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特開2023-126041制御システム、積込機械、及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126041
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】制御システム、積込機械、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/20 20060101AFI20230831BHJP
【FI】
E02F9/20 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030481
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浅 貴央
(72)【発明者】
【氏名】菊地 正蔵
(72)【発明者】
【氏名】工藤 稜太
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 由孝
(72)【発明者】
【氏名】小松 健浩
【テーマコード(参考)】
2D003
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB04
2D003AC04
2D003BA02
2D003BA04
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB02
2D003DB03
2D003DB04
2D003DB08
(57)【要約】
【課題】積込機械による積み込み作業を最適化すること。
【解決手段】バケットを有する作業機を備える積込機械の制御システムは、コントローラを備える。積込機械は前進しながらバケットで地面に置かれた土砂により構成される地山を掘削する。バケットに掘削され保持された地山である掘削物の表面は、前方に向かって上方に傾斜する第1表面と、第1表面の前端部と結ばれ前方に向かって下方に傾斜する第2表面と、を含む。コントローラは、掘削作業中に水平面に対するバケットの角度を示すバケット角を取得し、掘削作業が開始されてからのバケット角に基づいて、水平面に対する第1表面の角度を示す手前側積荷角を所定角度に決定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バケットを有する作業機を備える積込機械を制御するための制御システムであって、
コントローラを備え、
前記積込機械は前進しながら前記バケットで地面に置かれた土砂により構成される地山を掘削し、
前記バケットに掘削され保持された前記地山である掘削物の表面は、前方に向かって上方に傾斜する第1表面と、前記第1表面の前端部と結ばれ前方に向かって下方に傾斜する第2表面と、を含み、
前記コントローラは、
掘削作業中に水平面に対する前記バケットの角度を示すバケット角を取得し、
前記掘削作業が開始されてからの前記バケット角に基づいて、水平面に対する前記第1表面の角度を示す手前側積荷角を所定角度に決定する、
制御システム。
【請求項2】
前記バケットは、刃先端部と、前記刃先端部に対向するスピルガード端部と、を含み、
前記コントローラは、
前記バケットで掘削対象を掘削する掘削作業中に前記積込機械の牽引力を算出し、
前記牽引力に基づいて、前記バケットの内側における前記掘削対象の高さを示す積荷高さを算出し、
前記バケット角に基づいて変化する、前記スピルガード端部の高さと前記積荷高さとの差に基づいて、前記手前側積荷角を決定する、
請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記所定角度は、前記地面と前記地山の表面とがなす角度を示す地山角を含み、
前記コントローラは、
前記積荷高さが前記スピルガード端部の高さよりも高いか否かを判定し、
前記積荷高さが前記スピルガード端部の高さよりも高いと判定するまで、前記手前側積荷角を前記地山角に決定する、
請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記コントローラは、
前記積荷高さが前記スピルガード端部の高さよりも高いと判定した後、前記積荷高さが前記スピルガード端部の高さよりも高いと判定した時点からのバケット角増加量に基づいて、前記手前側積荷角を前記地山角よりも大きい角度に決定する、
請求項3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記コントローラは、
前記地山角と前記バケット角増加量との和が前記土砂の安息角よりも小さい場合、前記手前側積荷角を前記地山角と前記バケット角増加量との和に決定する、
請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記コントローラは、
前記地山角と前記バケット角増加量との和が前記土砂の安息角よりも大きい場合、前記手前側積荷角を前記安息角に決定する、
請求項4又は請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記コントローラは、
前記地山の土圧係数を記憶し、
前記牽引力と前記土圧係数とに基づいて、前記積荷高さを算出する、
請求項2から請求項6のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記コントローラは、
前記手前側積荷角と、水平面に対する前記第2表面の角度を示す刃先側積荷角とに基づいて、前記掘削物の重量を算出する、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の制御システム。
【請求項9】
前記コントローラは、
前記土砂の安息角を記憶し、
前記刃先側積荷角は、前記安息角を含む、
請求項8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記コントローラは、
算出される前記重量が目標重量になるように、前記作業機の姿勢を制御する、
請求項8又は請求項9に記載の制御システム。
【請求項11】
請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の制御システムを備える、
積込機械。
【請求項12】
バケットを有する作業機を備える積込機械を制御するための制御方法であって、
前記積込機械を前進させながら前記バケットで地面に置かれた土砂により構成される地山を掘削し、
前記バケットに掘削され保持された前記地山である掘削物の表面は、前方に向かって上方に傾斜する第1表面と、前記第1表面の前端部と結ばれ前方に向かって下方に傾斜する第2表面と、を含み、
掘削作業中に水平面に対する前記バケットの角度を示すバケット角を取得し、
前記掘削作業が開始されてからの前記バケット角に基づいて、水平面に対する前記第1表面の角度を示す手前側積荷角を所定角度に決定する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、制御システム、積込機械、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業機を備える積込機械に係る技術分野において、特許文献1に開示されているような、効率的な掘削動作を実施可能な積込機械が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-203381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ある特定の作業サイクルによれば、積込機械は、作業機で掘削対象を掘削した後、掘削物を運搬車両に積み込む。掘削物を運搬車両に積み込むとき、積込機械は、運搬車両にとって最適な重量となるように、掘削物の重量を調整して積み込むことが望ましい。
【0005】
本明細書で開示する技術は、積込機械による積込作業を最適化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、積込機械の制御システムを開示する。積込機械は、バケットを有する作業機を備える。制御システムは、コントローラを備える。積込機械は前進しながらバケットで地面に置かれた土砂により構成される地山を掘削する。バケットに掘削され保持された地山である掘削物の表面は、前方に向かって上方に傾斜する第1表面と、第1表面の前端部と結ばれ前方に向かって下方に傾斜する第2表面と、を含む。コントローラは、掘削作業中に水平面に対するバケットの角度を示すバケット角を取得する。コントローラは、掘削作業が開始されてからのバケット角に基づいて、水平面に対する第1表面の角度を示す手前側積荷角を所定角度に決定する。
【発明の効果】
【0007】
本明細書で開示する技術によれば、積込機械による積込作業が最適化される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る積込機械を示す側面図である。
図2図2は、実施形態に係る積込機械を示す構成図である。
図3図3は、実施形態に係るバケットを示す斜視図である。
図4図4は、実施形態に係るバケットを模式的に示す側面図である。
図5図5は、実施形態に係る作業機の動作を説明する図である。
図6図6は、実施形態に係る積込機械の動作を説明する図である。
図7図7は、実施形態に係る積込機械の制御システムを示す機能ブロック図である。
図8図8は、実施形態に係る積込機械の制御装置を示すブロック図である。
図9図9は、実施形態に係るバケットに保持された掘削物の状態を説明する図である。
図10図10は、実施形態に係る第1の算出方法に基づいて掘削物の重量を算出する方法を説明する模式図である。
図11図11は、実施形態に係るバケットに保持された掘削物の状態を説明する図である。
図12図12は、実施形態に係る牽引力と土圧との関係を示す図である。
図13図13は、実施形態に係る第2の算出方法に基づいて掘削物の重量を算出する方法を説明する模式図である。
図14図14は、実施形態に係る安息角及び地山角を説明する図である。
図15図15は、実施形態に係る地山角と安息角との関係を示す図である。
図16図16は、実施形態に係る掘削作業中のバケットと掘削物との関係を示す図である。
図17図17は、実施形態に係るバケット角と手前側積荷角との関係を示す図である。
図18図18は、実施形態に係るバケットに保持された掘削物の安息角を説明する図である。
図19図19は、実施形態に係る安息角の算出方法を示すフローチャートである。
図20図20は、実施形態に係る掘削方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明するが、本開示は実施形態に限定されない。以下で説明する実施形態の構成要素は、適宜組み合わせることができる。また、一部の構成要素を用いない場合もある。
【0010】
実施形態においては、積込機械1にローカル座標系を設定し、ローカル座標系を参照しながら各部の位置関係について説明する。ローカル座標系において、積込機械1の左右方向(車幅方向)に延伸する第1軸をX軸とし、積込機械1の前後方向に延伸する第2軸をY軸とし、積込機械1の上下方向に延伸する第3軸をZ軸とする。X軸とY軸とは直交する。Y軸とZ軸とは直交する。Z軸とX軸とは直交する。+X方向は右方向であり、-X方向は左方向である。+Y方向は前方向であり、-Y方向は後方向である。+Z方向は上方向であり、-Z方向は下方向である。
【0011】
[積込機械]
図1は、実施形態に係る積込機械1を示す側面図である。実施形態において、積込機械1は、例えばホイールローダである。以下の説明において、積込機械1を適宜、ホイールローダ1、と称する。
【0012】
図1に示すように、ホイールローダ1は、車体2と、キャブ4と、車輪5と、作業機6とを備える。
【0013】
車体2は、作業機6を支持する。キャブ4は、車体2に支持される。実施形態において、キャブ4は、車体2の上部に配置される。車輪5は、車体2を支持する。車輪5は、前輪5Fと、後輪5Rとを含む。
【0014】
前輪5Fは、回転軸CXfを中心に回転可能である。後輪5Rは、回転軸CXrを中心に回転可能である。ホイールローダ1が直進状態で走行するとき、前輪5Fの回転軸CXfと後輪5Rの回転軸CXrとが平行になる。実施形態において、X軸は、前輪5Fの回転軸CXfと平行である。
【0015】
作業機6は、所定の作業を実施する。作業機6は、車体2に支持される。作業機6は、車体2に連結される。作業機6は、ブーム12と、バケット13と、ベルクランク14と、バケットリンク15と、リフトシリンダ18と、バケットシリンダ19とを有する。
【0016】
ブーム12の基端部は、車体2に回動可能に連結される。ブーム12は、車体2に対して回動軸AXaを中心に回動する。ブーム12の中間部にブラケット16が固定される。
【0017】
バケット13の基端部は、ブーム12の先端部に回動可能に連結される。バケット13は、ブーム12に対して回動軸AXbを中心に回動する。バケット13は、前輪5Fよりも前方に配置される。バケット13の一部にブラケット17が固定される。
【0018】
ベルクランク14の中間部は、ブラケット16に回動可能に連結される。ベルクランク14は、ブラケット16に対して回動軸AXcを中心に回動する。ベルクランク14の下端部は、バケットリンク15の基端部に回動可能に連結される。
【0019】
バケットリンク15の先端部は、ブラケット17に回動可能に連結される。バケットリンク15は、ブラケット17に対して回動軸AXdを中心に回動する。ベルクランク14は、バケットリンク15を介してバケット13に連結される。
【0020】
リフトシリンダ18は、ブーム12を動作させる。リフトシリンダ18の基端部は、車体2に連結される。リフトシリンダ18の先端部は、ブーム12に連結される。ブーム12は、リフトシリンダ18に対して回動軸AXeを中心に回動する。
【0021】
バケットシリンダ19は、バケット13を動作させる。バケットシリンダ19の基端部は、車体2に連結される。バケットシリンダ19の先端部は、ベルクランク14の上端部に連結される。ベルクランク14は、バケットシリンダ19に対して回動軸AXfを中心に回動する。
【0022】
図2は、実施形態に係る積込機械1を示す構成図である。積込機械1は、動力源3と、パワーテイクオフ8(PTO:Power Take Off)と、動力伝達装置9と、油圧ポンプ20と、制御弁21と、コントローラ50とを備える。
【0023】
動力源3は、ホイールローダ1を動作させるための駆動力を生成する。動力源3は、例えばディーゼルエンジンである。
【0024】
パワーテイクオフ8は、動力源3からの駆動力を動力伝達装置9と油圧ポンプ20とに分配する。動力源3の駆動力は、パワーテイクオフ8を介して動力伝達装置9及び油圧ポンプ20のそれぞれに伝達される。
【0025】
動力伝達装置9は、動力源3からの駆動力が入力される入力軸と、入力軸に入力された駆動力を変速して出力する出力軸とを有する。動力伝達装置9の入力軸は、パワーテイクオフ8に接続される。動力伝達装置9の出力軸は、前輪5F及び後輪5Rのそれぞれに接続される。動力源3の駆動力は、動力伝達装置9を介して前輪5F及び後輪5Rのそれぞれに伝達される。動力伝達装置9は、アクスル装置又はデファレンシャル装置を含んでもよい。
【0026】
油圧ポンプ20は、作動油を吐出する。油圧ポンプ20は、可変容量型油圧ポンプである。油圧ポンプ20は、動力源3の駆動力に基づいて駆動する。油圧ポンプ20から吐出された作動油は、制御弁21を介してリフトシリンダ18及びバケットシリンダ19に供給される。
【0027】
制御弁21は、リフトシリンダ18及びバケットシリンダ19のそれぞれに供給される作動油の流量及び方向を制御する。作業機6は、制御弁21を介して油圧ポンプ20から供給される作動油により動作する。
【0028】
コントローラ50は、ホイールローダ1を制御する。コントローラ50は、コンピュータシステムを含む。
【0029】
[バケット]
図3は、実施形態に係るバケット13を示す斜視図である。図4は、実施形態に係るバケット13を模式的に示す側面図である。バケット13は、掘削対象を掘削する作業部材である。バケット13は、掘削物300を保持する。掘削物300は、バケット13に掘削され保持された掘削対象である。
【0030】
バケット13は、底板部131と、背板部132と、上板部133と、右板部134と、左板部135とを含む。底板部131の先端部は、刃先端部13Aである。刃先端部13Aに刃先又は刃が取り付けられる。上板部133の先端部は、スピルガード端部13Bである。右板部134の先端部は、右端部13Cである。左板部135の先端部は、左端部13Dである。刃先端部13Aは、左右方向に延伸する。スピルガード端部13Bは、左右方向に延伸する。右端部13Cは、上下方向又は前後方向に延伸する。左端部13Dは、上下方向又は前後方向に延伸する。刃先端部13Aとスピルガード端部13Bとは、対向する。右端部13Cと左端部13Dとは、対向する。刃先端部13Aとスピルガード端部13Bとは、平行である。右端部13Cと左端部13Dとは、平行である。
【0031】
刃先端部13Aとスピルガード端部13Bと右端部13Cと左端部13Dとの間に、バケット13の開口部136が規定される。開口部136は、刃先端部13Aと、スピルガード端部13Bと、右端部13Cと、左端部13Dとにより規定される。
【0032】
実施形態において、上下方向又は前後方向における開口部136の寸法、すなわち、YZ平面において刃先端部13Aとスピルガード端部13Bとを結ぶ直線の寸法を、バケット長さLとする。左右方向における開口部136の寸法を、バケット幅Bとする。YZ平面と平行なバケット13の断面積を、バケット断面積Abkとする。YZ平面において底板部131の内面と刃先端部13Aとスピルガード端部13Bを結ぶ直線とがなす角度を、刃先側開口角θ3とする。YZ平面において底板部131の内面に平行な平面と上板部133の内面とがなす角度を、上部側開口角θspとする。
【0033】
[作業機の動作]
図5は、実施形態に係る作業機6の動作を説明する図である。実施形態において、作業機6は、掘削作業においてバケット13の開口部136が前方を向くフロントローディング方式の作業機である。
【0034】
ブーム12の上げ動作とは、ブーム12の先端部が地面200から離隔するようにブーム12が回動軸AXaを中心に回動する動作をいう。リフトシリンダ18が伸びることによってブーム12が上げ動作する。
【0035】
ブーム12の下げ動作とは、ブーム12の先端部が地面200に接近するようにブーム12が回動軸AXaを中心に回動する動作をいう。リフトシリンダ18が縮むことによってブーム12が下げ動作する。
【0036】
バケット13のチルト動作とは、バケット13の刃先端部13Aが地面200から離隔するようにバケット13が回動軸AXbを中心に回動する動作をいう。バケットシリンダ19が伸びると、ベルクランク14の上端部が前方に移動し、ベルクランク14の下端部が後方に移動するように、ベルクランク14が回動する。ベルクランク14の下端部が後方に移動すると、バケット13は、バケットリンク15により後方に引かれ、チルト動作する。バケット13がチルト動作することにより、掘削対象がバケット13によって掬い取られ、バケット13に掘削物300が保持される。
【0037】
バケット13のダンプ動作とは、バケット13の刃先端部13Aが地面200に接近するようにバケット13が回動軸AXbを中心に回動する動作をいう。バケットシリンダ19が縮むと、ベルクランク14の上端部が後方に移動し、ベルクランク14の下端部が前方に移動するように、ベルクランク14が回動する。ベルクランク14の下端部が前方に移動すると、バケット13は、バケットリンク15により前方に押され、ダンプ動作する。バケット13がダンプ動作することにより、バケット13に保持されている掘削物300がバケット13から排出される。
【0038】
[積込機械の動作]
図6は、実施形態に係るホイールローダ1の動作を説明する図である。ホイールローダ1は、作業現場において作業対象に対して所定の作業を実施する。作業対象は、掘削対象及び積込対象を含む。所定の作業は、掘削作業及び積込作業を含む。
【0039】
掘削対象は、例えば、地山、岩山、石炭、飼料、又は壁面である。地山は、地面200に置かれた土砂により構成される山である。岩山は、地面200に置かれた岩又は石により構成される山である。実施形態において、掘削対象は、地山210である。掘削物300は、バケット13に掘削され保持された地山210である。
【0040】
積込対象は、例えば、運搬車両、作業現場の所定エリア、ホッパ、ベルトコンベヤ、又はクラッシャである。実施形態において、積込対象は、地面200を走行可能な運搬車両220のダンプボディ230である。運搬車両220は、例えばダンプトラックである。
【0041】
ホイールローダ1は、バケット13で地山210を掘削する掘削作業を実施する。ホイールローダ1は、地山210に向かって前進しながらバケット13で地山210を掘削する。ホイールローダ1は、掘削作業によりバケット13に保持された掘削物300をダンプボディ230に積み込む積込作業を実施する。積込作業は、掘削物300を排出する排出作業を含む概念である。
【0042】
掘削作業において、ホイールローダ1は、図6の矢印M1で示すように、バケット13に掘削物300が保持されていない状態で地山210に向かって前進する。ホイールローダ1は、バケット13を地山210に挿入した状態でチルト動作させることにより掘削作業を実施する。バケット13のチルト動作により、地山210がバケット13により掘削され、バケット13に掘削物300が保持される。
【0043】
次に、ホイールローダ1は、バケット13に掘削物300が保持されている状態で、図6の矢印M2で示すように、地山210から離隔するように後進する。
【0044】
次に、積込作業が実施される。積込作業において、ホイールローダ1は、バケット13に掘削物300が保持されている状態で、図6の矢印M3で示すように、運搬車両220に向かって旋回しながら前進する。運搬車両220に向かって前進している状態において、ホイールローダ1は、バケット13がダンプボディ230の上方に配置されるようにブーム12の上げ動作を実施する。ブーム12が上げ動作し、バケット13がダンプボディ230の上方に配置された後、ホイールローダ1は、バケット13をダンプ動作させることにより積込作業を実施する。バケット13のダンプ動作により、バケット13に保持されている掘削物300がバケット13から排出され、ダンプボディ230に積み込まれる。
【0045】
掘削物300がダンプボディ230に積み込まれた後、ホイールローダ1は、バケット13に掘削物300が保持されていない状態で、図6の矢印M4で示すように、運搬車両220から離隔するように旋回しながら後進する。
【0046】
ホイールローダ1は、運搬車両220のダンプボディ230に掘削物300が満載されるまで、又は地山210の掘削が完了するまで、上述の動作を繰り返す。
【0047】
[制御システム]
図7は、実施形態に係るホイールローダ1の制御システム40を示す機能ブロック図である。図8は、実施形態に係るホイールローダ1のコントローラ50を示すブロック図である。
【0048】
ホイールローダ1は、制御システム40を備える。制御システム40は、制御弁21と、操作装置22と、オペレータ指令装置23と、傾斜センサ31と、ブーム角センサ32と、バケット角センサ33と、重量センサ34と、回転数センサ35と、ポンプ圧センサ37と、ポンプ容量センサ38と、コントローラ50とを有する。
【0049】
操作装置22は、キャブ4の内部に配置される。操作装置22は、オペレータにより操作される。操作装置22は、動力源3、動力伝達装置9、及び作業機6のそれぞれを動作させるための操作信号を生成する。コントローラ50は、操作装置22により生成された操作信号に基づいて、動力源3及び動力伝達装置9を制御する。コントローラ50は、操作装置22により生成された操作信号に基づいて、制御弁21を制御する。
【0050】
オペレータ指令装置23は、キャブ4の内部に配置される。オペレータ指令装置23は、例えばスイッチボタンを含む。オペレータ指令装置23は、オペレータにより操作される。オペレータ指令装置23は、後述する安息角θrの算出を実施するための指令信号を生成する。コントローラ50は、オペレータ指令装置23により生成された操作信号に基づいて、安息角θrの算出を実施する。
【0051】
傾斜センサ31は、車体2の傾きを検出する。より詳しくは、傾斜センサ31は、水平面に対する車体2の傾斜角度を示す車体傾斜角θaを検出する。傾斜センサ31は、車体2の少なくとも一部に配置される。傾斜センサ31は、例えば慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)である。傾斜センサ31により検出された車体傾斜角θaの検出データは、コントローラ50に送信される。
【0052】
ブーム角センサ32は、ブーム12の角度を検出する。より詳しくは、ブーム角センサ32は、ローカル座標系における車体2に対するブーム12の角度を示すブーム角θbを検出する。ブーム角センサ32は、例えば車体2とブーム12との連結部に配置される角度センサである。実施形態において、ブーム角θbは、回動軸AXaと回動軸AXbとを結ぶ線と、回転軸CXfと回転軸CXrとを結ぶ線とがなす角度である。ブーム角センサ32により検出されたブーム角θbの検出データは、コントローラ50に送信される。なお、ブーム角センサ32は、リフトシリンダ18のストロークを検出するストロークセンサでもよい。
【0053】
バケット角センサ33は、バケット13の角度を検出する。より詳しくは、バケット角センサ33は、ローカル座標系におけるブーム12に対するベルクランク14の角度を示すベルクランク角θcを検出する。バケット角センサ33は、例えばブーム12とベルクランク14との連結部に配置される角度センサである。実施形態において、ベルクランク角θcは、回動軸AXcと回動軸AXfとを結ぶ線と、回動軸AXaと回動軸AXbとを結ぶ線とがなす角度である。ローカル座標系におけるブーム12に対するバケット13の角度とベルクランク角θcとは、1対1で対応する。ベルクランク角θcが検出されることにより、ローカル座標系におけるブーム12に対するバケット13の角度が検出される。バケット角センサ33により検出されたベルクランク角θcの検出データは、コントローラ50に送信される。なお、バケット角センサ33は、バケットシリンダ19のストロークを検出するストロークセンサでもよい。
【0054】
重量センサ34は、バケット13に保持された掘削対象である掘削物300の重量Waを検出する。重量センサ34は、例えば、リフトシリンダ18の作動油の圧力を検出する圧力センサ、又はバケットシリンダ19の作動油の圧力を検出する圧力センサである。掘削物300がバケット13に保持されている状態と保持されていない状態とで、作業機6に掛かる負荷が変化する。重量センサ34は、作業機6に掛かる負荷の変化を検出することによって、バケット13に保持された掘削物300の重量Waを検出する。重量センサ34により検出された掘削物300の重量Waの検出データは、コントローラ50に送信される。なお、重量センサ34は、作業機6の少なくとも一部に配置された荷重計でもよい。重量センサ34は、掘削物300の重量Waを直接的に検出してもよい。
【0055】
回転数センサ35は、動力源3の回転数を検出する。
【0056】
ポンプ圧センサ37は、油圧ポンプ20から吐出された作動油の圧力を示す吐出圧を検出する。
【0057】
ポンプ容量センサ38は、油圧ポンプ20の斜板角に基づいて油圧ポンプ20の容量を検出する。
【0058】
コントローラ50は、コンピュータシステムを含む。コントローラ50は、ホイールローダ1を制御する制御指令を出力する。
【0059】
図8に示すように、コントローラ50は、プロセッサ51と、メインメモリ52と、ストレージ53と、インタフェース54とを有する。プロセッサ51は、コンピュータプログラムを実行することによって、作業機6の動作を演算処理する。プロセッサ51として、CPU(Central Processing Unit)又はMPU(Micro Processing Unit)が例示される。メインメモリ52は、例えば不揮発性メモリ又は揮発性メモリである。不揮発性メモリは、例えばROM(Read Only Memory)である。揮発性メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)である。ストレージ53は、一時的でない有形の記憶媒体である。ストレージ53は、例えば、磁気ディスク、光磁気ディスク、又は半導体メモリである。ストレージ53は、コントローラ50のバスに直接接続された内部メディアでもよいし、インタフェース54又は通信回線を介してコントローラ50に接続される外部メディアでもよい。ストレージ53は、作業機6を制御するためのコンピュータプログラムを記憶する。
【0060】
図7に示すように、コントローラ50は、特性記憶部61と、バケットデータ記憶部62と、検出データ取得部71と、バケット角算出部72と、牽引力算出部73と、重量算出部81と、手前側積荷角決定部82と、安息角算出部91と、作業機制御部100とを有する。コントローラ50は、制御弁21、操作装置22、オペレータ指令装置23、傾斜センサ31、ブーム角センサ32、バケット角センサ33、重量センサ34、回転数センサ35、ポンプ圧センサ37、及びポンプ容量センサ38のそれぞれと通信する。
【0061】
<特性記憶部>
特性記憶部61は、掘削対象の特性データを記憶する。掘削対象の特性データは、地面200と地山210の表面とがなす角度を示す地山角θg、地山210を構成する土砂の安息角θr、地山210の密度ρ、及び地山210の土圧係数Kを含む。また、特性記憶部61は、地山角θgと安息角θrとの関係を示す相関データを記憶する。
【0062】
<バケットデータ記憶部>
バケットデータ記憶部62は、バケット13の形状又は寸法を示すバケットデータを記憶する。バケットデータは、バケット長さL、バケット幅B、刃先側開口角θ3、上部側開口角θsp、及びバケット断面積Abkを含む。バケットデータは、諸元データ又は設計データから導出される既知データである。
【0063】
<検出データ取得部>
検出データ取得部71は、傾斜センサ31、ブーム角センサ32、バケット角センサ33、重量センサ34、回転数センサ35、ポンプ圧センサ37、及びポンプ容量センサ38のそれぞれから検出データを取得する。検出データ取得部71は、傾斜センサ31から車体傾斜角θaを取得する。検出データ取得部71は、ブーム角センサ32からブーム角θbを取得する。検出データ取得部71は、バケット角センサ33からベルクランク角θcを取得する。検出データ取得部71は、重量センサ34から掘削物300の重量Waを取得する。検出データ取得部71は、回転数センサ35から動力源3の回転数を取得する。検出データ取得部71は、ポンプ圧センサ37から油圧ポンプ20の吐出圧を取得する。検出データ取得部71は、ポンプ容量センサ38から油圧ポンプ20の容量を取得する。
【0064】
<バケット角算出部>
バケット角算出部72は、水平面に対するバケット13の角度を示すバケット角θbkを算出する。
【0065】
バケット角算出部72は、車体2の角度の検出データと、作業機6の角度の検出データとに基づいて、バケット角θbkを算出する。作業機6の角度の検出データは、ブーム角センサ32により検出されるローカル座標系におけるブーム12の角度を示すブーム角θbの検出データと、バケット角センサ33により検出されるローカル座標系におけるベルクランク14の角度を示すベルクランク角θcの検出データとを含む。バケット角算出部72は、車体傾斜角θaの検出データ、ブーム角θbの検出データ、及びベルクランク角θcの検出データに基づいて、バケット角θbkを算出することができる。
【0066】
<牽引力算出部>
牽引力算出部73は、検出データ取得部71が取得した検出データに基づいて、ホイールローダ1の牽引力Fを算出する。牽引力算出部73は、バケット13で地山210を掘削する掘削作業中に、牽引力Fを算出する。
【0067】
例えば動力伝達装置9が無段変速機を有する場合、牽引力算出部73は、以下の手順で牽引力Fを算出する。牽引力算出部73は、回転数センサ35の検出データを用いて、動力源3の出力トルクを算出する。また、牽引力算出部73は、ポンプ圧センサ37の検出データとポンプ容量センサ38の検出データとに基づいて、油圧ポンプ20の負荷トルクを算出する。牽引力算出部73は、出力トルクから負荷トルクを減算することで得られる走行トルクに、動力伝達装置9の減速比及びトルク効率を乗算し、これを車輪の有効径で除算することで、牽引力Fを算出する。
【0068】
例えば動力伝達装置9がトルクコンバータを有する場合、牽引力算出部73は、以下の手順で牽引力Fを算出する。牽引力算出部73は、動力源3の回転数を1000rpmで除算したものを二乗した値にトルクコンバータのプライマリトルク係数及びトルク比を乗算することで走行トルクを算出する。プライマリトルク係数及びトルク比は、トルクコンバータの入出力回転比によって定まる特性値である。牽引力算出部73は、走行トルクに、動力伝達装置9の減速比及びトルク効率を乗算し、これを車輪5の有効径で除算することで、牽引力Fを算出する。
【0069】
<重量算出部>
重量算出部81は、バケット13に保持された掘削対象である掘削物300の重量Waを算出する。重量算出部81は、バケット13の内側が掘削物300で満たされている場合、第1の算出方法に基づいて重量Waを算出する。重量算出部81は、バケット13の内側の一部が掘削物300で満たされ、バケット13の内側の一部に空隙部340が形成されている場合、第2の算出方法に基づいて重量Waを算出する。
【0070】
図9は、実施形態に係るバケット13に保持された掘削物300の状態を説明する図である。図9は、バケット13の内側が掘削物300で満たされ、掘削物300の一部が開口部136よりもバケット13の外側に配置されている状態を示す。以下の説明において、開口部136よりもバケット13の外側に配置される掘削物300を適宜、掘削物300の露出部330、と称する。
【0071】
掘削物300の表面は、第1表面310と第2表面320とを含む。第2表面320は、第1表面310よりも前方に配置される。第1表面310は、前方に向かって上方に傾斜する。第2表面320は、前方に向かって下方に傾斜する。第1表面310の後端部は、スピルガード端部13Bと結ばれる。第2表面320の前端部は、刃先端部13Aと結ばれる。第2表面320の後端部は、第1表面310の前端部と結ばれる。回動軸AXbと直交する断面において、第1表面310と、第2表面320と、右端部13C(左端部13D)とにより、実質的に三角形が形成される。
【0072】
実施形態において、水平面に対する第1表面310の角度を適宜、手前側積荷角θ1、と称し、水平面に対する第2表面320の角度を適宜、刃先側積荷角θ2、と称する。
【0073】
手前側積荷角θ1は、掘削時のバケット角θbkに基づいて変化する。バケット角θbkが大きくなると、手前側積荷角θ1が大きくなる。バケット角θbkが小さくなると、手前側積荷角θ1が小さくなる。
【0074】
刃先側積荷角θ2は、掘削物300の安息角θr(停止安息角)を示す。掘削時のバケット角θbkが変化しても、刃先側積荷角θ2は、掘削後のバケット13の抜去時に形成されるため、実質的に変化しない。刃先側積荷角θ2は、掘削物300(地山210)の性状に基づいて一義的に定められる。掘削物300の性状が一定である場合、掘削時のバケット角θbkが変化しても、刃先側積荷角θ2は、実質的に変化しない。
【0075】
掘削物300の状態が図9に示す状態の場合、重量算出部81は、第1の算出方法に基づいて、掘削物300の重量Waを算出する。重量算出部81は、手前側積荷角θ1と、刃先側積荷角θ2と、バケット角θbkと、掘削物300の密度ρと、バケットデータとに基づいて、バケット13に保持された掘削物300の重量Waを算出する。
【0076】
図10は、実施形態に係る第1の算出方法に基づいて掘削物300の重量Waを算出する方法を説明する模式図である。
【0077】
図10に示すように、回動軸AXbと直交する露出部330の断面積を示す露出部断面積A1は、以下の(1)式に基づいて算出される。
【0078】
【数1】
【0079】
回動軸AXbと直交するバケット13の断面積を示すバケット断面積Abkは、バケットデータ記憶部62に記憶されている。回動軸AXbと直交する掘削物300の断面積を示す積荷断面積Aaは、以下の(2)式に基づいて算出される。
【0080】
【数2】
【0081】
掘削物300の体積Vaは、以下の(3)式に基づいて算出される。
【0082】
【数3】
【0083】
掘削物300の密度ρは、特性記憶部61に記憶されている。図9に示す状態の掘削物300の重量Waは、以下の(4)式に基づいて算出される。
【0084】
【数4】
【0085】
図11は、実施形態に係るバケット13に保持された掘削物300の状態を説明する図である。図11は、バケット13の内側の一部が掘削物300で満たされ、バケット13の内側の一部に空隙部340が形成されている状態を示す。
【0086】
掘削物300の状態が図11に示す状態の場合、重量算出部81は、第2の算出方法に基づいて、掘削物300の重量Waを算出する。重量算出部81は、牽引力Fと、バケット角θbkと、掘削物300の密度ρと、バケットデータとに基づいて、バケット13に保持された掘削物300の重量Waを算出する。
【0087】
図12は、実施形態に係る牽引力Fと土圧Pとの関係を示す図である。地山210に対するバケット13の挿入量は、牽引力Fに基づいて決定される。また、バケット13は、地山210からの掘削抵抗を示す土圧Pを受ける。掘削作業中のバケット13の内側における刃先端部13Aを基点とする掘削対象の高さを積荷高さHとした場合、土圧Pと積荷高さHとの間には、クーロンの土圧式と呼ばれる以下の(5)式の関係が成立する。(5)式において、Kは土圧係数である。
【0088】
【数5】
【0089】
バケット13を地山210に挿入したときにホイールローダ1が前進できずに停止する状態は、牽引力Fと土圧Pとが釣り合う状態である。牽引力Fと土圧Pとが釣り合う場合、以下の(6)式が成立する。
【0090】
【数6】
【0091】
重量算出部81は、牽引力Fに基づいて、積荷高さHを算出する。以下の(7)式に示すように、積荷高さHは、牽引力Fと密度ρと土圧係数Kとに基づいて算出される。
【0092】
【数7】
【0093】
牽引力Fは、牽引力算出部73により算出される。密度ρ及び土圧係数Kは、特性記憶部61に記憶されている。したがって、重量算出部81は、牽引力Fと密度ρと土圧係数Kとに基づいて、積荷高さHを算出することができる。
【0094】
以下の説明において、バケット13の内面と掘削物300の上端部との境界を積荷接点13Eとし、水平方向(前後方向)における積荷接点13Eと刃先端部13Aとの距離を積荷深さxとする。積荷深さxは、積荷高さHとバケット角θbkとバケットデータとに基づいて算出可能である。
【0095】
重量算出部81は、牽引力F及び土圧係数Kに基づいて算出される積荷高さHと、バケット角θbkと、バケットデータとに基づいて、掘削物300の重量Waを算出する。
【0096】
図13は、実施形態に係る第2の算出方法に基づいて掘削物300の重量Waを算出する方法を説明する模式図である。
【0097】
図13に示すように、空隙部断面積A2と積荷形状部断面積A3とが規定される。積荷接点13Eと刃先端部13Aとを結びYZ平面に直交する第1平面と、開口部136により規定される第2平面との間を空隙空間とした場合、空隙部断面積A2は、回動軸AXbと直交する空隙空間の断面積を示す。第1平面と第2平面との間に存在する掘削物300を積荷形状空間とした場合、積荷形状部断面積A3は、回動軸AXbと直交する積荷形状空間の断面積を示す。
【0098】
空隙部断面積A2は、以下の(8)式に基づいて算出される。(8)式に示すように、重量算出部81は、積荷高さHと、バケット角θbkと、バケットデータとに基づいて、空隙部断面積A2を算出する。
【0099】
【数8】
【0100】
積荷形状部断面積A3は、以下の(9)式に基づいて算出される。(9)式に示すように、重量算出部81は、積荷高さHと、手前側積荷角θ1と、刃先側積荷角θ2とに基づいて、積荷形状部断面積A3を算出する。
【0101】
【数9】
【0102】
積荷断面積Aaは、以下の(10)式に基づいて算出される。
【0103】
【数10】
【0104】
積荷断面積Aaが算出されることにより、重量算出部81は、(3)式及び(4)式に基づいて、重量Waを算出することができる。
【0105】
<手前側積荷角決定部>
手前側積荷角決定部82は、掘削作業が開始されてからのバケット角θbkの増加量を示すバケット角増加量Δθbkに基づいて、手前側積荷角θ1を所定角度に決定する。所定角度は、地山角θg、地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和、及び安息角θrの少なくとも一つを含む。
【0106】
図14は、実施形態に係る安息角θr及び地山角θgを説明する図である。
【0107】
安息角θrは、土砂を積み上げたときに崩れること無く土砂の形状の安定が保たれているときの水平面に対する土砂の斜面の角度である。安息角θrは、土砂の性状に基づいて一義的に定められる物性値である。地山210に挿入されたバケット13を地山210から抜去した場合、刃先側積荷角θ2は、安息角θrに等しくなる。
【0108】
地山角θgは、地面200と地面200に置かれた土砂により構成される地山210の表面とがなす角度である。地山角θgは、概ね安息角θrと等しいものの、地山210の形成条件に基づいて変化する場合がある。地山210の形成条件は、地山210を形成するために地面200に土砂を落下させるときの落下高さ及び土砂の量を含む。
【0109】
すなわち、安息角θrは、水平面に土砂を静かに落下させることにより生成された土砂の表面の傾斜角であるのに対し、地山角θgは、水平面に土砂を落下させたときに土砂が受ける衝撃や地山210の体積に基づいて変化する場合がある地山210の表面の傾斜角である。
【0110】
図15は、実施形態に係る地山角θgと安息角θrとの関係を示す図である。図15において、横軸は安息角θrを示し、縦軸は地山角θgを示す。例えば安息角θrが小さい土砂の場合、土砂の安息角θrとその土砂により構成される地山210の地山角θgとはほぼ等しい。一方、安息角θrが大きい土砂の場合、土砂の安息角θrよりもその土砂により構成される地山210の地山角θgが小さくなる可能性が高い。
【0111】
図15に示すような、地山角θgと安息角θrとの関係を示す相関データは、特性記憶部61に記憶されている。手前側積荷角決定部82は、例えば安息角θrと相関データとに基づいて、地山角θgを算出することができる。
【0112】
なお、地山角θgが実測され、特性記憶部61に記憶されてもよい。
【0113】
図16は、実施形態に係る掘削作業中のバケット13と掘削物300との関係を示す図である。
【0114】
図16に示す時点T1、T2,T3,T4は、掘削作業が開始されてからのそれぞれの時点を示す。時点T1は、掘削作業の開始直後の時点である。時点T2は、時点T1よりも後の時点である。時点T3は、時点T2よりも後の時点である。時点T4は、時点T3よりも後の時点である。
【0115】
図16に示すように、掘削作業中において、バケット角θbkは徐々に増加する。掘削作業の開始時点においては、バケット角θbkは、例えば0度である。掘削作業の開始時点は、バケット13の刃先端部13Aが地山210に挿入された時点である。ホイールローダ1は、前進しながらバケット13を地山210に挿入してバケット13で地山210を掘削する。ホイールローダ1は、バケット13を地山210に挿入した状態でバケット13をチルト動作させる。バケット13がチルト動作することにより、バケット角θbkが徐々に増加する。
【0116】
時点T1は、バケット13が地山210に挿入された直後の時点である。時点T1においては、バケット角θbkは小さく、バケット13の内側に空隙部340が形成される。時点T1における積荷高さHは、第1の積荷高さH1である。
【0117】
時点T2におけるバケット角θbkは、時点T1におけるバケット角θbkよりも大きい。積荷高さHが第1の積荷高さH1に維持されながらバケット角θbkが増加する。バケット角θbkの増加により、積荷接点13Eがバケット13のスピルガード端部13Bに近付く。
【0118】
時点T3におけるバケット角θbkは、時点T2におけるバケット角θbkよりも大きい。積荷高さHが第1の積荷高さH1に維持されながらバケット角θbkが増加する。バケット角θbkの増加により、積荷接点13Eがバケット13のスピルガード端部13Bに到達する。すなわち、時点T3において、刃先端部13Aを基点とするスピルガード端部13Bの高さと積荷高さHとが一致する。バケット13の内側は、掘削物300で満たされる。
【0119】
時点T4におけるバケット角θbkは、時点T3におけるバケット角θbkよりも大きい。スピルガード端部13Bの高さと積荷高さHとが一致した後、バケット角θbkが更に増加すると、積荷高さHが徐々に小さくなる。時点T4において、積荷高さHは、第1の積荷高さH1よりも小さい第2の積荷高さH2になる。
【0120】
図17は、実施形態に係るバケット角θbkと手前側積荷角θ1との関係を示す図である。図17に示すように、バケット角θbkに基づいて、手前側積荷角θ1が変化する。
【0121】
積荷接点13Eがスピルガード端部13Bに到達する前の時点(例えば時点T1及び時点T2)においては、手前側積荷角θ1は、地山角θgである。
【0122】
積荷接点13Eがスピルガード端部13Bに到達し、スピルガード端部13Bの高さと積荷高さHとが一致した時点T3においても、手前側積荷角θ1は、地山角θgである。
【0123】
積荷接点13Eがスピルガード端部13Bに到達し、スピルガード端部13Bの高さと積荷高さHとが一致した時点T3の後、手前側積荷角θ1は、積荷高さHがスピルガード端部13Bの高さよりも高いと判定した時点からのバケット角増加量Δθbkに基づいて、地山角θgよりも大きくなる。
【0124】
例えば、時点T3と時点T4との間においては、手前側積荷角θ1は、地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和になる。例えば、時点T4の後においては、手前側積荷角θ1は、安息角θrである。
【0125】
このように、積荷高さHがスピルガード端部13Bの高さよりも高いと判定した時点からのバケット角θbkの増加量を示すバケット角増加量Δθbkに基づいて、手前側積荷角θ1が変化する。手前側積荷角決定部82は、バケット角増加量Δθbkに基づいて、手前側積荷角θ1を所定角度に決定する。
【0126】
手前側積荷角決定部82は、バケット角θbkに基づいて変化する、スピルガード端部13Bの高さと積荷高さHとの差に基づいて、手前側積荷角θ1を決定する。
【0127】
手前側積荷角決定部82は、積荷高さHがスピルガード端部13Bの高さよりも高いか否かを判定する。手前側積荷角決定部82は、積荷高さHがスピルガード端部13Bの高さよりも高いと判定するまで、手前側積荷角θ1を地山角θgに決定する。つまり、手前側積荷角決定部82は、スピルガード端部13Bの高さが積荷高さHよりも高いと判定した場合、手前側積荷角θ1を地山角θgに決定する。すなわち、バケット角θbkが時点T3よりも前の状態の場合、手前側積荷角決定部82は、手前側積荷角θ1を地山角θgに決定する。
【0128】
手前側積荷角決定部82は、積荷高さHがスピルガード端部13Bの高さよりも高いと判定した後、バケット角増加量Δθbkに基づいて、手前側積荷角θ1を地山角θgよりも大きい角度に決定する。
【0129】
手前側積荷角決定部82は、地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和が土砂の安息角θrよりも小さい場合、手前側積荷角θ1を地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和に決定する。例えば、バケット角θbkが時点T3と時点T4との間の状態の場合、手前側積荷角決定部82は、手前側積荷角θ1を地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和に決定する。
【0130】
手前側積荷角決定部82は、地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和が土砂の安息角θrよりも大きい場合、手前側積荷角θ1を安息角θrに決定する。すなわち、バケット角θbkが時点T4よりも後の状態の場合、手前側積荷角決定部82は、手前側積荷角θ1を安息角θrに決定する。
【0131】
<安息角算出部>
安息角算出部91は、バケット13に保持された掘削物300に基づいて、土砂の安息角θrを算出する。安息角算出部91により算出された安息角θrは、特性記憶部61に記憶される。
【0132】
安息角θrは、土砂の性状に基づいて定められる土砂の物性値である。例えば天候等に起因して土砂の性状が変化すると、安息角θrが変化する可能性がある。例えば晴天時と雨天時とで安息角θrが異なる可能性がある。安息角算出部91は、安息角θrを算出して、特性記憶部61に記憶させる。
【0133】
安息角算出部91は、バケットデータ記憶部62に記憶されているバケットデータと、バケット角算出部72により算出されたバケット角θbkと、重量センサ34により検出された掘削物300の重量Waと、特性記憶部61に記憶されている掘削物300の密度ρとに基づいて、安息角θrを算出する。
【0134】
図18は、実施形態に係るバケット13に保持された掘削物300の安息角θrを説明する図である。図18に示すように、掘削物300をバケット13に満載にした状態からバケット13をダンプ動作させてバケット13の開口部136を前方へ傾けると、重力の作用により、掘削物300の一部がバケット13から排出される。掘削物300の一部がバケット13から排出されると、図18に示すように、掘削物300の表面は、刃先端部13Aを基点とした傾斜を形成する。安息角θrは、刃先端部13Aを基点として掘削物300の表面が滑り落ちることなく留まる傾斜の水平面に対する角度である。安息角θrは、バケット13の開口部136に露出し、刃先端部13Aを基点として掘削物300の表面が形成する傾斜の水平面に対する角度である。
【0135】
安息角θrの算出方法を詳しく説明する。バケット13に掘削物300を満載にした後、図18に示すように、バケット13に保持された掘削物300の一部を排出する。バケット13に保持された掘削物300の一部を排出すると、掘削物300の表面が滑り落ちることなく留まる傾斜を維持した状態、言い換えると、YZ平面においてバケット13に保持された掘削物300の表面の傾斜が安息角θrに維持された状態となる。この状態のバケット13の未充填部350の未充填部断面積A4は、バケットデータ記憶部62に記憶されたバケット長さL、刃先側開口角θ3、バケット13を水平にしたとき(以下、「バケット水平時」という。)の上部側開口角θspを用いて、以下の(11)式に基づいて算出される。
【0136】
【数11】
【0137】
この状態における積荷断面積Aaは、バケットデータ記憶部62に記憶されたバケット断面積Abkと、バケット13の未充填部350の未充填部断面積A4とから、以下の(12)式に基づいて算出される。
【0138】
【数12】
【0139】
掘削物300の体積Vaは、(3)式に基づいて算出され、掘削物300の重量Waは、(4)式に基づいて算出される。
【0140】
また、(11)式、(3)式、(4)式、及び(12)式に基づいて、以下の(13)式が成立する。安息角算出部91は、(13)式に基づいて、安息角θrを算出する。
【0141】
【数13】
【0142】
<作業機制御部>
作業機制御部100は、重量算出部81により算出される重量Waが目標重量Wrになるように、作業機6の姿勢を制御する。作業機6の姿勢は、水平面に対するバケット13の角度を示すバケット角θbkを含む。バケット角θbkが変化すると、手前側積荷角θ1が変化する。作業機制御部100は、掘削作業中において、リフトシリンダ18及びバケットシリンダ19の少なくとも一方を制御して、バケット角θbkを調整する。バケット角θbkが調整されることにより、手前側積荷角θ1が調整される。手前側積荷角θ1が調整されることにより、掘削物300の重量Waが調整される。作業機制御部100は、重量算出部81により算出される重量Waが目標重量Wrになるように、バケット13の姿勢を示すバケット角θbkを制御する。
【0143】
作業機制御部100は、重量Waが目標重量Wrになったときの手前側積荷角θ1及びバケット角θbkを維持した状態で、バケット13を地山210から抜去する。これにより、バケット13に保持される掘削物300の重量Waと目標重量Wrとの差が小さくなる。
【0144】
[安息角の算出方法]
図19は、実施形態に係る安息角θrの算出方法を示すフローチャートである。オペレータは、地山210の初回の掘削作業前に、コントローラ50に安息角θrの算出処理を開始させる。
【0145】
オペレータは、バケット13で地山210を掘削し、掘削物300を保持する(ステップSA1)。より詳しくは、オペレータは、例えば図9に示したようにバケット13の内側が掘削物300で満載になるように地山210を掘削した後、バケット13内に掘削物300が保持されるようにバケット13をチルト動作させる。
【0146】
次に、オペレータは、バケット13から掘削物300の一部を排出する(ステップSA2)。より詳しくは、オペレータは、掘削物300をバケット13に満載にした状態から、掘削物300がバケット13から完全に排出されない程度にバケット13をダンプ動作させる。オペレータは、例えば、ステップSA1のチルト動作位置と、バケット角θbkが0度よりも大きい角度との間でダンプ動作させる。掘削物300の一部がバケット13から排出されると、図18に示したように、バケット13に保持された掘削物300の表面は、刃先端部13Aを基点として滑ることなく所定の位置に留まる傾斜を維持する。バケット13の掘削物300の表面の角度は、安息角θrを維持する。
【0147】
次に、オペレータは、ステップSA2の状態において、安息角θrの算出処理を開始させる指令をコントローラ50へ送信する(ステップSA3)。より詳しくは、オペレータがオペレータ指令装置23を操作することによって、オペレータ指令装置23は、安息角θrの算出処理を開始させる操作指令信号をコントローラ50へ出力する。
【0148】
検出データ取得部71は、YZ平面においてバケット13に保持された掘削物300の表面が安息角θrを維持した状態における、車体傾斜角θa、ブーム角θb、ベルクランク角θc、及び掘削物300の重量Waを取得する(ステップSA4)。
【0149】
バケット角算出部72は、検出データ取得部71が取得した、車体傾斜角θa、ブーム角θb、及びベルクランク角θcに基づいて、バケット角θbkを算出する(ステップSA5)。
【0150】
安息角算出部91は、車体2の角度の検出データと、バケットデータ記憶部62に記憶されたバケットデータと、ステップSA4で取得した掘削物300の重量Waと、ステップSA5で算出したバケット角θbkとに基づいて、安息角θrを算出する(ステップSA6)。
【0151】
特性記憶部61は、安息角算出部91により算出された安息角θrを記憶する(ステップSA7)。
【0152】
[掘削方法]
図20は、実施形態に係る掘削方法を示すフローチャートである。
【0153】
掘削作業が開始され、バケット13の少なくとも一部が地山210に挿入されると、作業機制御部100は、バケット13をチルト動作させる(ステップSC1)。バケット13がチルト動作することにより、バケット角θbkが変化する。
【0154】
牽引力算出部73は、掘削作業中に牽引力Fを算出する(ステップSC2)。
【0155】
重量算出部81は、特性記憶部61から、密度ρを取得する(ステップSC3)。
【0156】
重量算出部81は、特性記憶部61から、土圧係数Kを取得する(ステップSC4)。
【0157】
重量算出部81は、(7)式に基づいて、積荷高さHを算出する(ステップSC5)。
【0158】
手前側積荷角決定部82は、積荷高さHがスピルガード端部13Bの高さよりも高いか否かを判定する(ステップSC6)。
【0159】
ステップSC6において、積荷高さHがスピルガード端部13Bの高さよりも高いと判定した場合(ステップSC6:Yes)、手前側積荷角決定部82は、特性記憶部61から安息角θrを取得する(ステップSC7)。
【0160】
手前側積荷角決定部82は、ステップSC6の時点におけるバケット角θbk(θbka)を記憶する。手前側積荷角決定部82は、掘削作業中にバケット角算出部72により算出されたバケット角θbk(θbkb)を取得する。手前側積荷角決定部82は、バケット角θbkbとバケット角θbkaとの差を示すバケット角増加量Δθbkをカウントする(ステップSC8)。
【0161】
手前側積荷角決定部82は、特性記憶部61から、地山角θgを取得する(ステップSC9)。
【0162】
手前側積荷角決定部82は、地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和が安息角θrよりも小さいか否かを判定する(ステップSC10)。
【0163】
ステップSC10において、地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和が安息角θrよりも小さいと判定した場合(ステップSC10:Yes)、手前側積荷角決定部82は、手前側積荷角θ1を地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和に決定する(ステップSC11)。
【0164】
ステップSC10において、地山角θgとバケット角増加量Δθbkとの和が安息角θr以上であると判定した場合(ステップSC10:No)、手前側積荷角決定部82は、手前側積荷角θ1を安息角θrに決定する(ステップSC12)。
【0165】
ステップSC6において、積荷高さHがスピルガード端部13B以下であると判定した場合(ステップSC6:No)、手前側積荷角決定部82は、特性記憶部61から地山角θgを取得した後、手前側積荷角θ1を地山角θgに決定する(ステップSC13)。
【0166】
重量算出部81は、掘削作業中にバケット角算出部72により算出されたバケット角θbkを取得する(ステップSC14)。
【0167】
重量算出部81は、バケットデータ記憶部62から、バケットデータとして、バケット長さL、上部側開口角θsp、及び刃先側開口角θ3を取得する(ステップSC15)。
【0168】
重量算出部81は、ステップSC5において算出された積荷高さHと、ステップSC14において取得したバケット角θbkと、ステップSC15において取得したバケットデータとに基づいて、積荷深さxを算出する(ステップSC16)。
【0169】
重量算出部81は、(8)式に基づいて、空隙部断面積A2を算出する(ステップSC17)。
【0170】
重量算出部81は、特性記憶部61から、安息角θrを取得する。重量算出部81は、刃先側積荷角θ2を安息角θrに決定する。また、重量算出部81は、ステップSC6からステップSC13までの処理に基づいて手前側積荷角決定部82により決定された手前側積荷角θ1を取得する(ステップSC18)。
【0171】
重量算出部81は、(9)式に基づいて、積荷形状部断面積A3を算出する(ステップSC19)。
【0172】
重量算出部81は、(10)式に基づいて、積荷断面積Aaを算出する(ステップSC20)。
【0173】
重量算出部81は、バケットデータ記憶部62から、バケットデータとしてバケット幅Bを取得する(ステップSC21)。
【0174】
重量算出部81は、特性記憶部61から、密度ρを取得する(ステップSC22)。
【0175】
重量算出部81は、ステップSC20において算出した積荷断面積Aaと、ステップSC21において取得したバケット幅Bと、ステップSC22において取得した密度ρとに基づいて、重量Waを算出する。すなわち、重量算出部81は、ステップSC20において積荷断面積Aaを算出した後、(3)式及び(4)式に基づいて、重量Waを算出する(ステップSC23)。
【0176】
作業機制御部100は、ステップSC23において算出された重量Waと目標重量Wrとの差が予め定められている閾値以下か否かを判定する(ステップSC24)。
【0177】
ステップSC24において、重量Waと目標重量Wrとの差が閾値以下であると判定した場合、すなわち、重量Waと目標重量Wrとが一致又は近似すると判定した場合(ステップSC24:Yes)、作業機制御部100は、重量Waと目標重量Wrとの差が閾値以下であると判定したときのバケット角θbkを維持した状態で、バケット13を地山210から抜去する(ステップSC25)。バケット13が地山210から抜去された後、オペレータは、バケット13に保持されている掘削物300をダンプボディ230に積み込む。
【0178】
ステップSC24において、重量Waと目標重量Wrとの差が閾値以下でないと判定した場合、すなわち、重量Waと目標重量Wrとが異なると判定した場合(ステップSC24:No)、作業機制御部100は、バケット13のチルト動作を継続する(ステップSC1)。
【0179】
[効果]
以上説明したように、実施形態においては、重量算出部81は、牽引力Fと、バケット角θbkと、バケットデータとに基づいて、バケット13に保持される掘削物300の重量Waを算出することができる。重量算出部81は、掘削作業中において、掘削作業後にバケット13に保持される掘削物300の重量Waを把握することができる。掘削作業中において掘削物300の重量Waが把握されることにより、作業機制御部100は、重量Waと目標重量Wrとの差が小さくなるように、掘削作業中において作業機6を制御することができる。これにより、運搬車両220に対する掘削物300の重量Waが自動調整され、掘削物300は、運搬車両220に目標積載量で積み込まれる。したがって、ホイールローダ1による積込作業が最適化される。
【0180】
手前側積荷角決定部82は、バケット角θbkに基づいて、手前側積荷角θ1を所定角度に決定する。これにより、例えば手前側積荷角θ1を光学センサで検出することなく、手前側積荷角θ1が適切に決定される。重量算出部81は、手前側積荷角決定部82により決定された手前側積荷角θ1に基づいて、重量Waを精度良く算出することができる。
【0181】
[その他の実施形態]
上述の実施形態においては、掘削物300の重量Waが、ホイールローダ1に設けられている重量センサ34により計測されることとした。掘削物300の重量Waが、運搬車両220に設けられている重量センサにより検出されてもよい。バケット13により掘削物300がダンプボディ230に積み込まれることにより、運搬車両220に掛かる負荷が変化する。運搬車両220に設けられている重量センサは、掘削物300がダンプボディ230に積み込まれる前に運搬車両220に掛かる第1負荷と、掘削物300がダンプボディ230に積み込まれた後に運搬車両220に掛かる第2負荷とを検出する。運搬車両220に設けられている重量センサの検出データは、ホイールローダ1のコントローラ50に送信される。バケット13に保持された掘削物300の重量Waは、第1負荷と第2負荷との差に相当する。
【0182】
上述の実施形態において、安息角θrは、バケット13に保持された掘削物300に基づいて算出されることとした。安息角θrは、バケット13に保持されない掘削物300に基づいて算出されてもよい。例えば実験施設又は評価施設において、安息角θrが算出されてもよい。また、安息角θrが既知である場合、安息角θrを算出する処理は省略されてもよい。掘削作業の前に、安息角θrが特性記憶部61に記憶されていればよい。
【0183】
上述した実施形態においては、積込機械1は、オペレータによって操作されるものとして説明したがこれに限定されない。積込機械1は、遠隔システムによって操作されてもよい。この場合、例えば、コントローラ50の機能と、遠隔操作装置を有する装置が遠隔操作地に備えられる。
【0184】
上述の実施形態においては、積込機械1がホイールローダであることとした。積込機械1は、フロントローディング方式の作業機を有する油圧ショベルでもよい。積込機械1は、掘削作業においてバケットの開口部が後方を向くバックホー方式の作業機を有する油圧ショベルでもよい。
【符号の説明】
【0185】
1…ホイールローダ(積込機械)、2…車体、3…動力源、4…キャブ、5…車輪、5F…前輪、5R…後輪、6…作業機、8…パワーテイクオフ、9…動力伝達装置、12…ブーム、13…バケット、13A…刃先端部、13B…スピルガード端部、13C…右端部、13D…左端部、13E…積荷接点、14…ベルクランク、15…バケットリンク、16…ブラケット、17…ブラケット、18…リフトシリンダ、19…バケットシリンダ、20…油圧ポンプ、21…制御弁、22…操作装置、23…オペレータ指令装置、31…傾斜センサ、32…ブーム角センサ、33…バケット角センサ、34…重量センサ、35…回転数センサ、37…ポンプ圧センサ、38…ポンプ容量センサ、40…制御システム、50…コントローラ、51…プロセッサ、52…メインメモリ、53…ストレージ、54…インタフェース、61…特性記憶部、62…バケットデータ記憶部、71…検出データ取得部、72…バケット角算出部、73…牽引力算出部、81…重量算出部、82…手前側積荷角決定部、91…安息角算出部、100…作業機制御部、131…底板部、132…背板部、133…上板部、134…右板部、135…左板部、136…開口部、200…地面、210…地山(掘削対象)、220…運搬車両、230…ダンプボディ(積込対象)、300…掘削物、310…第1表面、320…第2表面、330…露出部、340…空隙部、350…未充填部、A1…露出部断面積、A2…空隙部断面積、A3…積荷形状部断面積、A4…未充填部断面積、Aa…積荷断面積、Abk…バケット断面積、AXa…回動軸、AXb…回動軸、AXc…回動軸、AXd…回動軸、AXe…回動軸、AXf…回動軸、B…バケット幅、CXf…回転軸、CXr…回転軸、F…牽引力、H…積荷高さ、K…土圧係数、L…バケット長さ、M1…矢印、M2…矢印、M3…矢印、M4…矢印、P…土圧、T1…時点、T2…時点、T3…時点、T4…時点、Va…体積、Wa…重量、Wr…目標重量、x…積荷深さ、θ1…手前側積荷角、θ2…刃先側積荷角、θ3…刃先側開口角、θa…車体傾斜角、θb…ブーム角、θbk…バケット角、θc…ベルクランク角、θg…地山角、θr…安息角、θsp…上部側開口角、ρ…密度、Δθbk…バケット角増加量。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
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図15
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図18
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図20