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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126011
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】採尿カップスタンド
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
G01N1/10 V
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030432
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000110206
【氏名又は名称】株式会社TOK
(71)【出願人】
【識別番号】509111744
【氏名又は名称】地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター
(74)【代理人】
【識別番号】100104204
【弁理士】
【氏名又は名称】峯岸 武司
(72)【発明者】
【氏名】木村 晋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳雄
(72)【発明者】
【氏名】野口 穣
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA32
2G052DA03
2G052DA32
2G052HB04
2G052JA08
(57)【要約】
【課題】 採尿カップを重ねて置くことで、重ねられた採尿カップの採尿について検尿を行えなくなったり、重ねられた採尿カップから採尿が溢れ出て採尿置き場を汚してしまったりすることのない採尿カップスタンドを提供する。
【解決手段】 採尿カップスタンド1は、底面部1a、背面部1b、天面部1cおよび複数のホルダー2を備える。底面部1aには複数の採尿カップが各ホルダー2に保持されて一列に並べられる。背面部1bは、底面部1aに並べられる各採尿カップ4の背後で略垂直に折り曲げられて、底面部1aに立設されている。天面部1cは、底面部1aに並べられる各採尿カップ4の上方に背面部1bから張り出して設けられる。この天面部1cにより、底面部1aに並べられる各採尿カップ4に別の採尿カップ4が重ね置かれるのが邪魔される。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採尿カップが置かれる底面部と、
前記底面部に置かれる採尿カップの背後の前記底面部に立設される背面部と、
前記底面部に置かれる採尿カップの背後の前記背面部に設けられて、前記底面部に置かれる採尿カップの側周囲を採尿カップの背後から保持するホルダーと、
前記底面部に置かれる採尿カップの上方に前記背面部から張り出して設けられる天面部と、を備える採尿カップスタンド。
【請求項2】
前記底面部は複数の採尿カップが一列に並べられ、
前記背面部は、前記底面部に並べられる各採尿カップの背後の前記背面部に立設され、
前記ホルダーは、前記底面部に並べられる各採尿カップの背後の前記背面部に複数設けられて、前記底面部に並べられる各採尿カップの側周囲を各採尿カップの背後から保持し、
前記天面部は、前記底面部に並べられる各採尿カップの上方に前記背面部から張り出して設けられる
ことを特徴とする請求項1に記載の採尿カップスタンド。
【請求項3】
前記天面部は、前記背面部から張り出すその先端から前記ホルダーの上端までの距離が、前記底面部に置かれる採尿カップの高さの1倍以上2倍未満に設定されて配設されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の採尿カップスタンド。
【請求項4】
前記天面部は、前記背面部から前記底面部に略平行に張り出す平面部と、前記平面部に連なって設けられて前記背面部から離れるにしたがって前記底面部に近付く傾斜が付けられた傾斜部とから形成されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の採尿カップスタンド。
【請求項5】
前記底面部、前記背面部および前記天面部はスタンド本体として一体に設けられ、前記ホルダーは前記背面部に着脱自在に設けられることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の採尿カップスタンド。
【請求項6】
前記背面部は、前記底面部に置かれる採尿カップの背後に所定の幅で立設する壁が形成され、
前記ホルダーは、採尿カップの側周囲を保持する保持部と、前記背面部へ取り付けられる側に前記壁の幅を挟む間隔をあけて前記保持部から突出し、突出する先端に突起が向かい合って形成されて、前記ホルダーの前記背面部への取付時に前記突起間の間隔が前記壁の幅より広がる弾性を有する一対の係止片とを有することを特徴とする請求項5に記載の採尿カップスタンド。
【請求項7】
前記ホルダーの色は、前記底面部、前記背面部および前記天面部の色と補色の関係にあることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の採尿カップスタンド。
【請求項8】
前記ホルダーは、採尿カップの受け入れ方向を示す矢印形状に欠かれた穴が前記背面部との当接箇所に形成され、その穴に前記背面部を露出させることを特徴とする請求項7に記載の採尿カップスタンド。
【請求項9】
前記ホルダーは、採尿カップの側周囲に貼られる採尿者の識別ラベルを露出させる切り欠きが前記背面部への取付箇所と反対側に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の採尿カップスタンド。
【請求項10】
前記底面部に置かれる採尿カップを前記背面部の側から視認させる窓が前記背面部に形成されていることを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の採尿カップスタンド。
【請求項11】
前記天面部にハンドルを着脱自在に備えることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の採尿カップスタンド。
【請求項12】
前記底面部から延伸する倒れ止め片が前記背面部の背面側に突出して形成されていることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の採尿カップスタンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の採尿カップが並べられる採尿カップスタンドに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来この種の採尿カップスタンドは、例えば、特許文献1の図5に開示された採尿カップスタンドや、特許文献2の第1図に開示された検尿カップ運搬具のように、箱状に形成されたスタンド本体の天板に複数のカップ保持穴が設けられている。このような採尿カップスタンドは医療機関等において尿検査に使用され、検査室の廊下側の小窓際等に設けられる採尿置き場に置かれる。採尿置き場に置かれた採尿カップスタンドのカップ保持穴には、採尿が済んだ患者や健診者等によって採尿カップが差し込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-145308号公報
【特許文献2】実開昭58-123365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の構造をした採尿カップスタンドは、採尿カップスタンドに採尿カップを置く者が、認知機能の低下した高齢者等である場合、他人が置いた採尿カップの上に重ねて自分の採尿カップを置くことがある。このような場合、他人が採取した尿について検尿を行えなくなったり、また、他人の採尿カップから採尿が溢れ出て、採尿置き場を汚してしまったりする問題が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたもので、
採尿カップが置かれる底面部と、
底面部に置かれる採尿カップの背後の底面部に立設される背面部と、
底面部に置かれる採尿カップの背後の背面部に設けられて、底面部に置かれる採尿カップの側周囲を採尿カップの背後から保持するホルダーと、
底面部に置かれる採尿カップの上方に背面部から張り出して設けられる、好ましくは、背面部から張り出す先端からホルダーの上端までの距離が、底面部に置かれる採尿カップの高さの1倍以上2倍未満に設定されて配設される天面部と
を備える採尿カップスタンドを構成した。
【0006】
本構成によれば、採尿カップは底面部に置かれ、背面部に設けられたホルダーにより、側周囲が背後から保持される。底面部に置かれる採尿カップの上方には、天面部が背面部から張り出して設けられているので、採尿カップに別の採尿カップが重ね置かれるのが、天面部によって邪魔される。したがって、認知機能の低下した高齢者等が、他人が置いた採尿カップの上に重ねて自分の採尿カップを置こうとしても、他人が置いた採尿カップの上方に背面部から張り出して設けられた天面部に邪魔されて、置くことができなくなる。このため、他人が置いた採尿カップの上に重ねて自分の採尿カップを置くことを防止でき、他人が置いた採尿カップの上に重ねて自分の採尿カップを置くことで、他人が採取した尿について検尿を行えなくなったり、また、他人の採尿カップから採尿が溢れ出て、採尿置き場を汚してしまったりする問題は生じなくなる。
【0007】
また、本発明は、天面部が、背面部から底面部に略平行に張り出す平面部と、平面部に連なって設けられて背面部から離れるにしたがって底面部に近付く傾斜が付けられた傾斜部とから形成されることを特徴とする。
【0008】
本構成によれば、背面部から底面部に略平行に張り出す平面部により、底面部に載置された採尿カップの垂直上方に、ホルダーから取り出した採尿カップが遷移する空間が確保されて、ホルダーから採尿カップが取り出し易くなる。しかも、背面部から離れるにしたがって底面部に近付く傾斜が付けられた傾斜部により、ホルダーに保持されて置かれた採尿カップの上に別の採尿カップが置かれるのを効果的に邪魔することができる。
【0009】
また、本発明は、底面部、背面部および天面部がスタンド本体として一体に設けられ、ホルダーが背面部に着脱自在に設けられることを特徴とする。
【0010】
本構成によれば、スタンド本体とホルダーとを分離することができるので、採尿カップスタンドを分解して洗浄等することができる。このため、採尿カップスタンドが洗い易くなり、採尿カップスタンドを清潔に保つことができる。
【0011】
また、本発明は、ホルダーの色が、底面部、背面部および天面部の色と補色の関係にあることを特徴とする。
【0012】
本構成によれば、ホルダーとスタンド本体とを識別し易くなり、ホルダーの位置をしっかりと視認して、採尿カップを意図しない箇所にぶつけて採尿をこぼすことなく、確実に速やかに採尿カップをホルダーに保持させることが可能になる。
【0013】
また、本発明は、採尿カップの受け入れ方向を示す矢印形状に欠かれた穴が、ホルダーの背面部との当接箇所に形成され、その穴に背面部を露出させることを特徴とする。
【0014】
本構成によれば、ホルダーの背面部との当接箇所に形成された穴により、採尿カップの受け入れ方向を示す矢印が、ホルダーの色と補色関係にある色をした背面部によってホルダーに明確に描写される。したがって、採尿を済ませた者は、その矢印に促されて、間違えることなく定められた箇所に採尿カップを置くようになる。
【0015】
また、本発明は、採尿カップの側周囲に貼られる採尿者の識別ラベルを露出させる切り欠きが、ホルダーの背面部への取付箇所と反対側に形成されていることを特徴とする。
【0016】
本構成によれば、採尿カップが底面部に置かれてホルダーに保持された状態で、採尿カップの側周囲に貼られた採尿者の識別ラベルが、ホルダーの切り欠きに露出する。したがって、採尿カップが底面部に置かれてホルダーに保持された状態で、識別ラベルが読み取れるようになる。このため、ホルダーから採尿カップを取り出すことなく、採尿カップの採尿者を特定することが可能になり、検尿作業が迅速に進められるようになる。
【0017】
また、本発明は、底面部に並べられる採尿カップを背面部の側から視認させる窓が背面部に形成されていることを特徴とする。
【0018】
本構成によれば、採尿置き場に置かれた採尿カップスタンドの背後の検査室内等から、採尿カップスタンドを動かすことなく、採尿カップの載置状況を背面部の窓から確認することができる。このため、本構成によっても、検尿作業が迅速に進められるようになる。
【0019】
また、本発明は、天面部にハンドルを着脱自在に備えることを特徴とする。
【0020】
本構成によれば、ハンドルでスタンド本体を吊して容易に採尿カップスタンドを持ち運ぶことが可能になる。また、ハンドルを天面部から取り外せるので、採尿カップスタンドの洗浄がし易くなり、採尿カップスタンドを清潔に保つことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、他人が置いた採尿カップの上に重ねて自分の採尿カップを置くことで、他人が採取した尿について検尿を行えなくなったり、また、他人の採尿カップから採尿が溢れ出て、採尿置き場を汚してしまったりする問題を生じさせることのない採尿カップスタンドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施の形態による採尿カップスタンドを斜め上方および斜め下方から見た斜視図である。
図2図1に示す採尿カップスタンドの平面図、正面図および底面図である。
図3図1に示す採尿カップスタンドの背面図、左側面図および右側面図である。
図4図1に示す採尿カップスタンドの分解斜視図である。
図5図1に示す採尿カップスタンドに1個の採尿カップが置かれた状態におけるその正面図および左側面図、並びに、採尿カップが取り出された状態におけるその左側面図である。
図6図1に示す採尿カップスタンドを構成するホルダーの平面図、正面図、底面図、右側面図、並びに、斜め上方および斜め下方から見た斜視図である。
図7図1に示す採尿カップスタンドに置かれた採尿カップの上に重ねて採尿カップを置こうとする際におけるその正面図および左側面図である。
図8】識別ラベルが貼られた採尿カップの側面図、および、その採尿カップが並べられた図1に示す採尿カップスタンドの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明による採尿カップスタンドの一実施の形態について説明する。なお、各図において同一または相当する部分には同一符号を付して説明する。
【0024】
図1(a)は本発明の一実施の形態による採尿カップスタンド1を上方から見下ろした斜視図、図1(b)は下方から見上げた斜視図である。また、図2(a)は採尿カップスタンド1の平面図、図2(b)は正面図、図2(c)は底面図である。また、図3(a)は採尿カップスタンド1の背面図、図3(b)は左側面図、図3(c)は右側面図である。また、図4は採尿カップスタンド1の分解斜視図である。
【0025】
採尿カップスタンド1は、底面部1a、背面部1b、天面部1c、複数のホルダー2およびハンドル3を備えて構成される。本実施形態では、底面部1a、背面部1bおよび天面部1cはスタンド本体として一体に設けられ、各ホルダー2は背面部1bに着脱自在に設けられている。ここでは、スタンド本体は金属板が板金加工されて形成され、各ホルダー2は樹脂成型されて形成されている。しかし、スタンド本体および各ホルダー2の材質はこれに限定されるものではなく、また、スタンド本体も底面部1a、背面部1bおよび天面部1cが必ずしも一体に設けられる必要はない。
【0026】
底面部1aには複数の採尿カップ、例えば4個の採尿カップが各ホルダー2に保持されて一列に並べられる。図5(a)は、底面部1aの左端に1個の採尿カップ4が置かれた状態の正面図、図5(b)は左側面図を示している。底面部1aに並べられる採尿カップ4の個数は4個に限らず、3個やそれ以外の個数であってもよい。例えば、底面部1aに1個の採尿カップ4が置かれる構成であってもよい。背面部1bは、底面部1aに並べられる各採尿カップ4の背後で略垂直に折り曲げられて、底面部1aに立設されている。
【0027】
図4に示すように、背面部1bには底面部1aから立ち上がる3箇所に開口部1b1が形成されている。各開口部1b1間、並びに、左側開口部1b1と背面部1bの左側端との間、および、右側開口部1b1と背面部1bの右側端との間には、各ホルダー2を背面部1bに係止させるための4つの取付壁1b2がそれぞれ所定の幅Aで形成されている。また、左側開口部1b1および右側開口部1b1には、底面部1aから延伸する倒れ止め片1a1が背面部1bの背面側に突出して、形成されている。この倒れ止め片1a1は、左側開口部1b1および右側開口部1b1に形成される箇所に位置する金属片により、形成されている。この倒れ止め片1a1により、採尿カップスタンド1が背面部1bの背面側に倒れて、採尿カップ4に採取された尿が散らばり出てしまったりするのが、防止される。
【0028】
なお、倒れ止め片1a1に代えて、左側開口部1b1および右側開口部1b1の各上部の背面部1bから背面部1bの背面側に突出して、背面部1bの背後における、採尿カップスタンド1が載置されるスタンド載置面に末端が接する倒れ止め片を、背面部1bに設けるように、構成してもよい。この倒れ止め片も、左側開口部1b1および右側開口部1b1に形成される箇所に位置する金属片により、形成される。
【0029】
天面部1cは、図5(b)に示すように、底面部1aに並べられる各採尿カップ4の上方に背面部1bから張り出して設けられている。本実施形態では、天面部1cは、背面部1bから底面部1aに略平行に張り出す平面部1c1と、平面部1c1に連なって設けられて、背面部1bから離れるにしたがって底面部1aに近付く傾斜が付けられた傾斜部1c2とから形成される。なお、平面部1c1と傾斜部1c2とは、本実施形態では、図3(a)および(b)に示すように、平面部1c1の面と傾斜部1c2の面とが交わる箇所に角が線状に形成されるように、連なって設けられている。しかし、その角にRを付けて角が円弧状に形成されるように、平面部1c1と傾斜部1c2とを連ねるようにしてもよい。
【0030】
天面部1cは、底面部1aに並べられる各採尿カップ4を図5(c)に示すように各ホルダー2から取り出せられ、かつ、後述するように、底面部1aに並べられる各採尿カップ4に別の採尿カップ4が重ね置かれるのを邪魔するように、構成される。このために、天面部1cは、採尿カップ4の高さを図5(b)に示すようにhとしたとき、ホルダー2の上端から傾斜部1c2の先端までの図5(c)に示す距離Lが、採尿カップ4の高さhの1倍以上2倍未満(h≦L<2h)となるように、配設されるのが好ましい。
【0031】
また、本実施形態では、底面部1aに並べられる各採尿カップ4を背面部1bの側から視認させる窓1b3が、背面部1bおよび天面部1cにわたって形成されている。また、天面部1cの中央部には、図4に示すように、一対の取付穴1c3が形成されている。ハンドル3は、これらの取付穴1c3に挿通される一対のネジ5により、天面部1cに着脱自在に取り付けられる。
【0032】
ホルダー2は、図6(a)に平面図、図6(b)に正面図、図6(c)に底面図、図6(d)に右側面図、図6(e)に上方からの斜視図、図6(f)に下方からの斜視図が示される。
【0033】
ホルダー2は、採尿カップ4の側周囲を保持する保持部2aと、背面部1bに形成された取付壁1b2に係止される一対の係止片2bとを有する。保持部2aは、低い高さの中空円筒状に形成され、ホルダー2の背面部1bへの取付箇所と反対側に切り欠き2cが形成されている。この切り欠き2cは、採尿カップ4の側周囲に貼られる、後述する採尿者の識別ラベル6を露出させる。
【0034】
一対の係止片2bは、スタンド本体の背面部1bに形成された取付壁1b2の幅Aを挟む距離Bの間隔をあけて、ホルダー2の背面側へ保持部2aから突出している。各係止片2bは弾性を有し、先端に突起2b1が向かい合って形成されている。ホルダー2の取付壁1b2への取付時、各係止片2bの先端の突起2b1間の間隔は取付壁1b2の幅Aよりも広がり、突起2b1が取付壁1b2の両側端を乗り越える。取付壁1b2の両側端を乗り越えた各突起2b1は、取付壁1b2の背面に図3(a)に示すように係合してスナップフィットし、取付壁1b2に取り付けられたホルダー2が取付壁1b2から離脱するのを防止する。
【0035】
ホルダー2は、取付壁1b2の背面に各係止片2bが係止されることで、底面部1aに並べられる各採尿カップ4の背後の背面部1bに設けられて、底面部1aに並べられる各採尿カップ4の側周囲を保持部2aによって各採尿カップ4の背後から保持する。
【0036】
また、ホルダー2の取付壁1b2との当接箇所には穴2dが形成されている。この穴2dは、採尿カップ4の受け入れ方向を示す矢印形状にホルダー2の一部が欠かれて、形成されている。ホルダー2が背面部1bに取り付けられると、ホルダー2はその穴2dに背面部1bを露出させる。ホルダー2の色は、底面部1a、背面部1bおよび天面部1cの色と補色の関係にある色をしている。本実施形態では、ホルダー2は、マンセル記号が5Y9/12で表される略黄色のRGB色をしており、底面部1a、背面部1bおよび天面部1cは、マンセル記号が5PB4/10で表される略青色のRGB色をしている。したがって、ホルダー2は、その穴2dに補色の関係にある色をした背面部1bを露出させる。
【0037】
このような本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、各採尿カップ4はスタンド本体の底面部1aに一列に並べられ、背面部1bに設けられた各ホルダー2により、図5(a)および(b)に示すように、側周囲が背後から保持される。底面部1aに並べられる各採尿カップ4の上方には、各採尿カップ4に別の採尿カップ4が重ね置かれるのを邪魔する天面部1cが、図3(b)および(c)に示すように、背面部1bから張り出して設けられている。
【0038】
したがって、認知機能の低下した高齢者等が、図7に示すように、他人が置いた採尿カップ4の上に重ねて自分の採尿カップ4を置こうとしても、採尿カップ4の側部が傾斜部1c2の先端に当たり、他人が置いた採尿カップ4の上方に背面部1bから張り出して設けられた天面部1cに邪魔されて、置くことができなくなる。ここで、図7(a)は、他人が置いた採尿カップ4の上に重ねて自分の採尿カップ4を置こうとする際における採尿カップスタンド1の正面図、図7(b)は左側面図である。
【0039】
このため、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、他人が置いた採尿カップ4の上に重ねて自分の採尿カップ4を置くことを防止できる。よって、他人が置いた採尿カップ4の上に重ねて自分の採尿カップ4を置くことで、他人が採取した尿について検尿を行えなくなったり、また、他人の採尿カップ4から採尿が溢れ出て、採尿置き場を汚してしまったりする問題は生じなくなる。
【0040】
また、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、背面部1bから底面部1aに略平行に張り出す天面部1cの平面部1c1により、底面部1aに載置された採尿カップ4の垂直上方に、ホルダー2から取り出した採尿カップ4が遷移する空間が確保されて、図5(b)および(c)に示すように、ホルダー2から採尿カップ4が取り出し易くなる。しかも、背面部1bから離れるにしたがって底面部1aに近付く傾斜が付けられた天面部1cの傾斜部1c2により、ホルダー2に保持されて置かれた採尿カップ4の上に別の採尿カップ4が置かれるのを、図7に示すように効果的に邪魔することができる。
【0041】
また、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、スタンド本体と各ホルダー2とを図4に示すように分離することができるので、採尿カップスタンド1を分解して洗浄等することができる。このため、採尿カップスタンド1が洗い易くなり、採尿カップスタンド1を清潔に保つことができる。
【0042】
また、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、ホルダー2とスタンド本体との各色が補色の関係にあるため、色覚異常があっても、ホルダー2とスタンド本体とを識別し易くなる。したがって、採尿者は、ホルダー2の位置をしっかりと視認して、採尿カップ4を意図しない箇所にぶつけて採尿をこぼすことなく、確実に速やかに採尿カップ4をホルダー2に保持させることが可能になる。
【0043】
また、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、ホルダー2の背面部1bとの当接箇所に形成された穴2dにより、採尿カップ4の受け入れ方向を示す矢印が、ホルダー2の色と補色関係にある色をした背面部1bによってホルダー2に明確に描写される。したがって、採尿を済ませた者は、その矢印に促されて、間違えることなく定められた箇所に採尿カップ4を置くようになる。
【0044】
また、採尿カップ4の側周囲には、図8(a)に示す採尿カップ4の側面図のように、識別ラベル6が貼られる。この識別ラベル6には、採尿者を識別するバーコード等が印刷されている。本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、採尿カップ4の側周囲に貼られたこの識別ラベル6は、図8(b)に示す、採尿カップ4が並べられた採尿カップスタンド1の正面図のように、採尿カップ4が底面部1aに置かれてホルダー2に保持された状態で、ホルダー2の切り欠き2cに露出する。したがって、採尿カップ4が底面部1aに置かれてホルダー2に保持された状態で、識別ラベル6に印刷されたバーコード等が読み取れるようになる。このため、ホルダー2から採尿カップ4を取り出すことなく、各採尿カップ4の採尿者を特定することが可能になり、検尿作業が迅速に進められるようになる。
【0045】
また、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、看護師や健診員等は、採尿置き場に置かれた採尿カップスタンド1の背後の検査室内等から、採尿カップスタンド1を動かすことなく、採尿カップ4の載置状況を背面部1bの窓1b3から確認することができる。このため、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、検尿作業がさらに迅速に進められるようになる。
【0046】
また、本実施形態による採尿カップスタンド1によれば、ハンドル3でスタンド本体を吊して容易に採尿カップスタンド1を持ち運ぶことが可能になる。また、スタンド本体から各ホルダー2を取り外せるのに加えて、ハンドル3も天面部1cから取り外せるので、採尿カップスタンド1の洗浄がし易くなり、採尿カップスタンド1を清潔に保つことができる。
【符号の説明】
【0047】
1…採尿カップスタンド、1a…底面部、1a1…倒れ止め片、1b…背面部、1b1…開口部、1b2…取付壁、1b3…窓、1c…天面部、1c1…平面部、1c2…傾斜部、1c3…取付穴、2…ホルダー、2a…保持部、2b…係止片、2b1…突起、2c…切り欠き、2d…穴、3…ハンドル、4…採尿カップ、5…ネジ、6…識別ラベル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8