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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125928
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/02 20060101AFI20230831BHJP
   H03H 9/17 20060101ALI20230831BHJP
   H03H 9/25 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
G01N29/02 501
H03H9/17 F
H03H9/25 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030297
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】青木 達也
【テーマコード(参考)】
2G047
5J097
5J108
【Fターム(参考)】
2G047AA12
2G047BA04
2G047BC04
2G047BC14
2G047CB03
2G047EA10
5J097BB01
5J097DD12
5J097DD14
5J097FF01
5J097GG02
5J097GG03
5J097GG04
5J108AA09
5J108BB07
5J108BB08
5J108CC04
5J108CC10
5J108EE03
5J108FF02
(57)【要約】
【課題】検出結果のばらつきを抑制することが可能な検出装置を提供する。
【解決手段】検出装置100は、弾性波が共振する共振領域28を有する共振器と、前記共振領域28上に設けられ、複数の孔19を有する薄膜18と、を備え、前記複数の孔19のそれぞれにおいて、前記共振領域28に抗体が接続可能である。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性波が共振する共振領域を有する共振器と、
前記共振領域上に設けられ、複数の孔を有する薄膜と、
を備え、
前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記共振領域に抗体が接続可能な検出装置。
【請求項2】
前記共振領域の平面形状は長方形状であり、前記長方形状の両長辺の外側に前記薄膜の上面より高い上面を有するガイドを備える請求項1に記載の検出装置。
【請求項3】
前記共振器は、直列接続された複数の共振器を含む請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項4】
前記共振器は、圧電層と、前記圧電層を挟む第1電極および第2電極を備え、
前記共振領域は、前記圧電層の少なくとも一部を挟み前記第1電極と前記第2電極とが重なる領域である請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項5】
前記共振器は、圧電層と、前記圧電層を挟む第1電極および第2電極を備え、
前記共振領域は、前記圧電層の少なくとも一部を挟み前記第1電極と前記第2電極とが重なる領域である請求項3に記載の検出装置。
【請求項6】
前記共振器は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ複数の第1電極指を有する第1櫛型電極と、前記圧電基板上に設けられ複数の第2電極指を有する第2櫛型電極と、を備え、
前記共振領域は、前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが交互に設けられた領域である請求項3に記載の検出装置。
【請求項7】
前記共振器は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ複数の第1電極指を有する第1櫛型電極と、前記圧電基板上に設けられ複数の第2電極指を有する第2櫛型電極と、を備え、
前記共振領域は、前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが交互に設けられた領域である請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項8】
前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記共振領域に接続された抗体を備える請求項7に記載の検出装置。
【請求項9】
前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記共振領域に接続された抗体を備える請求項1または2に記載の検出装置。
【請求項10】
前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記共振領域に接続された抗体を備える請求項3に記載の検出装置。
【請求項11】
弾性波が伝搬する伝搬路と、
前記伝搬路上に設けられ、複数の孔を有する薄膜と、
を備え、
前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記伝搬路に抗体が接続可能な検出装置。
【請求項12】
前記伝搬路の平面形状は長方形状であり、前記長方形状の両長辺の外側に前記薄膜の上面より高い上面を有するガイドを備える請求項11に記載の検出装置。
【請求項13】
圧電基板と、
前記圧電基板上に設けられ、前記弾性波を送信する一対の第1櫛型電極と、
前記圧電基板上に設けられ、前記弾性波を受信する一対の第2櫛型電極と、
を備え、
前記伝搬路は前記一対の第1櫛型電極と前記一対の第2櫛型電極との間における前記圧電基板を含む請求項11または12に記載の検出装置。
【請求項14】
前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記伝搬路に接続された抗体を備える請求項11または12に記載の検出装置。
【請求項15】
前記複数の孔のうち1つの孔に対し、前記抗体が1つ接続される請求項1または11に記載の検出装置。
【請求項16】
前記複数の孔のうち1つの孔に対し、前記抗体が1つ接続される請求項3に記載の検出装置。
【請求項17】
前記抗体は前記薄膜には結合しない請求項1または11に記載の検出装置。
【請求項18】
前記抗体は前記薄膜には結合しない請求項15に記載の検出装置。
【請求項19】
中央部に設けられ長方形状を有する第1領域、前記第1領域の前記長方形状の長辺方向における両側に設けられた第2領域および第3領域を有する基板と、
前記第1領域と、前記第1領域から第2領域まで連続して前記基板上に設けられた下部電極と、
前記第1領域から前記第2領域および前記第3領域まで連続して前記基板および前記下部電極上に設けられた圧電層と、
前記第1領域から前記第3領域まで連続して前記圧電層上に設けられた上部電極と、
前記第1領域に対応する前記上部電極上に設けられ、前記第1領域に対応した長方形状の薄膜と、
前記薄膜に設けられた複数の孔の底部に設けられた抗体と、
前記第1領域の前記長方形状の2つの長辺に沿ってそれぞれ設けられ、上面が前記薄膜の上面よりも高く設けられた2つのガイドと、
前記2つのガイドの間における第1溝の底面において、前記複数の孔が露出する検出装置。
【請求項20】
前記2つのガイドの下部は、前記圧電層に設けられた第2溝内に設けられ、前記2つのガイドの上部は、前記第2溝の外において、前記薄膜上に重なる請求項19記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検出装置に関し、例えば、抗体を接続可能な検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウィルス等の抗原を検出する検出装置として、FBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)等の共振器の共振領域に抗体を固着させ、FBARの共振周波数の変化を検出することで、抗原を検出する検出装置が知られている(例えば非特許文献1)。弾性波が伝搬する伝搬路に抗体を固着させ、弾性波の速度の変化を検出することで、抗体を検出する検出装置が知られている(例えば非特許文献2)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】“Biosensor for human IgE detection using shear-mode FBAR devices" Ying-Chung Chen et al., Nanoscale Research Letters 10, Article number 69 (2015)
【非特許文献2】「POCT用SH-SAWバイオセンサの開発」 谷津田等、日本無線技報 No.64 2013 p41-45
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、共振領域または伝搬路に設けられる抗体の個数が、検出装置ごとに異なると、検査結果がばらついてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、検出結果のばらつきを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、弾性波が共振する共振領域を有する共振器と、前記共振領域上に設けられ、複数の孔を有する薄膜と、を備え、前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記共振領域に抗体が接続可能な検出装置である。
【0007】
上記構成において、前記共振領域の平面形状は長方形状であり、前記長方形状の両長辺の外側に前記薄膜の上面より高い上面を有するガイドを備える構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記共振器は、直列接続された複数の共振器を含む構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記共振器は、圧電層と、前記圧電層を挟む第1電極および第2電極を備え、前記共振領域は、前記圧電層の少なくとも一部を挟み前記第1電極と前記第2電極とが重なる領域である構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記共振器は、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ複数の第1電極指を有する第1櫛型電極と、前記圧電基板上に設けられ複数の第2電極指を有する第2櫛型電極と、を備え、前記共振領域は、前記複数の第1電極指と前記複数の第2電極指とが交互に設けられた領域である構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記共振領域に接続された抗体を備える構成とすることができる。
【0012】
本発明は、弾性波が伝搬する伝搬路と、前記伝搬路上に設けられ、複数の孔を有する薄膜と、を備え、前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記伝搬路に抗体が接続可能な検出装置である。
【0013】
上記構成において、前記伝搬路の平面形状は長方形状であり、前記長方形状の両長辺の外側に前記薄膜の上面より高い上面を有するガイドを備える構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、圧電基板と、前記圧電基板上に設けられ、前記弾性波を送信する一対の第1櫛型電極と、前記圧電基板上に設けられ、前記弾性波を受信する一対の第2櫛型電極と、を備え、前記伝搬路は前記一対の第1櫛型電極と前記一対の第2櫛型電極との間における前記圧電基板を含む構成とすることができる。
【0015】
上記構成において、前記複数の孔のそれぞれにおいて、前記伝搬路に接続された抗体を備える構成とすることができる。
【0016】
上記構成において、前記複数の孔のうち1つの孔に対し、前記抗体が1つ接続される構成とすることができる。
【0017】
上記構成において、前記抗体は前記薄膜には結合しない構成とすることができる。
【0018】
本発明は、中央部に設けられ長方形状を有する第1領域、前記第1領域の前記長方形状の長辺方向における両側に設けられた第2領域および第3領域を有する基板と、前記第1領域と、前記第1領域から第2領域まで連続して前記基板上に設けられた下部電極と、前記第1領域から前記第2領域および前記第3領域まで連続して前記基板および前記下部電極上に設けられた圧電層と、前記第1領域から前記第3領域まで連続して前記圧電層上に設けられた上部電極と、前記第1領域に対応する前記上部電極上に設けられ、前記第1領域に対応した長方形状の薄膜と、前記薄膜に設けられた複数の孔の底部に設けられた抗体と、前記第1領域の前記長方形状の2つの長辺に沿ってそれぞれ設けられ、上面が前記薄膜の上面よりも高く設けられた2つのガイドと、前記2つのガイドの間における第1溝の底面において、前記複数の孔が露出する検出装置である。
【0019】
上記構成において、前記2つのガイドの下部は、前記圧電層に設けられた第2溝内に設けられ、前記2つのガイドの上部は、前記第2溝の外において、前記薄膜上に重なる構成とすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、検出結果のばらつきを抑制することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1(a)は、実施例1に係る検出装置の平面図、図1(b)は、下部電極、上部電極および共振領域を示す平面図、図1(c)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)は、図1(a)のB-B断面図、図2(b)は、孔周辺の拡大断面図、図2(c)は、B-B断面図の別の例である。
図3図3(a)は、実施例1の変形例1に係る検出装置の平面図、図3(b)は、図3(a)のA-A断面図である。
図4図4(a)および図4(b)は、それぞれ実施例1の変形例2および3に係る検出装置の断面図である。
図5図5(a)は、実施例2に係る検出装置の平面図、図5(b)は、図5(a)のA-A断面図である。
図6図6(a)は、実施例2の変形例1に係る検出装置の平面図、図6(b)は、図6(a)のA-A断面図である。
図7図7(a)は、実施例3に係る検出装置の平面図、図7(b)は、図7(a)のA-A断面図である。
図8図8(a)および図8(b)は、それぞれ実施例4およびその変形例1に係る検出システムのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0023】
[実施例1:検出装置に圧電薄膜共振器を採用した例]
図1(a)は、実施例1に係る検出装置100の平面図、図1(b)は、下部電極、上部電極および共振領域を示す平面図、図1(c)は、図1(a)のA-A断面図である。図2(a)は、図1(a)のB-B断面図、図2(b)は、孔周辺の拡大断面図である。基板10上の各層の積層方向をZ方向、下部電極12が共振領域28から引き出される方向をX方向、平面方向のうちX方向に直交する方向をY方向とする。図1(a)は、薄膜18、孔19、検知部22およびガイド26を主に図示し、薄膜18を太破線で示している。図1(b)において、下部電極12と上部電極16とのY方向の幅Wyはほぼ同じであるが、わかりやすいように、下部電極12のX方向およびY方向の幅を上部電極16のY方向の幅よりやや広く図示し、共振領域28をクロスハッチングで示している。
【0024】
図1(a)から図2(a)に示すように、検出装置100は、圧電薄膜共振器20を備えている、この圧電薄膜共振器20は、平面形状が矩形(ここでは長方形状)の基板10に以下の積層膜15が設けられている。積層膜15として、基板10上に音響反射膜11、下部電極12、圧電層14、上部電極16、保護膜17および接続層21が積層されている。音響反射膜11では、音響インピーダンスの低い膜11aと音響インピーダンスの高い膜11bとが交互に積層されている。膜11aおよび11bの各々の厚さを弾性波の波長の約1/4とすることで、弾性波は音響反射膜11において反射する。なお、ここでは、音響反射膜11の最下層は高インピーダンスの膜11bであり、最上層は低インピーダンスの膜11aである。
【0025】
基板10および積層膜15には、共振領域28(第1領域)、領域29a(第2領域)および29b(第3領域)が設けられている。共振領域28の平面形状はX方向が長辺となる長方形状であり、共振領域28は基板10の中央部に設けられている。領域29aおよび29bは、共振領域28のX方向における両側に設けられ、パッドとなる領域である。下部電極12の平面形状はX方向が長辺となる長方形状であり、下部電極12は、共振領域28から領域29aまで、所定の幅Wyを有し+X方向に連続して延伸する。上部電極16の平面形状はX方向が長辺となる長方形状であり、上部電極16は、所定の幅Wyを有し共振領域28から領域29bまで-X方向に連続して延伸する。圧電層14の少なくとも一部を挟み、下部電極12と上部電極16とが重なる領域は共振領域28である。X方向における共振領域28の幅はWxであり、Y方向における共振領域28の幅はWyである。共振領域28内の積層膜15には、厚み縦振動モードまたは厚みすべり振動モード等の弾性波が共振する。なお、ここで長方形状とは幾何学的な長方形でなくてもよく、対向する辺は平行から10°程度異なっていてもよい。また、角が丸まっていてもよい。
【0026】
保護膜17は、上部電極16および圧電層14を水分等から保護する膜であるが、設けられていなくてもよい。共振領域28のY方向の両側にガイド26が設けられている。ガイド26の下部は、図2(a)に示すように、積層膜15をパターニングし除去した溝27(第2溝)に設けられている。別の表現をすると、ガイド26は、パターニングした積層膜15の対向する2つの側壁を覆いつつ、上面は薄膜18の上面より高い。図1(a)のように、基板10のX方向における基板10の短辺まで延在する。これにより、図2(a)のように、2つのガイド26の間には、幅Wyを有する溝27a(第1溝)が形成される。後述するが、ガイド26の間の溝27aに検体を含む液体が設けられたり、流れたりする。なお、パターニングされた積層膜15にパターニング加工でガイド26を形成するため、ガイド26は、積層膜15の表面を覆うこともある。
【0027】
共振領域28における保護膜17上に薄膜18が設けられている。薄膜18には、薄膜18を貫通する複数の孔19が設けられている。複数の孔19内には検知部22が設けられている。
【0028】
図2(b)に示すように、薄膜18の孔19内には、検知部22が設けられている。検知部22は、接続部23と抗体24とを備える。抗体24は、免疫グロブリンであり、IgG(Immunoglobulin G)またはIgEである。この抗体24は、Fc(Fragment Crystallizable)領域24aとFab(Fragment Antigen Binding)領域24bとを備える。後者のFab領域24bは抗原25に結合する領域である。接続部23の下端は、薄膜18の表面には結合せず、孔19の底面となる接続層21の表面と結合し、上端は抗体24のFc領域24aに結合する。一部を言い換えると、接続部23の下端は、孔19を介して接続層21の表面と結合するともいえる。これにより、抗体24は接続部23を介し接続層21に固定される。なお、1つの孔19に決まった数の抗体24、ここでは1つの抗体24が結合するように孔19の径が設定されている。
【0029】
抗原抗体反応により抗原25が抗体24に結合すると、積層膜15に付加される質量が大きくなり、圧電薄膜共振器20の共振周波数が低くなる。この共振周波数の変化により、抗原25を検出できる。抗原25は、ウィルスまたは細菌等のうち抗体24が結合する蛋白質、またはそれ以外の蛋白質自体である。Fab領域24bを特定の抗原25に結合する蛋白質とすることで、抗体24には特定の抗原25が結合する。抗体24には例えばモノクローナル抗体を用いることができる。
【0030】
基板10は、例えばシリコン基板、サファイア基板、石英基板、ガラス基板、セラミック基板またはGaAs基板である。膜11aは例えば酸化シリコン膜または窒化シリコン膜であり、膜11bは、例えばタングステン膜、タンタル膜、モリブデン膜またはルテニウム膜等である。
【0031】
下部電極12および上部電極16は、例えばルテニウム(Ru)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、銅(Cu)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)またはイリジウム(Ir)等の単層膜またはこれらの膜から複数種類を選択した積層膜である。一例として、下部電極12および上部電極16は、ルテニウム膜である。
【0032】
圧電層14は、例えば窒化アルミニウム(AlN)膜、酸化亜鉛(ZnO)膜、窒化ガリウム(GaN)膜、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)膜、チタン酸鉛(PbTiO3)膜、タンタル酸リチウム(LiTaO)膜またはニオブ酸リチウム(LiNbO)膜である。一例として、圧電層14は、(002)方向を主軸とする窒化アルミニウム(AlN)を主成分とする。
【0033】
保護膜17は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁膜である。接続層21の材料は、表面に接続部23が結合しやすく、かつ検体を含む液体により腐食されにくい材料であればよく、一例として金である。接続部23は、一端が金層等の金属層と結合し、他端が抗体24と結合する蛋白質であり、例えば自己組織化単分子膜またはリンカー蛋白質である。薄膜18は、例えばシリコン膜等の孔19の加工の容易な膜である。薄膜18の材料は、表面に接続部23が結合しにくく、かつ検体を含む液体により腐食されにくい材料であり、一例としてシリコンである。保護膜17が上面に接続部23が結合しやすい材料の場合、接続層21は設けなくてもよい。
【0034】
薄膜18および接続層21の平面形状は、共振領域28の平面形状と同じであってもよいし、異なっていてもよい。薄膜18および接続層21は、共振領域28より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【0035】
薄膜18の厚さは例えば1nm~100nmであり、一例として10nmである。孔19の径は例えば1nm~100nmでり、一例として20nmある。孔19の径を適宜調整することで、孔19内の接続層21上に1つの抗体24が結合する程度の接続部23を結合させることができる。孔19の径を大きくし、1つの孔19内の接続層21上に2以上の抗体24を結合させてもよい。なお、図1(a)において、薄膜18に並んだ孔19は、実質同じサイズでマトリックス状に並べられ、抗体24の数が特定できることが好ましい。孔19の密度は、例えば10~10000個/μmであり、一例として600個/μmである。孔19の密度を調整することで、共振領域28内の保護膜17に結合する抗体24の個数を制御できる。
【0036】
ガイド26は、例えばシリコーン樹脂等の樹脂である。図2(a)では、積層膜15に設けられた溝27の側面とガイド26の側面とは一致して接しており、積層膜15上にガイド26は乗り上げていない。このガイド26の配置構造は、ホトリソグラフィーなどの製造方法におけるパターンの合わせずれを考慮していない、理想的な配置である。実際には、積層膜15の溝27の側面とガイド26の側面が離れたり、ガイド26が積層膜15上に乗り上げたりする場合がある。
【0037】
図2(c)は、図1(a)のB-B断面図の別の例であり、積層膜15およびガイド26付近を拡大した図である。わかりやすくするため、Y方向の孔19の個数を図1(a)および図2(a)より減らし4個とし、孔19内の検知部22の図示を省略している。
【0038】
図2(c)に示すように、ガイド26の上部が薄膜18の周縁部上に乗り上げている。これにより、積層膜15の溝27の側面とガイド26の側面との間の離間部または積層膜15の各層間の界面に液体が浸入すること抑制できる。長方形状の薄膜18において、図1(a)における+Y側の長辺近傍においてX方向に例えば19個配列した孔19の列19a(図2(c)参照)と、-Y側の長辺近傍においてX方向に例えば19個配列した孔19の列B(図2(c)参照)と、が設けられている。図2(c)のように、ガイド26の上部は、この列19aおよび19bの孔19を覆わずに、溝27の側面とこの列19aまたは19bとの間で終端するように薄膜18の周縁部を覆う。そのためには、Y方向における孔19間の間隔D2よりも溝27の側面と列19aまたは19bとの間隔D1を大きくすることが好ましい。
【0039】
ガイド26間に、検体を含む液体を流入させることにより、薄膜18上に検体を含む液体を効率よく移動させることができる。薄膜18および接続層21の平面形状を長方形状とし、長方形状の2つの長辺の外側に、長辺に沿ってガイド26を形成すれば、より効率的に検体(抗原)を抗体24に作用させることができる。また、検体を含む液体が薄膜18および接続層21上に流入したときに、長方形状のガイド26によって、液体が層となって流れる。このとき、薄膜18および接続層21の平面形状が長方形状であると、液体の通過点に複数の孔19が一様に配置されることになるので、効率的に検体を抗体24に作用させることができる。
【0040】
薄膜18上に駆動物質を塗布し、検体をモーター蛋白質により薄膜18上に移動させてもよい。この場合もガイド26により、検体を効率よく移動させることができる。モーター蛋白質は、一定の方向に沿って検体を移動させるので、薄膜18および接続層21の平面形状を長方形状とし、長方形状の長辺と検体の移動方向を沿うようにすることで、効率よく検体を移動できる。このため、薄膜18および接続層21の平面形状を長方形状として、2つの長辺の外側に、薄膜18および接続層21の平面形状の長辺に沿ってガイド26の平面形状を長方形状として形成することが好ましい。検体内に抗原25が含まれていると、抗体24に抗原25が結合し、積層膜15の質量が重くなる。よって、圧電薄膜共振器20の共振周波数が低くなる。なお、検体を含む液体を薄膜18上に滴下させてもよい。この場合、ガイド26は、薄膜18の4辺に沿って配置され囲んでいれば、薄膜18の上に検体を含む液体をとどめることができ検出精度が向上する。
【0041】
実施例1によれば、複数の孔19を有する薄膜18は弾性波が共振する共振領域28上に設けられている。複数の孔19のそれぞれにおいて、抗体24は薄膜18を介さずに共振領域28に接続する。これにより、孔19の密度を調整することで、共振領域28に固定される抗体24の個数を制御できる。よって、検出装置100ごとに、共振領域28に固定される抗体24の個数がばらつくことを抑制でき、検出結果のばらつきを抑制できる。なお、薄膜18は、複数の孔19のそれぞれにおいて共振領域28に抗体24が接続可能であればよい。
【0042】
1つの孔19に対し、複数の抗体24が設けられていてもよいが、1つの孔19に対し1つの抗体24が設けられるように孔19の径(または面積)を調整することが好ましい。これにより、共振領域28内の孔19の個数が抗体24の個数となる。
【0043】
複数の孔19は規則的に設けられていてもよいが、不規則に設けられていてもよい。いずれの場合にも、共振領域28内の孔19の個数と孔19の径を設定することで、共振領域28内の抗体24の個数を設定することができる。
【0044】
複数の孔19の径(または面積)は均一であることが好ましいが、複数の孔19の径(または面積)は異なっていてもよい。ガイド26を備えることで、検体を含む液体を共振領域28上に効率よく移動させることができる。共振領域28の長辺方向の幅Wxは短辺方向の幅Wyの1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。
【0045】
共振器として、実施例1のように圧電薄膜共振器20を用いることができる。この場合、共振領域28は、圧電層14の少なくとも一部を挟み下部電極12と上部電極16とが重なる領域である。
【0046】
[実施例1の変形例1:圧電薄膜共振器を直列接続する例]
変形例1は、複数の圧電薄膜共振器を直列接続する例である。図3(a)は、変形例1に係る検出装置102の平面図、図3(b)は、図3(a)のA-A線における断面図である。図3(a)は、薄膜18、孔19、検知部22およびガイド26を主に図示し、薄膜18を太破線で示している。
【0047】
図3(a)および図3(b)に示すように、検出装置102では、基板10に圧電薄膜共振器20aと20bが設けられている。ガイド26の間に圧電薄膜共振器20aの共振領域28aと圧電薄膜共振器20bの共振領域28bとが設けられている。図3(b)のように、圧電薄膜共振器20aおよび20bの下部電極12は、基板10の-Y側の短辺から+Y側の短辺まで分離されず一体で連続して設けられている。一方、上部電極16は、左右に2つに分離されて設けられている。よって、圧電薄膜共振器20aおよび20bが基板10の中央部を介して-X側と+X側に2つ分離されて形成されている。これにより、-X側の上部電極16に接続されたパッドと、+X側の上部電極16に接続されたパッドの間には、圧電薄膜共振器20aと20bが直列接続される。なお、上記2つの上部電極16は、分離されず一体に設けられ、下部電極12は、2つに分離され設けられていてもよい。
【0048】
実施例1のように、1つの圧電薄膜共振器20(実施例1)と、直列接続された圧電薄膜共振器20aおよび20b(実施例1の変形例1)と、で同じインピーダンスとする場合、圧電薄膜共振器20aおよび20bの共振領域28aおよび28bの合計の面積は、圧電薄膜共振器20の共振領域28の面積の4倍とすることができる。検出装置として好ましいインピーダンスは定まっているため、実施例1の変形例1では、実施例1に比べ、薄膜18の面積を4倍にできる。よって、検出装置の感度を向上できる。3個以上の圧電薄膜共振器が直列接続されていてもよい。
【0049】
共振領域28aおよび28bの平面形状は長方形状であり、長方形状の長辺方向(図3(a)のX方向)に圧電薄膜共振器20aおよび20bを配列する。共振領域28aおよび28b、並びに共振領域28aおよび28bの間の領域も含め、両側にガイド26を設ける。これにより、検体を含む液体を共振領域28aおよび28b上に効率よく移動させることができる。
【0050】
[実施例1の変形例2]
図4(a)は、検出装置104の断面図である。図4(a)に示す圧電層14は、下部圧電層14aと上部圧電層14bに分かれ、共振領域28において、下部圧電層14aと上部圧電層14bとの間に挿入膜13が設けられている。挿入膜13は、温度補償膜であり、挿入膜13の弾性定数の温度係数の符号は圧電層14の弾性定数の温度係数の符号と反対である。これにより、圧電薄膜共振器20における共振周波数等の温度依存性を抑制できる。挿入膜13は、例えば酸化シリコン膜または窒化酸化シリコン膜である。
【0051】
[実施例1の変形例3]
図4(b)は、検出装置105の断面図である。図4(b)に示すように、検出装置105では、音響反射膜11が設けられておらず、基板10に空隙11cが設けられている。基板10の厚さ方向から見て、共振領域28と空隙11cとは重なる。
【0052】
実施例1およびその変形例1および2のように、圧電薄膜共振器20、20aおよび20bは音響反射膜11を有するSMR(Solidly Mounted Resonator)でもよい。実施例1の変形例3のように、圧電薄膜共振器20、20aおよび20bは、空隙11cを有するFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)でもよい。
【実施例0053】
[実施例2:検出装置に弾性表面波共振器を採用した例]
図5(a)は、検出装置106の平面図、図5(b)は、図5(a)のA-A線に沿った断面図である。電極指34aおよび34bの配列方向(横方向)をX方向、電極指34aおよび34bの延伸方向(縦方向)をY方向、圧電基板30の法線方向をZ方向とする。図5(a)は、反射器33、IDT37(interdigital transducer)、パッド39a、39b、薄膜18、孔19、検知部22およびガイド26を主に図示し、薄膜18を太破線で示し、反射器33、IDT37、パッド39aおよび39bをクロスハッチングで示している。
【0054】
図5(a)および図5(b)に示すように、検出装置106では、図1(a)から図2(a)に示した圧電薄膜共振器20の代わりに弾性表面波共振器40が設けられている。弾性表面波共振器40は、圧電基板30上に設けられたIDT37および反射器33を有している。IDT37および反射器33は金属膜31により形成されている。
【0055】
IDT37は櫛型電極36aおよび36bを有する。櫛型電極36a(第1櫛型電極)は、複数の電極指34a(第1電極指)およびバスバー35aを有する。バスバー35aには、Y方向に延伸する複数の電極指34aの+Y側の端が接続され、バスバー35a自身はX方向に延伸する。櫛型電極36b(第2櫛型電極)は、複数の電極指34b(第2電極指)およびバスバー35bを有する。バスバー35bには、Y方向に延伸する複数の電極指34bの-Y側の端が接続され、バスバー35bはX方向に延伸する。IDT37のうち、X方向から見て電極指34aと34bとが重なる領域は、弾性波が共振する共振領域38である。共振領域38の少なくとも一部の領域において、電極指34aと34bとは1本毎に交互に設けられている。
【0056】
IDT37のX方向の両側に反射器33が形成されている。共振領域38内において、IDT37が励振した弾性波は主にX方向に伝搬し、反射器33は弾性波を反射する。電極指34aのピッチおよび電極指34bのピッチをλとする。λは、IDT37が励振する弾性表面波の波長に相当する。λは複数の電極指34aおよび34bのピッチDの2倍である。なお、λはピッチDの2倍以外の場合もある。
【0057】
圧電基板30上に、金属膜31を覆うように保護膜32が設けられている。共振領域38における保護膜32上に接続層21が設けられている。接続層21上に薄膜18が設けられている。電極指34aおよび34b上に設けられた薄膜18に、この薄膜18を貫通する複数の孔19が設けられている。複数の孔19内には抗体24が設けられている。弾性表面波共振器40のY方向の両側に、ガイド26からバスバー35aおよび35bが露出するようにガイド26が設けられている。X方向に延在する2本のガイド26のうち+Y側のガイド26では、ガイド26の下に配線41aが設けられ、ガイド26の+Y側に露出したパッド39aが設けられている。パッド39aは配線41aを介しバスバー35aに電気的に接続されている。-Y側のガイド26では、ガイド26の下に配線41bが設けられ、ガイド26の-Y側に露出したパッド39bが設けられている。パッド39bは配線41bを介しバスバー35bに電気的に接続されている。
【0058】
圧電基板30は、例えばタンタル酸リチウム基板、ニオブ酸リチウム基板または水晶基板であり、例えば、単結晶回転YカットX伝搬タンタル酸リチウム基板または単結晶回転YカットX伝搬ニオブ酸リチウム基板である。圧電基板30は、サファイア基板、シリコン基板、スピネル基板、水晶基板または石英基板等の支持基板上に直接または絶縁層を介し接合されていてもよい。金属膜31は、例えばアルミニウム、銅およびモリブデンの少なくとも1つの金属を主成分とする。保護膜32は、例えば酸化シリコン膜、窒化シリコン膜、窒化酸化シリコン膜等の絶縁膜である。薄膜18、検知部22およびガイド26の材料等は実施例1と同じである。
【0059】
実施例2のように、弾性表面波共振器においても、電極指34aと34bとが交互に設けられた共振領域38上に複数の孔19を有する薄膜18を設ける。図2(b)と同様に、複数の孔19のそれぞれにおいて、抗体24は薄膜18を介さずに共振領域38に接続される。これにより、抗原25が抗体24に結合すると、電極指34aおよび34bに付加される質量が大きくなり、弾性表面波共振器40の共振周波数が低くなる。この共振周波数の変化により、抗原25を検出できる。また、実施例1と同様に、共振領域38に固定される抗体24の個数がばらつくことを抑制でき、検出結果のばらつきを抑制できる。
【0060】
また、共振領域38の平面形状を長方形状とし、長方形状の両長辺の外側に薄膜18の上面より高い上面を有するガイド26を備える。これにより、検体を含む液体を共振領域38上に効率よく移動させることができる。
【0061】
[実施例2の変形例1:複数の弾性表面波共振器を直列接続する例]
図6(a)は、検出装置108の平面図、図6(b)は、図6(a)のA-A断面図である。図5(a)は、反射器33、33a、IDT37a、37b、パッド39a、39b、薄膜18、孔19、検知部22およびガイド26を主に図示し、薄膜18を太破線で示し、反射器33、33a、IDT37a、37b、パッド39aおよび39bをクロスハッチングで示している。
【0062】
図6(a)および図6(b)に示すように、圧電基板30に2つの弾性表面波共振器40aと40bが設けられている。2本のガイド26の間に共振領域38aと38bとが設けられている。弾性表面波共振器40aの+X側に反射器33が設けられ、弾性表面波共振器40bの-X側に反射器33が設けられている。弾性表面波共振器40aと40bとの間には、反射器33aが設けられている。反射器33aは、弾性表面波共振器40aと40bとに共有されている。
【0063】
弾性表面波共振器40aのバスバー35bと弾性表面波共振器40bのバスバー35bとは反射器33aを介し電気的に接続されている。弾性表面波共振器40aのバスバー35aは、配線41aを介しパッド39aに電気的に接続され、弾性表面波共振器40bのバスバー35aは、配線41bを介しパッド39bに電気的に接続されている。以上により、パッド39aと39bとの間において、弾性表面波共振器40aと40bとは直列接続されている。
【0064】
この変形例1では、実施例2に比べ、薄膜18の面積を4倍にできる。よって、検出装置の感度を向上できる。3個以上の弾性表面波共振器が直列接続されていてもよい。また、共振領域38aおよび38bの平面形状は長方形状であり、共振領域38および38bの両側にガイド26を設ける。これにより、検体を含む液体を共振領域38aおよび38b上に効率よく移動させることができる。
【実施例0065】
[実施例3:検出装置に弾性波が伝搬する伝搬路を採用した例]
実施例3として、検出装置に弾性波が伝搬する伝搬路を採用した例を説明する。図7(a)は、検出装置110の平面図、図7(b)は、図7(a)のA-A断面図である。弾性波の伝搬方向をX方向、圧電基板30の法線方向をZ方向、圧電基板30の上面に平行でありかつX方向に直交する方向をY方向とする。図7(a)は、IDT37a、IDT37b、パッド39a~39d、金属膜42、薄膜18、孔19、検知部22およびガイド26を主に図示し、薄膜18を太破線で示し、IDT37a、IDT37b、パッド39a~39dおよび金属膜42をクロスハッチングで示している。
【0066】
図7(a)および図7(b)に示すように、検出装置110では、圧電基板30上にIDT37aおよび37bが設けられている。IDT37aと37bとは離間している。IDT37aにおいて電極指34aと34bとが交互に設けられた領域48aと、IDT37bにおいて電極指34aと34bとが交互に設けられた領域48bとの間の領域は、弾性波が伝搬する伝搬路48である。
【0067】
IDT37aのバスバー35aおよび35bはパッド39aおよび39bにそれぞれ電気的に接続され、IDT37bのバスバー35aおよび35bはパッド39cおよび39dにそれぞれ電気的に接続されている。
【0068】
伝搬路48における圧電基板30上に金属膜42が設けられている。金属膜42はIDT37aおよび37bを形成する金属膜31と同じ材料からなる膜でもよいし、異なる材料からなる膜でもよい。金属膜42は、伝搬路48における電気的感度を抑制するための電界短絡用に設けられている。金属膜42は設けられていなくてもよい。金属膜42上に保護膜32が設けられている。保護膜32上に薄膜18が設けられている。薄膜18を貫通する複数の孔19が設けられている。複数の孔19内には抗体24が設けられている。伝搬路48、IDT37aおよび37bのY方向の両側にガイド26が設けられている。
【0069】
圧電基板30、金属膜31、保護膜32、薄膜18、検知部22およびガイド26の材料等は実施例1および2と同じである。
【0070】
パッド39aとパッド39cにグランド電位を供給し、グランド電位のパッド39cに対しパッド39dに高周波信号を加えると、IDT37bは圧電基板30の表面付近に弾性波を励振する。弾性波は伝搬路48における圧電基板30の表面付近を伝搬しIDT37aに達する。IDT37aでは、弾性表面波により、グランド電位のパッド39aに対しパッド39bに高周波信号が出力される。
【0071】
実施例2では、弾性波が伝搬する伝搬路48上に複数の孔19を有する薄膜18が設けられている。図2(b)と同様に、複数の孔19のそれぞれにおいて、抗体24は薄膜18を介さず伝搬路48に接続されている。つまり、伝搬路48が複数の孔19の底部となって、底部に抗体24が接続されている。抗体24に抗原25が結合すると、伝搬路48に付加される質量が大きくなり、伝搬路48を伝搬する弾性波の速度が遅くなる。この弾性波の速度の変化により抗原25を検出できる。また、実施例1および2と同様に、伝搬路48に固定される抗体24の個数がばらつくことを抑制でき、検出結果のばらつきを抑制できる。
【0072】
図7(a)および図7(b)のように、圧電基板30上に弾性波を送信するIDT37bの一対の櫛型電極36aおよび36b(第1櫛型電極)と、弾性波を受信するIDT37aの一対の櫛型電極36aおよび36b(第2櫛型電極)を設ける。伝搬路48は、IDT37bと37aとの間における圧電基板30を含む。これにより、抗体24に抗原25が結合すると、伝搬路48に付加される質量が大きくなり、IDT37bに入力した高周波信号と、IDT37aに出力される高周波信号と、の位相差が変化する。この位相差の変化により、抗原25を検出できる。
【0073】
伝搬路48の平面形状を長方形状とし、長方形状の両長辺の外側に薄膜18の上面より高い上面を有するガイド26を備える。これにより、検体を含む液体を伝搬路48上に効率よく移動させることができる。
【0074】
Z方向から見て、薄膜18および接続層21は、伝搬路48と同じ大きさでもよいが、伝搬路48より大きくてもよいし、小さくてもよい。
【実施例0075】
[実施例4:検出システム]
図8(a)は、実施例4に係る検出システム112のブロック図である。図8(a)に示すように、実施例4の検出システム112では、発振回路52は共振器50を有する。共振器50は、実施例1、2およびその変形例における圧電薄膜共振器20または弾性表面波共振器40である。発振回路52は、共振器50の共振周波数または反共振周波数に対応する発振周波数を有する発振信号を出力する。検出器54は、測定器56および算出器58を備えている。測定器56は、発振回路52が出力する発振信号の周波数を測定する。算出器58は、測定器56が測定した発振信号の周波数の変化量に基づき、抗原25を検出する。実施例4に係る検出システム112では、以上のように抗原25を検出できる。
【0076】
[実施例4の変形例1]
実施例4の変形例1は、実施例3を用いた検出システムの例である。図8(b)は、実施例4の変形例1に係る検出システム114のブロック図である。図8(b)に示すように、実施例4の変形例1の検出システム114では、送信器61は、実施例3の検出装置110のIDT37bに高周波信号を送信する。受信器62は、検出装置110のIDT37aから高周波信号を受信する。検出器64は測定器66および算出器68を備えている。測定器66は、送信器61が送信した高周波信号と受信器62が受信した高周波信号との位相差を測定する。算出器68は、測定器66が測定した位相差の変化量に基づき、抗原25を検出する。実施例4の変形例1に係る検出システム114では、以上のように抗原25を検出できる。
【0077】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0078】
10 基板
11 音響反射膜
12 下部電極
14 圧電層
15 積層膜
16 上部電極
17、32 保護膜
18 薄膜
19 孔
20、20a、20b 圧電薄膜共振器
21 接続層
22 検知部
23 接続部
24 抗体
24a Fc領域
24b Fab領域
25 抗原
26 ガイド
28、28a、28b、38、38a、38b 共振領域
30 圧電基板
31、42 金属膜
33、33a 反射器
34a、34b 電極指
35a、35b バスバー
36a、36b 櫛型電極
37a、37b IDT
40、40a、40b 弾性表面波共振器
48 伝搬路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8