(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126012
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】接地切替器及びそれを用いた送電線路の絶縁抵抗測定方法
(51)【国際特許分類】
G01R 27/16 20060101AFI20230831BHJP
H02B 5/01 20060101ALI20230831BHJP
H02B 13/075 20060101ALI20230831BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20230831BHJP
【FI】
G01R27/16
H02B5/01
H02B13/075
G01R31/12 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030433
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】大谷 勇二
(72)【発明者】
【氏名】久保 達也
【テーマコード(参考)】
2G015
2G028
5G017
【Fターム(参考)】
2G015AA27
2G015CA01
2G028AA02
2G028BF03
2G028CG03
2G028HM07
5G017BB05
(57)【要約】
【課題】送電線路の絶縁抵抗を効率良く測定することが可能な接地切替器及びそれを用いた送電線路の測定方法を提供する。
【解決手段】接地切替器1は接地工具53a~53cの導通部55に一端が接続されたケーブル56の他端がそれぞれ接続された接地工具側端子3a~3cと、接地金具57に一端が接続されたケーブル2の他端がそれぞれ接続された接地金具側端子4a~4cと、絶縁部材からなり、上面5aに接地工具側端子3a~3cと接地金具側端子4a~4cが所定の距離を隔てるようにして設置された端子台5と、基端7aに軸孔がそれぞれ設けられた3本のスイッチレバー6a~6cと、端子台5に設置されて上記軸孔に挿通された軸体8aを回転可能に保持する軸保持部8bを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
送電線路の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタとともに用いられる接地工具の接地状態と非接地状態を切り替えるための接地切替器であって、
前記接地工具において前記送電線路に取り付けられる導通部と接地金具の間に設置されることを特徴とする接地切替器。
【請求項2】
前記接地切替器は、
前記接地工具の前記導通部と電気的に接続された接地工具側端子と、
前記接地金具と電気的に接続された接地金具側端子と、
基端側を中心として先端側を揺動可能に設置されて前記接地工具側端子と前記接地金具側端子の間の導通状態を切り替えるスイッチレバーと、を備えていることを特徴とする請求項1に記載の接地切替器。
【請求項3】
複数本の前記接地工具について接地状態と非接地状態を同時に切り替え可能に前記接地工具側端子、前記接地金具側端子及び前記スイッチレバーを複数備え、
前記スイッチレバーは、一体として動作するように互いに連結されていることを特徴とする請求項2に記載の接地切替器。
【請求項4】
メガリングフィルタと接地工具を用いた送電線路の絶縁抵抗測定方法であって、
前記接地工具は、前記送電線路に取り付けられる導通部と接地金具の間に請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の接地切替器が設置されていることを特徴とする送電線路の絶縁抵抗測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送電線路の絶縁抵抗を測定する際に接地工具とともに用いられる接地切替器に係り、特に、接地工具の接地状態と非接地状態を作業者の手元で切り替えることができる接地切替器及びそれを用いた送電線路の絶縁抵抗測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
変電所と送電鉄塔との間に架設されている三相3線式の送電線路において各相の絶縁抵抗を測定する場合、測定対象となる回線を休止するとともに接地工具を用いて残留している電荷を放電した後、残りの回線の影響によって発生する誘導電圧を低減するために、測定対象となる回線と絶縁抵抗計の間にメガリングフィルタが設置される。
【0003】
ここで、
図5乃至
図8を用いて従来の絶縁抵抗の測定方法について説明する。
図5(a)及び
図7はそれぞれ送電線路における対地間及び相間の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタと接地工具が電気設備に設置される様子を模式的に示した図であり、
図5(b)はメガリングフィルタの回路図である。また、
図6及び
図8はそれぞれ送電線路における対地間及び相間の絶縁抵抗を測定する従来の手順を示したフローチャートである。
図5(a)及び
図7に示す電気設備50は、断路器の送電端を図示している。断路器とは変電設備から送電線を回路的に開閉するものであり、変電設備と送電線の間に使用されている。電気設備50は三相の各相に対応するように設けられる3つの支持がいし51と、この支持がいし51を支持する架台52からなる。
接地工具53a~53cは、絶縁棒54の先端に設けられた導電部材からなるフック状の導通部55にケーブル56を介して接地金具57が電気的に接続された構造となっている。また、メガリングフィルタ58a、58bは絶縁棒59の先端に設けられた導電部材からなるフック状の導通部60にケーブル61を介して接地金具63が電気的に接続されるとともに、ケーブル62a、62bを介して絶縁台67に載置された絶縁抵抗計64のライン端子65やアース端子66に接続されている。なお、絶縁棒54、59はエポキシ樹脂などの絶縁部材によって形成されている。
【0004】
メガリングフィルタ58a、58bは、測定対象物に発生した誘導電圧を減衰させるための回路が絶縁棒59に内蔵されている。この回路は
図5(b)に示すように、導通部60に接続された架線用端子68とケーブル62aの間に抵抗R
1、R
2、R
3、R
4が直列に接続され、抵抗R
1と抵抗R
2との結節点69aとケーブル61の間にはコンデンサC
1が接続され、抵抗R
2と抵抗R
3の結節点69bとケーブル61の間にはコンデンサC
2が接続され、抵抗R
3と抵抗R
4の結節点69cとケーブル61の間にはコンデンサC
3が接続されている。そして、ケーブル62bはケーブル61に接続されている。
【0005】
まず、三相3線式の送電線路について対地間の絶縁抵抗を測定する方法について
図5及び
図6を用いて説明する。
三相3線式の送電線路について相ごとに対地間の絶縁抵抗を測定するには、
図5(a)に示すように、メガリングフィルタ58aのケーブル62a、62bを絶縁抵抗計64のライン端子65及びアース端子66にそれぞれ接続するとともにケーブル61に接続された接地金具63を架台52に設けられた接地箇所に接続する(
図6におけるステップS1)。さらに、電気設備50に残留している電荷を放電するため、接地金具57を架台52に設けられた接地箇所に接続した状態で接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cに取り付ける(
図6におけるステップS2)。そして、メガリングフィルタ58aの導通部60を測定対象線路70aに取り付ける(
図6におけるステップS3)。
【0006】
その後、接地工具53aの導通部55を測定対象線路70aから取り外し(
図6におけるステップS4)、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70aについて対地間の絶縁抵抗を測定する(
図6におけるステップS5)。絶縁抵抗の測定が終了すると、再び接地工具53aの導通部55を測定対象線路70aに取り付け(
図6におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58aの導通部60を測定対象線路70aから取り外す(
図6におけるステップS7)。
さらに、測定対象線路70b、70cに対しても
図6におけるステップS3~ステップS7の作業をそれぞれ行う。そして、測定対象線路70a~70cのそれぞれについて対地間の絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cから取り外す(
図6におけるステップS8及びステップS9)。
【0007】
つぎに、三相3線式の送電線路について相間の絶縁抵抗を測定する方法について
図7及び
図8を用いて説明する。
三相3線式の送電線路について相間の絶縁抵抗を測定するには、
図7に示すように、メガリングフィルタ58a、58bのケーブル62aを絶縁抵抗計64のライン端子65及びアース端子66にそれぞれ接続するとともにケーブル61に接続された接地金具63を架台52に設けられた接地箇所に接続する(
図8におけるステップS1)。さらに、電気設備50に残留している電荷を放電するため、接地金具57を架台52に設けられた接地箇所に接続した状態で接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cに取り付ける(
図8におけるステップS2)。そして、メガリングフィルタ58a、58bの導通部60を測定対象線路70a、70bにそれぞれ取り付ける(
図8におけるステップS3)。
【0008】
その後、接地工具53a、53bの導通部55を測定対象線路70a、70bから取り外し(
図8におけるステップS4)、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70a、70bについて相間の絶縁抵抗を測定する(
図8におけるステップS5)。絶縁抵抗の測定が終了すると、再び接地工具53a、53bの導通部55を測定対象線路70a、70bにそれぞれ取り付け(
図8におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58bの導通部60を測定対象線路70bから取り外す(
図8におけるステップS7)。
【0009】
さらに、測定対象線路70a、70c及び測定対象線路70b、70cに対して
図8におけるステップS3~ステップS7の作業をそれぞれ行う。具体的には、まず、メガリングフィルタ58bの導通部60を測定対象線路70cに取り付けた後(
図8におけるステップS3)、接地工具53a、53cの導通部55を測定対象線路70a、70cから取り外し(
図8におけるステップS4)、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70a、70cについて相間の絶縁抵抗を測定する(
図8におけるステップS5)。そして、絶縁抵抗の測定が終了すると、再び接地工具53a、53cの導通部55を測定対象線路70a、70cにそれぞれ取り付け(
図8におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58a、58bの導通部60を測定対象線路70a、70cからそれぞれ取り外す(
図8におけるステップS7)。
【0010】
つぎに、メガリングフィルタ58aの導通部60を測定対象線路70bに取り付けた後(
図8におけるステップS3)、接地工具53b、53cの導通部55を測定対象線路70b、70cから取り外し(
図8におけるステップS4)、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70b、70cについて相間の絶縁抵抗を測定する(
図8におけるステップS5)。そして、絶縁抵抗の測定が終了すると、再び接地工具53b、53cの導通部55を測定対象線路70b、70cにそれぞれ取り付け(
図8におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58a、58bの導通部60を測定対象線路70b、70cからそれぞれ取り外す(
図8におけるステップS7)。そして、測定対象線路70a、70c及び70b、70cについてそれぞれ相間の絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cから取り外す(
図8におけるステップS8及びステップS9)。
【0011】
通常、接地工具53a~53cやメガリングフィルタ58a、58bの絶縁棒54、59には、絶縁性確保のため、1.5m以上の長尺物が用いられることが多い。そして、上述の作業では、このような2種類の長尺物の取り付けや取り外しを何度も行わなければならない。さらに、接地工具53a~53c及びメガリングフィルタ58a、58bは重量があるため、取り扱いが容易でない。したがって、従来の絶縁抵抗の測定方法では作業性が悪いという課題があった。
【0012】
絶縁抵抗測定時の作業効率を高めるものとして、例えば、特許文献1には「メガリングフィルタ用接地工具」という名称で、絶縁抵抗の測定作業における安全性と作業効率を高めることが可能な接地工具に関する発明が開示されている。
特許文献1に開示された発明は、従来の接地工具の構造をメガリングフィルタに加えるとともに、ワイヤ操作部を操作することによってフックの開口部の開閉状態と接地金具との導通状態が切り換わることを特徴としている。
このような構造によれば、メガリングフィルタの使用の前後に接地工具の取り付け作業や取り外しを行う必要がない。
【0013】
また、特許文献2には「測定用治具及び絶縁抵抗測定システム」という名称で、測定前に誘導電圧を確実に除去することが可能な測定用治具とそれを備えた絶縁抵抗測定システムに関する発明が開示されている。
特許文献2に開示された測定用治具に係る発明は、被測定対象に対して電気的に着脱自在に接続可能な着脱導電部材と、着脱導電部材から入力される電圧信号を減衰させて出力するメガリングフィルタと、メガリングフィルタにより減衰された減衰電圧信号を出力する出力端子と、メガリングフィルタの接地側を外部の接地点に接続するための接地端子と、着脱導電部材に接続される第1端子と、接地端子に接続される第2端子との間を接続状態又は開放状態に切り替えるスイッチを備えた構造となっている。
このような構造によれば、測定前に確実に誘導電圧を除去できるため、メガリングフィルタの破損を防ぐとともに、安全で効率的な測定を行うことができる。
【0014】
さらに、特許文献3には「配線切替器、及び絶縁抵抗測定装置」という名称で、メガリングフィルタと絶縁抵抗計との間の配線変更に係る作業を容易に実施することが可能な配線切替器と絶縁抵抗装置に関する発明が開示されている。
特許文献3に開示された配線切替器に係る発明は、2本のメガリングフィルタを用いて対地間の絶縁抵抗と相間の絶縁抵抗を測定する際に、絶縁抵抗計に接続されるメガリングフィルタを切り替えるスイッチと、対地間絶縁抵抗測定用又は相間絶縁抵抗測定用のいずれかの回路を選択するためのスイッチを備えた構造となっている。
このような構造によれば、メガリングフィルタの配線を変更せずに対地間における絶縁抵抗と相間における絶縁抵抗を測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2017-117680号公報
【特許文献2】特開2021-105598号公報
【特許文献3】特開2020-134358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
送電線路の絶縁抵抗を測定する作業の頻度はそれほど高くないのに対し、特許文献1乃至特許文献3に開示された発明では装置やシステムの製造コストが高いため、費用対効果が低いという課題があった。
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、送電線路の絶縁抵抗を効率良く測定することが可能な接地切替器及びそれを用いた送電線路の測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するため、第1の発明は、送電線路の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタとともに用いられる接地工具の接地状態と非接地状態を切り替えるための接地切替器であって、接地工具において送電線路に取り付けられる導通部と接地金具の間に設置されることを特徴とする。
第1の発明においては、接地切替器の操作によって接地工具の接地状態と非接地状態が切り替わるため、送電線路に対して接地工具を取り付けたり、取り外したりする作業を行う必要がないという作用を有する。
【0018】
第2の発明は、第1の発明において、接地切替器は、接地工具の導通部と電気的に接続された接地工具側端子と、接地金具と電気的に接続された接地金具側端子と、基端側を中心として先端側を揺動可能に設置されて接地工具側端子と接地金具側端子の間の導通状態を切り替えるスイッチレバーと、を備えていることを特徴とする。
第2の発明においては、第1の発明の作用に加え、スイッチレバーを揺動させるという簡単な操作により、接地工具の接地状態と非接地状態が容易に切り替わるという作用を有する。
【0019】
第3の発明は、第2の発明において、複数本の接地工具について接地状態と非接地状態を切り替え可能に接地工具側端子、接地金具側端子及びスイッチレバーを複数備え、スイッチレバーは、一体として動作するように互いに連結されていることを特徴とする。
第3の発明においては、第2の発明の作用に加えて、スイッチレバーを操作することによって複数本の接地工具について接地状態と非接地状態が同時に切り替わるという作用を有する。
【0020】
第4の発明は、メガリングフィルタと接地工具を用いた送電線路の絶縁抵抗測定方法であって、接地工具は、送電線路に取り付けられる導通部と接地金具の間に第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明に係る接地切替器が設置されていることを特徴とする。
第4の発明においては、送電線路の絶縁抵抗を測定する場合に第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明と同様の作用が発揮される。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明では、接地工具の接地状態と非接地状態を作業者の手元で切り替えることができる。すなわち、第1の発明によれば、送電線路に対する接地工具の取り付けや取り外しという作業が発生しないため、送電線路の絶縁抵抗を効率良く測定することが可能である。
【0022】
第2の発明によれば、第1の発明の効果を奏することに加え、接地工具の接地状態と非接地状態を切り替えるという機能が簡単な構造によって実現されるため、接地切替器の製造コストを安くすることができるという効果を奏する。
【0023】
第3の発明によれば、スイッチレバーを操作することで複数本の接地工具の接地状態と非接地状態が同時に切り替わるため、第2の発明の効果に加え、測定対象の送電線路に取り付けられた接地工具について接地状態と非接地状態を切り替え損ねてしまうことを防止できるという効果を奏する。
【0024】
第4の発明によれば、送電線路の絶縁抵抗を測定する場合に第1の発明乃至第3の発明のいずれかの発明と同様の効果が発揮される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】(a)は本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法において対地間の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタと接地工具が電気設備に設置される様子を模式的に示した図であり、(b)及び(c)はそれぞれ接地切替器の平面図及び側面図である。
【
図2】本発明に係る送電線路の測定方法において相間の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタと接地工具が電気設備に設置される様子を模式的に示した図である。
【
図3】本発明に係る送電線路の測定方法によって送電線路における対地間の絶縁抵抗を測定する手順を示したフローチャートである。
【
図4】本発明に係る送電線路の測定方法によって送電線路における相間の絶縁抵抗を測定する手順を示したフローチャートである。
【
図5】(a)は送電線路における対地間の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタと接地工具が電気設備に設置される様子を模式的に示した図であり、(b)はメガリングフィルタの回路図である。
【
図6】送電線路における対地間の絶縁抵抗を測定する従来の手順を示したフローチャートである。
【
図7】送電線路における相間の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタと接地工具が電気設備に設置される様子を模式的に示した図である。
【
図8】送電線路における相間の絶縁抵抗を測定する従来の手順を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0026】
本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法によって三相3線式の送電線路について対地間及び相間の絶縁抵抗を測定する方法について
図1乃至
図4を用いて説明する。なお、
図1(a)及び
図2はそれぞれ本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法において対地間及び相間の絶縁抵抗を測定する際にメガリングフィルタと接地工具が電気設備に設置される様子を模式的に示した図であり、
図1(b)及び
図1(c)はそれぞれ接地切替器の平面図及び側面図である。また、
図3及び
図4はそれぞれ本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法において対地間及び相間の絶縁抵抗を測定する手順を示したフローチャートである。
なお、
図1(c)は
図1(b)においてスイッチレバーの1つが揺動した状態を表している。また、
図5及び
図7を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0027】
図1(a)及び
図2に示すように、本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法は、
図5(a)及び
図7に示した電気設備50の測定対象線路70a~70cに接地工具53a~53c及びメガリングフィルタ58a、58bを取り付けて対地間及び相間の絶縁抵抗を測定する方法であって、接地工具53a~53cの接地状態及び非接地状態を切り替えるための接地切替器1がケーブル56と接地金具57の間に設置されていることを特徴とする。
図1(b)及び
図1(c)に示すように、接地切替器1は接地工具53a~53cの導通部55に一端が接続されたケーブル56の他端がそれぞれ接続された接地工具側端子3a~3cと、接地金具57に一端が接続されたケーブル2の他端がそれぞれ接続された接地金具側端子4a~4cと、絶縁部材からなり、上面5aに接地工具側端子3a~3cと接地金具側端子4a~4cが所定の距離を隔てるようにして設置された端子台5と、基端7aに軸孔がそれぞれ設けられた3本のスイッチレバー6a~6cと、端子台5に設置されて上記軸孔に挿通された軸体8aを回転可能に保持する軸保持部8bを備えている。また、軸保持部8bによって軸体8aを中心として揺動可能に保持されるスイッチレバー6a~6cは、導電部材からなる本体部7の一部に絶縁部材からなる操作部9が取り付けられている。そして、スイッチレバー6a~6cは本体部7の基端7aが接地金具側端子4a~4cに対して電気的に接続されており、軸体8aを中心とする揺動により先端7bを接地工具側端子3a~3cに接触させることで、接地工具側端子3a~3cと接地金具側端子4a~4cを電気的に接続する構造となっている。
【0028】
まず、本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法によって三相3線式の送電線路について対地間の絶縁抵抗を測定する方法について
図1及び
図3を用いて説明する。
本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法によって三相3線式の送電線路について相ごとに対地間の絶縁抵抗を測定するには、
図1(a)に示すように、メガリングフィルタ58aのケーブル62a、62bを絶縁抵抗計64のライン端子65及びアース端子66にそれぞれ接続するとともにケーブル61に接続された接地金具63を架台52に設けられた接地箇所に接続する(
図3におけるステップS1)。さらに、電気設備50に残留している電荷を放電するため、接地金具57を架台52に設けられた接地箇所に接続するとともに接地切替器1のスイッチレバー6a~6cを操作して接地状態にした接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cに取り付ける(
図3におけるステップS2)。そして、メガリングフィルタ58aの導通部60を測定対象線路70aに取り付ける(
図3におけるステップS3)。
【0029】
接地切替器1のスイッチレバー6aの操作により接地工具側端子3aと接地金具側端子4aの接続を切り離して接地工具53aを非接地状態にする(
図3におけるステップS4)。そして、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70aについて対地間の絶縁抵抗を測定する(
図3におけるステップS5)。その後、絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地切替器1のスイッチレバー6aの操作により接地工具側端子3aに接地金具側端子4aを接続して接地工具53aを接地状態にするとともに(
図3におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58aの導通部60を測定対象線路70aから取り外す(
図3におけるステップS7)。
さらに、測定対象線路70b、70cに対しても
図3におけるステップS3~ステップS7の作業をそれぞれ行う。そして、測定対象線路70a~70cのそれぞれについて対地間の絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cから取り外す(
図3におけるステップS8及びステップS9)。
【0030】
つぎに、本発明に係る送電線路の絶縁抵抗測定方法によって三相3線式の送電線路について相間の絶縁抵抗を測定する方法について
図2及び
図4を用いて説明する。
三相3線式の送電線路について相間の絶縁抵抗を測定するには、
図2に示すように、メガリングフィルタ58a、58bのケーブル62aを絶縁抵抗計64のライン端子65及びアース端子66にそれぞれ接続するとともにケーブル61に接続された接地金具63を架台52に設けられた接地箇所に接続する(
図4におけるステップS1)。さらに、電気設備50に残留している電荷を放電するため、接地金具57を架台52に設けられた接地箇所に接続するとともに接地切替器1のスイッチレバー6a~6cを操作して接地状態にした接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cに取り付ける(
図4におけるステップS2)。そして、メガリングフィルタ58a、58bの導通部60を測定対象線路70a、70bにそれぞれ取り付ける(
図4におけるステップS3)。
【0031】
接地切替器1のスイッチレバー6a、6bの操作により接地工具側端子3a、3bと接地金具側端子4a、4bの接続をそれぞれ切り離して接地工具53a、53bを非接地状態にする(
図4におけるステップS4)。そして、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70a、70bについて相間の絶縁抵抗を測定する(
図4におけるステップS5)。その後、絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地切替器1のスイッチレバー6a、6bの操作により接地工具側端子3a、3bに接地金具側端子4a、4bをそれぞれ接続して接地工具53a、53bを接地状態にするとともに(
図4におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58bの導通部60を測定対象線路70bから取り外す(
図4におけるステップS7)。
【0032】
さらに、測定対象線路70a、70c及び測定対象線路70b、70cに対して
図8におけるステップS3~ステップS7の作業をそれぞれ行う。具体的には、まず、メガリングフィルタ58bの導通部60を測定対象線路70cに取り付けた後(
図4におけるステップS3)、接地切替器1のスイッチレバー6a、6cの操作により接地工具側端子3a、3cと接地金具側端子4a、4cの接続をそれぞれ切り離して接地工具53a、53cを非接地状態にする(
図4におけるステップS4)。そして、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70a、70cについて相間の絶縁抵抗を測定する(
図4におけるステップS5)。その後、絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地切替器1のスイッチレバー6aの操作により接地工具側端子3aに接地金具側端子4aを接続して接地工具53aを接地状態にするとともに(
図4におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58aの導通部60を測定対象線路70aから取り外す(
図4におけるステップS7)。
【0033】
つぎに、メガリングフィルタ58aの導通部60を測定対象線路70bに取り付けた後(
図4におけるステップS3)、接地切替器1のスイッチレバー6b、6cの操作により接地工具側端子3b、3cと接地金具側端子4b、4cの接続をそれぞれ切り離して接地工具53b、53cを非接地状態にする(
図4におけるステップS4)。そして、絶縁抵抗器64のスイッチを入れて測定対象線路70b、70cについて相間の絶縁抵抗を測定する(
図4におけるステップS5)。その後、絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地切替器1のスイッチレバー6b、6cの操作により接地工具側端子3b、3cに接地金具側端子4b、4cをそれぞれ接続して接地工具53b、53cを接地状態にするとともに(
図4におけるステップS6)、この状態でメガリングフィルタ58a、58bの導通部60を測定対象線路70b、70cから取り外す(
図4におけるステップS7)。そして、測定対象線路70a、70c及び70b、70cについてそれぞれ相間の絶縁抵抗の測定が終了した時点で、接地工具53a~53cの導通部55を測定対象線路70a~70cから取り外す(
図4におけるステップS8及びステップS9)。
【0034】
このように、接地切替器1では、作業者が接地工具53a~53cの接地状態と非接地状態の切り替えを手元で行うことができるため、接地工具53a~53cを取り付けたり、取り外したりする作業を行う必要がない。したがって、作業者は接地切替器1を用いることにより、送電線路の絶縁抵抗を効率良く測定することが可能となる。また、接地切替器1はスイッチレバー6a~6cを揺動させるという簡単な操作により、接地工具53a~53cの接地状態と非接地状態を容易に切り替えることができる構造であるため、安価に製造することが可能である。
【0035】
なお、本発明の接地切替器1は、上述の実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、接地切替器1は、スイッチレバー6a~6cが一体として動作するように互いに連結された構造であっても良い。このような構造によれば、送電線路に取り付けられた接地工具53a~53cの接地状態と非接地状態が同時に切り替わるため、接地切替器1の操作を誤ってしまい、接地状態を切り替えるべき接地工具について接地状態を切り替え損ねてしまうという事態を防ぐことができる。
1…接地切替器 2…ケーブル 3a~3c…接地工具側端子 4a~4c…接地金具側端子 5…端子台 5a…上面 6a~6c…スイッチレバー 7…本体部 7a…基端 7b…先端 8a…軸体 8b…軸保持部 9…操作部 50…電気設備 51…支持がいし 52…架台 53a~53c…接地工具 54…絶縁棒 55…導通部 56…ケーブル 57…接地金具 58a、58b…メガリングフィルタ 59…絶縁棒 60…導通部 61…ケーブル 62a、62b…ケーブル 63…接地金具 64…絶縁抵抗計 65…ライン端子 66…アース端子 67…絶縁台 68…架線用端子 69a~69c…結節点 70a~70c…測定対象線路 C1~C3…コンデンサ R1~R4…抵抗