(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126003
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】吸収性物品および吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A61F 13/53 20060101AFI20230831BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61F13/53 300
A61F13/53 100
A61F13/15 351Z
A61F13/15 340
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030415
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉山 勝彦
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 雅宏
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 哲
(72)【発明者】
【氏名】黒原 健志
(72)【発明者】
【氏名】木下 葵子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 亮
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200BA01
3B200BA03
3B200BA14
3B200BB05
3B200BB17
3B200CA08
3B200DB02
3B200DB14
3B200DB16
3B200EA05
3B200EA21
3B200EA27
(57)【要約】
【課題】高吸収性重合体が漏れ出しにくい吸収体を提供することを目的とする。
【解決手段】長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、液体を吸収する吸収体を備え、前記吸収体は、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの肌面側、非肌面側および前記幅方向の側面側を覆うコアラップシートと、を有し、前記吸収コアの前記長手方向端部側面を覆う透液性シートを備える、吸収性物品。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、
液体を吸収する吸収体を備え、
前記吸収体は、
高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、
前記吸収コアの肌面側、非肌面側および前記幅方向の側面側を覆うコアラップシートと、
を有し、
前記吸収コアの前記長手方向の端部側面を覆う透液性シートを備える、
吸収性物品。
【請求項2】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長い、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記吸収体の肌面側に配置されたトップシートと、
前記吸収体の非肌面側に配置された非透水性のバックシートと、
前記吸収体の肌面側を覆うセカンドシートと、を備える、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子は、非破砕型である、
請求項1~3のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は70質量%以上である、
請求項1~4のうちいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記透液性シートは、エアスルー不織布である、
請求項1または2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品の製造方法であって、
高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの覆うコアラップシートと、を有する吸収体の連続体を切断する切断工程と、
前記吸収体の長手方向端部を透液性シートで覆う被覆工程と、
を、含む、
吸収性物品の製造方法。
【請求項8】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は70質量%以上である、
請求項7に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項9】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長い、
請求項7または8に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品のおよび吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
おむつ等の吸収性物品が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収性物品は、吸収体を有しており、吸収体には、液体を吸収していない状態では砂粒状の高吸収性重合体が含まれている。高吸収性重合体の割合が多い吸収体を用いると、厚みが薄い吸収体を提供できるが、高吸収性重合体は製造工程において吸収体から漏出しやすくなる。
【0005】
本発明は、高吸収性重合体が漏れ出しにくい吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、吸収体の長手方向端部側面を覆う透液性シートを設けた。
【0007】
本発明は、具体的には、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品であって、液体を吸収する吸収体を備え、前記吸収体は、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの肌面側、非肌面側および前記幅方向の側面側を覆うコアラップシートと、を有し、前記吸収コアの前記長手方向の端部側面を覆う透液性シートを備える、吸収性物品である。
【0008】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長くてよい。
【0009】
吸収性物品は、前記吸収体の肌面側に配置されたトップシートと、前記吸収体の非肌面側に配置された非透水性のバックシートと、前記吸収体の肌面側を覆うセカンドシートと、を備えてよい。
【0010】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子は、非破砕型であってよい。
【0011】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は70質量%以上であってよい。
【0012】
前記透液性シートは、エアスルー不織布であってよい。
【0013】
また、本発明は、長手方向に沿った長さと、前記長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有する吸収性物品の製造方法であって、高吸収性重合体であるSAPの粒子と短繊維とを含む吸収コアと、前記吸収コアの覆うコアラップシートと、を有する吸収体の連続体を切断する切断工程と、前記吸収体の長手方向端部を透液性シートで覆う被覆工程と、を、含む、吸収性物品の製造方法とすることもできる。
【0014】
前記吸収コアが含む前記SAPの粒子の含有割合は70質量%以上であってよい。
【0015】
前記透液性シートは、前記吸収体よりも前記幅方向に長くてよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、吸収体からの高吸収性重合体の漏れ出しを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。
【
図3】
図3は、非着用状態におけるおむつを、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
【
図4】
図4は、伸長した状態のおむつを肌面側から見た平面図である。
【
図5】
図5は、吸収体の幅方向の断面構造を示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態における吸収体の長手方向の断面図である。
【
図7】
図7は、SAP固定率試験の概要を示した図である。
【
図8】
図8は、SAP固定率とSAP比率との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、図面を参照して本発明の実施形態に係る吸収性物品について説明する。なお、以下の実施形態の構成は例示であり、本発明はこれらの実施の形態の構成に限定されるものではない。
【0019】
<実施形態>
本実施形態では、テープ型使い捨ておむつ(本願でいう「吸収性物品」の一例であり、以下、単に「おむつ」という)について、着用者の腹部に対向して配置される前身頃と背部に対向して配置される後身頃とを結ぶ方向を長手方向とする。これらの前身頃(長手方向の一側)と後身頃(長手方向の他側)との間(長手方向の中央)には、着用者の股下に配置(股間に対向して配置)される股下部が位置する。また、おむつが着用者に装着された状態(以下、「着用状態」と略称する)において、着用者の肌に向かう側(着用状態で内側)を肌面側とし、肌面側の反対側(着用状態で外側)を非肌面側とする。さらに、肌面側と非肌面側とを結ぶ方向を厚み方向とし、長手方向と厚み方向の何れにも直交する方向を幅方向とする。そのほか、厚み方向から視ることを平面視とする。
【0020】
図1は、本実施形態に係るおむつの斜視図である。おむつ1は、長手方向に沿った長さと、長手方向に直交する幅方向に沿った横幅とを有している。おむつ1は、着用状態において着用者の陰部を覆う股下に対応する部位である股下領域1Bと、股下領域1Bの前側に位置し、着用者の前身頃に対応する部位である前身頃領域1Fと、股下領域1Bの後ろ側に位置し、着用者の後身頃に対応する部位である後身頃領域1Rとを有する。後身頃領域1Rの左右両側の縁には、前身頃領域1Fの非着用者側の面に設けられたフロントパッチ2Fへ貼着可能なテープ2L,2Rが設けられている。おむつ1は、前身頃領域1Fが着用者の腹側に配置され、後身頃領域1Rが着用者の背側に配置された状態でテープ2L,2Rがフロントパッチ2Fに貼着されると、着用者の腹囲と大腿部を取り巻く状態で着用者の身体に固定される。おむつ1がこのような形態で着用者の身体に固定されるので、着用者はおむつ1を着用した状態で立ち歩き可能である。
【0021】
おむつ1には、液体を吸収して保持することができる吸収体が主に股下領域1B付近を中心に配置されている。また、おむつ1には、おむつ1と着用者の肌との間に液体の流出経路となる隙間が形成されるのを抑制するべく、着用者の脚周り部(大腿部)を取り巻く
部位にレグギャザー3AL,3ARが設けられ、レグギャザー3AL,3ARよりもおむつ1の幅方向内側に立体ギャザー3BL,3BRが設けられ、着用者の腹囲を取り巻く部位にウェストギャザー3Rが設けられている。レグギャザー3AL,3AR、立体ギャザー3BL,3BR及びウェストギャザー3Rは、弾性部材の弾性力で着用者の肌に密着する。よって、着用者の陰部から排出される液体は、おむつ1から漏出することなくおむつ1の吸収体に吸収される。なお、弾性部材としては糸状や帯状のゴム等を適宜選択できる。
【0022】
図2は、おむつ1の分解斜視図である。また、
図3は、非着用状態におけるおむつ1を、長手方向の中心を幅方向に沿って切断した場合の断面図である。
図4は、伸長した状態のおむつ1を肌面側から見た平面図である。おむつ1は、着用状態において外表面を形成するカバーシート4を有する。カバーシート4は、長辺に相当する部位に括れ4KL,4KRを設けた略長方形の外観を有するシート状の部材であり、おむつ1の外装面を形成する。括れ4KL,4KRは、着用者の大腿部が位置する部位(
図4に示す脚周り領域10L,10R)に設けられる。カバーシート4は、後述するバックシート5の補強や手触りの向上のために設けられ、例えば、排泄物の漏れを抑制するために、液不透過性の熱可塑性樹脂からなる不織布をその材料として用いることができる。液不透過性の熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等が例示できる。カバーシート4は、単層構造に限らず、インナカバーシートおよびアウターカバーシートを有する多層構造であってもよい。
【0023】
そして、おむつ1は、カバーシート4の肌面側において順に積層されるバックシート5(非肌面側シート)、吸収体6、セカンドシート11(透液性シートのうちの一つ)、トップシート7(肌面側シート)を有する。バックシート5、吸収体6、セカンドシート11、トップシート7は、何れも略長方形の外観を有するシート状の部材であり、長手方向がカバーシート4の長手方向と一致する状態でカバーシート4に順に積層されている。バックシート5は、カバーシート4と同様に、排泄物の漏れを抑制するために非透水性の熱可塑性樹脂を材料として形成されたシートである。バックシート5は、着用状態での蒸れを抑えるため、透湿性を併せもつ材料で構成されることが好ましい。また、トップシート7は、着用者の肌面側に配置される、シート状の部材である。また、セカンドシート11は、トップシート7の非肌面側であって、吸収体6の吸水面を被覆するように配置される、シート状の部材である。トップシート7は、その一部又は全部において液透過性を有する。また、セカンドシート11は、液透過性を有している。そのため、おむつ1の着用状態において、着用者から排泄された液体は、着用者の肌に接触し得るトップシート7を通ってセカンドシート11を通過して吸収体6に進入し、そこで吸収される。例えば、織布、不織布、多孔質フィルムがトップシート7の材料として材用できる。トップシート7は親水性を有していてもよい。セカンドシート11には、嵩高のエアスルー不織布を用いることができる。なお、セカンドシート11は、トップシート7と同一の素材であってもよい。吸収体6は、股下領域1Bを含んで配置されている。
【0024】
また、おむつ1は、吸収体の長手方向端部側面を覆い、吸収体8とセカンドシート11の間に設けられた透液性シート12を備える。透液性シート12は、吸収体6の前後の両端に配置されている。透液性シート12には、例えば、織布、不織布、多孔質フィルムなどの液体を透過するシートが用いられる。
【0025】
バックシート5、吸収体6、セカンドシート11、トップシート7は、何れも前身頃領域1Fから後身頃領域1Rにまで延在する。よって、バックシート5と吸収体6とトップシート7が積層されているカバーシート4で着用者の陰部を覆うと、バックシート5と吸収体6とセカンドシート11とトップシート7の各長手方向の両端部は、着用者の腹側と背側に位置する状態となる。すなわち、着用者の陰部は、着用者の腹側から背側まで吸収
体6に覆われる状態となる。したがって、着用者が腹を下へ向けた姿勢と背を下へ向けた姿勢の何れの姿勢で液体を体外へ排出しても、排出された液体はトップシート7とセカンドシート11を介して吸収体6に接触することになる。なお、セカンドシート11は、吸収体6よりも長手方向に長く、前身頃領域1F,後身頃領域1Rにおいて、吸収体6の長手方向端部よりもおむつ1の長手方向端部側に延在している。
【0026】
また、おむつ1は、上述したレグギャザー3AL,3ARを形成するための弾性部材4SL,4SRがカバーシート4とバックシート5の間におむつ1の長手方向に伸縮するように設けられる。弾性部材4SL,4SRは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて決定された適宜の本数(本実施形態では、3本)で設けられる。なお、
図4に示されるように、レグギャザー3AL,3ARは、股下領域1Bの幅方向両側端部において着用者の大腿部が位置する部位である脚周り領域を含んで配置されている。脚周り領域10L,10Rは、股下領域1Bの幅方向両側端部に配置される。また、弾性部材4SL,4SRの配置領域が、レグギャザー3AL,3ARである。
【0027】
また、おむつ1は、細長い帯状のサイドシート8L,8Rを有する。サイドシート8L,8Rは、トップシート7の長辺の部分に設けられる液不透過性のシートである。サイドシート8L,8Rには、カバーシート4と同様、着用者の大腿部が位置する部位(
図4に示す脚周り領域10L,10R)に括れ8KL,8KRが設けられる。そして、サイドシート8L,8Rには立体ギャザー3BL,3BRを形成するための弾性部材8EL,8ERが長手方向に沿って配置されている。サイドシート8L,8Rは、おむつ1が着用状態の形態、すなわち、おむつ1が側面視U字状の形態になると、弾性部材8EL,8ERの収縮力で長手方向に引き寄せられてトップシート7から立ち上がり、液体の流出を防ぐ立体ギャザー3BL,3BRとなる。
【0028】
なお、カバーシート4には、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ弾性部材4Cが弾性部材4SL,4SRよりもおむつ1の幅方向内側でおむつ1の長手方向に沿って設けられている。弾性部材4Cは、おむつ1において設計上要求される弾性力(収縮力)などに応じて設けられる。
【0029】
また、上述したウェストギャザー3Rを形成するための弾性部材9ERは、吸収体6の端部よりも更に背側の位置において、バックシート5とトップシート7の間に設けられる。弾性部材9ERは、伸縮方向となる長手方向がおむつ1の左右方向となる向きでバックシート5とトップシート7の間に設けられる。よって、弾性部材9ERの左右両側に設けられるテープ2L,2Rが、着用者の腹側においてフロントパッチ2Fに貼着されると、弾性部材9ERは、収縮力を発揮しておむつ1を着用者に密着させ、おむつ1と着用者の腹囲との間に隙間が形成されるのを防ぐ。
【0030】
本実施形態に係る吸収体6は、略矩形形状を有している。吸収体を瓢箪型とした場合、吸収体は股下領域1B付近の括れ部分において屈曲することがあるが、吸収体6は矩形であるため、長手方向全領域において屈曲に強くなる。吸収性6は、吸収コア6Cと、当該吸収コア6Cを包み込むコアラップシート6Wとを有している。コアラップシート6Wは、透水性を有するシートにより構成されており、トップシート7を通過した液体を吸収コア6Cに流入させる。コアラップシート6Wは、一枚のシートから構成されていてもよいし、吸収コア6Cの肌面側を覆うシートと、吸収コア6Cの側面側と非肌面側を覆うシートとに分割されており、それを側面側ないし肌面側幅方向端部付近で相互に接着することにより構成してもよい。吸収コア6Cとコアラップシート6Wは接着されており、吸収コア6Cの型崩れを防止する。
【0031】
吸収コア6Cは、パルプ繊維、レーヨン繊維、またはコットン繊維のようなセルロース
系繊維の短繊維や、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリエチレンテレフタレート等の合成繊維に親水化処理を施した短繊維の隙間に、水を吸収し保持することのできる架橋構造を持つ親水性ポリマーであるSAP(高吸収性重合体:Super Absorbent Polymer)等の粒状の吸収性樹脂を保持させた構造を有する。よって、吸収体6では、液体を吸収する前後の吸収性樹脂の体積変動は、基本的には吸収性樹脂を隙間に保持する短繊維内で行われることになる。したがって、吸収体6全体を俯瞰してみると、液体を吸収した吸収体6の厚みの膨張率は、吸収性樹脂自体の膨張率ほど大きくはないと言える。
【0032】
本開示に係るおむつ1では、吸収コア6Cの短繊維の坪量は、SAP粒子の坪量よりも少なくなっており、主にSAP粒子により流入した液体を吸収する。SAP粒子のみで吸収コア6Cを形成すると、水分を吸収していない状態の吸収コア6Cは非常に硬くなり、硬さが肌面に違和感を与え、装着感が低下する。短繊維は、吸収コア6Cに液体が流入した場合に液体を広範囲に拡散させる役割を果たすとともに、吸収コア6Cに適度なクッション性を与え、装着感の低下を抑制する役割を有している。
【0033】
本実施形態のSAP粒子とは、SAPを含む樹脂組成物を粒状としたものを指す。ここで言う「SAPを含む樹脂組成物」とは、SAPのみからなる組成物、SAPを主成分とし、これに吸水性に悪影響を及ぼさない程度に他の物質が含まれた組成物、の双方を包含する概念である。「他の物質」としては、添加剤(粒子表面を疎水化する目的で添加される表面改質剤等)、SAPの合成時に残存した未反応のモノマー等を挙げることができる。
【0034】
また、サイドシート8L,8Rと弾性部材8EL,8ERとで形成される立体ギャザー3BL,3BRは、トップシート7の幅方向の両端に沿って配置され、おむつ1の長手方向に延在する。立体ギャザー3BL,3BRは、トップシート7に固定された固定部30と、固定部30L,30Rから肌面側に起立する起立部31L,31Rとを、有する。固定部30L,30Rは、サイドシート8L,8Rのうちトップシート7とトップシート7の外側でバックシート5やカバーシート4に接合された部位である。これらの接合にはホットメルト接着剤が用いられる。起立部31L,31Rは、固定部30L,30Rよりもおむつ1の幅方向の内側に位置し、おむつ1の着用状態において、弾性部材8EL,8ERの収縮力によって肌面側に起立する部位である。固定部30L,30Rと起立部31L,31Rの境界が、起立部31L,31Rの起立起点となる起立線32L,32Rとなる。起立部31L,31Rは、固定部30L,30Rと起立部31L,31Rの境界である起立線32L,32Rを境に肌面側に起立可能である。
【0035】
図5は、吸収体6の幅方向の断面構造を示す図である。上述の通り、吸収体6は、吸収コア6Cと、コアラップシート6Wを有している。コアラップシート6Wは、1枚のシートで構成されていてもよいが、吸収コア6Cの肌面側と非肌面側では、コアラップシート6Wに求められる機能が違う(具体的には、肌面側のコアラップシートには、流入した液体を迅速に吸収コア6Cに通過させる機能が求められ、非肌面側のコアラップシートには、吸収コア6Cを補強して型崩れを防止する機能が求められる)ため、本図のように肌面側と非肌面側で分けることが好適である。
【0036】
本図に示す形態では、コアラップシート6Wは、吸収コア6Cの肌面側に重畳する上層コアラップシート6Waと、吸収コア6Cの側面側と非肌面側に重畳する下層コアラップシート6Wbとに分かれている。上層コアラップシート6Waは、流入した液体を吸収コア6Cに透過しやすいシートであり、一例としては細繊度エアスルー不織布を用いることができる。下層コアラップシート6Wbは、上層コアラップシート6Waと同じ素材を用いることもできるし、液体透過性に劣るが、吸収コア6Cの形状を保持しやすいティッシ
ュペーパー等の別の素材を用いることもできる。上層コアラップシート6Waと下層コアラップシート6Wbは、吸収コア6Cの幅方向端部において相互に接着されて接着部を形成し、吸収コア6Cを包み込んでいる。
【0037】
更に、本実施形態では、吸収体6と、トップシート7の間には、セカンドシート11が設けられている。セカンドシート11は、上述の接着部に更に接着されている。セカンドシート11の繊維径は、3dtex以上8dtex以下であり、一例としては、その平均繊維径は6dtexである。セカンドシート11の厚さは200μm以上600μm以下であり、その坪量は25g/m2以上、40g/m2以下であって、一例としては、その坪量は30g/m2である。セカンドシート11は、透液性に優れるとともに、比較的厚く、柔軟性に富むシートであり、もし吸収体6の肌面側にSAP粒子がこぼれ出ていた場合にも、液体を吸収していない状態では固形であるSAP粒子の硬さを、トップシート7を介して着用者の肌面に伝えない。
【0038】
吸収コア6CとコアラップシートWは、ホットメルト接着剤等で接着されている。吸収コア6Cには、パルプ等の短繊維と、SAP粒子が含まれており、パルプ等の短繊維は、その殆どがコアラップシートWに接着されている。一方、SAP粒子の中には、コアラップシートWに接着していないものがあり、吸収コア6Cの内部を、また吸収コア6Cの外に移動することがある。
【0039】
一般的なおむつの吸収コアが含むSAP粒子の含有割合は50質量%程度であるが、本実施形態におけるSAP粒子の含有割合は70%以上、より具体的には72質量%以上であり、一般的なおむつに比べてSAP粒子の含有割合が非常に高い。また、吸収コア6C内部のSAP粒子のうちの一定のものはコアラップシートWと接着されていないため、吸収コア6Cの外に移動して、着用時の肌当たりを悪化させることがある。
【0040】
実施形態におけるSAP粒子の平均粒子径は、200μm以上300μm以下であり、吸収コア6Cの内部を比較的動きにくくなっている。また、本実施形態に係るSAP粒子は非破砕型であって、万が一吸収体6の外にこぼれ出たとしても、比較的肌面や他の構造に刺激を与えにくい。しかし、吸収体6の外に移動したSAP粒子は、製造工程において製造装置に入り込むことがある。製造装置に不要なSAP粒子が混入すると動作不良につながるため、SAP粒子は製造工程上においても可能な限り吸収体6の内部に留め置かれることが望ましい。
【0041】
また、吸収体6は、製造工程においては連続体として作成され、おむつ1に組み込む際に、おむつ1枚用に切断される。吸収体6は、幅方向端部では下層コアラップシート6Wbによって包まれているが、長手方向端部では吸収コア6Cをコアラップシート6Wで巻いた後におむつ1枚用に切断されるため、吸収コア6Cをコアラップシート6Wで巻くことができない。そこで、本実施形態に係るおむつ1は、上述の透液性シート12を備えている。透液性シート12には、セカンドシート11と同様の素材を用いてよい。
【0042】
図6は、本実施形態における吸収体の長手方向の断面図である。透液性シート12は、吸収コア6Cの長手方向端部側面を覆っている。透液性シート12は、肌面側が上層コアラップシート6Waとセカンドシート11の間に配置され、非肌面側が下層コアラップシート6Wbとバックシート5の間に配置されている。また、透液シート12は、吸収体6よりも幅方向に長い。このように配置された透液性シート12によって、おむつ1は、SAPが吸収体6の長手方向端部からこぼれるのを防ぐことができる。なお、セカンドシート11と透液性シート12を同じ素材とすると共に、セカンドシート11の長手方向端部を延長し、延長部分を透液性シート12とすることもできる。
【0043】
図7は、SAP固定率試験の概要を示した図である。
図7は、吸収体6にどの程度SAP粒子が固定されているかを調べるための装置である。土台32からポールが垂直に立ち上がっており、ポールの上方には長さ10cmのガイドレール31が鉛直に設置されている。ガイドレール31の内側には、落下棒30が配置されている。実験者が落下棒30をガイドレール31の上端まで持ち上げて手を離すと、落下棒30はガイドレール31に沿って10cm自由落下する。
【0044】
落下棒30には、長手方向中央部で2つに切断した吸収体6を配置する。落下棒30の直下には、落下したSAP粒子を計量する電子天秤が設けられている。この状態で、落下動作を20回繰り返して、吸収体6の内部に固定されていないSAP粒子を計量する。脱落したSAPの量をDR、設計上吸収体6に配合されているSAPの量をDFとした場合、SAPの固定率(%)は、(1-DR/DF)×100の式で求めることができる。
【0045】
図8は、SAP固定率とSAP比率との関係を示す図である。
図8からは、吸収体6のSAP比率が大きくなるにつれて、SAPの固定率が悪化することが分かる。
図8において点線で囲った領域は、SAP粒子が十分に固定されており、製造工程上、製造装置に動作不良を引き起こすことがない範囲である。一般的なおむつの吸収コアが含むSAP粒子の含有割合は50質量%であって、SAP粒子はほぼ完全に固定されているため、製造工程上SAP粒子を考慮する必要はない。これに対して、本実施形態に係るSAP粒子の含有割合は70%以上であり、製造工程上問題を引き起こすことがあることが分かる。このため、本実施形態に係るおむつ1では、装着時は勿論、製造工程上もSAPを散乱させないための配慮が必要になると言える。
【0046】
図9は、おむつ1の製造方法を示す図である。製造工程は
図9(A)から
図9(C)に向かって進んでいく。
図9(A)は、連続体としての吸収体60が搬送されている状態を上から見た図である。吸収体60は、吸収コア6Cがコアラップシート6Wで巻かれた状態である。
図9(B)は、吸収体60をおむつ1枚分に切断した状態を示している。吸収体60は、搬送装置によって搬送されている状態で搬送方向に直交する幅方向(CD方向)で切断され、複数の吸収体6が作成される。
図9(B)に示す工程は、本願でいう切断工程に該当する。
【0047】
図10は、おむつ1の製造方法を示す図である。
図10は、
図9に続く工程を示した図である。
図9と同様、製造工程は
図10(C)から
図10(E)に向かって進んでいく。
図10(C)では、透水性シート12の上(肌面側)に、ホットメルト等の接着剤HMを塗布する。
図10(D)では、透水性シート12の上に吸収体6を載置する。
図10(E)では、透水性シート12を吸収体6の長手方向端部に巻きように接着する。
図10(C)から
図10(E)に示す工程は、本願でいう被覆工程に該当する。
【0048】
本実施形態に係るおむつ1の製造方法によれば、吸収コア6Cの長手方向端部を透水性シートで覆うことができるので、吸収コア6CからSAPがこぼれるのを防ぐことができる。
【0049】
以上、本実施形態について説明したが、本発明の内容は上記実施の形態に限られるものではない。上記実施形態では、吸収パッドを例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明は、テープ型使い捨ておむつや、パンツ型使い捨ておむつ等の吸収性物品にも適用可能である。
【0050】
以上で開示した各実施形態やその変形例に含まれる特徴は、それぞれ組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0051】
1・・吸収パッド
1B・・股下領域
1F・・前身頃領域
1R・・後身頃領域
2L,2R・・弾性体
3BL,3BR・・弾性体
3L,3R・・立体ギャザー
4・・カバーシート
5・・バックシート
6・・吸収体
6C・・吸収コア
6W・・コアラップシート
6Wa・・上層コアラップシート
6Wb・・下層コアラップシート
7・・トップシート
8R,8L・・サイドシート
11・・セカンドシート
12・・透水性シート
30・・可動バー
31・・ガイドレール
32・・試験台
33・・電子天秤
HM・・接着剤