(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125984
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】におい検出素子
(51)【国際特許分類】
G01N 5/02 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
G01N5/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030387
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087480
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 修平
(72)【発明者】
【氏名】綿貫 千優
(72)【発明者】
【氏名】高野 貴之
(57)【要約】
【課題】におい物質の検出感度向上と発振特性の悪化防止を共に実現することが可能なにおい検出素子を提供すること。
【解決手段】本発明に係るにおい検出素子は、圧電材料を主成分とする圧電体層と、上記圧電体層の表面に設けられている第1電極と、上記圧電体層の裏面に設けられている第2電極とを備える圧電振動子と、上記第1電極上に設けられ、複数の多孔質粒子と上記複数の多孔質粒子を固定する粒子固定材料を有する第1粒子層と、上記第1粒子層上に設けられ、固定されていない複数の多孔質粒子を含む第2粒子層を有する吸着層と、を備える感応膜と、を具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電材料を主成分とする圧電体層と、前記圧電体層の表面に設けられている第1電極と、前記圧電体層の裏面に設けられている第2電極とを備える圧電振動子と、
前記第1電極上に設けられ、複数の多孔質粒子と前記複数の多孔質粒子を固定する粒子固定材料を有する第1粒子層と、前記第1粒子層上に設けられ、固定されていない複数の多孔質粒子を含む第2粒子層を有する吸着層と、を備える感応膜と、を具備するにおい検出素子。
【請求項2】
前記圧電体は水晶で、その水晶に設けられた第1電極は、凹凸を持った金電極であり、
前記第1粒子層の前記第1電極側の多孔質粒子と前記第1電極の間には、隙間が設けられており、
前記第1電極側の多孔質粒子は、前記第1電極に設けられた粒子固定材料で固定されている請求項1に記載のにおい検出素子。
【請求項3】
前記金電極は展開面積比(Sdr)で定義される表面粗さの平均値で0.01以上0.03以下である請求項2に記載のにおい検出素子。
【請求項4】
前記圧電振動子はFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)素子である請求項1に記載のにおい検出素子。
【請求項5】
前記第1粒子層を構成する少なくとも一部の多孔質粒子の細孔は前記粒子固定材料で塞がれ、前記第2粒子層の多孔質粒子の細孔は、外部雰囲気に露出している請求項1または請求項2に記載のにおい検出素子。
【請求項6】
前記多孔質粒子は、MOF(Metal Organic Frameworks)の粒子である請求項1または請求項2に記載のにおい検出素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動子式のにおい検出素子及びにおい検出素子の振動方法に関する。
【背景技術】
【0002】
振動子式のにおい検出素子は、振動子上に特定のにおい物質を吸着する感応膜を有しており、感応膜へのにおい物質の吸着に伴う共振周波数の変化により、におい物質を検出することができる。振動子には水晶振動子を用いたQCM(Quartz crystal microbalance:水晶振動子マイクロバランス)素子等が利用される。
【0003】
水晶振動子には、クリスタルインピーダンス値(以下、CI値)と呼ばれる特性がある。CI値は付加容量がない状態での等価直列抵抗であり、CI値が高いと水晶振動子の発振安定性が低下するため、低減が求められている。例えば、特許文献1には、水晶製振動板の幅に対する電極幅の比率を規定することでCI値を低減した水晶振動子が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の構成では、水晶振動子の製造過程で電極の位置や電極幅の比率のずれが生じる可能性がある。また、水晶振動子自体のCI値が低くても、感応膜を設けることによって、CI値が著しく増加することが知られている。感応膜に関しては、感応膜に含まれる吸着材料の絶対量が多いほどにおい物質の吸着量が増加し、感度が向上する。特に、多孔質粒子等の比表面積が大きく吸着量が多い材料に関してはその傾向が顕著であるが、多孔質粒子だけでは感応膜状態を保持できない、あるいは保持できてもCI値が著しく高くなるため、水晶振動子が発振しないおそれがある。
【0006】
このように、QCM素子を用いたにおい検出素子では、感度向上のために感応膜に含まれる吸着材料の量を多くするとCI値が低下し、振動子の発振特性が悪化するという問題がある。QCM素子以外の振動子を用いたにおい検出素子においても同様に、感応膜に含まれる吸着材料の量を多くすると、振動子の発振特性が悪化するという問題がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、におい物質の検出感度向上と発振特性の悪化防止を共に実現することが可能なにおい検出素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされ、第1に、圧電材料を主成分とする圧電体層と、前記圧電体層の表面に設けられている第1電極と、前記圧電体層の裏面に設けられている第2電極とを備える圧電振動子と、前記第1電極上に設けられ、複数の多孔質粒子と前記複数の多孔質粒子を固定する粒子固定材料を有する第1粒子層と、前記第1粒子層上に設けられ、固定されていない複数の多孔質粒子を含む第2粒子層を有する吸着層と、を備える感応膜と、を具備するにおい検出素子により解決するものである。
【0009】
第2に、前記圧電体は水晶で、その水晶に設けられた第1電極は、凹凸を持った金電極であり、前記第1粒子層の前記第1電極側の多孔質粒子と前記第1電極の間には、隙間が設けられており、前記第1電極側の多孔質粒子は、前記第1電極に設けられた粒子固定材料で固定されている事で解決するものである。
【0010】
第3に前記金電極は展開面積比(Sdr)で定義される表面粗さの平均値で0.01以上0.03以下である事で解決するものである。
【0011】
第4に、前記圧電振動子はFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator)素子で解決するものである。
【0012】
第5に、前記第1粒子層を構成する少なくとも一部の多孔質粒子の細孔は前記粒子固定材料で塞がれ、前記第2粒子層の多孔質粒子の細孔は、外部雰囲気に露出している事で解決するものである。
【0013】
第6に、前記多孔質粒子は、MOF(Metal Organic Frameworks)の粒子である事で解決するものである。
特に、粒子固定材料で多孔質粒子を固定すると、この固定材料が多孔質粒子の吸着サイトを塞ぐため、第1粒子層と第2粒子層に分け、第2粒子層には、吸着サイトが機能する様な構成とした。
【発明の効果】
【0014】
以上のように本発明によれば、におい物質の検出感度向上と発振特性の悪化防止を共に実現することが可能なにおい検出素子を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係るにおい検出素子(QCM型)の平面図である。
【
図2】上記におい検出素子の断面図であり、
図1のA-A線での断面図である。
【
図3】上記におい検出素子を拡大して示す断面図である。
【
図4】比較例に係るにおい検出素子の動作を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施形態に係るにおい検出素子の動作を示す模式図である。
【
図6】上記におい検出素子の製造方法を示す模式図である。
【
図7】本発明の実施形態に係るにおい検出素子(FBAR型)の断面図である。
【
図8】本発明の実施例1に係る、感応膜の粒子比率とCI値(クリスタルインピーダンス値)の関係を示すグラフである。
【
図9】本発明の実施例2に係る、吸着層の有無によるにおい物質の吸着特性を示すグラフである。
【
図10】本発明の実施例2に係る、吸着層の有無によるにおい物質の吸着特性を示すグラフである。
【
図11】本発明の実施例2の変形例1に係る、感応膜に占める活性炭量に対する表面粗さSdrの関係を示すグラフである。
【
図12】本発明の実施例3に係る、CI値及び吸着層の膜厚の関係を示すグラフである。
【
図13】本発明の実施例3に係る、CI値及び吸着層の膜厚の関係を示すグラフである。
【
図14】本発明の実施例4に係る、シリコン基板上に成膜した感応膜のSEM像である。
【
図15】本発明の実施例5に係るQCM素子が備える金電極表面のレーザー顕微鏡像である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るにおい検出素子について説明する。
【0017】
[におい検出素子の構成]
本実施形態に係るにおい検出素子100は、
図1及び
図2に示すように、圧電振動子110及び感応膜120を備える。
圧電振動子110は、圧電体層111、第1電極112及び第2電極113を備える。圧電体層111は圧電材料を主成分とする層である。
図2に示すように圧電体層111の表面を表面111aとし、裏面を裏面111bとする。第1電極112は表面111a上に設けられ、第2電極113は裏面111b上に設けられている。第1電極112と第2電極113は圧電体層111を挟み、1対の電極を構成している。第1電極112と第2電極113は導電性材料からなり、例えば金、銀、クロム、チタン又はその他の金属からなる。圧電振動子110は例えば、圧電体層111が水晶からなるQCM素子である。またはFBARなどの、半導体基板の上に形成された振動子である。
【0018】
感応膜の吸着特性について触れる。感応膜は、樹脂、樹脂から成る高分子、金属、金属酸化膜、無機材料の焼結体、またはこれらから選択して混合された膜などから成る。そしてこれらの感応膜は、吸着量の大小はあるが、複数のガスや複数のにおい成分を吸着する。これらの成分は気体、浮遊液体、水蒸気などである。仮に感応膜Aを用意した場合、気体Aだけを吸着するものは殆どなく、他の気体B・C・・・も吸着するが、気体Aを一番多く吸着する膜であり、これを特定のにおい物質を吸着する感応膜と呼ぶ。
本発明の感応膜120は、圧電振動子110上に設けられ、におい検出素子100に供給された気体に含まれる特定のにおい物質を吸着する。感応膜120が吸着するにおい物質の種類は、感応膜120を構成する材料によって異なる。
【0019】
感応膜120は、粒子固定層121及び表側に位置する吸着層122を備える。粒子固定層121は
図1に示すように第1電極112上に設けられ、吸着層122は粒子固定層121上に設けられている。吸着層122は
図3に示すように多孔質粒子123を含む層であり、におい物質を吸着する。
【0020】
[多孔質粒子の説明]
まず多孔質粒子123の説明をする。多孔質粒子の形状は、複雑な形状であってもよい。
図3以降で示すが、おおよそ砂で構成された濾過膜の様に、層状に積層されている。また塗布の際、形状が異なるため、互いに噛み合って、ある程度、機械的に固定される。
この多孔質粒子123は、無機粒子、有機無機複合粒子又は有機粒子であり、表面および内部には、細孔がある。そのため、におい物質をより吸着する。多孔質粒子123の種類も1種類である必要はなく、複数種類を混合してもよい。
ここでは、多孔質粒子123として、MOF(Metal Organic Frameworks:有機金属構造体)を採用したが、他に、活性炭、ゼオライトなどである。少なくても表面が多孔質であると、比表面積が大きく、単位重量あたりのにおい物質吸着量が多くなる。更には、吸脱着の応答性が速いことが望ましく、より好ましくは、吸湿性が低い材料からなる多孔質粒子である。
尚、この多孔質粒子と多孔質粒子の間に発生する小さな隙間も孔と呼び、層状の多孔質粒子からなる膜を多孔質膜と呼ぶ。
【0021】
MOFは金属有機構造体であれば、特に限定されるものではなく、UiO-66等の一般的に市販されているMOFを用いることができる。MOFは単位重量あたりのにおい物質の吸着量が多いほうが望ましい。またMOFは、細孔内に何らかの機能性分子を包接していてもよい。MOFを構成する金属原子としては、亜鉛、コバルト、ニオブ、ジルコニウム、カドミウム、銅、ニッケル、クロム、バナジウム、チタン、モリブデン、アルミニウムなどの中から、少なくとも一つが挙げられる。ただし、MOFを構成する金属原子も、これらに限定されるものではない。MOFを構成する金属原子は、1種でもよく2種以上でもよい。
【0022】
多孔質粒子123は、レーザー回折/散乱式粒子径分布計による体積頻度中心粒径(メジアン径)として、10nm以上500μm以下が好ましく、50nm以上10μm以下がより好ましく、50nm以上300nm以下が更に好ましい。多孔質粒子123がMOFである場合、メジアン径が上記範囲内であると、MOFの機能と複合体としての物理的、機械的物性とを両立できる。MOFの粒径が小さすぎるとMOFの機能が制限され、大きすぎると発振不良を引き起こす原因となるおそれがある。
【0023】
[吸着層の説明]
吸着層122は、多孔質粒子123のみからなる層が上層に存在しても良い。またこの多孔質粒子123の凝集度によって、分散材を用いる場合がある。更には、吸着層122の下層には、電極112と固着するために、バインダー(粒子固定層121)を用いている。このバインダーは、多孔質粒子同士を結合し、更には第1電極112との接着性を持つ。
例えば、セルロースアセチルブチレート又はシリル基を有する疎水性ポリマーを利用することができる。この他にもセルロース系ポリマー、イミド系ポリマー、フッ素系ポリマー、アクリル系ポリマー又はエステル系ポリマー等をバインダーとして用いることができる。
本実施例では、バインダーは、溶媒、例えばアセトンなどで溶解する。その結果、第1電極112との接着が可能となる。
【0024】
分散剤は、多孔質粒子123を溶媒に分散させる機能をもつ。分散剤は例えば界面活性剤や高分子界面活性剤等であり、高分子界面活性剤としてはカチオン系ポリマー、非イオン系ポリマー及びアニオン系ポリマーが挙げられる。
分散剤は好ましくは、多孔質粒子123の表面に適度に吸着しやすい官能基を有する界面活性剤であり、多孔質粒子123の細孔を塞がないものである。
【0025】
粒子固定層121は、第1電極112の上に設けられ、多孔質粒子123を固定する。
前述の様に、粒子固定層121は、バインダーを主成分とし、
図3の第1電極112の上に塗られており、多孔質粒子123がその中に埋設されていたり、または多孔質粒子の下の部分が埋設され、それ以外の多孔質粒子の表面はバインダーの表面から露出していたりする。
しかし、一般には、溶媒に、バインダー、分散材、多孔質粒子が混合されて塗布されるため、多孔質粒子123の表面は、バインダーで被覆され、多孔質粒子の表面に開口している細孔は、このバインダーで閉塞される。この場合、多孔質粒子123の吸着・脱着の能力は、大きく落ちる事になる。
そのため、バインダーと分散材を用いず、同じ溶媒に、多孔質粒子のみが混合した溶液を用いて、細孔が被覆された粒子層の上に塗布してみた。(後述する。)
そうすると、塗布された多孔質粒子が、その下にあるバインダーを溶かす。このため、下層では多孔質粒子123が下にあるバインダーにより固定され、上層に向かうにつれて多孔質粒子123はバインダーで被覆されず、閉塞されていない細孔を持った多孔質粒子が積層される。この多孔質粒子は、
図3以降に示す様に互いに噛み合い、ある程度、機械的に固定される。別の表現で言えば、
図14で示すように多孔質粒子123は巨視的にみると同じサイズに見えるが、微視的にみるとサイズが異なる。スプレー塗布で成膜するので、成膜時に粒子に圧力がかかる結果、無定形の粒子がランダムに積み重なる。結果、
図14で示すような膜となる。
また、同じ溶媒に、分散材と多孔質粒子が混合した溶液を用いて、細孔が被覆された粒子層の上に塗布した場合でも、上述した溶媒に多孔質粒子のみが混合した溶液と同じ様に、多孔質粒子が互いに噛み合い、ある程度、機械的に固定された。
実験では、バインダーは、電極112側から1層から数層程度の多孔質粒子123を被覆し、多孔質粒子123間を固定する。尚、このバインダーは、粒子固定層121として呼称する事もある。
【0026】
[におい検出素子の動作]
におい検出素子100では、第1電極112と第2電極113の間に電圧を印加すると、逆圧電効果により圧電体層111に振動が生じ、におい検出素子100が一定の共振周波数で振動する。感応膜120ににおい物質が吸着すると、感応膜120の重量が増加し、共振周波数が減少する。一方、感応膜120に吸着しているにおい物質が脱着すると、感応膜120の重量が減少し、共振周波数が増加する。したがって、におい検出素子100では共振周波数の変化に基づいて感応膜120に吸着したにおい物質の量を検出することができる。
【0027】
[多孔質粒子の役割および効果]
におい検出素子100の効果を述べる前に、比較例を用いて、問題点を説明する。
A:多孔質粒子が電極表面に固着していない場合
図4は、比較例である。本願と同様に、におい検出素子200は圧電振動子210及び感応膜220を備える。圧電振動子210は圧電体層211、第1電極212及び第2電極213を備え、感応膜220は多孔質粒子223からなる吸着層222を備える。
におい検出素子200は、本実施形態に係るにおい検出素子100とは異なり、粒子固定層を備えない。第1電極212と接着されていないため、第1電極212と多孔質粒子は、振動の際にずれて、エネルギーのロスが発生していた。
B:下部多孔質粒子が電極表面に固定され、上部は個々に独立した多孔質粒子が形成される場合
図5は、溶媒に、バインダー、分散材、多孔質粒子が混合され、第1電極112の上に塗布してから乾燥させている。こうする事で、バインダーは、第1電極112に固着され、多孔質粒子はこのバインダー内に埋設、または一部埋設されて、複数層の多孔質粒子が設けられている。これを第1粒子層と呼ぶ事にする。
続いて、この第1粒子層の上に、溶媒に、分散材、多孔質粒子が混合され、バインダーを除いた溶液を塗布し、乾燥させている。この場合、バインダーで固定された第1粒子層の上に、固定されておらず、個々に独立した多孔質粒子の層が複数層で形成される。これを第2粒子層と呼ぶ。
この第2粒子層の形成の際、第1粒子層のバインダーを溶かした同じ溶媒を採用したので、第1粒子層の表面のバインダーは溶けて、第2粒子層の下層にある多孔質粒子は、一部溶けたバインダーに固定され、多孔質粒子の一部の細孔はバインダーに被覆されるものもある。このバインダーで固定された多孔質粒子の層は、バインダーで固定されるため、第1粒子層として考える。そして上層には、個々に独立した多孔質粒子の層が設けられる。これを独立粒子層と呼ぶ。
よって、第1電極112の上には、バインダーで固定され、一部細孔が塞がれている第1粒子層が設けられ、更にその上には、個々に独立し、殆どの細孔が露出した第2粒子層が形成されることになる。
吸着層222が個々の多孔質粒子223で、機械的に積み重ねられている場合、圧電振動子210を駆動すると、各多孔質粒子223が樹脂などのバインダーで固定されていないため、各多孔質粒子223が不安定に動き、多孔質粒子223間の衝突Cが多発し、振動エネルギーの損失が生じるため、発振特性が悪化した。
まず、この現象を、水晶振動子を用いた場合で考察する。
水晶振動子を目視、または金属顕微鏡程度で観察すると、
図16の様に、金電極には凹凸がある事が判る。これは、
図15の様に、水晶自体に凹凸があり、この水晶に金の薄膜を蒸着またはスパッタリングなどで被覆すると、膜が薄い事から、金電極の表面は、水晶の凹凸に沿って、滑らかな凹凸が発生している。金電極の凹凸は展開面積比(Sdr)で定義される表面粗さの平均値で0.01以上0.03以下である。
この凹凸のある金電極の上に、個々に形状、大きさの異なる多孔質粒子が、前述した[A:個々に独立している場合]のように成膜される。そうすると、金電極と多孔質粒子の間には、色々な隙間が発生すると同時に、それぞれ異なる積層構造をなす。よって、振動を直接受ける、最下層においてある多孔質粒子は、滑ったり、別の多孔質粒子は、少し振動が伝わったりと、色々な伝わり方をする。そのため、吸着層222の上層に行くにつれてばらばらな動きが発生していると思われる。これは、多孔質粒子が固着されてないため、そのばらばらな動作が顕著になるためと思われる。
【0028】
一方、
図5は、本実施形態に係るにおい検出素子100の動作を示す。におい検出素子100では上記のように、吸着層122と圧電振動子110の間に粒子固定層(バインダー)121が設けられている。粒子固定層121は下層の多孔質粒子123を固定し、下層の多孔質粒子123の振動を圧電振動子110の振動に一致させている。よって圧電振動子110の振動を多孔質粒子123側に伝える事が出来る。しかし前述したように、吸着層122の上層(第2粒子層側)では多孔質粒子123間の衝突Cが発生し得るが、振動エネルギーの損失が大きく生じるのは主に吸着層122の下層である。したがって、粒子固定層121が下層の多孔質粒子123を固定することにより、振動エネルギー損失を抑制できる。
【0029】
[におい検出素子の製造方法]
におい検出素子100の製造方法について説明する。
まず、圧電振動子110を準備する。第1電極112の表面にはArプラズマでクリーニング処理をしてもよい。
続いて粒子固定層の形成工程になる。
粒子固定層121は、上述したバインダーを溶媒と混合し、その溶液を第1電極112の表面に塗布することによって形成可能である(
図6参照)。
尚、本工程は省略し、次の工程からスタートしても良い。
【0030】
溶液の塗布は、ここでは、スプレーコーティング、で被覆した。塗布後、溶媒を揮発させることにより第1電極112上に粒子固定層121が形成される。溶媒は特に限定されないが、アセトン、THF(tetrahydrofuran)又はシクロヘキサノン等を用いることができる。
【0031】
続いて、第1粒子層工程および第2粒子層工程に移る。
多孔質粒子123をバインダーが溶けた溶媒と混合し、その混合液を粒子固定層121上に塗布することによって形成可能である。
尚、粒子固定層の形成工程を経ずに、直接、第1粒子層工程からスタートしても良い。
【0032】
続いて、第2粒子層形成工程で、個々に独立した多孔質粒子を形成する。
溶媒により粒子固定層121の上層が溶解する。このため、多孔質粒子123が粒子固定層121内に埋設され、粒子固定層121に強固に固定される。
また直接、粒子固定層を形成した場合、混合されたバインダーが電極112の上に被覆され、多孔質粒子が固定される。
【0033】
[吸着層表面粗さについて]
吸着層122は、個々に独立した多孔質粒子(第2粒子層)が、積層され、無定形な多孔質粒子がランダムに配置される。そのため、多孔質粒子と多孔質粒子の間には隙間が発生し、多孔質粒子の内部および表面の細孔は、露出している。そのため、吸着サイトの表面積が増加し、におい吸着量すなわち感度が向上する。
具体的には吸着層122は、展開面積比(Sdr)で定義される表面粗さの平均値で0.01以上が好適であり、0.3以上がより好適であり、0.5以上がさらに好適である。第1電極112や粒子固定層121の展開面積比で定義される表面粗さの平均値は0.01以上0.03以下程度であるため、吸着層122の表面粗さはそれより大きいものが好適である。なお、展開面積比(Sdr)はレーザー顕微鏡を用いて測定可能である。また、吸着層122の表面粗さは算術平均(Sa)によって規定することもでき、この場合、算術平均の平均値は0.1以上が好適である。
【0034】
[圧電振動子について]
本発明の圧電振動子110は、第1電極112と第2電極113の間に電圧を印加すると、圧電体層111に逆圧電効果により振動を生じる素子であり、上記のように圧電体層111が水晶からなるQCMで説明した。しかし圧電振動子110はFBAR(Film Bulk Acoustic Resonator:圧電薄膜共振子)素子であってもよい。
図7に示すように、FBAR素子である圧電振動子110は、基板131に形成されたキャビティ132の上に、ブリッジの如く形成される。
【0035】
基板131はSi等からなる基板であり、感応膜120の反対側にキャビティ132が設けられている。圧電体層101はAlN(窒化アルミニウム)、ZnO(酸化亜鉛)、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)またはPbTiO3(チタン酸鉛)等からなる薄膜である。
空隙の上に第2電極113、圧電体層101、第1電極112を積層する。第1電極112および第2電極113にはCr(クロム)、Ru(ルテニウム)、Al(アルミニウム)、Ti(チタン)、Cu(銅)、Mo(モリブデン)、W(タングステン)、Ta(タンタル)、Pt(白金)、Rh(ロジウム)またはIr(イリジウム)等の金属単層膜またはこれらの複合膜を用いることができる。
第1電極112上には第1電極パッド部114が設けられ、第2電極113上には第2電極パッド部115が設けられている。第1電極パッド部114および第2電極パッド部115にはTi(チタン)またはAu(金)等の金属単層膜またはこれらの複合膜を用いることができる。
この構成において第1電極112と第2電極113の間に電圧を印加すると、圧電体層111の共振領域Sはキャビティ132を介して厚み方向に振動し、同方向に弾性波の共振が生じる。
振動子を構成する水晶と異なり、例えば窒化アルミニウムを採用しているが、積層構造は、水晶振動子を採用した実施例と同様である。
上層の電極112の上には、バインダーで固定された第1粒子層が形成され、更にその上には、第2粒子層が形成される。
よってFBARの振動は、第1粒子層に伝わり、第2粒子層は、細孔が塞がれていないので、感度に優れる構造となる。
【実施例0036】
[発振特性について]
上記実施形態に係る構成を有するにおい検出素子及び比較例に係るにおい素子を作製し、各種測定を行った。におい検出素子の発振特性は、各におい検出素子において圧電振動子を構成する水晶振動子の発振余裕度から判定することができる。発振余裕度とは、発振している状態から発振停止に至るまでのマージンを表したものであり、負性抵抗と水晶振動子の等価直列抵抗規格値を用いて、次式で算出することができる。式中、|-R|は負性抵抗を表し、R1speは水晶振動子の等価直列抵抗値を示す。
発振余裕度[倍]=|-R|/R1spe
【0037】
負性抵抗値は、水晶振動子と直列に純抵抗を加えていき、どこまで発振し続けるかをオシロスコープ等で確認することにより測定される。完全に発振が止まる寸前の純抵抗の値に、測定に使用した水晶振動子の実効抵抗値を加えた値が負性抵抗値となる。また、等価直列抵抗値はクリスタルインピーダンス値、CI値ともいい、CI値が高いほど発振が不安定となる。
【0038】
本発明に係るにおい検出センサは、使用時の環境によって圧電振動子の発振が不安定になることがあるため、発振余裕度を大きくとるように設定することが好ましい。これにより、幅広い環境条件下で、感度特性の安定したにおい検出素子とすることができる。理論上は発振余裕度が1倍以上であれば発振可能だが、発振しないもしくは発振の立ち上がり時間が長いなどの不具合が発生し、正常に動作しないことがある。このため、一般的には、発振余裕度は最低でも5倍の水準が必要とされている。本発明においては、QCM素子表面を大気中に露出した状態で使用するため、CI値が120Ω以下の場合に安定であると判定し、CI値が120Ωより大きい場合はやや不安定、CI値が150Ωより大きい場合は不安定であると判定した。
【0039】
[実施例1]
金からなる第1電極及び第2電極が形成された、共振周波数32MHzの水晶振動子を圧電振動子として用いた。この圧電振動子をプラズマ処理した後、第1電極上にスプレーコーティングにて感応膜を作製した。具体的には、セルロースアセチルブチレート1wt%アセトン溶液をスプレーコーティングにより第1電極上に10000Hz分塗布し、アセトンを揮発させて粒子固定層を形成した。なお「10000Hz分」とは、スプレーコーティングを行いながら圧電振動子の共振周波数を計測した際に、重量増加による共振周波数の減少量が10000Hzに達する量を意味し、以下同様である。
【0040】
続いて、活性炭アセトン分散液を粒子固定層上にスプレーコーティングにより90000Hz分塗布し、アセトンを揮発させて吸着層を形成した。活性炭はメジアン径800nmとした。同様の方法で、セルロースアセチルブチレート1wt%アセトン溶液を30000Hz分塗布した後、活性炭分散液を70000Hz分塗布したにおい検出素子と、セルロースアセチルブチレート1wt%アセトン溶液を50000Hz分塗布した後、活性炭分散液を50000Hz分塗布したにおい検出素子を作成した。
【0041】
さらに、同様の方法で、シリル基を有する疎水性ポリマー0.5wt%THF溶液を20000Hz分塗布した後、活性炭分散液を80000Hz分塗布したにおい検出素子と、シリル基を有する疎水性ポリマー0.5wt%THF溶液を60000Hz分塗布した後、活性炭分散液を40000Hz分塗布したにおい検出素子を作成した。また、比較例として粒子固定層を形成せず、活性炭分散液を100000Hz分塗布したにおい検出素子も作製した。
【0042】
図8は、上述した各におい検出素子の感応膜における粒子比率に対して、CI値[Ω]をプロットしたグラフである。CI値の測定はインピーダンスアナライザ4294A(キーサイト・テクノロジー社製)を用いて行った。同図から粒子固定層を設けたにおい検出素子は粒子比率100%の比較例と比較して、CI値が著しく小さく、感応膜における粒子固定層の割合が上がるほど、CI値が低くなる傾向があることがわかる。特に、セルロースアセチルブチレートを粒子固定層とした二層構造の感応膜のCI値上昇はかなり抑制されている。以上のように、多孔質粒子を含む吸着層と第1電極の間に粒子固定層を形成することにより、感応膜形成によるCI値の上昇を抑制する効果が得られることが示されている。
【0043】
[実施例2]
実施例1と同様に、金からなる第1電極及び第2電極が形成された、共振周波数32MHzの水晶振動子を圧電振動子として用いた。この圧電振動子をプラズマ処理した後、第1電極上にスプレーコーティングにて感応膜を作製した。具体的には(1)粒子固定層+吸着層:シリル基を有する疎水性ポリマー溶液17162Hz分+活性炭分散液82893Hz分を塗布したにおい検出素子、(2)粒子固定層+吸着層:セルロースアセチルブチレート溶液51177Hz分及び活性炭分散液103798Hz分を塗布したにおい検出素子を作製した。また、それぞれの比較例として、(3)粒子固定層:シリル基を有する疎水性ポリマー溶液156488Hz分を塗布したにおい検出素子、(4)粒子固定層:セルロースアセチルブチレート溶液138773Hz分を塗布したにおい検出素子を作製した。
【0044】
上述した各におい検出素子に対して、ガス発生装置から一定濃度のガスを300sccmの流速で流入させ、におい物質の吸着に伴う周波数変化を測定した。
図9及び
図10は、各においセンサの吸着層の有無によるにおい物質の吸着特性を示す図である。これらの図から、活性炭を上層に設けた構成(1)、(2)とすることにより、比較例の構成(3)、(4)と比較して、におい物質の増加という効果が得られることがわかる。
【0045】
[実施例2の変形例1]
実施例1と同様に、金からなる第1電極及び第2電極が形成された、共振周波数32MHzの水晶振動子を圧電振動子として用いた。この圧電振動子をプラズマ処理した後、第1電極上にスプレーコーティングにて感応膜を作製した。具体的には、セルロースアセチルブチレート1wt%アセトン溶液をスプレーコーティングにより第1電極上に塗布して粒子固定層を形成した後、活性炭分散液をスプレーコーティングにより粒子固定層上に90000Hz分塗布して吸着層を形成したにおい検出素子を作製した。
【0046】
また、同様の方法で、粒子固定層上に吸着層を70000Hz分塗布したにおい検出素子と、粒子固定層上に吸着層を50000Hz分塗布したにおい検出素子を作製した。におい検出素子の作製と同時に吸着層をガラス基板上にも形成した。さらに、比較例として、活性炭とバインダーを下記の比率で混合した吸着層をガラス基板上に100000Hz分形成した。具体的には、活性炭とバインダーであるセルロースアセチルブチレートが9:1、7:3及び5:5になるようにそれぞれ混合したアセトン分散液をガラス基板上に塗布した。
【0047】
以上のようにしてガラス基板上に形成した吸着層について、展開面積比(Sdr)で定義される表面粗さ(以下、表面粗さSdr)を測定した。表面粗さSdrの測定にはレーザー顕微鏡VK-X3000(KEYENCE社製、レンズ倍率150倍)を用いた。
図11は感応膜に占める活性炭量に対する表面粗さSdrをプロットしたグラフである。凡例「活性炭単層」として示す、活性炭のみからなる吸着層の場合、凡例「混合層」として示す、活性炭とバインダーと混合した吸着層よりも表面粗さSdrが向上するという結果が得られた。吸着層の表面粗さが向上することにより、吸着層とにおい物質を含む気体との接触面積が増大し、感度向上効果が期待できる。
【0048】
[実施例3]
実施例1と同様に、金からなる第1電極及び第2電極が形成された、共振周波数32MHzの水晶振動子を圧電振動子として用いた。この圧電振動子をプラズマ処理した後、第1電極上にスプレーコーティングにて感応膜を作製した。具体的には、セルロースアセチルブチレート1wt%アセトン溶液をスプレーコーティングにより第1電極上に10000Hz分塗布して粒子固定層を形成した後、MOF分散液をスプレーコーティングにより粒子固定層上に113000Hz分塗布して吸着層を形成したにおい検出素子を作製した。MOF分散液はUiO-066の粒子と添加剤としてバインダーであるセルロースアセチルブチレート)を9:1で混合したものである。また、同様にしてMOF分散液を177000Hz分塗布して吸着層を形成したにおい検出素子も作成した。さらに、比較例として、粒子固定層を形成せず、上記MOF分散液を130000Hz分塗布して吸着層のみを形成したにおい検出素子も作成した。
【0049】
図12はそれぞれのにおい検出素子のCI値及び吸着層の膜厚をプロットした図であり、CI値を棒グラフで示し、膜厚を円図形で示す。
図12及び以降の図において凡例「単層」は比較例に係る吸着層のみを備えるにおい検出素子の値を示し、凡例「二層」は上記実施例に係る粒子固定層及び吸着層を備えるにおい検出素子の値を示す。感応膜の膜厚はCI値上限によって規定されるが、
図12に示すように、粒子固定層を形成することにより、同程度量塗布したときのCI値の上昇率が、粒子固定層がない場合と比較して低いため、感応膜の膜厚上限を上げる効果が得られる事が示されている。
【0050】
また、UiO-066とセルロースアセチルブチレートを19:1で混合したMOF分散液を上述のように粒子固定層上に塗布したにおい検出素子と、比較例として粒子固定層を形成せずに上記MOF分散液を塗布したにおい検出素子を作製した。さらに、UiO-066とセルロースアセチルブチレートを49:1で混合したMOF分散液を上述のように粒子固定層上に塗布したにおい検出素子と、比較例として粒子固定層を形成せずに上記MOF分散液を塗布したにおい検出素子も作製した。
【0051】
図13はそれぞれのにおい検出素子のCI値及び吸着層の膜厚をプロットした図であり、CI値を棒グラフで示し、膜厚を円図形で示す。同図に示すように、粒子固定層を形成することにより、49:1の場合にCI値が上限値となる膜厚は、19:1の場合にCI値が上限値となる膜厚より大きくなる。したがって、MOF:バインダーにおいてMOF比率を上げることが可能であることが示されている。感応膜におけるMOFの絶対量が増加すると、におい物質の吸着量が増加すると共に、MOFの細孔閉塞に伴う感度低下がバインダー量減少により抑制されるため、におい物質の検出感度向上が期待可能である。
また、バインダーではなく、分散剤としてUiO-66 に高分子イオン性分散剤を100:1で混合した場合も、同様のCI値低減効果がみられた。
【0052】
[実施例4]
上記実施形態に係るにおい検出素子の感応膜をシリコン基板上に成膜した。具体的には、セルロースアセチルブチレート1wt%アセトン溶液をスプレーコーティングによりシリコン基板上に塗布して粒子固定層を形成した後、MOF分散液をスプレーコーティングにより粒子固定層上に塗布して吸着層を形成した。MOFはUiO-66とした。
図14はこの感応膜のSEM(Scanning Electron Microscope:走査型電子顕微鏡)像である。同図に示すように、シリコン基板上にセルロースアセチルブチレートからなる粒子固定層が形成され、粒子固定層上にUiO-66からなる吸着層が形成されている。
【0053】
[実施例5]
上記実施形態に係る圧電振動子の表面形状を観察した。圧電振動子はQCM素子であり、水晶振動子上に金電極が形成されている。
図15は、金電極表面のレーザー顕微鏡像であり、
図16は金電極表面の高さイメージである。
図17は、この圧電振動子の断面のSEM像である。
図17に示すように、水晶振動子の表面は凹凸形状を有する。これは共振周波数調整のため、水晶振動子を研削したことによるものである。金電極は薄いため、
図15及び
図16に示すようにその表面は水晶振動子の表面形状に応じて凹凸形状を有する。この金電極表面に直接多孔質粒子を堆積させ、吸着層を形成させると、凹凸形状のために金電極表面に対する固定が不安定となり、振動エネルギー損失が生じる。これに対し、上記実施形態のように金電極表面に粒子固定層を形成し、その上に吸着層を形成すると、吸着層の多孔質粒子が粒子固定層によって安定して固定され、振動エネルギー損失を抑制することが可能となる。