(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023125996
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/539 20060101AFI20230831BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/511 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/534 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/535 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61F13/539
A61F13/53 100
A61F13/511 200
A61F13/49 315A
A61F13/494 111
A61F13/534 100
A61F13/534 110
A61F13/535 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030402
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金子 由美子
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英聡
(72)【発明者】
【氏名】金田 悠太郎
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA01
3B200BA12
3B200BA16
3B200BB03
3B200BB11
3B200BB16
3B200BB22
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA02
3B200DA13
3B200DA14
3B200DA16
3B200DB01
3B200DB05
3B200DB11
3B200DB12
3B200DB15
3B200DB23
3B200DB26
3B200DC01
3B200DC02
(57)【要約】
【課題】本発明は、悪臭抑制効果を有する物質が広範囲で溶出するのを抑制する吸収性物品を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、液体を吸収する吸収コアと、吸収コアの周囲を覆う、液透過性のコアラップシートを有する吸収体と、吸収体の肌面側に配置された、液透過性を有し、水溶性の酸性化物質を含有する少なくとも1枚の肌面側シートと、を、備え、肌面側シートと、吸収体の結合力は、幅方向の端部よりも幅方向の中央部において弱い、吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、
液体を吸収する吸収コアと、前記吸収コアの周囲を覆う、液透過性のコアラップシートを有する吸収体と、
前記吸収体の肌面側に配置された、液透過性を有し、水溶性の酸性化物質を含有する少なくとも1枚の肌面側シートと、
を、備え、
前記肌面側シートと、前記吸収体の結合力は、前記幅方向の端部よりも前記幅方向の中央部において弱い、
吸収性物品。
【請求項2】
前記肌面側シートは、前記幅方向の中央部では、前記吸収体と接着していない、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記幅方向の中央側に、長手方向に延在する弾性体を有し、前記吸収体の幅方向両端部を覆う液不透過性の一対のサイドシートを有し、
前記肌面側シートは、前記幅方向の両側で、前記一対のサイドシートと接着し、
前記一対のサイドシートの、前記幅方向の中央側は、着用時に前記弾性体の付勢力により着用者の肌面側に向けて立ち上がり、前記肌面側シートを前記幅方向の外側に向けて付勢する、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記コアラップシートは、前記吸収コアの肌面側を覆う上層コアラップシートと、前記吸収コアの側面と非肌面側を覆う下層コアラップシートから構成され、
前記上層コアラップシートは、透水性かつ非吸水性の不織布である、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記下層コアラップシートは、ティッシュペーパーである、
請求項4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収コアは、
少なくとも肌面側に配置された上層吸収マットと、
非肌面側に配置された下層吸収マットと、
を有し、
前記上層吸収マットは、高吸収性重合体であるSAPの粒子を含む、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記下層吸収マットの高吸収性重合体であるSAPの粒子の含有量は、前記上層吸収マットよりも少ない、
請求項6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記上層吸収マットと、前記下層吸収マットとの層間には、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる層が設けられている、
請求項6または7に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記上層吸収マットには、尿道口対応位置を含む上層貫通溝が設けられている、
請求項6~8のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記下層吸収マットには、尿道口対応位置を含む下層貫通溝が設けられている、
請求項9に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記下層貫通溝は、前記上層貫通溝よりも幅狭であり、
前記上層貫通溝と、前記下層貫通溝は、連通している、
請求項10に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収コアの肌面側に悪臭抑制効果を有する物質を配置した吸収性物品が知られている(先行文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収コアの肌面側に悪臭抑制効果を有する物質を配置すると、吸収コアが排出液を吸収して吸収コアを構成する繊維が湿気を帯びることにより、悪臭抑制効果を有する物質が溶出することがある。悪臭抑制効果を有する物質が溶出した場合、その場所は悪臭抑制効果を発揮しなくなる。
【0005】
本発明は、悪臭抑制効果を有する物質が広範囲で溶出するのを抑制する吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、悪臭抑制効果を有する物質を肌面側シートに配置し、肌面側シートが吸収コアから剥離しやすくした。
【0007】
本発明は、具体的には、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、液体を吸収する吸収コアと、前記吸収コアの周囲を覆う、液透過性のコアラップシートを有する吸収体と、前記吸収体の肌面側に配置された、液透過性を有し、水溶性の酸性化物質を含有する少なくとも1枚の肌面側シートと、を、備え、前記肌面側シートと、前記吸収体の結合力は、前記幅方向の端部よりも前記幅方向の中央部において弱い、吸収性物品である。
【0008】
前記肌面側シートは、前記幅方向の中央部では、前記吸収体と接着していなくてよい。
【0009】
前記幅方向の中央側に、長手方向に延在する弾性体を有し、前記吸収体の幅方向両端部を覆う液不透過性の一対のサイドシートを有し、前記肌面側シートは、前記幅方向の両側で、前記一対のサイドシートと接着し、前記一対のサイドシートの、前記幅方向の中央側は、着用時に前記弾性体の付勢力により着用者の肌面側に向けて立ち上がり、前記肌面側シートを前記幅方向の外側に向けて付勢してよい。
【0010】
前記コアラップシートは、前記吸収コアの肌面側を覆う上層コアラップシートと、前記吸収コアの側面と非肌面側を覆う下層コアラップシートから構成され、前記上層コアラップシートは、透水性かつ非吸水性の不織布であってよい。
【0011】
前記下層コアラップシートは、ティッシュペーパーであってよい。
【0012】
前記吸収コアは、少なくとも肌面側に配置された上層吸収マットと、非肌面側に配置さ
れた下層吸収マットと、を有し、前記上層吸収マットは、高吸収性重合体であるSAPの粒子を含んでよい。
【0013】
前記下層吸収マットの高吸収性重合体であるSAPの粒子の含有量は、前記上層吸収マットよりも少なくてよい。
【0014】
前記上層吸収マットと、前記下層吸収マットとの層間には、高吸収性重合体であるSAPの粒子からなる層が設けられていてよい。
【0015】
前記上層吸収マットには、尿道口対応位置を含む上層貫通溝が設けられていてよい。
【0016】
前記下層吸収マットには、尿道口対応位置を含む下層貫通溝が設けられていてよい。
【0017】
前記下層貫通溝は、前記上層貫通溝よりも幅狭であり、前記上層貫通溝と、前記下層貫通溝は、連通していてよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、吸収コアが湿気を帯びても、悪臭抑制効果を有する物質が溶出しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、実施形態に係る吸収パッドの平面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る吸収パッドの分解斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の形態に係る吸収パッドの内部構造を示す図である。
【
図4】
図4は、トップシートに接着される接着剤の塗布配置例を示す図である。
【
図5】
図5は、第1の形態に係る吸収パッドが排出液を吸収した場合の内部構造の変化を示す図である。
【
図6】
図6は、第2の形態に係る吸収パッドの内部構造を示す図である。
【
図7】
図7は、第2の形態に係る吸収パッドが排出液を吸収した場合の内部構造の変化を示す図である。
【
図8】
図8は、第3の形態に係る吸収パッドの内部構造を示す図である。
【
図9】
図9は、第3の形態に係る吸収パッドが排出液を吸収した場合の内部構造の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0021】
<実施形態>
本実施形態では、交換式の吸収パッド(本願でいう「吸収性物品」の一例である)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が連接して位置している。また、吸収パッドが着用者に装着された状態(以下、「装着状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(装着された状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(装着された状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0022】
本実施形態では交換式の吸収パッドを例として用いて発明の内容を説明する。本発明は主に幅方向両側に配置された非透水性のシートを、糸ゴムなどで付勢したもの(立体ギャザー)に関するものであり、立体ギャザーを備えるパンツ型のおむつや、テープ型のおむつについても、当然に適用することができるものである。
【0023】
図1は、実施形態に係る吸収パッドの平面図である。吸収パッド1は、装着状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する股下領域1Bと、股下領域1Bの腹部側に位置し、着用者の前身頃と腰回りに対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの背部側に位置し、着用者の後身頃と腰回りに対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。前身頃領域1F、後身頃領域1R、股下領域1Bには、股下領域1Bを中心に、クロッチ部分が絞られた瓢箪型の吸収体が組み込まれている。前身頃領域1Fと後身頃領域1Rの先、吸収パッドの短手方向と長手方向の吸収体のない部分では、吸収体を覆う全てのシートがホットメルト接着剤等で接着されており、非接着部分からの体液流入を防ぎ、吸収体の位置を規制する。吸収パッド1は、下衣肌着と肌面との間に装着されることにより、着用者の肌に密着する。また、この吸収パッド1をテープ型おむつやパンツ型おむつの内側に装着すれば、吸収パッド1が排出液を吸収するので、例え着用者から排出液が発生したとしても、吸収パッド1のみを交換し、おむつ自体は再利用することができる。
【0024】
また、吸収パッド1には、吸収パッド1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位(クロッチ部分における幅方向端部)に、弾性体2L,2Rが設けられている。弾性体2L,2Rは、吸収パッド1の長手方向に延在する。上記弾性体2L,2Rよりも吸収パッド1の肌面側幅方向内側に延在する一対のサイドシートであるサイドシート8L,8Rの、吸収パッド1の幅方向の中央側の端には、弾性体3BL,3BRが付されている。サイドシート8L,8Rは、着用の際に弾性体3BL,3BRの力により立ち上がり、立体ギャザー3L,3Rとなる。吸収パッド1は、レグギャザーとして機能する弾性体2L,2Rの力により着用者の体形に沿い、弾性体3BL,3BRの力により立ち上がった立体ギャザー3L,3Rにより着用者の肌面に密着するので、着用者から排出される体液は、吸収パッド1から漏出することなく吸収パッド1の吸収体に吸収される。なお、弾性体2L,2Rや弾性体3BL,3BRを構成する弾性部材としては糸ゴムや帯状のゴム等を適宜選択できる。また、弾性体2L,2R,3BL,3BRは、平行する複数本の糸ゴムであってよい。
【0025】
図2は、実施形態に係る吸収パッドの分解斜視図である。吸収パッド1は、立体ギャザー3L,3Rを形成するサイドシート8L,8Rと、トップシート7と、バックシート5と、クロッチ部分が瓢箪型の吸収体6と、弾性体2L,2Rを備えるカバーシート4とを備え、肌面側から非肌面側まで順に積層されている。吸収パッドの前身頃端部と後身頃端部では、吸収体6は存在せず、全てのシートが接着されている。なお、吸収体6の形態は矩形であってもよい。なお、各シートの接着には、ホットメルト接着剤による接着、超音波融着などが含まれる。トップシート7は、本開示における肌面側シートの一例であり、バックシート5は、本開示における非肌面側シートの一例である。
【0026】
カバーシート4は、吸収パッド1の外装面を形成し、吸収パッド1全体の形態を維持しやすくする丈夫なシートである。カバーシート4には、一般的にポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテフタレート等の合成繊維で構成された不織布が用いられる。カバーシート4は、液透過性であってもよく、液不透過性であってもよい。また、液不透過性を有する不織布の複数個所に穿孔して通気性を持たせてもよい。本実施形態ではカバーシート4が存在しているが、後述するバックシート5に形態維持効果を併せ持たせ、カバーシート4を省略することもできる。バックシート5は、液不透過性のシートである。バックシート5は、一例としては、排出液の漏れを抑制するためにポリエチレンフィルム等の
熱可塑性の液不透過性樹脂を材料として形成されたフィルムシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑制するため、透湿性およびガス透過性、すなわち気体透過性を有している。
【0027】
トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、熱可塑性樹脂の繊維を含んで形成されたスパンボンド不織布や、エアスルー不織布等からなる。このトップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。そのため、吸収パッド1が設置された状態において、着用者から放出された体液は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。また、トップシート7は親水性を有していてもよい。なお、吸収パッド1の長手方向と、吸収体6およびトップシート7の長手方向とは、同じである。
【0028】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、被装着者が仰臥位を取っている場合でも、伏臥位を取っている場合でも、排出液はトップシート7を介して吸収体6に接触することになる。
【0029】
サイドシート8L,8Rは、透湿性を備えるが、非透水性の不織布である。前述の通りサイドシート8L,8Rは立体ギャザー3L,3Rとして肌に密着するため、サイドシート8L,8Rに当接した排出物は吸収パッド1の幅方向にはこれ以上漏洩せず、排出物に含まれる水分は吸収体6に順次吸収される。トップシート7は、肌触りが良く、親水性の不織布である。肌に当接して体液を直接受け止め、順次吸収体6に吸収させる役割をする。また、吸収体6が既に吸収した体液の逆流を防ぐ。弾性体2L,2Rは、吸収パッド1の幅方向端部に設けられており、吸収パッド1は弾性体2L,2Rの収縮力により着用者の体形に添うように付勢される。すなわち弾性体2L,2Rはサイドギャザーとして機能する。
【0030】
以下に述べる各形態に係るトップシート7には、水溶性の酸性化物質を、着用者の肌に刺激を与えない程度に含有している。肌面は弱酸性であり、一定程度の酸性化物質が当接しても影響を受けることはない。このトップシート7に尿等の排出液が流入すると、トップシート7が含有する酸性化物質が排出液中に溶出し、吸収体6に流入する。
【0031】
吸収パッド1に排出液が放出されてから時間が経過すると、排出液に含まれる微生物の分泌する酵素などの働きにより、排出液、特に尿に含まれる尿素に起因するアンモニアガスが発生することがある。アンモニアガスは気体のため、バックシート5を容易に通過し、吸収パッド1のカバーシート4から周囲の環境に放出される。排出液からアンモニアガスが発生すると、着用者の周囲には所謂尿臭が発生し、周囲に不快感を与えることがある。排出液中にトップシート7由来の酸性化物質が溶存していると、アンモニアは当該酸性化物質との中和反応によりアンモニウム塩となる。このため、アンモニアガスの発生は抑制される。このため、吸収パッド1において、バックシート5に防水透湿素材を設けた場合でも、アンモニアに起因する不快臭を抑制でき、着用感の低下を防ぐことができる。
【0032】
また、アンモニアが排出液に溶けだした場合、排出液はアルカリ化する。アルカリ化した水溶液が逆戻りすると、アンモニアに起因する尿臭が発生するほか、着用者の肌面に肌荒れを引き起こすことがある。吸収パッド1の尿道口当接位置は概ね決まっているため、尿道口当接位置においてトップシート7が含有する水溶性の酸性化物質は容易に溶け切る。尿道口は大腿部に守られているため、通常状態では、逆戻りを引き起こすような強い圧
力はかからない。吸収パッド1が強い圧力を受けて逆戻りが発生する虞があるのは、通常は着用者の臀部当接位置である。すなわち、着用開始から時間が経過しても、臀部当接位置において、トップシート7に水溶性の酸性化物質が存在する吸収パッド1を提供できれば、例えアルカリ性の排出液の逆戻りが発生したとしても、当該アルカリ性の排出液は、トップシート7を通過する際に酸性化物質により中和されて中性に近づくので、臭気の発生や皮膚刺激を軽減できる。
【0033】
ここで、本開示に係る吸収体6は、排出液を迅速に吸収するため、排出液をなるべく広範囲に拡散するように設計されている。後述するが、吸収体6はパルプ繊維を含む。排出液が吸収体6の広範囲で吸収され、吸収体6のパルプ繊維が広範囲で湿っている状態でトップシート7と当接すると、トップシート7が含有する水溶性の酸性化物質が湿気により溶出してしまい、逆戻りが発生した際に、アルカリ性の排出液を中和できない問題が発生し得る。そこで、本開示に係る吸収性物品では、排出液を吸収した吸収体6とトップシート7とが接触する機会を低減し、逆戻りが発生した際にアルカリ化した排出液を、トップシート7が含む水溶性の酸性化物質が中和しやすいように構成されている。
【0034】
<第1の形態>
図3は、第1の形態に係る吸収パッドの内部構造を示す図である。具体的には、
図1の吸収パッド1における、A-A線の断面図である。吸収パッド1は、吸収体6を、吸収体の肌面側に設けられたトップシート7と、吸収体6の側面部に設けられたサイドシート8L,8Rと、吸収体6の非肌面側に設けられたバックシート5で包み込んだ形態になっている。トップシート7とサイドシート8L,8Rは、トップシート7の肌面側両端部で接合されており、サイドシート8L,8Rとバックシート5は、非肌面側で接合されている。このように、吸収体6を包み込む各シート同士が接合されて袋状の空間を形成しているので、吸収体6は当該袋状の空間から逸脱しない。トップシート7は、水溶性の酸性化物質を含んでおり、当該水溶性の酸性化物質は排出液がトップシート7を通過する際に溶け出して吸収体6に達し、吸収体6が保持している排出液が時間の経過とともにアルカリ化するのを抑制する。
【0035】
股下領域1Bは、着用者の両足に挟まれる状態になるので、幅方向内側に向けて圧縮圧力がかかる。一方で、前身頃領域1Fや後身頃領域1Rにおいては、着用者の体重がかかることで、吸収体6の厚み方向への圧力がかかる。これらの圧力に対応するため、吸収体6の股下領域1Bには括れが設けられている。更に、股下領域1Bの吸収体6を高目付けとする。これにより、股下領域1Bにおいて吸収体6の幅方向内側への型崩れを防止する。また、前身頃領域1Fや後身頃領域1Rにおいては、吸収体6の幅を広げることで体重がかかる面積を増やして厚み方向への型崩れを防止する。平面視した場合、吸収体6を略砂時計型とすることが好適である。
【0036】
吸収体6は、一例としては、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6の厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0037】
本開示におけるSAP粒子は、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分と
し、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0038】
本形態に係る吸収コア6Cは、複数の吸収マットを積層して形成されている。具体的には、吸収コア6Cは、着用者の肌面側に設けられた上層吸収マット6aと、着用者の非肌面側に設けられた下層吸収マット6bとを備えている。上層吸収マット6aは、パルプ繊維とSAP粒子を混合して形成されている。トップシート7方向から上層吸収マット6aに排出液が流入すると、排出液は上層吸収マット6aに含まれるSAP粒子に吸水され、排出液を固定することができる。一方、下層吸収マット6bは、上層吸収マット6aと比較すると、少量のSAP粒子しか含有していない。一例としては、下層吸収マット6bのパルプ含有量は80%以上である。また、下層吸収マット6bの設計上、SAPの粒子を混入させないようにしてもよい。SAPの粒子を含まない場合、下層吸収マット6bは、パルプ繊維を成形して形成されている。
【0039】
上層吸収マット6aは吸収体6の長手方向全領域において、下層吸収マット6b以上の横幅を有している。例えば、上層吸収マット6aを砂時計型とし、下層吸収マット6bを略長方形状としてもよい。吸収体6において、排出液が最も流入する箇所は幅方向中央部である。この箇所において吸収コア6を多層構造とすることで、排出液を効率よく吸収可能となる。
【0040】
SAP粒子は、排出液を吸水して固定することができるが、吸水には一定の時間がかかる。下層吸収マット6bは、上層吸収マット6aが吸水できなかった排出液を一時的に保持しながら拡散し、より広範囲の上層吸収マット6aで排出液を吸収させる役割を果たす。SAPの粒子が吸水して膨張すると、排出液の流路を阻害する、所謂ゲルブロッキング現象が発生することがあるが、下層吸収マット6bが含有するSAP粒子の量は少量であり、排出液は、下層吸収マット6bの内部を比較的容易に移動することができる。このため、下層吸収マット6bは、上層吸収マット6aよりも液体拡散性が高く、排出液の拡散層としての機能を有している。
図4に示したように、下層吸収マット6bの幅よりも上層吸収マット6aの幅が広い場合には、吸収マットの長手方向に延在する、上層吸収マット6aが延在し、下層吸収マット6bが延在しない空間が形成され、当該空間は長手方向に広がる排出液の流路としても機能する。
【0041】
吸収コア6Cは、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bとの間に配置されたSAP層11L,11Rを有している。SAP層11L,11Rは、SAP粒子が複数集まって形成されている。
図3に示すように、吸収コア6Cの左方にはSAP層11Lが配置され、吸収コア6Cの右方にはSAP層11Rが配置されている。SAP層11L,11Rは、平面視において、長方形状に形成されていてもよいし、楕円形状またはその他の多角形状に形成されていてもよい。吸収コア6Cは、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bとの間にSAP層11L,11Rを設けることにより、全体として排出液の吸収量を増加させることができる。この他、SAP粒子を上層吸収マット6aと下層吸収マット6bの層間の幅方向中央部にも散布して、SAP層11とすることも可能である。
【0042】
SAP層11L、11Rは、一例としては、吸収コア6Cの製造工程上、下層吸収マット6b上にSAPの粒子を散布することにより形成される。また、SAP層11L、11Rは、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bとの間に挟持されている。このため、着用者の動作により吸収パッド1が動いた場合でも、SAP層11L,11Rに含まれるSAP粒子の移動は抑制される。なお、下層吸収マット6bの表面に接着剤を塗布し、SAP粒子を接着してもよい。
【0043】
コアラップシート6Wは、薄い液透過性のシートであり、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで包むことにより、上述の吸収コア6CのSAPが他の構造に混入しにくくなる。また、吸収コア6Cの型崩れが抑制される。コアラップシート6Wは、不織布またはパルプ繊維で形成することができ、パルプ繊維の一例としてはティッシュペーパーを用いることができる。なお、吸収体6はバックシート5とトップシート7に包まれており、これらのシートによっても型崩れを抑制できるため、コアラップシート6Wを設けない形態としてもよい。なお、
図3に示す形態では、コアラップシート6Wは、吸収コア6Cの肌面側であるトップシート7側を覆う上層コアラップシート6Waと、吸収コア6Cの非肌面側であるバックシート5側と、吸収コア6Cの側面側を覆う下層コアラップシート6Wbの2枚のシートから構成されている。上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、吸収コア6Cの肌面側の幅方向両端部において積層し、互いに接着されている。このため、吸収体6の肌面側は上層コアラップシート6Waから構成され、吸収体6の側面側と非肌面側は、下層コアラップシート6Wbから構成されている。
【0044】
下層コアラップシート6Wbと、バックシート5は、吸収パッド1の長手方向に略線状に塗布された、複数のホットメルト等の接着剤HMで接着され、接着領域を形成している。接着剤HMは幅方向から見ると間欠的に塗布されて互いに離間した複数の接着部を構成しており、接着部の合間には、長手方向から見ると略線状に、接着剤HMが塗布されていない非接着領域である非接着部が形成されている。下層コアラップシート6Wbとバックシート5の間に進入した排出液は、当該非接着領域で保持される。
【0045】
コアラップシートを2枚のシートで構成する場合、上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、別の素材で構成されていてよい。例えば、吸収コア6Cの肌面側を覆う上層コアラップシート6Waを透水性が高く、かつ非吸水性の不織布とし、吸収コア6Cの非肌面側と側面部を覆う下層コアラップシート6Wbを、透水性は低いものの吸水性を有するティッシュペーパーとすることができる。ティッシュペーパーは不織布より液体を透過しにくい。この構成により、吸収体6の側面部に達した排出液は、吸収体6の側面を伝って、吸収体6の内部を通過してくる排出液よりも早く下層コアラップシート6Wbとバックシート5との隙間に到達し、当該隙間に形成されている非接着領域に入り込む。
【0046】
サイドシート8L,8Rの幅方向内側に形成されている立体ギャザー3L,3Rは、ホットメルト等の接着剤HMにより、その立ち上がり部分でトップシート7と接着されている。立体ギャザー3L,3Rは、弾性体3BL,3BRの付勢力によって着用時に立ち上がる。トップシート7の幅方向端部は、立体ギャザー3L,3Rが立ち上がることにより、接着剤HMを介して幅方向外側に付勢される。
【0047】
なお、幅方向の中央側では、トップシート7と吸収体6は非接着、または立体ギャザー3L,3Rが立ち上がった場合に容易に剥離するように接着または接合されている。立体ギャザー3L,3Rが立ち上がるまでの間トップシート7と吸収体6が接着または接合されていれば、吸収パッドの製造時、流通時においてトップシート7に予期せぬ折り目がついてしまい、吸収パッドの性能が低下するのを防ぐことができる。また、吸収体を瓢箪型として股下部の位置を介助者、着用者が把握できるようにする場合、装着前に股下部を容易に視認でき、適切な状態で装着できるように、トップシート7と吸収体6が接着または接合していることが望ましい。また、吸収体6の尿道口対応位置にスリットを設けたり、色付けを行ったりして、介助者、着用者が尿道口当接位置に正しく尿道口が当たるように着用できるようにする場合にも、これらの目印がトップシート7上の肌面側から視認でき、適切な状態で装着できるように、トップシート7と吸収体6が接着または接合していることが望ましいと言える。
【0048】
図4は、トップシートに接着される接着剤の塗布配置例を示す図である。トップシート7または上層コアラップシート6Waの肌面側には、一例としてはホットメルト等の接着剤HMが長手方向に平行に塗布され、トップシート7と上層コアラップシート6Waとを接着している。接着剤HMの塗布間隔は、幅方向両端部において密であり、幅方向中央部において疎になっている。このため、トップシート7は、立体ギャザー3L,3Rが立ち上がることにより付勢され、幅方向中央部において吸収体6から比較的容易に剥離するようになっている。なお、接着剤HMの塗布幅を幅方向端部側で太く、幅方向中央部側で細くすることでも、同様の効果を得ることができる。また、接着剤HMの坪量を幅方向中央部において少なくすることでも、同様の効果を得ることができる。また、接着剤HMの種類を幅方向端部と幅方向中央において変更し、幅方向中央部において、より接着力の弱い接着剤を用いてもよい。なお、トップシート7の幅方向中央部において接着剤HMが剥離しやすくするため、これらの接着方法を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
また、トップシート7と吸収体6に熱圧着等を行い、トップシート7を構成する繊維が上層コアラップシート6Waと係合するようにしてもよい。吸収パッド装着時に立体ギャザー3L,3Rが立ち上がってトップシート7に付勢力が働くと係合は容易に解除され、トップシート7は吸収体6から剥離する。
【0050】
更に、上層コアラップシート6Waの幅方向中央部と幅方向端部で素材を変更し、トップシート7との接着力が幅方向中央部より幅方向端部において強く働くようにしてよい。このような構成は、例えば、比較的トップシート7と接着しにくい上層コアラップシート6Waを吸収コア6Cの肌面側に積層した後、比較的トップシート7と接着しやすい下層コアラップシート6Wbを、吸収コア6Cおよび上層コアラップシート6Waの幅方向端部を巻き込むように配置することで実現できる。立体ギャザー3L,3Rが立ち上がってトップシート7に付勢力が働くと、上層コアラップシート6Wa部分がトップシート7から剥離し、吸収体6の肌面側の幅方向端部に延在している下層コアラップシート6Wb部分のみがトップシート7と接着したままとなる。
【0051】
加えて、幅方向中央部においてトップシート7の厚みを太くすると共に、肌面側中央部において吸収体6の凹凸を多く設けることで、トップシート7と吸収体6との接触面積を低下させてもよい。立体ギャザー3L,3Rが立ち上がってトップシート7に付勢力が架った場合に、接触面積が少ないトップシート7の幅方向中央部は、吸収体6からに容易に剥離する。
【0052】
トップシート7の幅方向中央部において、吸収体6との結合力を弱くし、幅方向中央部で吸収体6から剥離しやすくするために、上述の方法を組み合わせて用いてよい。また、当該機能を実現するためにその他の手法を使用してもよい。
【0053】
図5は、第1の形態に係る吸収パッドが排出液を吸収した場合の内部構造の変化を示す図である。排出液を吸収した吸収体6の質量は大きくなり、重力Gに従って垂れ下がりやすくなる。一方、接着剤HMにより接合された立体ギャザー3L,3Rが立ち上がることにより働く付勢力により、トップシート7には伸張状態が維持され、吸収体6に追従して垂れ下がらない。吸収体6が垂れ下がり、トップシート7が伸張していることにより、幅方向中央部において吸収体6とトップシート7は剥離し、剥離部分には空間が生じる。吸収体6の肌面側に設けられる上層コアラップシート6Waは透水性に優れるが非吸水性であるため、長時間水分を保持せずに乾いた状態を維持している。このため、吸収体6の湿った面がトップシート7と当接するのを防ぐことができる。また、仮に吸収体6が排出液を吸収し、吸収体6の肌側広範囲で湿っていても、吸収体6はトップシート7とは当接しないため、トップシート7が含む水溶性の酸性化物質の溶出が抑制される。このため、ト
ップシート7の尿道口当接位置以外の箇所には、水溶性の酸性化物質が十分に残存しており、逆戻りが発生した際、トップシート7はアルカリ化した排出液をより効果的に中和可能である。
【0054】
<第2の形態>
図6は、第2の形態に係る吸収パッドの内部構造を示す図である。
図6は、具体的には、
図3と同様に、
図1の吸収パッド1の、A-A線の断面図である。第2の形態では、吸収コア6Cは、上層吸収マット6aを厚み方向に貫通して形成される貫通溝である上層貫通溝を備えている。上層貫通溝は、上層吸収マット6aの幅方向略中央に形成されており、少なくとも股下領域1Bにおいて、吸収パッド1の長手方向に延在している。上層貫通溝の延在領域には、少なくとも尿道口当接位置に対応する尿道口対応位置が含まれる。一例としては、上層貫通溝の前身頃領域1F側の端部は、前身頃領域1Fの中程まで延在しており、後身頃領域1R側の端部は、後身頃領域1Rを長手方向に三等分した場合に股下領域1Bと隣接する領域まで延在している。上層吸収マット6aは、
図4に示す股下領域1Bでは、上記上層貫通溝により、上層吸収マット6aL,6aRに分割されている。上層吸収マット6aL,6aRと下層吸収マット6bの層間に設けられるSAP層11L,11Rは、上層貫通溝に隣接する位置に配置されている。
【0055】
人体の排出孔は、正中線に沿って存在している。このため、トップシート7の肌面側に流入した排出液は、トップシート7が含有する水溶性の酸性化物質を溶かしながら上層吸収マット6aの上層貫通溝に容易に落ち込み、下層吸収マット6bの広範囲で保持され、SAP粒子を含む上層吸収マット6aL,6aRおよびSAP層11L,11Rにより吸収される。上層貫通溝を設けることにより、酸性化物質が溶け込んだ排出液は、吸収コア6Cのより広範囲で吸収される。また、SAP層11L,11Rが上層貫通溝に隣接する箇所に設置されていることにより、SAP層11L,11Rからこぼれて上層貫通溝に落ち込んだSAP粒子は、最初に流入した排出液を吸収して酸性層を形成し、次いで流入した排出液に更に酸性化物質を分散させ、排出液のアルカリ化を広範囲で防止する。その他は、第1の形態と同様であるため、説明を省略する。
【0056】
図7は、第2の形態に係る吸収パッドが排出液を吸収した場合の内部構造の変化を示す図である。第1の形態と同様に、出液を吸収した吸収体6の質量は大きくなる。また、上層吸収マット6aに貫通溝が形成されていることにより、排出液は貫通溝を伝って長手方向に移動し、吸収体6のより広範囲で吸収されるため、吸収体6の質量が大きくなる範囲は尿道口当接位置に対応する尿道口対応位置付近のみならず、臀部当接位置に対応する臀部対応位置付近にも広がる。このため、吸収体6はその広範囲において重力Gに従って垂れ下がりやすくなる。一方、接着剤HMにより接合された立体ギャザー3L,3Rが立ち上がることにより働く付勢力により、トップシート7には伸張状態が維持され、吸収体6に追従して垂れ下がらない。このため、幅方向中央部において吸収体6とトップシート7は剥離し、剥離部分にはより大きな空間が生じる。第2の形態では、排出液を吸収した状態で、吸収体6とトップシート7との間に、より大きな空間を生じることになる。
【0057】
第2の形態では、上層吸収マット6aに貫通溝が存在していることにより、排出液が吸収されている範囲が着用者の臀部にまで到達することがある。臀部には大きな体重がかかることがあるため、体位の変化により逆戻りが生じやすくなるが、圧力がかかっていない状態では、立体ギャザー3L,3Rが立ち上がることにより働く付勢力により、トップシート7と吸収体6との間は空間が生じている。この空間により、吸収体6が排出液を吸収し、吸収体6の肌側のパルプ繊維が広範囲で湿っていても、吸収体6はトップシート7と当接しないため、トップシート7が含む水溶性の酸性化物質の溶出が抑制される。また、吸収体6の肌面側に設けられる上層コアラップシート6Waは透水性に優れるが非吸水性であるため、長時間水分を保持せずに乾いた状態を維持している。このため、この面でも
、吸収体6の湿った面がトップシート7と当接するのを防ぐことができる。このような構成により、逆戻りが発生した場合にも、トップシート7には水溶性の酸性化物質が十分に残存しており、アルカリ化した排出液をより効果的に中和可能となる。
【0058】
<第3の形態>
図8は、第3の形態に係る吸収パッドの内部構造を示す図である。第3の形態は、第2の形態の上層貫通溝に加えて、下層吸収マット6bを厚み方向に貫通して形成される貫通溝である下層貫通溝を備えている。下層吸収マット6bは、
図1に示す股下領域1Bでは、上記下層貫通溝により、下層吸収マット6bL,6bRに分割されている。下層貫通溝は、上層貫通溝に重畳して、上層貫通溝よりも狭い幅で形成されている。換言すれば、下層貫通溝は、上層貫通溝よりも幅狭である。上層吸収マット6aに設けられた上層貫通溝と、下層吸収マット6bに設けられた下層貫通溝により、吸収コア6Cには、略逆台形状の貫通溝が設けられている。換言すれば、上層貫通溝と下層貫通溝は、肌面側から非肌面側に連通している。貫通溝を略逆台形状とすることにより、貫通溝に流入した排出液が接触する上層吸収マット6a,下層吸収マット6bにより形成される壁面の面積を増加させることができ、排出液の吸収効果をより高めることができる。このような構成により、下層貫通溝の延在領域には、上層貫通溝と同様に、少なくとも尿道口当接位置に対応する尿道口対応位置が含まれる。
【0059】
第3の形態では、上層吸収マット6aに加えて下層吸収マット6bにも貫通溝が設けられる。これにより、層間に設けられたSAP層11L,11RからこぼれたSAP粒子は下層貫通溝に落ち込んで、吸収コア6Cと下層コアラップシート6Wbとの間に存在するようになる。この状態で排出液が吸収体6に流入すると、酸性化物質を含む排出液は吸収コア6Cと下層コアラップシート6Wbとの間に入り込み、酸化層を形成する。特に、下層貫通溝に存在するSAP粒子には排出液が直接流入するため、酸性化物質を含む排出液を効果的に吸収することができ、下層コアラップシート6Wbとの境界面である下層貫通溝の底面に酸性層を形成できる。また、次いで流入した排出液に更に酸性化物質を分散させ、排出液のアルカリ化を広範囲で防止する。
【0060】
第3の形態では、貫通溝が肌面側から非肌面側に連通しているため、排出液の大半は一旦下層吸収マット6bに保持される。ここで、下層吸収マット6bはSAP粒子を殆ど含んでいないため、排出液は下層吸収マット6bの内部を拡散しながら徐々に上層吸収マット6aに移動し、上層吸収マット6aが含むSAP粒子に吸収される。この状態で吸収体6に強い圧力がかかっても、SAP粒子が吸収していない排出液は主に吸収体6の非肌面側に存在しているため、逆戻りは抑制され、トップシート7には逆戻りした排出液が接触しにくくなる。このため、トップシート7が保持する水溶性の酸性化物質は保持される。
【0061】
また、この形態では、トップシート7から溶出した酸性化物質は、吸収体6とバックシート5の間のみならず、吸収コア6Cと下層コアラップシート6Wbとの間にも酸性層を形成する。このため、吸収コア6Cが保持する排出液に含まれる尿素が分解されて発生したアンモニアガスは、多重に形成された酸性層により、バックシート5を通過する前に中和され、外部に不快臭が放出されるのを抑制する。
【0062】
図9は、第3の形態に係る吸収パッドが排出液を吸収した場合の内部構造の変化を示す図である。第2の形態と同様に、出液を吸収した吸収体6の質量は大きくなる。また、上層吸収マット6aのみならず下層吸収マット6bにも貫通溝が形成され、両貫通溝は連通していることにより、排出液は吸収コア6Cの非肌面側にまで落ち込んで長手方向に移動し、上層吸収マット6aのみならず下層吸収マット6bの広範囲で吸収される。このため、吸収体6はその広範囲において重力Gに従って垂れ下がりやすくなる。一方、接着剤HMにより接合された立体ギャザー3L,3Rが立ち上がることにより働く付勢力により、
トップシート7には伸張状態が維持され、吸収体6に追従して垂れ下がらない。このため、幅方向中央部において吸収体6とトップシート7は剥離し、剥離部分にはより更に大きな空間が生じる。第3の形態では、排出液を吸収した状態で、吸収体6とトップシート7との間のより広範囲において空間を生じることになる。
【0063】
上述の通り、上層貫通溝と下層貫通溝によって形成される、吸収コア6Cを連通する貫通溝は、略逆台形状となっている。このため、排出液を吸収することにより吸収コア6Cが垂れ下がって非肌面側に屈曲しても、貫通溝は塞がれてしまうことがない。このため、この状態で吸収パッド1に更なる排出液が流入した場合でも、排出液を貫通溝に流入させることができ、広範囲で迅速に吸収することが可能になる。
【0064】
第3の形態では、上層吸収マット6aと下層吸収マット6bを連通するに貫通溝が存在していることにより、SAP粒子に吸収されていない排出液は主に下層吸収マット6bに保持されている。このため、吸収体6に強い圧力がかかっても、上層吸収マット6aの肌面側にまで排出液が染み出してくるのを抑制できる。また、圧力がかかっていない状態では、立体ギャザー3L,3Rが立ち上がることにより働く付勢力により、トップシート7と吸収体6との間は空間が生じている。よって、もし吸収体6が排出液を吸収し、吸収体6の肌面側のパルプ繊維が広範囲で湿っていても、吸収体6はトップシート7とは当接しないため、トップシート7が含む水溶性の酸性化物質の溶出が抑制される。また、吸収体6の肌面側に設けられる上層コアラップシート6Waは透水性に優れるが非吸水性であるため、長時間水分を保持せずに乾いた状態を維持している。このため、この面でも、吸収体6の湿った面がトップシート7と当接するのを防ぐことができる。このような構成により、逆戻りが発生した際、トップシート7には水溶性の酸性化物質が十分に残存しており、アルカリ化した排出液をより効果的に中和可能となる。
【0065】
なお、トップシート7は複数枚数で構成されていてよく、そのいずれかまたは両方に水溶性の酸性化物質が含まれていてもよい。また、トップシート7のみならず、上層コアラップシート6Waに水溶性の酸性化物質が含まれる構成としてもよい。水溶性の酸性化物質が肌面側の複数のシートに含まれる構成とすれば、逆戻りが起きた際にアルカリ化した排出液をより効果的に中和可能であり、尿臭や着用者の肌荒れを防ぐことができる。
【0066】
更に、貫通溝は、吸収マットを貫通しない溝であってもよい。貫通しない溝を形成するだけでも、吸収マットの肌面側に排出液の流路を設けることは可能となる。
【0067】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では、吸収パッドを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明は、テープ型使い捨ておむつや、パンツ型使い捨ておむつ等の吸収性物品にも適用可能である。
【0068】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・吸収パッド
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L,2R・・弾性体
3BL,3BR・・弾性体
3L,3R・・立体ギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6・・吸収体
6C・・吸収コア
6a,6aL,6aR・・上層吸収マット
6b,6bL,6bR・・下層吸収マット
6W・・コアラップシート
6Wa・・上層コアラップシート
6Wb・・下層コアラップシート
7・・トップシート
8R,8L・・サイドシート
HM・・接着剤
11,11C,11L,11R・・SAP層