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特開2023-125970エアバッグの処理システムおよびエアバッグの処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125970
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】エアバッグの処理システムおよびエアバッグの処理方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/04 20060101AFI20230831BHJP
   C08J 11/10 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08J11/04 ZAB
C08J11/10
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030370
(22)【出願日】2022-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-08-16
(71)【出願人】
【識別番号】503471695
【氏名又は名称】リファインバース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134430
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 卓士
(72)【発明者】
【氏名】松村 順也
(72)【発明者】
【氏名】玉城 吾郎
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA05
4F401AA08
4F401AA22
4F401AA24
4F401AA28
4F401AA40
4F401AB06
4F401AC01
4F401AD04
4F401BA06
4F401CA03
4F401CA13
4F401CA27
4F401CA31
4F401CA35
4F401CA41
4F401CA48
4F401CA68
4F401EA04
4F401EA07
4F401EA08
4F401EA10
4F401EA62
4F401EA69
4F401EA70
4F401EA79
4F401FA01Y
4F401FA01Z
4F401FA07Y
4F401FA07Z
(57)【要約】
【課題】より効率的にプラスチック繊維からシリコーン材料を分離すること。
【解決手段】シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理を行うエアバッグ処理システムであって、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物と界面活性剤とを用いてエアバッグの少なくとも一部を処理して、シリコーン材料の少なくとも一部を、プラスチック繊維から剥離する剥離装置と、プラスチック繊維をシリコーン材料から分離して取り出す分離装置と、を備えたエアバッグ処理システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理を行うエアバッグ処理システムであって、
アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物と界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離装置と、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離装置と、
を備えたエアバッグ処理システム。
【請求項2】
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理方法であって、
アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物と界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離ステップと、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離ステップと、
を含むエアバッグの処理方法。
【請求項3】
前記界面活性剤は、アニオン性または非イオン性の界面活性剤である請求項2に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項4】
前記界面活性剤は、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルよりなる群から選択された請求項3に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項5】
前記水酸化物がLiOH、NaOHおよびKOHよりなる群から選択された請求項2~4のいずれか1項に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項6】
前記剥離ステップでは、1~30%濃度の前記水酸化物に対して前記界面活性剤を0.1~10重量%混合させた水溶液に対して、前記エアバッグの少なくとも一部を浸漬させる請求項2~5のいずれか1項に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項7】
前記剥離ステップと前記分離ステップとの間に、前記水酸化物と界面活性剤とを60℃に加熱する加熱ステップを含む請求項2~6に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項8】
前記プラスチック繊維がポリアミド、ポリエステルを基材とする請求項2~7のいずれか1項に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項9】
前記剥離ステップは、前記水酸化物に対して前記界面活性剤を混合させた水溶液に対して、前記エアバッグの少なくとも一部を浸漬させる浸漬ステップを含み、
前記分離ステップは、水中撹拌により前記プラスチック繊維から前記シリコーン材料を剥がし、比重分離により前記シリコーン材料と前記プラスチック繊維を分離してそれぞれ回収する請求項2~8のいずれか1項に記載のエアバッグの処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアバッグの処理システムおよびエアバッグの処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記技術分野において、特許文献1には、相間移動触媒を用いてプラスチックからシリコーン材料を分離する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009-537686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記文献に記載の技術では、相間移動触媒を必要とするため処理効率が高くできなかった。
【0005】
本発明の目的は、上述の課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係るシステムは、
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理を行うエアバッグ処理システムであって、
アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物と界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離装置と、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離装置と、
を備えたエアバッグ処理システムである。
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係る方法は、
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理方法であって、
アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物と界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離ステップと、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離ステップと、
を含むエアバッグの処理方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、より効率的にプラスチック繊維からシリコーン材料を分離できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係るエアバッグ処理システムの構成を示すブロック図である。
図2】第2実施形態に係るエアバッグ処理システムの構成を示すブロック図である。
図3】第2実施形態に係るエアバッグ処理システムの処理の流れを示すフローチャートである。
図4】第2実施形態に係るエアバッグ処理方法での実験結果を示す図である。
図5】第2実施形態に係るエアバッグ処理方法での実験結果を示す図である。
図6】第2実施形態に係るエアバッグ処理方法での実験結果を示す図である。
図7】第2実施形態に係るエアバッグ処理方法での実験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態について例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施の形態に記載されている構成要素はあくまで例示であり、本発明の技術範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態としてのエアバッグ処理システム100について、図1を用いて説明する。
【0012】
図1のように、エアバッグ処理システム100は、細断装置101と剥離装置102と分離装置103とを備える。
【0013】
細断装置101は、シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維(例えばナイロン生地)を含む使用済みエアバッグ110やエアバッグ製造時に廃棄されるエアバッグ端材120を小さく(例えば、10mm~30mm)切断する。
【0014】
剥離装置102は、細断されたエアバッグ小片130を特定の水溶液に浸漬することにより、シリコーン材料140を、プラスチック繊維150から剥離する。
【0015】
分離装置103は、プラスチック繊維150とシリコーン材料140とを分離して取り出す。なお、剥離装置102と分離装置103は一台の装置として構成されてもよい。
【0016】
剥離装置102が剥離に利用する剥離用水溶液は、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物と界面活性剤との混合液である。
【0017】
以上の構成により、本実施形態によれば、効果的にエアバッグを処理して、シリコーン材料およびプラスチック繊維をバラバラに取り出すことができる。
【0018】
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態としてのエアバッグ処理システム200について、図2を用いて説明する。
【0019】
図2のように、エアバッグ処理システム200は、細断装置201と剥離装置202と分離装置203と脱水装置204と乾燥装置205と溶融装置206と押出成形装置207とを備える。
【0020】
細断装置101は、シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維として、例えばナイロン生地を含む使用済みエアバッグ110やエアバッグ製造時に廃棄されるエアバッグ端材120を小さく(例えば、10mm~30mm)切断する。プラスチック繊維は、例えばポリアミド、ポリエステルまたはポリオレフィン、あるいはそれらの組み合わせを基材とする。プラスチック繊維は、シリコーン材料により被覆され得る様々な形態をとることができ、例えば糸、繊維、織物製品、またはフィルムの形態をとることができる。
【0021】
プラスチック繊維は、好ましくは、ポリアミド、ポリエステル、またはポリオレフィンならびにそれらの組み合わせを基材とする熱可塑性材料である。ポリアミドとしては、例えば、脂肪族または半芳香族ポリアミド、特に、るPA-6、PA-6,6、PA-4,6、PA-6,10、PA-6,12、PA-11、PA-12および/またはそれらのブレンド、例えばポリアミドPA-6/6,6が挙げられる。ポリエステルとしては、テレフタル酸単量体またはそのエステル、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられる。ポリオレフィンとしては、例えばポリエチレンおよびポリプロピレンが挙げられる。シリコーン材料としては、例えば、シリコーンオイルまたはシリコーン樹脂が挙げられる。
【0022】
剥離装置202は、細断されたエアバッグ小片130を剥離用水溶液に浸漬することにより、シリコーン材料140を、プラスチック繊維150から剥離する。剥離装置102が剥離に利用する剥離用水溶液は、アルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物とアニオン性または非イオン性の界面活性剤との混合液である。水酸化物は、例えば、水酸化物は、LiOH、NaOHおよびKOHよりなる群から選択された水酸化物である。1~60重量%、好ましくは5~50重量%、より好ましくは10~40重量%のアルカリまたはアルカリ土類金属の水酸化物を水溶液に使用する。
【0023】
アニオン性または非イオン性の界面活性剤とは、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、およびポリオキシエチレンアルキルエーテルよりなる群から選択された界面活性剤である。
【0024】
剥離用水溶液は、1~30%濃度の水酸化物に対してアニオン性または非イオン性の界面活性剤を0.1~10重量%混合させた水溶液である。例えば、3~5%濃度の水酸化物に対してアニオン性または非イオン性の界面活性剤を1~2重量%混合させた水溶液が好ましい。このような剥離用水溶液(例えば1000L)に、エアバッグ小片(100kg)を24時間浸漬させる。混合比および浸漬時間は、これに限定されるものではない。
【0025】
次に、水切りをし、水とエアバッグ小片とゴムボールとを投入した剥離用ドラムを約1.5時間回転させる。回転時間はこれに限定されるものではない。
【0026】
このような水中撹拌により、プラスチック繊維150からシリコーン材料140が剥離される。次に剥離用ドラムから取り出した材料を水とともに分離装置203に投入する。分離装置203では、水の中でナイロン小片が沈み、シリコーン材料が浮かぶ。浮かんだシリコーン材料をすくい取り、ナイロン小片を回収して、脱水装置(遠心脱水機)204に投入する。
【0027】
さらに脱水されたナイロン小片を乾燥装置(熱風乾燥機)205に投入して乾燥させた後、溶融装置206で280℃まで加熱して溶融し、最後に押出成形装置207においてペレットを整形する。加熱温度は、280℃に限定されるものではない。分離方法も比重分離に限定されない。
【0028】
剥離装置102での剥離ステップと分離装置103での分離ステップとの間に、エアバッグが浸漬された水溶液を60℃に加熱する加熱ステップを含んでもよい。その場合、エアバッグ処理システムは加熱装置を含んでもよい。
【0029】
(剥離の原理)
プラスチック繊維からシリコーン材料が剥離する原理について説明する。そのためには、まず、エアバッグ製造時に、プラスチック繊維に対してシリコーン材料がどのようなメカニズムで結合しているかを考える必要がある。
【0030】
これについては、荒川化学工業株式会社が公開している下記の技術文献に詳しく開示されている。
https://www.arakawachem.co.jp/jp/technology/document/200801.pdf
これによると、エアバッグに使用されるシリコーン樹脂としては、無溶剤タイプ、エマルジョンタイプ、溶剤希釈タイプなどが挙げられる。性能面、コスト面はもとより、車内という閉じられた空間であることから、VOCなどの環境面が重要視される。そのため、無溶剤タイプのものが多く使用される傾向が見られる。無溶剤タイプのシリコーンは、一般に2種の液状シリコーンを混合・塗工し、熱により硬化させて基布上に塗膜を形成する。反応のタイプは、反応性が良好で、副生物の無い付加重合型が一般的に用いられる。すなわち、白金などの触媒存在下でSi-H基と二重結合とを反応させるタイプであるその他の添加剤として、エアバッグの強度(引裂、引張等)を補強するための無機フィラーが挙げられる。また、シリコーン硬化膜とナイロンとの密着性を向上させるために、双方に結合、あるい相互作用するようなシランカップリング剤なども用いられる。
【0031】
無機フィラーはSiO2などが用いられ、シランカップリング剤と反応する。ナイロン66はアミド結合(-CO-NH-)を有しているが、2級アミンなので水素は反応性が乏しく、Xがエポキシ基の場合は開環反応が起こり難い。その為、ナイロンと他材料との接着性改善にはアミン変性型が用いられる。シリコーン膜表面ではアルカリが触媒となり主鎖切断が発生する。この反応によって接着性が低下している。再結合反応はアルカリ触媒によるシリコーンポリマー製造の重合反応と同じである。
【0032】
シランカップリング剤がフィラー・SiO2に結合しているとすると、シリカゲルはアルカリに溶解するので、カップリング剤による接着性の効力は失われる。
【0033】
アルカリ処理でコーティング層とナイロンとの接着性を低下させても、自然には剥離が発生し難い。これは、基布表面の凸凹でアンカー効果がかなり効いているのではないかと思われる。低分子量で末端が-OH基となると親水性があり、ナイロンに浸透・吸着する可能性がある。剥離液を繰り返し使用すると蓄積されナイロン中の残存量が増える。
【0034】
そこで、ナイロンへの浸透性を高めるため界面活性剤を選択する。界面活性剤は、ナイロン繊維と親和性がある為に繊維に吸着する。界面活性剤がある為にアルカリが繊維に吸着して持ち出され、溶液の剥離能力が徐々に低下する。
【0035】
つまり剥離用水溶液に材料を浸漬してシリコーン膜とナイロン生地の接着力を弱らせ、水中撹拌でシリコーン膜をナイロン生地が剥がし、さらに比重分離でシリコーン膜とナイロン生地を分離し、それぞれ回収する。シリコーン膜が溶解または分解して水溶液や排水中に入ると、排水処理が大変になるからである。
【0036】
図3は、本実施形態における処理の流れを説明するフローチャートである。まずステップS301において、廃棄エアバッグまたはエアバッグ端材を裁断する。次にステップS303において、エアバッグ小片に含まれるシリコーン材料をナイロン繊維(ナイロン生地)から剥離する。
【0037】
さらにステップS305において、ナイロン繊維の小片をシリコーン材料から分離して回収する。次にステップS307において、ナイロン小片を脱水し、ステップS309でナイロン小片を乾燥させ、ステップS311において、ナイロン小片を溶融する。最後にステップS313において、溶融したナイロン小片から押出成形によりペレットを形成する。
【0038】
以上の方法により、より効果的にプラスチック繊維からシリコーン材料を分離し、リサイクルを行うことが可能となる。
【実施例0039】
界面活性剤としてA社製造のアニオン性の「アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液」(ここでは仮に製品A85とする)を使用。
1)3%濃度水酸化ナトリウム水溶液1リットル中に界面活性剤を1%添加し、60℃に加熱。2)20mm角にカットしたエアバッグ片を浴比10:1になるよう水溶液に入れる。
3)60℃に加熱した状態を維持しながら直径100mmのパドルを使用して110rpmで撹拌。
4)5分ごとに処理液中からランダムに4片の試験片を採取し、剥離強度を確認。
30分の浸漬によりかなり容易に剥離できた。
【実施例0040】
界面活性剤としてA社製造のアニオン性の「アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液」(ここでは仮に製品A45とする)を使用して同上の実験を行った結果、40分の浸漬により実施例1ほどではないが容易に剥離できた。
【実施例0041】
界面活性剤としてB社製造のアニオン性の界面活性剤(ここでは仮に製品BNとする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0042】
界面活性剤としてB社製造のアニオン性の界面活性剤(ここでは仮に製品B172とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0043】
界面活性剤としてC社製造の非イオン性の界面活性剤(ここでは仮に製品CPとする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0044】
界面活性剤としてD社製造の非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品DE103とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0045】
界面活性剤としてD社製造の非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品DE105とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0046】
界面活性剤としてD社製造の非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品DE108とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0047】
界面活性剤としてD社製造の非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品DE109とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例1ほどではないがかなり容易に(実施例2と同程度に)剥離できた。
【実施例0048】
界面活性剤としてD社製造の非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品DE404とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0049】
界面活性剤としてD社製造の非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品DE408とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0050】
界面活性剤としてD社製造の非イオン性のポリオキシエチレンラウリルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品DE409とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2ほどではないがやや容易に剥離できた。
【実施例0051】
界面活性剤としてE社製造の非イオン性のポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する界面活性剤(ここでは仮に製品EM9とする)を使用して同上の実験を行った結果、45分の浸漬により実施例2と同程度に容易に剥離できた。
【0052】
(比較例1)
界面活性剤を使用せずに同上の実験を行った結果、90分浸漬しても、剥離は容易にできなかった。
【0053】
(比較例2)
ヘキサデシルビリジニウムクロリド一水和物を含むカチオン性の界面活性剤を用いて同上の実験を行った結果、90分浸漬しても、剥離は容易にできなかった。
【0054】
(比較例3)
ラウリルジメチルアミノ酢酸溶液を含む両性の界面活性剤を用いて同上の実験を行った結果、90分浸漬しても、剥離は容易にできなかった。
【0055】
図4は、上記の実施例および比較例の結果を一つの図面にまとめたものである。アニオン性および非イオン性の界面活性剤を用いることによる効果が確認できた。
【0056】
(1)界面活性剤の有無による剥離性評価の相違
図4は、界面活性剤の有無による剥離性評価の相違を示す図である。界面活性剤を添加した場合に、より剥離性が向上することが数値評価で確認できた。また、浸漬処理時間が30分以降は剥離性がほぼ一定となることも確認できた。
【0057】
(2)NaOH濃度と剥離性の関係
図5図6は、界面活性剤の有無による、浸透性の差をNaOH濃度を変えて調べたものである。ここでは実施例2と同じ界面活性剤を用いている。浸漬処理時間を60分とし、さらに剥離性を改善する目的で処理温度を90℃条件とした。NaOH濃度条件が4wt%(約1mol/L)~24wt%(約7.6mol/L)では濃度が高くなるに従い、剥離性は良くなった。界面活性剤が添加されていない溶液ではNaOH濃度によって浸透性に差が出たが、シリコーン表面への馴染み性にはそれほど差が見られなかった。一方、界面活性剤を添加した系では浸透性とシリコーン表面への馴染み性がともに改善された。界面活性剤が添加されていない溶液ではナイロン繊維内には浸透しても、接触しているシリコーン表層との馴染み性が乏しく、界面活性剤を添加した溶液では馴染み性も改善された。
【0058】
[他の実施形態]
以上、実施形態を参照して本願発明を説明したが、本願発明は上記実施形態に限定されるものではない。本願発明の構成や詳細には、本願発明の技術的範囲で当業者が理解し得る様々な変更をすることができる。また、それぞれの実施形態に含まれる別々の特徴を如何様に組み合わせたシステムまたは装置も、本発明の技術的範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-06-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理を行うエアバッグ処理システムであって、
アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物と、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液を含む界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離装置と、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離装置と、
を備えたエアバッグ処理システム。
【請求項2】
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理方法であって、
アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物と、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液を含む界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離ステップと、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離ステップと、
を含むエアバッグの処理方法。
【請求項3】
前記水酸化物がLiOH、NaOHおよびKOHよりなる群から選択された請求項に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項4】
前記剥離ステップでは、1~30%濃度の前記水酸化物に対して前記界面活性剤を0.1~10重量%混合させた水溶液に前記エアバッグの少なくとも一部を浸漬させる請求項2または3に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項5】
前記剥離ステップと前記分離ステップとの間に、前記水酸化物と界面活性剤とを60℃に加熱する加熱ステップを含む請求項2~4のいずれか1項に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項6】
前記プラスチック繊維がポリアミドまたはポリエステルを基材とする請求項2~のいずれか1項に記載のエアバッグの処理方法。
【請求項7】
前記剥離ステップは、前記水酸化物に対して前記界面活性剤を混合させた水溶液に対して、前記エアバッグの少なくとも一部を浸漬させる浸漬ステップを含み、
前記分離ステップは、水中撹拌により前記プラスチック繊維から前記シリコーン材料を剥がし、比重分離により前記シリコーン材料と前記プラスチック繊維を分離してそれぞれ回収する請求項2~のいずれか1項に記載のエアバッグの処理方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明にかかるシステムは、
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理を行うエアバッグ処理システムであって、
アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物と、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液を含む界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離装置と、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離装置と、
を備えたエアバッグ処理システムである。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明にかかる方法は、
シリコーン材料が被覆されたプラスチック繊維を含むエアバッグの処理方法であって、
アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物と、アルキルスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステルの混合液を含む界面活性剤とを用いて前記エアバッグの少なくとも一部を処理して、前記シリコーン材料の少なくとも一部を、前記プラスチック繊維から剥離する剥離ステップと、
前記プラスチック繊維を前記シリコーン材料から分離して取り出す分離ステップと、
を含むエアバッグの処理方法である。