(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023012606
(43)【公開日】2023-01-26
(54)【発明の名称】排水装置及び排水システム
(51)【国際特許分類】
A01K 63/00 20170101AFI20230119BHJP
A01K 63/04 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
A01K63/00 B
A01K63/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021116122
(22)【出願日】2021-07-14
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】393022746
【氏名又は名称】ジェックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕行
【テーマコード(参考)】
2B104
【Fターム(参考)】
2B104CA03
2B104CB29
2B104EA01
(57)【要約】
【課題】排水のタイミングを制御可能な排水装置及び排水システムを提供すること。
【解決手段】水槽内部に設けられ、サイフォン管20と円筒部30により構成されるサイフォン機構2を有する排水装置であって、一端側に上部が開放された第1開口部21aを有すると共に、他端側が溢水管3に接続される第1接続部24aを有するサイフォン管20と、サイフォン管20よりも大きな内径を有し、サイフォン管20の第1開口部21aが挿入され、下部が開放された第2開口部21bを有する円筒部30と、を有し、第2開口部21bは、第1開口部21aよりも低い位置に設定される排水装置において、円筒部30の上面に、円筒部内部とエアポンプ5あるいは大気とを選択的に接続するための第2接続部30bが設けられていることを特徴とする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水槽内部に設けられ、サイフォン管と円筒部により構成されるサイフォン機構を有する排水装置であって、
一端側に上部が開放された第1開口部を有すると共に、他端側が溢水管に接続される第1接続部を有するサイフォン管と、
前記サイフォン管よりも大きな内径を有し、サイフォン管の前記第1開口部が挿入され、下部が開放された第2開口部を有する前記円筒部と、を有し、前記第2開口部は、第1開口部よりも低い位置に設定される排水装置において、
前記円筒部の上面に、円筒部内部と空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第2接続部が設けられていることを特徴とする排水装置。
【請求項2】
前記サイフォン管は、U字管の形状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の排水装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排水装置と、
前記空気供給部と、
前記空気供給部を第1弁体を介して前記第2接続部に接続する第1流路と、
大気を第2弁体を介して前記第2接続部に接続する第2流路と、
前記空気供給部、前記第1弁体、第2弁体を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする排水システム。
【請求項4】
排水動作を行わない状態では、前記制御部は、第1弁体を開放、第2弁体を閉塞させ、前記空気供給部により前記円筒部内部の前記第2開口部の位置まで空気を流入させることを特徴とする請求項3に記載の排水システム。
【請求項5】
排水動作を行う状態では、前記制御部は、第1弁体を閉塞、第2弁体を開放させ、前記円筒部内部の空気を大気に放出することにより、前記サイフォン機構による排水を行わせることを特徴とする請求項3又は4に記載の排水システム。
【請求項6】
排水動作を行う状態では、前記制御部は、第1弁体を閉塞、第2弁体を開放させ、前記円筒部内部の空気を大気に放出したのち、再度第2弁体を閉塞させ、前記サイフォン機構による排水を行わせることを特徴とする請求項3又は4に記載の排水システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水槽内部に設けられ、内筒と外筒により構成されるサイフォン機構を有する排水装置、及び、この排水装置を備えた排水システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ペットショップなどの店舗では観賞魚等を販売するために水槽が多数配置された什器を設置している。この水槽内には多くの観賞魚生体や水草が貯蔵されており、一般飼育者の水槽環境よりも飼育水の劣化が早くなる。また、生体から排出されるアンモニアを始めとする栄養塩を物理的に取り除くための水替えは健康的に生体を管理するために必要な作業である。
【0003】
このように水槽内の水は時間が経過すると共に汚れてくるために水を排水して新たな水を供給することが必要とされる。水槽内の水を排水するための排水装置として、下記特許文献1に開示されるサイフォン機構を用いた排水装置がある。
【0004】
この排水装置は、内筒と外筒により構成される。内筒は水面に開口しオーバーフローした水の排水を行う。外筒は、内筒の上部との間に隙間を保って挿入され、側面にサイフォン作用停止用の穴が形成される。外筒の上面には空気抜き及び吸気を兼ねた小さな穴が設けられる。内筒が完全に水面下で排水を行うようになったときに、外筒と内筒の間の隙間にサイフォン作用が働く。ただし、上記小さな穴から空気が吸い込まれるが、サイフォン作用が停止しない程度の穴径になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1におけるサイフォン機構は、外筒の上部に小さな穴が形成されているのみであり、排水開始のタイミングを制御することができない。例えば、水槽を管理する者が適切と考える時に排水動作を開始できるようにすることが好ましい。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、排水のタイミングを制御可能な排水装置及び排水システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る排水装置は、
水槽内部に設けられ、サイフォン管と円筒部により構成されるサイフォン機構を有する排水装置であって、
一端側に上部が開放された第1開口部を有すると共に、他端側が溢水管に接続される第1接続部を有するサイフォン管と、
前記サイフォン管よりも大きな内径を有し、サイフォン管の前記第1開口部が挿入され、下部が開放された第2開口部を有する前記円筒部と、を有し、前記第2開口部は、第1開口部よりも低い位置に設定される排水装置において、
前記円筒部の上面に、円筒部内部と空気供給部あるいは大気とを選択的に接続するための第2接続部が設けられていることを特徴とするものである。
【0009】
かかる構成による排水装置の作用・効果を説明する。この構成によると、サイフォン機構は、サイフォン管と円筒部により構成されている。円筒部の内径は、サイフォン管よりも大きくなっており、円筒部とサイフォン管の間に所定の大きさの隙間が形成される。排水を行うときは、水槽内の水は、サイフォン作用により、上記隙間を介して円筒部の中に入り込む。さらにサイフォン管の第1開口部から入り込んだ水は、第1接続部を介して溢水管へと流れ込み排水される。
【0010】
ここで、円筒部の上面には第2接続部が設けられており、空気供給部または大気と選択的に接続される。空気供給部により円筒部の内部に空気を送り込んでいる状態では、サイフォン作用は働かず、水は排出されない。大気と接続されるときは、円筒部内部の空気が大気に放出され、サイフォン作用による排水が行われる。従って、空気供給部を接続するか大気と接続するかの制御を行うことで、排水のタイミングを制御することが可能になる。
【0011】
本発明に係る前記サイフォン管は、U字管の形状に形成されていることが好ましい。これにより、サイフォン管としての管路の長さを確保することができ、溢水管との接続箇所も適切な位置になるように設けることができる。
【0012】
本発明に係る排水システムは、本発明に係る排水装置と、前記空気供給部と、
前記空気供給部を第1弁体を介して前記第2接続部に接続する第1流路と、
大気を第2弁体を介して前記第2接続部に接続する第2流路と、
前記空気供給部、前記第1弁体、第2弁体を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする。
【0013】
かかる構成による排水システムの作用・効果は以下の通りである。排水装置を構成するサイフォン機構による排水動作を制御するために、空気供給部、第1弁体、第2弁体が設けられ、制御部により制御される。これらの要素を制御することで、サイフォン機構の円筒部の内部に空気を送り込んだり、円筒部内部の空気を排出したりすることができる。これにより、排水のタイミングを制御することが可能になる。
【0014】
本発明において、排水動作を行わない状態では、前記制御部は、第1弁体を開放、第2弁体を閉塞させ、前記空気供給部により前記円筒部内部の前記第2開口部の位置まで空気を流入させることが好ましい。
【0015】
円筒部内部の第2開口部の位置まで空気を流入させているので、円筒部とサイフォン管の間の隙間に水が入り込むことはない。従って、サイフォン作用が行われず、水は排出されない。
【0016】
本発明において、排水動作を行う状態では、前記制御部は、第1弁体を閉塞、第2弁体を開放させ、前記円筒部内部の空気を大気に放出することにより、前記サイフォン機構による排水を行わせることが好ましい。
【0017】
円筒部内部の空気を大気に放出することで、円筒部とサイフォン管の間の隙間に水が入り込み、サイフォン作用が開始される。これにより、水槽内の水がサイフォン管の中に入り、溢水管へと流れ込む。水槽内の水面がサイフォン管の第1開口部の高さまで低下した時点で排水動作が終了する。
【0018】
本発明において、排水動作を行う状態では、前記制御部は、第1弁体を閉塞、第2弁体を開放させ、前記円筒部内部の空気を大気に放出したのち、再度第2弁体を閉塞させ、前記サイフォン機構による排水を行わせることが好ましい。
【0019】
これにより、円筒部内全体と第1開口部は、水が繋がった連通状態となる。その結果、水槽内の水がサイフォン管の中に入り、溢水管へと流れ込む。水槽内の水面が円筒部の第2開口部の高さまで低下した時点で排水動作が終了する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】本実施形態に係る排水システム(什器)の構成を示す模式図
【
図4】
図3の什器に用いられる給水系の第1実施形態を示す模式図
【
図5】
図3の什器に用いられる給水系の第2実施形態を示す模式図
【
図8A】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図8B】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図8C】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図8D】第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図9A】第2排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図9B】第2排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図
【
図10】別実施形態に係るサイフォン機構を示す模式的な斜視図
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、サイフォン機構を用いない従来技術に係る排水装置の構成を示す模式図である。水槽1の内部に溢水管100と仕切板101(破線で示す)を備えている。溢水管100は上端に開口部100aが設けられており、上端を超えて水を入れようとしてもオーバーフローして溢水管101の内部に流れ込むようになっている。
【0022】
仕切板101は、平面視でL字形をしており、水槽1の角部を取り囲んで観賞魚が溢水管100の周囲に近づかないようにしている。これにより、排水時に観賞魚が巻き込まれないようにしている。また、仕切板101の上部と下部には複数のスリット101aが形成されており、水槽内の水が通過できるようにしている。
【0023】
水槽1の水替えのために排水を行うときは、手動で溢水管100を持ち上げる。これにより、水槽1の底面から排水が行われる。図示はしないが、溢水管100の下部には、溢水管100よりも大径の接続管が着脱可能に取り付けられており、溢水管100を持ち上げることで、水槽内の水が接続管を介して排水されるように構成されている。
【0024】
<サイフォン機構の構成>
図2は、本実施形態に係る排水装置の構成を示す模式図である。仕切板101の構成は、
図1で説明したものと同じである。排水装置は、サイフォン機構2を備えている。サイフォン機構2は、サイフォン管20と円筒部30により構成されている。サイフォン管20は、溢水管3に接続されている。
図6は、サイフォン機構2のみを示す模式的な斜視図である。
図7は、
図6に示すサイフォン機構2の平面図である。
【0025】
サイフォン管20は、全体としてU字管の形状を呈している。サイフォン管20は、第1垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23、接続管部24により構成される。なお、サイフォン管20をどのような形状に構成するか、いくつの管部で構成するかは、適宜選択することができる。第1垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23、接続管部24は、ガラスや樹脂等の適宜の素材で形成され、また、管同士の接続は、詰まり等の清掃ができるよう、
図6の第一垂直管部21、U字管部22、第2垂直管部23は取り外し可能な構造が好ましい。
【0026】
第1垂直管部21は上端が開放された第1開口部21aを有する。U字管部22は、開放された2カ所の上端部が、第1垂直管部21の下端部と、第2垂直管部23の下端部に連結される。第2垂直管部23は、下端部がU字管部22の上端部の1つに連結され、上端部が接続管部24の下端部に連結される。接続管部24は、逆L字形を呈しており、下端部は第2垂直管部23の上端部に連結され、水平方向向きの端部(第1接続部24a)は溢水管3の中央部近傍に接続される。溢水管3は、垂直に設置されており、上端には開放された開口部3aが形成され、下端にも開放された開口部3bが形成される。溢水管3の上端を超えて水を入れようとしてもオーバーフローして溢水管3の内部に流れ込むようになっている。すなわち、溢水管3は円筒形を呈している。また、生体入荷時に水温や水質合わせを行うため、所定時間水槽1に生体袋を浮かせることがある。その際、溢水管3を設けることで、水槽1より水が溢れることを防止している。生体入荷時は溢水管3から水が排水され、且つ特許文献1の構造のようにサイフォン作用が開始することはない。すなわち、生体入荷時に意図しないサイフォン管による排水が開始されることがない。
【0027】
円筒部30は、サイフォン管20の第1垂直管部21の第1開口部21aが挿入されるように、下端に第2開口部30aが形成される。円筒部30の内径は第1垂直管部21の外径よりも大きくなるように設定されている。これにより、円筒部30とサイフォン管20との間に隙間Sが形成される。また、第2開口部30aは、第1開口部21aよりも低い位置になるように設定される。
【0028】
円筒部30の上部は半球状に形成されて閉塞されているが、中央部に第2接続部30bが設けられている。詳細は後述するが、この第2接続部30bを介して空気の流入や排出が行われる。
【0029】
<排水システムの構成>
次に本発明に係る排水システムの構成を説明する。
図3は、生体什器に設けられる排水システムの概要を示す模式図である。説明の便宜上、排水システムに関係のない要素は省略している。
図4は、什器に用いられる給水系の第1実施形態の構成を示す模式図である。説明の便宜上、他の要素は省略している。
図5は、什器に用いられる給水系の第2実施形態の構成を示す模式図である。説明の便宜上、他の要素は省略している。本発明として、いずれの実施形態を採用してもよい。
【0030】
図3に示すように、店舗等に設置される什器は、不図示の陳列棚に多数の水槽1が配置されている。本実施形態では、各段に4つの水槽1が設置されており、合計3段(上段、中段、下段)の陳列棚に合計12個の水槽1が設置されているが、水槽1の配置態様は、これに限定されるものではなく、種々の配置態様を実施することができる。各水槽1には、
図2で説明した排水装置が設けられている。
【0031】
各段の水槽1の上部には、空気流入排出管40が水平状態に設けられており、垂直に配置された空気供給管45を介してエアポンプ5(空気供給部に相当)からの空気が送り込まれる。空気流入排出管40と空気供給管45は、継手46により連結されている。空気流入排出管40には、第1弁体41と第2弁体42が設けられている。排水装置に空気を送り込むときは、第1弁体41を開放することで、エアポンプ5からの空気が排水装置に流入する。第2弁体42の外側(図の左側)は大気に開放されており、第2弁体42を開放することで、排水装置内の空気を大気に開放することができる。
【0032】
空気流入排出管40と第2接続部30bとは、一方コック43と垂直管44を介して接続されている。エアポンプ5、第1弁体41、第2弁体42を制御することで、サイフォン機構2の第2接続部30bは、エアポンプ5または大気と選択的に接続することができる。例えば、第1弁体41を開放して、第2弁体42を閉塞することで、エアポンプ5から空気をサイフォン機構2の円筒部30内へ送り込むことができる。また、第1弁体41を閉塞して第2弁体42を開放することで、円筒部30内部の空気を大気へ逃がすことができる。垂直管44として、例えば、柔軟性を有するエアチューブを用いることができる。
【0033】
エアポンプ5から第1弁体41を通り第2接続部30bまでの流路が第1流路に相当し、大気に通じる第2弁体42から第2接続部30bまでの流路が第2流路に相当する。
【0034】
なお、各水槽1には空気(酸素)を常時供給する必要があるが、これも上記エアポンプ5により行われる。エアポンプ5からの配管を分岐させて、サイフォン機構への空気供給と水槽内への空気供給を行うことができる。あるいは、エアポンプ5は1つであるが、別々の独立した配管構成にしてもよいし、別々のエアポンプを用いてもよい。
【0035】
図3に示すように、溢水管3の中に流れ込んだ水は、溢水管3の下端にある開口部3bから落下する。矢印8で示すように、落下した水は、ちょうど真下にある溢水管3の開口部3aに入り込む。そのために、上段の溢水管3の開口部3bと中段の溢水管3の開口部3aをつなぐための流路として不図示のアタッチメントが設けられる。このアタッチメントは着脱可能である。なお、アタッチメントにより開口部3aからの水の流入が妨げられないように径の大きさが設定されている。
【0036】
中段の溢水管3から下段の溢水管3へと水が落下する場合も同様なアタッチメントが設けられる。下段の溢水管3から落下する水については、
図4及び
図5により説明する。なお、溢水管3から排出される水の流路構成については、上記に限定されるものではなく、他の実施形態を採用することができる。例えば、水平に配置された排水管に集水することができるように構成してもよい。
【0037】
<単独ろ過方式>
図4は、単独濾過方式の給水系の構成を示す。
図3で説明した排水システムが用いられているが説明の便宜上、図示は省略する。水槽1の水は汚染してくるので水をろ過する機構は必要であるが、単独濾過方式では個々の水槽1に濾過装置が用いられている。なお、ろ過装置は周知のものを使用でき、図示及び説明は省略する。
【0038】
什器の上部には貯水槽6が配置される。貯水槽6から各水槽1へ水(飼育水)が供給される。貯水槽6内にはフロート弁6aが設けられており、満水になると弁体66を閉鎖するように動作する。貯水槽6には、弁体66と手動バルブ67が設けられており、通常は弁体66を介して上流側から水道水が供給される。故障等で弁体66が使用できないときは、手動バルブ67を操作して水を供給できるようにする。
【0039】
什器の各段の上部には第1水平配管61(3カ所)と第2水平配管60(1カ所)が配置される。第1水平配管61及び第2水平配管60は、左右で垂直配管62(2カ所)と接続される。第1水平配管61の左右両側には弁体63と手動バルブ64が設けられている。各水槽1には給水バルブ65が設けられている。通常は、弁体63を開放することで、貯水槽6から各水槽1へ水が供給される。故障等で弁体63が使用できないときは、手動バルブ64を操作して水を供給できるようにする。弁体65,66は制御部により開放及び閉塞が制御される。
【0040】
下段にある水槽1の溢水管3から落下した水は、水平に配置された排水管80により集水されて回収管68により、不図示の排水経路に送られる。回収管68にはセンサーが設けられており、通過する水量の検出を行う。回収管68は斜めカット68aが形成されており、水量を検出しやすいようにしている。
【0041】
<集中ろ過方式>
図5は、集中ろ過方式の給水系の構成を示す。
図3で説明した排水システムが用いられているが説明の便宜上、図示は省略する。什器の上部に配置される貯水槽に関連した構成は
図3と同じである。什器の下部にろ過水槽7が配置されており、このろ過水槽7でろ過された水が各水槽1に供給される。従って、各水槽1にはろ過装置は設けられていない。
【0042】
ろ過水槽7にはフロート弁7aが設けられ、満水になると弁体76を閉塞する。貯水槽6とろ過水槽7は垂直配管70により接続される。弁体76が設けられ、弁体76を開放することで水がろ過水槽7に供給される。故障等で弁体76が使用できないときは、手動バルブ77を操作して水を供給できるようにする。
図5に示す各弁体は制御部により制御される。
【0043】
ろ過水槽7から各水槽1への給水は、水平配管73と垂直配管72により行われる。弁体75を開放することで、給水ポンプ71により各水槽1に水が供給される。各水槽1には給水バルブ74が設けられており、水が水槽内へ供給される。各水槽1において排水装置により排水された水は、各水槽1に設けられた溢水管3を介して、再びろ過水槽7へ送り込まれ、ろ過された状態で再び各水槽1へ供給される。このように水はろ過されながら循環して使用される。なお水が循環する場合は、排水装置の溢水管3からオーバーフローした水がろ過水槽7へ戻るようになっている。上段から中段、中段から下段への水の移動は、前述のように不図示のアタッチメントにより矢印8に沿って行われる。
【0044】
また、下段の水槽1の溢水管3から落下した水は、水平方向の配管80により集水され、垂直方向の配管81によりろ過水槽7へ戻される。ろ過水槽7に戻された水は、ろ過された後、再び、給水ポンプ71により各水槽1へ送られる。
【0045】
サイフォン機構2による水の排出を行うときは、垂直配管72の弁体75は閉塞される。この場合、弁体72を開放させて給水ポンプ71により送り出される水は、弁体72を介してろ過水槽7に戻されるようにしている。弁体72は、通常の使用状態では閉塞させている。
【0046】
ろ過水槽7には、排出口78が設けられている。各水槽1のサイフォン機構2により水の排出を行う場合、多くの排水がろ過水槽7に流れ込むことになるので、オーバーフローした水は排出口78から排出されるようにしている。
【0047】
<排水作用>
次に、
図2、
図3、
図6で説明した排水装置及び排水システムの作用について説明する。本実施形態では、水替えのため水槽1の水を排出する場合、その排水量を2段階に設定することができる。
【0048】
図8A~
図8Dは、第1排水レベルにおけるサイフォン機構の作用を説明する図である。サイフォン機構を動作させない(水替えによる排水をさせない)状態では、
図3における第1弁体41を開放し、第2弁体42を閉塞する。そして、エアポンプ5により各水槽1のサイフォン機構2に空気が送り込まれる。
図8Aに示すように、円筒部30の開口部30aの位置まで空気が入り込んでいる。空気が入り込んでいる領域を斜めの破線で示している。隙間Sには空気が入り込んでおり、サイフォン機構2によるサイフォン作用は行われない。この状態では水面W1は溢水管3の上端の開口部3aに位置している。エアポンプ5、第1弁体41、第2弁体42に対する制御は、コンピュータを中核とする制御部により行われる。
【0049】
円筒部30の内部は空気の圧力が一定にかかる状態にするため、サイフォン管はU字形に形成して、溢水管3の中央部で溢水管3と接続するようにしている。これにより、U字管部22を含めたU字形の部分に水を常時蓄えている状態になり、安定した状態で空気圧を掛けておくことができる。
【0050】
サイフォン機構2を作動させるときは、第1弁体41を閉塞し、第2弁体42を開放する。これにより、円筒部30の第2接続部30bは大気に接続され、円筒部30内の空気が押し出されていく。これにより、水槽1の水は
図8B及び
図8Dの矢印で示すように、隙間Sから円筒部30内に入り込み、サイフォン作用が開始する。隙間Sに入り込んだ水は、さらにサイフォン管20内に入り込み、溢水管3内へと移動する。これにより、水面W1は徐々に低下していき、排水作用が進行する。
【0051】
図8Cに示すように、水面W2がサイフォン管20の第1開口部21aの高さまで低下したときにサイフォン作用は終了し排水動作が完了する。なお、第2接続部30bは大気に開放されたままであるので空気は第1開口部21aの位置まで存在する。
【0052】
図9A,
図9Bは、第2排水レベルにおけるサイフォン機構2の作用を説明する図である。サイフォン機構2を動作させない状態は、前述の通りである。
【0053】
サイフォン機構2を作用させるときは、まず、第1弁体41を閉塞し、第2弁体42を開放する。ここまでは
図8で説明したのと同じである。円筒部30内の空気が大気に開放され、円筒部30内に隙間Sを介して水が入り込んでくる。これにより、水面W2は徐々に低下する。そして、円筒部30内に水が満たされた状態になると、第2弁体42を開放から閉塞へと切り替える。
【0054】
第2弁体42を開放から閉塞へと切り替えるタイミングは、例えば、タイマーにより制御することができる。
図9Bに示すように、水面W3が円筒部30の下端の第2開口部30aの位置にまで低下すると、第2開口部30aから円筒部30内に空気が入り込むため、サイフォン作用による排水作用は終了する。
【0055】
以上の通り、2段階のレベルで排水を行うことができる。いずれのレベルの水位で排水させるかについては、作業者が選択することができる。排水作業の開始については、水槽内の水の汚染度などを確認して、排水を開始することができる。排水の開始は、操作盤に物理的なスイッチを設けることで行うことができる。あるいは、タッチパネルによる操作やWi-Fi等の無線で接続された端末により操作を可能にしてもよい。
【0056】
また、排水を行う場合、すべての水槽1に対して同時に行う必要はなく、例えば、上段の水槽のみ、中段の水槽のみ、下段の水槽のみ、上段と中段というように、各段ごとに第1弁体41及び第2弁体42を制御できるようにしてもよい。
【0057】
また、水替えのための排水作業は、タイマー機能を用いて、定期的に自動的に行われるようにしてもよい。また、排水を開始する時間帯も予め設定しておき、その時間が来たら自動的に開始するようにしてもよい。各段ごとに設定を変えることもできる。どのような排水を行わせるかは、予め、コンピュータプログラムを作成して行うようにしてもよい。
【0058】
<給水作用>
次に、排水動作が終わった後の給水動作を説明する。給水動作の開始は、作業者による操作スイッチに基づいて行ってもよいし、排水動作が開始してから所定時間後に排水動作が完了したものとみなし、給水動作を自動的に開始するようにしてもよい。
【0059】
給水動作の終了は、例えば、
図4に示す回収管68に設けられたセンサーに基づいて終了を検出することができる。すなわち、水槽1への給水が継続すると、オーバーフローした水が溢水管3の開口部3aから入り込むため、その水量を検出することで給水終了を検出することができる。その他、給水開始からの時間により終了を検知する方法や、各水槽1にフロート弁を設けることでも給水を停止することができる。
【0060】
各水槽1への給水が終了すると、貯水槽6への水道水の給水が行われる。満水状態になると、フロート弁6aにより、弁体66を閉塞させる。
【0061】
<別実施形態>
予期しないトラブルによる停電等により、空気流入排出管40からエアポンプ5に空気が逆流しないように逆流防止弁をエアポンプ5の前や第1弁体41の前に設けておくことが好ましい。
【0062】
本実施形態では、段ごとに水槽1の排出動作が制御されるが、特定の水槽1の水替えができないようにすることも可能である。そのため水槽ごとに一方コック43を閉鎖できるようにすることで、円筒部30内の空気圧を保持したまま排水を停止させることができる。また、排水を行わない水槽1については給水バルブ65も閉鎖して給水がされないようにする。一方コック43を閉鎖は、手動で行うようにしてもよいし、制御部により自動制御できるようにしてもよい。
【0063】
また、上記とは逆に特定の水槽1のみ水替えを行うことも可能である。例えば、手作業により水替えを行う場合は、次のような手順で行う。まず、一方コック43を閉鎖する。溢水管3と一体結合されたサイフォン管20は、水槽1に対して着脱自在に構成されており、これを引き抜くことで排水を行うことができる。一方コック43を閉鎖しているので、他の水槽1が不用意に排水を開始することはない。排水作業の終了したのち、給水を行う必要があるが、その場合、水替えを行わない水槽1については給水バルブを閉鎖しておき、貯水槽にバイパスされた手動バルブを開放することで、バイパス経由で特定の水槽に給水を行うことができる。ただし、意図しない排水動作が開始することがありうる。そのため、エアポンプ5と第1弁体41に隣接して逆流防止弁を設けておくことが好ましい。
【0064】
図10は別実施形態に係るサイフォン機構を示す図である。
図6に示す実施形態と同じ機能をする部材には同じ符号を付している。U字管部22の一部が溢水管3に入り込んでおり、その途中に第1接続部22aが設けられている。第2垂直管部23は溢水管3の中に挿入されており、その上端の開口部23aが溢水管3に臨んでいる。
【0065】
本実施形態では、空気供給部としてエアポンプを例に挙げているが、これに限定されるものではなく、他のアクチュエータ等を用いてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 水槽
2 サイフォン機構
20 サイフォン管
21 第1垂直管部
21a 第1開口部
22 U字管部
23 第2垂直管部
24 接続管部
24a 第1接続部
3 溢水管
3a 開口部
3b 開口部
30 円筒部
30a 第2開口部
30b 第2接続部
40 空気流入排出管
41 第1弁体
42 第2弁体
43 一方コック
44 垂直管
45 空気供給管
5 エアポンプ
6 貯水槽
7 ろ過水槽7
S 隙間
【手続補正書】
【提出日】2022-03-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
請求項1又は2に記載の排水装置と、
前記空気供給部と、
前記空気供給部を第1弁体を介して前記第2接続部に接続する第1流路と、
大気を第2弁体を介して前記第2接続部に接続する第2流路と、
前記第1弁体、第2弁体を制御する制御部と、を備えたことを特徴とする排水システム。