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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126085
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】鉄源の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21B 13/00 20060101AFI20230831BHJP
   C22B 1/02 20060101ALI20230831BHJP
   C22B 5/12 20060101ALI20230831BHJP
   C21C 7/064 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
C21B13/00
C22B1/02
C22B5/12
C21C7/064 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022134387
(22)【出願日】2022-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2022030105
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2019年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構戦略的省エネルギー技術革新プログラムテーマ設定型事業者連携スキーム、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100136777
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 純子
(72)【発明者】
【氏名】足立 毅郎
(72)【発明者】
【氏名】山崎 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】武田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】對馬 卓
【テーマコード(参考)】
4K001
4K012
4K013
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001CA01
4K001CA02
4K001CA04
4K001CA15
4K001GA07
4K001GA10
4K001GA13
4K001GA19
4K001HA09
4K001KA01
4K001KA02
4K001KA06
4K001KA10
4K001KA13
4K012DA02
4K012DA05
4K012DA08
4K012DA09
4K013BA03
4K013CA05
4K013CB09
4K013EA03
4K013EA04
4K013EA12
4K013EA13
(57)【要約】
【課題】鉄鉱石中に存在するリンが鉄と結合している場合であっても、リンを十分に除去できる、鉄源の製造方法を提供する。
【解決手段】リンを含有する鉄鉱石とフラックスを含む原料を混合して、焙焼用混合物を準備する準備工程と、前記焙焼用混合物を焙焼して焙焼物を得る焙焼工程と、前記焙焼物を、COガスと水素ガスの少なくとも1つを含む雰囲気で還元して、還元鉄相とスラグ相を含む還元物を得る還元工程と、前記還元物を粉砕して、還元物を構成するスラグ相の少なくとも一部が分離した還元鉄相含有物を含む粉砕物を得る粉砕工程と、前記粉砕物から前記還元鉄相含有物を選別回収する選別回収工程と、を含み、前記焙焼による鉄の還元率は10%以下であり、前記フラックスとして規定する化合物を含む、鉄源の製造方法である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンを含有する鉄鉱石とフラックスを含む原料を混合して、焙焼用混合物を準備する準備工程と、
前記焙焼用混合物を焙焼して焙焼物を得る焙焼工程と、
前記焙焼物を、COガスと水素ガスの少なくとも1つを含む雰囲気で還元して、還元鉄相とスラグ相を含む還元物を得る還元工程と、
前記還元物を粉砕して、還元物を構成するスラグ相の少なくとも一部が分離した還元鉄相含有物を含む粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物から前記還元鉄相含有物を選別回収する選別回収工程と、を含み、
前記焙焼による鉄の還元率は10%以下であり、
前記フラックスは、アルカリ金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物、ならびにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物よりなる群から選択される1以上を含む、鉄源の製造方法。
【請求項2】
前記フラックスはCaO、CaCOおよびCa(OH)よりなる群から選択される1以上である、請求項1に記載の鉄源の製造方法。
【請求項3】
前記選別回収工程で、選別回収する方法として磁力選別を行う、請求項1または2に記載の鉄源の製造方法。
【請求項4】
前記還元工程の雰囲気温度を850℃以下とする、請求項1または2に記載の鉄源の製造方法。
【請求項5】
前記準備工程で、前記焙焼用混合物の塩基度CaO/SiOが1.0~5.0の範囲となるように、前記鉄鉱石とフラックスを混合する、請求項1または2に記載の鉄源の製造方法。
【請求項6】
前記還元工程後の鉄の還元率は50%以上である、請求項1または2に記載の鉄源の製造方法。
【請求項7】
前記粉砕工程で、ケージミルを用いて前記還元物を粉砕する、請求項1または2に記載の鉄源の製造方法。
【請求項8】
前記還元工程後の鉄の還元率は50%以上である、請求項4に記載の鉄源の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄源の製造方法に関する。特には、原料の鉄鉱石よりもリン量の抑えられた鉄源の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、良質鉄源の枯渇に伴い、鉄鋼製品の原料として、脈石等の不純物の少ない鉄鉱石を入手することは困難となりつつあり、鉄鉱石の不純物は今後上昇することが見込まれる。脈石を多く含む低品位の鉄鉱石を、直接製鉄法に供するための高品位の鉄鉱石に改質するための事前処理方法として、例えば特許文献1には、還元炉内に投入される鉄鉱石を、炭化水素を含む燃料から発生する還元ガスで還元し銑鉄製造工程を経ずに直接に製鉄原料を得る直接製鉄法において、前記還元炉から排出される高温の炉ガスを還元焙焼炉に導入しこの炉ガス内に残存する還元成分で貯鉱場から供給されるヘマタイト鉱石を還元焙焼してマグネタイト鉱石にする工程と、このマグネタイト鉱石を磁力選別に適する粒径にまで粉砕し磁力選別機で磁力選別する工程と、磁力選別で得られたマグネタイト精鉱を塊状化して焼成しペレットにしてから前記還元炉に供給する工程とから成る方法が記載されている。
【0003】
鉄鉱石の品位を低下させる成分として特にリンが挙げられる。既存の高炉-転炉法では、鉄鉱石中のリンは高炉でほぼ全量が溶銑に移行し、その後の溶銑予備処理工程と転炉工程での除去が一般的である。しかし原料である鉄鉱石中のリン量が増加すると、これらの工程でのリン除去のコストが増加し、生産性が低下する。よって、製鉄に供する鉄鉱石のリン除去技術の開発が望まれている。
【0004】
例えば特許文献2には、湿式処理により鉄鉱石のリンを除去する方法が示されている。詳細には、燐分の高い鉄鉱石を0.5mm以下に粉砕しこれに水を加えてパルプ濃度35%前後とし、溶剤にHSO又はHCIを添加しpH2.0以下で反応させ含有している燐鉱物(主として燐灰石)を分解溶出させ、次いで磁力選別により磁鉄鉱等の磁着物を採取し非磁着物たるSiO、又はAl等をスライムとして沈降分離すると共に液中に溶出したPは消石灰又は生石灰を添加しpH5.0~10.0の範囲中で中和し燐酸カルシウムとして分離回収することを特徴とするP含有鉄鉱石の処理方法が記載されている。しかし特許文献2による方法では、湿式処理であるが故に、生産性を確保することが難しいという問題がある。
【0005】
一方、乾式プロセスにより、鉄鉱石中のリンを除去する方法も提案されている。例えば、非特許文献1には、鉄鉱石中のPをダイカルシウムシリケート(CS)相に濃化することで、分離するプロセスが提案されている。詳細には、鉄鉱石の塩基度および炭材の配合比を調整、特に前記塩基度について、粉鉱石に含まれるSiOを基準に、塩基度(C/S)が2.0になる量のCaOを添加し、高温で加熱することで、溶融スラグ中にダイカルシウムシリケート相(2CaO-SiO,CS)が固相として共存し,リン酸カルシウム相(3CaO-P,CP)との固溶体(CS-CP固溶体)としてPが濃化することが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭53-103915号公報
【特許文献2】特開昭60-261501号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】丸岡 伸洋ら,「部分還元処理による鉄鉱石中りんのダイカルシウムシリケート相への濃化」,鉄と鋼,Vol.107(2021),No.6,pp.527-533
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の方法ではリンが鉄以外の元素等と結びついている場合は有効であるが、リンが鉄と結びついている場合は除去し得ないという問題がある。また非特許文献1の方法では、炭材の使用等により酸素分圧の調整が困難となり、それ故に鉄相にリンが混入しやすく、リンの除去が困難となりうること、また炭材の使用に起因して、硫黄分の混入、温室効果ガスの排出といった問題が挙げられる。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、その目的は、鉄鉱石中に存在するリンが鉄と結合している場合であっても、リンを十分に除去できる、製鉄等に供する鉄源の製造方法を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の態様1は、
リンを含有する鉄鉱石とフラックスを含む原料を混合して、焙焼用混合物を準備する準備工程と、
前記焙焼用混合物を焙焼して焙焼物を得る焙焼工程と、
前記焙焼物を、COガスと水素ガスの少なくとも1つを含む雰囲気で還元して、還元鉄相とスラグ相を含む還元物を得る還元工程と、
前記還元物を粉砕して、還元物を構成するスラグ相の少なくとも一部が分離した還元鉄相含有物を含む粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物から前記還元鉄相含有物を選別回収する選別回収工程と、を含み、
前記焙焼による鉄の還元率は10%以下であり、
前記フラックスは、アルカリ金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物、ならびにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物よりなる群から選択される1以上を含む、鉄源の製造方法である。
【0011】
本発明の態様2は、
前記フラックスはCaO、CaCOおよびCa(OH)よりなる群から選択される1以上である、態様1に記載の鉄源の製造方法である。
【0012】
本発明の態様3は、
前記選別回収工程で、選別回収する方法として磁力選別を行う、態様1または2に記載の鉄源の製造方法である。
【0013】
本発明の態様4は、
前記還元工程の雰囲気温度を850℃以下とする、態様1~3のいずれかに記載の鉄源の製造方法である。
【0014】
本発明の態様5は、
前記準備工程で、前記焙焼用混合物の塩基度CaO/SiOが1.0~5.0の範囲となるように、前記鉄鉱石とフラックスを混合する、態様1~4のいずれかに記載の鉄源の製造方法である。
【0015】
本発明の態様6は、
前記還元工程後の鉄の還元率は50%以上である、請求項1~5のいずれかに記載の鉄源の製造方法である。
【0016】
本発明の態様7は、
前記粉砕工程で、ケージミルを用いて前記還元物を粉砕する、請求項1~6のいずれかに記載の鉄源の製造方法である。
【0017】
本発明の態様8は、
前記還元工程後の鉄の還元率は50%以上である、請求項1~7のいずれかに記載の鉄源の製造方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、鉄鉱石中に存在するリンが鉄と結合している場合であっても、リンを十分に除去できる、製鉄等に供する鉄源の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本実施形態の工程を模式的に示したイメージ図である。
図2図2は、実施例2の粉砕後のサンプルの走査型電子顕微鏡像である。
図3図3は、前記図2の符号1、2の分析点のEDX分析値を示す図である。
図4図4は、実施例におけるサンプルのX線吸収端スペクトルを示す図である。
図5図5は、実施例における各還元温度とリン除去率の関係を示すグラフである。
図6図6は、実施例における還元工程後の鉄の還元率とリン除去率の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る鉄源の製造方法は、
リンを含有する鉄鉱石とフラックスを含む原料を混合して、焙焼用混合物を準備する準備工程と、
前記焙焼用混合物を焙焼して焙焼物を得る焙焼工程と、
前記焙焼物を、COガスと水素ガスの少なくとも1つを含む雰囲気で還元して、還元鉄相とスラグ相を含む還元物を得る還元工程と、
前記還元物を粉砕して、還元物を構成するスラグ相の少なくとも一部が分離した還元鉄相含有物を含む粉砕物を得る粉砕工程と、
前記粉砕物から前記還元鉄相含有物を選別回収する選別回収工程と、を含み、
前記焙焼による鉄の還元率は10%以下であり、
前記フラックスは、アルカリ金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物、ならびにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物よりなる群から選択される1以上を含む。
【0021】
本実施形態の製造方法によれば、フラックスと鉄鉱石を含む焙焼用混合物の酸化焙焼を行う焙焼工程と、COガスと水素ガスの少なくとも1つを含む雰囲気に制御して還元を行う還元工程とを分けている。その結果、鉄鉱石中の鉄と結びついたリンを、フラックスの焙焼(酸化焙焼)により形成されたスラグ相(鉄以外の成分、不純物相)側に移行させてスラグ成分と結合させ、かつ上記還元工程を経ることで、リンをスラグ成分に固定したまま酸化鉄の還元が行われ、リンと鉄相との化学的な分離を実現でき、その後の粉砕と選別回収により、鉄源として還元鉄相含有物が得られることを見出した。本実施形態では、後述する実施例でのリンの化学結合状態の評価の通り、リンとスラグ成分が結合し、具体的に例えば、リンと酸化カルシウムの複合酸化物(該複合酸化物は、Caに近い結合状態であると考えられる)として、リンが捕捉されることで、鉄鉱石中のリンを十分に除去できると考えられる。
【0022】
以下、本実施形態に係る製造方法の各工程について詳述する。図1は、本実施形態に係る製造方法の各工程を模式的に示したイメージ図である。以下の各工程の説明では、図1に基づいて説明する場合があるが、図1は、あくまでもイメージ図であって本発明を限定するものではない。例えば、焙焼によりリンがスラグ相側に完全に移行しない場合や、粉砕により、スラグ相と還元鉄相とが完全に分離せず、還元鉄相にスラグ相の一部が結合したままの場合がありうるが、この様な態様は当然に許容され、本実施形態に係る製造方法はこれらの態様についても含みうる。
【0023】
[準備工程]
リンを含有する鉄鉱石とフラックスを含む原料を混合して、焙焼用混合物を準備する。これらの混合により、図1のAに示す通り、鉄鉱石11とフラックス12の焙焼用混合物が得られる。
【0024】
前記フラックスは、アルカリ金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物、ならびにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物よりなる群から選択される1以上を含む。これらアルカリ土類金属の酸化物等は、リンと結びつきやすい化合物である。アルカリ金属の上記化合物として、NaO、KO、LiCO、NaCO、KCO、NaOH、KOHなどが挙げられる。また、アルカリ土類金属の上記化合物として、CaO(生石灰)、CaCO(石灰石)およびCa(OH)(消石灰)などが挙げられる。前記フラックスはCaO、CaCOおよびCa(OH)よりなる群から選択される1以上であることが好ましい。CaO、CaCOおよびCa(OH)はリンと結合しやすく、工業的に利用し易いため好ましい。また、鉄鉱石中のSiOを併せて利用することで、先述のリンと酸化カルシウムの複合酸化物を容易に形成でき、リンを容易に固定することができる。より好ましくは、工業的に汎用されているCaCOである。フラックスは、上述したアルカリ金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物、ならびにアルカリ土類金属の酸化物、炭酸塩、水酸化物、および水和物よりなる群から選択される1以上と、それ以外のフラックスとの混合物であってもよい。それ以外のフラックスとして、例えばソーダ系フラックス、CaF、CaCl、LiCO系フラックス、BaCO系フラックスなどが挙げられる。フラックスのサイズは、一般的に工業で使用されるサイズであればよい。
【0025】
前記リンを含有する鉄鉱石は、リンを例えば0.05質量%以上含みうる。本実施形態によれば、鉄鉱石中のリン量が更には0.10質量%以上、より更には0.15質量%以上と多い場合であってもリンを十分低減できる。前記鉄鉱石は、フラックスと混合前に、粉砕、分級する等して、サイズの均一化を図ってもよい。
【0026】
前記焙焼用混合物の塩基度CaO/SiOが1.0~5.0の範囲となるように、前記鉄鉱石とフラックスを混合することが好ましい。例えば、鉄鉱石に含まれるSiO量に応じて、フラックスとして、好ましくはCaO、CaCOおよびCa(OH)よりなる群から選択される1以上、より好ましくはCaOとCaCOのうちの1以上を、上記塩基度の範囲内となるように混合することが挙げられる。または、鉄鉱石に含まれるSiO量に応じて、フラックスとして、好ましくはCaO、CaCOおよびCa(OH)よりなる群から選択される1以上、より好ましくはCaOとCaCOのうちの1以上と、それ以外の上述したフラックスとを、上記塩基度の範囲内となるように混合することが挙げられる。焙焼用混合物の塩基度を上記範囲とすることで、Caに近いリンと酸化カルシウムの複合酸化物を容易に形成できる。CaO/SiOはより好ましくは3.0以下である。上記塩基度CaO/SiOを計算する場合、CaO以外のCa含有化合物はCaOに換算して求める。フラックスに含まれる、例えばCaO以外のCaCOやCa(OH)などのCa含有化合物も加熱により分解してCaOとなるためである。
【0027】
上記鉄鉱石とフラックスは、工業的に用いられている方法で混合すればよい。必要に応じて、上記鉄鉱石とフラックスに更に例えば水等の媒体を加え、焙焼用混合物として造粒物を形成してもよい。
【0028】
[焙焼工程]
焙焼工程では、前記焙焼用混合物を焙焼して、図1のBに示す焙焼物を得る。図1のAからBへの矢印aで表される焙焼工程で、鉄分と結びついたリンを含む鉄鉱石11をフラックス12とともに焙焼(酸化焙焼)することによって、リンの移行15、詳細には鉄鉱石11中のリンが、フラックスの焙焼により形成されたスラグ相(鉄分以外の成分を主成分とする不純物相、以下「焙焼スラグ相」という)14へ移行し、焙焼スラグ相14と結合すると考えられる。該作用効果を発揮させるには、焙焼の温度を、混合物の少なくとも一部が溶融しうる1150℃以上とすることが好ましい。前記温度は更には1200℃以上であってもよい。焙焼の温度の上限は、リンを鉄鉱石からスラグ相側に移行させる観点からは特に限定されない。例えば設備の劣化抑制等の観点から、温度の上限を1500℃程度としてもよい。なお、上記焙焼の温度とは、鉄鉱石とフラックスの混合物の充填層における温度をいい、該温度として、後述する実施例では使用する炉の雰囲気温度で制御した。
【0029】
本実施形態における焙焼の雰囲気とは、焙焼による酸化鉄の還元率(本明細書において「鉄の還元率」という)が10%以下となるような雰囲気をいう。本実施形態では、焙焼の段階では酸化鉄の還元を抑制し、焙焼工程と還元工程を分けて、還元工程で酸化鉄の還元を行うことによって、鉄鉱石に含まれるかまたは鉄鉱石に由来の鉄相(以下、単に「鉄相」という)とリンを分離しかつ鉄相へのリンの混入を防止できる。上記還元率は、好ましくは8%以下、より好ましくは5%以下であり、0%であってもよい。上記還元率を達成するための手段は、上述した雰囲気の制御、温度の制御などが挙げられる。
【0030】
前記雰囲気として、酸素含有雰囲気が挙げられる。例えば大気雰囲気とすることができる。焙焼工程では、例えば熱源として炭材を用いることも可能であり、この炭材を用いた場合、大気雰囲気よりもやや還元雰囲気となりうるが、その様な雰囲気も許容される。焙焼のための設備として、例えば電気抵抗炉(外部加熱)、バーナー式加熱炉、ドワイトロイド式焼結機、ポット型焼結機等を用いることができる。
【0031】
[還元工程]
還元工程では、前記焙焼物を、COガスと水素ガスの少なくとも1つを含む雰囲気で還元し、図1のCに示される還元物、すなわち還元鉄相とスラグ相を含む還元物を得る。図1のBからCへの矢印bで表される還元工程を経ることで、酸化鉄含有相13が還元されて、還元鉄相16と、リンが固定されたままである還元スラグ相17(前記焙焼スラグ相14がこの還元工程を経た後のスラグ相)とで形成された、還元物が得られる。本実施形態において、焙焼工程と還元工程を分け、還元工程にて上記雰囲気で還元を行うことでリンを化学的に容易に分離できる理由について、以下に詳述する。
【0032】
還元時に酸素分圧が低くなると、スラグ中のPの酸素が乖離してリンが発生し、これがFeと結びつきやすく、鉄鉱石からのリンの除去が困難となる。よって還元時の酸素分圧は変動を抑える必要がある。しかし、非特許文献1の方法では還元時の酸素分圧が変動しやすいと考えられる。非特許文献1の方法では炭材を用いているが、この様に炭材を用いると、還元時に炭材の周囲で酸素分圧が局所的に低下することや、炭材が加熱されることで、COガス、COガスが生じるなど、予測できない酸素の消費が生じるためである。一方、本実施形態によれば、COガス、水素ガスといったガス状態の還元剤を還元に使用するため、還元時の酸素分圧の変動を抑制でき、酸素分圧の低減によるリンの鉄との結合を防止でき、その結果、リンが化学的に分離した状態を維持できると考えられる。
【0033】
還元工程における雰囲気を構成するガスは、COガスと水素ガスの少なくとも1つを含んでいればよく、残りのガス成分は特に限定されない。還元を目的としていることから、残りのガス成分は酸化作用を有しないガスであることが好ましい。残りのガス成分として、例えばCOガス、Nガスなどが挙げられる。後述する実施例では還元ガスとして、COガス単独、またはCOガスと水素ガスの混合ガスを用いているが、還元ガスが水素ガスのみであってもよく、例えば、水素ガスが10%で残りがNガスであってもよい。本実施形態によれば、還元ガスとして水素を使用する場合、非特許文献1のように還元剤として炭材を使用する場合と比較して温室効果ガスの削減に寄与する。
【0034】
上記条件で還元を行うことにより、SiOやAlの還元スラグ相17への移行が進み、かつ、多くのリンは還元スラグ相17に固定された状態で、酸化鉄含有相13の還元が進み、例えばM.Fe(金属鉄)またはFe主体の還元鉄相16が得られる。すなわち、上記酸化焙焼と上記還元の工程により、還元スラグ相17に固定されたリンと還元鉄相16に化学的に十分分離された還元物を得ることができる。
【0035】
本実施形態において、還元鉄相には、M.Fe(金属鉄)のみならず、Feの還元により得られた上記Feの他、FeOも含みうる。また還元鉄相には、不純物として例えば、鉄以外の元素の酸化物等を含みうる。
【0036】
還元工程の雰囲気温度は、例えば600℃以上、900℃以下の範囲とすることができる。該還元工程の雰囲気温度は、還元のための炉における雰囲気温度をいう。好ましくは還元工程の雰囲気温度は850℃以下である。後述する実施例で説明する通り、雰囲気温度が900℃の場合、Fe-P相の生成の兆候が見られた。このことから、還元時の温度が高すぎると、焙焼工程でスラグ相(不純物相)側に移行し固定したリンが、鉄相と再び結合するおそれがあると考えられる。還元工程の雰囲気温度の下限は、還元を促進させる観点から、650℃以上であることが好ましい。
【0037】
還元の時間は、処理量に応じて適宜決定することができる。上記雰囲気温度での還元が終了した後、室温までの冷却時は、非酸化雰囲気であればよく、還元ガス雰囲気に限定されない。例えば、Nガス、その他のAr等の不活性ガスの雰囲気であってもよい。
【0038】
還元工程で還元後の酸化鉄の還元率(本明細書において「鉄の還元率」という)は50%以上であることが好ましい。還元により鉄の還元率が高くなることにより、リンを含む還元スラグ相とは異なる粉砕特性の還元鉄相の割合が増加して、還元鉄相と還元スラグ相、即ち金属-酸化物の界面の多い還元物が得られると考えられる。そして該還元物の粉砕工程において、後に詳述の通り、酸化鉄相と還元スラグ相のような酸化物相どうしの界面よりも、前記金属-酸化物の界面には亀裂が生じやすく、還元鉄相と還元スラグ相を効率的に分離できる。前記還元率は、より好ましくは70%以上、更に好ましくは80%以上、より更に好ましくは90%以上であり、最も好ましくは100%である。前記還元率は、後述する実施例に記載の方法で求められる。
【0039】
[粉砕工程]
粉砕工程では、前記還元物を粉砕して、還元物を構成するスラグ相の少なくとも一部が分離した還元鉄相含有物を含む粉砕物を得る。図1のCからDへの矢印cで表される粉砕工程により、図1のDに示す通り、還元スラグ相17と還元鉄相16とが粉砕の衝撃により分離される。この粉砕と下記の選別回収により、リンは物理的に分離される。還元物は、金属と酸化物といった異なる粉砕特性を有する物質で構成され、異相界面が形成されうる。還元ままでは、図1のCの通り還元鉄相とスラグ相が結合したままであるが、粉砕を行うことで、還元スラグ相と還元鉄相16の界面で効率的に分離しやすくなり、分離後は、下記の選別回収工程で還元鉄相16を回収しやすくなる。なお、上述の通り図1はイメージ図であり、図1の通り還元スラグ相17と還元鉄相16が完全に分離されることに加え、還元鉄相16に還元スラグ相17の一部が残存する場合も含みうる。本実施形態では、還元スラグ相17と完全に分離した還元鉄相16と、還元鉄相16に還元スラグ相17の一部が残存するものとを総称して「還元鉄相含有物」という。粉砕は、ケージミル、ボールミル、ロータリーミル、ジェットミルなどの粉砕設備を用いて行われる。これらの粉砕設備のうち、ケージミルを用いて前記還元物を粉砕することが好ましい。衝撃を加えるタイプのケージミルによる粉砕は、例えばすり潰すタイプのボールミルによる粉砕よりも、上記還元鉄相とスラグ相の界面に亀裂を生じさせる力が効率良く作用すると考えられる。
【0040】
[選別回収工程]
選別回収工程では、前記粉砕物から還元鉄相含有物を選別回収する。図1のDからEへの矢印dで表される選別回収工程により、還元鉄相含有物(図1のEでは、例として還元鉄相16のみ表示)を得る。金属鉄は磁性を有するため、選別回収する方法として磁力選別(磁選)を用いることができる。前段の還元によって鉄相が磁性を帯びることで、磁力選別が可能となる。磁力選別は、比重選鉱などと比較し分離効率が高いことが知られている。なお、前記還元工程での還元を十分に行わずに、例えば還元鉄相がFe主体である場合、異相界面形成による粉砕促進効果は十分ではないが、Feも金属鉄と同様に磁性を有するため、磁力選別を用いることができ、そのような態様も本実施形態に含まれうる。また、還元鉄相含有物に更なる工程を施して鉄源としてもよい。
【0041】
磁力選別の方法として、還元鉄相と還元スラグ相との分離が可能であれば特に限定されず、例えば、ハンド磁選でも問題ないが、大量処理が伴う場合、ドラム式磁選機、ロータリー式磁選機などの大型磁選機を使用してもよい。
【実施例0042】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0043】
以下の実施例では、鉄鉱石からリンを除去し、還元鉄相含有物を得るラボ試験を行った。
【0044】
[準備工程]
リン除去対象物である鉄鉱石として、表1に示す化学成分を有する銘柄A、Bの鉄鉱石を用いた。いずれの銘柄も豪州産である。前記銘柄AまたはBの鉄鉱石を用い、No.1~7の7例のラボ試験を行った。No.1~5では、鉄鉱石を篩下2mm未満に篩って使用した。No.6および7では、鉄鉱石を篩下0.5mm未満に篩って使用した。また、フラックスとして、No.1~5では、富士フイルム和光純薬株式会社製CaCO試薬(篩下45μm未満)を用いた。一方、No.6および7では、フラックスとして、工業用石灰石(篩上2mm以上、篩下4mm未満)を用いた。上記鉄鉱石とフラックスを、焙焼用混合物のCaO/SiOが2.0となるように混合して、焙焼用混合物を得た。
【0045】
【表1】
【0046】
[焙焼工程]
焙焼には、抵抗式電気加熱炉を用いた。上記焙焼用混合物を株式会社ニッカトー製緻密質MgO容器に入れ、大気雰囲気中にて、昇温速度10℃/minで1300℃(炉内の雰囲気温度)まで昇温してから1300℃で30分間保持した。その後、室温まで冷却して焙焼サンプルを得た。
【0047】
(化学成分の分析)
焙焼サンプルの化学成分を次の通り分析した。T.Fe(全鉄)量は塩化チタン(III)還元二クロム酸カリウム滴定法、FeO量は二クロム酸カリウム滴定法、M.Fe(金属鉄)量は臭素メタノール分解-EDTA滴定法で求めた。また、リンの定量は、JIS M8216(吸光光度法)に準じて実施した。なお、FeO、M.Feについて、検出下限である0.10質量%を下回っている場合は、0.10%であるとした。
【0048】
また、鉄の還元率を下記式から求めた。これらの結果を表2に示す。
【0049】
【数1】
【0050】
上記式において(FeO%)、(T.Fe%)、(M.Fe%)は、各工程後(表2では焙焼後、後記の表3では還元後)のFeO、T.Fe、M.Feの各質量%を示す。
【0051】
【表2】
【0052】
[還元工程]
前記焙焼サンプルを、事前に手粉砕またはケージミルを用いて塊砕し、篩にかけて篩下2mm未満の還元用サンプルを得た。還元は、内径130mmで長さ200mmのドラム型回転加熱炉を用いて実施した。還元条件は、表3に示す通りとした。還元ガスは室温で表3に示すガス組成の通り混合後、炉内に導入した。また、昇温開始直後から還元ガスを導入した。表3に示す温度まで、昇温速度:450℃/hで昇温した。表3に示す温度で表3に示す時間の保持を行った後、N雰囲気で室温まで冷却して、還元サンプルを得た。還元工程におけるその他の条件は以下の通りとした。尚、上記温度は炉内の雰囲気温度である。
・ドラム型回転加熱炉の回転数:12rpm
・還元用サンプル量:500g
・還元ガスの流量:10NL/min
【0053】
還元サンプルの化学成分の分析を、前記焙焼サンプルの化学成分の分析と同様にして行った。その結果を表3に併記する。
【0054】
【表3】
【0055】
[粉砕工程]
還元サンプルの粉砕を、株式会社増野製作所製ケージミルまたは吉田製作所製ボールミルを用いた。ケージミルを用いる場合は、回転数2850rpmで行った。また、ケージミルへの一回の供給量は200gとし、ケージミルで粉砕後のサンプルを再びケージミルに供給し、全量のサンプルが合計3回ケージミルを通過するよう処理し、粉砕サンプルを得た。ボールミルを用いる場合は、粉砕ボールとして鋼球を充填し、回転数68rpmで60秒間運転して粉砕した。サンプルの供給量は140gとした。
【0056】
[選別回収(磁選)工程]
選別回収方法として、磁選を行い、還元鉄相含有物を得た。磁選は、乾式ドラム磁選機に粉砕サンプルを装入して行った。乾式ドラム磁選機の回転数は80rpmとした。乾式ドラム磁選機への粉砕物の供給量は50g/回とし、2回行った。そして、各回(N1、N2)の磁着率の測定と化学成分(T.FeとP)の分析を行った。磁着率は、下記式から求めた。また化学成分は、焙焼サンプルの化学成分分析と同様にして求めた。その結果を表4に示す。
【0057】
【数2】
【0058】
【表4】
【0059】
更に、リン除去率および鉄回収率を、下記式から求めた。リン除去率および鉄回収率の算出には2回磁選した平均値を用いた。その結果を表5に示す。
【0060】
【数3】
【0061】
【数4】
【0062】
【表5】
【0063】
上記方法で実施した、鉄鉱石からのリン除去のラボ試験の結果から、本実施形態の製造方法の通り焙焼工程と還元工程を経た後に、選別回収を行うことによって、15%以上のリン除去率を達成できた。
【0064】
[顕微鏡観察およびEDX分析]
実施例2における、焙焼および還元後に粉砕したサンプルを樹脂に埋めて断面研磨を行ってから、走査型電子顕微鏡で観察した。その結果を図2に示す。更に、図2の符号1と符号2のそれぞれの分析点の成分を、EDX(エネルギー分散X線分光法、energy dispersive X-ray spectroscopy)で分析した。その結果を図3に示す。なお、図3のEDX半定量分析値は、各元素が図3の凡例に示す酸化物を形成していると仮定し、酸素以外の各元素量から算出した。
【0065】
上記図2および図3から、上記図2の符号1のグレー部分はリン濃化相であり、上記図2の符号2の白色の多い領域は鉄相であることを確認した。また、上記図2および図3と、上記表5の結果から、酸化焙焼および還元の後に選別回収を行うことによって、高いリン除去率を達成できた理由として、上記酸化焙焼と還元により、鉄鉱石中のリンが不純物相に移動し鉄と結合することなく固定、すなわちリンが化学的に十分に分離除去され、かつ、その後の粉砕と選別回収により、リンを含有するスラグ相が分離除去されて、磁性を帯びた還元鉄相が回収されたためと考えられる。
【0066】
[XAFSを用いたリンの化学結合状態の評価]
銘柄Bの鉄鉱石を用いて行った上記ラボ試験の、焙焼前後の各試料と、600℃、700℃、800℃、900℃の各温度で還元後の各試料とを用い、放射光によるX線吸収端分析(XAFS、X-ray Absorption Fine Structure)を行って、リンの化学結合状態を評価した。XAFS測定には下記に示す設備・方法を用いた。その評価結果を図4に示す。なお図4では、評価対象として、FeP、FeP、Caのそれぞれの化合物についても同様の分析を行った。
・施設:立命館大学SRセンター
・ビームライン:BL-13
・吸収端:常温でのP K-edge,Si K-edge,Al K-edge
・測定方法:蛍光法による測定
【0067】
図4において矢印Qで示される、2145~2150eV付近のスペクトルの肩は、焙焼前の鉄鉱石において、リンが鉄リン酸塩を形成していることを示す。本実施形態によれば、フラックスが存在する状態で鉄鉱石を焙焼することにより、この矢印Qで示されるバンドの吸収が消失し、実線でピークを示したCaに近い結合状態となっている、すなわち、リンがCaに固定されていることが分かる。
【0068】
[還元温度について]
前記図4において、800℃以下の温度で還元を行ったサンプルでは、2145~2150eV付近のエネルギー吸収は観測されなかったが、900℃で還元したサンプルでは、矢印Rで示したFe-P系化合物のピークと同じ位置で、図4の矢印Zに示される通りエネルギー吸収が観測され、このサンプルにおいてFe-P系化合物が生じたことが推察される。このことから、還元時にリンの鉄との結合を抑制するには、還元温度を900℃よりも低くすることが好適であることが分かる。
【0069】
また、表3および表5のデータをもとに、還元時の温度とリン除去率の関係を整理したグラフを図5に示す。この図5から、還元時の温度を高めすぎるとリン除去率は低下する傾向にあり、より高いリン除去率の達成、例えば約20%以上のより高いリン除去率を達成させる観点からは、還元時の温度を850℃以下とすることが好ましいことがわかる。
【0070】
更に、表3および表5のデータをもとに、還元工程後の鉄の還元率とリン除去率の関係を整理したグラフを図6に示す。この図6から、還元工程後の鉄の還元率が好ましくは50%以上であると、リン除去率を高めることができ、約20%以上のより高いリン除去率を達成することも可能であることがわかる。これは、前述の通り、還元により還元率が高くなることで、リンを含む還元スラグ相とは異なる粉砕特性の還元鉄相の割合が増加し、金属-酸化物の界面の多い還元物が得られ、粉砕で該界面に亀裂が生じやすく、還元鉄相と還元スラグ相を効率的に分離できたためと考えられる。なおNo.3は、還元率は高いが、上述の通り、還元時の温度が高めでありリン除去率はNo.2等よりは低かった。
【0071】
また図6において、同様の還元率を示すサンプル間でリン除去率を比較したところ、還元率が約90%であるNo.2とNo.6,7との対比から、No.2のサンプルのリン除去率が高いことがわかる。これは粉砕工程において、好ましくはケージミルにより還元物を粉砕したことにより、還元鉄相とスラグ相の界面に亀裂を生じさせる力が効率良く作用し、リンを含むスラグ相を十分分離できたこと等によると考えられる。
【符号の説明】
【0072】
1 リン濃化相
2 鉄相
11 鉄鉱石
12 フラックス
13 酸化鉄含有相
14 焙焼スラグ相
15 リン移行
16 還元鉄相
17 還元スラグ相
a 焙焼
b 還元
c 粉砕
d 選別回収
図1
図2
図3
図4
図5
図6