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特開2023-126045骨・関節異常矯正用の固定プレート、骨切りガイド、矯正器具セット、固定プレート装着用器具及び固定プレートを骨へ固定する方法
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  • 特開-骨・関節異常矯正用の固定プレート、骨切りガイド、矯正器具セット、固定プレート装着用器具及び固定プレートを骨へ固定する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126045
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】骨・関節異常矯正用の固定プレート、骨切りガイド、矯正器具セット、固定プレート装着用器具及び固定プレートを骨へ固定する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/80 20060101AFI20230831BHJP
   A61B 17/15 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
A61B17/80
A61B17/15
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030492
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(71)【出願人】
【識別番号】516263616
【氏名又は名称】ヤマウチマテックス・エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110814
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】大木 央
(72)【発明者】
【氏名】松峯 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】山内 隆嗣
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL12
4C160LL21
4C160LL33
(57)【要約】
【課題】 骨・関節異常を矯正する際に、骨を適切な曲げ角度及び回旋角度で簡単に調整することができる固定プレートを提供する。
【解決手段】 骨・関節の異常を矯正するために、骨切りされた骨に固定される骨・関節異常矯正用の固定プレートにおいて、骨Mの表面に取り付けられる基体10と、この基体10に形成され、骨Mの骨切り部分BPを境として近位骨片Ma側又は遠位骨片Mb側のいずれか一方に配置されたガイドワイヤ2が挿通する第一の位置決め孔11と、基体10に形成され、近位骨片側Ma又は遠位骨片Mb側のいずれか他方に配置されたガイドワイヤ2が挿通する第二の位置決め孔12とを有し、第二の位置決め孔12が、骨Mの予め決定された矯正方向と同方向に延びる長孔又は溝である構成としてある。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨・関節の異常を矯正するために、骨切りされた骨に固定される骨・関節異常矯正用の固定プレートにおいて、
前記骨の表面に取り付けられる基体と、
この基体に形成され、前記骨の骨切り部分を境として近位骨片側又は遠位骨片側のいずれか一方に配置されたガイドワイヤが挿通する第一の位置決め孔と、
前記基体に形成され、前記近位骨片側又は前記遠位骨片側のいずれか他方に配置されたガイドワイヤが挿通する第二の位置決め孔と、
を有し、
前記第二の位置決め孔が、前記骨の予め決定された矯正方向と同方向に延びる長孔又は溝であること、
を特徴とする骨・関節異常矯正用の固定プレート。
【請求項2】
前記長孔又は前記溝の長軸方向の長さは、前記矯正方向における予め決定された前記骨の曲げ角度及び回旋角度によって決定されたものであることを特徴とする請求項1に記載の骨・関節異常矯正用の固定プレート。
【請求項3】
前記基体は、前記骨の骨切り部分に挿入される挿入体を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の骨・関節異常矯正用の固定プレート。
【請求項4】
前記挿入体は、予め決定された前記骨の曲げ角度及び回旋角度に対応する勾配を備えた楔状に形成されていることを特徴とする請求項3に記載の骨・関節異常矯正用の固定プレート。
【請求項5】
前記挿入体は、前記基体に対して着脱可能で、前記骨切り部分の骨成長とともに骨と一体化する多孔体から形成されていることを特徴とする請求項3又は4に記載の骨・関節異常矯正用の固定プレート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の骨・関節異常矯正用の固定プレートを取り付ける前に矯正対象である前記骨の骨切りをガイドする骨切りガイドであって、
前記骨の表面に設置されるガイド本体と、
前記ガイド本体に形成され、骨切り用の刃具を案内するガイド部と、
前記ガイド本体に形成され、前記骨の予め決定された位置に設けられ前記ガイド部の位置決めの基準となる第一の基準ピンが挿通する第一の基準ピン挿通孔と、
前記ガイド本体に形成され、前記ガイド本体の向きを決定するための基準となる第二の基準ピンを取り付ける第二の基準ピン取付部と、
骨切りされた後の近位骨片側及び遠位骨片側に分配して配置され、前記近位骨片及び前記遠位骨片に複数のガイドワイヤを刺入れることで前記ガイド本体を前記骨に対して固定するための固定用孔と、
を有し、
前記ガイド部は、前記第一の基準ピン挿通孔を挿通させた前記第一の基準ピンと前記第二の基準ピンとによって、予め決定された骨切り線に沿うように形成されていること、
を有することを特徴とする骨切りガイド。
【請求項7】
前記第一の基準ピン挿通孔を挿通させる前記第一の基準ピンを、前記骨における関節面の位置を示すように設け、前記第二の基準ピンを前記骨の骨軸又は稜線と平行にしたときに、前記関節面からの距離が予め決定された距離になる位置に、前記ガイド部が形成されていることを特徴とする請求項7に記載の骨切りガイド。
【請求項8】
請求項1~5のいずれかに記載の骨・関節異常矯正用の固定プレートと請求項6又は7に記載の骨切りガイドとを備えたことを特徴とする骨・関節異常矯正用の矯正器具セット。
【請求項9】
請求項1~5のいずれかに記載の骨・関節異常矯正用の固定プレートを骨へ固定するための固定プレート装着用器具であって、
基体と、
前記基体に設けられ、前記固定プレートと当接する当接部材と、
対向するように前記基体に設けられた第一のアーム及び第二のアームと、
前記第一のアーム及び前記第二のアームを互いに近接方向に付勢する付勢手段と、
前記第一のアーム(61)に形成され、固定プレートの第一の位置決め孔を挿通するガイドワイヤと係合する第一のワイヤ係合部と、
前記第二のアームに形成され、固定プレート(1)の第二の位置決め孔(12)を挿通するガイドワイヤ(2)と係合する第二のワイヤ係合部(66a)と、
少なくとも前記第二のアームを、前記第一のアームに対して移動自在にするアーム移動手段と、
前記第一のアームと前記第二のアームとの間に配置され、前記基体を前記骨に向けて押すことで、前記第一のワイヤ係合部と係合する前記ガイドワイヤをガイドとして前記基体を前記骨側に移動させる押圧手段と、
前記押圧手段の移動に連動させて前記第二のアームを前記第一のアームに対して移動させ、前記第二のワイヤ係合部と係合する前記ガイドワイヤを前記ガイドワイヤの軸線と交叉する方向に押して前記第二の位置決め孔に沿って前記ガイドワイヤを移動させるガイドワイヤ移動手段と、
を有し、
前記押圧手段で前記基体を押すことで前記当接部材に当接する前記固定プレートを前記骨側に移動させつつ、前記第二の位置決め孔に沿って前記ガイドワイヤを移動させること、
を特徴とする固定プレート装着用器具。
【請求項10】
前記第一のアームと前記第二のアームとの間にV字状の間隙が形成され、前記押圧手段は前記間隙に楔状に挿入され、前記押圧手段を前記間隙の底部に位置する前記基体側に押すことで前記第二のアームを移動させることを特徴とする請求項9に記載の固定プレート装着用器具。
【請求項11】
前記第一のワイヤ係合部は、前記ガイドワイヤが挿通し、かつ、前記基体の移動を案内するガイド孔として形成されていることを特徴とする請求項9又は10に記載の固定プレート装着用器具。
【請求項12】
前記第二のワイヤ係合部は、前記ガイドワイヤを所定の方向に向けて押すカム溝又はカム孔として形成されていることを特徴とする請求項9~11のいずれかに記載の固定プレート装着用器具。
【請求項13】
請求項1~5のいずれかに記載の骨・関節異常矯正用の固定プレートを準備し、
骨切りガイドを固定するガイドワイヤを残して前記骨切りガイドを骨・関節異常矯正の対象である骨から取り外した後、前記ガイドワイヤを、前記固定プレートの位置決め孔及び長孔又は溝に挿通させる工程と、
前記位置決め孔を挿通させた前記ガイドワイヤを保持する工程と、
前記長孔又は前記溝を挿通させた前記ガイドワイヤを、前記長孔又は前記溝の長軸方向に移動させる工程と、
前記長軸方向への前記ガイドワイヤの移動に連動させて、前記ウェッジを前記近位骨片と前記遠位骨片との間に挿入させつつ前記固定プレートを前記骨に向けて移動させる工程と、
前記ガイドワイヤが前記長孔又は前記溝における予め決定された位置に達したときに、前記固定プレートを前記骨に固定する工程と、
を有することを特徴とする骨・関節異常矯正用の固定プレートを骨へ固定する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨・関節異常矯正用の固定プレート、骨切りガイド、矯正器具セット、固定プレート装着用器具、固定プレートを骨へ固定する方法及び骨切りガイドを骨へ設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
骨異常には、骨折後の骨変形や癒合異常、生まれつきの骨変形などがあり、関節異常には、関節のアライメント異常などがある。
関節のアライメント異常の代表例として、外反母趾を挙げることができる。外反母趾は、第1中足骨の内反に伴う中足基節関節の外反変形がその主な病態である。外反母趾の矯正には矯正装具を用いることがあるが、このような矯正装具を用いても変形が改善せずに歩行障害などを生じている場合には、手術による矯正が行われる。このような手術による矯正としては、矯正の対象となる中足骨を、関節側の近位骨片と指先側の遠位骨片とに所定位置で骨切りし、前記近位骨片と前記遠位骨片とを固定プレートで所定の曲げ角度及び回旋角度に維持させるものが知られている。
【0003】
特許文献1に記載の固定プレートは、中足骨にボルトなどで取り付ける外反母趾矯正用のものである。この固定プレートは、矯正後の中足骨の形状に合わせた形状に形成され、中足骨を骨切りした後に、近位骨片と遠位骨片とに固定プレートを密着させることで前記近位骨片と前記遠位骨片とを所定の曲げ角度及び回旋角度に調整し、調整後にネジなどで固定プレートを中足骨に固定するようにしている。
また、特許文献2に記載の骨切りガイドは、外反母趾の矯正に先立ち、矯正対象となる中足骨を骨切りする際に用いるもので、骨切り用の刃具をスロットに案内させながら中足骨を正確に骨切りできるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2012-509143
【特許文献2】特開2021-45546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、術式の煩雑さを解消するとともに矯正不良を生じさせないようにするためには、術前計画に従って骨変形の症例に応じた適切な曲げ角度及び回旋角度で骨を調整・固定するとともに、調整・固定前における骨切りを正確に行う必要がある。
しかしながら、骨切り後の近位骨片と遠位骨片とはきわめて移動の自由度が高く、従来の固定プレートでは精密な曲げ角度及び回旋角度で近位骨片と遠位骨片の位置調整を行うことが非常に困難であるという問題がある。また、固定プレートを骨に設置・固定するに当たっては、固定プレートを正確な位置に保持しつつ、遠位骨片を保持して曲げ及び回旋させ、両者を正確に位置決めした状態で、ボルトの螺入など固定プレートの骨への固定を行わなければならない。そのため、一人の術者では手が足りず、複数の術者が固定プレートの保持や遠位骨片の保持を行うことになるが、複数の術者の手が交錯することで患部が見えにくくなり、施術がしにくくなるという問題がある。また、近年普及しつつある外科手術支援システムなどを用いて、施術を可能な限り自動化したいという要望もある。
【0006】
また、従来の骨切りガイドも、術前に設定された正確な位置に骨切りガイドを設置することが困難で、症例に応じた術前計画に従って予め決定された位置で正確に骨切りを行うことは困難であるという問題がある。特許文献2の骨切りガイドは、位置決め用のガイドワイヤを用いることで比較的正確に位置決めできるようになってはいるが、複雑な構成で各症例に応じて形成すると高価格となり、その位置決めも煩雑で時間もかかるという問題がある。
【0007】
本発明は上記の問題を解決し要望に応えることのできる骨・関節異常矯正用の固定プレートを提供すること、この固定プレートを正確に矯正対象の骨に取り付けるために簡単かつ短時間で位置決めをして正確な骨切りを行うことのできる簡単な構成の骨切りガイドを提供すること、前記固定プレートを骨に装着する際に用いる固定プレート装着用器具を提供すること、骨・関節異常矯正用の固定プレートを骨に固定する方法を提供すること及び骨切りガイドを骨へ設置する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明の骨・関節異常矯正用の固定プレートは、請求項1に記載するように、骨の変形を矯正するために、骨切りされた前記骨に固定される骨・関節異常矯正用の固定プレートにおいて、前記骨の表面に取り付けられる基体と、この基体に形成され、前記骨の骨切り部分を境として近位骨片側又は遠位骨片側のいずれか一方に配置されたガイドワイヤが挿通する第一の位置決め孔と、前記基体に形成され、前記近位骨片側又は前記遠位骨片側のいずれか他方に配置されたガイドワイヤが挿通する第二の位置決め孔と、を有し、前記第二の位置決め孔が、前記骨の予め決定された矯正方向と同方向に延びる長孔又は溝である構成としてある。
【0009】
前記ガイドワイヤを設置する位置、骨切りする位置及び骨の矯正方向は、例えばCTスキャンによって得られた患部の画像などに基づく術前計画によって、予め決定される。また、以下の説明において「矯正方向」とは、前記術前計画によって予め決定された骨の矯正のための曲げ角度及び回旋角度によって決定される方向を指す。
上記の構成によれば、矯正対象である前記骨の骨切り部分を境としてその両側に配置された複数のガイドワイヤを利用して、前記基体を前記骨の適正な位置に正確に位置決めすることができる。
そして、前記長孔又は前記溝の予め決定された位置まで前記ガイドワイヤが移動するように、前記遠位骨片又は前記近位骨片を、前記近位骨片又は前記遠位骨片に対して前記矯正方向に曲げ及び回旋させることで、前記近位骨片と前記遠位骨片とが予め決定された曲げ角度及び回旋角度に調整される。
この状態で前記基体をボルトなどで前記骨に取り付けることで、予め決定された曲げ角度及び回旋角度で前記骨を固定することができる。
【0010】
請求項2に記載するように、前記長孔又は前記溝の長軸方向の長さは、前記矯正方向における予め決定された前記骨の曲げ角度及び回旋角度によって決定されたものとするとよい。
このように構成すれば、ガイドワイヤが長孔の端部又は溝の底部に当接するまで遠位骨片を近位骨片に対して回転させるだけで、前記遠位骨片を予め決定された曲げ角度及び回旋角度に調整することができる。
前記第一の位置決め孔は、一つの長孔又は溝を有するものとしてもよいが、前記矯正方向と同方向に延びる複数の前記長孔又は溝を有するものとしてもよい。前記長孔又は溝を複数設けることで、ガイドワイヤを介して固定プレートをより安定的に前記近位骨片及び前記遠位骨片に取り付けることができ、また、前記遠位骨片の曲げ及び回旋をより安定的に行うことができる。
【0011】
請求項3に記載するように、前記基体は、前記骨の骨切り部分に挿入される挿入体を有するものとしてもよい。この挿入体は、請求項4に記載するように、前記挿入体は、予め決定された前記骨の曲げ角度及び回旋角度に対応する勾配を備えた楔状に形成されているものとするとよい。
このような挿入体を設けることで、固定プレートだけでなく挿入体によっても前記近位骨片又は遠位骨片に対する前記遠位骨片又は近位骨片の曲げ角度及び回旋角度を維持することができる。
【0012】
請求項5に記載するように、前記挿入体は、前記基体に対して着脱可能で、骨切り部分の骨成長とともに骨と一体化する多孔体から形成されているものとしてもよい。
前記挿入体をこのように構成すれば、前記挿入体が骨と一体化した後に前記固定プレートを中足骨から取り外すことが可能になる。
【0013】
本発明の骨切りガイドは、請求項6に記載するように、上記構成の骨・関節異常矯正用の固定プレートを取り付ける前に矯正対象である前記骨の骨切りをガイドする骨切りガイドであって、前記骨の表面に設置されるガイド本体と、前記ガイド本体に形成され、骨切り用の刃具を案内するガイド部と、前記ガイド本体に形成され、前記骨の予め決定された位置に設けられ前記ガイド部の位置決めの基準となる第一の基準ピンが挿通する第一の基準ピン挿通孔と、前記ガイド本体に形成され、前記ガイド本体の向きを決定するための第二の基準ピンを取り付ける第二の基準ピン取付部と、骨切りされた後の近位骨片側及び遠位骨片側に分配して配置され、前記近位骨片及び前記遠位骨片に複数のガイドワイヤを刺入れることで前記ガイド本体を前記骨に対して固定するための固定用孔と、を有し、前記ガイド部は、前記第一の基準ピン挿通孔を挿通させた前記第一の基準ピンと前記第二の基準ピンとによって、予め決定された骨切り線に沿うように形成されている構成としてある。
【0014】
この構成によれば、ガイド部の位置決めの基準となる第一の基準ピンと、ガイド本体の向きを決める第二の基準ピンとによって、ガイド部を予め決定された骨切り線に一致させることができる。そしてこのようにして位置決めされたガイド部は、ガイド本体のガイドワイヤ挿通孔を挿通させて複数本のガイドワイヤを中足骨に刺込み、ガイド本体を中足骨に固定することで、その位置が維持される。そのため、骨切り用の刃具を前記ガイド部に沿って案内させることで、予め決定された位置で正確かつ安定的に骨切りを行うことができる。
この場合、請求項7に記載するように、前記第一の基準ピン挿通孔を挿通させる前記第一の基準ピンを、前記骨における関節面の位置を示すように設け、前記第二の基準ピンを前記骨の骨軸又は稜線と平行にしたときに、前記関節面からの距離が予め決定された距離になるときの位置に、前記ガイド部を形成するようにしてもよい。
本発明の矯正器具セットは、請求項8に記載するように、上記構成の骨・関節異常矯正用の固定プレートと骨切りガイドとを備えたものである。
【0015】
上記構成の前記固定プレートを骨に装着する際に用いる固定プレート装着用器具は、請求項9に記載するように、骨・関節異常矯正用の前記固定プレートを骨へ固定するための固定プレート装着用器具であって、基体と、前記基体に設けられ、前記固定プレートと当接する当接部材と、対向するように前記基体に設けられた第一のアーム及び第二のアームと、前記第一のアーム及び前記第二のアームを互いに近接方向に付勢する付勢手段と、前記第一のアームに形成され、固定プレートの第一の位置決め孔を挿通するガイドワイヤと係合する第一のワイヤ係合部と、前記第二のアームに形成され、固定プレートの第二の位置決め孔を挿通するガイドワイヤと係合する第二のワイヤ係合部と、少なくとも前記第二のアームを、前記第一のアームに対して移動自在にするアーム移動手段と、前記第一のアームと前記第二のアームとの間に配置され、前記基体を前記骨に向けて押すことで、前記第一のワイヤ係合部と係合する前記ガイドワイヤをガイドとして前記基体を前記骨側に移動させる押圧手段と、前記押圧手段の移動に連動させて前記第二のアームを前記第一のアームに対して移動させ、前記第二のワイヤ係合部と係合する前記ガイドワイヤを前記ガイドワイヤの軸線と交叉する方向に押して前記第二の位置決め孔に沿って前記ガイドワイヤを移動させるガイドワイヤ移動手段と、を有し、前記押圧手段で前記基体を押すことで前記当接部材に当接する前記固定プレートを前記骨側に移動させつつ、前記第二の位置決め孔に沿って前記ガイドワイヤを移動させる構成としてある。
【0016】
請求項10に記載するように、前記第一のアームと前記第二のアームとの間にV字状の間隙が形成され、前記押圧手段は前記間隙に楔状に挿入され、前記押圧手段を前記間隙の底部に位置する前記基体側に押すことで前記第二のアームを移動させるように構成してもよい。
このように構成することで、前記押圧手段によって前記基体を骨側に押すこととで、前記当接部材に当接した固定プレートを骨側に移動させると同時に、固定プレートの第二の位置決め孔に沿って、第二の位置決め孔を挿通する前記ガイドワイヤを移動させることができる。
【0017】
請求項11に記載するように、前記第一のワイヤ係合部は、前記ガイドワイヤが挿通し、かつ、前記基体の移動を案内するガイド孔として形成するとよい。このように構成することで、ガイドワイヤをガイドとして基体を移動させることができるほか、前記ガイドワイヤによって固定プレート装着用器具が保持されるので、矯正術中に術者が固定プレート装着用器具を手などで把持している必要が無くなる。
請求項12に記載するように、前記第二のワイヤ係合部は、前記ガイドワイヤを所定の方向に向けて押すカム溝又はカム孔として形成するとよい。
このようにすることで、第二の位置決め孔である長孔や溝の方向や形状に従った最適な方向にガイドワイヤを押すことが可能になる。
【0018】
上記構成の固定プレートを矯正対象の骨に設置する方法は、請求項13に記載するように、上記構成の骨・関節異常矯正用の固定プレートを準備し、骨切りガイドを固定するガイドワイヤを残して前記骨切りガイドを骨・関節異常矯正の対象である骨から取り外した後、前記ガイドワイヤを、前記固定プレートの位置決め孔及び長孔又は溝に挿通させる工程と、前記位置決め孔を挿通させた前記ガイドワイヤを保持する工程と、前記長孔又は前記溝を挿通させた前記ガイドワイヤを、前記長孔又は前記溝の長軸方向に移動させる工程と、前記長軸方向への前記ガイドワイヤの移動に連動させて、前記ウェッジを前記近位骨片と前記遠位骨片との間に挿入させつつ前記固定プレートを前記骨に向けて移動させる工程と、前記ガイドワイヤが前記長孔又は前記溝における予め決定された位置に達したときに、前記固定プレートを前記骨に固定する工程とを有する方法である。
【0019】
また、前記長孔又は前記溝の長軸方向の長さが前記骨の前記矯正方向における曲げ角度及び回旋角度によって予め決定された前記固定プレートを準備し、前記長孔又は前記溝を挿通させた前記ガイドワイヤが前記長孔の端部又は前記溝の底部に当接するまで移動させ、前記ガイドワイヤが前記長孔の端部又は前記溝の底部に当接したときに、前記固定プレートを前記骨に固定するものとしてもよい。
上記方法によれば、骨切りガイドを固定したガイドワイヤをそのまま使って、固定プレートを矯正対象の骨に対して簡単かつ正確に位置決めすることができ、かつ、予め決定された曲げ角度及び回旋角度で行う矯正も簡単かつ短時間で行うことが可能になる。
【0020】
また、骨切りガイドを骨へ設置する方法は、骨切りガイドを準備する工程と、予め設定された位置に設置され、骨切りガイドの位置決めの基準となる第一の基準ピンを、第一の基準ピン挿通孔に挿通させる工程と、第二の基準ピン取付部に取り付けられた第二の基準ピンを、所定方向に指し向けることで、前記骨切りガイドの向きを決定する工程と、前記固定用孔にガイドワイヤを刺入れることで、前記骨切りガイドを骨に対して位置決め・固定する工程とを有するものとしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の固定プレートによれば、術前計画に従った正確な曲げ角度及び回旋角度で、簡単かつ短時間で矯正を行うことが可能になる。また本発明の骨切りガイドは、術前計画に従った正確な骨切り位置で簡単かつ短時間に骨切りを行うことができる。本発明の固定プレート及び骨切りガイドを備えた矯正器具セットによれば、共通のガイドワイヤを介して骨切りガイドと固定プレートを連携させることで、正確な骨切りから正確な曲げ角度及び回旋角度での矯正、固定プレートの固定までの一連の術式を簡単、安全かつ正確に行うことができる。さらに、矯正不良も防止することができるうえ、接骨部固定性が向上し、矯正損失、骨癒合不全を予防することも可能になる。
【0022】
このように、本発明の固定プレート、骨切りガイド、矯正器具セット及びこれらを用いた方法によれば、単独の術者であっても簡単かつ正確に骨・関節異常を矯正するための施術が可能になる。
さらに、本発明の固定プレート装着用器具を用いることで、固定プレートの骨への固定がさらに簡単になり、術者の負担をさらに軽減させることができる。また、外科手術支援装置などを使って、骨切りガイドの骨への設置及び骨切り、正確な曲げ角度及び回旋角度での骨の矯正及び固定プレートの骨への固定の全部又は一部を半自動化又は自動化することも可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら説明する。
なお、以下では、関節におけるアライメント異常の一例として外反母趾症を例に挙げ、足趾の骨である中足骨を骨切りして関節側の近位骨片と指先側の遠位骨片とに分離し、前記遠位骨片を前記近位骨片に対して術前計画によって予め決定された曲げ角度及び回旋角度で矯正するものとして説明する。
[固定プレート]
図1は、本発明の固定プレートの一実施形態を示す図で、(a)は固定プレートの平面図、(b)は固定プレートの裏面図、(c)は固定プレートの裏面に取り付けられるウェッジの斜視図、図2は、中足骨に設置されたガイドワイヤに固定プレートを取り付ける手順を説明する図、図3(a)は、ガイドワイヤを移動させることで遠位骨片を曲げ方向又は回旋方向に移動させ、固定プレートを中足骨に取り付ける手順を説明する図、(b)は矯正方向と曲げ方向及び回旋方向との関係を示す図、(c)は、長孔の形状の一例を示す図、図4は、固定プレートを中足骨に固定した状態を示す図で、(a)はその側面図、(b)はその正面図である。
固定プレート1は、骨切り部分BPで骨切りした中足骨Mの近位骨片Maと遠位骨片Mbとを術前計画によって予め決定された曲げ角度及び回旋角度で維持・固定するためのもので、中足骨Mの表面に取り付けられる基体10と、中足骨Mの表面に接する基体10の裏面にウェッジ取付部材16で着脱可能に取り付けられる挿入体としてのウェッジ15とを有する。
【0024】
[基体10]
基体10は、板状の部材から形成される。基体10の材質としては、チタン又はチタン合金、ステンレス又はコバルトクロム合金などの金属材料を挙げることができる。
中足骨Mにおける基体10の取り付け位置は、コンピュータ断層撮影(CT)などによって得られた中足骨Mの画像データに基づく術前計画によって、予め決定される。
中足骨Mの骨軸線(図2(a)参照)方向における基体10の長さLは、後述するボルト孔13にボルト17(図4(b)参照)を挿通させて基体10を近位骨片Maと遠位骨片Mbとに取り付けても、骨切り部分BPとボルト17との間に十分な骨厚を保つことができるように決定する。
また、中足骨Mは、術前計画によって予め決定された骨切り線BLに沿って骨切りされるが、この骨切り線BLの位置は、中足-足根関節Jから概ね15mm程度の位置である。そのため、基体10の長さLのうち、骨切り線BLより近位骨片Ma側の長さは、中足-足根関節Jと干渉しないもの、すなわち前記の15mmと同じ又はこれより短いものとする。
また、基体10の少なくとも裏面は、中足骨Mの表面に沿うように凹状に湾曲して形成され、基体10の周方向の幅は、中足骨Mの周長の1/3程度を覆うことができるものとするのが好ましい。
【0025】
基体10には、k-ワイヤなどのガイドワイヤ2が挿通する位置決め孔11及び長孔12が形成される。ガイドワイヤ2は、固定プレート1を中足骨Mに対して位置決めするためのもので、後述の骨切りガイド5を用いて骨切りを行う際に、中足骨Mの近位骨片Ma側に複数本(この実施形態では二本)設置され、遠位骨片Mb側に一本又は複数本(この実施形態では一本)設置される。ガイドワイヤ2が挿通する位置決め孔11は、近位骨片Maに設置されたガイドワイヤ2の各々に対応する位置に形成され、長孔12は遠位骨片Mbに設置されたガイドワイヤ2に対応する位置に形成されている。
また、基体10は、近位骨片Maに対して遠位骨片Mbを術前計画によって予め決定された曲げ角度及び回旋角度で矯正した後に、近位骨片Maと遠位骨片Mbとを基体10に固定するためのボルト17を挿通させるボルト孔13と、挿入体としてのウェッジ15を着脱可能に取り付けるための取付部材を挿通させるウェッジ取付孔14と有する。ボルト孔13の各々は、固定時の強度を十分に保つために、骨切り線BLから離間した位置に形成され、かつ、近位骨片Maの端面又は遠位骨片Mbの端面に対して十分な骨厚を確保できる位置に形成される。
【0026】
図3(a)に示すように、遠位骨片Mbは近位骨片Maに対して術前計画によって予め決定された曲げ方向I(この方向の角度を「曲げ角度」という)に曲げられ、かつ、回旋方向II(同「回旋角度」という)に回旋される。そして、図3(b)に示すように、曲げ方向Iと回旋方向IIとを合成した方向が矯正方向IIIである。遠位骨片Mb側に形成された長孔12の長軸の方向は、遠位骨片Mbの矯正方向IIIと同方向に指向している。長孔12の長軸方向の長さは、矯正を行う際の遠位骨片Mbの曲げ角度及び回旋角度に合わせた長さに設定されている。
そのため、位置決め孔11及び長孔12のそれぞれに、術前計画によって予め位置決めして設置されたガイドワイヤ2を挿通させることで、中足骨Mに対する基体10の取り付け位置が決定される。また、長孔12の長軸方向に沿ってガイドワイヤ2を移動させることで、遠位骨片Mbが図3(a)の矢印I方向に曲がりつつ、同矢印II方向に回旋する。そして、図3(c)に示すように、ガイドワイヤ2が長孔12の端部に当接することで、矯正に必要な曲げ角度及び回旋角度で遠位骨片Mbが近位骨片Maに対して位置決めされる。なお、図3(c)(i)(ii)に示すように、ガイドワイヤ2の移動を矯正方向IIIの始点から終点まで案内することができるのであれば、長孔12の形状は直線状であってもよいし、曲線状であってもよい。
このように、長孔12とガイドワイヤ2との協働によって、遠位骨片Mbを術前計画によって予め決定された曲げ角度及び回旋角度とした後は、ボルト孔13を挿通させたボルト17で固定プレート1を近位骨片Maと遠位骨片Mbとを固定し、当該曲げ角度及び回旋角度で維持させる。
【0027】
[ウェッジ]
基体10の裏面には、楔状に形成されたウェッジ15が取り付けられる。このウェッジ15は、ウェッジ取付孔14を挿通させたボルトやテーパーロック、締結ピンなどのウェッジ取付部材16(図示の例ではボルト)によって、基体10に対して着脱可能に取り付けられる。
ウェッジ15は、図4に示すように、骨切りされた後の矯正の際に楔状に開いた近位骨片Maと遠位骨片Mbとの間の骨切り部分BPに挿入され、近位骨片Maと遠位骨片Mbとを術前計画によって予め決定された曲げ角度及び回旋角度に維持する。そのため、ウェッジ15の勾配の角度は、前記曲げ角度及び回旋角度に合わせたものとするのが好ましい。このように近位骨片Maと遠位骨片Mbとは、固定プレート1とともにウェッジ15によって術前計画によって予め決定された曲げ角度及び回旋角度に固定・維持される。
また、ウェッジ15は、近位骨片Maと遠位骨片Mbとの間の骨成長とともに骨と一体になるように、骨融合性の良好なチタン、チタン合金などの金属、ハイドロキシアパタイトなどのリン酸カルシウム、セラミックなどで形成するのが好ましく、かつ、骨融合性を高めるために多孔質に形成するのが好ましい。このようにすることで、ウェッジ15の骨化後に固定プレート1を中足骨Mから取り外すことが可能になる。
【0028】
[固定プレートの別の実施形態]
図5は、固定プレートの別の実施形態を示すもので、ガイドワイヤ2を介して固定プレート1′を近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに取り付けた状態を示している。
この実施形態の固定プレート1′においては、近位骨片Ma側に二本のガイドワイヤ2を設置し、遠位骨片Mb側に二本のガイドワイヤ2を設置している。そのため固定プレート1′には、二本のガイドワイヤ2に対応する位置に、ガイドワイヤ2の各々が挿通できる二つの長孔12a,12bが形成されている。二つの長孔12a,12bは、それぞれの長軸が同じ矯正方向III(図3(c)参照)に指向するように形成され、それぞれの長軸の長さは、曲げ角度及び旋回角度に対応した二本のガイドワイヤ2の相対移動距離に一致する長さとしてある。先の実施形態と同様に、二つの長孔12a,12bは直線状であってもよいし曲線状であってもよい。
この実施形態のように、曲げ及び回旋させる遠位骨片Mb側に複数本(この実施形態では二本)のガイドワイヤ2を設置することで、ガイドワイヤ2が一本の場合に比してより安定的に固定プレート1′を近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに取り付けることができ、遠位骨片Mbの曲げ及び回旋も安定的に行うことができる。
【0029】
[ガイドワイヤの設置]
固定プレート1の位置決めを行うためのガイドワイヤ2は、中足骨Mの矯正対象部位に複数本が平行に立設される。
図6は、ガイドワイヤ2の設置手順を示すもので、(a)は骨切りガイド5の位置決めとガイドワイヤの設置を示す図、(b)は骨切り後に骨切りガイド5を取り外した状態の中足骨を示す図である。
外反母趾を発症した患者の中足骨Mのレントゲン画像やCT画像から、医師は中足骨Mの最適な矯正方向と曲げ角度及び回旋角度を決定するとともに、矯正に必要な中足骨Mの骨切りの位置を決定する。なお、符号BLは、術前計画に従って予め決定された骨切りの予定位置(骨切り線)を示している。骨切り線BLの位置は、例えば、骨軸Cと同方向に中足-足根関節Jから一定距離(例えば15mm)離間した位置であって、骨軸Cと直交する面内に決定される。
【0030】
[骨切りガイド]
中足骨Mの骨切りは、上記の手順で術前計画によって予め決定された骨切り線BLに沿って正確に骨切りを行う必要があることから、骨切り用の刃具を案内するガイド部としてのガイド溝を備えた骨切りガイド5を用いて行う。
骨切りガイド5は、骨切り用の刃具を案内するガイド溝52aを備えたガイド本体52と、このガイド本体52に取り付けられた持ち手となるハンドル部51とから概略構成される。
ガイド本体52には、第一の基準ピンである後述のマーカーピン3が挿通する第一の基準ピン挿通孔である基準孔52bと、複数本のガイドワイヤ2が挿通する複数の固定用孔52cとが形成されている。また、ガイド本体52には、第二の基準ピンである確認用ピン4を着脱自在に取り付けるための第二の基準ピン取付部である確認用ピン取付孔52dが形成されている。
【0031】
ガイド本体52に取り付けられた確認用ピン4は、ガイド溝52aが骨軸Cに対して術前計画によって予め決定された角度(例えば垂直)になるように、ガイド本体52の向きを決定するためのものである。骨軸Cは、術中に視認することができないから、この実施形態では、確認用ピン取付孔52dは、確認用ピン4を、術中にも視認できる中足骨Mの稜線に平行に沿うようにガイド本体52の向きを決定したときに、ガイド溝52aが骨軸Cに対して例えば垂直になるように、術前計画に従って予め設計される。
また、ガイドワイヤ2が挿通する固定用孔52cは、骨切り線BLを境として、近位骨片Ma側と遠位骨片Mb側とに分配して配置される。この実施形態では三つの固定用孔52cが形成され、近位骨片Ma側に二つ、遠位骨片Mb側に一つが分配配置されている。
【0032】
ガイド本体52は、ガイド溝52aが骨切り線BLと一致するように設計される。マーカーピン3が挿通するガイド本体52の基準孔52bは、マーカーピン3が足根-中足関節Jに設置されることから、基準孔52bから一定距離(例えば15mm)離間した位置にガイド溝52aが形成される。
骨切り線BLの位置は、上記したように、骨軸Cと同方向に中足-足根関節Jから一定距離(例えば15mm)離間した位置であって、骨軸Cと直交する面内に決定されるから、ガイド溝52aを確認用ピン4に対して直交するように形成することで、ガイド溝52aと骨切り線BLとが一致する。
【0033】
なお、骨切りガイド5を中足骨Mに設置した後に、X線撮影によって骨切りガイド5が術前計画によって予め設定された位置に設置されているかどうかを確認できるようにするために、ハンドル部51及びガイド本体52はX線透過性の材料で形成するのが好ましい。このような材料としては、例えば、PA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)又はPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの樹脂を挙げることができる。また、確認用ピン4は、X線撮影時にも中足骨Mの稜線(骨軸C)との位置関係を確認できるように、X線を透過しない金属等で形成するのが好ましい。確認用ピン4の好ましい材料としては、例えば、チタン、チタン合金又はステンレスなどの金属を挙げることができる。
【0034】
[矯正器具セット]
本発明の矯正器具セットを構成する上記構成の固定プレート1と骨切りガイド5とは、レントゲン画像やCT画像に基づいて、両者が互いに関連付けられて設計・製作される。そのため、固定プレート1の位置決め孔11及び長孔12と骨切りガイド5のガイドワイヤ2用の孔、固定プレート1のウェッジ取付孔14と骨切りガイド5のガイド溝52aなど互いに関連する部位・部材は、両者の位置が一致するように位置決めして形成される。
【0035】
[矯正器具セットを用いた骨の矯正]
固定プレート1と骨切りガイド5とから構成される矯正器具セットを用いた矯正手順の一例を以下に説明する。
まず、骨切りガイド5を準備する。レントゲン画像やCT画像から、足根-中足関節Jにおける関節面に沿うようにマーカーピン3の設置位置を決め、当該位置に正確にマーカーピン3を設置する。このマーカーピン3をガイド本体52の基準孔52bに挿通させ、確認用ピン4が骨軸C(稜線)と平行になるように向きを調整しながら、ガイド本体52を中足骨Mに当接させる。このとき、ガイド溝52aは骨切り線BLと一致しているから、この位置でガイド本体52を固定するために、ガイド本体52に形成された固定用孔の各々に、ガイドワイヤ2を挿通させて中足骨Mに刺し込む(図6(a)参照)。
【0036】
この後、ガイド溝52aをガイドとして骨切り用の刃具で中足骨Mを骨切り線BLに沿って骨切りする。骨切りによって、中足骨Mを近位骨片Maと遠位骨片Mbとに分離する。「骨切り」による「分離」の態様は、近位骨片Maと遠位骨片Mbとを完全に分離するものであってもよいし、骨の一部を残し、残した骨の一部がヒンジのようになって近位骨片Maと遠位骨片Mbとを連結する部分分離であってもよい。
骨切り後は、骨切りガイド5を中足骨Mから取り外す。マーカーピン3は足根-中足関節Jから取り外すが、ガイドワイヤ2は近位骨片Maと遠位骨片Mbとに残しておく(図6(b)参照)。
【0037】
以上の手順により、近位骨片Ma及び遠位骨片Mbにはガイドワイヤ2が設置された状態で残る。この実施形態では、二本のガイドワイヤ2が近位骨片側に立設され、一本のガイドワイヤが遠位骨片側に立設された状態で、合計三本のガイドワイヤ2が骨切り後の中足骨Mに残される(図2(a)参照)。
次に固定プレート1を準備し、骨切り後の中足骨Mに残された三本のガイドワイヤ2のそれぞれを、基体10の位置決め孔11及び長孔12に挿通させる。この後、三本のガイドワイヤ2のうち、近位骨片Ma側の二本のガイドワイヤ2を保持した状態で、遠位骨片Mb側のガイドワイヤ2を長孔12の長軸に沿って移動させつつ、固定プレート1を中足骨Mに向けて移動させる(図2(b)参照)。
【0038】
この実施形態において長孔12の長軸方向の長さは、術前計画によって近位骨片Maに対して遠位骨片Mbが術前計画によって予め決定された曲げ角度及び回旋角度になるように設定されていて、かつ、このときに固定プレート1が近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに固定される位置に到達しているので、ガイドワイヤ2が長孔12の端部に達したときに固定プレート1のボルト孔13にボルト17を螺入し、固定プレート1を近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに固定する。なお、ボルト17を螺入するに先立ち、錐などを用いて近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに下穴を明けておくことで、ボルト17を近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに螺入しやすくなる。
【0039】
図5に示した別の実施形態の固定プレート1′を用いる場合は、四本のガイドワイヤ2のうち、遠位骨片Mb側の長孔12a,12bを挿通させた二本のガイドワイヤ2を、長孔12a,12bの長軸方向に沿って移動させる以外は、固定プレート1の場合と同じである。
本発明の固定プレート1,1′を用いれば、固定プレート1,1′は骨切り後に中足骨Mに残された複数本のガイドワイヤ2によって保持されているので、術中に固定プレート1,1′を手で常に保持している必要が無いという利点がある。また、中足骨Mを骨切り線BLに沿って骨切りしても、固定プレート1,1′を介して近位骨片Maと遠位骨片Mbとが連結された状態にあるので、近位骨片Maに対する遠位骨片Mbの自由移動を制限できるという利点もある。
【0040】
[固定プレート装着用器具]
固定プレート1,1′は、図7に示すような固定プレート装着用器具を用いることで、術者の負担を軽減しつつより簡単に骨に設置することができる。
図7(a)は、固定プレート装着用器具の一例にかかり、その構成を説明する斜視図、(b)は、(a)の固定プレート装着用器具の一部を破断した拡大側面図、図8(a)は、固定プレートの位置決め孔及び長孔を挿通させたガイドワイヤに固定プレート装着用器具を係合させた状態を示す斜視図、(b)は、押圧部材の動作に連動して第二のアームが動作する様子を説明する図で、固定プレート装着用器具の一部を破断した断面側面図である。
なお、以下の説明では図1に示した実施形態の固定プレート1を例に挙げて説明するが、図5に示した別の実施形態の固定プレート1′についても同様である。また、以下の説明において「上下」と記載するときは、図7(b)及び図8(b)において紙面の上下方向を、「左右」又は「横」と記載するときは、同紙面の左右方向を、「前後」と記載するときは紙面に直交する方向を指すものとする。
【0041】
固定プレート装着用器具6は、V字状に対向して配置された左右一対の第一のアーム61及び第二のアーム62と、第一のアーム61の下端の一部を第二のアーム62側に屈曲させて形成された基体としての基部60と、第一のアーム61と第二のアーム62の間のV字状の空隙に配置された押圧部材68と、基部60の下面に設けられ、固定プレート1と当接する半球状の当接部材63とを有している。第二のアーム62は、ヒンジ62aによって基部60に対して回動自在に取り付けられている。初期状態において、押圧部材68は、図7(b)に示すように、その中心を通る軸線が当接部材63の中心を通る軸線Yに一致するように、第一のアーム61と第二のアーム62との間に配置される。
【0042】
また、第一のアーム61の上端と第二のアーム62の上端とは、付勢手段である引っ張りコイルばね67(以下、ばね67)によって連結されていて、第一のアーム61と第二のアーム62とはこのばね67によって常時近接方向に付勢されている。なお、第一のアーム61と第二のアーム62とを常時近接方向に付勢できるのであれば、ばね67に限らず、ゴムなどの他の付勢手段を用いてもよいし、このような付勢手段を設ける位置も第一のアーム61の上端及び第二のアーム62の上端には限られず、途中位置であってもよい。ヒンジ62aに付勢手段である弦巻ばねを設けるなどしてもよい。さらに、図示の例において第一のアーム61及び第二のアーム62は平板状の部材から形成されているが、これらは棒状の部材から形成されていてもよい。
【0043】
この実施形態において押圧部材68は円柱状に形成され、下端面は球面68bとして形成されている。そして、この球面68bが第一のアーム61及び第二のアーム62の互いに対向する対向面61c,62cに接触していて、押圧部材68を下方に押すことで、楔の作用によって、第二のアーム62がヒンジ62aを支点として第一のアーム61から遠ざかる方向(図7(b)において反時計周り方向)に回動するようになっている。また、押圧部材68の対向面61c,62cに沿った移動を案内するために、この実施形態の固定プレート装着器具6においては、第一のアーム61及び第二のアーム62における対向面61c,62cの各々に凸状のガイド61b,62bが形成され、ガイド61b,62bに嵌合するガイド溝68aが押圧部材68の側周面に形成されている。
さらに、押圧部材68と基部60との間には、弾性部材である圧縮コイルばね64(以下、ばね64)が嵌装されている。押圧部材68を下方に押すと、この押圧力はばね64を介して基部60に伝達される。ばね64の上端は、押圧部材68の球面68bに沿って移動自在な皿状のばね受け69を介して押圧部材68の球面68bに接し、下端は基部60に形成されたばね嵌装孔60aに嵌め込まれている。
【0044】
[第一のワイヤ係合部]
第一のアーム61の上端には、横方向に張り出す矩形のフランジ部65が形成され、このフランジ部65に、固定プレート1の位置決め孔11を挿通したガイドワイヤ2が挿通する第一のワイヤ係合部としてガイド孔65aが形成されている。この実施形態においてガイド孔65aは、固定プレート1の位置決め孔11を挿通した二本のガイドワイヤ2の間隔と同間隔で、前後方向に複数(図示の例では三つ)並べて形成されている。
ガイド孔65aの内径は、ガイドワイヤ2が軽く挿通できるようにガイドワイヤ2の外径よりも大きいのが好ましいが、ガイド孔65aを挿通させたガイドワイヤ2は、固定プレート装着用器具6を中足骨M側に移動させる際にガイドとなるものであるから、ガイドワイヤ2を軽く挿通させることができる範囲内で、ガイドワイヤ2の外径より僅かに大きい程度のものとするとよい。
【0045】
[第二のワイヤ係合部]
第二のアーム62の上端には、横方向に張り出す矩形のフランジ部66が形成され、このフランジ部66に、固定プレート1の長孔13を挿通したガイドワイヤ2が挿通する第二のワイヤ係合部としてカム溝66aが形成されている。
カム溝66aは、ヒンジ62aを支点として第二のアーム62が回動したときに、固定プレート1の長孔12を挿通したガイドワイヤ2にカム溝66aのカム面が当接して、ガイドワイヤ2をガイドワイヤ2の軸線と交叉する方向に押しつつ、ガイドワイヤ2を長孔12に沿って移動させるためのものである。カム溝66aの前記カム面の形状は、ガイドワイヤ2を長孔12に沿って確実に移動させることができるように、長孔12の方向や形状に従って決定される。
【0046】
上記構成の固定プレート装着用器具6は、固定プレート1の位置決め孔11及び長孔12にガイドワイヤ2を挿通させた後、第一のワイヤ係合部65のガイド孔65aに、固定プレート1の位置決め孔11を挿通させたガイドワイヤ2を挿通させ、第二のワイヤ係合部66のカム溝66aの前記カム面に固定プレート1の長孔12を挿通させたガイドワイヤ2を当接させる。
この状態で押圧部材68を上方から押すと、押圧部材68はガイド61b,62bに案内されながら第一のアーム61及び第二のアーム62の対向面61c,62cに沿って下降するが、このとき、押圧部材68は、ヒンジ62aを支点として第二のアーム62を図8(b)において反時計周り方向に回動させるとともに、図8(b)に示すように、その軸線が軸線Yから偏心する。押圧部材68の押圧力を基部60及び当接部材63に伝達するばね64の上端は、押圧部材68の球面68bに沿って移動自在なばね受け69に接し、下端は基部60のばね嵌装孔60aに嵌装されているので、押圧部材68の軸線が偏心しても、ばね64の軸線は軸線Yから偏心せず、常に当接部材63に対してその軸線Y上から押圧力を付与することができる。
【0047】
[作用の説明]
図9は、上記構成の固定プレート装着用器具6の作用を説明する図で、(a)はウェッジ15が骨切り部分BPに挿入される前の状態を示し、(b)はウェッジ15が骨切り部分BPに挿入され、固定プレート1が中足骨Mに固定される位置まで押し下げされた状態を示している。
図9(a)に示すように、近位骨片Maに設置された二本のガイドワイヤ2を固定プレート1の位置決め孔11に挿通させ、遠位骨片Mbに設置されたガイドワイヤ2を固定プレート1の長孔12に挿通させ、ガイドワイヤ2に沿って固定プレート1を中足骨Mの近くまで下降させる。
次いで、固定プレート1の位置決め孔11を挿通させたガイドワイヤ2を、第一のワイヤ係合部65のガイド孔65aに挿通させ、長孔12を挿通させたガイドワイヤ2を第二のワイヤ係合部66のカム溝に挿通させる。
【0048】
そして、ガイド孔65aを挿通させたガイドワイヤ2に沿って、当接部材63が固定プレート1に当接する位置まで、固定プレート装着用器具6を下降させる。これにより、ウェッジ15の先端が骨切り部分BPに位置した図9(a)に示す状態となる。
この後、押圧部材68の上面を押して、押圧部材68を第一のアーム61及び第二のアーム62の対向面61c,62cに沿って下降させる。これにより、固定プレート1が下方に押されて、ウェッジ15が骨切り部分BPに挿入される。また、押圧部材68の下降にともなって第二のアーム62がヒンジ62aを支点として反時計周り方向に回動し、これによってカム溝66aを挿通するガイドワイヤ2がカム面に当接して前記ガイドワイヤの軸線と交叉する方向に押され、長孔12に沿った移動を開始する。この実施形態では、V字状に配置された第一のアーム61及び第二のアーム62の対向面61c,62c、押圧部材68及びヒンジ62aが、ガイドワイヤ2を長孔12に沿って移動させるガイドワイヤ移動手段構成する。
そして、長孔12に沿ったガイドワイヤ2の移動によって、遠位骨片Mbは曲げ方向及び回旋方向に移動させられるが、遠位骨片Mbの移動とともにウェッジ15が骨切り部分BPの中へ挿入される。
【0049】
ガイドワイヤ2が長孔12の端部に達すると、遠位骨片Mbは術前計画によって予め設定された曲げ角度及び回旋角度となり、このときに固定プレート1は、図9(b)に示すように中足骨Mに接する位置まで下降している。この後、固定プレート1のボルト孔13からボルト17(図4参照)を螺入することで、固定プレート1が近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに固定される。固定プレート装着用器具6を用いることで、固定プレート1の中足骨Mへの設置が簡単かつ術者の負担軽減になるほか、固定プレート1の中足骨Mへの設置と同時に、中足骨を術前計画に従った正確な曲げ角度及び回旋角度に矯正することができる。
【0050】
[固定プレート設置の半自動化・自動化]
上記した固定プレート1,1′の骨への設置・固定は、術者(医師又は看護師)が手で近位骨片Ma側及び遠位骨片Mb側のガイドワイヤ2を把持し、遠位骨片Mb側のガイドワイヤ2を手で移動させて行うものであるが、近位側骨片のガイドワイヤ2を保持し、遠位骨片側のガイドワイヤ2を長孔12,12a,12bに沿って移動させ、ガイドワイヤ2の移動に連動させて固定プレート1,1′を骨側に押すことができるものであれば、治具や装置を使って半自動又は自動化することが可能である。
例えば、近年普及しつつある外科手術ロボットなどの外科手術支援装置を用いて行う場合、前記外科手術支援装置の記憶部に、X線装置又はCT装置などから得られる骨変形部位の画像データと、この画像データに基づく術前計画によって予め決定された骨切り線BLの位置、ガイドワイヤ2及び固定プレート1,1′の固定位置などを記憶させておく。
【0051】
矯正を行う際には、前記外科手術支援装置の複数本のアームのうちの一本のアームに固定プレート1,1′を把持させ、ガイドワイヤ2の各々を固定プレート1,1′の位置決め孔11,12,12a,12bに挿通させる。この後、別のアームに近位骨片Ma側の二本のガイドワイヤ2を把持させ、さらに別のアームで遠位骨片Mb側のガイドワイヤ2を把持させる。
そして、前記別のアームを移動させて遠位骨片Mb側のガイドワイヤ2を長孔12,12a,12bに沿って移動させるとともに、この移動に連動させて固定プレート1,1′を下方に移動させる。ガイドワイヤ2が長孔12,12a,12bの端部に当接したときに、前記別のアームの動きを停止させる。この後、ボルト孔13にボルト17を螺入して固定プレート1,1′を近位骨片Ma及び遠位骨片Mbに固定する。ボルト17の螺入は術者が手で行ってもよいし、前記外科手術支援装置のアームを使って行ってもよい。
上記した外科手術支援装置のアームの操作は、患部をカメラで視認しながら、術者が行うようにしてよいし、前記アームの各々の動作を指令するプログラムに従って行われるようにしてもよい。
【0052】
[骨切りガイド設置の半自動化・自動化]
骨への固定プレート1,1′の固定の半自動化・自動化が可能であれば、同様の技術を用いることで、骨への骨切りガイド5の設置の半自動化・自動化も可能である。
まず、前記外科手術支援装置のアームを使って、骨切りガイド5のガイド本体52の位置決めの基準となるマーカーピン3を、術前計画によって予め設定された位置(この実施形態では足根-中足関節Jの関節面)に設置する。
【0053】
次に、骨切りガイド5を準備し、前記外科手術支援装置のアームに把持させ、基準孔52bを挿通させてマーカーピン3にガイド本体52を取り付ける。この後、確認用ピン4が中足骨Mの稜線に平行に沿うように、ガイド本体52の向きを調整する。この状態で、別のアームに把持させたガイドワイヤ2を固定用孔52cに挿入して、中足骨Mにガイドワイヤ2を設置する。そして、ガイド溝52aに沿って骨切り用の刃具を移動させることで、術前計画によって予め設定された骨切線BLに沿って、骨切りを行うことができる。
【0054】
本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限られない。
例えば、上記の説明では足部の関節のアライメント異常である外反母趾を例に挙げたが、本発明は外反母趾に限らず他の関節のアライメント異常や、骨折後の骨変形や癒合異常、生まれつきの骨変形などの骨異常にも適用が可能である。
また、上記の説明では固定プレート1の基体10には長孔12を形成するものとしたが、長孔12の代わりに基体10の外周縁に開口する溝を形成してもよい。さらに、長孔12の長軸方向の長さは、術前計画で予め決定された中足骨Mの曲げ角度及び回旋角度に合わせたものとして説明したが、前記曲げ角度及び前記回旋角度より大きな角度で遠位骨片Mbを曲げ・回旋させることができる長さとしてもよい。この場合は、遠位骨片Mbの曲げ角度及び回旋角度がわかるように、長孔12に目盛りなど目印を付すとよい。
【0055】
また、上記の説明では、基体10の遠位骨片Mb側に長孔12,12a,12bや溝を形成するものとしたが、近位骨片Ma側にこれらを形成するものとしてもよい。
さらに、上記の説明では、固定プレート1及び骨切りガイド5を、足部の骨変形である外反母趾に適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明の固定プレート1及び骨切りガイド5は、足部以外の骨の矯正、例えば手指の骨の矯正などにも適用が可能である。
【0056】
また、上記の説明では、固定プレート1及び骨切りガイド5を楔状開大型骨切り術(Open wedge osteotomy)に適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明の固定プレート1及び骨切りガイド5は、閉鎖型骨切り術(Closed wedge osteotomy)にも適用が可能である。
さらに、固定プレート装着用器具6における第二のワイヤ係合部はカム溝66aであるとして説明したが、カム面を有する長孔状のカム孔であってもよい。さらに、ガイドワイヤ移動手段は、ヒンジ62aによって第二のアーム62を第一のアーム61から遠ざかる方向に回動させるものとして説明したが、基部60にガイドレールを設けるなどして、第二のアーム62を第一のアーム61から遠ざかる方向に平行移動するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の固定プレートの一実施形態を示す図で、(a)は固定プレートの平面図、(b)は固定プレートの裏面図、(c)は固定プレートの裏面に取り付けられるウェッジの斜視図である。
図2】中足骨に設置されたガイドワイヤを介して固定プレートを中足骨に固定する手順を説明する図である。
図3】(a)は、ガイドワイヤを移動させることで遠位骨片を曲げ方向又は回旋方向に移動させ、固定プレートを中足骨に取り付ける手順を説明する図、(b)は矯正方向と曲げ方向及び回旋方向との関係を示す図、(c)は、長孔の形状の一例を示す図である。
図4】固定プレートを中足骨に固定した状態を示す図で、(a)はその側面図、(b)はその正面図である。
図5】固定プレートの他の実施形態を示す図で、固定プレートを中足骨に固定した状態を示すものである。
図6】ガイドワイヤ2の立設手順を示すもので、(a)は骨切りガイド5の位置決めとガイドワイヤの設置を示す図、(b)は骨切り後に骨切りガイド5を取り外した状態の中足骨を示す図である。
図7図7(a)は、固定プレート装着用器具の一実施形態にかかり、その構成を説明する斜視図、(b)は、(a)の固定プレート装着用器具の一部を破断した拡大側面図である。
図8図8(a)は、固定プレートの位置決め孔及び長孔を挿通させたガイドワイヤに固定プレート装着用器具を係合させた状態を示す斜視図、(b)は、押圧部材の動作に連動して第二のアームが動作する様子を説明する図で、固定プレート装着用器具の一部を破断した断面側面図である。
図9】固定プレート装着用器具の作用を説明する図で、(a)はウェッジが骨切り部分に挿入される前の状態を示し、(b)はウェッジが骨切り部分に挿入され、固定プレート1が中足骨に固定される位置まで押し下げされた状態を示している。
【符号の説明】
【0058】
1,1′ 固定プレート
10 基体
11 位置決め孔
12,12a,12b 長孔
13 ボルト用の孔
14 ウェッジ用の孔
15 ウェッジ(挿入体)
16 ウェッジ取付部材
17 ボルト
2 ガイドワイヤ
3 マーカーピン(第一の基準ピン)
4 確認用ピン(第二の基準ピン)
5 骨切りガイド
51 ハンドル部
52 ガイド本体
52a ガイド溝(ガイド部)
52b 基準孔(第一の基準ピン挿通孔)
52c 固定用孔
52d 確認用ピン取付孔
6 固定プレート装着用器具
60 基部(基体)
61 第一のアーム
62 第二のアーム
62a ヒンジ(ガイドワイヤ移動手段)
63 当接部材
64 圧縮コイルばね
65,66 フランジ部
65a ガイド孔(第一のワイヤ係合部)
66a カム溝(第二のワイヤ係合部)
67 引っ張りコイルばね
68 押圧部材
C 骨軸
M 中足骨(足趾の骨)
Ma 近位骨片
Mb 遠位骨片
L 軸線
I 曲げ方向
II 回旋方向
III 矯正方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9