができる。このようにして得られる圧縮成型体150の断面を拡大した模式的な拡大断面図を図10に示す。上述したように、加圧時における軟磁性金属粉の流動性が高いことから、図10に示されているように、圧縮成型体150においては、加圧時に軟磁性金属粉が流動することにより、隣接する軟磁性金属粉131同士が密に配置されている。軟磁性金属粉131の表面には、多数の微粒子粉141が付着しているため、圧縮成型体150において、隣接する軟磁性金属粉131間の間隔は、微粒子粉141の直径に等しくなる。加圧前に一つの軟磁性金属粉131の表面に付着している微粒子粉141は、成型体が圧縮されることにより隣接する軟磁性金属粉131の表面にも接するようになる。例えば、加圧前に軟磁性金属粉131の表面に付着している微粒子粉141は、加圧工程において、当該軟磁性金属粉131が他の軟磁性金属粉131と接近するため、加圧後には隣接する軟磁性金属粉131間の間隔は微粒子粉141が1個分の間隔になる。このようにして、圧縮成型体においては、微粒子粉141が隣接する軟磁性金属粉131間に介在している。この微粒子粉141は、隣接する軟磁性金属粉131の両方に接している。
【0055】
次に、ステップS14において、ステップS13で得られた圧縮成型体を加熱することで脱脂し、脱脂された圧縮成型体に対して熱処理を行う。この熱処理は、例えば600℃~900℃で、20分間~120分間の加熱時間だけ行われ、複合磁性体が得られる。この熱処理において、軟磁性金属粉は、表面に酸化膜32が形成された金属磁性粒子31となり、微粒子粉は、微粒子41となる。金属磁性粒子31は、酸化膜32を介して、隣接する金属磁性粒子31と結合する。微粒子粉は、熱処理に対して安定的な酸化物の粉末(例えば、SiO2、Al23、Cr23、又はTi23の粉末)であるため、ステップS14における熱処理の前後で、その形状は変化しないかほとんど変化しない。単一の熱処理により、脱脂及び酸化膜32の形成が両方とも行われてもよい。脱脂のための熱処理と酸化膜32を形成するための熱処理を二段階の別の熱処理として行ってもよい。
【0056】
以上のようにして、軟磁性金属粉及び微粒子粉から複合磁性体が作製される。このようにして作製された複合磁性体においては、微粒子41が隣接する金属磁性粒子31の両方に接するように配置されているので、当該隣接する金属磁性粒子31の間の間隔を微粒子41の直径に揃えることができる。
【0057】
次に、図11a及び図11bをさらに参照して、一実施形態における基体10(複合磁性体)と従来の磁性基体との相違点を説明する。図11a及び図11bはそれぞれ、従来の磁性基体に含まれている金属磁性粒子同士の結合を説明するための模式図である。図11aは、絶縁性の微粒子を含まない従来の磁性基体内の一領域において隣接して配置されている金属磁性粒子51a、51bを示しており、図11bは、当該磁性基体内の別の領域において隣接して配置されている金属磁性粒子61a、61bを示している。図11aに示されているように、絶縁性の微粒子を含まない従来の磁性基体においては、金属磁性粒子51aと金属磁性粒子51bとの間に微粒子が介在していないため、金属磁性粒子51aと金属磁性粒子51bとの間隔が小さくなりすぎることがある。金属磁性粒子51aと金属磁性粒子51bとの間隔が10nm以下、特に5nm以下になると金属磁性粒子51aと金属磁性粒子51bとの間の電気的絶縁性が確保できなくなる。他方、当該磁性基体の別の領域においては、図11bに示されているように、隣接する金属磁性粒子61a、61b間の距離が大きくなることがある。このように、絶縁性の微粒子を含まない従来の磁性基体においては、一部の領域において隣接する金属磁性粒子間の距離が小さくなり、他の領域において隣接する金属磁性粒子間の距離が大きくなることがある。つまり、絶縁性の微粒子を含まない従来の磁性基体においては、隣接する金属磁性粒子間の距離のばらつきが大きくなる。このため、隣接する金属磁性粒子間の間隔が小さい領域(例えば、図11aに示されている領域)を通る磁路において局所的な磁気飽和が起こりやすい。このため、従来の磁性基体においては定格電流を高くすることができない。
【0058】
これに対して、本発明の一実施形態による基体10においては、図4に示されているように、隣接する金属磁性粒子31の間の間隔を微粒子41の直径に揃えることができるので、隣接する金属磁性粒子31間の間隔のばらつきを従来よりも小さくすることができる。よって、本発明の一実施形態による基体10を用いたコイル部品1の定格電流を高くすることができる。これにより、基体10の磁気飽和特性を向上させることができる。
【0059】
本発明の一実施形態による基体10においては、図5に示されているように、第1金属磁性粒子31aの表面に設けられた第1酸化膜32aが第2金属磁性粒子31bの表面に設けられた第2酸化膜32bと接しているため、第1金属磁性粒子31aと第2金属磁性粒子31bとは、第1酸化膜32a及び第2酸化膜32bにより結合される。第1酸化膜32a及び第2酸化膜32bに強磁性体(例えば、マグネタイト)を含めることにより、隣接する金属磁性粒子同士が非磁性のコーティング膜や非磁性の結着剤を介して結合される磁性複合体よりも基体10の透磁率を向上させることができる。
【0060】
シャープな粒度分布を有する微粒子粉を原料粉から微粒子41を作製することにより、基体10における微粒子41の粒径のばらつきを小さくすることができる。これにより、基体10の磁気飽和特性をさらに向上させることができる。
【0061】
次に、コイル部品1の製造方法について説明する。コイル部品1は、例えばシート積層法によって製造することができる。以下では、シート積層法によるコイル部品1の製造方法の一例を説明する。
【0062】
まず、基体10を構成する各磁性膜(上側カバー層18を構成する磁性膜18a~18d、磁性体層20を構成する磁性膜11~磁性膜17、及び下側カバー層19を構成する磁性膜19a~19d)の前駆体である磁性体シートを作製する。磁性体シートは、例えば、図7のステップS11~S13に従って作製される。具体的には、金属磁性粒子31の原料となる軟磁性金属粉と微粒子41の原料となる微粒子粉とを混合して得られた混合粉を樹脂及び溶剤と混練して混合樹脂組成物を生成し、この混合樹脂組成物をドクターブレード法又はこれ以外の一般的な方法にてプラスチック製のベースフィルムの表面に塗布して乾燥させシート状の成型体を得る。このシート状の成型体を型内で10~100MPa程度の成型圧力で加圧することにより磁性体シートが作製される。
【0063】
次に、磁性膜11~磁性膜16の前駆体である各磁性体シートの所定の位置に、各磁性体シートをT軸方向に貫く貫通孔を形成する。次に、磁性膜11~磁性膜17となる磁性体シートの各々の上面に、導電ペーストをスクリーン印刷法により印刷することで、当該磁性体シートに導体パターンを形成するとともに、各磁性体シートに形成された貫通孔に導電ペーストを埋め込む。このようにして磁性膜11~磁性膜17の前駆体である磁性体シートに形成された導体パターンは、加熱後にそれぞれ導体パターンC11~導体パターンC17となり、各貫通孔に埋め込まれた金属は、加熱後にそれぞれビアV1~V6となる。各導体パターンは、スクリーン印刷法以外にも公知の様々な方法で形成され得る。
【0064】
次に、磁性膜11~磁性膜17の前駆体である各磁性体シートを積層してコイル積層体を得る。磁性膜11~磁性膜17の前駆体である各磁性体シートは、当該各磁性体シートに形成されている導体パターンC11~C17の各々が隣接する導体パターンとビアV1~Va6を介して電気的に接続されるように積層される。
【0065】
次に、複数の磁性体シートを積層して上側カバー層18となる上側積層体を形成する。また、複数の磁性体シートを積層して下側カバー層19となる下側積層体を形成する。
【0066】
次に、下側積層体、コイル積層体、上側積層体をT軸方向の負方向側から正方向側に向かってこの順序で積層し、この積層された各積層体をプレス機により熱圧着することで本体積層体が得られる。本体積層体は、下側積層体、コイル積層体、及び上側積層体を形成せずに、準備した磁性体シート全てを順番に積層して、この積層された磁性体シートを一括して熱圧着することにより形成しても良い。次に、ダイシング機やレーザ加工機等の切断機を用いて上記本体積層体を所望のサイズに個片化することで、チップ積層体が得られる。チップ積層体の端部に対しては、必要に応じて、バレル研磨等の研磨処理を行ってもよい。
【0067】
次に、このチップ積層体を脱脂し、脱脂されたチップ積層体を熱処理することで基体10が得られる。この熱処理により、金属磁性粒子の表面に酸化膜32が形成され、隣り合う金属磁性粒子31同士が酸化膜32を介して結合する。また、熱処理の間に基体10の表面に酸化膜が形成される。チップ積層体の熱処理は、600℃~900℃で、20分間~120分間の加熱時間だけ行われる。
【0068】
次に、このチップ積層体の両端部に導体ペーストを塗布することにより、外部電極21及び外部電極22を形成する。外部電極21及び外部電極22には、必要に応じて、半田バリア層及び半田濡れ層の少なくとも一方が形成されてもよい。以上により、コイル部品1が得られる。
【0069】
コイル部品1は、圧縮成型法、薄膜プロセス法、スラリービルド法、又はこれら以外の公知の方法で作製されてもよい。
【実施例0070】
以下のようにして微粒子41の平均粒径が異なる5種類の磁性複合体を作成し、その磁気特性を評価した。まず、金属磁性粒子31の原料として、平均粒径4μmの軟磁性金属粉(Fe:95wt%、Si:3.5wt%、Cr:1.5wt%)を準備した。また、微粒子41の原料として、平均粒径が10nm(信越化学工業株式会社製のQSGシリーズ)のシリカ微粒子を準備した。次に、軟磁性金属粉100wt%に対して、0.2wt%の割合で微粒子粉を添加し、この軟磁性金属粉及び微粒子粉をともにプラネタリーミキサーに投入し、混合粉を作製した。この軟磁性金属粉と微粒子粉との混合は、軟磁性金属粉の各々の表面に微粒子粉が付着するように行った。
【0071】
次に、混合粉をアクリル樹脂及び溶剤と混練して混合樹脂組成物を生成した。次に、混合樹脂組成物をPETフィルム上にドクターブレード法により塗工し、この塗工された混合樹脂組成物を乾燥させて溶剤を揮発させることでシート形状の樹脂成型体を得た。このシート形状の樹脂成型体を積層して厚みが4.5mmの積層体を得た。次に、この積層体を10t/cm2の圧力で二段階で圧着することで積層体を得た。この積層体を外径が19mm内径が10mmのトロイダル形状に打ち抜いた。次に、このトロイダル形状に打ち抜かれた積層体に大気中で350℃の温度で脱脂処理を行った。次に、脱脂された積層体に対して、大気中において800℃で60分間熱処理を行った。この熱処理により、試料1の磁性複合体が得られた。熱処理において、軟磁性金属粉は、表面に酸化膜32が形成された金属磁性粒子31となり、微粒子粉は、微粒子41となった。
【0072】
また、微粒子粉の平均粒径を変更して、試料2~試料5を作製した。具体的には、平均粒径が30nm、80nm、110nm、170nmの4種類の微粒子粉(それぞれ、信越化学工業株式会社製のQSGシリーズ)を準備し、これらの微粒子粉を微粒子41の原料粉として、試料1と同じ方法で試料2~試料5の磁性複合体を作製した。
【0073】
さらに、微粒子粉に代えて、有機系分散材としてカルボキシル基含有ポリマー変性物を軟磁性金属粉に添加し、試料1と同じ方法で磁性複合体を作製した。有機系分散剤を用いて作製された磁性複合体を試料6とする。
【0074】
さらに、微粒子粉及び有機系分散材のいずれとも混合されていない軟磁性金属粉をアクリル樹脂及び溶剤と混練して樹脂組成物を生成し、この樹脂組成物に、試料1~試料6と同じ条件で脱脂処理及び熱処理を行って、試料7の磁性体を作成した。
【0075】
以上のようにして作製された試料1~試料7の各々について、金属磁性粒子31の充填率を測定した。具体的には、各試料をその厚さ方向に沿って切断して断面を露出させ、当該断面の視野の全面積に対する金属磁性粒子が占める面積を充填率とした。
【0076】
試料1~試料7の各々について、Agilent社製インピーダンスアナライザE4991Aを用いて、100kHzの周波数における透磁率を測定した。
【0077】
試料1~試料7の各々について、飽和電流値(Isat)を測定した。飽和電流値は、インダクタに直流電流を印加しない時のインダクタンスを初期値とし、直流電流の印加によりインダクタンスが初期値から30%低下する時の直流電流である。
【0078】
試料1~試料7の各々について、以下のようにして耐電圧性を評価した。試料1~試料7の対向する2つの面に電極を形成し、この電極間に電圧を印加して電流値を測定することで行った。印加電圧を徐々に上げて電流値を測定し、該電流値から算出される電流密度が0.01A/cm2となった電圧から算出される電界強度を破壊電圧(BDV、Breakdown Voltage)とした。
【0079】
以上のようにして測定された充填率、透磁率、飽和電流値、及び破壊電圧を表1にまとめた。
【表1】
【0080】
以上の測定結果から、試料1~試料5においては、微粒子41を含まない試料6と比べて飽和電流値が向上することが確認できた。また、試料1~試料5においては、0.3V/μm以上の破壊電圧を確保できることが確認できた。さらに、微粒子41を含む磁性複合体である試料1~試料4においては、微粒子を含まない試料7と比べて、充填率が向上し、その結果、透磁率が向上することが確認できた。試料5においては、微粒子41の平均粒径が大きいため、その分だけ金属磁性粒子31の充填率が低下したと考えられる。このため、微粒子41の平均粒径を110nm以下とすることにより、微粒子41や有機系分散材を含まない透磁率を向上できることが分かった。
【0081】
有機系分散材が用いられている試料6においては、充填率及び透磁率は向上するが、飽和電流値が小さい。試料6においては、隣接する金属磁性粒子間の間隔のばらつきが大きいため、金属磁性粒子間の距離が小さい領域において局所的な磁気飽和が発生しやすく、このため飽和電流値が小さくなっていると考えられる。
【0082】
また、試料6においては、破壊電圧が大幅に劣化している。軟磁性金属粉に有機系分散剤が添加されている試料6では、熱処理において有機系分散材の残渣(カーボン)が雰囲気中の酸素を消費するため、金属磁性体同士の表面における酸化膜(特に、酸化鉄)の生成を阻害する。このため、隣接する金属磁性粒子間で絶縁破壊が起こりやすい。微粒子粉としてシリカ微粒子を用いる場合には、熱処理時に酸素を消費する副生成物が生成されないので、金属磁性粒子31の表面における酸化膜32の生成が阻害されない。このため、シリカ微粒子を用いることで、破壊電圧を向上させることができる。
【0083】
次に、試料2及び試料7の作成過程で得られたシート形状の樹脂成型体について、次のようにして伸び特性を評価した。試料2の作成過程で得られたシート形状の樹脂成型体を3cm×9cmに大きさに裁断し、幅3cm、長さ9cmの短冊状の試験片(試料B1)を得た。同様に、試料7の作成過程で得られたシート形状の樹脂成型体を3cm×9cmに大きさに裁断し、幅3cm、長さ9cmの短冊状の試験片を得た。これらの試験片(試料B2)について、JIS K 7127に準拠して、下記条件にて引張試験を行い、破断伸度を求めた。
・引張速度:30mm/min
・温度:25℃
・チャック間距離:50mm
【0084】
また、これらの試験片について密度を測定した。破断伸度及び密度の測定結果は、以下の表2に記載のとおりであった。
【表2】
【0085】
以上の測定結果から、微粒子粉(シリカ微粒子)を含む試料B1のシートにおける密度は、微粒子分を含まない試料B2のシートにおける密度よりも向上していることが分かった。この密度の向上は、微粒子粉が軟磁性金属粉の混合樹脂組成物中での流動性や分散性を向上させるためと考えられる。
【0086】
試料B1のシートの密度が向上したことにより、試料B1の破断伸度は、試料B2の破断伸度よりも向上している。このため、試料B1のシートは、ハンドリング性に優れている。例えば、試料B1のシートは、ベースフィルムから剥離しやすい。また、試料B1のシートにおいては、ベースフィルムから剥離する際に形状がゆがみにくいので、シート上に導電性ペーストを精度よく印刷することができる。
【0087】
本明細書において説明された製造方法に含まれる工程の一部は、適宜省略可能である。コイル部品1の製造方法においては、本明細書において明示的に説明されていない工程が必要に応じて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、本発明の趣旨から逸脱しない限り、随時順番を入れ替えて実行され得る。上記のコイル部品1の製造方法に含まれる各工程の一部は、可能であれば、同時に又は並行して実行され得る。
【0088】
前述の様々な実施形態で説明された各構成要素の寸法、材料及び配置は、それぞれ、各実施形態で明示的に説明されたものに限定されず、当該各構成要素は、本発明の範囲に含まれ得る任意の寸法、材料及び配置を有するように変形することができる。
【0089】
本明細書において明示的に説明していない構成要素を、上述の各実施形態に付加することもできるし、各実施形態において説明した構成要素の一部を省略することもできる。
【0090】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0091】
本明細書では、以下の技術も開示される。
[1]
第1金属磁性粒子及び前記第1金属磁性粒子に隣接する第2金属磁性粒子を含む複数の金属磁性粒子と、
前記第1金属磁性粒子及び前記第2金属磁性粒子に接するように配置された絶縁性で非磁性の第1微粒子と、
前記第1金属磁性粒子の表面に設けられており前記第1金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む絶縁性の第1酸化膜と、
前記第2金属磁性粒子の表面に設けられており前記第2金属磁性粒子を構成する元素の酸化物を含む絶縁性の第2酸化膜と、
を備える磁性複合体。
[2]
前記第1酸化膜は、前記第2酸化膜と結合している、
[1]に記載の磁性複合体。
[3]
前記第1微粒子は、前記第1酸化膜及び前記第2酸化膜により覆われている、
[1]又は[2]に記載の磁性複合体。
[4]
前記第1微粒子の平均粒径は、10nm以上110nm以下である、
[1]から[3]のいずれか1つに記載の磁性複合体。
[5]
前記第1金属磁性粒子の表面に互いから離間して配置された複数の微粒子を備え、
前記複数の微粒子の各々は、絶縁性で且つ非磁性であり、
前記複数の微粒子の各々の少なくとも一部は、前記第1酸化膜で覆われており、
前記複数の微粒子は、前記第1微粒子を含む、
[1]から[4]のいずれか1つに記載の磁性複合体。
[6]
前記複数の微粒子は、前記第1微粒子に隣接する第2微粒子を含み、
前記第1微粒子と前記第2微粒子との間の距離は、前記第1微粒子の粒径及び前記第2微粒子の粒径のいずれよりも大きい、
[1]から[5]のいずれか1つに記載の磁性複合体。
[7]
前記複数の微粒子の各々は、疎水処理されたSiO2粒子である、
[1]から[6]のいずれか1つに記載の磁性複合体。
[8]
前記複数の金属磁性粒子の各々は、Fe基金属磁性粒子である、
[1]から[7]のいずれか1つに記載の磁性複合体。
[9]
[1]から[8]のいずれか1つに記載の磁性複合体と、
前記磁性複合体に設けられたコイル導体と、
を備えるコイル部品。
[10]
[9]に記載のコイル部品を備える回路基板。
[11]
[10]に記載の回路基板を備える電子機器。
[12]
複数の軟磁性金属粉及び絶縁性且つ非磁性の複数の微粒子粉を混合することにより混合粉を得る工程と、
前記混合粉を樹脂と混合することで混合樹脂組成物を得る工程と、
前記混合樹脂組成物を圧縮して前記複数の軟磁性金属粉のうち隣接する軟磁性金属粉の間に前記複数の微粒子粉のうちの少なくとも一つが配置された圧縮成型体を得る工程と、
前記圧縮成型体を加熱することで、前記樹脂を脱脂し、前記複数の軟磁性金属粉の各々の表面に酸化膜を形成する加熱工程と、
を備える磁性複合体の製造方法。
[13]
前記混合粉に含まれる前記複数の軟磁性金属粉の各々の表面には、前記複数の微粒子粉の一部が付着している、
[12]に記載の磁性複合体の製造方法。
[14]
前記加熱工程により、前記複数の軟磁性金属粉のうち隣接する軟磁性金属粉の各々の表面に形成された酸化膜同士が結合する、
[12]又は[13]に記載の磁性複合体の製造方法。
[15]
前記複数の軟磁性金属粉の各々は、Fe基軟磁性金属粉である、
[12]又は[13]に記載の磁性複合体の製造方法。
【符号の説明】
【0092】
1 コイル部品
10 基体(磁性複合体)
21、22 外部電極
31 金属磁性粒子
31a 第1金属磁性粒子
31b 第2金属磁性粒子
32 酸化膜
32a 第1酸化膜
32b 第2酸化膜
41 微粒子
131 軟磁性金属粉
141 微粒子粉
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b