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特開2023-126007検体分析装置に管理基準値を適用する方法、検体分析装置、及びコンピュータプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126007
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】検体分析装置に管理基準値を適用する方法、検体分析装置、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
G01N35/00 A
G01N35/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030425
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白砂 渓
(72)【発明者】
【氏名】福間 大吾
(72)【発明者】
【氏名】長尾 雄人
(72)【発明者】
【氏名】林 文明
(72)【発明者】
【氏名】木曽 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】河野 友美
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058GA06
2G058GA12
2G058GD01
2G058GD05
2G058GD06
2G058GE09
(57)【要約】
【課題】検査施設における管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化する。
【解決手段】検体分析装置に管理基準値を適用する方法は、コンピュータによって検体分析装置に精度管理試料の管理基準値を適用する方法である。この方法は、前記検体分析装置によって測定された前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成し、検体分析装置に管理基準値を適用する。
【選択図】図4B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンピュータによって検体分析装置に精度管理試料の管理基準値を適用する方法であって、
前記検体分析装置によって測定された前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成し、
前記検体分析装置に前記管理基準値を適用する、
検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項2】
前記測定結果に基づいて前記管理基準値を生成するためのルールの設定を受け付け、
前記管理基準値を生成することでは、前記ルールに基づいて、前記測定結果に基づく前記基準値を生成する、
請求項1に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項3】
前記ルールの設定を受け付けることでは、前記精度管理試料の属性ごとに前記ルールの設定を受け付ける、請求項2に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項4】
前記精度管理試料の属性は、前記精度管理試料に含まれる所定の成分の濃度に関する属性を含む、請求項3に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項5】
前記ルールの設定が、前記ルールを設定するための選択肢の選択を含む、請求項2~4の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項6】
前記ルールが、前記精度管理試料を複数回測定して得られた複数の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成するルールを含み、
前記測定結果を取得することでは、前記複数の測定結果を取得し、
前記管理基準値を生成することでは、前記複数の測定結果の少なくとも一部に基づく前記管理基準値を生成する、請求項2~5の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項7】
前記ルールが、取得した前記複数の測定結果のうち、前記管理基準値の生成に用いる測定結果の範囲の指定に関するルールを含む、請求項6に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項8】
前記管理基準値を適用することでは、前記検体分析装置を含む複数の検体分析装置に前記管理基準値を適用し、
前記ルールが、前記検体分析装置が前記精度管理試料を測定して得られた測定結果に基づいて、前記検体分析装置に適用される前記管理基準値を生成し、前記複数の検体分析装置のうちの他の検体分析装置が前記精度管理試料を測定して得られた測定結果に基づいて、前記他の検体分析装置に適用される前記管理基準値を生成するルールを含む、請求項2~7の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項9】
前記管理基準値を適用することでは、前記検体分析装置を含む複数の検体分析装置に前記管理基準値を適用し、
前記ルールが、前記複数の検体分析装置のうちの何れかの検体分析装置が前記精度管理試料を測定して得られた測定結果に基づいて、前記複数の検体分析装置のそれぞれに対して共通に適用される前記管理基準値を生成するルールを含む、請求項2~8の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項10】
前記管理基準値を適用することでは、前記検体分析装置を含む複数の検体分析装置に前記管理基準値を適用し、
前記ルールが、前記複数の検体分析装置のそれぞれが前記精度管理試料を測定して得られた複数の測定結果に基づいて、前記複数の検体分析装置のそれぞれに対して共通に適用される前記管理基準値を生成するルールを含む、請求項2~9の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項11】
前記ルールが、前記精度管理試料の製造ロットより前の製造ロットの精度管理試料から得られた測定結果を前記管理基準値の生成に用いるか否かに関するルールを含む、請求項2~10の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項12】
前記ルールが、ユーザが指定した値に基づいて前記管理基準値を生成する第2ルールをさらに含み、
前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成するためのルールが設定された場合、前記管理基準値を生成することが実行され、
前記第2ルールが設定された場合、前記ユーザによる指定値の入力を受け付けることをさらに備え、前記管理基準値を適用することでは、前記ユーザによる指定値を前記検体分析装置に適用する、
請求項2~11の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項13】
前記ルールが、前記精度管理試料の製造業者が指定した値に基づいて前記管理基準値を生成する第3ルールをさらに含み、
前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成するためのルールが設定された場合、前記管理基準値を生成することが実行され、
前記第3ルールが設定された場合、前記製造業者が指定した値を取得することをさらに備え、前記管理基準値を適用することでは、前記製造業者が指定した値を前記検体分析装置に適用する、
請求項2~12の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項14】
前記ルールの設定を受け付けることでは、複数の測定項目のうちの少なくとも一部の測定項目について、測定項目ごとに前記ルールの設定を受け付ける、請求項2~13の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項15】
前記管理基準値が、目標値および許容範囲を示す値を含む、請求項2~14の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項16】
前記ルールの設定を受け付けることでは、前記目標値および前記許容範囲のそれぞれに対して前記ルールの設定を受け付ける、請求項15に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項17】
前記管理基準値を適用することでは、前記検体分析装置を含む複数の検体分析装置に前記管理基準値を適用する、請求項1~16の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項18】
前記測定結果に基づいて前記管理基準値を生成すると、生成した前記管理基準値と前記測定結果とを含む画面情報を表示することをさらに備える、請求項1~17の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項19】
生成した前記管理基準値を外部認証に対応したフォーマットで出力することをさらに備え、
前記管理基準値を適用することは、出力された前記管理基準値の登録に関する入力を受け付けると実行される、請求項1~18の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項20】
前記フォーマットは、作成日の項目を含み、前記作成日が自動的に生成される、請求項19に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項21】
前記管理基準値を適用することでは、適用の実行を指示したユーザ名および実行日時を含む履歴の情報が前記コンピュータに記憶される、請求項1~20の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項22】
さらに、前記精度管理試料の測定結果を取得し、
前記管理基準値を生成することでは、取得した前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成する、請求項1~21の何れか一項に記載の検体分析装置に管理基準値を適用する方法。
【請求項23】
精度管理試料の管理基準値が適用される検体分析装置であって、
測定装置と、
前記測定装置に接続された、又は内蔵されたコンピュータと、を備え、
前記コンピュータが、
前記測定装置によって測定された前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成し、
前記検体分析装置に前記管理基準値を適用する、検体分析装置。
【請求項24】
検体分析装置に精度管理試料の管理基準値を適用するコンピュータに、
前記検体分析装置によって測定された前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成し、
前記検体分析装置に前記管理基準値を適用する、ことを実行させる、コンピュータプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体分析装置に管理基準値を適用する方法、検体分析装置、及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検査施設において精度管理試料を用いた内部精度管理が実施されている。内部精度管理においては、例えば非特許文献1に記載されているように、精度管理試料の目標値と許容幅を検査施設が個別に決定することが推奨されている。従って、検査施設の担当者は、精度管理試料を製造業者から受け取ると、精度管理対象の検体分析装置によって精度管理試料を複数回測定し、得られた複数の測定結果をコンピュータに入力し、市販の表計算ソフトウェアを用いて精度管理試料の目標値と許容幅(許容範囲)などの管理基準値を計算し、得られた管理基準値を精度管理対象の検体分析装置に入力している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Kinns H, et al.、“Internal quality control: best practice”、2016年9月18日、J Clin Pathol 2013;66:1027-1032. doi:10.1136/jclinpath-2013-201661
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、目標値および許容幅などの管理基準値を検査施設において個別に決定し、検体分析装置に入力する場合、担当者に多大な手間がかかるという問題がある。従って、検査施設における管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化することが望まれている。
【0005】
本発明は、検査施設における管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の方法は、コンピュータによって検体分析装置に精度管理試料の管理基準値を適用する方法であって、前記検体分析装置によって測定された前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成し、前記検体分析装置に前記管理基準値を適用することを含む。
【0007】
本発明の方法によれば、検査施設の担当者による精度管理試料の測定結果のコンピュータへの入力、得られた管理基準値の検体分析装置への入力等の作業が不要となり、検査施設における管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化することができる。
【0008】
本発明の検体分析装置は、精度管理試料の管理基準値が適用される検体分析装置であって、測定装置と、前記測定装置に接続されたコンピュータと、を備え、前記コンピュータが、前記測定装置によって測定された前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成し、前記検体分析装置に前記管理基準値を適用する。
【0009】
本発明の検体分析装置によれば、検査施設の担当者による精度管理試料の測定結果のコンピュータへの入力、得られた管理基準値の検体分析装置への入力等の作業が不要となり、検査施設における管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化することができる。
【0010】
本発明のコンピュータプログラムは、検体分析装置に精度管理試料の管理基準値を適用するコンピュータに、前記検体分析装置によって測定された前記精度管理試料の測定結果に基づいて前記管理基準値を生成し、前記検体分析装置に前記管理基準値を適用する、ことを実行させる
【0011】
本発明のコンピュータプログラムによれば、プログラムの実行によって、検査施設の担当者による精度管理試料の測定結果のコンピュータへの入力、得られた管理基準値の検体分析装置への入力等の作業が不要となり、検査施設における管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、施設に応じた管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】検体分析システムの全体構成を示す図である。
図2】検体分析装置の測定装置の構成を示すブロック図である。
図3】コンピュータの構成を示すブロック図である。
図4A】管理基準値を生成するためのルールの初回設定時、及び/又は設定したルールの変更時に行う処理を示すフローチャートである。
図4B】精度管理試料のロット更新時にQCファイルを登録し、管理基準値を生成し、検体分析装置に適用する処理を示すフローチャートである。
図4C】精度管理試料の測定処理を示すフローチャートである。
図5】記憶装置に記憶されたQCファイルの1例を示す図である。
図6図4AのS10のサブルーチンを示すフローチャートである。
図7】基準分析装置の選択と旧ロット参照数の受付を行うときのディスプレイの表示画面の1例を示す図である。
図8】管理基準値を生成するためのルールの設定対象となる測定項目の選択を受け付けるときにディスプレイに表示される画面の1例を示す図である。
図9】ターゲット値およびリミット値の生成ルールの受付を行うときのディスプレイの表示画面の1例を示す図である。
図10】チェックボックス(選択肢)と、選択肢が選択されたときに表の「ターゲット」の欄に表示される文言と、ターゲット値の生成ルールと、を示す図である。
図11A】チェックボックス(選択肢)と、チェックボックスが選択されたときに表の「リミット」の欄に表示される文言と、リミット値の生成ルールと、を示す図である。
図11B】チェックボックス(選択肢)と、チェックボックスが選択されたときに表の「リミット」の欄に表示される文言と、リミット値の生成ルールと、を示す図である。
図12図4BのS21のサブルーチンを示すフローチャートである。
図13】測定結果の選択の受付を行うときにディスプレイに表示される画面の1例を示す図である。
図14】ディスプレイに表示される基準値設定支援画像のチャートグラフ表示モードの1例を示す図である。
図15】ディスプレイに表示される基準値設定支援画像の%グラフ表示モードの1例を示す図である。
図16】ディスプレイに表示される内部精度管理設定シートの1例を示す図である。
図17】ディスプレイに表示される内部精度管理設定シートの1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る検体分析装置に管理基準値を適用する方法、検体分析装置及びコンピュータプログラムの実施形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、検体分析システム1の全体構成を示す図である。検体分析システム1は、病院や検査センター等の検査施設に設置される。図1に示すように、検体分析システム1は、検体分析装置2a、2b、2cを含む。検体分析装置2aは、測定装置3aと、測定装置3aに接続されたコンピュータ30aとを含む。検体分析装置2bは、検体分析装置2aと同様に、測定装置3bと、測定装置3bに接続されたコンピュータ30bとを含む。検体分析装置2cは、検体分析装置2aと同様に、測定装置3cと、測定装置3cに接続されたコンピュータ30cとを含む。コンピュータ30a、30b、30cは、LANケーブルを介して接続されており、互いに通信可能である。検体分析装置2a、2b、2cは、血液検体に含まれる血球を計数する血球計数装置である。検体分析装置2a、2b、2cは互いに同様の構成であるため、以下、検体分析装置2aについて説明する。
【0016】
検体分析装置2aには、精度管理試料による内部精度管理が行われる。精度管理試料は、所定の成分が所定の濃度含まれるように調製された試料であり、精度管理試料の製造業者によって製造される。検体分析システム1が設置された検査施設の担当者(検体分析システム1のユーザ)は、精度管理試料の製造業者から新しい製造ロットの精度管理試料が納品されると、検体分析装置2aによって精度管理試料を1回以上、好ましくは複数回測定する。コンピュータ30aは、精度管理試料の測定結果に基づいて当該精度管理試料の管理基準値を生成し、検体分析装置2aに適用する。精度管理試料の測定結果に基づいて生成される管理基準値は、精度管理試料の測定結果の目標値(以下、ターゲット値ともよぶ)及び/又は許容範囲を示す値である。目標値は、例えば、精度管理試料を1回測定して得られる測定結果、又は、精度管理試料を複数回測定して得られる複数の測定結果の平均値、中央値などの統計値である。許容範囲を示す値は、例えば、複数の測定結果の標準偏差又は当該標準偏差に定数を乗じた値(以下、リミット値(#)とよぶ)、及び/又は、複数の測定結果の変動係数又は当該変動係数に定数を乗じた値(以下、リミット値(%CV)とよぶ)である。以下の説明において、リミット値(#)及び/又はリミット値(%CV)を、リミット値ともよぶ。リミット値(%CV)を、複数の製造ロットの精度管理試料の測定結果から算出する場合、各製造ロットの精度管理試料の測定日数に基づいて変動係数の加重平均値を算出し、算出した加重平均値をリミット値(%CV)としてもよい。ユーザは、被検者の血液検体の測定に先立って、検体分析装置2aによって精度管理試料を測定する。検体分析装置2aによる精度管理試料の測定結果はコンピュータ30aで出力される。ユーザは、その測定結果と、検体分析装置2aに適用された管理基準値とを比較し、検体分析装置2aから報告可能な測定結果が出力され得るか否かを判断する。
【0017】
コンピュータ30aには、検体分析装置2aに管理基準値を適用するためのコンピュータプログラム(基準値適用プログラム)がインストールされている。基準値適用プログラムによって実行される検体分析装置に管理基準値を適用する方法は、後で詳しく説明する。
【0018】
図2は、検体分析装置2aの測定装置3aの構成を示すブロック図である。測定装置3aは、制御部4、通信部5、測定ユニット6を含む。制御部4、通信部5、測定ユニット6のそれぞれは、バスを介して接続される。通信部5は、コンピュータ30aと通信するための通信インターフェースを備える。通信インターフェースは、例えばEthernet(登録商標)インターフェースである。制御部4は、FPGA、メモリ等を有する。制御部4は、通信部5および測定ユニット6の各部の動作を制御する。
【0019】
測定ユニット6は、血液検体から測定試料を調製し、測定試料に含まれる血球及びヘモグロビンを検出する。測定ユニット6は、試料吸引部7、試料調製部8、及び測定部10を含む。試料吸引部7は、検体分析装置2aが受け付けた検体容器から血液検体を吸引し、試料調製部8に供給する。試料調製部8は、血液検体と、試薬とを混合して、赤血球及び血小板を検出するための第1測定試料と、白血球を検出するための第2測定試料と、ヘモグロビンを検出するための第3測定試料と、を調製し、測定部10に供給する。
【0020】
測定部10は、電気抵抗式検出部11、光学式検出部12及びヘモグロビン測定部13を含む。電気抵抗式検出部11は、フローセル11aを備え、シースフローDC検出法によって、フローセル11aをシース液とともに流れる第1測定試料に含まれる赤血球および血小板を検出する。光学式検出部12は、フローセル12aを備え、フローセル12aをシース液とともに流れる第2測定試料に含まれる白血球を、フローサイトメトリー法により検出する。ヘモグロビン測定部13は、セル13aを備え、セル13aに収容された第3測定試料に含まれるヘモグロビンを、SLS-ヘモグロビン法により検出する。各検出部11,12および測定部13は、対応する試料の測定値を表すデータを制御部4に送り、制御部4は、通信部5を介してコンピュータ30aにそのデータを出力する。上記では、血液検体を測定する場合を説明したが、測定ユニット6は、精度管理試料を測定する場合も同様の動作を行う。測定ユニット6として、例えば、米国特許公開第2016-0282377号公報に記載の装置が使用でき、当該公報は参照により本明細書に組み込まれる(U.S. Patent Publication No. 2016-0282377 is hereby incorporated by reference)。
【0021】
図3は、コンピュータ30aの構成を示すブロック図である。コンピュータ30aは、制御部31、記憶装置35、入出力インターフェース36、読出装置37、通信インターフェース38、画像出力インターフェース39、および表示入力部50を含む。制御部31は、CPU32、ROM33、およびRAM34を含む。CPU32、ROM33、RAM34、記憶装置35、入出力インターフェース36、読出装置37、通信インターフェース38、および画像出力インターフェース39は、互いにバスによってデータ通信可能に接続されている。表示入力部50は、ディスプレイ、キーボードおよびマウスを含む。
【0022】
CPU32は、ROM33に記憶されているコンピュータプログラム及びRAMにロードされたコンピュータプログラムを実行することが可能である。ROM33は、マスクROM、PROM、EPROM、EEPROM等によって構成されており、CPU32に実行されるコンピュータプログラムおよびこれに用いるデータが記憶されている。
【0023】
RAM34は、SRAM、DRAM等によって構成されている。RAM34は、ROM33及び記憶装置35に記憶されているコンピュータプログラムを実行するときに、CPU32の作業領域として利用される。
【0024】
記憶装置35は、ソリッドステートドライブ、ハードディスクドライブ等によって構成されており、オペレーティングシステム、アプリケーションプログラム等、CPU32に実行させるための種々のコンピュータプログラム及び当該コンピュータプログラムの実行に用いるデータが記憶されている。記憶装置35には、基準値適用プログラムおよびその実行に用いるデータも記憶されている。また記憶装置35には、後述のQCファイル(図5)が記憶されている。
【0025】
読出装置37は、フレキシブルディスクドライブ、CD-ROMドライブ、DVD-ROMドライブ等によって構成されており、可搬型記録媒体に記録されたコンピュータプログラム又はデータを読み出すことができる。
【0026】
入出力インターフェース36は、例えばUSB、IEEE1394等のインターフェースから構成されている。入出力インターフェース36には、表示入力部50を構成するキーボードおよびマウスからなる入力デバイスが接続されており、ユーザが当該入力デバイスを使用することにより、制御部31にデータを入力することが可能である。
【0027】
通信インターフェース38は、例えばEthernet(登録商標)インターフェースである。制御部31は、当該通信インターフェース38により、所定の通信プロトコルを使用してネットワークを介して接続された測定装置3a及びコンピュータ30b、30cとデータの送受信が可能である。
【0028】
画像出力インターフェース39は、表示入力部50のディスプレイに接続されており、CPU32から与えられた画像データに応じた映像信号をディスプレイに出力する。ディスプレイは、入力された映像信号にしたがって、画像を画面に表示する。
【0029】
記憶装置35には、例えば米マイクロソフト社が製造販売するWindows(登録商標)のグラフィカルユーザインターフェース環境を提供するオペレーティングシステムがインストールされている。以下では、基準値適用プログラムが当該オペレーティングシステム上で動作する場合を説明する。
【0030】
以下、基準値適用プログラムの実行によりコンピュータ30aの制御部31が実行する、管理基準値を検体分析装置2a、2b、2cに適用する方法を、具体的に説明する。図4Aは、管理基準値を生成するためのルールの初回設定時、及び/又は設定したルールの変更時に行う処理を示すフローチャートであり、図4Bは、精度管理試料のロット更新時にQCファイルを登録し、管理基準値を生成し、検体分析装置2a、2b、2cに適用する処理を示すフローチャートである。図4Cは、毎日の精度管理試料の測定処理を示すフローチャートである。
【0031】
図4Aに示すように、コンピュータ30aの制御部31は、管理基準値を生成するためのルールの初回設定時、及び/又は設定したルールの変更時には、管理基準値を生成するためのルールの設定を受け付ける(S10)。管理基準値を生成するためのルールとして、(1)精度管理試料を測定して得られた測定結果に基づいて管理基準値を生成する第1ルール、(2)ユーザが指定した値に基づいて管理基準値を生成する第2ルール、及び、(3)精度管理試料の製造業者が指定した値に基づいて管理基準値を生成する第3ルールのいずれかが設定可能である。ルール設定のサブルーチンは、後で詳しく説明する。
【0032】
図4Bに示す処理は、精度管理試料の新ロットが検査施設に到着したときに実行される。コンピュータ30aの制御部31は、記憶装置35に記憶されたQCファイルに、その新ロットの情報を登録する(S20)。コンピュータ30aの制御部31は、新ロットの情報を、精度管理試料に同封されている記録媒体、又は、コンピュータ30aにインターネットを介して接続された精度管理試料又は検体分析装置の製造業者のコンピュータから読み出してQCファイルに登録する。これにより、コンピュータ30aでは、記憶装置35に記憶されたQCファイルの情報が、新ロットの情報を含むように更新される。
【0033】
図5は、記憶装置35に記憶されたQCファイルの1例を示している。図5において、「装置ID」の欄は、検体分析装置の識別番号等の識別情報を示す。「マテリアル」の欄は、精度管理試料の濃度レベルを示し、「ロット番号」の欄は、精度管理試料のロット番号を示す。「測定連番」は、測定回数に応じて1つずつ大きくなる数値である。「項目ID」の欄は、測定項目を示している。「ターゲット値」、「リミット値(#)」、「レンジ(%)」は、それぞれ、精度管理試料の測定値のターゲット値、リミット値(#)、リミット値(#)÷ターゲット値を示している。
【0034】
ステップS20(図4B)の処理が実行されると、図5の太線枠で囲んだ「ターゲット値」、「リミット値(#)」、「レンジ(%)」の数値として、精度管理試料の製造業者が指定した数値(表示値)が記憶される。
【0035】
ユーザは、コンピュータ30aの制御部31がステップS21の処理を実行するにあたり、新ロットの精度管理試料を検体分析装置2aにより1回又は複数回測定する。コンピュータ30aの制御部31は、測定の都度、測定装置3aから受信した試料の測定値を表すデータを解析し、その結果を精度管理試料の測定結果として記憶装置35に記憶する(S21)。
【0036】
次に、コンピュータ30aの制御部31は、精度管理の対象となる測定項目(例えば、後述する図8の画面においてルール設定の対象として選択された測定項目、又は、所定の測定項目)から1つの測定項目を選択する(S22)。コンピュータ30aの制御部31は、選択した測定項目に平均値又は統計値を用いて管理基準値を生成するルールが設定されているか否かを判定する(S23)。
【0037】
コンピュータ30aの制御部31は、ステップS23において、選択した測定項目に平均値又は統計値を用いて管理基準値を生成するルールが設定されていると判定(S23:Y)すると、精度管理試料の測定結果を取得すると共に、ステップS10で設定されたルールに基づいて、検体分析装置2a、2b、2cにおける新ロットの精度管理試料の管理基準値を生成する(S24)。この管理基準値を生成するサブルーチンは、後で詳しく説明する。
【0038】
次いで、コンピュータ30aの制御部31は、検体分析装置2a、2b、2cに、ステップS24で生成した管理基準値を適用する(S25)。具体的には、コンピュータ30aの制御部31は、ステップS24で生成した検体分析装置2aのターゲット値、リミット値(#)、リミット値(#)÷ターゲット値を、記憶装置35に記憶されたQCファイルの「ターゲット値」、「リミット値」、「レンジ」の欄の値(精度管理試料の製造業者の指定値)に上書きする。また、コンピュータ30aの制御部31は、ステップS24で生成した検体分析装置2aのターゲット値、リミット値(#)、リミット値(#)÷ターゲット値を、検体分析装置2b、2cの記憶装置35に記憶されたQCファイルの「ターゲット値」、「リミット値」、「レンジ」の欄に書き込む。なお、コンピュータ30aの制御部31は、さらに、管理基準値の適用の実行日時および、適用を実行したユーザ名を記憶装置35に記憶してもよい。
【0039】
コンピュータ30aの制御部31は、ステップS23において、選択した測定項目に平均値又は統計値を用いて管理基準値を生成するルールが設定されていないと判定(S23:N)すると、選択した測定項目にユーザが指定した値を用いて管理基準値を生成するルールが設定されているか否かを判定する(S26)。コンピュータ30aの制御部31は、ステップS26において、選択した測定項目にユーザが指定した値を用いて管理基準値を生成するルールが設定されていると判定(S26:Y)すると、ユーザが指定した値を記憶装置35から読み出す(S27)。次いで、コンピュータ30aの制御部31は、検体分析装置2a、2b、2cに、ステップS27で読み出した値を管理基準値として適用する(S25)。具体的には、コンピュータ30aの制御部31は、ステップS27で読み出したターゲット値(指定値)、リミット値(指定値(%))×ターゲット値、リミット値(指定値(%))を、コンピュータ30a、30b、30cのそれぞれの記憶装置35に記憶されたQCファイルの「ターゲット値」、「リミット値」、「レンジ」の欄の値(精度管理試料の製造業者が指定した値)に上書きする。
【0040】
コンピュータ30aの制御部31は、ステップS26において、選択した測定項目にユーザが指定した値を用いて管理基準値を生成するルールが設定されていないと判定(S26:N「表示値を利用」)すると、処理をステップS28に進める。なお、この場合、選択した測定項目には、精度管理試料の製造業者が指定した値(表示値)を利用するルールが設定されている。精度管理試料の製造業者が指定した値は、ステップS20のQCファイル登録処理によりQCファイルの「ターゲット値」、「リミット値」、「レンジ」の欄に既に記憶されているため、ステップS25の処理はスキップされる。
【0041】
コンピュータ30aの制御部31は、ステップS25の処理の後、又は、ステップS26で否と判定された後、精度管理の対象となる測定項目が他にあるか否かを判定する(S28)。コンピュータ30aの制御部31は、ステップS28において、精度管理の対象となる測定項目が他にあると判定(S28:Y)すると、処理をステップS22に戻し、精度管理の対象となる測定項目が他にないと判定(S28:N)すると、管理基準値の適用処理を終了する。
【0042】
そして、新ロットの管理基準値が検体分析装置2aに適用された後では、ユーザは、通常毎日、新ロットの精度管理試料を検体分析装置2aにより測定する。図4Cに示すように、コンピュータ30aの制御部31は、測定装置3aから受信した試料の測定値を表すデータを解析し、その結果を精度管理試料の測定結果として記憶装置35に記憶する(S31)。
【0043】
次いでコンピュータ30aの制御部31は、記憶装置35に記憶されたQCファイルにおける管理基準値(「ターゲット値」、「リミット値」、「レンジ」の各数値)の読み出しを行う(S32)。
【0044】
そして、コンピュータ30aの制御部31は、読み出した管理基準値と、精度管理試料の測定結果とを、QC結果として、表示入力部50のディスプレイに出力する(S33)。
【0045】
図6は、図4AのステップS10で示したルール設定の受付処理のサブルーチンを示している。この処理では、まず、コンピュータ30aの制御部31は、検体分析装置2a、2b、2cのうち、精度管理の基準となる基準分析装置の選択を受け付ける(S101)。なお、基準分析装置を選択しない場合には、ステップS101の処理は省略することができる。次いで、コンピュータ30aの制御部31は、管理基準値(例えば、リミット値(#)及び/又はリミット値(%CV))を計算する際に過去の製造ロット(旧ロット)の精度管理試料の測定結果を用いる場合には、計算に用いる旧ロットの数(参照数)を受け付ける(S102)。ステップS101,S102の処理は、順序を逆にしてもよく、また、同時に行われてもよい。
【0046】
図7は、ステップS101における基準分析装置の選択とステップS102における旧ロット参照数の受付を行うときに表示入力部50のディスプレイに表示される画面の1例を示している。この画面において、「測定部名称」の欄はユーザが予め付与した検体分析装置2a、2b、2cの名称を示し、「分析装置ID」は検体分析装置2a、2b、2cの識別情報を示す。基準分析装置は、表示入力部50のマウス又はキーボードを操作し、「基準分析装置」の欄におけるチェックボックスの1つを選択することによって選択される。
【0047】
旧ロット参照数は、表示入力部50のマウス又はキーボードを操作し、「旧ロット参照設定」の欄のプルダウンから数値を選択することによって選択可能である。図7では、基準分析装置として「検体分析装置2a」が選択され、旧ロット参照数として過去3ロットが選択された例を示している。
【0048】
図7の「表示色」の欄は、検体分析装置2a、2b、2c毎に異なる色が指定されており、後述する基準値設定支援画面(図14、15)において、検体分析装置2a、2b、2cの識別を容易にするために、各検体分析装置に対応して表示される点および線の色を示している。
【0049】
図6に戻って、ステップS102の後、コンピュータ30aの制御部31は、管理基準値を生成するためのルールを設定する測定項目の選択を受け付ける(S103)。ここで選択した測定項目が、管理基準値を生成するためのルールの設定対象となる。ステップS103において、管理基準値を生成するためのルールの設定対象となる測定項目は、精度管理試料の濃度レベル毎に選択される。
【0050】
図8は、管理基準値を生成するためのルールの設定対象となる測定項目の選択を受け付けるときに表示入力部50のディスプレイに表示される画面の1例を示している。「マテリアル」は、精度管理試料の濃度レベルを選択するための欄である。精度管理試料には、例えば、低濃度レベル、中濃度レベル、高濃度レベルがあり、「Contorol Level 1」は低濃度レベルを示し、「Contorol Level 2」は中濃度レベルを示し、「Contorol Level 3」は高濃度レベルを示す。図8では、低濃度レベルである「Contorol Level 1」が選択されており、この状態で、「Contorol Level 1」に対応する、管理基準値を生成するためのルールの設定対象となる測定項目の選択が受け付けられる。「項目」の欄は、検体分析装置2aの各測定項目であり、表示入力部50のマウス又はキーボードを操作し、「設定対象」の欄のチェックボックスを選択すると、対応する測定項目が、管理基準値を生成するためのルールの設定対象として選択される。図8では、RBC(赤血球数)、HGB(血色素量)、HCT(ヘマクリット値)、PLT(血小板数)、WBC(白血球数)が管理基準値を生成するためのルールの設定対象として選択されている。
【0051】
再度、図6に戻って、ステップS103の後、コンピュータ30aの制御部31は、ターゲット値の生成ルールの設定を受け付け(S104)、その後、リミット値の生成ルールの設定を受け付ける(S105)。ステップS104,S105において、ターゲット値およびリミット値の生成ルールの設定は、精度管理試料の濃度レベル毎に受け付けられる。なお、ステップS104,S105の処理は、順序を逆にしてもよく、また、同時に行われてもよい。
【0052】
図9は、ターゲット値およびリミット値の生成ルールの設定の受付を行うときに表示入力部50のディスプレイに表示される画面の1例を示している。この画面でも、図8で示した画面と同様に、「マテリアル」の欄において、精度管理試料の濃度レベルが選択される。
【0053】
図9の画面では、「設定項目」、「ターゲット」、「リミット」を含む表101と、「算出パターン」の領域102と、が表示される。表101の「設定項目」の欄には、ステップS103で選択した全ての測定項目が表示される。表101の「ターゲット」の欄および「リミット」の欄には、対応する測定項目について、それぞれ、ターゲット値の生成ルール、およびリミット値の生成ルールが表示される。表101は、表示入力部50のマウス又はキーボードの操作により、任意の1行を選択することが可能に構成されており、選択された行は、他の行と異なる色で表示される。図9の例では、測定項目がRBCの行が選択されている。「算出パターン」の領域102には、項目名として、表101で選択された行の測定項目(図9の例ではRBC)が表示される。すなわち、図9の画面では、測定項目ごとに生成ルールの設定の受付が可能となっている。
【0054】
「算出パターン」の領域102は、ターゲット値の生成ルールの設定を受け付けるための領域103と、リミット値の生成ルールの設定を受け付けるための領域104と、を含む。ターゲット値に関する領域103は、新ロットの平均値を使用してターゲット値を生成するルールの設定を受け付けるための領域103aと、ユーザが指定した値を使用してターゲット値を生成するルールの設定を受け付けるための領域103bと、精度管理試料の製造業者が指定した値を使用してターゲット値を生成するルールの設定を受け付けるための領域103cと、を含む。リミット値に関する領域104は、新ロット又は旧ロットの統計値を使用してリミット値を生成するルールの設定を受け付けるための領域104aと、ユーザが指定した値を使用してリミット値を生成するルールの設定を受け付けるための領域104bと、精度管理試料の製造業者が指定した値を使用してリミット値を生成するルールの設定を受け付けるための領域104cと、を含む。
【0055】
ターゲット値の生成ルールとしては、(1)精度管理試料を測定して得られた測定結果に基づいて管理基準値を生成する第1ルール(2)ユーザが指定した値に基づいて管理基準値を生成する第2ルール(3)精度管理試料の製造業者が指定した値に基づいて管理基準値を生成する第3ルール、から1つを選択可能である。ユーザは、第1ルールを設定する場合、(1)「新ロットの平均値を使用する」のチェックボックスを選択し、第2ルールを設定する場合、(2)「指定の値を使用する」のチェックボックスを選択し、第3ルールを設定する場合、(3)「表示値を利用する」のチェックボックスを選択する。ユーザが(1)「新ロットの平均値を使用する」を選択した場合には、さらに、対象装置として、(1a)「分析装置毎の平均値を使用する」のチェックボックス、(1b)「基準分析装置の平均値を使用する」のチェックボックス、(1c)「全ての分析装置の平均値を使用する」のチェックボックス、から1つを選択可能である。このように、ターゲット値の生成ルールは、チェックボックス(選択肢)を選択することにより設定可能である。(1)「新ロットの平均値を使用する」のチェックボックスが選択された場合、ステップS23(図4B)の処理において肯定判定される。(2)「指定の値を使用する」のチェックボックスが選択された場合、ステップS26において肯定判定される。(3)「表示値を利用する」のチェックボックスが選択された場合、ステップS26において否定判定される。
【0056】
図10は、チェックボックス(選択肢)と、チェックボックスが選択されたときに表101の「ターゲット」の欄に表示される文言と、ターゲット値の生成ルールと、を示している。具体的には、上記の(1)(1a)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「ターゲット」の欄には、「平均値(分析装置ごと)」の文言が表示される。この場合には、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれが新ロットの精度管理試料を複数回測定し、コンピュータ30a、30b、30cのそれぞれが、対応する検体分析装置2a、2b、2cによって得られた複数の測定結果に基づいてステップS24(図4B)の処理を実行することによって、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに個別のターゲット値が生成される。
【0057】
上記の(1)(1b)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「ターゲット」の欄には、「平均値(基準分析装置)」の文言が表示される。この場合には、図7の画面において基準分析装置として選択した検体分析装置(図7の例では、検体分析装置2a)が新ロットの精度管理試料を複数回測定し、対応するコンピュータ30aが、検体分析装置2aによって得られた複数の測定結果に基づいてステップS24(図4B)の処理を実行することによって、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるターゲット値が生成される。
【0058】
上記の(1)(1c)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「ターゲット」の欄には、「平均値(全ての分析装置)」の文言が表示される。この場合には、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれが新ロットの精度管理試料を複数回測定し、コンピュータ30aが、検体分析装置2a、2b、2cによって得られた全ての測定結果に基づいてステップS24(図4B)の処理を実行することによって、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるターゲット値が生成される。
【0059】
上記の(2)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「ターゲット」の欄には、ユーザが表示入力部50のマウス又はキーボードを操作して領域103bに入力した値が表示される。この場合には、「ターゲット」の欄に表示された値が、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるターゲット値になる。
【0060】
上記の(3)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「ターゲット」の欄には、精度管理試料の製造業者が指定したターゲット値が表示される。精度管理試料の製造業者が指定したターゲット値は、記憶装置35に記憶されているQCファイル(図5)の「ターゲット値」の欄に記載されている。この場合には、「ターゲット」の欄に表示された値が、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるターゲット値になる。
【0061】
リミット値の生成ルールとしては、(4)精度管理試料を測定して得られた測定結果に基づいて管理基準値を生成する第1ルール(5)ユーザが指定した値に基づいて管理基準値を生成する第2ルール(6)精度管理試料の製造業者が指定した値に基づいて管理基準値を生成する第3ルール、から1つを選択可能である。ユーザは、第1ルールを設定する場合、(4)「統計値を使用する」のチェックボックスを選択し、第2ルールを設定する場合、(5)「指定の値を使用する」のチェックボックスを選択し、第3ルールを設定する場合、(6)「表示値を利用する」のチェックボックスを選択する。ユーザが(4)「統計値を使用する」を選択した場合には、さらに、リミット値の算出に用いる測定結果を、新ロットの精度管理試料の測定結果から算出するか、旧ロットの精度管理試料の測定結果から算出するか、を選択するため、(4a)「新ロット」のチェックボックス、(4b)「旧ロット」のチェックボックス、から1つを選択可能である。さらに、対象装置として、(4a1) (4b1)「分析装置毎の統計値を使用する」のチェックボックス、(4b1) (4b2)「基準分析装置の統計値を使用する」のチェックボックス、(4a1) (4b1)「全ての分析装置の統計値を使用する」のチェックボックス、から1つを選択可能である。このように、リミット値の生成ルールは、チェックボックス(選択肢)を選択することにより設定可能である。(4)「統計値を使用する」のチェックボックスが選択された場合、ステップS23(図4B)の処理において肯定判定される。(5)「指定の値を使用する」のチェックボックスが選択された場合、ステップS26において肯定判定される。(6)「表示値を利用する」のチェックボックスが選択された場合、ステップS26において否定判定される。
【0062】
図11A、11Bは、チェックボックス(選択肢)と、チェックボックスが選択されたときに表101の「リミット」の欄に表示される文言と、リミット値の生成ルールと、を示している。具体的には、上記の(4)(4a)(4a1)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、「新ロット(分析装置ごと)」の文言が表示される。この場合には、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれが新ロットの精度管理試料を複数回測定し、コンピュータ30a、30b、30cのそれぞれが、対応する検体分析装置2a、2b、2cによって得られた複数の測定結果に基づいてステップS24(図4B)の処理を実行することによって、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに個別のリミット値が生成される。
【0063】
上記の(4)(4a)(4a2)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、「新ロット(基準分析装置)」の文言が表示される。この場合には、図7の画面において基準分析装置として選択した検体分析装置(図7の例では、検体分析装置2a)が新ロットの精度管理試料を複数回測定し、対応するコンピュータ30aが、検体分析装置2aによって得られた複数の測定結果に基づいてステップS24(図4B)の処理を実行することによって、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるリミット値が生成される。
【0064】
上記の(4)(4a)(4a3)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、「新ロット(全ての分析装置)」の文言が表示される。この場合には、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれが新ロットの精度管理試料を複数回測定し、コンピュータ30aが、検体分析装置2a、2b、2cによって得られた全ての測定結果に基づいてステップS24(図4B)の処理を実行することによって、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるリミット値が生成される。
【0065】
上記の(4)(4b)(4b1)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、「旧ロット(分析装置ごと)」の文言が表示される。この場合には、(4)(4a)(4a1)のチェックボックスが選択された場合と同様の処理を、旧ロットの精度管理試料の測定結果に基づいて実行することにより、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに個別のリミット値が生成される。
【0066】
上記の(4)(4b)(4b2)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、「旧ロット(基準分析装置)」の文言が表示される。この場合には、(4)(4a)(4a2)のチェックボックスが選択された場合と同様の処理を、旧ロットの精度管理試料の測定結果に基づいて実行することにより、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるリミット値が生成される。
【0067】
上記の(4)(4b)(4b3)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、「旧ロット(全ての分析装置)」の文言が表示される。この場合には、(4)(4a)(4a3)のチェックボックスが選択された場合と同様の処理を、旧ロットの精度管理試料の測定結果に基づいて実行することにより、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるリミット値が生成される。
なお、リミット値の生成において、旧ロットの精度管理試料を何ロット分使用するかは、図7の「参照数」の欄において選択された数値に従う(後述する図13の画面において「旧ロット」のチェックボックスが選択された場合には、当該選択に従う)。
【0068】
ユーザが(4)「統計値を使用する」を選択した場合には、図9の領域104aの「統計値を使用する」の欄の下に、mSD(mは1,2,3,4から選択可能な数値)も表示されている。ユーザがmの数値を表示入力部50のマウス又はキーボードを操作して選択することにより、標準偏差及び変動係数のそれぞれにmを乗じた値を、リミット値(#)およびリミット値(%CV)として決定することが選択される。例えば3SDは3σの標準偏差である。
【0069】
上記の(5)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、ユーザが表示入力部50のマウス又はキーボードを操作して領域104bに入力した値が表示される。この場合には、「リミット」の欄に表示された値が、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるリミット値になる。
【0070】
上記の(6)のチェックボックスが選択された場合には、図9の表101の「リミット」の欄には、精度管理試料の製造業者が指定したリミット値(#)が表示される。精度管理試料の製造業者が指定したリミット値(#)は、記憶装置35に記憶されているQCファイル(図5)の「リミット値」の欄に記載されている。この場合には、「リミット」の欄に表示された値が、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して共通に適用されるリミット値になる。
【0071】
図12は、図4BのS24のサブルーチンを示している。上記の図4Bで説明したように、新ロットの精度管理試料の登録を行う場合には、S24において、コンピュータ30aの制御部31は、精度管理試料の測定結果を取得し、図4AのS10で設定したルールに基づいて管理基準値の生成を行う。
【0072】
コンピュータ30aの制御部31は、管理基準値の生成に用いる精度管理試料の測定結果の選択を受け付ける(S211)。図13は、測定結果の選択の受付を行うときに表示入力部50のディスプレイに表示される画面の1例を示している。「マテリアル」は、精度管理試料の濃度レベルを選択するための欄である。これにより、精度管理試料の濃度レベルごとに測定結果の選択が可能である。「ロット」の表110には、測定結果が記憶されている精度管理試料がロット番号毎に、登録日が新しいものから降順に表示されている。1行名に表示されているロット番号がQC-03571101の精度管理試料は新ロットであり、他の精度管理試料は旧ロットである。この表示おいて、「対象」又は「旧ロット」のチェックボックスが選択された精度管理試料の測定結果が、選択される。図9の画面の領域104aにおいて「新ロット」が選択されていた場合には、新ロットであるロット番号がQC-03571101の精度管理試料に対応する「対象」欄のチェックボックスのみが選択された状態で、図13の画面が表示される。図9の画面の領域104aにおいて「旧ロット」が選択されていた場合には、図7の「参照数」において選択された参照数に応じて、「旧ロット」欄のチェックボックスが選択された状態で、図13の画面が表示される。図13の画面は、図9の画面の領域104aにおいて「新ロット」が選択された場合の例を示している。ユーザが選択の変更を望む場合、表示入力部50のマウス又はキーボードを操作して、「対象」又は「旧ロット」のチェックボックスを選択することにより、選択を変更可能である。
【0073】
図13の「取得プロット」の領域111は、「ロット」の表110で選択された精度管理試料の測定結果から、管理基準値の生成に使用する測定結果を選択するための領域である。「全プロット」のチェックボックスが選択されると、「ロット」の表110で選択された精度管理試料の全ての測定結果が管理基準値の生成に使用される。「開始プロット:校正後_終了プロット:最終プロット」のチェックボックスが選択されると、「ロット」の表110で選択された精度管理試料の測定結果のうち、測定を実行した検体分析装置2a、2b、2cに対して校正処理が行われた後に得られた測定結果が管理基準値の生成に使用される。「期間」のチェックボックスが選択されると、「ロット」の表110で選択された精度管理試料の測定結果のうち、「開始日」の欄に入力された日付から「終了日」の欄に入力された日付までの期間に得られた測定結果が管理基準値の生成に使用される。「プロット番号」のチェックボックスが選択されると、「ロット」の表110で選択された精度管理試料の測定結果のうち、「開始プロット」の欄に入力された数値から「終了プロット」の欄に入力された数値までの測定結果が管理基準値の生成に使用される。例えば図13の例では、1番目に得られた測定結果から300番目に得られた測定結果までが管理基準値の生成に使用される。
【0074】
図13のチェックボックスの選択の完了後、OKボタンの選択がされると、図12のステップS212において、コンピュータ30aの制御部31は、選択内容に応じて、記憶装置35から測定結果を読み出す。選択された測定結果がコンピュータ30aの記憶装置35に記憶されていない場合、コンピュータ30aの制御部31は、他の検体分析装置2b、2cのコンピュータ30b、30cに対し、管理基準値の生成に必要となる精度管理試料の測定結果を要求し、受信する。例えば、上記の(1)(1a)、(1)(1c)、(4)、(4a)(4a1)又は(4)(4a)(4a3)のチェックボックスが選択された場合には、コンピュータ30aの制御部31は、コンピュータ30b、30cに対し、管理基準値の生成に必要となる精度管理試料の測定結果を要求し、受信する。
【0075】
次いで、コンピュータ30aの制御部31は、ターゲット値を生成する(S213)。コンピュータ30aの制御部31は、ステップS10で設定を受け付けたルールに基づいて、ステップS212で取得した複数の測定結果の平均値を算出し、ターゲット値を生成する(S213)。次いで、コンピュータ30aの制御部31は、リミット値を生成する(S214)。コンピュータ30aの制御部31は、ステップS10で設定を受け付けたルールに基づいて、ステップS212で取得した複数の測定結果の標準偏差及び変動係数を算出し、リミット値を生成する(S214)。なお、S213、S214の処理の実行順序は逆でもよい。
【0076】
次いで、図12のS215において、コンピュータ30aの制御部31は、表示入力部50のディスプレイに、ステップS213、214で生成されたターゲット値、リミット値(管理基準値)を含む基準値設定支援画面を表示させる。基準値設定支援画面は、初期画面は図14に示すチャートグラフ表示モードで表示され、図15に示す%グラフ表示モードに切り替え可能である。図14は、チャートグラフ表示モードで表示された基準値設定支援画面の1例を示している。基準値設定支援画面は、精度管理試料の濃度レベルごと、測定項目ごとに表示可能であり、図14の画面では、精度管理試料が新ロットであり、精度管理試料の濃度レベルが「Control Level 1」であり、測定項目がRBCであり、管理基準値の生成ルールとして、分析装置毎の平均値および統計値を使用することが選択された例を示している。基準値設定支援画面は、画面上部のツールバー領域60、ツールバー領域60の下側に配置されるマテリアル領域80、およびマテリアル領域80の下側に配置されるチャートグラフ領域90を含む。ツールバー領域60およびマテリアル領域80は、チャートグラフ表示モードおよび%グラフ表示モードに共通の画面領域であり、モードを切り替えても表示内容は変更されない。
【0077】
ツールバー領域60には、チャートグラフ領域90の画面をチャートグラフ表示モードに切り替えるためのボタン61、チャートグラフ領域90の画面を%グラフ表示モードに切り替えるためのボタン71と、基準値設定支援画面を図16に示す内部精度管理設定シート画面に切り替えるためのボタン72、などが表示されている。マテリアル領域80には、精度管理試料の濃度レベル、ロット番号、測定結果の登録日、管理基準値の生成の対象となっている検体分析装置2a,2b,2cの名称、精度管理試料の測定数、測定日数が表示される。
【0078】
チャートグラフ領域90には、生成されたターゲット値を検体分析装置2a,2b,2cごとに表示するためのターゲット値表示領域62と、生成されたリミット値を検体分析装置2a,2b,2cごとに表示するためのリミット値表示領域63と、チャートグラフを表示するためのチャートグラフ領域64と、が表示される。
【0079】
チャートグラフ領域64の縦軸は、RBC数の大小を示している。チャートグラフ領域64の横の中心線69は、精度管理試料の製造業者から提供されたターゲット値を示している。領域65は、検体分析装置2aの管理基準値を示す領域であり、点65aは、ステップS213で算出されたターゲット値を示し、2つの点線65bは、ステップS214で算出されたリミット値(この例では、ターゲット値の3SDがリミット値)を示し、縦線65cは、ターゲット値の2SDの範囲を示している。領域66、67は、それぞれ検体分析装置2b,2cの管理基準値を示す領域であり、領域65と同様に、ターゲット値、リミット値などを示している。領域68は、検体分析装置2a、2b,2cの全てから得られた測定結果に基づいて生成されたターゲット値を示す領域であり、測定結果の平均値と、平均の2SDの範囲を示している。領域65から68の表示より、ユーザは検体分析装置2a、2b,2cの管理基準値を俯瞰して確認することができる。
【0080】
チャートグラフ領域64の右半分の横軸は、精度管理試料の測定数を示しており、左から順に、1回目の測定、2回目の測定、3回目の測定を示している。折れ線グラフ70は、検体分析装置2a、2b,2c毎に3本示されている。各折れ線グラフのプロットの高さ位置が、RBC数の大小を示している。それぞれの折れ線グラフ70は、図7の「表示色」の欄で指定された色で表示されており、どの折れ線グラフがどの検体分析装置のものであるか、容易に識別可能になっている。折れ線グラフ70の表示により、ユーザは、それぞれの検体分析装置2a、2b,2cの測定結果の推移を比較して確認することができ、測定結果のばらつきや変動の傾向を確認することができる。
【0081】
図14のツールバー領域60において、ボタン71を選択することで、チャートグラフ領域90の表示がチャートグラフ表示モードから、図15に示す%グラフ表示モードに切り換えられる。
【0082】
図15は、チャートグラフ領域90の表示が%グラフ表示モードに切り換えられた基準値設定支援画像の1例を示している。チャートグラフ領域90には、変動係数グラフ75が表示されている。変動係数グラフ75の縦軸は、変動係数の大小を示している。変動係数グラフ75には、検体分析装置2a、2b,2cのそれぞれに、折れ線グラフ75a、75b、75cが表示されている。折れ線グラフ75a、75b、75cの白抜きの四角は、旧ロットの精度管理試料の測定結果の変動係数であり、左の方が古いロットである。折れ線グラフ75a、75b、75cの内側が塗りつぶされた四角は、新ロットの精度管理試料の測定結果の変動係数である。折れ線グラフ75a、75b、75cにより、ユーザは、検体分析装置2a、2b,2cのそれぞれについて、測定結果の変動係数の大きさ、および変動係数の推移を比較して確認することができる。
【0083】
ユーザは、図14図15の基準値設定支援画面の表示内容から、生成されたターゲット値およびリミット値が適切か否かを判断する。ユーザは、適切と判断した場合には、ツールバー領域60において、ボタン72を選択する。
【0084】
コンピュータ30aの制御部31は、図12のステップS216で、表示入力部50のディスプレイに内部精度管理設定シートを表示させる。
【0085】
図16および図17は、内部精度管理設定シート73の表示例を示す図である。内部精度管理設定シート73は、生成した管理基準値がISO認証など外部認証に対応したフォーマットで表示されたシートである。また内部精度管理設定シート73は、電子ファイルとして記憶装置35に記憶され、プリンタで印刷することが可能である。
【0086】
図16は、内部精度管理設定シート73の上半分を示しており、スクロールバー78を操作することにより、図17に示す内部精度管理設定シート73の下半分が表示される。図16に示す内部精度管理設定シート73の上半分には、作成者、作成日、承認者、承認日の項目を含む表73aが、報告書としても使用可能な形式で表示されている。表73aには、各項目の空欄に表示入力部50のキーボードを用いて文字を入力することが可能である。従って、ユーザは、表73aに作成者、承認者等の情報を入力して内部精度管理設定シート73を印刷してもよいし、表73aが空欄のまま内部精度管理設定シート73を印刷し、作成者、承認者等の情報を手書きに記入してもよい。一例として、表73aは、作成者が表示入力部50のキーボードを用いて入力され、作成日が制御部31aにより自動入力されてもよい。この場合、作成者が内部精度管理設定シート73を印刷し、承認者が承認者名及び承認日を手書きで記入する。
【0087】
内部精度管理設定シート73の上半分には、さらに、承認者による承認の対象となる精度管理試料、検体分析装置の情報が表示されている。図17に示す内部精度管理設定シート73の下半分には、生成されたターゲット値およびリミット値が、検体分析装置ごと、測定項目ごとに表示されている。
【0088】
図16および図17の表示画面では、右側に登録内容を設定することを示すチェックボックスが表示される。このチェックボックスが選択されると、ターゲット値およびリミット値の一方のみを登録することが可能である。「TARGETのみ登録する」が選択された場合、ステップS213で生成された新ロットのターゲット値が登録され、リミット値(%CV)は、過去に検体分析装置2aに適用された値が引き継がれる。「LIMITのみ登録する」が選択された場合、ステップS214で生成された新ロットのリミット値(%CV)が登録され、ターゲット値は、過去に検体分析装置2aに適用された値が引き継がれる。「TARGETのみ登録する」および「LIMITのみ登録する」のいずれが選択された場合であっても、リミット値(#)は、新ロットのターゲット値又は新ロットのリミット値(%CV)に基づいて再計算される。
【0089】
作成者は、管理基準値が適切であると判断すると、表示入力部のマウスを操作して保存ボタンを選択し、内部精度管理設定シートの内容を記憶装置35に記憶させた後、承認者に承認を求める。作成者は、承認者による承認が得られた後、図16および図17の表示画面で登録ボタン74を選択する。一方、生成された管理基準値の再確認が必要な場合、作成者は、図16および図17の表示画面でキャンセルボタン76を選択する。
【0090】
図12に戻り、コンピュータ30aの制御部31は、ステップS217において、登録ボタン74が選択されたか、キャンセルボタン76が選択されたかを判定する。登録ボタン74が選択された場合(ステップS217において「登録」)、コンピュータ30aの制御部31は、図4Bのメインルーチンに処理を戻し、ステップS25において、ステップS213で生成したターゲット値およびステップS214で生成したリミット値を検体分析装置2a、2b、2cに適用する。具体的には、コンピュータ30aの制御部31は、コンピュータ30a、30b、30cの記憶装置35に記憶されているQCファイル(図5)の「ターゲット値」の欄にターゲット値を上書きし、「リミット値(#)」、「レンジ(%)」の各欄に、リミット値(#)およびリミット値(#)÷ターゲット値をそれぞれ上書きする。これにより、ステップS213で生成したターゲット値およびステップS214で生成したリミット値は、内部精度管理において使用される管理基準値となる。そして、ステップS213で生成したターゲット値およびステップS214で生成したリミット値は、図4CのステップS32の処理における読み出しの対象となる。
【0091】
上記のように、コンピュータ30aの制御部31は、ISO認証など外部認証に対応したフォーマットで管理基準値をユーザに出力するため、ユーザは、認証に必要な情報を漏れなく確認したうえで管理基準値を装置に適用できる。そのため、外部認証を取得する施設に応じた運用を効率的に行わせることができる。
【0092】
上記の検体分析装置2a、2b、2cに管理基準値を適用する方法、検体分析装置2a、2b、2c、および基準値適用プログラムによれば、検査施設の担当者による精度管理試料の測定結果のコンピュータ30a、30b、30cへの入力、得られた管理基準値の検体分析装置2a、2b、2cへの入力等の作業が不要となり、検査施設における管理基準値の決定及び検体分析装置への適用を効率化することができる。
【0093】
また、上記実施形態では、コンピュータ30aによって検体分析装置2a、2b、2cに管理基準値を適用する。これにより、ユーザが検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれに対して管理基準値を適用する作業を省力化することができる。
【0094】
また、上記実施形態では、コンピュータ30aは精度管理試料の濃度レベルごとにルールの設定を受け付ける。これにより、精度管理試料の濃度レベル(属性)ごとに最適な管理基準値を施設に応じて設定することができる。
【0095】
また、上記実施形態では、ルールの設定が、チェックボックス(選択肢)の選択により受け付けられる。これにより、ユーザは施設に応じたパターンを選択するだけで管理基準値を容易に決定することができる。
【0096】
また、上記実施形態では、第1ルールが選択された場合、コンピュータ30aは、管理基準値を複数の測定結果に基づいて生成する。これにより、装置状態を適切に反映させた管理基準値を得ることができる。
【0097】
また、上記実施形態では、管理基準値の生成に用いる測定結果の範囲を指定することができる。これにより、例えば特定の期間内に得られた精度管理試料の測定結果を管理基準値の計算から除外したい施設などにおいても、当該施設に応じた運用を容易に行わせることができる。
【0098】
また、上記実施形態では、第1ルールとして「分析装置毎の平均値を使用する」又は「分析装置毎の統計値を使用する」が選択された場合、検体分析装置2a、2b、2cのそれぞれについて個別の管理基準値が生成される。これにより、検体分析装置2a、2b、2cごとに管理基準値を変えて運用したい施設においても、当該施設に応じた運用を容易に行わせることができる。
【0099】
また、上記実施形態では、第1ルールとして「基準分析装置の平均値を使用する」又は「基準分析装置の統計値を使用する」が選択された場合、基準分析装置である検体分析装置2aについて生成された管理基準値を、検体分析装置2a、2b、2cに共通の管理基準値として適用することができる。これにより、基準分析装置から求めた管理基準値を施設内の他の分析装置に適用したい施設においても、当該施設に応じた運用を容易に行わせることができる。
【0100】
また、上記実施形態では、第1ルールとして「全ての分析装置の平均値を使用する」又は「全ての分析装置の統計値を使用する」が選択された場合、検体分析装置2a、2b、2cの全てから得られた測定結果に基づいて生成された管理基準値を、検体分析装置2a、2b、2cに共通の管理基準値として適用することができる。これにより、施設内の複数の検体分析装置2a、2b、2cの全体から求めた管理基準値を施設内の各検体分析装置2a、2b、2cに適用したい施設においても、当該施設に応じた運用を容易に行わせることができる。
【0101】
また、上記実施形態では、第1ルールが選択された場合、新ロットより前の製造ロット(旧ロット)の精度管理試料から得られた測定結果を管理基準値の算出に用いることができる。これにより、測定結果の長期的なばらつきを反映させた管理基準値を採用したい施設などにおいても、当該施設に応じた運用を容易に行わせることができる。
【0102】
また、上記実施形態では、第1ルールが選択された場合、コンピュータ30aは、生成した管理基準値と、管理基準値の生成に用いられた複数の測定結果とを含む基準値設定支援画面を表示する。これにより、ユーザは、生成された管理基準値と管理基準値の生成に用いられた複数の測定結果を確認することができ、生成された管理基準値の妥当性を検討することができる。
【0103】
また、上記実施形態では、ユーザが指定した値に基づいて管理基準値を生成する第2ルールを選択することができる。これにより、ユーザが指定した値に基づく管理基準値を用いたい施設においても、施設に応じた運用を効率的に行わせることができる。
【0104】
また、上記実施形態では、精度管理試料の製造業者が指定した値に基づいて管理基準値を生成する第3ルールを選択することができる。これにより、製造業者が指定した値に基づく管理基準値を用いたい施設においても、施設に応じた運用を効率的に行わせることができる。
【0105】
また、上記実施形態では、コンピュータ30aは、測定項目ごとにルールの設定を受け付ける。これにより、特定の測定項目については製造業者が指定した値を使用する一方、他の測定項目については測定結果に基づいて生成した管理基準値を使用したい施設など、測定項目に応じて管理基準値を使い分けたい施設に応じた運用を容易に行わせることができる。例えばヘモグロビン(HGB)など精度管理試料の測定値がほとんど変動しないことが分かっている測定項目については、製造業者が指定した値を使用する施設も存在するので、そのような施設にも容易に対応することができる。
【0106】
なお、上記実施形態では、基準値適用プログラムは、可搬型記録媒体によってコンピュータ30aに提供されるが、電気通信回線(有線、無線を問わない)によってコンピュータ30aと通信可能に接続された外部の機器から電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0107】
上記実施形態では、コンピュータ30aはユーザの施設内に配置されているが、クラウドに配置され、施設内に配置された測定装置3aとコンピュータ30aとがインターネットを介して接続される構成としてもよい。
【0108】
上記実施形態では、測定装置3aとコンピュータ30aとは別々の装置として構成されているが、コンピュータ30aの機能を測定装置3aに内蔵し、一体化した装置として構成してもよい。
【0109】
上記実施形態では、血液検体に含まれる血球を計数する血球計数装置について説明したが、血球計数装置で分析される検体は、これに限定されず、リンパ液、体腔液などの血液以外の体液であってもよい。この場合、基準値を決定するためのルールは、精度管理試料が対象とする体液の種類(属性)ごとに設定を受け付ける構成としてもよい。
【0110】
上記実施形態では、血球計数装置について説明したが、検体分析装置は、これに限定されず、生化学分析装置、免疫分析装置、血液凝固分析装置、尿分析装置、遺伝子分析装置などの精度管理試料を用いた精度管理が実施される他の検体分析装置であってもよい。
【0111】
上記実施形態では、検体分析システム1が複数の検体分析装置2a、2b、2cを含む場合を説明したが、これに限定されず、検体分析システムは、検体分析装置2aのみを備える構成としてもよい。
【0112】
上記実施形態では、コンピュータ30aは、第1ルール、第2ルールおよび第3ルールの設定を受け付け可能であるが、これに限定されず、コンピュータ30aは、第1ルールのみを受け付ける構成としてもよい。また、コンピュータ30aは、基準値適用プログラムのインストール時に第1ルールを自動的に記憶し、ルールの設定を受け付けない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0113】
1 検体分析システム、2a,2b,2c 検体分析装置、3 測定装置、4 制御部、5 通信部、6 測定ユニット、7 試料吸引部、8 試料調製部、10 測定部、11 電気抵抗式検出部、12 光学式検出部、13 ヘモグロビン測定部、30a,30b,30c コンピュータ、31 制御部、32 CPU、33 ROM、34 RAM、35 記憶装置、36 入出力インターフェース、37 読出装置、38 通信インターフェース、39 入出力インターフェース、50 表示入力部、60 ツールバー、61 マーク。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16
図17