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特開2023-126022物品管理器具、物品管理システム、及び、物品管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126022
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】物品管理器具、物品管理システム、及び、物品管理方法
(51)【国際特許分類】
   A47F 7/00 20060101AFI20230831BHJP
   A47F 5/00 20060101ALI20230831BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A47F7/00 V
A47F5/00 Z
G06K7/10 244
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030449
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】植田 良行
(72)【発明者】
【氏名】坂上 充敏
【テーマコード(参考)】
3B118
【Fターム(参考)】
3B118BB04
3B118FA11
(57)【要約】
【課題】通信に要するデータを抑制しつつ、物品が手に取られた頻度を自動的に測定するために用いる物品管理器具、物品管理システム、及び、物品管理方法を提供する。
【解決手段】本発明のある態様は、一端が物品に取り付けられた線状部材と、線状部材を一端から第1方向に付勢する付勢部材と、を有する物品取り付け用具と、線状部材に取り付けられた通信デバイスと、通信デバイスを収容可能であって、通信デバイスが収容されたときに電磁シールド機能が通信デバイスに作用するように構成されたデバイス収容部と、を備え、通信デバイスは、物品に対して付勢部材の第1方向の付勢力に抗する外力が加わっていない場合にデバイス収容部に収容され、物品に対して付勢部材の第1方向の付勢力に抗する外力が加わった場合にデバイス収容部から退出可能となる、物品管理器具である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端が物品に取り付けられた線状部材と、前記線状部材を前記一端から第1方向に付勢する付勢部材と、を有する物品取り付け用具と、
前記線状部材に取り付けられた通信デバイスと、
前記通信デバイスを収容可能であって、前記通信デバイスが収容されたときに電磁シールド機能が前記通信デバイスに作用するように構成されたデバイス収容部と、
を備え、
前記通信デバイスは、前記物品に対して前記付勢部材の前記第1方向の付勢力に抗する外力が加わっていない場合に前記デバイス収容部に収容され、前記物品に対して前記付勢部材の前記第1方向の付勢力に抗する外力が加わった場合に前記デバイス収容部から退出可能となる、
物品管理器具。
【請求項2】
前記物品取り付け用具は、前記付勢部材を収容するケースを有し、
前記ケースは、前記付勢部材の前記第1方向の付勢力によって前記線状部材のうち前記ケースから露出した部分の少なくとも一部を巻き取り可能な巻き取り機構を内蔵する、
請求項1に記載された物品管理器具。
【請求項3】
前記ケースと前記デバイス収容部が一体で構成されている、
請求項2に記載された物品管理器具。
【請求項4】
前記デバイス収容部には、前記ケースが内蔵されている、
請求項2に記載された物品管理器具。
【請求項5】
前記付勢部材は、前記線状部材の他端に取り付けられた重りである、
請求項1に記載された物品管理器具。
【請求項6】
前記物品は、試供用に店舗に配置される商品である、
請求項1から5のいずれか一項に記載された物品管理器具。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載された物品管理器具と、
前記通信デバイスと無線通信を行う無線装置と、
前記無線装置による前記通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて前記無線装置が前記通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する測定装置と、を備えた、
物品管理システム。
【請求項8】
前記通信デバイスが前記デバイス収容部に収容されたときに前記デバイス収容部によって遮蔽されない位置に配置された参照用の通信デバイスをさらに備え、
前記無線装置は、前記参照用の通信デバイスと通信を行い、
前記測定装置は、前記無線装置による前記参照用の通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて前記無線装置が前記参照用の通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する、
請求項7に記載された物品管理システム。
【請求項9】
前記通信デバイスは、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えた無線タグである、
請求項7又は8に記載された物品管理システム。
【請求項10】
前記通信デバイスは、UHF帯の無線タグである、
請求項7又は8に記載された物品管理システム。
【請求項11】
前記通信デバイスは、HF帯の無線タグである、
請求項7又は8に記載された物品管理システム。
【請求項12】
前記通信デバイスは、マイクロ波帯の無線タグである、
請求項7又は8に記載された物品管理システム。
【請求項13】
一端が物品に取り付けられた線状部材と、前記線状部材を前記一端から第1方向に付勢する付勢部材と、を有する物品取り付け用具を設け、
前記線状部材に通信デバイスを取り付け、
電磁シールド機能を備えたデバイス収容部を、前記物品に対して前記付勢部材の前記第1方向の付勢力に抗する外力が加わっていない場合に前記通信デバイスが前記デバイス収容部に収容されるように構成し、
前記物品に対して前記付勢部材の前記第1方向の付勢力に抗する外力が加わった場合には、前記通信デバイスが前記デバイス収容部から退出して前記通信装置と通信を行い、
前記無線装置による前記通信デバイスとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、前記通信可否の結果に基づいて前記無線装置が前記通信デバイスと通信可能となる頻度を測定する、
物品管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品管理器具、物品管理システム、及び、物品管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、商品のマーケティング等の目的で、店舗に配置した商品サンプルを来店者が手に取ったことを検出するように構成したシステムが知られている。
例えば、特許文献1に記載されたシステムでは、商品陳列棚に、非接触ICタグが添付されている商品サンプルを陳列させるとともに、非接触ICタグと通信可能な構造を有するICタグリーダを備える。そして、商品サンプルが商品陳列棚から取り出された際に、ICタグリーダで読み取られていた固有情報が受信できない状態になったことで、システム内の情報処理装置は、商品サンプルを買物客が手に取られたことを検知するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-148884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、店舗において商品サンプルが買物客に手に取られていない時間は、買物客に手に取られている時間に比べてずっと長い。そのため、上記従来のシステムでは、買物客に手に取られていない非常に長い時間、ICタグリーダは、商品サンプルに添付されている非接触ICタグから固有情報を受信し続け、情報処理装置が常時、固有情報を受信できなくなったか否か監視し続けることになる。それによって、システムにおいてICタグリーダと情報処理装置の間の通信に要するデータ量が膨大となり、回線容量の逼迫を招く虞がある。そればかりか、買物客に手に取られていない非常に長い時間に情報処理装置が受信するデータは、商品のマーケティング解析に寄与しない。
【0005】
そこで、本発明は、通信に要するデータを抑制しつつ、物品が手に取られた頻度を自動的に測定するために用いる物品管理器具、物品管理システム、及び、物品管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様は、一端が物品に取り付けられた線状部材と、前記線状部材を前記一端から第1方向に付勢する付勢部材と、を有する物品取り付け用具と、
前記線状部材に取り付けられた通信デバイスと、
前記通信デバイスを収容可能であって、前記通信デバイスが収容されたときに電磁シールド機能が前記通信デバイスに作用するように構成されたデバイス収容部と、
を備え、
前記通信デバイスは、前記物品に対して前記付勢部材の前記第1方向の付勢力に抗する外力が加わっていない場合に前記デバイス収容部に収容され、前記物品に対して前記付勢部材の前記第1方向の付勢力に抗する外力が加わった場合に前記デバイス収容部から退出可能となる、
物品管理器具である。
【発明の効果】
【0007】
本発明のある態様によれば、通信に要するデータを抑制しつつ、物品が手に取られた頻度を自動的に測定するために用いる物品管理器具、物品管理システム、及び、物品管理方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1の実施形態の商品管理システムの適用例を示す図であり、商品棚に商品が置かれている状態を示す図である。
図2図1に示すシステム適用例において、商品棚に商品が置かれている状態を横から見た図である。
図3】第1の実施形態の商品管理システムにおいて、コードが引き出されていない状態とコードが引き出された状態のIoTタグと商品の位置関係を説明する図である。
図4】IoTタグのコードに対する取り付け方法の第1例を示す図である。
図5】IoTタグのコードに対する取り付け方法の第2例を示す図である。
図6】IoTタグのコードに対する取り付け方法の第3例を示す図である。
図7】第1の実施形態の商品管理システムにおいて、コード巻き取り用具の構造を説明する図である。
図8図7に示すコード巻き取り用具において、コードが引き出されていない状態とコードが引き出された状態を断面で示す図である。
図9】所定の期間内のタグ検出回数の集計例を示す図である。
図10】第1の実施形態の商品管理システムの各装置の内部構成を示すブロック図である。
図11】IoTタグから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
図12】タグデータベースのデータ構成例を示す図である。
図13】第2の実施形態の商品管理システムにおいて、コードが引き出されていない状態とコードが引き出された状態のIoTタグと商品の位置関係を説明する図である。
図14】第2の実施形態の商品管理システムにおいて、コード巻き取り用具の構造を説明する図である。
図15図14に示すコード巻き取り用具と収容部材において、コードが引き出されていない状態とコードが引き出された状態を断面で示す図である。
図16】第2の実施形態の商品管理システムにおいて、コードが引き出されていない状態とコードが引き出された状態のIoTタグと商品の位置関係を説明する図である。
図17図16に示す収容部材において、コードが引き出されていない状態とコードが引き出された状態を断面で示す図である。
図18図2に示したコード巻き取り用具の配置方法に対する変形例を示す図である。
図19図2に示したコード巻き取り用具の配置方法に対する変形例を示す図である。
図20図2に示したコード巻き取り用具の配置方法に対する変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示において「物品」とは、例えば商品、製品、半製品(製造途中にある中間段階の製品)、モックアップ等の有体物を意味する。以下の実施形態では、物品の一例として、販売促進用商品(POSM(Point of Sale Material)ともいう。)を挙げる。
【0010】
以下、本開示の情報処理システムの一実施形態である商品管理システムについて説明する。
一実施形態の商品管理システムは、店舗に販売促進用商品(POSM)を試供可能に配置し、販売促進用商品を来店者が手に取る時刻や頻度を自動で測定することにより、有用なマーケティング情報を効率的に取得するように構成されている。
販売促進用商品(以下、単に「商品」という。)は限定しないが、来店者が手に取って試してみたくなるような商品であることが好ましく、例えば、電気髭剃り、デジタルカメラ、ビデオカメラ、スマートフォン等であるが、その限りではない。商品は、筆箱や万年筆等の文房具、香水、口紅やファンデーション等の化粧品、携帯型ゲーム機、ハンディクリーナ等の家電製品、洗濯用の柔軟剤、さらには香りの見本等に広く適用することができる。
【0011】
ホルダに保持されている商品を来店者が手に取った(ホルダから外された)頻度を自動的に測定するために、発明者は、来店者が手に取った場合に通信デバイスから信号を発信し、かつホルダに戻された場合に通信デバイスの電波が遮蔽されるように構成することを着想した。
すなわち、商品(物品)に取り付けられた通信デバイスと、通信デバイスの電波を遮蔽する遮蔽部材とを備え、商品がホルダに載置(保持)されている位置から商品がホルダから外された位置に移動すると通信デバイスは第1の位置から第2の位置に移動し、遮蔽部材は通信デバイスが第1の位置にあるときに通信デバイスの電波を遮蔽し、通信デバイスが第2の位置にあるときに通信デバイスは通信可能となるように構成される。
【0012】
一実施形態の商品管理システムでは、商品に、コードや紐等の線状部材が取り付けられ、線状部材には、通信デバイスが取り付けられる。線状部材、及び、線状部材に取り付けられた通信デバイスは、商品がホルダから外されるとき、あるいは商品がホルダに戻されるときの商品の動きに連動して動く。通信デバイスの位置は、商品がホルダに保持されているときに、通信デバイスが遮蔽される位置にあるように構成される。
【0013】
通信デバイスが通信可能な範囲内には、通信デバイスと通信を行うための無線装置が配置される。
通信デバイスは、周囲の電波を収集して電力に変換し、当該電力を貯蔵するキャパシタを備えたIoTタグ(無線タグの一例)が長期間メンテナンス不要で利用可能な点で好ましいが、その限りではなく、UHF帯、HF帯、又は、マイクロ波帯で動作するRFIDタグ(無線タグの一例)であっても構わない。また、いずれの場合も、RFIDタグは、パッシブ型(電池が内蔵されていないもの)でもよいし、アクティブ型(電池が内蔵されているもの)であってもよい。
【0014】
一実施形態の商品管理システムでは、線状部材に取り付けられ、電磁シールド機能を有するデバイス収容部と、線状部材に取り付けられている通信デバイスとによって、商品が来店者によって手に取られてホルダから外れたか否か判断するように構成される。すなわち、商品がホルダに保持されている場合には、デバイス収容部に通信デバイスが収容されて電磁シールド機能が通信デバイスに作用するため、通信デバイスの電波の放射性能が大幅に低下し、通信デバイスと無線装置の通信ができないか、通信頻度が大幅に低下する。他方、商品がホルダに保持されていない場合(つまり、来店者が商品を手に取った場合)には、線状部材の動きに連動して通信デバイスがデバイス収容部から退出し、デバイス収容部の電磁シールド機能が通信デバイスに作用しなくなり、通信デバイスと無線装置の通信が可能である。
【0015】
一実施形態の商品管理システムでは、無線装置は、通信デバイスとの通信が可能である場合、通信デバイスを識別する識別情報(例えば、後述するタグID)を受信し、ネットワークを介して受信した識別情報をサーバに通知することで、サーバは、識別情報に対応する通信デバイスが取り付けられた商品が手に取られたと判断できる。そのため、サーバは、識別情報を受信した頻度を測定することで、対応する商品を来店者が手に取った頻度についての情報を得ることができる。
商品が来店者に手に取られていない間は、通信デバイスと無線装置の通信ができないか、通信頻度が大幅に低下するため、無線装置とサーバとの間の通信はほとんど発生しない。したがって、このシステムでは、商品が手に取られた頻度を自動的に測定する際に、通信に要するデータを大幅に抑制できる。
【0016】
以下、一実施形態の商品管理システムについて、商品が電気髭剃りである場合を例に採り、図面を参照してより具体的に説明する。
図1は、電気髭剃りのPOSMとして6台の商品7-1~7-6が商品棚3に試供可能に展示されている状態の図を示している。図2は、商品棚3に商品が置かれている状態を横から見た図である。以下の説明では、商品7-1~7-6に共通して言及するときには「商品7」と表記する。
図1に示すように、商品棚3のホルダ30に設けられた凹部H-1~H-6に、それぞれ6台の商品7-1~7-6が収容され、各ホルダの近傍には来店者への商品説明のためのラベルPL1~PL6が配置されている。以下の説明では、凹部H-1~H-6に共通して言及するときには「凹部H」と表記する。
【0017】
図2では、1個の商品7について、商品7がホルダ30に保持されていない状態(実線)と、ホルダ30から外された状態(仮想線)とを比較して示してある。
図2に示すように、商品棚3は、脚部34と、脚部34に支持された基部33と、基部33上に固定されているホルダ30とを有する。
ホルダ30は、凹部Hが形成されて商品7の底部を支持するための支持部31と、背もたれ部32とを有する。背もたれ部32は、支持部31から上方に延びる板状部材であり、商品7の背面部を支持可能である。
【0018】
図2に示すように、商品7の底部にはコード15(線状部材の一例)の一端が取り付けられている。コード15の他端は、コード巻き取り用具10(物品取り付け用具の一例)に取り付けられている。一実施形態では、コード巻き取り用具10は、商品棚3の基部33に固定されるが、その固定方法は限定されず、例えば、両面テープ、接着剤やねじによる締結等、公知の固定方法を採ることができる。
コード15及びコード巻き取り用具10は、商品7ごとに設けられている。したがって、図1に例示するように6個の商品7が展示されている場合には、6組のコード15及びコード巻き取り用具10が設けられる。
一実施形態では、コード巻き取り用具10とタグTは物品管理器具を構成する。
【0019】
コード巻き取り用具10は、コード15を伸縮自在に引き出し、かつ巻き取り可能である。コード15の長さは、来店者が商品7を手に取ったとき商品7を十分に試供することができる程度に設定されている。来店者がホルダ30にある商品7を手に取った場合、コード巻き取り用具10からコード15が引き出されて、コード15が取り付けられた状態で商品7をホルダ30から外すことができる。商品7がホルダ30に戻された場合には、コード15がコード巻き取り用具10によって巻き取られる。
【0020】
図2に示すように、コード15には、IoT(Internet of Things)タグT(通信デバイスの一例)が取り付けられる。IoTタグは、周囲環境の電波に基づいて発電する環境発電型の通信デバイスの一例であり、バッテリを備えていない。以下の説明では、IoTタグTを単にタグTという。
タグTは、タグTが取り付けられたコード15に接続された商品7ごとに異なるタグIDを記憶している。タグIDは、タグTの識別情報である。
【0021】
タグTの最大通信距離は、限定しないが、例えば3~10メートルの範囲である。タグTは、低電力消費の無線通信を行うように構成されており、通信プロトコルの例としては、Bluetooth(登録商標) Low Energy (以下、BLE)、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)等が挙げられる。以下では、BLEによる通信を行う場合を例として説明する。
タグTは、BLEの規格に準拠する場合、所定間隔毎(例えば、1~10秒程度の短時間毎)にアドバタイジングパケット(後述する)をブロードキャスト送信する。タグTが送信するパケットにはタグIDが含まれる。
【0022】
図1に示すように、商品棚3の近くには、タグT1~T6の各々とBLE通信を行うための無線装置2が配置される。後述するが、無線装置2は、ネットワークを介してタグ管理サーバ(後述する)と通信可能なゲートウェイ装置である。無線装置2は、図2に示すように各ホルダに商品が配置されていない場合に各タグから発信されるパケットを受信可能な位置に配置される。すなわち、無線装置2は、各タグの電波出力を考慮して配置される。
図1において仮想線で無線装置2を示しているように、無線装置2の設置場所は任意に設定することができる。
【0023】
図1に示すように、好ましくは、商品棚3に参照タグTrefが配置される。参照タグTrefは、参照用のタグであり、タグT1~T6と同じ構成のデバイスである。
参照タグTrefは、商品7-1~7-6が対応するホルダに保持されているか否かに関わらず無線装置2と通信可能である限り、如何なる場所に配置されてもよい。参照タグTrefは、無線装置2が正常に動作しているか否か判断するために設けられる。特に、後述するように、商品7-1~7-6がすべてホルダに保持されている状態では、無線装置2がタグT1~T6から発信される電波を受信できない場合があるため、仮に参照タグTrefがないとしたならば、システムが正常に動作しているかの判断が難しい。そこで、商品7-1~7-6が対応するホルダに保持されているか否かに関わらず無線装置2と通信可能な参照タグTrefを設けることで、システムが正常に動作しているか否か判断できる。
【0024】
図3に、コード巻き取り用具10からコード15が引き出されていない状態とコード15が引き出された状態のタグTと商品7の位置関係を示す。
商品7がホルダ30に保持されているときには、コード巻き取り用具10にコード15が巻き取られており、コード15に取り付けられたタグTがコード巻き取り用具10に収容される。他方、商品7がホルダ30から外されたときには、コード巻き取り用具10からコード15が引き出され、コード15に取り付けられたタグTが露出した状態となる。
【0025】
次に、図4図6を参照して、タグTのコード15に対する取り付け方法について説明する。
図4は、タグTのコード15に対する取り付け方法の第1例を示している。
第1例に係るタグTの取り付け方法では、図4に示すように、プレート61の表側にタグ本体62を貼付し、シール63によってコード15をプレート61の裏側に貼付することによって、タグTをコード15に取り付ける。プレート61は、例えばプラスチック製であるが、その限りではなく木材や紙でも良い。
シール63は、図4のA-A断面に示すように、基材631及び粘着剤632が積層され、粘着剤632によりコード15をプレート61に接着させる。
タグ本体62は、図4のA-A断面に示すように、基材621、通信デバイス64、及び、粘着剤623がこの順に積層されており、粘着剤623によりプレート61に接着されている。通信デバイス64は、図示しないICチップと薄膜状のアンテナにより構成される。
【0026】
図5は、タグTのコード15に対する取り付け方法の第2例を示している。第1例と異なるのは、コード15をプレート61の裏側でシールにより固定するのではなく、プレート61に設けた孔61hにおいてコード15を連結することにより、タグTがコード15に取り付けられる点である。
【0027】
図6は、タグTのコード15に対する取り付け方法の第3例を示している。
第3例に係るタグTの取り付け方法では、図6のB-B断面に示すように、一体の基材65a,65bが、通信デバイス64及びコード15を挟みながら粘着剤66により貼り合わされる。一体の基材65a,65bは、ミシン目を挟んで線対称となっている基材が元となっている。この元となる基材の一方の面には粘着剤66が塗布されており、この元となる基材にコード15及び通信デバイス64を挟んでミシン目で谷折りすることで、タグTがコード15に取り付けられる。基材65a,65bの両方に粘着剤が塗布されても良い。
図6のタグTは、パウチ加工(ラミネート加工)によって補強してもよい。
【0028】
次に、図7を参照して、コード巻き取り用具10の構成について説明する。
図7は、コード巻き取り用具10の平面図と、C-C断面図とを示している。なお、図2に示したコード巻き取り用具10は、商品棚3の基部33上に平置きされて側面から見た状態である。
【0029】
C-C断面に示すように、コード巻き取り用具10は、下部ケース11と上部ケース12により形成される収容空間内に、コード巻き取り部13及びゼンマイばね14が設けられている。コード巻き取り部13は、下部ケース11の底部の中心から突出しているばね支持部11cの回りを回転可能に構成される。コード15の一端はコード巻き取り部13に取り付けられており、コード巻き取り部13には、コード15を巻き取るための外周溝13dが形成されている。
コード巻き取り部13及びゼンマイばね14(付勢部材の一例)は、巻き取り機構を構成する。
ゼンマイばね14の一端がばね支持部11cに支持されており、コード巻き取り部13がばね支持部11cの回りを回転し、コード15が引き出されると、ゼンマイばね14が巻き上げられる。そのため、コード15が引き出されると、コード15を巻き取る方向に付勢力が発生する。この付勢力は、物品7に取り付けられたコード15の一端からコード巻き取り用具10に向かう方向(第1方向の一例)に働く。
【0030】
図8は、コード15が引き出されていない状態とコード15が引き出された状態のコード巻き取り用具10の平面図である。なお、図4は、コード巻き取り用具10については断面で示してある。
図8に示すように、コード巻き取り用具10の内部には、コード15を引き出し、かつ巻き取るためのコード出入口10aが形成されている。また、コード巻き取り用具10は、タグTを収容するための収容部16(デバイス収容部の一例)を有する。収容部16は、例えば断面矩形状であり、コード出入口10aと連通する空洞16hが形成されている。収容部16のコード出入口10aとは反対側には、開口16aが形成されている。タグTは、コード15の引き出し状態に応じて、開口16aから空洞16hの中に進入し、あるいは空洞16hから退出する。
【0031】
コード巻き取り用具10は、外面が電磁シールド層161で覆われている。電磁シールド層161(遮蔽部材)は、例えば、透明PETフィルム、アルミニウムの蒸着層(膜)、基材、粘着剤をこの順に積層したものであり、粘着剤により収容部16の外面に貼り付けられている。なお、電磁シールド層161は、曲面追従性を有するホイル紙(フォイル紙)を収容部16の外面に貼り付けたものであってもよいし、アルミフォイルで包んでも良い。
電磁シールド層161は、タグTが収容部16に収容された場合に、タグTに対して電磁シールド機能を作用させるために設けられている。
【0032】
次に、商品管理システム1の動作を説明する。
商品7がホルダ30にセットされている場合、図8に示すように、コード15が引き出されていない状態となる。この状態では、ゼンマイばね14が巻き上げられておらず、ゼンマイばね14の復元力はコード15に作用しないか、作用しても僅かである。この状態では、コード15に取り付けられたタグTがコード巻き取り用具10の収容部16内に収容された状態であるため、電磁シールド層161の効果により、タグTは無線装置2と通信ができないか、通信できたとしてもその頻度は少ない。
【0033】
他方、商品7がホルダ30から外されている場合、コード15がコード巻き取り用具10から引き出された状態となる。この状態では、コード15が引き出されてゼンマイばね14が巻き上げられ、ゼンマイばね14の復元力Fがコード15を巻き取る方向に作用する。この状態では、タグTが商品7とともに移動し、タグTが収容部16の開口16aから退出して露出(タグTは電磁シールド層161の影響を受けない位置まで離間)するため、電磁シールド層161の効果を受けず、タグTは無線装置2と通信ができ、あるいは通信が可能となる頻度が多くなる。
商品7がホルダ30に戻されると、ゼンマイばね14の復元力Fがコード15を巻き取る方向に作用しているため、コード15の巻き取り方向への移動に伴ってタグTがコード巻き取り用具10の収容部16に収容される。
【0034】
図9に、無線装置2がタグTからパケットを検出した頻度についての例示的な測定結果を示す。
図9Aは、1日の店舗の開店時間(午前10時から午後9時まで)中に、タグT1~T3及び参照タグTrefから無線装置2がパケットを検出するタイミングで点をプロットした図である。
図9Bは、図9Aに示した店舗の開店時間のうち午後6時から午後8時までの2時間を対象として、タグT1から無線装置2がパケットを検出するタイミングで点をプロットした部分を拡大した図である。
【0035】
図9Cは、図9Bに対応した図であり、店舗の開店時間のうち午後6時から午後8時までの2時間を対象として、タグT1の検出回数(つまり、タグT1に対応する商品7-1がホルダ30から取り外された回数)を10分間ごとにカウントした値を示す図である。
例えば、タグT1から5秒間隔でパケットが発信される場合、商品7がホルダ30から取り外されている間、5秒ごとに無線装置2がタグT1からのパケットを受信する(つまり、タグT1を検出する)。このタグT1の検出回数を10分ごとに集計したものが図9Cである。この例では、午後6時10分から6時20分までの10分間にタグ検出回数が100回であるため、500秒(=100×5秒)の間、来店者が商品7-1を手に取った時間となる。
図9Cに例示するように集計処理は、無線装置2に接続されるタグ管理サーバ(後述する)において行われる。
【0036】
なお、図9A図9Cは、商品7がホルダ30によって保持されている間、タグTがコード巻き取り用具10の収容部16に収容されることで完全に遮蔽され、タグTと無線装置2との通信ができない理想的な状態を示している。しかし、商品7がホルダ30によって保持されている間であっても、収容部16の開口16aを介してタグTと無線装置2との通信が長い周期で可能となる場合がある。例えば、タグTが収容部16から露出しているときに5秒間隔でパケットが発信される場合には、タグTが収容部16に収容されているときに5秒より長い周期(例えば、数分~数時間)で、タグTと無線装置2との通信が可能となる場合がある。
そこで、所定の閾値よりも短い間隔で無線装置2がパケットを受信した場合に、タグTを検出したと判断するとよい。例えば、所定の閾値は、タグTが収容部16から露出している場合にパケットを送信する間隔よりも僅かに大きい値に設定する。
【0037】
次に、図10及び図11を参照して、一実施形態の商品管理システム1の各装置の構成を説明する。
図10は、本実施形態の商品管理システム1の各装置の内部構成を示すブロック図である。図11は、タグTから送信されるアドバタイジングパケットの構成を示す図である。
【0038】
図10に示すように、商品管理システム1は、無線装置2、及び、無線装置2とネットワークNWを介して通信可能なタグ管理サーバ5(測定装置の一例)を含む。ネットワークNWは限定しないが、例えばLAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)、移動体通信ネットワーク、インターネット等である。
無線装置2は、タグT及び参照タグTrefからBLE通信によりパケットを受信するBLE無線端末として機能する。また、無線装置2は、各タグからパケットを受信すると、受信したパケットに含まれるタグIDをタグ管理サーバ5に送信する。
タグT及び参照タグTrefは、正常にパケットを発信できる状況では、上述したように所定間隔毎にパケットを発信し、それに応じて無線装置2もタグIDを所定間隔毎にタグ管理サーバ5に送信する。
【0039】
図10を参照すると、タグTは、例えば、制御部41、アンテナ42、ハーベスティング部43、電圧制御部44、及び、RFトランシーバ45を含む。なお、以下では、タグTの構成について説明するが、図10に図示しない参照タグTrefの構成もタグTと同じである。
【0040】
タグ全体の形態は図示しないが、例えば、アンテナ42が形成される所定のパターンの導電性金属箔と、当該金属箔に接続されるICチップとが接続された薄膜状の部材である。ICチップ内に、制御部41、ハーベスティング部43、及び、電圧制御部44、RFトランシーバ45が実装される。
【0041】
制御部41は、マイクロプロセッサとメモリ411を有し、タグTの全体を制御する。メモリ411は、RAM(Random Access Memory)又はROM(Read Only Memory)であり、マイクロプロセッサによって実行されるプログラムのほか、タグTに固有の識別情報であるタグIDを記憶する。
【0042】
ハーベスティング部43は、周囲環境の電波(例えば周囲の無線通信による電波)に基づいて環境発電を行い、発電により得られた電力を内部のエネルギーストレージ431に貯蔵する。本実施形態では、ハーベスティング部43は、例えばアンテナ42が受信した無線信号を直流電圧に変換し、エネルギーストレージ431に貯蔵する。エネルギーストレージ431は、例えばキャパシタである。キャパシタの場合には、半導体チップ上に構成されたもの(つまりオンダイ(on-die)型のキャパシタ)でもよい。
【0043】
ハーベスティング部43が環境発電に使用する電波は、広範囲の周波数帯域において複数の異なる周波数帯の電波である。例えば、いわゆる3G~5G等の移動体通信システムで採用されている周波数帯の無線通信による電波、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の通信規格で採用されている周波数帯の無線通信による電波、ZigBee(登録商標)やThread等の通信プロトコルに代表される2.4GHz帯の無線通信による電波、RFIDで採用されている周波数帯(例えば、900MHz帯、13.56MHz帯)の無線通信による電波等が挙げられる。
ここに例示したような電波は、一般に、ほとんどすべてのエリアで適用可能である。そして、タグTは、周囲環境の電波に基づいてハーベスティング部43による環境発電で得られる電力で動作する。そのため、タグTにバッテリを搭載する必要がなく、システムコストを抑制することができる。また、バッテリを搭載する必要がないことから、バッテリの交換作業を行わずに済むため、タグが存在するにもかかわらずタグIDを取得できないという不具合が生じない。
【0044】
電圧制御部44は、制御部41及びRFトランシーバ45に動作電圧を供給するとともに、エネルギーストレージ431の電圧をモニタしており、モニタ結果に応じて電力モードを切り替える。エネルギーストレージ431の電圧が所定の閾値以下である場合には、電力モードを最小限の回路のみを動作させる第1モードとし、このとき制御部41及びRFトランシーバ45では、後述するパケットの生成や無線信号の送信等が行われない。エネルギーストレージ431の電圧が所定の閾値以上まで充電された場合には、電力モードを通常の処理ルーチンを実行する第2モードとし、このとき制御部41及びRFトランシーバ45ではパケットの生成、無線信号の送信を含む各種の処理が行われる。
【0045】
制御部41は、電力モードが第2モードの場合に、BLEのプロトコルに従ってアドバタイジングパケットを生成する。
アドバタイジングパケットは、BLEにおいてブロードキャスト通信を実現するためにアドバタイジングチャネルを利用して送信されるパケットであり、図11に示すパケット構成を有する。
【0046】
図11においてプリアンブル及びアドレスアクセスは、それぞれが所定の固定値である。CRCは巡回検査符号であり、パケットペイロード(つまり、アドバタイジングチャネルPDU(protocol data unit))を対象として所定の生成多項式を用いて算出される検査データである。
アドバタイジングチャネルPDU(以下、単に「PDU」という。)はヘッダとペイロードからなり、当該ペイロードは、ADVアドレスとADVデータとからなる。ADVアドレスはアドバタイザー(つまり、報知する主体であるタグT)のアドレスであるが、送信元を特定しないように送信の都度に設定されるランダムな値でもよい。ADVデータはアドバタイザーのデータ(ブロードキャストデータ)であり、タグIDを含む。
【0047】
制御部41は、PDUを暗号化することが好ましい。暗号化方法は限定しないが、例えば鍵長128ビットのAES(Advanced Encryption Standard)を利用することができる。
【0048】
RFトランシーバ45は、送信するパケット(ベースバンド信号)に対して所定のデジタル変調(例えばGFSK(Gaussian Frequency Shift Keying))を行った後に直交変調を行い、高周波信号(BLEの場合、2.4GHzの周波数帯の信号)をアンテナ42に送出する。
【0049】
アンテナ42は、送信アンテナと発電用アンテナを含む。送信アンテナは、RFトランシーバ45によって送出される高周波の無線信号(パケット)を送信する。他方、発電用アンテナは、例えば周囲環境の電波を受信し、ハーベスティング部43と協働してレクテナとして機能する。
【0050】
図10に示すように、無線装置2は、制御部21、アンテナ22、RFトランシーバ23、および、通信部24を備える。
制御部21は、マイクロプロセッサを主体として構成され、無線装置2の全体を制御する。例えば、制御部21は、タグTから受信したパケットのPDUを復号し、CRCからタグT側と同一の生成多項式を用いて誤り検出を行った後、当該PDUからブロードキャストデータを抽出し、タグ管理サーバ5に送信するように、通信部24を制御する。
RFトランシーバ23は、アンテナ22でタグTから受信した無線信号を検波し、ベースバンド信号に変換し、所定のデジタル復調を行ってパケットを受信する。また、RFトランシーバ23は、ビーコン信号をアンテナ22から送信するために、例えば所定のパターンのベースバンド信号を直交変調してアンテナ22に送出する。
通信部24は、タグ管理サーバ5との通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0051】
図10に示すように、タグ管理サーバ5は、例えば、制御部51、ストレージ52、及び、通信部53を備える。
制御部51は、マイクロプロセッサを主体として構成され、タグ管理サーバ5の全体を制御する。
ストレージ52は、HDD(Hard Disk Drive)等の大規模記憶装置を備え、タグデータベースを記憶する。図12に示すように、タグデータベースには、タグTのタグIDと、当該タグTに対応する凹部Hに保持される商品7の商品コードと、が関連付けられている。ストレージ52はまた、参照タグTrefのタグIDを記憶している。
通信部53は、無線装置2と通信を行うための通信インタフェースとして機能する。
【0052】
制御部51はサーバプログラムを実行することで、タグT及び参照タグTrefが発信するタグIDを含むパケットを無線装置2が受信した場合、当該パケットに含まれるタグIDを無線装置2から取得する。
制御部51は、タグデータベースに含まれるタグIDを無線装置2から取得する度に、取得したタグIDと、タグIDを取得した時刻とを、タグ検出ログとしてストレージ52に記録する。すなわち、制御部51は、無線装置2によるタグTとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得する。なお、図9A図9Bは、タグ検出ログをプロットしたものである。このタグ検出ログに基づいて、制御部51は、図9Cに例示したように所定時間ごとのタグ検出回数の集計処理を行い、特定の商品コードの商品が来店者に手に取られた頻度を測定する。その際、タグIDに対応する商品コードがタグデータベースを参照して特定される。
集計処理を行うタイミングは任意に設定可能である。一例では、店舗の1日の営業時間に、無線装置2によるタグTとの時間の経過に応じた通信可否の結果をタグ検出ログとして記録し、営業時間が経過した後のタイミングで、タグ検出ログを基に集計処理を行う。
【0053】
同様に、制御部51は、参照タグTrefのタグIDを無線装置2から取得する度に、取得したタグIDと、タグIDを取得した時刻とを、タグ検出ログとしてストレージ52に記録する。図1に示したように、参照タグTrefは商品7によって遮蔽されることがないため、無線装置2が故障していない限り、参照タグTrefがパケットを発信する所定間隔ごとに参照タグTrefのタグIDを取得できる。参照タグTrefのタグIDを所定間隔ごとに取得できない場合には、制御部51は、無線装置2が故障していると判断し、図示しない管理者端末に通知する。
【0054】
図10には図示しないが、タグ管理サーバ5とネットワークNWを介して通信可能な利用者端末が、タグ管理サーバ5から、タグ検出ログに基づく集計処理の結果を取得して表示し、利用者が閲覧できるように構成することが好ましい。例えば、利用者端末とタグ管理サーバ5がHTTPSにより通信を行うことにより、利用者端末のブラウザはタグ管理サーバ5から表示用データを受信し、図9Cに例示した形式の集計処理結果を利用者端末の画面に表示する。それによって利用者は、各商品が手に取られた時刻と頻度の情報を視覚的に得ることができる。
【0055】
以上説明したように、上述した商品管理システム1によれば、店舗の商品棚3のホルダ30に保持された商品7に対してコード15の一端を取り付け、コード15の他方の端をコード巻き取り用具10に取り付ける。コード15にはタグTを取り付け、商品7がホルダ30から外されたときにはコード巻き取り用具10からタグTが露出して無線装置2との通信頻度が多くなり、商品7がホルダ30に保持されているときにはコード巻き取り用具10内にタグTが収容され、電磁シールド層によって無線装置2との通信ができないか、あるいは通信頻度が少なくなる。
そのため、無線装置2と通信可能なタグ管理サーバ5は、無線装置2とタグTとの通信可否の結果を無線装置2から取得し、その通信可否の結果に基づいて無線装置2がタグTと通信可能となる頻度を測定する。それによって、対応する商品7が来店者によって手に取られた頻度についての情報を得ることができる。
ここで、商品7が来店者に手に取られていない間は、タグTと無線装置2の通信がほとんどできないため、無線装置2とタグ管理サーバ5との間の通信は発生しない。したがって、このシステムでは、商品7が手に取られた頻度を自動的に測定する際に、通信に要するデータを大幅に抑制できる利点がある。
【0056】
さらに、一実施形態の物品管理方法は、以下の各ステップを含む。
(1)一端が商品7に取り付けられたコード15と、コード15を一端から第1方向に付勢するゼンマイばね14と、を有するコード巻き取り用具10を設けるステップ
(2)コード15にタグTを取り付けるステップ
(3)電磁シールド機能を備えたコード巻き取り用具10の収容部16を、商品7に対してゼンマイばね14の付勢力に抗する外力が加わっていない場合にタグTが収容部16に収容されるように構成するステップ
(4)商品7に対してゼンマイばね14の付勢力に抗する外力が加わった場合には、タグTが収容部16から退出して無線装置2と通信を行うステップ
(5)無線装置2によるタグTとの時間の経過に応じた通信可否の結果を取得し、通信可否の結果に基づいて無線装置2がタグTと通信可能となる頻度を測定するステップ
【0057】
次に、別の実施形態に係る物品管理器具について、図13図15を参照して説明する。この物品管理器具において、図3図7及び図8を参照して説明した物品管理器具と異なる点は、コード15の巻き取り機構とタグTの収容装置が別体で構成されている点にある。
図13に示すように、一実施形態の物品管理器具は、コード巻き取り用具10A(物品取り付け用具の一例)と収容部材9A(デバイス収容部の一例)を備える。コード15の一端は商品7に取り付けられ、コード15の他端はコード巻き取り用具10Aに固定される。コード巻き取り用具10Aと収容部材9Aは、例えば、商品棚3の基部33に、例えば両面テープや接着剤等で固定される。
図13の実施形態では、コード15がコード巻き取り用具10Aから引き出されていない状態では、タグTが収容部材9Aに収容されている。コード15がコード巻き取り用具10Aから引き出された状態では、コード15に取り付けられたタグTがコード15とともに移動して収容部材9Aから退出して露出する。
【0058】
図14に、コード巻き取り用具10Aの構成を示す。図14に示すように、コード巻き取り用具10Aは略円盤形状であり、コード15を引き出し、かつ巻き取るための貫通孔10daが形成された突出部10dが周縁に設けられている。
図14においてD-D断面は、図7のC-C断面と同じである。コード巻き取り用具10Aがコード巻き取り部13、及び、ゼンマイばね14を備えている点については、コード巻き取り用具10(図7)と同じである。他方、コード巻き取り用具10Aは、収容部16を備えていない点でコード巻き取り用具10とは相違する。
【0059】
図15は、コード15が引き出されていない状態とコード15が引き出された状態のコード巻き取り用具10A及び収容部材9Aの平面図である。なお、図15は、コード巻き取り用具10Aと収容部材9Aについては断面で示してある。
図15に示すように、収容部材9Aは、タグTが進入又は退出するための開口9Aaが形成された袋状の部材であり、例えばプラスチック製である。収容部材9Aの外面には電磁シールド層92が形成されている。電磁シールド層92は、電磁シールド層161(図8)と同様の構成とすることができ、タグTが収容部材9Aの内部に収容されたときにタグTに対する電磁シールド機能を発揮する。
収容部材9Aの開口9Aaとは反対側(コード巻き取り用具10A側)には、コード15を通過可能な程度の大きさの孔9Ahが形成されている。
【0060】
商品7がホルダ30にセットされている場合、図15に示すように、コード15が引き出されていない状態となる。この状態では、ゼンマイばね14が巻き上げられておらず、ゼンマイばね14の復元力はコード15に作用しないか、作用しても僅かである。この状態では、コード15に取り付けられたタグTが収容部材9A内に収容された状態であるため、電磁シールド層92の効果により、タグTは無線装置2と通信ができないか、通信できたとしてもその頻度は少ない。
他方、商品7がホルダ30から外されている場合、コード15がコード巻き取り用具10Aから引き出された状態となる。この状態では、コード15が引き出されてゼンマイばね14が巻き上げられ、ゼンマイばね14の復元力Fがコード15を巻き取る方向に作用する。この状態では、タグTが商品7とともに移動し、タグTが収容部材9Aの開口9Aaから退出して露出するため、電磁シールド層92の効果を受けず、タグTは無線装置2と通信ができ、あるいは通信が可能となる頻度が多くなる。
商品7がホルダ30に戻されると、ゼンマイばね14の復元力Fがコード15を巻き取る方向に作用しているため、コード15の巻き取り方向への移動に伴ってタグTが収容部材9Aに収容される。
【0061】
次に、さらに別の実施形態に係る物品管理器具について、図16及び図17を参照して説明する。この物品管理器具において、図13図15を参照して説明した物品管理器具と異なる点は、コード巻き取り用具が収容部材に内蔵されている点にある。
図16に示すように、一実施形態の物品管理器具は、収容部材9B(デバイス収容部の一例)を備える。収容部材9Bは、例えば、商品棚3の基部33に、例えば両面テープや接着剤等で固定される。図16には見えていないが、収容部材9Bにコード巻き取り用具10A(図14参照)が内蔵されている。コード巻き取り用具10Aは、収容部材9Aの内面に公知の方法で固定される。
図16の実施形態では、コード15がコード巻き取り用具10Aから引き出されていない状態では、タグTが収容部材9Bに収容されている。コード15がコード巻き取り用具10Aから引き出された状態では、コード15に取り付けられたタグTがコード15とともに移動して収容部材9Bから退出して露出する。
【0062】
図17は、コード15が引き出されていない状態とコード15が引き出された状態のコード巻き取り用具10A及び収容部材9Bの平面図である。なお、図17は、コード巻き取り用具10A及び収容部材9Bについては断面で示してある。
図17に示すように、収容部材9Bは、タグTが進入又は退出するための開口9Baが形成された、内部が空洞の直方体状の部材であり、例えばプラスチック製である。収容部材9Bの外面には電磁シールド層92が形成されている。電磁シールド層92は、タグTが収容部材9Bの内部に収容されたときにタグTに対する電磁シールド機能を発揮する。
【0063】
商品7がホルダ30にセットされている場合、図17に示すように、コード15が引き出されていない状態となる。この状態では、ゼンマイばね14が巻き上げられておらず、ゼンマイばね14の復元力はコード15に作用しないか、作用しても僅かである。この状態では、コード15に取り付けられたタグTが収容部材9B内に収容された状態であるため、電磁シールド層92の効果により、タグTは無線装置2と通信ができないか、通信できたとしてもその頻度は少ない。
他方、商品7がホルダ30から外されている場合、コード15がコード巻き取り用具10Aから引き出された状態となる。この状態では、コード15が引き出されてゼンマイばね14が巻き上げられ、ゼンマイばね14の復元力Fがコード15を巻き取る方向に作用する。この状態では、タグTが商品7とともに移動し、タグTが収容部材9Bの開口9Baから退出して露出するため、電磁シールド層92の効果を受けず、タグTは無線装置2と通信ができ、あるいは通信が可能となる頻度が多くなる。
商品7がホルダ30に戻されると、ゼンマイばね14の復元力Fがコード15を巻き取る方向に作用しているため、コード15の巻き取り方向への移動に伴ってタグTが収容部材9Bに収容される。
【0064】
なお、図17に示すように、タグTの近傍においてコード巻き取り用具10A側のコード15の部分には、ストッパ68が取り付けられていることが好ましい。ストッパ68は、コード巻き取り用具10Aの貫通孔10daを通過できない程度の大きさの形態を有し、コード15が巻き取られたときにコード15のストッパとして機能することで、タグTを保護する。
【0065】
次に、図18図20を参照して、物品管理器具の配置方法について説明する。なお、以下では、図2に示したコード巻き取り用具10を含む物品管理器具の配置方法の別の実施形態について説明するが、図13及び図16に示した実施形態の物品管理器具についても適用できる。
図2に示した実施形態では、ホルダ30とコード巻き取り用具10が同一平面上、すなわち、商品棚3の基部33の上面に配置されているが、その限りではない。
一実施形態では、図18に示すように、コード巻き取り用具10を脚部34に配置してもよい。コード巻き取り用具10の脚部34に対する固定方法は問わないが、例えば締結や接着剤等の公知の固定方法を採ることができる。この実施形態では、商品棚3の基部33上に配置される商品7と脚部34にあるコード巻き取り用具10との間で、コード15が円滑に移動できるように、基部33と脚部34が交差する位置にローラ35が設けられる。
【0066】
一実施形態では、図19に示すように、コード巻き取り用具10は、前後の一対の脚部34の間に配置されてもよい。コード巻き取り用具10が脚部34に固定配置される。この実施形態では、商品棚3の基部33に孔33hを形成する。商品7に取り付けられたコード15は、孔33hを通して、一対の脚部34間の空間に導かれる。
図示しないが、この実施形態では、前後の一対の脚部34の間に無線装置2を配置するとよい。
【0067】
上述した実施形態の物品管理器具では、コード巻き取り用具を使用した場合について説明したが、その限りではない。商品7がホルダ30から外された後にコード15を巻き取ることができればよいため、一実施形態では、コード巻き取り用具を使用せずにコード15を巻き取るための重りを利用することもできる。
【0068】
図20に、コード15を巻き取るために重り93を利用した実施形態を示す。この実施形態では、収容部材9C(デバイス収容部の一例)が商品棚3の前後の一対の脚部34の間に配置される。図20では、収容部材9Cのみ内部がわかるように断面で示してある。
図20に示すように、収容部材9Cは、タグTが進入又は退出するための開口9Caが形成された内部が空洞の直方体状の部材であり、例えばプラスチック製である。収容部材9Cの外面には電磁シールド層92が形成されている。電磁シールド層92は、タグTが収容部材9Cの内部に収容されたときにタグTに対する電磁シールド機能を発揮する。コード15の一端は商品7に取り付けられ、コード15の他端は収容部材9C内の重り93に取り付けられる。コード15の移動を円滑にするためにローラ36A,36Bが設けられ、基部33に形成された開口を介して、タグT及び重り93に連結される。なお、図20に示したタグTは、図5に示した取り付け方法に基づいている。
【0069】
図20に示した実施形態では、コード15に取り付けられたタグTは、商品7がホルダ30に保持されているときには、重り93の重力により収容部材9Cの内部に引き寄せられており、電磁シールド層92により無線装置2とほとんど通信ができない。他方、商品7がホルダ30から外されたときには、タグTは、重り93とともに上方に移動して収容部材9Cから露出するため、無線装置2との通信が可能となる。
【0070】
なお、図20に示した実施形態では、ローラ36A,36Bと収容部材9Cの間に滑車を設け、来店者が商品7を外して持ち上げるときの持ち上げ力を軽減させることも好ましい。
【0071】
以上、本発明の物品管理器具、物品管理システム、及び、物品管理方法の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されない。また、上記の実施形態は、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更が可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…商品管理システム
2…無線装置
21…制御部
22…アンテナ
23…RFトランシーバ
24…通信部
3…商品棚
30…ホルダ
H-1~H-6…凹部
31…支持部
32…背もたれ部
32h…孔
33…基部
33h…孔
34…脚部
35,36A,36B…ローラ
5…タグ管理サーバ
51…制御部
52…ストレージ
53…通信部
T1~T6…商品管理タグ
Tref…参照タグ
41…制御部
411…メモリ
42…アンテナ
43…ハーベスティング部
431…エネルギーストレージ
44…電圧制御部
45…RFトランシーバ
61…プレート
61h…孔
62…タグ本体
621,631,65a,65b…基材
623,632,66…粘着剤
63…シール
64…通信デバイス
7-1~7-6…商品
8…筒状部材
82…本体部
821…円筒部
822…テーパ部
83…コード取り付け部
9,9A,9B,9C…収容部材
9a,9b,9Aa,9Ba,9Ca…開口
91…本体部
92…電磁シールド層
93…重り
10,10A…コード巻き取り用具
10a…コード出入口
10d…突出部
10da…貫通孔
11…下部ケース
11c…ばね支持部
12…上部ケース
13…コード巻き取り部
13d…外周溝
14…ゼンマイばね
15…コード
16…収容部
16a…開口
16h…空洞
161…電磁シールド層
PL1~PL6…ラベル
NW…ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20