(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126048
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】ヒートシンクの熱分散構造
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230831BHJP
H01L 23/373 20060101ALI20230831BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 M
H05K7/20 E
H05K7/20 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030495
(22)【出願日】2022-02-28
(71)【出願人】
【識別番号】594043122
【氏名又は名称】株式会社アカネ
(71)【出願人】
【識別番号】000000206
【氏名又は名称】UBE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(72)【発明者】
【氏名】砂本 健市
(72)【発明者】
【氏名】吉村 正文
(72)【発明者】
【氏名】稲森 太
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AB01
5E322AB02
5E322AB03
5E322FA04
5E322FA09
5F136BA03
5F136BC06
5F136DA27
5F136FA02
5F136FA03
5F136FA23
5F136FA41
5F136FA63
5F136FA88
5F136GA02
5F136GA12
5F136GA17
5F136GA31
(57)【要約】
【課題】比較的大型のヒートシンクにおいて、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンクの上面に広く分散することのできるヒートシンクの熱分散構造を提供する。
【解決手段】ヒートシンク3の上面に分離して配置された複数の放熱板10(20)と、複数の放熱板10(20)を連結する熱継手30とを有し、熱源から放熱板10(20)に伝わった熱を熱継手30によりヒートシンク3の上面に分散することを特徴とするヒートシンクの熱分散構造100である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒートシンクの上面に分離して配置された複数の放熱板と、前記複数の放熱板を連結する熱継手とを有し、
熱源から放熱板に伝わった熱を前記熱継手により前記ヒートシンクの上面に分散することを特徴とするヒートシンクの熱分散構造。
【請求項2】
前記複数の放熱板は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、
前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して平行方向となるように配置されている放熱板から構成されることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンクの熱分散構造。
【請求項3】
前記複数の放熱板は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、
前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して垂直方向となるように配置されている放熱板から構成されることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンクの熱分散構造。
【請求項4】
前記複数の放熱板は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、
前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して平行方向となるように配置されている放熱板と、
前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して垂直方向となるように配置されている放熱板と、
から構成されることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンクの熱分散構造。
【請求項5】
前記熱継手は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、
前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向が連結方向に直交する方向となるように配置されていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンクの熱分散構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、IGBT等の半導体素子などの熱源を冷却するためのヒートシンクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、IGBT等の半導体素子などの熱源を冷却するためのヒートシンクが用いられている。ヒートシンクには、熱源から発生する熱を放熱させるための放熱板(放熱基板)が部材として使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、Cu-C複合材(黒鉛-銅複合材料)からなる放熱基板に関する発明が記載されており、Cu-C複合材の表側と裏側に薄膜状のCu層を形成して温度上昇に伴う応力発生に対応するようになっている。
【0004】
また、特許文献2及び特許文献3には、鱗片状黒鉛粒子を積層した黒鉛-銅複合材料からなる放熱板に関する発明が記載されており、鱗片状黒鉛粒子の積層方向による熱伝導率の大きさの違いについて言及されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-142569号公報
【特許文献2】特開2019-192890号公報
【特許文献3】特開2020-113758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ヒートシンクには用途に応じて様々な大きさのものがあるが、例えば500~1000mm四方といった比較的大型のヒートシンクの場合には、コスト面や強度面の問題があるため、ヒートシンク全体を、特許文献1~3に記載したようなCu-C複合材(黒鉛-銅複合材料)からなる放熱基板で構成することは困難である。そのため、比較的大型のヒートシンクの材料としては、例えばアルミニウムが用いられている。そして、アルミニウム製のヒートシンクの上面には、IGBT等の半導体素子などの熱源を載置するための放熱板が配置されるようになっている。
【0007】
しかしながら、比較的大型のヒートシンクの場合、熱源から放熱板に伝わった熱がヒートシンクの上面で分散せず、熱の伝わり方が局所的になってしまい、ヒートシンクの冷却機能を効果的に利用することができない。
【0008】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、比較的大型のヒートシンクにおいて、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンクの上面に広く分散することのできるヒートシンクの熱分散構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のヒートシンクの熱分散構造は、ヒートシンクの上面に分離して配置された複数の放熱板と、前記複数の放熱板を連結する熱継手とを有し、熱源から放熱板に伝わった熱を前記熱継手により前記ヒートシンクの上面に分散することを特徴とする。
【0010】
また好ましくは、前記複数の放熱板は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して平行方向となるように配置されている放熱板から構成されることを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、前記複数の放熱板は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して垂直方向となるように配置されている放熱板から構成されることを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記複数の放熱板は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して平行方向となるように配置されている放熱板と、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して垂直方向となるように配置されている放熱板と、から構成されることを特徴とする。
【0013】
また好ましくは、前記熱継手は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料の焼結体からなり、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向が連結方向に直交する方向となるように配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明のヒートシンクの熱分散構造は、ヒートシンクの上面に分離して配置された複数の放熱板と、複数の放熱板を連結する熱継手とを有しているので、熱源から放熱板に伝わった熱を熱継手によりヒートシンクの上面に分散することができる。
【0015】
また、複数の放熱板が、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して平行方向となるように配置されている放熱板から構成される場合には、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンクの上面に対して垂直方向に効果的に放熱することができる。
【0016】
また、複数の放熱板が、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して垂直方向となるように配置されている放熱板から構成される場合には、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンクの上面に対して平行方向に効果的に放熱することができる。
【0017】
また、複数の放熱板が、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して平行方向となるように配置されている放熱板と、前記鱗片状黒鉛粒子の積層方向がヒートシンクの上面に対して垂直方向となるように配置されている放熱板と、から構成される場合には、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンクの上面に対して垂直方向と平行方向とに組み合わせながら効果的に放熱することができる。
【0018】
また、熱継手が、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、鱗片状黒鉛粒子の積層方向が連結方向に直交する方向となるように配置されている場合には、放熱板から放熱板への連結方向に熱を効果的に放熱することができる。
【0019】
このように、本発明によれば、比較的大型のヒートシンクにおいて、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンクの上面に広く分散することのできるヒートシンクの熱分散構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係るヒートシンクの熱分散構造を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るヒートシンクの熱分散構造を示す正面図である。
【
図3】黒鉛-銅複合材料の焼結体を示す斜視図である。
【
図12】熱継手を示す(A)平面図、(B)a-a断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、
図1~
図15を参照して、本発明の実施形態に係るヒートシンクの熱分散構造について説明する。
図1及び
図2は、本実施形態に係るヒートシンクの熱分散構造100を示す平面図及び正面図である。
【0022】
熱分散構造100は、ヒートシンク3の上面に配置されている。ヒートシンク3は、上面が例えば500~1000mm四方といった比較的大型のものであり、下部に複数のフィンが設けられている。フィンの冷却は、空冷及び水冷のいずれであってもよい。また、ヒートシンク3の材料としては、例えばアルミニウムが用いられる。
【0023】
熱分散構造100は、5つの放熱板10(20)及び4つの熱継手30から構成されている。放熱板10(20)は、例えば200mm四方以下の大きさであって、上面に絶縁層を介して熱源を載置するものである。熱源としては、IGBT等の半導体素子などが挙げられる。
【0024】
放熱板10(20)は、ヒートシンク3の上面に分離して配置されている。本実施形態では、同じ大きさの5つの放熱板10(20)を用い、1つが中央に配置され、他の4つが四隅に配置されている。放熱板10(20)の下面は、ヒートシンク3の上面にグリス、ハンダ、ロウ付け等により接合されている。
【0025】
中央の放熱板10(20)は、四隅の放熱板10(20)の各々と熱継手30により連結されている。放熱板10(20)と熱継手30とは、ネジ4により固定されている。また、熱継手30の下面も、ヒートシンク3の上面にグリス、ハンダ、ロウ付け等により接合されている。なお、放熱板10(20)の熱継手30との連結部分には、熱継手30の端部と勘合する切り欠き部(図示しない)が形成されている。
【0026】
そして、複数の放熱板10(20)を熱継手30で連結することにより、熱源から放熱板10(20)に伝わった熱が熱継手30によりヒートシンク3の上面に分散するようになっている。ヒートシンク3の上面に分散した熱は、一部のフィンだけではなく多くのフィンを経由して放熱される。
【0027】
このように、本実施形態に係るヒートシンクの熱分散構造100は、ヒートシンク3の上面に分離して配置された複数の放熱板10(20)と、複数の放熱板10(20)を連結する熱継手30とを有しているので、熱源から放熱板10(20)に伝わった熱を熱継手30によりヒートシンク3の上面に分散することができる。
【0028】
次に、本実施形態に係る放熱板10(20)及び熱継手30について詳細に説明する。まず、
図3を参照して、放熱板10(20)及び熱継手30の本体部となる黒鉛-銅複合材料の焼結体について説明する。
【0029】
(黒鉛-銅複合材料)
図3(A)は、黒鉛-銅複合材料の焼結体9を示す斜視図である。黒鉛-銅複合材料の焼結体9は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含むものである。
図3(A)において、符号1の楕円は鱗片状黒鉛粒子、符号2の直線は積層された鱗片状黒鉛粒子の層を模式的に示したものである。以降の図においても同様である。
【0030】
図3(A)において、鱗片状黒鉛粒子1は下から上に向かって積層されており、白矢印Zは鱗片状黒鉛粒子の積層方向を示している。そして、黒矢印X及び黒矢印Yは白矢印Zと直交しており、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向となっている。
【0031】
ここで、黒鉛-銅複合材料の焼結体9の熱伝導率を各方向で比較すると、黒矢印X及び黒矢印Yの方向での熱伝導率の方が、白矢印Zの方向での熱伝導率よりも大きい。すなわち、鱗片状黒鉛粒子2の積層方向に垂直な方向(X、Y)での熱伝導率が、積層方向(Z)での熱伝導率よりも大きい。これは、熱伝導率の大きな鱗片状黒鉛粒子2が隣り合う方向(X、Y)においては、隣り合う鱗片状黒鉛粒子2の間で熱伝導が行われやすいのに対して、上下の鱗片状黒鉛粒子2の間には黒鉛よりも熱伝導率の小さい銅層が存在するためである。
【0032】
図3(B)は、黒鉛-銅複合材料の焼結体9を切断した状態を示すものである。このように、黒鉛-銅複合材料の焼結体9を所望の長さや厚みに切断することにより、所望の形状とすることができる。
【0033】
黒鉛-銅複合材料の焼結体9は、鱗片状黒鉛粒子と銅粒子とを原料として得られた焼結体であり、黒鉛粒子に前処理を施して所望の鱗片状黒鉛粒子を得、所定の銅粒子と混合して成形原料とし、これを成形して所定条件で焼結して製造することができる。
【0034】
黒鉛粒子の前処理は、薄層化と称するものであり、黒鉛粒子にせん断力を付与して厚みを低減することにより行われる。例えば、特開2019-94248号公報に、薄層黒鉛の製造方法として開示されている。
【0035】
鱗片状黒鉛粒子と銅粒子とを所定の割合で混合し、有機溶媒により湿式混合を行って成形原料を得る。そして、成形原料を所定の成形型に充填して多軸通電焼結法により焼結する。多軸通電焼結法は、上下方向の加圧軸と水平方向の2つの通電軸とを有する多軸通電焼結装置を用いた焼結方法であり、均一な温度分布で焼結されるので、安定した品質の複合材料を製造することができる。
【0036】
(放熱板10)
次に、
図4~
図7を参照して、放熱板10について説明する。
図4は、放熱板10を示す平面図である。放熱板10は、本体部11、フレーム部12及びコーナー部13から構成されている。放熱板10の厚さは例えば0.5~5mmである。
【0037】
本体部11は、黒鉛-銅複合材料の焼結体9から形成された平面視八角形の板状部材である。また、本体部11における鱗片状黒鉛粒子の積層方向(Z)は、ヒートシンク3の上面に対して平行方向(
図4の上下方向)となるように配置されている。従って、ヒートシンク3の上面に対して垂直方向(
図4の紙面を貫く方向)の熱伝導率が大きくなっている。
【0038】
このように、放熱板10は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、鱗片状黒鉛粒子の積層方向(Z)がヒートシンク3の上面に対して平行方向となるように配置されているので、熱源から放熱板10に伝わった熱をヒートシンク3の上面に対して垂直方向に効果的に放熱することができる。
【0039】
フレーム部12は、本体部11を周囲から保持するための部材である。また、コーナー部13は、本体部11の四隅とフレーム部13との間に配置される部材であり、熱継手30を固定するネジ4を取り付けるためのものである。フレーム部12及びコーナー部13は、いずれも銅部材である。なお、フレーム部12及びコーナー部13は必ずしも必要ではなく、放熱板10の保持や放熱板10と熱継手30との固定を別の構成により行うようにしてもよい。
【0040】
次に、放熱板10の製造方法について説明する。
図5は、放熱板10の組立図であり、各部材を黒鉛型の内部にセットして焼結する。
【0041】
図6は、放熱板10の焼結方法を示す断面図である。
図6に示す焼結方法は、本体部11の焼結と、本体部11、フレーム部12及びコーナー部13の接合とを別工程で行うものである。
【0042】
黒鉛型6,6の内部には、放熱板10の材料として、本体部11となる黒鉛-銅複合材料の焼結体9、フレーム部12a,12b,12c,12d及びコーナー部13,13,13,13がセットされている。各部材は、焼結後に切断することにより複数の放熱板10を得ることができるように、
図6の紙面を貫く方向に厚みを持った部材が用いられている。また、各部材の接合部分(図中に太線で示す部分)には、接合を促すための銅粉末(0.5~5μmの微粉をアルコール等に混合したもの)が塗布されている。以降の焼結方法についても同様である。
【0043】
図6に示す焼結方法では、予め本体部11の焼結を別工程で行い、焼結体9を形状加工してからセットする。そして、上下のパンチ5,5により加圧しながら焼結することにより、本体部11となる黒鉛-銅複合材料の焼結体9、フレーム部12及びコーナー部13の接合が行われる。焼結が完了したら、ワイヤーソー等により所望の厚さに切断して、放熱板10が完成する。
【0044】
なお、放熱板10の焼結方法として、本体部11の焼結と、本体部11、フレーム部12及びコーナー部13の接合とを1つの工程で行うこともできる。
図7は、1つの工程で行う場合の放熱板10の焼結方法を示す断面図である。
【0045】
黒鉛型6,6の内部には、放熱板10の材料として、本体部11となる黒鉛-銅複合材料の粉体8、フレーム部12a,12b,12c,12d及びコーナー部13,13,13,13がセットされている。各部材は、焼結後に切断することにより複数の放熱板10を得ることができるように、
図5の紙面を貫く方向に厚みを持った部材が用いられている。
【0046】
黒鉛-銅複合材料の粉体8は、加圧されて上下方向に圧縮されるため、予め上側のパンチ5の左右端部とフレーム部12c,12dの上端との間に、隙間7,7が設けられており、フレーム部12c,12dの長さも若干長めになっている。
【0047】
そして、上下のパンチ5,5により加圧しながら焼結することにより、本体部11となる黒鉛-銅複合材料の焼結体9の焼結と、本体部11、フレーム部12及びコーナー部13の接合とが同時に行われる。焼結が完了したら、ワイヤーソー等により所望の厚さに切断して、放熱板10が完成する。フレーム部12c,12dの突出部分はカットする。
【0048】
(放熱板20)
次に、
図8~
図11を参照して、放熱板20について説明する。
図8は、放熱板20を示す平面図である。放熱板20は、本体部21、フレーム部22及びコーナー部23から構成されている。放熱板20の厚さは例えば0.5~5mmである。
【0049】
本体部21は、黒鉛-銅複合材料の焼結体9から形成された平面視八角形の板状部材である。また、本体部21における鱗片状黒鉛粒子の積層方向(Z)は、ヒートシンク3の上面に対して垂直方向(
図4の紙面を貫く方向)となるように配置されている。従って、ヒートシンク3の上面に対して平行方向(
図4の上下左右方向)の熱伝導率が大きくなっている。
【0050】
このように、放熱板20は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料からなり、鱗片状黒鉛粒子の積層方向(Z)がヒートシンク3の上面に対して垂直方向となるように配置されているので、熱源から放熱板20に伝わった熱をヒートシンク3の上面に対して平行方向に効果的に放熱することができる。
【0051】
フレーム部22は、本体部21を周囲から保持するための部材である。また、コーナー材23は、本体部21の四隅とフレーム部23との間に配置される部材であり、熱継手30を固定するネジ4を取り付けるためのものである。フレーム部22及びコーナー部23は、いずれも銅部材である。なお、フレーム部22及びコーナー部23は必ずしも必要ではなく、放熱板20の保持や放熱板20と熱継手30との固定を別の構成により行うようにしてもよい。
【0052】
次に、放熱板20の製造方法について説明する。
図9は、放熱板20の組立図であり、各部材を黒鉛型の内部にセットして焼結する。
【0053】
図10は、放熱板20の焼結方法を示す断面図である。
図10に示す焼結方法は、本体部21の焼結と、本体部21、フレーム部22及びコーナー部23の接合とを別工程で行うものである。
【0054】
黒鉛型6,6の内部には、放熱板20の材料として、本体部21となる黒鉛-銅複合材料の焼結体9、フレーム部22a,22b,22c(図示しない),22d(図示しない)及びコーナー部23,23,23(図示しない),23(図示しない)がセットされている。各部材は、焼結後に切断することにより複数の放熱板20を得ることができるように、
図10の上下方向に厚みを持った部材が用いられている。
【0055】
図10に示す焼結方法では、予め本体部21の焼結を別工程で行い、焼結体9を形状加工してからセットする。そして、上下のパンチ5,5により加圧しながら焼結することにより、本体部21となる黒鉛-銅複合材料の焼結体9、フレーム部22及びコーナー部23の接合が行われる。焼結が完了したら、ワイヤーソー等により所望の厚さに切断して、放熱板20が完成する。
【0056】
なお、放熱板20の焼結方法として、本体部21の焼結と、本体部21、フレーム部22及びコーナー部23の接合とを1つの工程で行うこともできる。
図11は、1つの工程で行う場合の放熱板20の焼結方法を示す断面図である。
【0057】
黒鉛型6,6の内部には、放熱板20の材料として、本体部21となる黒鉛-銅複合材料の粉体8、フレーム部22a,22b,22c(図示しない),22d(図示しない)及びコーナー部23,23,23(図示しない),23(図示しない)がセットされている。各部材は、焼結後に切断することにより複数の放熱板20を得ることができるように、
図11の上下方向に厚みを持った部材が用いられている。
【0058】
黒鉛-銅複合材料の粉体8は、加圧されて上下方向に圧縮されるため、予め上側のパンチ5の左右端部とフレーム部22a,22bの上端及びコーナー部23,23の上端との間に、隙間7,7が設けられており、フレーム部22及びコーナー部23の長さも若干長めになっている。
【0059】
そして、上下のパンチ5,5により加圧しながら焼結することにより、本体部21となる黒鉛-銅複合材料の焼結体9の焼結と、本体部21、フレーム部22及びコーナー部23の接合とが同時に行われる。焼結が完了したら、ワイヤーソー等により所望の厚さに切断して、放熱板20が完成する。フレーム部22及びコーナー部23の突出部分はカットする。
【0060】
ヒートシンク3に配置する複数の放熱板は、放熱板10で構成することもできるし、放熱板20で構成することもできる。また、放熱板10と放熱板20とで構成し、それぞれを組み合わせて配置することもできる。放熱板10と放熱板20とを組み合わせて配置した場合には、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンク3の上面に対して垂直方向と平行方向とに組み合わせながら効果的に放熱することができる。
【0061】
(熱継手30)
次に、
図12を参照して、熱継手30について説明する。
図12は、熱継手30を示す(A)平面図、(B)a-a断面図である。熱継手30は、本体部31及び固定部32,32,34から構成されている。熱継手30の厚さは例えば0.5~5mmである。
【0062】
本体部31は、黒鉛-銅複合材料の焼結体9から形成された板状部材である。また、本体部31における鱗片状黒鉛粒子の積層方向(Z)は、熱継手の連結方向(=長手方向)に直交する方向(
図10(A)の上下方向)となるように配置されている。従って、本体部31の連結方向(=長手方向)の熱伝導率が大きくなっている。
【0063】
このように、熱継手30は、銅層を介して積層された鱗片状黒鉛粒子を含み、鱗片状黒鉛粒子の積層方向に垂直な方向での熱伝導率が積層方向での熱伝導率よりも大きな黒鉛-銅複合材料の焼結体9からなり、鱗片状黒鉛粒子の積層方向(Z)が連結方向に直交する方向となるように配置されているので、放熱板から放熱板への連結方向に熱を効果的に放熱することができる。
【0064】
固定部32,32は、本体部31の両端部に設けられた部材であり、放熱板10(20)に固定するネジ4を取り付けるためのものである。固定部32,23には、切り欠き33,33が形成されており、切り欠き33,33にネジ4を通過させることができるようになっている。切り欠き33,33により、本体部31の両端部は二股状を呈している。
【0065】
固定部34は、本体部31の中央部に設けられた部材であり、ヒートシンク3の上面に固定するネジ(図示しない)を取り付けるためのものである。固定部34には、孔35が形成されており、孔35にネジ(図示しない)を通過させることができるようになっている。固定部32,32,34は、いずれも銅部材である。
【0066】
次に、熱継手30の製造方法について説明する。
図13は、熱継手30の組立図であり、各部材を黒鉛型の内部にセットして焼結する。放熱板30は、本体部31a,31bとなる黒鉛-銅複合材料の焼結体9,9及び固定部32,32,34により組み立てられる。本体部31a,31bには、それぞれ固定部32,32,34が嵌合する凹部が形成されている。
【0067】
図14は、熱継手30の焼結方法を示す断面図である。
図12に示す焼結方法は、本体部31a,31bの焼結と、本体部31a,31b及び固定部32,32,34の接合とを別工程で行うものである。
【0068】
黒鉛型6,6の内部には、熱継手30の材料として、本体部31a,31bとなる黒鉛-銅複合材料の焼結体9,9及び固定部32,32,34がセットされている。各部材は、焼結後に切断することにより複数の放熱板30を得ることができるように、
図14の紙面を貫く方向に厚みを持った部材が用いられている。
【0069】
図14に示す焼結方法では、予め本体部31a,31bの焼結を別工程で行い、焼結体9,9を形状加工してからセットする。そして、上下のパンチ5,5により加圧しながら焼結することにより、本体部31a,31bとなる黒鉛-銅複合材料の焼結体9,9及び固定部32,32,34の接合が行われる。焼結が完了したら、ワイヤーソー等により所望の厚さに切断して、熱継手30が完成する。
【0070】
なお、熱継手30の焼結方法として、本体部31の焼結と、本体部31及び固定部32,32,34の接合とを1つの工程で行うこともできる。
図15は、1つの工程で行う場合の熱継手3の焼結方法を示す断面図である。
【0071】
黒鉛型6,6の内部には、熱継手30の材料として、本体部31となる黒鉛-銅複合材料の粉体8及び固定部32,32,34がセットされている。各部材は、焼結後に切断することにより複数の放熱板30を得ることができるように、
図15の紙面を貫く方向に厚みを持った部材が用いられている。
【0072】
そして、上下のパンチ5,5により加圧しながら焼結することにより、本体部31となる黒鉛-銅複合材料の焼結体9の焼結と、本体部31及び固定部32,32,34の接合とが同時に行われる。焼結が完了したら、ワイヤーソー等により所望の厚さに切断して、熱継手30が完成する。
【0073】
このように、本実施形態に係るヒートシンクの熱分散構造によれば、比較的大型のヒートシンクにおいて、熱源から放熱板に伝わった熱をヒートシンクの上面に広く分散することができる。
【0074】
以上、本発明の実施形態に係るヒートシンクの熱分散構造について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0075】
例えば、放熱板の数、大きさ、形状等は、上記実施形態に限定されるものではない。また、複数の放熱板は、同じ大きさでなくてもよい。また、複数の放熱板は、ヒートシンクの上面にバランスよく配置することが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0076】
また、熱継手の数、長さ、形状等は、上記実施形態に限定されるものではない。また、熱継手により連結する放熱板の選択についても、限定されるものではない。
【符号の説明】
【0077】
1 鱗片状黒鉛粒子
2 層
3 ヒートシンク
4 ネジ
5 パンチ
6 黒鉛型
7 隙間
8 黒鉛-銅複合材料の粉体
9 黒鉛-銅複合材料の焼結体
10 放熱板
11 本体部
12 フレーム部
13 コーナー部
20 放熱板
21 本体部
22 フレーム部
23 コーナー部
30 熱継手
31 本体部
32 固定部
33 切り欠き
34 固定部
35 孔
100 熱分散構造