(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023126101
(43)【公開日】2023-09-07
(54)【発明の名称】自動二輪車用タイヤセット
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20230831BHJP
B60C 9/22 20060101ALI20230831BHJP
B60C 9/06 20060101ALI20230831BHJP
【FI】
B60C11/00 D
B60C9/22 C
B60C9/22 G
B60C9/06 B
B60C11/00 C
B60C11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162541
(22)【出願日】2022-10-07
(31)【優先権主張番号】P 2022029739
(32)【優先日】2022-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104134
【弁理士】
【氏名又は名称】住友 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100156225
【弁理士】
【氏名又は名称】浦 重剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168549
【弁理士】
【氏名又は名称】苗村 潤
(74)【代理人】
【識別番号】100200403
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 幸信
(74)【代理人】
【識別番号】100206586
【弁理士】
【氏名又は名称】市田 哲
(72)【発明者】
【氏名】野中 謙次
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BA01
3D131BA20
3D131BB06
3D131BC13
3D131BC15
3D131CB07
3D131DA03
3D131DA52
3D131EA02U
3D131EA02V
3D131EA02X
3D131EA04X
(57)【要約】
【課題】 高速安定性能と旋回性能とを向上させる。
【解決手段】 自動二輪車用タイヤセットSである。前輪用タイヤS1及び後輪用タイヤS2は、トロイド状のカーカス6と、ジョイントレスバンドプライ7Aを含むバンド層7と、トレッドゴム10とを含んでいる。各カーカス6は、複数のカーカスコード11を並列させた少なくとも一枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。前輪用タイヤS1のカーカスコード11Aのタイヤ周方向に対する角度θ1が65度以下である。後輪用タイヤS2のクラウンゴム部15Bのゴム硬度Hc2は、前輪用タイヤS1のクラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1よりも大きい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪用タイヤ及び後輪用タイヤからなる自動二輪車用タイヤセットであって、
前記前輪用タイヤ及び前記後輪用タイヤは、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側かつトレッド部の内部に配されたバンド層と、前記バンド層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴムとを含み、
前記各カーカスは、複数のカーカスコードを並列させた少なくとも一枚のカーカスプライを含み、
前記各バンド層は、タイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたバンドコードを有するジョイントレスバンドプライを含み、
前記各トレッドゴムは、トレッドクラウン部に配されたクラウンゴム部を含み、
前記前輪用タイヤの前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θ1が65度以下であり、
前記後輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc2は、前記前輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc1よりも大きい、
自動二輪車用タイヤセット。
【請求項2】
前記後輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc2と、前記前輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc1との差(Hc2-Hc1)は、2~8度である、請求項1に記載の自動二輪車用タイヤセット。
【請求項3】
前記前輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度θ1は、前記後輪用タイヤの前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θ2よりも小さい、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤセット。
【請求項4】
前記前輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度θ1と、前記後輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度θ2との差(θ2-θ1)は、15度以上である、請求項3に記載の自動二輪車用タイヤセット。
【請求項5】
前記各トレッドゴムは、前記クラウンゴム部のタイヤ軸方向の両側に配される一対のショルダーゴム部を含み、
前記後輪用タイヤにおいて、前記クラウンゴム部のゴム硬度は、前記一対のショルダーゴム部のゴム硬度と異なる、請求項1又は2に記載の自動二輪車用タイヤセット。
【請求項6】
前記前輪用タイヤ及び前記後輪用タイヤの各トレッドゴムは、前記クラウンゴム部及び前記一対のショルダーゴム部のタイヤ半径方向の内側に配されるベースゴム部を含み、
前記ベースゴム部のゴム硬度は、前記クラウンゴム部及び前記一対のショルダーゴム部のゴム硬度と異なる、請求項5に記載の自動二輪車用タイヤセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動二輪車用タイヤセットに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、前輪用タイヤ及び後輪用タイヤからなる自動二輪車用タイヤセットが記載されている。前記前輪用タイヤ及び前記後輪用タイヤは、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側に配されたバンド層とを含んでいる。前記各カーカスのカーカスコードは、タイヤ周方向に対する角度が20~70度とされている。前記各バンド層は、ジョイントレスバンドプライを含んでいる。前記前輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度は、前記後輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度よりも小とされている。このような自動二輪車用タイヤセットは、乗心地性能を維持し、かつ、操縦安定性能に優れるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、とりわけ、サーキット走行を目的としたスポーツカテゴリーの自動二輪車用タイヤセットにおいては、高速安定性能と旋回性能とを向上させることが求められていた。
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、高速安定性能と旋回性能とを向上させることができる自動二輪車用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前輪用タイヤ及び後輪用タイヤからなる自動二輪車用タイヤセットであって、前記前輪用タイヤ及び前記後輪用タイヤは、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側かつトレッド部の内部に配されたバンド層と、前記バンド層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴムとを含み、前記各カーカスは、複数のカーカスコードを並列させた少なくとも一枚のカーカスプライを含み、前記各バンド層は、タイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたバンドコードを有するジョイントレスバンドプライを含み、前記各トレッドゴムは、トレッドクラウン部に配されたクラウンゴム部を含み、前記前輪用タイヤの前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θ1が65度以下であり、前記後輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc2は、前記前輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc1よりも大きい、自動二輪車用タイヤセットである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の自動二輪車用タイヤセットは、上記の構成を採用することで、高速安定性能と旋回性能とを向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態を示す前輪用タイヤのタイヤ子午線断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態を示す後輪用タイヤのタイヤ子午線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本発明の自動二輪車用タイヤセット(以下、単に、「タイヤセット」という)Sの前輪用タイヤS1のタイヤ子午線断面図である。
図2は、本発明のタイヤセットSの後輪用タイヤS2のタイヤ子午線断面図である。本実施形態のタイヤセットSは、例えば、サーキット走行を目的としたスポーツカテゴリーのものに好適に用いられる。但し、本発明のタイヤセットSは、このような使用態様に限定されるものではない。
【0010】
図1及び
図2には、前輪用タイヤS1及び後輪用タイヤS2の正規状態が示される。正規状態とは、タイヤが正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の状態である。本明細書では、特に断りがない限り、タイヤの各部の寸法等は、正規状態において特定される値である。
【0011】
前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば"Measuring Rim" である。前記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" である。
【0012】
図1及び
図2に示されるように、前輪用タイヤS1及び後輪用タイヤS2は、それぞれ、トレッド部2のトレッド端Te、Te間の外面2aが、タイヤ半径方向外側に凸の円弧状に湾曲してのびている。トレッド端Te、Te間のタイヤ軸方向距離がトレッド幅TWである。
【0013】
本実施形態の前輪用タイヤS1及び後輪用タイヤS2は、それぞれ、トロイド状のカーカス6と、カーカス6のタイヤ半径方向の外側かつトレッド部2の内部に配されたバンド層7と、バンド層7のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴム10とを含んでいる。
【0014】
図3は、前輪用タイヤS1のトレッド部2の展開図である。
図4は、後輪用タイヤS2のトレッド部2の展開図である。
図3及び
図4には、それぞれ、カーカス6とバンド層7とが示される。
図1ないし
図4に示されるように、各カーカス6は、複数のカーカスコード11を並列させた少なくとも一枚のカーカスプライ6Aを含んでいる。本実施形態のカーカス6は、2枚のカーカスプライ6A、6Bから形成される。前輪用タイヤS1において、カーカスプライ6A、6Bは、例えば、カーカスコード11A、11Bがプライ間で互いに交差するように傾斜の向きを違えて配される。各カーカスコード11A、11Bには、例えば、ナイロン、ポリエステル又はレーヨン等の有機繊維コード等が好適に採用される。
【0015】
前輪用タイヤS1のカーカスコード11Aのタイヤ周方向に対する角度θ1が65度以下である。これにより、大きなキャンバースラストを得ることができるので、旋回性能が向上する。角度θ1が過度に小さいと、前輪用タイヤS1の接地形状が小さくなり、ハンドル操作の手応えが低下するので、旋回性能及び高速耐久性能が悪化するおそれがある。このため、角度θ1は、20度以上が望ましい。
【0016】
各バンド層7は、タイヤ周方向に対して5度以下の角度βで螺旋状に巻回されたバンドコード12を有するジョイントレスバンド(JLB)プライ7Aを含んでいる。これにより、高速安定性能が発揮される。本実施形態では、各バンド層7は、1枚のジョイントレスバンドプライ7Aで形成されている。
【0017】
図1及び
図2に示されるように、各トレッドゴム10は、トレッドクラウン部2cに配されたクラウンゴム部15を含んでいる。そして、後輪用タイヤS2のクラウンゴム部15Bのゴム硬度Hc2は、前輪用タイヤS1のクラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1よりも大きい。これにより、後輪用タイヤS2のロールが軽快になるので、旋回性能がさらに向上する。したがって、本発明の自動二輪車用タイヤセットSは、優れた高速安定性能と旋回性能とを有する。
【0018】
ゴム硬度は、本明細書では、JIS-K6253に基づきデュロメータータイプAにより、23℃の環境下で測定したデュロメータA硬さである。
【0019】
後輪用タイヤS2のクラウンゴム部15Bのゴム硬度Hc2と、前輪用タイヤS1のクラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1との差(Hc2-Hc1)は、2~8度であるのが望ましい。差(Hc2-Hc1)が2度以上であるので、上述の作用が効果的に発揮される。差(Hc2-Hc1)が8度以下であるので、後輪用タイヤS2と前輪用タイヤS1とのロールの軽快性の差が過度に大きくなることが抑制されるので、高速安定性能と旋回性能とが高く維持される。
【0020】
特に限定されるものではないが、前輪用タイヤS1のクラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1は、55度以上が望ましく、58度以上がさらに望ましく、68度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。
【0021】
前輪用タイヤS1及び後輪用タイヤS2の各トレッドゴム10は、クラウンゴム部15のタイヤ軸方向の両側に配される一対のショルダーゴム部16を含んでいる。また、本実施形態では、前輪用タイヤS1及び後輪用タイヤS2の各トレッドゴム10は、クラウンゴム部15及び一対のショルダーゴム部16のタイヤ半径方向の内側に配されるベースゴム部17を含んでいる。
【0022】
後輪用タイヤS2において、クラウンゴム部15Bのゴム硬度Hc2は、一対のショルダーゴム部16Bのゴム硬度Hs2と異なっている。これにより、クラウンゴム部15Bとショルダーゴム部16Bとで、各ゴム部15B、16Bに剛性の差を設けることができる。具体的には、本実施形態では、各ショルダーゴム部16Bのゴム硬度Hs2は、クラウンゴム部15Bのゴム硬度Hc2よりも大きく形成されている。これにより、キャンバー角が大きな旋回時におけるキャンバースラストが大きくなるので、旋回性能が向上する。後輪用タイヤS2において、クラウンゴム部15Bのゴム硬度Hc2とショルダーゴム部16Bのゴム硬度Hs2との差(Hs2-Hc2)は、1度以上が望ましく、2度以上がさらに望ましく、5度以下が望ましく、3度以下がさらに望ましい。
【0023】
前輪用タイヤS1において、クラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1は、一対のショルダーゴム部16Aのゴム硬度Hs1と異なっている。具体的には、本実施形態では、クラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1は、各ショルダーゴム部16Aのゴム硬度Hs1よりも大きく形成されている。これにより、直進時の高速安定性を維持しつつ、旋回性能が向上する。前輪用タイヤS1において、クラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1と各ショルダーゴム部16Aのゴム硬度Hs1との差は(Hc1-Hs1)、1度以上が望ましく、2度以上がさらに望ましく、5度以下が望ましく、3度以下がさらに望ましい。
【0024】
前輪用タイヤS1において、ベースゴム部17Aのゴム硬度Hb1は、クラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1及び各ショルダーゴム部16Aのゴム硬度Hs1と異なっている。本実施形態では、ベースゴム部17Aのゴム硬度Hb1は、クラウンゴム部15Aのゴム硬度Hc1、及び、ショルダーゴム部16Aのゴム硬度Hs1よりも小さく形成されている。これにより、前輪用タイヤS1のベースゴム部17Aにおいて、走行によるトレッドゴム10の発熱量を確保することができるので、旋回性能が向上する。
【0025】
後輪用タイヤS2において、ベースゴム部17Bのゴム硬度Hb2は、クラウンゴム部15B及び各ショルダーゴム部16Bのゴム硬度Hc2、Hs2と異なっている。本実施形態では、ベースゴム部17Bのゴム硬度Hb2は、クラウンゴム部15Bのゴム硬度Hc2、及び、各ショルダーゴム部16Bのゴム硬度Hs2よりも小さく形成されている。これにより、後輪用タイヤS2のベースゴム部17Bにおいて、走行によるトレッドゴム10の発熱量を確保することができるので、旋回性能が向上する。
【0026】
特に限定されるものではないが、前輪用タイヤS1において、ベースゴム部17Aのゴム硬度Hb1は、55度以上が望ましく、60度以上がさらに望ましく、70度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。同様に、後輪用タイヤS2において、ベースゴム部17Bのゴム硬度Hb2は、55度以上が望ましく、60度以上がさらに望ましく、70度以下が望ましく、65度以下がさらに望ましい。
【0027】
各クラウンゴム部15は、例えば、タイヤ赤道Cを中心としてタイヤ軸方向の両側へ延びている。各クラウンゴム部15のタイヤ軸方向の幅Wcは、例えば、トレッド幅TWの20%以上が望ましく、30%以上がさらに望ましく、80%以下が望ましく、70%以下がさらに望ましい。各ベースゴム部17は、各バンド層7よりもタイヤ軸方向の幅が大きく、バンド層7のタイヤ軸方向の外側に外端17eを有している。
【0028】
特に限定されるものではないが、クラウンゴム部15の厚さTcは、トレッドゴム10の厚さT1の40%以上が望ましく、50%以上がさらに望ましく、95%以下が望ましく、90%以下がさらに望ましい。クラウンゴム部15の厚さTc及びトレッドゴム10の厚さT1は、タイヤ赤道C上で測定される。
【0029】
図3及び
図4に示されるように、前輪用タイヤS1のカーカスコード11Aの角度θ1は、後輪用タイヤS2のカーカスコード11Bのタイヤ周方向に対する角度θ2よりも小さく形成されている。これにより、前輪用タイヤS1のロールの軽快性が高められ、旋回性能が向上する。
【0030】
上述の作用を効果的に発揮するために、カーカスコード11Aの角度θ1と、カーカスコード11Bの角度θ2との差(θ2-θ1)は、15度以上であるのが望ましく、20度以上であるのがさらに望ましい。差(θ2-θ1)が過度に大きくなると、前輪用タイヤS1のカーカスコード11Aの角度θ1が小さくなり、旋回性能及び高速安定性能が悪化するおそれがある。このため、差(θ2-θ1)は、60度以下であるのが望ましく、30度以下であるのがさらに望ましい。角度θ1及び角度θ2は、タイヤ赤道C上での角度である。カーカスコード11Bの角度θ2は、80度以上が望ましく、85度以上がさらに望ましい。
【0031】
バンド層7のタイヤ軸方向の幅W1は、トレッド幅TWの60%以上が望ましく、65%以上がさらに望ましく、100%以下が望ましく、95%以下がさらに望ましい。
【0032】
前輪用タイヤS1のトレッドゴム10は、例えば、クラウンゴム部15Aとショルダーゴム部16Aとのみで形成されても良い。後輪用タイヤS2のトレッドゴム10は、例えば、クラウンゴム部15Bとショルダーゴム部16Bとのみで形成されても良いし、クラウンゴム部15Bのみで形成されても良い。
【0033】
以上、本発明の特に好ましい形態について詳述したが、本発明は図示の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【実施例0034】
図1ないし
図4の基本構造を有するの自動二輪車用タイヤセットが試作された。そして、各試供タイヤセットの高速安定性能と旋回性能とがテストされた。各試供タイヤセットの共通の仕様及びテスト方法は、以下の通りである。
前輪用タイヤ(サイズ、リム):120/70R17、3.50MT
後輪用タイヤ(サイズ、リム):180/55R17、5.50MT
Hc1:60度
比較例1~3、及び、実施例1、2、5~7は、前輪がクラウンゴム部のみで形成されており、後輪がクラウンゴム部及びショルダーゴム部のみで形成されている態様である。
実施例3は、前輪及び後輪がクラウンゴム部及びショルダーゴム部のみで形成されている態様である。
実施例4は、前輪及び後輪がクラウンゴム部、ショルダーゴム部及びベースゴム部で形成されている態様である。
【0035】
<高速安定性能・旋回性能>
正規内圧が充填された各試供タイヤセットが、自動二輪車(排気量1500cc)に装着された。そして、テストライダーが、前記車両を用いて、乾燥アスファルト路面のテストコースを走行し、そのときの高速直進走行時の振動や揺れの程度、及び、旋回走行時の軽快性や操舵性が、テストライダーの官能により評価された。結果は、それぞれ、5点を満点とする5点法で示される。各性能は、数値が大きい方が、優れている。テストの結果が表1に示される。
【0036】
【0037】
テストの結果、実施例のタイヤは、比較例のタイヤに比べて、高速安定性能及び旋回性能が向上していることが理解される。
【0038】
[付記]
本発明は以下の態様を含む。
【0039】
[本発明1]
前輪用タイヤ及び後輪用タイヤからなる自動二輪車用タイヤセットであって、
前記前輪用タイヤ及び前記後輪用タイヤは、トロイド状のカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向の外側かつトレッド部の内部に配されたバンド層と、前記バンド層のタイヤ半径方向外側に配されたトレッドゴムとを含み、
前記各カーカスは、複数のカーカスコードを並列させた少なくとも一枚のカーカスプライを含み、
前記各バンド層は、タイヤ周方向に対して5度以下の角度で螺旋状に巻回されたバンドコードを有するジョイントレスバンドプライを含み、
前記各トレッドゴムは、トレッドクラウン部に配されたクラウンゴム部を含み、
前記前輪用タイヤの前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θ1が65度以下であり、
前記後輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc2は、前記前輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc1よりも大きい、
自動二輪車用タイヤセット。
[本発明2]
前記後輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc2と、前記前輪用タイヤの前記クラウンゴム部のゴム硬度Hc1との差(Hc2-Hc1)は、2~8度である、本発明1に記載の自動二輪車用タイヤセット。
[本発明3]
前記前輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度θ1は、前記後輪用タイヤの前記カーカスコードのタイヤ周方向に対する角度θ2よりも小さい、本発明1又は2に記載の自動二輪車用タイヤセット。
[本発明4]
前記前輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度θ1と、前記後輪用タイヤの前記カーカスコードの前記角度θ2との差(θ2-θ1)は、15度以上である、本発明3に記載の自動二輪車用タイヤセット。
[本発明5]
前記各トレッドゴムは、前記クラウンゴム部のタイヤ軸方向の両側に配される一対のショルダーゴム部を含み、
前記後輪用タイヤにおいて、前記クラウンゴム部のゴム硬度は、前記一対のショルダーゴム部のゴム硬度と異なる、本発明1ないし4のいずれかに記載の自動二輪車用タイヤセット。
[本発明6]
前記前輪用タイヤ及び前記後輪用タイヤの各トレッドゴムは、前記クラウンゴム部及び前記一対のショルダーゴム部のタイヤ半径方向の内側に配されるベースゴム部を含み、
前記ベースゴム部のゴム硬度は、前記クラウンゴム部及び前記一対のショルダーゴム部のゴム硬度と異なる、本発明5に記載の自動二輪車用タイヤセット。
【0040】
S 自動二輪車用タイヤセット
S1 前輪用タイヤ
S2 後輪用タイヤ
6 カーカス
6A カーカスプライ
7 バンド層
7A ジョイントレスバンドプライ
10 トレッドゴム
11 カーカスコード
11A 前輪用タイヤのカーカスコード
15A 前輪用タイヤのクラウンゴム部
15B 後輪用タイヤのクラウンゴム部