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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125944
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】具材入りケーキ用組成物
(51)【国際特許分類】
   A21D 2/18 20060101AFI20230831BHJP
   A21D 2/26 20060101ALI20230831BHJP
   A21D 13/80 20170101ALI20230831BHJP
   A23D 9/00 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A21D2/18
A21D2/26
A21D13/80
A23D9/00 502
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030324
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004341
【氏名又は名称】日油株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002826
【氏名又は名称】弁理士法人雄渾
(72)【発明者】
【氏名】田島 幸子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG04
4B026DL03
4B026DL04
4B026DX04
4B032DB05
4B032DE06
4B032DG02
4B032DK12
4B032DK16
4B032DK21
4B032DL20
4B032DP08
4B032DP40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明の課題は、加熱前の生地の作業性を損なうことなく、加熱後のケーキにおいて具材が均一に分散もしくは上部に具材がトッピングされ、口どけが向上した具材入りケーキ用組成物を提供することである。
【解決手段】上記課題を解決するために、水中に(A)セルロースナノファイバー、(B)熱凝固性タンパク質、(C)少糖類を含有し、20℃の粘度が500mPa・s~8000mPa・sである具材入りケーキ用組成物を提供する。この具材入りケーキ用組成物によれば、加熱前の生地の作業性を損なうことなく、加熱後の具材入りケーキにおいて具材が均一に分散もしくは上部に具材がトッピングされ、さらには、口どけを向上する具材入りケーキを提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に(A)セルロースナノファイバー、(B)熱凝固性タンパク質、(C)少糖類を含有し、20℃の粘度が500mPa・s~8000mPa・sである、具材入りケーキ用組成物。
【請求項2】
(A)セルロースナノファイバー0.5~3.0質量%、(B)熱凝固性タンパク質4.0~16.0質量%、(C)少糖類4.0~20.0質量%を含有する、請求項1記載の具材入りケーキ用組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の具材入りケーキ用組成物を含有する、具材入りケーキに使用することを特徴とする、水中油型乳化組成物。
【請求項4】
請求項1若しくは請求項2に記載の具材入りケーキ用組成物、又は、請求項3に記載の水中油型乳化組成物を含有し、具材入りケーキに使用することを特徴とする、穀粉生地。
【請求項5】
請求項4記載の穀粉生地と具材を含有し、加熱してなる具材入りケーキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材を含有する具材入りケーキに使用される、具材入りケーキ用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーキは、穀粉を主要原料として作成した生地を加熱してなる食品である。ケーキの具体的な例としては、パウンドケーキ、カップケーキ、マフィン、ブラウニー、蒸しケーキが挙げられる。
ケーキの中には、より嗜好性を高めるためにフルーツやナッツ、チョコチップなどの具材を含有して製造されるものがある。具材が含有されたケーキは、具材がないプレーンなケーキと比較してその見た目から高級感があり商品価値が高まる。しかし、加熱前の生地に具材を含有してケーキを製造する場合、具材は生地加熱中に徐々に底部に沈殿してしまい、具材を含有しているにも関わらずケーキ上部に具材が残らない、またはケーキ中に均一に分散しないなどの問題が生じる。このような場合、ケーキの具材の沈殿を防止するためにキサンタンガムのような増粘多糖類を加えて生地の粘度を上げる方法がとられることが多い。しかしながら、増粘多糖類により粘度を高めた生地を加熱して得られるケーキは口どけが悪い。一般的に、口どけが良いケーキを消費者は好むことから、口どけに影響がないように増粘多糖類の含有量を減らすと、十分な沈殿防止効果が得られないという課題がある。さらに、ケーキの生産性を高めるため作業時間の短縮が求められているが、生地粘度の高い生地は特に機械製造時において材料を均一に混合するまでの時間が長くなる、ミキサーボウル内での混合工程から次の分割工程への生地の移送時間が長くなる、ミキサーボウルに付着する生地量が増えて洗浄時間が長くなるなど作業に影響が生じる。すなわち、生地の粘度が上がると、生地の混合、生地の移送、器具洗浄の作業において作業時間の延長が生じ作業性が損なわれる。
【0003】
上記の課題に対して、特許文献1では、耐熱性増粘多糖類を用いて固形物を小麦粉食品中に均一に分散させる方法が提案されている。また、特許文献2には、α化度が80%以上のα化小麦粉を使用することでフルーツケーキの具材を均一に分散する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-075056号公報
【特許文献2】特開2014-168391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記背景より、作業性を損なわずに、ケーキにおいて具材が均一に分散もしくは上部に具材がトッピングされ、さらにはケーキの口どけを向上する方法が求められている。しかしながら、特許文献1では生地粘度が高くなるため作業性が損なわれ、かつ得られるケーキの口どけが悪い。また、特許文献2のα化度が80%以上のα化小麦粉は一般的にケーキに使用される小麦粉より吸水性が高いため、特許文献1同様に生地粘度が高くなり作業性が損なわれるとともに、α化されたデンプン特有のねとつきのある食感となり、口どけにおいても満足のいくものではなかった。
【0006】
本発明の課題は、加熱前の生地の作業性を損なうことなく、加熱後のケーキにおいて具材が均一に分散もしくは上部に具材がトッピングされ、口どけが向上した具材入りケーキ用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は下記〔1〕~〔5〕である。
〔1〕水中に(A)セルロースナノファイバー、(B)熱凝固性タンパク質、(C)少糖類を含有し、20℃の粘度が500mPa・s~8000mPa・sである、具材入りケーキ用組成物。
〔2〕(A)セルロースナノファイバー0.5~3.0質量%、(B)熱凝固性タンパク質4.0~16.0質量%、(C)少糖類4.0~20.0質量%を含有する、〔1〕記載の具材入りケーキ用組成物。
〔3〕〔1〕又は〔2〕に記載の具材入りケーキ用組成物を含有する、具材入りケーキに使用することを特徴とする、水中油型乳化組成物。
〔4〕〔1〕若しくは〔2〕に記載の具材入りケーキ用組成物、又は、〔3〕に記載の水中油型乳化組成物を含有し、具材入りケーキに使用することを特徴とする、穀粉生地。
〔5〕〔4〕記載の穀粉生地と具材を含有し、加熱してなる具材入りケーキ。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば加熱前の生地の作業性を損なうことなく、加熱後のケーキにおいて具材が均一に分散もしくは上部に具材がトッピングされ、さらには、口どけを向上する具材入りケーキを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の具材入りケーキ用組成物は水中に(A)セルロースナノファイバー、(B)熱凝固性タンパク質、(C)少糖類を含有し20℃での粘度が500mPa・s~8000mPa・sであることを特徴とする。なお、本発明の具材入りケーキ用組成物は水中にこれら成分を含有し、かつ具材入りケーキ組成物の粘度が20℃で500mPa・s~8000mPa・sであればよく、その後、水中油型乳化組成物等の他の形態としてもその効果を発揮することが出来る。
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0010】
((A)セルロースナノファイバー)
本発明における(A)セルロースナノファイバーは、植物バイオマスを原料としたセルロース繊維を、物理的または化学的に微細化したものであり、繊維幅が1nm~5000nmの微細繊維のことをいう。本発明に使用される(A)セルロースナノファイバーには誘導体も含み、本発明では特にカルボキシメチル化セルロースナノファイバーを用いることが好ましい。カルボキシメチル化セルロースナノファイバーは解繊性が高く、具材入りケーキ用組成物の製造の際に水中に分散させるための攪拌時間を短縮できる。
(A)セルロースナノファイバーは、水中に分散させることで3次元ネットワークを形成し、穀粉生地に含有した際に穀粉生地を増粘させ、具材の沈殿を防止する効果を有する。さらに、微細繊維がケーキ中に点在することで口腔内でのケーキの崩壊性を高め、ケーキの口どけを高めることが出来る。
【0011】
(A)セルロースナノファイバーの含有量は、沈殿防止効果と作業性の面から具材入りケーキ用組成物中0.5~3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.8~2.0質量%である。
また、(A)セルロースナノファイバーの穀粉生地中における含有量は0.004質量%~0.120質量%が好ましい。
【0012】
(A)セルロースナノファイバーの市販品は、粉末状または水を含有する形態で販売されている場合が多く、商品名:セレンピアCS-01(日本製紙(株)製、繊維幅10~500nm、粉末品)、商品名:BiNFi-sAFo10010(株)スギノマシン製、繊維幅10~50nm、セルロースナノファイバー10質量%含有品)、商品名:セリッシュFD100G(ダイセルミライズ(株)製、繊維幅100nm~4000nm、セルロースナノファイバー10質量%含有品)等が挙げられる。
【0013】
((B)熱凝固性タンパク質)
本発明における(B)熱凝固性タンパク質は、加熱によって不可逆ゲルを形成するものであり、食用に適するものであればいずれのものでもよい。(B)熱凝固性タンパク質としては、卵白タンパク質、卵黄タンパク質、総合乳タンパク質、ホエイタンパク質、大豆タンパク質、小麦タンパク質等が挙げられる。これらは一種で使用しても二種以上を組み合わせて使用しても良い。
【0014】
穀粉生地は、穀粉中に含まれるデンプンが加熱により凝固することで硬化する。しかしデンプンの凝固は60℃以上の加熱により生じることから、60℃以下の温度では穀粉生地に含まれる具材の沈殿が発生する。
本発明の具材入りケーキ用組成物を添加すると、具材入りケーキ用組成物に含まれる(B)熱凝固性タンパク質が(A)セルロースナノファイバーが形成する3次元ネットワークにより、穀粉生地中に均一に分散し、デンプン間の隙間を(B)熱凝固性タンパク質が埋めることが可能となり、具材の沈殿防止効果をより強いものとする。(A)セルロースナノファイバーによる3次元ネットワークが形成されない場合、(B)熱凝固性タンパク質はデンプン間の隙間を埋めることができず、具材の沈殿防止効果は得られない。
また、穀粉中に含まれるタンパク質は穀粉生地を製造する際、タンパク質間で結合が形成され、それにより穀粉生地の粘度が上昇する。(B)熱凝固性タンパク質はこの穀粉生地中のタンパク質間に入り込み、タンパク質間の結合を抑制することで穀粉生地の粘度上昇を抑制し、作業性を向上させる効果がある。
【0015】
(B)熱凝固性タンパク質の含有量は、沈殿防止効果と口どけの面から具材入りケーキ用組成物中4.0~16.0質量%が好ましく、より好ましくは5.0~12.0質量%である。
また、(B)熱凝固性タンパク質の穀粉生地中の含有量は0.032~0.640質量%が好ましい。
【0016】
(B)熱凝固性タンパク質の市販品としては、商品名:乾燥卵白KタイプNo.200(キューピータマゴ(株)製、卵白タンパク質)、商品名:エンラクトSAT(日本新薬(株)製、ホエイタンパク質)、商品名:PRODIET85B(Ingredia S.A.製、総合乳タンパク質)が挙げられる。
【0017】
((C)少糖類)
本発明における(C)少糖類は、糖質のうち単糖が2個~10個結合した糖又は糖アルコールである。少糖類にはショ糖、麦芽糖、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオース、マルチトール、グルコシルスクロース、乳糖、フラクトオリゴ糖、パラチノース等が挙げられる。本発明で使用する(C)少糖類は単糖が2個~4個結合したものが好ましく、トレハロース、マルトトリオース、マルトテトラオースなどが挙げられる。
【0018】
(C)少糖類はケーキ生地中のデンプンの老化を抑制することで口どけを向上する効果を有する。また、(C)少糖類は(B)熱凝固性タンパク質の内部に浸透することで(B)熱凝固性タンパク質の弾性を低下させ、(B)熱凝固性タンパク質が穀粉生地中のタンパク質間に入り込みやすくなるため、穀粉生地の粘度上昇を抑制する。(C)少糖類以外の糖類では(B)熱凝固性タンパク質の内部に浸透することができず、上記効果は得られない。(B)熱凝固性タンパク質に対する(C)少糖類の含有量の質量比は2:1~2:5が好ましい。
【0019】
(C)少糖類の含有量は、口どけと作業性の面から具材入りケーキ用組成物中4.0~20.0質量%が好ましく、より好ましくは6.0~16.0質量%である。少糖類は保水性を有するため、含有量が多すぎると穀粉生地の粘度上昇を抑制する作用が弱くなる。
また、(C)少糖類の穀粉生地中の含有量は0.032~0.80質量%が好ましい。
【0020】
(C)少糖類の市販品としては、商品名:トレハロース(林原(株)製、トレハロース)、商品名:フジオリゴ#450P(日本食品化工(株)製、マルトテトラオース)、商品名:ピュアトースP(群栄化学工業(株)製、マルトトリオース)が挙げられる。
【0021】
本発明における具材入りケーキ用組成物は、生地の作業性、具材の均一分散もしくは沈殿防止効果および口どけに影響を及ぼさない範囲で、増粘多糖類、その他タンパク質、その他糖類、食用油脂、乳化剤、香料、アルコール等を適宜使用することが出来る。
【0022】
(具材入りケーキ用組成物)
本発明の具材入りケーキ用組成物は、20℃の粘度が500mPa・s~8000mPa・sである。20℃の粘度の下限値は、好ましくは1000mPa・s以上であり、より好ましくは3000mPa・s以上である。
本発明における具材入りケーキ用組成物の粘度は、具材入りケーキ用組成物を200ccのガラス瓶に計量し、20℃の恒温庫で12時間保管した後、東機産業(株)製B型粘度計(60rpm、測定時間20秒)で測定する。具材入りケーキ用組成物の粘度が500mPa・s未満では穀粉生地内で(A)セルロースナノファイバーによるネットワークが形成されず本発明の効果が得られない。また8000mPa・sより大きい場合、具材入りケーキ用組成物の穀粉生地への分散性が低下し原料混合時間が延長するため作業性が低下する。
【0023】
製造方法は特に限定されないが、各成分が効果を発揮するためには水中に均一に溶解または分散している必要があり、例えば、ビーカーに水を計量し、(A)セルロースナノファイバー、(B)熱凝固性タンパク質、(C)少糖類を攪拌分散させて80℃に加熱した後、この溶液を高圧均質化機によって均質化し(A)セルロースナノファイバーを均一分散させることで製造される。なお、加温条件としては、好ましくは40~100℃であり、より好ましくは60~90℃である。(A)セルロースナノファイバーは微細なセルロースが絡まった状態では効果が発揮できず、水中に均一分散させることで沈殿防止効果や口どけ向上効果が得られる。
【0024】
(乳化組成物)
本発明の具材入りケーキ用組成物は、乳化組成物の水相部に添加することができる。乳化組成物の形態は特に制限されず、例えば、水中油型乳化組成物、油中水型乳化組成物、多重乳化組成物でもよい。また、生地の作業性、具材の均一分散もしくは沈殿防止効果および口どけに影響を及ぼさない範囲で、増粘多糖類、その他タンパク質、その他糖類、食用油脂、乳化剤、香料、アルコール等を適宜使用することが出来る。
【0025】
(穀粉生地)
本発明の穀粉生地において、本発明の具材入りケーキ用組成物の含有量は穀粉生地中0.8質量%~4質量%が好ましい。使用される穀粉は、小麦粉である薄力粉、中力粉、強力粉が好ましく、より好ましくは薄力粉である。また、本発明の穀粉生地はシュガーバッター法、オールインミックス法、共立法等のいずれの製法でも製造することが出来る。本発明の穀粉生地には食用油脂、マーガリン、ショートニング、ココアパウダー、抹茶、脱脂粉乳、アーモンドプードル、チョコレート、食塩、甘味料、香辛料、調味料、色素、香料等を適宜使用することが出来る。また、本発明の穀粉生地中の穀粉含量は好ましくは15~40質量%である。
【0026】
本発明の穀粉生地は、具材入りケーキに使用することを特徴とする。具材入りケーキに使用する穀粉生地は、加熱前の穀粉生地中の穀粉含量が15~40質量%が好ましく、生地粘度は30~350Pa・sが好ましい。なお、穀粉生地の粘度は、200ccのガラス瓶に穀粉生地を流し込み、B型粘度計を用いてローターNo.4、1.5rpm、20秒、20℃の条件で粘度を測定する。
【0027】
(具材入りケーキ)
本発明における具材入りケーキとは、具材を入れた穀粉生地を加熱して得られるものである。好ましくは、卵の起泡力および/もしくは膨張剤の作用により具材を入れた穀粉生地を膨らませ、加熱してなるケーキである。本発明では、特に沈殿が問題となるケーキに有用であり、スポンジケーキ、シフォンケーキ、バターケーキ、パウンドケーキ、カップケーキ、マフィン、マドレーヌ、フィナンシェ、ブラウニー、蒸しケーキ、蒸しパンが挙げられる。
【0028】
本発明で使用する具材は、穀粉生地と加熱され、ケーキに含有されるものである。具材の種類は特に限定されないが、上部にトッピングする場合の具材としては、ジャムやペースト状食品および固形物として認識できる大きさのものであり、穀粉生地中に均一分散する場合は固形物として認識できる大きさのものである。具材はフルーツやナッツなど食品をそのまま使用しても良く、乾燥物、シロップ漬け、酒漬けに加工されたものを使用することもできる。使用する具材として例えば、ドライフルーツ、蜜漬けアップル、ラム酒漬けレーズン、いちじくの赤ワイン煮、ナッツ、チップチョコ、チャンクチョコ、ジャム、マロンの甘露煮などが挙げられる。
【実施例0029】
次に表1に示す実施例をあげて本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
<具材入りケーキ用組成物の製造>
水7.86kgに(A)セルロースナノファイバー0.14kg、(B)熱凝固性タンパク質0.9kg、(C)少糖類1.1kgを加え攪拌し、80℃に昇温して加熱攪拌した。その後高圧均質化機を用いて均質化し、実施例1の具材入りケーキ用組成物を製造した。製造した具材入りケーキ用組成物の20℃での粘度をB型粘度計によって測定した。
【0030】
(実施例2~9)、(比較例1~4)
表1、表2に示す配合で実施例1に準じて具材入りケーキ用組成物を製造した。
【0031】
(実施例10)
表3に示す配合で油相部としてナタネ油2.2kg、大豆レシチン0.02kg、グリセリン脂肪酸エステル0.05kgを計量し、70℃で加熱溶解させた。水相部は、実施例1で製造した具材入りケーキ用組成物3.00kgとソルビトール4.73kgの混合溶液を70℃で加熱攪拌した。油相部を水相部に含有して乳化液とし、高圧均質化機を用いて均質化して水中油型乳化組成物を製造した。
【0032】
(比較例5)
表3に示す配合で実施例10に準じて水中油型乳化物を製造した。
【0033】
<ケーキの製造>
(実施例1~9、比較例1~4)
ミキサーボウルにバター200g、上白糖200gを計量し、ビーターを用いて低速で5分間混合した。そこに実施例および比較例で得られた具材入りケーキ用組成物10gを加えて低速で1分間混合した。次に、全卵190gを数回に分けて加え、均一な生地になるまで低速で混合し、篩った薄力粉200gとベーキングパウダー2gを加え、粉っぽさがなくなるまでさらに低速で混合した。得られたパウンドケーキ生地802gに洋酒漬けレーズン160gを含有して1分間低速混合し分散させ、パウンドケーキ型に300gずつ分割して、さらにパウンドケーキ上部にレーズンを20粒トッピングしてから上火170℃/下火140℃のオーブンで40分間加熱した。加熱後、パウンドケーキを型から取り出し、室温にて1時間静置した後、ビニール袋に入れ室温20℃で保管した。
【0034】
(実施例10、比較例5)
ミキサーボウルにバター200g、上白糖200gを計量し、ビーターを用いて低速で5分間混合した。そこに実施例10および比較例5で得られた水中油型乳化組成物40gを加えて低速で1分間混合した。次に、全卵160gを数回に分けて加え、均一な生地になるまで低速で混合し、篩った薄力粉200gとベーキングパウダー2gを加え、粉っぽさがなくなるまでさらに低速で混合した。得られたパウンドケーキ生地802gに洋酒漬けレーズン160gを含有して1分間低速混合し分散させ、パウンドケーキ型に300gずつ分割して、さらにパウンドケーキ上部にレーズンを20粒トッピングしてから上火170℃/下火140℃のオーブンで40分間加熱した。加熱後、パウンドケーキを型から取り出し、室温にて1時間静置した後、ビニール袋に入れ室温20℃で保管した。
【0035】
<評価方法>
(作業性の評価)
洋酒漬けレーズンを含有する前のパウンドケーキ生地について、200ccのガラス瓶にパウンドケーキ生地を流し込み、B型粘度計を用いてローターNo.4、1.5rpm、20秒、20℃の条件で粘度を測定した。
比較例1のパウンドケーキ生地の粘度を100としたときの相対値で作業性を評価した。作業性が◎、〇を合格とした。
◎:生地の粘度が110未満
〇:生地の粘度が110以上~130未満
△:生地の粘度が130以上~150未満
×:生地の粘度が150以上
【0036】
(沈殿防止の評価)
加熱1日後のレーズン入りパウンドケーキについて、パウンドケーキ上部から目視で確認できるレーズンの数と、パウンドケーキの中央部を縦方向に2cm幅でカットした際の断面のレーズンの分散を目視で確認し、それぞれを下記の通り評価した。◎、〇を合格とした。
<上部>
◎:上部のレーズンの数が15粒以上である。
〇:上部のレーズンの数が10粒以上15粒未満である。
△:上部のレーズンの数が5粒以上10粒未満である。
×:上部のレーズンの数が5粒未満である。
<断面>
◎:レーズンが断面全体に均一分散している。
○:レーズンが断面にほぼ均一に分散している。
△:レーズンが断面の中央部から底部に偏っている。
×:レーズンが断面の底部に沈んでいる。
【0037】
(口どけの評価)
保管1日後のレーズン入りパウンドケーキの口どけを10名のパネラーで評価した。比較例1を基準とした際の口どけを評価し、5点:口どけが非常に良い、4点:口どけが良い、3点:口どけが同等、2点:口どけが悪い、1点:口どけが非常に悪いとして点数付けをした。10名のパネラーの平均点から、下記の通り口どけを評価した。◎、〇を合格とした。
◎:4.1点~5.0点
〇:3.1点~4.0点
△:2.1点~3.0点
×:1.0点~2.0点
【0038】
【表1】
【0039】
【表2】
【0040】
【表3】
【0041】
(評価結果)
実施例1~10の結果より、水中に(A)セルロースナノファイバー、(B)熱凝固性タンパク質、(C)少糖類を所定量含有し20℃での粘度が500mPa・s~8000mPa・sの組成物とすることで作業性を損なわずに具材の沈殿を抑制し、具材が均一に分散された口どけの良いケーキが得られた。一方、(A)~(C)を含有しない場合、沈殿防止効果と口どけが不合格であった。また(B)および(C)を含有しても(A)セルロースナノファイバーを含有しない場合、沈殿防止効果と口どけが不合格であり、(A)および(C)を含有しても(B)熱凝固性タンパク質を含有しない場合、沈殿防止効果が不合格であった。(A)および(B)を含有しても(C)少糖類を含有しない場合は、作業性と口どけが不合格であった。