(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125976
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】透明性に優れた熱可塑性バイオプラスチック
(51)【国際特許分類】
C08L 25/06 20060101AFI20230831BHJP
C08L 69/00 20060101ALI20230831BHJP
C08L 1/08 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C08L25/06
C08L69/00
C08L1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030376
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】510043560
【氏名又は名称】株式会社ヘミセルロース
(74)【代理人】
【識別番号】110003018
【氏名又は名称】弁理士法人プロテクトスタンス
(72)【発明者】
【氏名】森田 成二
(72)【発明者】
【氏名】安藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】茄子川 仁
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AB02X
4J002BC03W
4J002CG01W
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れた透明性及び屈折率の高いバイオプラスチックを提供する。
【解決手段】構造式(式1)を有する樹脂と透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートとを含む、熱可塑性バイオプラスチック。
(R1およびR2は水素またはベンゼン環を含む置換基、R3は構造式:R6―O-で表される置換基、R4は水素または構造式:R7―O-CH2―で表される置換基、R5は水素またはベンゼン環を含む置換基、R6およびR7は水素またはベンゼン環を含む置換基。nは1~7の整数。R1、R2、R5、R6およびR7の一部が水素の場合、ベンゼン環を含む置換基の数/(水素原子の数+ベンゼン環を含む置換基の数)の比をベンゼン化度(%)と言うとき、ベンゼン化度は40~100%。)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造式(式1)を有する樹脂と透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートとを含む、熱可塑性バイオプラスチック。
【化1】
(構造式(式1)中、R1は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R2は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R3は、構造式:R6―O-で表される置換基、R4は水素もしくは構造式:R7―O-CH2―で表される置換基、R5は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R6は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R7は水素もしくはベンゼン環を含む置換基である。
R1、R2、R5、R6及びR7の一部が水素の場合、(ベンゼン環を含む置換基の数)/(水素原子の数+ベンゼン環を含む置換基の数)の比をベンゼン化度(%)と言うとき、ベンゼン化度は40~100%である。
nは1~7の整数である。)
【請求項2】
前記ベンゼン環を含む置換基が、フェニル基、ベンジル基、パラ-メトキシフェニルベンジル基、ベンゾイル基、インダニル基、スチリル基、アニリノ基、トリチル基、又はフェニル基を有するアルキル基の少なくともいずれか一つである、請求項1に記載の熱可塑性バイオプラスチック。
【請求項3】
前記樹脂の屈折率が1.58~1.62であり、
前記透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートの屈折率が1.58~1.62である、請求項1又は請求項2に記載の熱可塑性バイオプラスチック。
【請求項4】
前記熱可塑性バイオプラスチックを100重量%として前記樹脂が5重量%以上70重量%未満である、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱可塑性バイオプラスチック。
【請求項5】
前記樹脂の原料が、光学異性体のD体である、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の熱可塑性バイオプラスチック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明性に優れた熱可塑性バイオプラスチック(樹脂組成物)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは一般に熱を加えると塑性する熱可塑性と熱を加えると硬化する熱硬化性とに二分される。そしてバイオプラスチックは、(1)原料が植物、微生物もしくは動物に由来するプラスチック又は(2)生分解性のプラスチックに対する総称である。
【0003】
植物、微生物もしくは動物に由来するプラスチック(1)の場合、物理的性質及び/又は化学的性質が十分ではない。このため特許文献1は、植物に由来する樹脂に非バイオプラスチックを混ぜ込んで樹脂組成物として、(2)生分解性の熱可塑性のバイオプラスチックを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
バイオプラスチック(樹脂組成物)として、その用途即ち成形物の用途を考えた場合、とりわけ透明性に優れること、見た目が美しいことが要望されている。本発明はこれらの課題を解決することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題を解決するべく、本発明者は、優れた透明性及び屈折率の高いバイオプラスチックを実現することを目指した。
【0007】
本実施形態は、下記構造式(式1)を有する樹脂と透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートとを含む、熱可塑性バイオプラスチックを提供する。
【化1】
構造式(式1)中、R1は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R2は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R3は、構造式:R6―O-で表される置換基、R4は水素もしくは構造式:R7―O-CH2―で表される置換基、R5は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R6は水素もしくはベンゼン環を含む置換基、R7は水素もしくはベンゼン環を含む置換基である。また、nは1~7の整数である。また、R1、R2、R5、R6及びR7の一部が水素の場合、ベンゼン環を含む置換基の数/(水素原子の数+ベンゼン環を含む置換基の数)の比をベンゼン化度(%)と言うとき、ベンゼン化度は40~100%である。)
【発明の効果】
【0008】
本実施形態のバイオプラスチックは、透明性に優れ屈折率が高いバイオプラスチックである利点を有する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態の熱可塑性バイオプラスチックは、下記構造式(式1)を有する樹脂と透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートとを含む。本実施形態の熱可塑性バイオプラスチックに、さらに第3成分(樹脂その他の成分)を含んでも良い。
【化2】
【0010】
<<樹脂(式1)>>
上記構造式(式1)を有する樹脂において、R1は水素もしくはベンゼン環を含む置換基である。R2は水素もしくはベンゼン環を含む置換基である。R3は構造式:R6―O-で表される置換基である。R4は水素もしくは構造式:R7―O-CH2―で表される置換基である。R5は水素もしくはベンゼン環を含む置換基である。R6は水素もしくはベンゼン環を含む置換基である、R7は水素もしくはベンゼン環を含む置換基である。
【0011】
R1、R2、R5、R6及びR7の一部が水素の場合、(ベンゼン環を含む置換基の数)/(水素原子の数+ベンゼン環を含む置換基の数)の比をベンゼン化度(%)と言うとき、ベンゼン化度は40~100%である。例えば、構造式(式1)においてn=1で、R1、R6及びR7がベンゼン環を含む置換基であると仮定する。すると、R3は「ベンゼン環-O-」の置換基となり、R4は「ベンゼン環-O-CH2-」の置換基となる。このため、R1、R3及びR4がベンゼン環を含む置換基となり、R2及びR5が水素となる。したがってベンゼン化度は3/(2+3)=60%となる。
【0012】
また、nは1~7の整数である。なお、構造式(式1)を有する樹脂が複数ある場合には、異なる整数の樹脂を混合して使用しても良い。構造式(式1)を有する樹脂の混合物の場合は平均化して整数ではなく小数となる。例えば、n=1の樹脂とn=2の樹脂とを等量混合したものは、(1+2)÷2=1.5と考えることができる。
なお、例えば、n=2の構造式は、以下(式2)の通りである。
【化3】
【0013】
式1及び式2において、R1、R2、R5、R6及びR7は、同一でも異なっていても良い。ベンゼン環を含む置換基は、例えば、フェニル基、ベンジル基、パラ-メトキシフェニルベンジル基、ベンゾイル基、インダニル基、スチリル基、アニリノ基、トリチル基、置換基としてフェニル基を有するアルキル基、更にこれらのベンゼン環上の水素原子がアルキル基やハロゲン原子などで置換されているものなどが挙げられる。これらの中でも、屈折率を上げる場合にはベンジル基が好ましい。特にベンズアルデヒドや安息香酸を使った場合に置換しやすい点、構造式(式1)を有する樹脂同士がカルボニル基を介して互いに結合しやすく強度や耐熱性が向上する点から、ベンゾイル基が好ましい。ベンゾイル基は下記構造式(式3)を有する。ベンゾイル基の分子量は105である。
【化4】
【0014】
R1、R2、R5、R6及びR7が全てベンゾイル基である樹脂(式1)は、ベンゾイル基を「Bz」で表すと、n=1の場合、下記構造式(式4)又は下記構造式(式5)で表される。構造式(式4)の場合には分子量は566である。構造式(式5)の場合には分子量は668である。
【化5】
【化6】
【0015】
なお、これまでの説明では、上記構造式(式1)、(式2)、(式4)及び式(式5)の立体異性体については説明されていない。ここで発明者は立体異性体について説明する。既に知られている通り、環状構造を取ることで発生する立体異性体にα型、β型があり、自然界ではα型、β型の両方が存在する。強いて言うと、α型は糊状もしくは粘着質のゲル状であることが多く、後述する透明な熱可塑性プラスチックとの混錬がやや難しく使い勝手が悪い。一方、β型は粉体になり易く、粉体は透明な熱可塑性のプラスチックとの混練が易いのでいので使い勝手が良い。しかしながら、α型をβ型に混ぜれば、それらの混合物は粉体になり易いので、α型も使い勝手が良くなる。なお構造式(式1)を有する樹脂を製造する原料としては、α型とβ型とが混ざった状態の市販品が利用しやすい。
【0016】
また鏡像関係にある立体異性体(光学異性体)をD体、L体と呼ぶことがある。自然界にはD体だけが存在し、L体は化学反応により人工的に得られる。本実施形態の構造式(式1)を有する樹脂は、実施例で説明するトウモロコシの芯等の植物由来、生分解性を特徴の一つとしているので、D体である。このため、樹脂(式1)の原料としては、β-D-キシロース系、β-D-グルコースが好ましく、またα-D-キシロース系、α-D-グルコース系も使用することができる。即ち、β-D-キシロース系とα-D-キシロース系を混合したもの、β-D―グルコース系とα-D-グルコース系を混合したものを使用することも可能である。また人工的に得られたL体を使ったβ-L-キシロース系あっても良い。
【0017】
構造式(式1)、(式2)、(式4)及び式(式5)の樹脂は、それ自体で透明であり、その屈折率は1.58~1.62である。また上述したベンゼン化度が高いほど、屈折率が高くなる。
【0018】
<<熱可塑性のプラスチック>>
構造式(式1)等の樹脂と混合される樹脂は透明な熱仮想性のプラスチックである。また熱可塑性のプラスチックは構造式(式1)等の樹脂の屈折率がほぼ同じであることが好ましい。
【0019】
本実施形態に使用される熱可塑性のプラスチックは、例えば透明ポリスチレン、又はフェノール系ポリカーボネート(一般的なポリカーボネート:ビスフェノールAとホスゲン(塩化カルボニル)、もしくはジフェニルカーボネートを原料として生産されるものが含まれる。)又はイソシアネート系ポリカーボネート(市販品:三菱ケミカル株式会社:DURABIO(登録商標)などが適用できる。これら透明な熱可塑性のプラスチックは、市販品として容易に入手することができる。
【0020】
透明ポリスチレンの屈折率は一般に1.59~1.60であり、フェノール系ポリカーボネートの屈折率は一般に1.59であり、イソシアネート系ポリカーボネートの屈折率は一般に1.58~1.60である。これらの樹脂は、構造式(式1)、(式2)、(式4)及び式(式5)の樹脂の屈折率(1.58~1.62)とほぼ同じである。本明細書では、フェノール系ポリカーボネート及びイソシアネート系ポリカーボネートも総称してポリカーボネートと呼ぶこともある。)
【0021】
本実施形態において、樹脂(式1)と透明ポリスチレンとの割合は、両者合計を100重量%として、樹脂(式1)が5重量%以上70重量%未満を占めることが好ましい。樹脂(式1)が5重量%未満であると、バイオマス度(植物度)が低くなり「バイオプラスチック」と呼び難くなるので好ましくない。逆に樹脂(式1)が70重量%以上であるとバイオプラスチック(樹脂組成物)の諸物性(特に機械的物性)が透明ポリスチレンより劣ることになるので好ましくない。後述する実施例1から実施例120に示されるように、実施例1から実施例120に示されるように、樹脂(式1)が5~70重量%を占めた場合でも、全光線透過率:87%以上と透明性に優れている結果が得られている。5~25重量%であれば目標値89%以上を達成しておりさらに好ましい結果となっている。またバイオプラスチックとして、高い屈折率(1.58~1.62)を有する。
【0022】
優れた透明性を持つ物体の場合、一般に反射率は屈折率が高いほど高い。例えば、ガラスは屈折率1.4で反射率は約4%であるのに対し、ダイヤモンドは屈折率が2.5で反射率は約18%である。従って、透明性に優れたバイオプラスチックの場合、屈折率が高いほど反射率が高く鏡のようになり、「見た目が美し」くなる。特に成形物が2以上の平面(反射面)を持つ場合、見る角度を繰り返し動かせば反射面が異なるので極端に言えばダイヤモンドのようにキラキラと輝いて見える。見る角度は、入射角が大きいほど反射率は高くなるので、さらになおさら「見た目が美しい」。
【0023】
<<任意の第3成分(樹脂その他の成分)>>
本実施形態のバイオプラスチックは、構造式(式1)及び透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネート以外に、任意で第3成分が加えられても良い。
【0024】
第3成分は、例えば、他の樹脂や添加剤等である。他の樹脂として、強度や耐熱性を向上させるため、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、又はスチレン系樹脂・アクリル系樹脂の共重合体などの樹脂が加えられても良い。また添加剤は、可塑剤、分散剤、抗菌剤、相溶化剤、滑剤、流れ助剤(flow auxiliaries)、離型剤、安定剤、難燃剤、透明性向上剤、黄色化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、蛍光染料などである。添加剤は、従前のプラスチックに関して用いられているもので良いし、バイオマス度を上げるため、可塑剤等としてクエン酸系誘導体などのバイオマス化合物を用いてもよい。
【0025】
<<樹脂(式1)の製造方法>>
樹脂(式1)は、植物由来の原料から製造することができ、大きく分けて2つに分類される。一つは、下記構造式(式6)の繰り返し単位(以下、キシロース(n=1)と呼ぶことがある)をもつヘミセルロース(nは2以上)の一種である。nは1~7の整数である。
【化7】
【0026】
ヘミセルロースとは、植物中に約20~50%程度存在する多糖類の総称である。ヘミセルロースは、植物例えば樹木又は木材、穀物、草類、シダ、裸子植物など植物の細胞壁構成成分である。ヘミセルロースを多量に含んでいる植物としては、広葉樹、とうもろこしの芯、竹、綿実の殻などがある。それらの植物から常法により抽出・分離することにより(式6)のヘミセルロースを得ることができる。ヘミセルロースは生分解性が良好である。ヘミセルロースはセルロース及びリグニンよりも生分解速度が早く、また、低温(例えば5℃)から高温まで生分解性が良好である。常温においてもヘミセルロースは微生物により分解されて3ヶ月後には水と炭酸ガスになる。土の中に埋められた場合、ヘミセルロースは土壌中の微生物によって分解される。海水中においてもヘミセルロースは微生物によって分解される。ヘミセルロースは環境に調和した材料である。
【0027】
もう一つは、下記構造式(式7)の繰り返し単位(以下、グルコース(n=1)と呼ぶことがある)をもつセルロース(nは2以上)又はデンプン(nは2以上)の一種ある。nは1~7の整数である。
【化8】
【0028】
セルロース又はデンプンは、繊維素とも呼ばれ、植物例えば樹木又は木材、とうもろこし、サトウキビ、穀物、草類、シダ、裸子植物、果物など植物の細胞及び細胞壁の主要構成成分である。それらの植物から常法により抽出・分離することにより(式7)のセルロース又はデンプンを得ることができる。
【0029】
(式6)又は(式7)であって繰り返し数nが所定のものが用意できたならば、その水酸基(-OH)を塩化ベンゾイル、ベンズアルデヒド又は安息香酸などと反応させベンゾイル基に置換する(ベンゾイル化する)。この反応は容易に進行し、これにより容易に樹脂(式1)が得られる。
【0030】
塩化ベンゾイルは、一般にベンズアルデヒド又は安息香酸から製造される。ベンズアルデヒドは、代表的な芳香族アルデヒドで、苦扁桃油(へんとうゆ)とも呼ばれる。モモ又はアンズの芯(しん)の精油の主成分として植物界に分布し、ネロリ油など一部の精油中に含まれている。さとうきび、とうもろこし又は一部の樹木にも含まれている。このベンズアルデヒドと塩素とを常法により反応させると塩化ベンゾイルが得られる。同様に安息香酸も植物由来成分であり、安息香酸と塩素化合物との常法による反応によって塩化ベンゾイルが得られる。
【0031】
R1、R2、R5、R6及びR7が全てベンゾイル基である樹脂(式4又は式5)は、植物由来と言うことができる。特に詳述しないが、水酸基(-OH)をクロロベンゼンなどと反応させフェニル基に置換したり、水酸基(-OH)を塩化ベンジルなどと反応させベンジル基に置換したりできる。
【0032】
<<ペレットの製造方法>>
本実施形態のバイオプラスチックのペレットは、樹脂(式1)、透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネート及び任意で第3成分(樹脂その他の成分)を加熱下で混錬することにより製造される。混錬する前に、樹脂(式1)、透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネート及び任意で第3成分を予め予備混合しておくことが好ましい。
【0033】
予備混合は、例えば、粉末状の樹脂(式1)を袋詰めされたペレット状の透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートに入れて、作業者が袋を振ることで簡単に2つを混合することができる。もちろん、混合器もしくは撹拌機などの装置を使って、粉末状の樹脂(式1)とペレット状の透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートとを混合することもできる。混合器もしくは撹拌機は、リボンブレンダー、ドラムタンブラー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー、タンブラー、V字型ブレンダーなどと呼ばれている。
【0034】
次いで、予備混合された樹脂(式1)と透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートとが混練される。例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、及び多軸混練押出機などを用いる方法で混錬することができる。混練の際の加熱温度は、通常、100~300℃の範囲、好ましくは150~250℃の範囲、より好ましくは180~230℃の範囲で適宜選択される。
【0035】
混錬は重要であり、混錬により樹脂(式1)と透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートとが分子レベルで均一に分散されていることが好ましい。分子レベルで均一に分散されることで、生来、生分解性の樹脂(式1)が微生物などによって生分解すると、透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートも分子レベルで分解することになる。これにより本実施形態のバイオプラスチック全体の生分解が進行する。即ち、樹脂(式1)が透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートに分子レベルで均一に分散されていると、石油由来の透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートに生分解性を持たせる役割を果たす。透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートの分子の間に樹脂(式1)の分子が入り込むことによって、樹脂(式1)が生分解した際に透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートが分子レベルでバラバラになり水や土に溶けた状態になるものと推測される。
【0036】
樹脂(式1)が透明ポリスチレンもしくは透明ポリカーボネートに分子レベルで均一に分散されているか否かは、本実施形態のバイオプラスチックの光学的均一性、全光線透過率、ヘーズ、複屈折位相差を評価することで判明する。または電子顕微鏡や原子間力顕微鏡で評価することもできる。
【0037】
本実施形態のバイオプラスチックは、形態としては、塊状、板条、フィルム状、糸状、紐状、ペレット状、粉状、粒子状などがある。保存、流通などの観点から粒形状もしくは円筒形のペレット状が好ましい。円筒形のペレットは、例えば、直径0.2~3mm、長さ0.2~5mmが好ましい。
【0038】
<<バイオプラスチックの成形方法>>
本実施形態のバイオプラスチックは、熱可塑性であるので、140℃~230℃に加熱して溶融又は流動化、軟化させた上で成形型に投入又は押し付けることにより、所望の形状の成形物に加工することができる。成形法としては、例えば、射出成形、押出成形、注型成形(キャスティング)、カレンダー成形、スラッシュ成形、ブロー成形、真空成形、粉末成形、発泡成形、押出ラミネート成形、Tダイ成形、空冷インフレーション成形、水冷インフレーション成形、金型を放射線で加熱する光成形、光成形の1種であるマイクロ波成形などが挙げられる。場合により、成形型を使わずに自重を使って変形(成形)させたり、手やヘラのような簡単な道具を使って外力を与えたりすることにより成形物と成しても良い。
【0039】
本実施形態のバイオプラスチック(樹脂組成物)の用途である成形物の形状又は種類としては、例えば、フィルム、薄板、厚板、波板、糸、フィラメント、ロッド、パイプ、柱、造形物、芸術品など様々なものが挙げられる。
【0040】
以下、実施例により本実施形態を更に説明する。
<実施例1>
≪樹脂(式4)製造:ベンゾイル化キシロース系≫
原料としてD-キシロース(n=1)が用意された。このD-キシロースは、β―D-キシロースとα―D-キシロースとが混合されているものである。このD-キシロースは、とうもろこしの芯から抽出・精製後に酵素を使って分解したものであり市販品として入手できる。
【0041】
このD-キシロースの粉体60gがピリジン400ml中に入れられて攪拌され、D-キシロースがピリジンに溶解されることでキシロース溶液が得られた。なお、ピリジンはガラスビーカーに入れてあり、ビーカーは周囲に冷却のための保冷剤を置いて氷浴状態としている。
【0042】
別途、ヤニタケが培養され、取得したベンズアルデヒドを酸化して安息香酸が生成された。さらに安息香酸と塩化チオニルとが反応させられて塩化ベンゾイル(液体)が取得された。ヤニタケ以外にも他の植物からベンズアルデヒド又は安息香酸を抽出し取得することが可能である。
【0043】
この塩化ベンゾイル(液体)は、塩素以外の元素が天然物由来となっているのでバイオマス度を向上させる上で好ましい。天然物由来の塩化ベンゾイル及び石油由来の塩化ベンゾイルが市販されている。天然物由来の塩化ベンゾイルは天然物由来のベンズアルデヒドや安息香酸から製造されている。石油由来の塩化ベンゾイルにおいても一部を天然物由来の安息香酸やベンズアルデヒドから製造しているものが大半である。また石油由来の塩化ベンゾイルの製造時の発生する二酸化炭素も少なく、バイオマス度は70%~95%であり、バイオマス度が天然物由来の塩化ベンゾイルより若干落ちる程度である。
【0044】
天然物由来の塩化ベンゾイル220mlがキシロース溶液にゆっくりと滴下された。その後、塩化ベンゾイル220mlが滴下されたキシロース溶液が12時間攪拌された。これにより塩化ベンゾイルとキシロースとが反応した反応溶液が得られる。反応は、キシロースのOH基(全4個)の水素原子Hと塩化ベンゾイルの塩素原子Clが反応する化学反応である。これにより、キシロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化キシロース(式4)が得られる。なお、その際に生じたHClはピリジンにトラップされる。
【0045】
次に、3リットルの純水に上記反応溶液が入れられた。すると、水に不溶の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。その後、純水が3回入れられて、濾過された沈殿物が洗浄された。洗浄された沈殿物は酢酸エチル200mlを加えられて溶かされ、溶液を得た。そして、この溶液にメチルアルコール2.5リットルが加えられた。すると、白色の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。次いで、濾過された沈殿物がメタノールで洗浄された。このようにして得られた沈殿物の白色固体は真空乾燥機に入れて乾燥された。こうしてベンゾイル化キシロース(式4)の白色粉体150gが得られた。
【0046】
このベンゾイル化キシロースは、R1,R2,R5,R6がベンゾイル基であり、R4は水素である。(ベンゼン環を含む置換基の数)/(水素原子の数+ベンゼン環を含む置換基の数)の比をベンゼン化度(%)と言うとき、R3がベンゾイル基―O-になるため、ベンゼン化度は80%である。R1,R2,R5,R6の中の2つ以上がベンゾイル基(つまり、2つ以下が水素、つまりベンゼン化度は40%)であれば、以下に説明する実施例1~実施例10と同様の効果が得られることも確認されている。
【0047】
≪バイオプラスチックのペレットの製造≫
市販の射出成形用のペレット状の透明ポリスチレン(以下PS1という)2650gが用意された。
【0048】
ベンゾイル化キシロース(式4)の白色粉体150gと、上記PS1ペレット2650gとが予備混合された。その後、混合されたベンゾイル化キシロース(式4)及びPS1が二軸混練押出機(加熱温度200℃)に投入され、ロッド形状(φ3mm)に押出された。この押し出されたフィラメントがペレタイザによってペレット(φ3mm×長さ4mm)化されてバイオプラスチックのペレット2.8kgが製造された。
【0049】
このバイオプラスチックのペレットにおけるベンゾイル化キシロース(式4)の割合は、150/(150+2650)=5重量%になる。つまり、本実施形態のバイオプラスチックのバイオマス度は、5%である。
【0050】
<実施例2~実施例5>
実施例1と同様にして、実施例2では、バイオマス度10%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例1と同様にして、実施例3では、バイオマス度25%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例1と同様にして、実施例4では、バイオマス度50%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例1と同様にして、実施例5では、バイオマス度10%のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0051】
<実施例6>
実施例6は、実施例1と同じように、ベンゾイル化キシロース(式4)が製造された。そして、市販のフイルム・シート成形用のペレット状の透明ポリスチレン(以下PS2という)が2650g用意された。
【0052】
前記ベンゾイル化キシロース(式4)の白色粉体150gと、PS2ペレット2650gとが予備混合された。その後、混合されたベンゾイル化キシロース(式4)及びPS2が二軸混練押出機(加熱温度200℃)に投入され、ロッド形状(φ3mm)に押出された。この押し出されたフィラメントがペレタイザによってペレット(φ3mm×長さ4mm)化されてバイオプラスチックのペレット2.8kgが製造された。
【0053】
このバイオプラスチックのペレットにおけるベンゾイル化キシロース(式4)の割合は、150/(150+2650)=5重量%になる。つまり、本実施形態のバイオプラスチックのバイオマス度は、5%である。
【0054】
<実施例7~実施例10>
実施例6と同様にして、実施例7では、バイオマス度10%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例6と同様にして、実施例8では、バイオマス度25%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例6と同様にして、実施例9では、バイオマス度50%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例6と同様にして、実施例10では、バイオマス度70%のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0055】
<実施例11>
≪樹脂(式5)製造:ベンゾイル化グルコース系≫
原料としてD-グルコース(n=1)を用意された。このD-グルコースは、β―D-グルコースとα―D-グルコースが混合されているものである。このグルコースは、とうもろこしから抽出・精製後に酵素を使って分解したものであり市販品として入手できる。または、さとうきびから抽出・精製後に酵素を使って分解したものであり市販品として入手できる。
【0056】
このグルコースの粉体60gがピリジン400ml中に入れられて攪拌され、グルコースがピリジンに溶解されることでグルコース溶液が得られた。なお、ピリジンはガラスビーカーに入れてあり、ビーカーは周囲に冷却のための保冷剤を置いて氷浴状態としている。
【0057】
別途、ヤニタケを培養され、取得したベンズアルデヒドを酸化して安息香酸が生成された。さらに安息香酸と塩化チオニルとが反応させられて塩化ベンゾイル(液体)が取得された。ヤニタケ以外にも他の植物からベンズアルデヒド又は安息香酸を抽出し取得することが可能である。取得された塩化ベンゾイルは実施例1と同様にバイオマス度が高い。
【0058】
この塩化ベンゾイル220mlを前記グルコース溶液にゆっくりと滴下した。その後、12時間攪拌を行った。これにより塩化ベンゾイルとグルコースが反応した反応溶液が得られる。反応は、グルコースのOH基(全5個)の水素原子Hと塩化ベンゾイルの塩素原子Clが反応する化学反応である。これにより、グルコースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化グルコースが得られる。なお、その際に生じたHClはピリジンにトラップされる。
【0059】
次に、3リットルの純水に上記反応溶液が入れられた。すると、水に不溶の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。その後、純水が3回入れられて、濾過された沈殿物が洗浄された。洗浄された沈殿物は酢酸エチル200mlを加えられて溶かされ、溶液を得た。そして、この溶液にメチルアルコール2.5リットルが加えられた。すると、白色の結晶が析出し沈殿した。この沈殿物が生じた溶液が吸引濾過された。次いで、濾過された沈殿物がメタノールで洗浄された。このようにして得られた沈殿物の白色固体は真空乾燥機に入れて乾燥された。こうしてベンゾイル化グルコース(式5)の白色粉体150gが得られた。
【0060】
このベンゾイル化グルコースは、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R3がベンゾイル基―O-になり、R4がベンゾイル基―O-CH2になるため、ベンゼン化度は100%である。R1,R2,R5,R6又はR7の中の2つ以上がベンゾイル基(つまり、3つ以下が水素、つまりベンゼン化度は40%)であれば、以下に説明する実施例11~実施例20と同様の効果が得られることも確認されている。
【0061】
≪バイオプラスチックのペレットの製造≫
ベンゾイル化グルコース(式5)の白色粉体150gと、上記PS1ペレット2650gとが予備混合された。その後、二軸混練押出機(加熱温度200℃)に投入され、ロッド形状(φ3mm)に押出された。この押し出されたフィラメントをペレタイザによってペレット(φ3mm×長さ4mm)化されてバイオプラスチックのペレット2.8kgを製造された。
【0062】
このバイオプラスチックのペレットにおけるベンゾイル化グルコース(式5)の割合は、150/(150+2650)=5重量%になる。つまり、本実施形態のバイオプラスチックのバイオマス度は、5%である。
【0063】
<実施例12~実施例15>
実施例11と同様にして、実施例12では、バイオマス度10%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例11と同様にして、実施例13では、バイオマス度25%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例11と同様にして、実施例14では、バイオマス度50%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例11と同様にして、実施例15では、バイオマス度70%のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0064】
<実施例16>
実施例16は、実施例11と同じように、ベンゾイル化グルコース(式5)が製造された。そして、市販のPS2ペレット2650gが用意された。
【0065】
前記ベンゾイル化グルコース(式5)の白色粉体150gと、PS2ペレット2650gとが予備混合された。その後、混合されたベンゾイル化グルコース(式5)及びPS2が二軸混練押出機(加熱温度200℃)に投入され、ロッド形状(φ3mm)に押出された。この押し出されたフィラメントがペレタイザによってペレット(φ3mm×長さ4mm)化されてバイオプラスチックのペレット2.8kgが製造された。
【0066】
このバイオプラスチックのペレットにおけるベンゾイル化グルコース(式5)の割合は、150/(150+2650)=5重量%になる。つまり、本実施形態のバイオプラスチックのバイオマス度は、5%である。
【0067】
<実施例17~実施例20>
実施例16と同様にして、実施例17では、バイオマス度10%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例16と同様にして、実施例18では、バイオマス度25%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例16と同様にして、実施例19では、バイオマス度50%のバイオプラスチックペレットが作成された。
実施例16と同様にして、実施例20では、バイオマス度70%のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0068】
<実施例21~実施例25>
≪樹脂製造:ベンジル化キシロース系≫
キシロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化キシロースが作成される。ベンジル化キシロースは例えば以下のようにして生成される。
【0069】
原料としてD-キシロース(n=1)が用意された。このD-キシロース60gが50重量%水酸化ナトリウム水溶液300mlに溶解させられる。さらにテトラメチルアンモニウムヨージドが触媒量だけ加えられる。これらの混合溶液がオイルバス40℃で2時間撹拌され、キシロースの水酸基O―Hにおける水素がNaに置き換えられる。オイルバスを停止し混合溶液が室温まで放冷され、その後、放冷された混合溶液に塩化ベンジルが6.5当量加えられる。なお、塩化ベンジルは、植物由来のベンズアルデヒドを還元することでベンジルアルコールが得られ、さらに塩素化合物との常法の反応によって得ることができる。
【0070】
塩化ベンジルの反応性を上げるためヨウ化ナトリウムが触媒量だけ混合溶液に加えられる。窒素ガスで置換しながら徐々に混合溶液の温度が上げられて110℃まで上げられる。そして混合溶液が110℃で5時間撹拌される。反応終了後、混合溶液が放冷した後氷浴で冷却される。その後混合溶液にジエチルエーテルが加えられ撹拌される。撹拌が止められてしばらく静置されると、混合溶液は上澄み液と沈点物との2層に分かれる。そして上澄み液がデカンテーションされ、混合溶液が吸引濾過された。濾過された沈殿物は、再度ジエチルエーテルが加えられて洗浄される。ジエチルエーテルが加えられた溶液が透明になるまでデカンテーションと吸引濾過とが繰り返される。溶液が透明になった後、さらに吸引濾過された沈殿物がメタノールで洗浄される。メタノール溶液が透明になるまで洗浄され、メタノール溶液が吸引濾過された。その沈殿物がアセトンに溶解されて、水で沈殿させて沈殿物が回収される。沈殿物は真空乾燥機にて45℃で24時間乾燥させることでベンジル化キシロースが150g得られた。
【0071】
実施例21~実施例25では、ベンジル化キシロースと、PS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例21)、10%(実施例22)、25%(実施例23)、50%(実施例24)及び70%(実施例25)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0072】
<実施例26~実施例30>
実施例26~実施例30では、ベンジル化キシロースと、PS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例26)、10%(実施例27)、25%(実施例28)、50%(実施例29)及び70%(実施例30)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0073】
実施例21~実施例30で使用されたベンジル化キシロースは、R1,R2,R5,R6がベンジル基であり、R4が水素である。R3がベンジル基―O-になるため、ベンゼン化度は80%である。R1,R2,R5,R6の中の2つ以上がベンジル基(つまり、2つ以下が水素、つまりベンゼン化度は40%)であれば、実施例21~実施例30と同様の効果が得られることも確認されている。
【0074】
<実施例31~実施例35>
≪樹脂製造:ベンジル化グルコース系≫
グルコースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化グルコースが作成される。ベンジル化グルコースは例えば以下のようにして生成される。
【0075】
原料としてD-グルコース(n=1)が用意された。D-グルコース60gが50重量%水酸化ナトリウム水溶液300mlに溶解される。テトラメチルアンモニウムヨージドが触媒量加えられる。この混合溶液がオイルバス40℃で2時間撹拌され、グルコースの水酸基O―Hにおける水素がNaに置き換えられる。オイルバスを停止し混合溶液が室温まで放冷され、その後、放冷された混合溶液に、塩化ベンジルが6.5当量加えられる。なお、塩化ベンジルは、植物由来のベンズアルデヒドを還元することでベンジルアルコールが得られ、さらに塩素化合物との常法の反応によって得ることができる。
【0076】
塩化ベンジルの反応性を上げるためヨウ化ナトリウムが触媒量だけ混合溶液に加えられる。窒素ガスで置換しながら徐々に混合溶液の温度が上げられて110℃まで上げられる。そして混合溶液が110℃で5時間撹拌される。反応終了後、混合溶液が放冷した後氷浴で冷却される。その後混合溶液にジエチルエーテルが加えられ撹拌される。撹拌が止められてしばらく静置されると、混合溶液は上澄み液と沈点物との2層に分かれる。そして上澄み液がデカンテーションされ、混合溶液が吸引濾過された。濾過された沈殿物は、再度ジエチルエーテルが加えられて洗浄される。ジエチルエーテルが加えられた溶液が透明になるまでデカンテーションと吸引濾過とが繰り返される。溶液が透明になった後、さらに吸引濾過された沈殿物がメタノールで洗浄される。メタノール溶液が透明になるまで洗浄され、メタノール溶液が吸引濾過された。その沈殿物がアセトンに溶解されて、水で沈殿させて沈殿物が回収される。沈殿物は真空乾燥機にて45℃で24時間乾燥させることでベンジル化グルコースが150g得られた。
【0077】
実施例31~実施例35では、グルコースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化グルコースとPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例31)、10%(実施例32)、25%(実施例33)、50%(実施例34)及び70%(実施例35)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0078】
<実施例36~実施例40>
実施例36~実施例40では、ベンジル化グルコースとPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例36)、10%(実施例37)、25%(実施例38)、50%(実施例39)及び70%(実施例40)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0079】
実施例31~実施例40で使用されたベンジル化グルコースは、R1,R2,R5,R6及びR7がベンジル基である。R3がベンジル基―O-になり、R4がベンジル基―O-CH2になるため、ベンゼン化度は100%である。R1,R2,R5,R6、R7の中の2つ以上がベンジル基(つまり、3つ以下が水素、つまりベンゼン化度は40%)であれば、実施例31~実施例40と同様の効果が得られることも確認されている。
【0080】
<実施例41~実施例45>
≪樹脂製造:ベンゾイル化へミセルロース系(n=3)≫
実施例1~実施例10では原料としてD-キシロース(n=1)が用意された。実施例41~実施例45では、原料としてD-キシロース(n=1)、ヘミセルロース(n=2)及びヘミセルロース(n=3)が混合されたもの(以下、n=3のヘミセルロースと呼ぶ。)が使用される。なお、原料としてD-キシロース(n=1)、ヘミセルロース(n=2)及びヘミセルロース(n=3)がすべて等量で混合されていれば、(1+2+3)÷3=2と考えることができるが、本実施形態ではn=3のヘミセルロースと呼ぶ。
【0081】
とうもろこしの芯から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=3のヘミセルロースが得られる。このn=3のヘミセルロースは市販品として購入できる。このn=3のヘミセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化へミセルロース(n=3)が作成される。ベンゾイル化ヘミセルロースは、実施例1で説明したベンゾイル化キシロースと同様の方法によって作成される。
【0082】
実施例41~実施例45では、ベンゾイル化へミセルロース(n=3)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例41)、10%(実施例42)、25%(実施例43)、50%(実施例44)及び70%(実施例45)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0083】
<実施例46~実施例50>
実施例46~実施例50では、ベンゾイル化へミセルロース(n=3)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例46)、10%(実施例47)、25%(実施例48)、50%(実施例49)及び70%(実施例50)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0084】
実施例41~実施例50で使用されたベンゾイル化へミセルロース(n=3)は、R1,R2,R5,R6がベンゾイル基であり、R4は水素である。R3がベンゾイル基―O-になるため、ベンゼン化度は80%である。R1,R2の中の1つ以上(つまり、1つ以下が水素)であればこの実施例41~実施例50と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンゾイル基であっても水素であっても良い。
【0085】
<実施例51~実施例55>
≪樹脂製造:ベンゾイル化セルロース系(n=3)≫
実施例11~実施例20では原料としてD-グルコース(n=1)が用意された。実施例51~実施例55では、原料としてD-グルコース(n=1)、セルロース(n=2)及びセルロース(n=3)が混合されたもの(n=3のセルロースと呼ぶ。)が使用される。なお、原料としてD-グルコース(n=1)、セルロース(n=2)及びセルロース(n=3)がすべて等量で混合されていれば、(1+2+3)÷3=2のセルロースと考えることができるが、本実施形態ではn=3のセルロースと呼ぶ。
【0086】
樹木から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整することによりn=3のセルロースが得られる。このn=3のセルロースは市販品として購入できる。このn=3のセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化セルロース(n=3)が作成される。ベンゾイル化セルロースは実施例11で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって作成される。
【0087】
実施例51~実施例55では、ベンゾイル化セルロース(n=3)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例51)、10%(実施例52)、25%(実施例53)、50%(実施例54)及び70%(実施例55)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0088】
<実施例56~実施例60>
実施例56~実施例60では、ベンゾイル化セルロース(n=3)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例56)、10%(実施例57)、25%(実施例58)、50%(実施例59)及び70%(実施例60)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0089】
実施例51~実施例60で使用されたベンゾイル化セルロース(n=3)は、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R3がベンゾイル基―O-になり、R4がベンゾイル基―O-CH2になるため、ベンゼン化度は100%である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンゾイル基(つまり、2つ以下が水素)であればこの実施例51~実施例60と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンゾイル基であっても水素であっても良い。
【0090】
≪樹脂製造:ベンゾイル化デンプン系(n=3)≫
原料としてD-グルコース(n=1)、デンプン(n=2)及びデンプン(n=3)が混合されたもの(n=3のデンプンと呼ぶ。)が使用されてもよい。とうもろこしから抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=3のデンプンが得られる。このn=3のデンプンは、市販品として購入できる。このn=3のデンプンのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化デンプン(n=3)が作成される。ベンゾイル化デンプン(n=3)は実施例11で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって作成される。
【0091】
n=3のデンプンのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化デンプン(n=3)を使って、実施例51~実施例60と同様に、バイオマス度5~70%のバイオプラスチックペレットが作成可能である。このベンゾイル化デンプンは、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンゾイル基(つまり、2つ以下が水素)であれば、ベンゾイル化デンプン(n=3)を使ったバイオプラスチックペレットでも、この実施例51~実施例60と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンゾイル基であっても水素であっても良い。
【0092】
<実施例61~実施例70>
≪樹脂製造:ベンジル化へミセルロース系(n=3)≫
n=3のへミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化へミセルロース(n=3)が作成される。ベンジル化へミセルロース(n=3)は実施例21~実施例30で説明されたベンジル化キシロースと同様の方法によって作成される。
【0093】
実施例61~実施例65では、n=3のヘミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化へミセルロース(n=3)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例61)、10%(実施例62)、25%(実施例63)、50%(実施例64)及び70%(実施例65)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0094】
実施例66~実施例70では、n=3のヘミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化へミセルロース(n=3)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例66)、10%(実施例67)、25%(実施例68)、50%(実施例69)及び70%(実施例70)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0095】
なお、このベンジル化へミセルロース(n=3)は、R1,R2,R5,R6がベンジル基であり、R4は水素である。R1,R2の中の1つ以上がベンジル基(つまり、1つ以下が水素)であればこの実施例61~実施例70と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンジル基であっても水素であっても良い。
【0096】
<実施例71~実施例80>
≪樹脂製造:ベンジル化セルロース系(n=3)≫
n=3のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=3)が作成される。ベンジル化セルロース(n=3)は実施例31~実施例40で説明されたベンジル化グルコースと同様の方法によって作成される。
【0097】
実施例71~実施例75では、n=3のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=3)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例71)、10%(実施例72)、25%(実施例73)、50%(実施例74)及び70%(実施例75)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0098】
実施例76~実施例80では、n=3のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=3)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例76)、10%(実施例77)、25%(実施例78)、50%(実施例79)及び70%(実施例80)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0099】
なお、このベンジル化セルロース(n=3)は、R1,R2,R5,R6及びR7がベンジル基である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンジル基(つまり、2つ以下が水素)であればこの実施例71~実施例80と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンジル基であっても水素であっても良い。
【0100】
≪樹脂製造:ベンジル化デンプン系(n=3)≫
n=3のデンプンのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化デンプンを使って、実施例71~実施例80と同様に、バイオマス度5~70%のバイオプラスチックペレットが作成可能である。このベンゾイル化デンプンは、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンジル基(つまり、2つ以下が水素)であれば、ベンジル化デンプンを使ったバイオプラスチックペレットでも、この実施例71~実施例80と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンジル基であっても水素であっても良い。
【0101】
<実施例81~実施例90>
≪樹脂製造:ベンゾイル化へミセルロース系(n=7)≫
実施例81~実施例90では、原料としてキシロース(n=1)、ヘミセルロース(n=2)、ヘミセルロース(n=3)、ヘミセルロース(n=4)、ヘミセルロース(n=5)、ヘミセルロース(n=6)及びヘミセルロース(n=7)が混合されたもの(n=7のヘミセルロースと呼ぶ。)が使用される。
【0102】
とうもろこしの芯から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=7のヘミセルロースが得られる。このn=7のヘミセルロースは市販品として購入できる。このn=7のヘミセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化へミセルロース(n=7)が作成される。ベンゾイル化ヘミセルロース(n=7)は、実施例1で説明したベンゾイル化キシロースと同様の方法によって作成される。
【0103】
実施例81~実施例85では、ベンゾイル化へミセルロース(n=7)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例81)、10%(実施例82)、25%(実施例83)、50%(実施例84)及び70%(実施例85)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0104】
実施例86~実施例90では、ベンゾイル化へミセルロース(n=7)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例86)、10%(実施例87)、25%(実施例88)、50%(実施例89)及び70%(実施例90)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0105】
実施例81~実施例90で使用されたベンゾイル化へミセルロース(n=7)は、R1,R2,R5,R6がベンゾイル基であり、R4は水素である。R3がベンゾイル基―O-になるため、ベンゼン化度は80%である。R1,R2の中の1つ以上(つまり、1つ以下が水素)であればこの実施例81~実施例90と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンゾイル基であっても水素であっても良い。
【0106】
<実施例91~実施例100>
≪樹脂製造:ベンゾイル化セルロース系(n=7)≫
実施例91~実施例100では、原料としてグルコース(n=1)、セルロース(n=2)、セルロース(n=3)、セルロース(n=4)、セルロース(n=5)、セルロース(n=6)及びセルロース(n=7)が混合されたもの(n=7のセルロースと呼ぶ。)が使用される。
【0107】
樹木から抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整することによりn=7のセルロースが得られる。このn=7のセルロースは市販品として購入できる。このn=7のセルロースのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化セルロース(n=7)が作成される。ベンゾイル化セルロース(n=7)は実施例11で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって作成される。
【0108】
実施例91~実施例95では、ベンゾイル化セルロース(n=7)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例91)、10%(実施例92)、25%(実施例93)、50%(実施例94)及び70%(実施例95)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0109】
<実施例96~実施例100>
実施例96~実施例100では、ベンゾイル化セルロース(n=7)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例96)、10%(実施例97)、25%(実施例98)、50%(実施例99)及び70%(実施例60)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0110】
実施例91~実施例100で使用されたベンゾイル化セルロース(n=7)は、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R3がベンゾイル基―O-になり、R4がベンゾイル基―O-CH2になるため、ベンゼン化度は100%である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンゾイル基(つまり、2つ以下が水素)であればこの実施例91~実施例100と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンゾイル基であっても水素であっても良い。
【0111】
≪樹脂製造:ベンゾイル化デンプン系(n=7)≫
原料としてグルコース(n=1)、デンプン(n=2)、デンプン(n=3)、デンプン(n=4)、デンプン(n=5)、デンプン(n=6)及びデンプン(n=7)が混合されたもの(n=7のデンプンと呼ぶ。)が使用されてもよい。とうもろこしから抽出・精製した後の触媒による分解の条件を調整するとn=7のデンプンが得られる。このn=7のデンプンは、市販品として購入できる。このn=7のデンプンのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化デンプン(n=7)が作成される。ベンゾイル化デンプン(n=7)は実施例11で説明したベンゾイル化グルコースと同様の方法によって作成される。
【0112】
n=7のデンプンのOH基のH部がベンゾイル基となったベンゾイル化デンプン(n=7)を使って、実施例91~実施例100と同様に、バイオマス度5~70%のバイオプラスチックペレットが作成可能である。このベンゾイル化デンプンは、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンゾイル基(つまり、2つ以下が水素)であれば、ベンゾイル化デンプン(n=7)を使ったバイオプラスチックペレットでも、この実施例91~実施例100と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンゾイル基であっても水素であっても良い。
【0113】
<実施例101~実施例110>
≪樹脂製造:ベンジル化へミセルロース系(n=7)≫
n=7のへミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化へミセルロース(n=7)が作成される。ベンジル化へミセルロース(n=7)は実施例21~実施例30で説明されたベンジル化キシロースと同様の方法によって作成される。
【0114】
実施例101~実施例105では、n=7のヘミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化へミセルロース(n=7)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例101)、10%(実施例102)、25%(実施例103)、50%(実施例104)及び70%(実施例105)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0115】
実施例106~実施例110では、n=7のヘミセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化へミセルロース(n=7)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例106)、10%(実施例107)、25%(実施例108)、50%(実施例109)及び70%(実施例110)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0116】
なお、このベンジル化へミセルロース(n=7)は、R1,R2,R5,R6がベンジル基であり、R4は水素である。R1,R2の中の1つ以上がベンジル基(つまり、1つ以下が水素)であればこの実施例101~実施例110と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンジル基であっても水素であっても良い。
【0117】
<実施例111~実施例120>
≪樹脂製造:ベンジル化セルロース系(n=7)≫
n=7のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=7)が作成される。ベンジル化セルロース(n=7)は実施例31~実施例40で説明されたベンジル化グルコースと同様の方法によって作成される。
【0118】
実施例111~実施例115では、n=7のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=7)とPS1ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例111)、10%(実施例112)、25%(実施例113)、50%(実施例114)及び70%(実施例115)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0119】
実施例116~実施例120では、n=7のセルロースのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化セルロース(n=7)とPS2ペレットとが混合・混錬される。そして、バイオマス度5%(実施例116)、10%(実施例117)、25%(実施例118)、50%(実施例119)及び70%(実施例120)のバイオプラスチックペレットが作成された。
【0120】
なお、このベンジル化セルロース(n=7)は、R1,R2,R5,R6及びR7がベンジル基である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンジル基(つまり、2つ以下が水素)であればこの実施例111~実施例120と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンジル基であっても水素であっても良い。
【0121】
≪樹脂製造:ベンジル化デンプン系(n=7)≫
n=7のデンプンのOH基のH部がベンジル基となったベンジル化デンプンを使って、実施例111~実施例120と同様に、バイオマス度5~70%のバイオプラスチックペレットが作成可能である。このベンゾイル化デンプンは、R1,R2,R5,R6及びR7がベンゾイル基である。R1,R2,R7の中の1つ以上がベンジル基(つまり、2つ以下が水素)であれば、ベンジル化デンプンを使ったバイオプラスチックペレットでも、この実施例111~実施例120と同様の効果が得られることも確認されている。R5,R6はベンジル基であっても水素であっても良い。
【0122】
<実施例1~実施例120の物性試験>
≪射出成形による試験片作成≫
実施例1~実施例120のバイオプラスチックペレット(バイオマス度=5%、10%、25%、50%、70%の5種、構造式(式1)の樹脂=12種、透明ポリスチレン=2種(射出成形用、フイルム・シート成形用))は、試験片用の金型に射出成形された。本実施形態では、実施例1~実施例120のバイオプラスチックペレットでダンベル試験片、短冊試験片及び平板試験片がそれぞれ作成された。また、比較例としてPS1(射出成形用)ペレット100%とPS2(フイルム・シート成形用)ペレット100%とを使って、ダンベル試験片、短冊試験片及び平板試験片がそれぞれ作成された。
【0123】
≪物性評価≫
実施例1~実施例120のバイオプラスチック及び比較例1もしくは比較例2のダンベル試験片を使って引張試験が行われ、引張特性(引張強度、引張弾性率)が計測された。また、短冊試験片を使って、曲げ試験、衝撃試験、熱特性試験が行われ、曲げ特性(曲げ強度、曲げ弾性率)、アイゾット衝撃強度、荷重たわみ温度が計測された。また、実施例1~実施例120のバイオプラスチックペレット及び比較例を使って流動性試験が行われ、メルトフローレート(MFR)が計測された。また、実施例1~実施例120のバイオプラスチック及び比較例の平板試験片を使って、透明性試験が行われ、透明性(全光線透過率、ヘーズ)が計測された。物性評価はJIS規格(JIS規格は対応するISO規格に準拠している)に準拠して計測された。
【0124】
≪評価結果≫
実施例1~実施例120のバイオプラスチック並びに比較例1もしくは比較例2(PS1及びPS2)の物性評価結果を表1~表24に示す。また、各表には物性値として好ましい目標値が示されている。バイオプラスチックとしては、この目標値を達成することが好ましい。なお、表25には、比較例3として石油由来のポリプロピレン(PP:100%)、比較例4として植物由来のポリ乳酸(PLA:100%)、比較例5として植物由来のポリヒドロキシ酪酸(PHB:100%)の物性を示す。
【0125】
実施例1~実施例120のバイオプラスチックにおいて、バイオマス度が5%~50%占める実施例(実施例1~実施例4、実施例6~実施例9、実施例11~実施例14、実施例16~実施例19、実施例21~実施例24、実施例26~実施例29、実施例31~実施例34、実施例36~実施例39、実施例41~実施例44、実施例46~実施例49、実施例51~実施例54、実施例56~実施例59、実施例61~実施例64、実施例66~実施例69、実施例71~実施例74、実施例76~実施例79、実施例81~実施例84、実施例86~実施例89、実施例91~実施例94、実施例96~実施例99、実施例101~実施例104、実施例106~実施例109、実施例111~実施例114、実施例116~実施例119)は、各物性値の目標値を達成している。また、バイオマス度が10%~25%の場合は特に好ましく、比較例(PS1、PS2)と比較しても劣っていない。
【0126】
また、バイオマス度が70%占める実施例(実施例5、実施例10、実施例15、実施例20、実施例25、実施例30、実施例35、実施例40、実施例45、実施例50、実施例55、実施例60、実施例65、実施例70、実施例75、実施例80、実施例85、実施例90、実施例95、実施例100、実施例105、実施例110、実施例115、実施例120)では物性的に若干悪化する傾向が見られた。
【0127】
≪成形品の作成≫
実施例1~実施例5、実施例11~実施例15、実施例21~実施例25、実施例31~実施例35、実施例41~実施例45、実施例51~実施例55、実施例61~実施例65、実施例71~実施例75、実施例81~実施例85、実施例91~実施例95、実施例101~実施例105及び実施例111~実施例115のバイオプラスチックペレット及び比較例(PS1)のペレットを使い、射出成形でデザート容器、化粧品容器が試作された。
【0128】
また実施例6~実施例10、実施例16~実施例20、実施例26~実施例30、実施例36~実施例40、実施例46~実施例60、実施例56~実施例60、実施例66~実施例70、実施例76~実施例80、実施例86~実施例90、実施例96~実施例100、実施例106~実施例110及び実施例116~実施例120のバイオプラスチックペレット及び比較例(PS2)のペレットを使いTダイを使った押出成形でフィルムが試作され、そのフィルムを使って弁当箱の容器が試作された。また同様に、ブロー成形で液体用の容器が試作された。いずれも透明な成形物を試作することができた。
【0129】
<発明の実証結果>
以上より、本実施形態では、優れた透明性及び屈折率の高いバイオプラスチックが得られた。またそれらの物性は、樹脂(式1)を含まないプラスチックと同等であった。
【0130】
表1
【表1】
表2
【表2】
表3
【表3】
表4
【表4】
表5
【表5】
表6
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表7
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表8
【表8】
表9
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表10
【表10】
表11
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表12
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表13
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表14
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表15
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表16
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表17
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表18
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表19
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表20
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表21
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表22
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表23
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表24
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表25
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