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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125929
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】超音波トランスデューサ
(51)【国際特許分類】
   H04R 17/00 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
H04R17/00 330H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030298
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】河野 満治
(72)【発明者】
【氏名】荒牧 正明
【テーマコード(参考)】
5D019
【Fターム(参考)】
5D019AA21
5D019BB02
5D019BB04
5D019BB13
5D019BB26
(57)【要約】
【課題】受信感度を向上させることが可能な超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】超音波トランスデューサは、基板10と、基板上に設けられ、前記基板側に位置する第1主面と、第2主面と、を有する圧電層12と、前記圧電層の中央部を挟み、前記第1主面に設けられる第1送信電極14aおよび前記第2主面に設けられる第2送信電極14bと、前記圧電層の前記第2主面に、互いに隣接し、かつ離間して、前記第2送信電極を囲んで設けられる第1受信電極16aおよび第2受信電極16bと、前記第1送信電極と前記第2送信電極との間に交流電圧を印加することで、超音波を送信する送信部24と、前記第1受信電極と前記第2受信電極との間に生じる交流電圧により超音波を検出する検出部22とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられ、前記基板側に位置する第1主面と、第2主面と、を有する圧電層と、
前記圧電層の中央部を挟み、前記第1主面に設けられる第1送信電極および前記第2主面に設けられる第2送信電極と、
前記圧電層の前記第2主面に、互いに隣接し、かつ離間して、前記第2送信電極を囲んで設けられる第1受信電極および第2受信電極と、
前記第1送信電極と前記第2送信電極との間に交流電圧を印加することで、超音波を送信する送信部と、
前記第1受信電極と前記第2受信電極との間に生じる交流電圧により超音波を検出する検出部と、
を備える超音波トランスデューサ。
【請求項2】
前記基板において、前記第1送信電極および前記第2送信電極はいずれも前記第1受信電極および前記第2受信電極から電気的に分離されている請求項1に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項3】
前記圧電層の厚さ方向から見て、前記第1送信電極と、前記第1受信電極および前記第2受信電極と、は重ならない請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項4】
前記第1送信電極と前記第2送信電極とが挟む前記圧電層の厚さは、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域における前記圧電層の厚さより小さい請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項5】
前記第1送信電極と前記第2送信電極とが挟む前記圧電層の厚さは、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域における前記圧電層の厚さより小さい請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項6】
前記第1受信電極と前記第2受信電極との間隔は、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域における前記圧電層の厚さより大きい請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項7】
前記第1受信電極と前記第2受信電極との間隔は、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域における前記圧電層の厚さより大きい請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項8】
前記第1受信電極と前記第2受信電極との間隔は、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域における前記圧電層の厚さより大きい請求項4に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項9】
前記基板と前記圧電層との間に設けられた活性層を備える請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項10】
前記基板は、前記活性層と接する空隙を有し、
前記圧電層の厚さ方向から見て、前記第2送信電極、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域は、前記空隙に重なる請求項9に記載の超音波トランスデューサ。
【請求項11】
前記第1受信電極は前記第2送信電極を囲むように設けられ、
前記第2受信電極は前記第1受信電極を囲むように設けられ、
前記第2送信電極の外周の少なくとも一部、前記第1受信電極の内側の外周の少なくとも一部、前記第1受信電極の外側の外周の一部、前記第2受信電極の内側の外周の少なくとも一部、および前記第2受信電極の外側の外周の少なくとも一部は、略同じ中心を有する円周の少なくとも一部である請求項1または2に記載の超音波トランスデューサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波トランスデューサに関する。
【背景技術】
【0002】
測距センサや指紋センサ等に圧電体を用いた圧電型マイクロマシン超音波トランスデューサ(pMUT:Piezoelectric Micromachined Ultrasonic Transducer)が知られている。pMUTは逆圧電効果および圧電効果を用い超音波を送信および受信することができる(例えば特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第10566949号明細書
【特許文献2】特表2018-502467号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2では、1個の超音波トランスデューサを用い超音波の送信および受信を行うため、小型化および低コスト化が可能となる。厚さ方向において圧電層を挟む一対の送信電極および圧電層を挟む一対の受信電極を設ける構造が採用されている。超音波を送信するときには、一対の送信電極間に交流電圧を加えることで超音波を生成する。超音波を受信するときには、一対の受信電極間の交流電圧を検出することで超音波を検出する。しかしながら、この構造では、受信電極間の静電容量が大きくなり、受信感度が低下してしまう。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、受信感度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられ、前記基板側に位置する第1主面と、第2主面と、を有する圧電層と、前記圧電層の中央部を挟み、前記第1主面に設けられる第1送信電極および前記第2主面に設けられる第2送信電極と、前記圧電層の前記第2主面に、互いに隣接し、かつ離間して、前記第2送信電極を囲んで設けられる第1受信電極および第2受信電極と、前記第1送信電極と前記第2送信電極との間に交流電圧を印加することで、超音波を送信する送信部と、前記第1受信電極と前記第2受信電極との間に生じる交流電圧により超音波を検出する検出部と、を備える超音波トランスデューサである。
【0007】
上記構成において、前記基板において、前記第1送信電極および前記第2送信電極はいずれも前記第1受信電極および前記第2受信電極から電気的に分離されている構成とすることができる。
【0008】
上記構成において、前記圧電層の厚さ方向から見て、前記第1送信電極と、前記第1受信電極および前記第2受信電極と、は重ならない構成とすることができる。
【0009】
上記構成において、前記第1送信電極と前記第2送信電極とが挟む前記圧電層の厚さは、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域における前記圧電層の厚さより小さい構成とすることができる。
【0010】
上記構成において、前記第1受信電極と前記第2受信電極との間隔は、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域における前記圧電層の厚さより大きい構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記基板と前記圧電層との間に設けられた活性層を備える構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記基板は、前記活性層と接する空隙を有し、前記圧電層の厚さ方向から見て、前記第2送信電極、前記第1受信電極および前記第2受信電極が設けられた領域は、前記空隙に重なる構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1受信電極は前記第2送信電極を囲むように設けられ、前記第2受信電極は前記第1受信電極を囲むように設けられ、前記第2送信電極の外周の少なくとも一部、前記第1受信電極の内側の外周の少なくとも一部、前記第1受信電極の外側の外周の一部、前記第2受信電極の内側の外周の少なくとも一部、および前記第2受信電極の外側の外周の少なくとも一部は、略同じ中心を有する円周の少なくとも一部である構成とすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、受信感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1(a)は、実施例1に係る超音波トランスデューサを示す平面図およびブロック図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。
図2図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの送信動作を説明する図である。
図3図3(a)および図3(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの受信動作を説明する図である。
図4図4(a)は、比較例における受信電極付近の拡大図、図4(b)は、実施例1における送信電極付近の拡大図である。
図5図5(a)は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサを示す平面図およびブロック図、図5(b)は、図5(a)のA-A断面図である。
図6図6(a)は、実施例1の変形例2に係る超音波トランスデューサを示す平面図およびブロック図、図6(b)は、図6(a)のA-A断面図である。
図7図7(a)から図7(d)は、それぞれ実施例1の変形例3から6に係る超音波トランスデューサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照し実施例について説明する。
【実施例0017】
図1(a)は、実施例1に係る超音波トランスデューサを示す平面図およびブロック図、図1(b)は、図1(a)のA-A断面図である。なお、図1(b)の横方向の寸法は図1(a)のA-Aに沿った長さとは必ずしも対応していない。
【0018】
図1(a)および図1(b)を用い超音波トランスデューサの構成を説明する。チップ40には、厚みを有し平面形状が矩形状の基板10が設けられている。基板10には、空隙13が設けられている。基板10および空隙13上に活性層11が設けられている。送信電極14aが活性層11の上面の全面に渡り設けられている。送信電極14a上に圧電層12が送信電極14aの上面の全面に渡り設けられている。活性層11および圧電層12はたわみ振動する積層膜26である。圧電層12上に送信電極14b、受信電極16a、16b、配線15b、17a、17bおよびパッド18a~18dが設けられている。空隙13は、活性層および圧電層12の振動を抑制しないように設けられ、平面視において、送信電極14b、受信電極16aおよび16bを含む領域に重なるように設けられている。なお、空隙13は、例えば図1(a)において破線で示したように、例えば中心30を中心とする円形状である。空隙13は、基板10を貫通していなくてもよい。
【0019】
送信電極14bは平面視において空隙13の中心30付近に設けられ、平面形状は例えば円形状である。配線15bは送信電極14bとパッド18dとを電気的に接続する。なお、配線15a、送信電極14bおよびパッド18aは、同時に形成された同じ材料からなる金属層であり、互いに接続された構造である。受信電極16bは送信電極14bを囲むように設けられている。受信電極16bの内側の外周34dおよび外側の外周34cは円周状である。配線17bは受信電極16bとパッド18bとを電気的に接続する。
【0020】
受信電極16aは受信電極16bを囲むように設けられている。受信電極16aの内側の外周34bおよび外側の外周34aは円周状である。配線17aは受信電極16aとパッド18aとを電気的に接続する。パッド18cは圧電層12を貫通する貫通電極19を介し送信電極14aと電気的に接続されている。パッド18aおよび18bは検出部22に接続され、パッド18cおよび18dは送信部24に接続されている。
【0021】
検出部22は、パッド18aおよび配線17aを介し受信電極16aに電気的に接続され、パッド18bおよび配線17bを介し受信電極16bに電気的に接続されている。送信部24は、パッド18cおよび貫通電極19を介し送信電極14aに電気的に接続され、パッド18dおよび配線15bを介し送信電極14bに電気的に接続されている。検出部22および送信部24については後述する。
【0022】
基板10は、例えばシリコン基板またはSOI(Silicon on insulator)基板(すなわちシリコン基板上にシリコン酸化膜が形成された基板)等である。活性層11は、多結晶シリコン層等である。活性層11の厚さは例えば1μm~10μmである。活性層11の上面にシリコン酸化膜等の絶縁層を設けてもよいし、設けなくてもよい。送信電極14a、14b、受信電極16a、16b、配線15b、17a、17b、およびパッド18a~18dは、例えばルテニウム、モリブデン、金、チタン、白金、アルミニウム、銅もしくはクロム等の金属膜またはこれらの中から複数の膜が選択された積層膜である。送信電極14a、14b、受信電極16a、16b、配線15a、15b、17a、17b、およびパッド18a~18dは互いに同じ材料からなる金属膜もよいし、互いに異なる材料からなる金属膜でもよい。
【0023】
圧電層12の材料は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)、BTO(チタン酸バリウム)、AlN(窒化アルミニウム)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)、LiNbO(ニオブ酸リチウム)、LiTaO(タンタル酸リチウム)、ZnO(酸化亜鉛)またはKNN(ニオブ酸カリウムナトリウム)である。圧電層12の厚さは、例えば1μm~10μmである。
【0024】
送信電極14bの直径は例えば100μm~1000μm、送信電極14bと受信電極16bとの間隔は例えば10μm~100μm、受信電極16bの径方向の幅は例えば10μm~100μm、受信電極16aと16bとの間隔は例えば10μm~100μm、受信電極16aの径方向の幅は例えば10μm~100μmである。空隙13、送信電極14a、14b、受信電極16aおよび16bの平面形状および面積は適宜設定できる。
【0025】
実施例1における超音波トランスデューサが超音波を送信する動作を説明する。図2(a)から図2(d)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの送信動作を説明する図である。図2(b)は、送信電極14aおよび14b付近の拡大図である。図2(c)および図2(d)は、圧電層12と活性層11を図示している。
【0026】
図2(a)に示すように、送信部24は、送信電極14aと14bとの間に交流電圧41を印加する。図2(b)に示すように、送信電極14aと14bとの間に交流電圧が加わると、圧電層12内に厚さ方向の電界44が加わる。電界44の向きは、交流電圧41の電圧の方向に応じ時間とともに交互に反転する。すなわち、送信電極14aにマイナスの電圧、送信電極14bにプラスの電圧が加わることと、送信電極14aにプラスの電圧、送信電極14bにマイナスの電圧が加わることを繰り返す。逆圧電効果により、圧電層12内の面方向に歪み42が生じる。歪み42の向きは、交流電圧41の電圧の方向に応じ時間とともに交互に反転する。すなわち、送信電極14aにマイナスの電圧、送信電極14bにプラスの電圧が加わっているときに、圧電層12の面内に外向きの歪みが生じる。送信電極14aにプラスの電圧、送信電極14bにマイナスの電圧が加わっているときに、圧電層12の面内に内向きの歪みが生じる。
【0027】
図2(c)のように、圧電層12の歪み42aが圧電層12を広げる方向の場合、活性層11に加わる応力43aは圧縮する方向の応力となる。このため、積層膜26は上方に膨らむようにたわむ。図2(d)のように、圧電層12の歪み42bが圧電層12を縮める方向の場合、活性層11に加わる応力43bは引っ張る方向の応力となる。このため、積層膜26は下方に膨らむようにたわむ。
【0028】
交流電圧41の電圧の方向が反転することに対応して、図2(c)の状態および図2(d)の状態が時間とともに交互に生じる。これにより、図2(a)の矢印46のように積層膜26が厚さ方向に振動するたわみ振動が生じる。たわみ振動により、チップ40周囲の気体または液体内に、圧電層12の厚さ方向に伝搬する超音波が送信される。送信電極14aと14bとの間に交流電圧が加わったとき、圧電層12の厚さ方向に大きなたわみ振動が生じることで、送信特性が向上できる。送信電極14aと14bとの間の静電容量を大きくすると、送信特性が向上することを、以下の数1を用いて説明する。
【数1】
ここで、Wは静電エネルギー[J]、Cは静電容量[F]、Vは電圧[V]である。送信電極14aと14bとの間にある交流電圧41を与えたときに、静電容量Cが大きいほど、静電エネルギーWが大きくなることがわかる。静電エネルギーWは、逆圧電効果によって、ほとんどが振動エネルギーに変換される。振動エネルギーが大きいことはすなわち、積層膜26が厚さ方向に大きなたわみ振動をすることを意味している。このように、超音波を送信するときには、送信電極14aと14bとの間に加えた交流電圧41により、積層膜26を矢印46のように駆動させるため、送信電極14aと14bとの間の静電容量を大きくすることで送信特性が向上する。
【0029】
実施例1における超音波トランスデューサが超音波を受信する動作を説明する。図3(a)および図3(b)は、実施例1に係る超音波トランスデューサの受信動作を説明する図である。図3(b)は、受信電極16aおよび16b付近の拡大図である。
【0030】
図3(a)に示すように、超音波48がチップ40の積層膜26に伝搬されると、矢印46のように積層膜26には厚さ方向に振動するたわみ振動が生じる。積層膜26にたわみ振動が生じると、図2(c)および図2(d)のように歪みが交互に生じる。これにより、図3(b)に示すように、たわみ振動に起因して圧電層12に面方向の歪み42が生じる。電界44の方向は、たわみ振動に応じ時間とともに交互に反転する。圧電効果により、圧電層12の面方向に電界44が生じる。電界44の方向は、たわみ振動に応じ時間とともに交互に反転する。これにより、受信電極16aと16bとの間には、たわみ振動の周波数に対応する周波数を有する交流電圧が生成される。なお、このとき、圧電層12には、圧電層12の厚さ方向にも電界が生じるが、送信電極14aが受信電極16aおよび16bに電気的に接続されていないため、送信電極14aの影響は小さい。図3(a)のように、検出部22は、受信電極16aと16bとの間の交流電圧43を検出することで、超音波48を検出できる。超音波を受信するときには、送信時と同様に、数1を用いて説明する。数1では、静電容量Cが小さいほど、ある静電エネルギーWが圧電層12に生じたときに圧電層12が出力する電圧Vが大きくなる。このため、受信電極16aと16bとの間の静電容量が小さいと、受信感度が向上する。このように、受信時では、受信電極16aと16bとの間の静電容量を小さくすることが好ましい。
【0031】
図4(a)は、比較例における受信電極付近の拡大図、図4(b)は、実施例1における送信電極付近の拡大図である。
【0032】
図4(a)に示すように、比較例では、受信電極16aと16bは圧電層12を挟んで設けられている。超音波により、圧電層12内に面方向の歪み42が発生する。受信電極16aおよび16bには厚さ方向に電界44が生成し、交流電圧を検出することができる。電界44を大きくするためには、歪み42が大きいことが好ましい。歪み42を大きくするためには、圧電層12が薄いことが好ましい。圧電層12の厚さT1を薄くすると、受信電極16aと16bとの間の静電容量C2が大きくなる。これにより、超音波の受信感度が低下してしまう。
【0033】
図4(b)に示すように、実施例1では、受信電極16aと16bは圧電層12上に面方向に並んで設けられている。超音波により、圧電層12内に面方向の歪み42が発生する。受信電極16aおよび16bは面方向に生成された電界44による電圧を検出する。実施例1では、圧電層12の厚さT1によらず、受信電極16aと16bとの間隔L1を大きくできる。間隔L1を大きくすることで、受信電極16aと16bとの間の静電容量C1を、比較例の静電容量C2より小さくできる。
【0034】
また、実施例1では、受信電極16aと16bとは圧電層12上に面方向に並んで設けられている。このとき、受信電極16aと16bとが挟む誘電体の一部は圧電層12であり、残りは空気である。このため、比較例のように受信電極16aと16bとが圧電層12を挟んで設けられる場合と比べて、受信電極16aと16bとの間の静電容量が小さくなる。2つの受信電極16aと16bとが挟む誘電体のうち圧電層12以外の部分は、空気でなくてもよく、圧電層12よりも静電容量が低ければよい。圧電層12以外の部分は、気体または液体であれば限定されない。以下、別の見方で説明すると、受信電極16aと16bとの間に伸びる電気力線の一部は圧電層12を通過するが、残りの電気力線は空気等の気体または液体中を通過する。一方、比較例では、受信電極16aと16bとの間に伸びる電気力線はほとんど全て圧電層12内を通過する。このため、受信電極16aと16bとの間の静電容量C1は、比較例の静電容量C2より小さくできる。
【0035】
実施例1によれば、図2(a)および図2(b)のように、送信電極14a(第1送信電極)は、圧電層12の基板側に位置する第1主面に設けられ、送信電極14b(第2送信電極)は圧電層12の第2主面に設けられている。送信電極14aおよび14bは、圧電層12の中央部を挟む。送信部24は、送信電極14aと14bとの間に交流電圧を印加することで、超音波48を送信する。
【0036】
図3(a)および図3(b)のように、受信電極16a(第1受信電極)と16b(第2受信電極)を、圧電層12の第2主面に、互いに隣接して設ける。受信電極16aと16bは、互いに離間されている。検出部22は、受信電極16aと16bとの間に生じる交流電圧を検知することで、受信された超音波を検出する。これにより、受信電極16aと16bとの間の静電容量C1を小さくでき、受信感度を向上できる。
【0037】
送信電極14aと受信電極16aとが電気的に接続されていると、送信電極14aと受信電極16aとの間には、静電容量が発生せず、送信電極14aと受信電極16bとの間の静電容量C1が加わり、受信感度が低下する。よって、送信電極14aおよび14bと受信電極16aおよび16bとは電気的に分離されていることが好ましい。
【0038】
図4(b)のように、受信電極16aと16bとの間隔を受信電極16aおよび16bが設けられた領域における圧電層12の厚さT1より大きくする。これにより、受信電極16aと16bとの間の静電容量を小さくでき、受信感度を向上できる。間隔L1は厚さT1の2倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。
【0039】
活性層11は、基板10と圧電層12との間に設けられている。活性層11を設けることで、積層膜26の電気機械結合係数が向上する。圧電層12に圧縮応力が加わると、活性層11には逆向きの引張応力が働くので、図2(c)および図2(d)のように、積層膜26をよりたわませることができる。
【0040】
活性層11と接する空隙13は、圧電層12の厚さ方向から見て、送信電極14b、受信電極16aおよび16bが設けられた領域と重なる。これにより、圧電層12の振動が基板10により妨げられることを抑制できる。
【0041】
図1(a)のように、空隙13および送信電極14bの平面形状は円形状であり、空隙13の円形状の中心と送信電極14bの円形状の中心とは製造誤差程度に略一致している。これにより、中心30に対し点対称なたわみ振動を積層膜26に生成することができる。
【0042】
平面視において、送信電極14bから左側に配線15bが延伸している。受信電極16aおよび16bは、配線15bが設けられた領域に設けることができないため、送信電極14bを囲む一部に設けられた形状となる。送信電極14bの外周、受信電極16aの外周34a、34b、受信電極16bの外周34cおよび34dは、略同じ中心30を有する円周のうち配線15bが設けられた領域を除いた一部である。これにより、超音波により積層膜26に生じた点対称なたわみ振動を、効率よく受信することができる。
【0043】
外周34a~34dは、円周の3/4以上に設けられていることが好ましい。これにより、点対称なたわみ振動を効率よく受信することができる。
【0044】
[実施例1の変形例1]
図5(a)は、実施例1の変形例1に係る超音波トランスデューサを示す平面図およびトランスデューサと接続される回路のブロック図であり、図5(b)は、図5(a)のA-A断面図である。
【0045】
図5(a)および図5(b)に示すように、下層の送信電極14aは、平面視において、点線で示す空隙13の内側に設けられ、送信電極14bと重なり、受信電極16aおよび16bと重ならないように設けられている。配線15aは、圧電層12の下に設けられている。配線15bおよび送信電極14aは、同時に形成された同じ材料からなる金属層であり、互いに接続された構造である。配線15aの一端は送信電極14aと電気的に接続されている。配線15aの他端は、パッドであり、圧電層12を貫通する貫通電極19を介しパッド18cに電気的に接続されている。これにより、送信電極14aはパッド18cに電気的に接続される。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0046】
実施例1の変形例1によれば、圧電層12の厚さ方向から見て、送信電極14aと受信電極16aおよび16bとは重ならない。そうすることで、送信電極14aが、受信電極16aおよび16bと重なることで生じる、受信電極16aおよび16bへの送信電極14aからの電界の影響を、抑制できる。よって、受信電極16aおよび16b間にノイズが生じることを抑制できる。これにより、送信電極14aを介して受信電極16aと16bとの間の静電容量が増加することを抑制でき、受信感度を向上できる。
【0047】
実施例1の変形例1では、送信電極14aと受信電極16aまたは16bとは電気的に分離されているが、送信電極14aと受信電極16aまたは16bとは電気的に接続されていてもよい。
【0048】
送信電極14bの平面形状が円形状の場合、送信電極14bの円の中心と、送信電極14aの円の中心を略一致させる。これにより、中心30に対し点対称なたわみ振動を生成できる。なお、圧電層12の上面には、送信電極14aの平面形状に対応し上に突出した凸部が形成されている。送信電極14bは、圧電層12の上面の凸部の上に設けられている。このように、圧電層12の上面に凸部が形成されていてもよいが、圧電層12の上面は平坦化されてもよい。
【0049】
[実施例1の変形例2]
図6(a)は、実施例1の変形例2に係る超音波トランスデューサを示す平面図およびブロック図、図6(b)は、図6(a)のA-A断面図である。送信電極14bが設けられた領域32では、圧電層12の上面が下に凹んでいる。これにより、領域32の圧電層12の厚さT2は、受信電極16aおよび16bが設けられた領域33の圧電層12の厚さT1より薄くできる。その他の構成は、実施例1と同じであり説明を省略する。
【0050】
実施例1の変形例2によれば、送信電極14aと14bが挟む圧電層12の厚さT2は、受信電極16aおよび16bが設けられた領域33における圧電層12の厚さT1より小さい。これにより、送信電極14aと14bとの間の静電容量を大きくできるため、送信特性を向上できる。また、送信電極14aを介した受信電極16aと16bとの間の静電容量を抑制できるため、受信感度を向上できる。厚さT1は厚さT2の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。
【0051】
実施例1の変形例2では、送信電極14aと受信電極16aまたは16bとは電気的に分離されているが、送信電極14aと受信電極16aまたは16bとは電気的に接続されていてもよい。例えば、送信電極14aと受信電極16aとが電気的に接続されていても、厚さT1を大きくすることで、送信電極14aと受信電極16bとの静電容量を抑制できる。実施例1の変形例1のように、圧電層12の厚さ方向から見て、送信電極14aと、受信電極16aおよび16bとは重なっていなくてもよい。
【0052】
送信電極14bが円形状の場合、領域32の平面形状を円形状とし、送信電極14bの中心と、領域32の中心を略一致させる。これにより、中心30に対し点対称なたわみ振動を生成できる。
【0053】
[実施例1の変形例3]
図7(a)は、実施例1の変形例3に係る超音波トランスデューサを示す断面図である。図7(a)に示すように、実施例1の変形例3では、上側の送信電極14bと隣り合う受信電極16bとの間に溝36が設けられている。振動領域は、送信電極14bの形成が形成された領域であり、振動領域の周囲において送信電極14aまで溝36が形成されている。このため、振動領域が振動しやすい構造となる。また、積層膜26に加わる応力を緩和でき、信頼性を向上できる。なお、配線15bが形成された部分には溝36は形成されていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0054】
[実施例1の変形例4]
図7(b)は、実施例1の変形例4に係る超音波トランスデューサを示す断面図である。図7(b)に示すように、実施例1の変形例4では、送信電極14bと受信電極16bとの間において、送信電極14bを囲む一部の領域における圧電層12、送信電極14aおよび活性層11に貫通孔38を1または複数個設ける。これにより、積層膜26に加わる応力を緩和でき、信頼性を向上できる。なお、配線15bおよび17bが形成された部分には貫通孔38は形成されていない。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0055】
[実施例1の変形例5]
図7(c)は、実施例1の変形例5に係る超音波トランスデューサを示す断面図である。図7(c)に示すように、実施例1の変形例5では、送信電極14bの中心付近に送信電極14bおよび積層膜26を貫通する貫通孔37が設けられている。積層膜26に加わる応力を緩和でき、信頼性を向上できる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0056】
[実施例1の変形例6]
図7(d)は、実施例1の変形例6に係る超音波トランスデューサを示す断面図である。図7(d)に示すように、実施例1の変形例6では、圧電層12aと圧電層12bとの間に送信電極14cが設けられたバイモルフ構造である。送信電極14aと14bとを短絡し、送信電極14aおよび14bと送信電極14cとの間に電圧を加えることで、たわみ振動を大きくでき、送信特性を向上できる。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0057】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 基板
11 活性層
12、12a、12b 圧電層
13 空隙
14a~14c 送信電極
15a、15b、17a、17b 配線
16a、16b 受信電極
18a~18d パッド
22 検出部
24 送信部
26 積層膜
30 中心
32、33 領域
34a~34d 外周
40 チップ
42 歪み
44 電界
48 超音波
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7