(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126001
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/534 20060101AFI20230831BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/51 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/49 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/494 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230831BHJP
A61F 13/536 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61F13/534 110
A61F13/53 100
A61F13/53 300
A61F13/51
A61F13/49 315Z
A61F13/494 111
A61F13/15 210
A61F13/536 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030413
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲
(72)【発明者】
【氏名】黒原 健志
(72)【発明者】
【氏名】木下 葵子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA12
3B200BB03
3B200BB11
3B200BB17
3B200CA08
3B200DA02
3B200DA13
3B200DA21
3B200DB01
3B200DB02
3B200DB05
3B200DB17
3B200DB19
(57)【要約】
【課題】吸収体の長手方向への屈曲を防ぐことで液体の漏出を抑制する技術を提供する。
【解決手段】液体を吸収する略矩形の吸収体を備え、吸収体は、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、吸収コアの肌面側を覆う上層コアラップシートと、吸収コアの非肌面側および側面側を覆う下層コアラップシートと、を有し、上層コアラップシートの非肌面側には吸収コアを形成する短繊維とSAPの粒子が接着されて肌面側構造を形成し、下層コアラップシートの肌面側には吸収コアを形成する短繊維とSAPの粒子が接着されて非肌面側構造を形成し、肌面側構造と、非肌面側構造にも属さない短繊維は、短繊維のうち5%重量以下であり、吸収コアの肌面側構造の全領域において、短繊維の密度は均一であり、SAPの粒子の密度も均一である、吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、
着用状態において着用者の腹部側の腰回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の腰回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、
液体を吸収する略矩形の吸収体を備え、
前記吸収体は、
高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、
前記吸収コアの肌面側を覆う上層コアラップシートと、
前記吸収コアの非肌面側および側面側を覆う下層コアラップシートと、
を有し、
前記上層コアラップシートの非肌面側には前記吸収コアを形成する前記短繊維と前記SAPの粒子が接着されて肌面側構造を形成し、
前記下層コアラップシートの肌面側には前記吸収コアを形成する前記短繊維と前記SAPの粒子が接着されて非肌面側構造を形成し、
前記肌面側構造と、前記非肌面側構造にも属さない前記短繊維は、前記短繊維のうち5%重量以下であり、
前記吸収コアの肌面側構造の全領域において、前記短繊維の密度は均一であり、前記SAPの粒子の密度も均一である、
吸収性物品。
【請求項2】
前記長手方向に延在し、前記幅方向の中心よりも外側に配置された左右一対の防漏シートであって、前記長手方向に延在する第1弾性部材を有する防漏シートを備え、
前記防漏シートは、着用時に前記第1弾性部材の付勢力により着用者の肌面側に向けて立ち上がって立体ギャザーを形成する、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体よりも非肌面側に配置されたカバーシートを備え、
前記カバーシートは、幅方向端部に配置され、前記長手方向に延在する第2弾性部材を有し、
前記カバーシートの幅方向端部は、前記第2弾性部材によって収縮し、前記着用者の大腿部に密着する、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記カバーシートは、前記吸収体と重畳する位置に配置され、前記長手方向に延在する第3弾性部材を有し、
前記カバーシートは、前記第3弾性部材の弾性力によって前記着用者の股下に沿って屈曲する、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
包装状態において、前記吸収体を通る折り目は1箇所のみである、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記SAPの粒子は、破砕型である、
請求項1~5のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記SAPの粒子のうちの全部または一部は、上層コアラップシートまたは下層コアラップシートに食い込んでいる、
請求項1~6のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記肌面側構造を形成する前記短繊維の坪量は、5g/m2以上、60g/m2以下であり、
前記肌面側構造を形成する前記SAPの粒子の坪量は、5g/m2以上、100g/m2以下である、
請求項1~7のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
下層コアラップシートに接着されて非肌面側構造を形成しているSAP粒子の坪量は、10g/m2以上である、
請求項1~8のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
下層コアラップシートに接着されて非肌面側構造を形成している短繊維の坪量は、10g/m2以上である、
請求項1~9のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記肌面側構造と前記非肌面側構造の間には、どちらの構造にも属さないSAPの粒子が配置されることがあり、
配置される場合のSAPの粒子の坪量は、150g/m2以下である、
請求項1~10のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記吸収体の肌面側は、平板状である。
請求項1~11のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記吸収体の前記股下領域の肌面側には、圧搾溝が設けられている、
請求項1~12のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記圧搾溝は、前記股下領域を中心として前記前身頃領域と前記後身頃領域に向かって、長手方向に延在している、
請求項13に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記圧搾溝は、幅方向に一対設けられている、
請求項13または14に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつ等の吸収性物品が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品の一例であるおむつは、液体を保持して吸収する吸収体と、例えば、立体ギャザー等の弾性部材を有するシートを備えている。弾性部材の収縮力が吸収体に伝わって、吸収体が長手方向に折れ曲がることがある。吸収体が折れ曲がった状態でおむつを装着すると、立体ギャザーが適切に立ち上がらず、液体がおむつの外部に漏出することがある。
【0005】
本発明は、吸収体の長手方向への屈曲を防ぐことで液体の漏出を抑制する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、吸収体を略矩形とし、吸収コアが含む短繊維の殆どをコアラップシートに接着した。
【0007】
本発明は、具体的には、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有し、着用状態において着用者の腹部側の腰回りに位置する前身頃領域、股下に位置する股下領域、及び背部側の腰回りに位置する後身頃領域が前記長手方向にこの順に設けられた吸収性物品であって、液体を吸収する略矩形の吸収体を備え、前記吸収体は、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの肌面側を覆う上層コアラップシートと、前記吸収コアの非肌面側および側面側を覆う下層コアラップシートと、を有し、前記上層コアラップシートの非肌面側には前記吸収コアを形成する前記短繊維と前記SAPの粒子が接着されて肌面側構造を形成し、前記下層コアラップシートの肌面側には前記吸収コアを形成する前記短繊維と前記SAPの粒子が接着されて非肌面側構造を形成し、前記肌面側構造と、前記非肌面側構造にも属さない前記短繊維は、前記短繊維のうち5%重量以下であり、前記吸収コアの肌面側構造の全領域において、前記短繊維の密度は均一であり、前記SAPの粒子の密度も均一である、吸収性物品である。
【0008】
前記長手方向に延在し、前記幅方向の中心よりも外側に配置された左右一対の防漏シートであって、前記長手方向に延在する第1弾性部材を有する防漏シートを備え、前記防漏シートは、着用時に前記第1弾性部材の付勢力により着用者の肌面側に向けて立ち上がって立体ギャザーを形成してよい。
【0009】
前記吸収体よりも非肌面側に配置されたカバーシートを備え、前記カバーシートは、幅方向端部に配置され、前記長手方向に延在する第2弾性部材を有し、前記カバーシートの幅方向端部は、前記第2弾性部材によって収縮し、前記着用者の大腿部に密着してよい。
【0010】
前記カバーシートは、前記吸収体と重畳する位置に配置され、前記長手方向に延在する第3弾性部材を有し、前記カバーシートは、前記第3弾性部材の弾性力によって前記着用者の股下に沿って屈曲してよい。
【0011】
包装状態において、前記吸収体を通る折り目は1箇所のみである、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0012】
前記SAPの粒子のうちの全部または一部は、上層コアラップシートまたは下層コアラップシートに食い込んでいてよい。
【0013】
前記SAPの粒子は、破砕型であってよい。
【0014】
前記肌面側構造を形成する前記短繊維の坪量は、5g/m2以上、60g/m2以下であり、前記肌面側構造を形成する前記SAPの粒子の坪量は、5g/m2以上、100g/m2以下であってよい。
【0015】
下層コアラップシートに接着されて非肌面側構造を形成しているSAP粒子の坪量は、10g/m2以上であってよい。
【0016】
下層コアラップシートに接着されて非肌面側構造を形成している短繊維の坪量は、10g/m2以上であってよい。
【0017】
前記肌面側構造と前記非肌面側構造の間には、どちらの構造にも属さないSAPの粒子が配置されることがあり、配置される場合のSAPの粒子の坪量は、150g/m2以下であってよい。
【0018】
前記吸収体の肌面側は、平板状であってよい。
【0019】
前記吸収体の前記股下領域の肌面側には、圧搾溝が設けられていてよい。
【0020】
前記圧搾溝は、前記股下領域を中心として前記前身頃領域と前記後身頃領域に向かって、長手方向に延在していてよい。
【0021】
前記圧搾溝は、幅方向に一対設けられていてよい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、長手方向に屈曲しにくい吸収体を有する吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。
【
図3】
図3は、非着用状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
【
図4】
図4は、伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
【
図6】
図6は、吸収コアと接着したコアラップシートの顕微鏡写真である。
【
図7】
図7は、吸収コアの肌面側構造と非肌面側構造とを分離した図である。
【
図8】
図8は、従来品との吸収体の折れ曲がりを比較した図である。
【
図9】
図9は、第2の形態に係る吸収体を示す図である。
【
図11】
図11は、第2の形態と第3の実施形態に係る吸収体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0025】
<実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部側の腰回りに対向して配置される前身頃と背部側の腰回りに対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に装着された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0026】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有している。おむつ1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0027】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く部位に、非透水性のレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に非透水性の立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0028】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、
図3は、非着用状態におけるおむつ1を、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図4は、伸長した状態のおむつ1を肌面側から見た平面図である。おむつ1は、着用状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成す
る。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する部位(
図4に示す脚周り領域10L,10R)に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0029】
そして、おむつ1は、カバーシート4の肌面側において順に積層されるバックシート5(非肌面側シート)、吸収体6、トップシート7(本願でいう「肌面側シート」の一例)を有する。バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも略矩形(略長方形)の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために液不透過性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、吸収体6の吸水面を被覆するように着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。このトップシート7は、その一部又は全部が液透過性を有しており、本開示における透水性のシートの一例である。おむつ1の着用状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通って吸収体6に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。また、吸収体6は、股下領域1Bを含んで配置されている。
【0030】
バックシート5、吸収体6、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7を介して吸収体6に接触することになる。なお、トップシート7と吸収体6の間には、本開示における透水性のシートの一例である図示しないセカンドシートが更に配置されていてよい。なお、吸収体6の非肌面側を包み込むカバーシート4を、外装体と呼ぶことがある。
【0031】
また、おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間におむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。弾性部材4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数(本実施形態では、3本)で、伸張状態で設けられる。なお、
図4に示されるように、レグギャザー3AL,3ARは、少なくとも股下領域1Bの幅方向両側端部おむつ1において着用者の大腿部が位置する部位である脚周り領域を含んで配置されて、おむつ1の幅方向端部に自由端を有している。脚周り領域10L,10Rは、吸収体延在領域である股下領域1Bの幅方向両側端部に一対配置される。また、弾性部材4SL,4SRの配置領域が、レグギャザー3AL,3ARである。弾性部材4SL,4SRは、本開示における第2弾性部材に相当する。
【0032】
また、おむつ1は、細長い帯状であって、おむつ1の幅方向の中心よりも外側に配置された左右一対のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる非透水性のシートである。サイドシート8L,8Rには、カバーシート4と同様、着用者の大腿部が位置する部位(
図4に示す脚周り領域10L,10R)に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには立
体ギャザー3BL,3BRを形成するための弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って配置されている。サイドシート8L,8Rは、おむつ1が着用状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、幅方向への液体の流出を防ぐ防漏シートである立体ギャザー3BL,3BRとなる。弾性部材8EL,8ERは、本開示における第1弾性部材に相当する。
【0033】
なお、カバーシート4には、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されて、おむつがずれるのを防ぐ弾性部材4Cが、弾性部材4SL,4SRよりもおむつ1の幅方向内側でおむつ1の長手方向に沿って、少なくとも股下領域1Bを含む吸収体6の延在領域に設けられている。弾性部材4Cは、おむつ1を着用者の体形に合わせて変形させて、吸収体6の位置を尿道口に近い位置に保つ役割を有している。弾性部材4Cは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて伸張状態で設けられる。弾性部材4Cが設けられたカバーシート4は、ずれ止めギャザーとしての役割を果たしている。弾性部材4Cは、本開示における第3弾性部材の一例である。
【0034】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための弾性部材9ERは、吸収体6の端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0035】
吸収性6は、吸収コア6Cと、当該吸収コア6Cを包み込むコアラップシート6Wとを有している。コアラップシート6Wは、透水性を有するシートにより構成されており、トップシート7を通過した液体を吸収コア6Cに流入させる。コアラップシート6Wは、一枚のシートから構成されていてもよいし、吸収コア6Cの肌面側を覆うシートと、吸収コア6Cの側面側と非肌面側を覆うシートとに分割されており、それを側面側ないし肌面側幅方向端部付近で相互に接着することにより構成してもよい。吸収コア6Cとコアラップシート6Wは接着されており、吸収コア6Cの型崩れを防止する。
【0036】
吸収コア6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6の厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0037】
本開示に係るおむつ1では、吸収コア6Cの短繊維の坪量は、SAP粒子の坪量よりも少なくなっており、主にSAP粒子により流入した液体を吸収する。SAP粒子のみで吸収コア6Cを形成すると、水分を吸収していない状態の吸収コア6Cは非常に硬くなり、硬さが肌面に違和感を与え、装着感が低下する。短繊維は、吸収コア6Cに液体が流入した場合に液体を広範囲に拡散させる役割を果たすとともに、吸収コア6Cに適度なクッション性を与え、装着感の低下を抑制する役割を有している。
【0038】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここ
で言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0039】
また、サイドシート8L,8Rと弾性部材8EL,8ERとで形成される立体ギャザー3BL,3BRは、トップシート7の幅方向の両端に沿って伸張状態で配置され、おむつ1の長手方向に延在する。立体ギャザー3BL,3BRは、トップシート7に固定された固定部30と、固定部30L,30Rから肌面側に起立する起立部31L,31Rとを、有する。固定部30L,30Rは、サイドシート8L,8Rのうちトップシート7とトップシート7の外側でバックシート5やカバーシート4に接合された部位である。これらの接合にはホットメルト接着剤が用いられる。起立部31L,31Rは、固定部30L,30Rよりもおむつ1の幅方向の内側の吸収体延在領域に位置する自由端部分であり、おむつ1の着用状態において、弾性部材8EL,8ERの収縮力によって肌面側に起立する部位である。固定部30L,30Rと起立部31L,31Rの境界が、起立部31L,31Rの起立起点となる起立線32L,32Rとなる。起立部31L,31Rは、固定部30L,30Rと起立部31L,31Rの境界である起立線32L,32Rを境に肌面側に起立可能である。
【0040】
本実施形形態において、吸収体6は括れのない略矩形である。既存のおむつが採用する股下領域1B対応部分が前身頃領域1F、後身頃領域1Rよりも幅狭とされた括れ部分となっている吸収体では、吸収体の括れ部分が外部からの圧力に弱くなり、長手方向中央部の括れ部分と長手方向端部の幅広部分との境界で、折り曲がりが発生しやすくなる。矩形の吸収体6を採用することで圧力に弱い部分は存在しなくなり、折り曲がりの発生を抑制できる。なお、本実施形態では、吸収体6の肌面側は平板状である。
【0041】
図5は、吸収体6の構造を示す図である。上述の通り、吸収体6は、吸収コア6Cと、コアラップシート6Wを有している。コアラップシート6Wは、少なくとも吸収コア6Cの肌面側に重畳する上層コアラップシート6Waと、吸収コア6Cの側面側と非肌面側に重畳する下層コアラップシート6Wbとを備えている。上層コアラップシート6Waは、流入した液体を吸収コア6Cに透過しやすいシートであり、一例としては細繊度エアスルー不織布を用いることができる。下層コアラップシート6Wbは、上層コアラップシート6Waと同じ素材を用いることもできるし、液体透過性に劣るが、吸収コア6Cの形状を保持しやすいティッシュペーパー等の別の素材を用いることもできる。上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、吸収コア6Cの幅方向端部において相互に接着されて、吸収コア6Cを包み込んでいる。
【0042】
吸収コア6Cと上層コアラップシート6Waは、接着剤等で接着されている。上述の通り、吸収コア6Cは、パルプ等の短繊維と、SAP粒子とを含有して構成されている。このため、上層コアラップシート6Waと接着されているのは、より具体的に言えば、短繊維とSAP粒子である。上層コアラップシート6Waと、当該上層コアラップシート6Waに接着された吸収コア6Cの内容物が、本開示における吸収体6の肌面側構造に相当する。
【0043】
また、吸収コア6Cと下層コアラップシート6Wbも、接着剤等で接着されている。このため、吸収コア6Cが含有する短繊維とSAP粒子は、下層コアラップシート6Wbにも接着している。当該下層コアラップシート6Wbに接着された吸収コア6Cの内容物は、本開示における吸収体6の非肌面側構造に相当する。
【0044】
このように、上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbには、吸収コア6Cの内容物が接着されている。特に、吸収コア6Cが含有している短繊維は、その殆ど(具体的には、95重量%以上)が上層コアラップシート6Waまたは下層コアラップシート6Wbに接着されて肌面側構造または非肌面側構造のいずれかに含まれている。
【0045】
本実施形態における吸収コア6Cの坪量は、183g/m2以上、355g/m2以下であり、一般的なおむつよりも密度が高い。更に、吸収コア6Cが含む短繊維の坪量は、60g/m2以上、110g/m2以下である。また、吸収コア6Cが含むSAP粒子の坪量は、105g/m2以上、220g/m2以下である。このように、本実施形態における吸収コア6Cの内容物のうち重量比70%以上をSAP粒子が占める。一般的なおむつの吸収体のSAP粒子比率は重量比50%前後のため、本実施形態における吸収体6は、SAP粒子を豊富に含んでいる。吸収コア6Cの肌面側構造の全領域において、短繊維の密度は均一であり、SAP粒子の密度も均一である。なお、コアラップシートWの坪量は、18g/m2以上、25g/m2以下である。液体を吸収していない状態のSAP粒子は砂粒状であることから、本実施形態における吸収体6は屈曲しにくいと言える。
【0046】
図6は、吸収コアと接着したコアラップシートの顕微鏡写真である。本実施形態におけるSAP粒子は破砕型であり、
図6における円形で囲った部分において、コアラップシート6Wに食い込む特性を有している。コアラップシート6W食い込んだSAP粒子は、水分を吸収していない状態でコアラップシートWの剛性を向上させる。このように、SAP粒子が食い込む特性を持ったコアラップシート6Wを有する本実施形態における吸収体6は、この面でも屈曲しにくいと言える。
【0047】
図7は、吸収コアの肌面側構造と非肌面側構造とを分離した図である。上述したように、吸収体6は肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとに分かれており、肌面側構造6Caは、吸収コア6Cの肌面側を上層コアラップシート6Waに接着して形成されている。同様に、非肌面側構造6Cbも、吸収コア6Cの非肌面側を下層コアラップシート6Wbに接着して形成されている。肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbは、接着されていないものの当接しており、吸収体6を分解した場合、両者を容易に引き離すことができる。
【0048】
肌面側構造が含む短繊維の坪量は、5g/m2以上、60g/m2以下である。また、肌面側構造が含むSAP粒子の坪量は、5g/m2以上、100g/m2以下である。肌面側構造において、上層コアラップシート6Waに接着されている吸収コア6Cの内容物の7割以上は、SAP粒子となる。肌面側構造を完全にSAP粒子で覆ってしまうと、液体は吸収コア6Cの内部に流入しにくくなる。液体を吸収していない状態では肌触りが硬くなって着用者に不快感を与えることがあるため、肌面側構造は一定程度の短繊維を含んでいる。これに対して、非肌面側構造は、SAP粒子の隙間に液体を透過させる必要がなく、また着用者の肌面に直接影響を与えないため、吸収体6全体が屈曲しないように、内容物を比較的自由に設計することができる。本実施形態において、非肌面側構造を形成しているSAP粒子の坪量は、10g/m2以上であり、短繊維の坪量は、10g/m2以上である。
【0049】
肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの層間には、肌面側構造6Caにも非肌面側構造6Cbにも含まれないSAP粒子が設けられていてよい。当該SAP粒子は、どちらの層にも接着されていない。当該SAP粒子は、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbに含まれる短繊維によって相対的に位置が固定されるため、吸収コア6Cの内部を移動しない。肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbとの間にSAP粒子を設けることにより、吸収コア6C内部に取り込まれた液体は、肌面側構造6Ca、非肌面側構造6Cbに含まれるSAP粒子の他、層間に設けられたSAP粒子によっても吸収される。肌面側構造6Caにも非肌面側構造6Cbにも含まれないSAPの粒子の坪量は、0g/m2以上、15
0g/m2以下であることが好適である。
【0050】
図示したように吸収体6を分離して、コアラップシートWに接着されていない内部構造を容器に落下させた場合、落下物の大半はSAP粒子であって、短繊維は殆ど含まれていない。すなわち、短繊維はそのほぼ全量が上層コアラップシート6Waまたは下層コアラップシート6Wbに接着されて肌面側構造6Ca、非肌面側構造6Cbの一部となっており、肌面側構造6Ca、非肌面側構造6Cbに属しておらず、両構造の間に存在している短繊維は殆ど存在しない(全体の5重量%以下である)。このため、着用者が動き回るなどして吸収体6に圧力がかかっても、肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの間に存在する短繊維が移動することにより肌面側構造6Caと非肌面側構造6Cbの位置がずれて、吸収体6が屈曲することがない。
【0051】
また、本実施形態におけるコアラップシートWは吸収コア6Cに接着されて肌面側構造と非肌面側構造を形成している。このため、コアラップシートWが吸収コア6Cに対して横滑りすることはない。また、吸収コア6Cの短繊維、SAP粒子の密度は、吸収コア6C全域において略同一である。この構成により、本実施形態における吸収体6では、コアラップシートWのみならず吸収コア6Cの内部構造のほぼ全域が圧力を分散する。本実施形態における吸収体6は、この面からも屈曲しにくいといえる。
【0052】
なお、流通状態において包装容量を小さくするため、おむつは折り畳まれていることが一般的であるが、本実施形態に係るおむつ1では、包装状態においても吸収体6を通る折り目は1箇所に限られる。包装状態における折り癖は、装着状態においても残り、吸収体6がおり曲がる原因となることがあるが、本実施形態にかかるおむつ1では、吸収体6の曲げ耐性は既存のおむつに比べて高いうえに、吸収体6に残る折り癖が最小限に限られるため、おむつ1装着時における吸収体6の屈曲は最小限に抑えられる。
【0053】
図8は、従来品との吸収体の折れ曲がりを比較した図である。
図8(A)は、本実施形態におけるおむつ1を、張力を与えずに広げたものであり、
図8(B)は、従来品の乳幼児用テープ型おむつを、張力を与えずに広げたものである。なお、従来品と本実施形態におけるおむつ1では、吸収体6の構造は異なるが、ずれ止めギャザー、レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BRの構造は同一であり、弾性部材の付勢力も同じである。
【0054】
おむつは、ずれ止めギャザー、レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BRに付されている弾性部材の働きにより長手方向内側に収縮し、これらの弾性部材の弾性力は吸収体にも伝わって、吸収体も屈曲する。本実施形態におけるおむつ1では、
図8(A)に示すように吸収体6は比較的小さな角度で緩やかに屈曲し、肌面側には低い凸部が1つ形成されている。それに対して、従来品では、吸収体はより鋭角に屈曲しており、肌面側には高い凸部が2つ形成されている。
【0055】
吸収体に高い凸部が複数形成されていると、おむつを装着した場合にも吸収体に凸部が残存し、外装体を含むおむつ全体が長手方向に屈曲したままになることがある。おむつが長手方向に屈曲していると、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARはその効果を十分に発揮できなくなり、液体がおむつの側部から外部に漏れ出す虞がある。本実施形態におけるおむつ1では吸収体6の屈曲が最小限に抑えられるため、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARが効果を発揮しやすくなり、液体の横漏れを抑制できる。
【0056】
<第2の形態>
図9は、第2の形態に係る吸収体を示す図である。第2の形態でもおむつ1の全体構造
は、上述の実施形態とほぼ同様である。第2の形態では、上述の実施形態における肌面側が平板状の吸収体6に代わり、股下領域に溝が設けられた吸収体61を有している。吸収体61の内部構造(SAPの比率、吸収体6が有する肌面側構造、非肌面側構造)は、概ね上述の実施形態と同一であるが、吸収体61の股下領域1Bには、長手方向に延在する圧搾溝61Hが設けられている。圧搾溝61Hは、吸収体61を肌面側から圧搾して構成されたものであり、圧搾溝61Hは、吸収体61の肌面側から非肌面側に貫通していない。また、圧搾溝61Hは、肉抜きにより構成されたものではない。このため、圧搾溝61H付近の吸収体61の密度は非常に高くなり、圧搾溝61Hの底面において吸収体61は硬化する。このため、吸収体61は、上述の実施形態に比べて、最も液体に触れる機会が多い股下領域1Bで長手方向に屈曲しにくくなる。このため、股下領域1Bにおいて、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARがより機能を発揮しやすくなる。なお、硬化しているのは圧搾溝61Hの底面であり、圧搾溝61Hを設けることによる着用者の肌触りへの影響は殆どない。
【0057】
また、圧搾溝61Hは、股下領域1Bに設けられており、股下領域1Bは着用者の尿道口に対応する。このため、流入した液体は、圧搾溝61Hを導流孔として吸収体61の股下領域の長手方向広範囲に広がって、吸収体61の長手方向広範囲で迅速に吸収されるため、おむつ1の液体吸収効果向上も期待できる。その他は、上記実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0058】
<第3の形態>
図10は、第3の形態に係る吸収体を示す図である。第3の形態では、第2の形態における吸収体61が有する圧搾溝61Hを、股下領域1Bのみならず前身頃領域1F,後身頃領域1Rにまで延長し、圧搾溝62Hを有する吸収体62としたものである。このように、圧搾溝62Hの延在範囲を前身頃領域1F,後身頃領域1Rにまで広げると、吸収体62は、股下領域1Bのみならず前身頃領域1F,後身頃領域1Rにおいても、長手方向に屈曲しにくくなる。このため、吸収体62に対応するほぼ全領域において立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARが機能を発揮しやすくなる。
【0059】
また、第2の形態と同様、股下領域1Bにおいて圧搾溝62Hに流入した液体は、圧搾溝62Hを伝って吸収体62の前身頃領域1F,後身頃領域1Rにまで分散し、より広範囲で迅速に吸収されるため、第2の形態と比較して、おむつ1の液体吸収効果を更に高めることができる。なお、圧搾溝62を流れた液体が腰部から漏れ出すのを防ぐため、図示したように吸収体62の長手方向両端部には圧搾溝62Hを設けないことが望ましい。
【0060】
図11は、第2の形態と第3の形態に係る吸収体の断面図である。股下領域1Bでは、第2の形態と第3の形態の断面は同一であるので、第2の形態の吸収体61の断面図を用いて、第3の形態の断面についても説明をする。圧搾溝61H、62Hは、略逆台形状に形成されていることが望ましい。略逆台形状とすることで、圧搾溝61H,62Hを流れる液体が触れる壁面の面積が広くなるため、吸収体61,62の吸収性能を向上させることができる。
【0061】
本開示に係るコアラップシート6Wは、上述の通り吸収コア6Cと接着している。このため、上層コアラップシート6Waは、圧搾溝61H,62Hの落ち込みに追従して圧搾溝61H,62Hの底面まで落ち込む。本図では図示していないが、トップシート7も圧搾溝61H,62Hに相当する部分で上層コアラップシート6Waに接着して圧搾溝61H,62Hの底面まで落ち込んでいてもよい。トップシート7の肌面側に溝が形成されていることで、液体はより迅速に圧搾溝61H,62Hに流入する。なお、トップシート7と上層コアラップシート6Waを接着せず、トップシート7が圧搾溝61H,62Hに落ち込まないようにとすることで、肌触りを向上させることも考えられる。
【0062】
<第4の形態>
図12は、第4の形態に係る吸収体を示す図である。第4の形態では、吸収体63は、長手方向に平行する圧搾溝63HRと、圧搾溝63HLを有している。圧搾溝が2本になることで、吸収体63は、幅方向に複数の硬化部分を有することになり、長手方向の屈曲圧力に対してより強くなり、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3AR、ずれ止めギャザー等に設けられた弾性部材の付勢力に対抗する。このため、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3ARは、第2,第3の形態と比較してもより効果的に機能するようになる。
【0063】
図13は、第4の形態に係る吸収体の断面図である。吸収体63は、幅方向に一対設けられた圧搾溝63HR,63HLを有することにより、長手方向の付勢力にはより効果的に対抗できる。しかし、略逆台形状の溝が肌面側に2本設けられることにより、吸収体63は幅方向にはむしろ屈曲しやすくなり、着用者の下腹部・臀部の形状に沿いやすくなる。また、立体ギャザー3BL,3BRやレグギャザー3AL,3AR、ずれ止めギャザーは、おむつ1の横方向からの液体漏れを防ぐため、おむつ1の側面部分が着用者の肌面に沿うように付勢する。吸収体63は、幅方向の肌面側への付勢力には追従しやすくなっているため、おむつ1着用時に容易に屈曲し、着用者の肌面を包み込む。このため、吸収体63を有するおむつ1は、着用感を向上させることができる。
【0064】
吸収体63が肌面を覆う形になるため、液体は吸収体63に迅速に保持・吸収され、立体ギャザー3BL,3BR付近に到達しにくくなる。また、吸収体63は長手方向の屈曲には容易に対抗可能であり、立体ギャザー3BL,3BRとレグギャザー3AL,3ARは、は設計どおりの効果を発揮する。吸収体63の幅方向への変形と立体ギャザー3BL,3BRとレグギャザー3AL,3ARおよびずれ止めギャザーの適切な相乗効果により、第4の形態に係るおむつ1は、この面からも液体漏れを非常に効果的に抑制可能である。
【0065】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では、乳幼児用のテープ型使い捨ておむつを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、パンツ型使い捨ておむつや、成人用のテープ型使い捨ておむつや等の吸収性物品にも適用可能である。
【0066】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0067】
1・・吸収パッド
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L,2R・・弾性体
3BL,3BR・・弾性体
3L,3R・・立体ギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6,61,62,63・・吸収体
6C・・吸収コア
6Ca・・肌面側構造
6Cb・・非肌面側構造
6W・・コアラップシート
6Wa・・上層コアラップシート
6Wb・・下層コアラップシート
61H,62H,63HL,63HR・・圧搾溝
7・・トップシート
8R,8L・・サイドシート
SAP・・SAP